(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】投票用紙交付装置
(51)【国際特許分類】
G07C 13/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
G07C13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018147054
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390011981
【氏名又は名称】株式会社ムサシ
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】萬 秀紀
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-215218(JP,A)
【文献】特開2003-006696(JP,A)
【文献】特開2016-091373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
(1)前記装置本体外に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
(2a)前記カラーセンサーで読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、又は、(2b)選挙種別を入力する選挙種別入力手段、複数の選挙種別の各々に対応した正規色情報を、記憶している、データテーブル、及び、前記選挙種別入力手段によって入力された選挙種別に基づいて、該選挙種別に対応する正規色情報を、前記データテーブルから取得する、正規色情報取得部と、
(3)前記カラーセンサーで読み取られた、前記収容部に収容する前の前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
(4)前記正規色情報設定部によって設定された又は前記正規色情報取得部によって取得された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
を備えていることを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項2】
前記基準指標物の色情報及び前記投票用紙の色情報は、それぞれ、R値とG値とB値とによって規定されており、
前記正規色情報は、所定範囲のR値と、所定範囲のG値と、所定範囲のB値と、によって、規定されており、
前記判定部は、前記読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、前記正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれない場合に「不一致」と判定し、含まれる場合に「一致」と判定するようになっている、
請求項1記載の投票用紙交付装置。
【請求項3】
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部を、更に備えている、
請求項1又は2に記載の投票用紙交付装置。
【請求項4】
前記カラーセンサーは、前記装置本体の外壁に直接固定されている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項5】
前記カラーセンサーは、前記装置本体にケーブルで接続されて設けられており、又は、前記装置本体とは別体であり且つ前記装置本体に接続されたコントローラ部に、ケーブルで接続されて設けられている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項6】
前記カラーセンサーは、スティック型又は用紙挟み型の形態を有している、
請求項5記載の投票用紙交付装置。
【請求項7】
前記基準指標物は、交付予定の正規の投票用紙自体であり、又は、交付予定の正規の投票用紙と同じ色情報を有する物品である、
請求項1~6のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項8】
前記選挙種別入力手段は、前記装置本体内に設けられた選挙種別指定スイッチ、又は、前記装置本体とは別体であり且つ前記装置本体に接続されたコントローラ部に設けられた選挙種別指定スイッチ、を備えている、
請求項1~6のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項9】
前記選挙種別入力手段は、選挙種別の識別コードが付された選挙種別表示板から、前記識別コードを読み取る、選挙種別識別コード読取センサーを、備えている、
請求項1~6のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項10】
前記開閉蓋を開く度に、前記投票用紙の色情報を前記カラーセンサーで読み取る作業を、操作者に案内するアナウンスを、報知する、報知部を、更に備えている、
請求項1~9のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項11】
前記読取色情報設定部を非作動状態に設定できる、読取非作動設定手段を、更に備えている、
請求項1~10のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項12】
前記データテーブルに記憶されている前記正規色情報を、任意の別の正規色情報に変更できる、正規色情報変更手段を、更に備えている、
請求項1~11のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項13】
前記投票用紙の前記色情報は、選挙種別毎に特定されている、
請求項1~12のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投票用紙を投票者に交付するための投票用紙交付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、選挙においては、投票用紙交付装置が用いられている。投票用紙交付装置は、多数枚の投票用紙を収容しており、操作者がスイッチを押す度に、投票用紙を1枚ずつ送り出すようになっている。送り出された投票用紙は、操作者が抜き取って選挙人に手渡したり選挙人が自ら抜き取ったりすることによって、選挙人に交付される。それ故、投票用紙交付装置は、投票用紙を1枚ずつ確実に選挙人に交付でき、また、交付した投票用紙の枚数を正確に計数できるので、投票用紙の管理事務の効率化に役立っている。
【0003】
ところで、複数の選挙が同時に実施される場合には、投票用紙は、複数種別あり、種別毎に、対応する投票用紙交付装置にセットされる。その際、投票用紙交付装置に、誤った種別の投票用紙をセットしてしまうと、投票用紙の誤交付が生じる。
【0004】
このような投票用紙の誤交付を防止するために、本願出願人は、種々の投票用紙交付装置を提案している(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-215218号公報
【文献】特開2015-146114号公報
【文献】特開2016-091373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の投票用紙交付装置では、特別な識別コードを投票用紙に予め印刷しておく必要がある。それ故、この装置は、準備作業が大掛かりとなり、実用化には至っていない。一方、特許文献2、3の投票用紙交付装置は、投票用紙の種別の目視確認を操作者に促すことができる。これらの装置によれば、投票用紙交付装置に誤った種別の投票用紙をセットしてしまうことを、有効に防止できる。
【0007】
ところで、近年、選挙種別毎に、異なる色の投票用紙が使用されることがある。例えば、「参議院比例代表選挙」は「白色」、「衆議院小選挙区選挙」は「ピンク色」、「衆議院比例代表選挙」は「あさぎ色」等である。このように選挙種別と色とが対応付けられていれば、投票用紙の色を確認の対象要素とすることによって投票用紙の誤交付を容易且つ確実に防止できることが、期待される。
【0008】
本発明は、投票用紙の色を自動で確認することによって投票用紙の誤交付を効果的に防止できる、投票用紙交付装置を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の投票用紙交付装置は、開閉蓋を有する装置本体内に、複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、を備えている、投票用紙交付装置において、(1)前記装置本体外に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、(2a)前記カラーセンサーで読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、又は、(2b)選挙種別を入力する選挙種別入力手段、複数の選挙種別の各々に対応した正規色情報を、記憶している、データテーブル、及び、前記選挙種別入力手段によって入力された選挙種別に基づいて、該選挙種別に対応する正規色情報を、前記データテーブルから取得する、正規色情報取得部と、(3)前記カラーセンサーで読み取られた、前記収容部に収容する前の前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、(4)前記正規色情報設定部によって設定された又は前記正規色情報取得部によって取得された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容部に収容する前の投票用紙の色情報を、交付予定の正規の投票用紙の正規色情報と比較し、両者が一致しない場合には、当該投票用紙を収容部に収容するのを中止できるので、間違った投票用紙が交付されるのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の投票用紙交付装置の外観斜視図である。
【
図3】上カバーが開いた状態の装置本体の外観斜視図である。
【
図5】作業検知センサーのオン状態を示す断面略図である。
【
図6】作業検知センサーのオフ状態を示す断面略図である。
【
図7】選挙種別指定スイッチを含むコントローラ部背面のスイッチ群を示す図である。
【
図8】データテーブルに記憶させるデータを示す図である。
【
図9】カラーセンサーの別の例を示す斜視図である。
【
図10】カラーセンサーが外壁に設けられた例を示す側面図である。
【
図12】別の例の作業検知センサーのオン状態を示す断面略図である。
【
図13】別の例の作業検知センサーのオフ状態を示す断面略図である。
【
図14】選挙種別入力手段の別の例である選挙名プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の投票用紙交付装置は、選挙種別毎に特定された色情報を有する投票用紙を交付する際に、有効に使用できる。よって、実施形態で用いる投票用紙は、選挙種別毎に特定された色情報を有している。なお、投票用紙の「色情報」は、RGBカラーモデルにおける、R値、G値、及びB値によって、規定されている。
【0013】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態の投票用紙交付装置の外観斜視図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。この交付装置10は、装置本体1とコントローラ部9とからなっている。ここでは、装置本体1とコントローラ部9とは、別体に設けられている。
【0014】
(装置本体)
装置本体1は、略直方体形状の筐体であり、上カバー(開閉蓋)111を有している。
図3は、上カバー111が開いた状態の装置本体1の外観斜視図である。上カバー111は、装置本体1の上壁11の略後半部と後壁15の上部とが一体となって構成されている。上カバー111は、前縁部112を支点として、上下に回動することにより、開閉するようになっている。
【0015】
装置本体1は、内部に、複数枚の投票用紙Pを収容する収容部2と、収容部2において最前端に位置する1枚の投票用紙Pを、収容部2から取り出して、搬送路31を通して搬送して、用紙取出口32から交付させる、用紙交付機構3と、用紙交付機構3の途中から、搬送中の投票用紙Pを回収する、回収機構4と、回収された投票用紙Pを収容する回収部5と、を有している。上カバー111は、回収部5の一部及び収容部2の全部を覆っている。上カバー111は、外部から収容部2を視認できるように構成されており、具体的には、透明に形成されている。
【0016】
装置本体1は、後壁15の片隅に、電源103(
図4)からの通電をオン・オフする電源スイッチ101と、電源へのコネクタ102と、を有している。更に、装置本体1は、装置全体の作動を制御する制御部7(
図4)を有している。
図4は、制御部7を含む交付装置10のブロック図である。制御部7は、CPU、ROM、RAM等により、実現されている。
【0017】
(コントローラ部)
コントローラ部9は、コード91を介して、装置本体1の制御部7に接続されており、制御部7に制御信号を送信するようになっている。コントローラ部9は、操作キー92、93、表示パネル94、確認スイッチ95、及び消音スイッチ96等を、有している。
【0018】
確認スイッチ95は、押されることによってオンするようになっている。また、確認スイッチ95は、表示ランプを構成するLEDと一体となっている。LEDとしては、白色LEDが好ましく用いられている。
【0019】
(収容部)
収容部2は、複数枚の投票用紙Pを収容する空間として構成されており、立壁21と底壁22と両側壁23とで囲まれている。立壁21は、上部が前になるように少し傾斜しており、収容部2と用紙交付機構3とを隔てている。底壁22は、用紙交付機構3に向けて少し低くなるように傾斜している。投票用紙Pは、
図2に示されるように、立壁21に沿うように立てた状態で、且つ、立壁21側から重ねた状態で、すなわち、縦積み形式で積載された状態で、収容部2に収容される。底壁22には、収容された投票用紙Pを立壁21に向けて押し付ける押さえ部材25が設けられている。押さえ部材25は、透明な板体であり、前後方向(矢印Y方向)に移動可能に設けられており、スプリング26によって立壁21側へ常時付勢されている。
【0020】
(用紙交付機構)
用紙交付機構3は、操作キー92又は93を1回オンすると、次のように1回作動するようになっている。すなわち、
図2に示されるように、まず、取出ローラ331及び捌き部材332によって、収容部2において最前端に位置している投票用紙Pが、収容部2から取り出され、搬送路31へ送り出される。このとき、偏心ローラ333が、立壁21から収容部2内へ周期的に突出するように回転して、重なっている投票用紙Pを揺動させるので、投票用紙P同士の間に隙間が生じ、1枚の投票用紙Pが取り出しやすくなる。搬送路31に送り出された投票用紙Pは、搬送ローラ341、342、343によって、用紙取出口32まで搬送される。投票用紙Pは、抜き取り検出部材351を回動させながら搬送されて、用紙取出口32から突出し、回動から復帰した抜き取り検出部材351によって、下部が押さえられ、これによって、一部が用紙取出口32から突出した状態で止まる。なお、抜き取り検出部材351は、スプリング(図示せず)によって復帰方向に常時付勢されている。そして、次の投票用紙Pの先端が1対の用紙先端検出センサー361によって検知されると、全てのローラの作動が停止する。次いで、用紙取出口32から突出した投票用紙Pが、投票者によって抜き取られると、抜き取り検出部材351の回動がセンサー362によって検知され、装置本体1の前部に内蔵されたスピーカー62から選挙種別の名前等を告げる音声が流れる。
【0021】
(回収機構)
回収機構4は、搬送路31内に突出するように回動可能な排除ガイド部材41を、備えている。排除ガイド部材41は、搬送路31内に突出するように回動すると、搬送ローラ343との間に、搬送路31と回収部5とを連通させる通路40を構成し、それによって、搬送されて来る投票用紙Pを搬送路31から回収部5へ逃がすようになっている。なお、排除ガイド部材41は、例えば、投票用紙Pの重なりが用紙先端検出センサー361によって検知されると、回動して搬送路31内に突出するように、制御部7によって制御されている。それ故、回収機構4によれば、重なった投票用紙Pが用紙取出口32から突出するのを防止できる。
【0022】
(回収部)
回収部5は、通路40を搬送されて来た投票用紙Pが積載されていく空間として構成されており、底壁51と両側壁53とで囲まれている。底壁51は、後方向に高くなるように傾斜している。両側壁53は、例えば、収容部2を構成している両側壁23と同じ壁である。
【0023】
(照明具)
装置本体1は、内部に、照明具61を有している。照明具61は、上カバー111の前縁部112の内面に、設けられており、上カバー111が閉じた状態で、収容部2及び回収部5を照らすように、配置されている。照明具61としては、演色性が優れているという観点から、白色LED又は白色系電球が好ましく用いられている。
【0024】
(カラーセンサー)
コントローラ部9には、ケーブル99を介して、カラーセンサー81が接続されている。カラーセンサー81は、スティック型の形態を有しており、先端に対象物をかざすことにより、対象物の色情報を読み取ることができる。なお、カラーセンサー81は、専用のフォトICによっても構成でき、又は、複数色のLED及びフォトトランジスタによっても構成できる。
【0025】
(制御部)
制御部7は、データ設定部71、正規色情報取得部79、読取色情報設定部73、判定部74、交付中止部75、及び報知部78等を、有している。
【0026】
(報知部)
報知部78は、上カバー111を開く度に、投票用紙の色情報をカラーセンサー81で読み取る作業を、操作者に案内するアナウンスを、スピーカー62から報知するようになっている。
【0027】
なお、上カバー111の開閉は、例えば、次のような作業検知センサー65によって検知される。作業検知センサー65は、
図5及び
図6に示されるように、上カバー111の前縁部112付近に設けられている。作業検知センサー65は、スイッチ本体651とアクチュエータ652と操作体653とからなるマイクロスイッチで構成されている。操作体653は、上カバー111の前縁部112の回動軸と共に回動するように、前縁部112に固定されている。作業検知センサー65は、上カバー111が閉じている時は、
図5に示されるように、操作体653がアクチュエータ652を押した状態、すなわち、オン状態であり、上カバー111が開いている時は、
図6に示されるように、操作体653がアクチュエータ652から離れた状態、すなわち、オフ状態である。これにより、作業検知センサー65は、上カバー111の開閉をオン・オフで検知するようになっている。
【0028】
(記憶部)
制御部7には、記憶部77が接続されている。記憶部77は、複数種類の選挙種別の名前と各選挙種別に対応した色情報すなわち正規色情報とを記憶するためのデータテーブル771を有している。
【0029】
(選挙種別入力手段)
選挙種別入力手段は、コントローラ部9に設けられた選挙種別指定スイッチを、備えている。具体的には、
図7に示されるように、コントローラ部9の背面には、種々のスイッチが設けられている。スイッチ901は、有権者数を入力すると表示パネル94に投票率を表示させる「有権者数スイッチ」である。スイッチ902は、都道府県及び区市町村を選択する「使用地域スイッチ」である。スイッチ904は、アナウンスを許可するか否かを選択する「アナウンス許否スイッチ」である。スイッチ905は、アナウンサーの性別及びアナウンスのタイミングを選択する「アナウンススイッチ」である。スイッチ906は、音量を小さくする「音量-スイッチ」である。スイッチ907は、音量を大きくする「音量+スイッチ」である。スイッチ908は、投票用紙の枚数表示を「0」にする「クリアスイッチ」である。スイッチ909は、用紙の種別を登録する「用紙設定スイッチ」である。そして、スイッチ903が、選挙種別を選択して指定する「選挙種別指定スイッチ」である。
【0030】
[作動]
次に、上記構成の交付装置10の作動について、説明する。
【0031】
(1)データ設定作業
データ設定作業は、データテーブル771に、複数種類の選挙種別の名前と各選挙種別に対応した正規色情報とを記憶させる。例えば、
図8に示されるようなデータを記憶させる。このデータは、第1~第5選挙種別の名前と、第1~第5選挙種別に対応した第1~第5正規色情報と、を含んでいる。正規色情報は、所定範囲のR値と、所定範囲のG値と、所定範囲のB値とによって、規定されている。すなわち、
図8において、第1選挙種別に対応する第1正規色情報は、V1~V2のR値と、V3~V4のG値と、V5~V6のB値とによって、規定されており、第2~第5選挙種別に対応した第2~第5正規色情報も、それぞれ、同様である。データ設定作業は、具体的には、次の(a)又は(b)のように行う。なお、以下では、
図8のデータを記憶させる場合について説明する。
【0032】
(a)まず、選挙種別に対応した色情報を有する基準紙を、選挙種別毎に用意する。すなわち、第1~第5選挙種別に対応した第1~第5基準紙を用意する。なお、色情報は、R値とG値とB値とによって規定されている。次に、電源スイッチ101をオンして、第1~第5基準紙の色情報を、それぞれ、カラーセンサー81に、読み取らせる。そうすると、データ設定部71が、読み取られた第1~第5基準紙の色情報に基づいて第1~第5正規色情報をそれぞれ算出し、算出した第1~第5正規色情報を対応する第1~第5選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させる。
【0033】
(b)まず、代表的な選挙種別に対応した色情報を有する基準紙1枚のみを、用意する。すなわち、例えば、第1選挙種別に対応した第1基準紙を用意する。なお、色情報は、R値とG値とB値とによって規定されている。次に、電源スイッチ101をオンして、第1基準紙の色情報を、カラーセンサー81に、読み取らせる。そうすると、データ設定部71が、読み取られた第1基準紙の色情報に基づいて第1正規色情報を算出し、算出した第1正規色情報を対応する第1選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させるとともに、読み取られた第1基準紙の色情報に基づいて第2~第5正規色情報をそれぞれ算出し、算出した第2~第5正規色情報を対応する第2~第5選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させる。
【0034】
なお、データ設定作業は、通常は、工場出荷時に行う。よって、上記作業が終了すると、操作者は、電源スイッチ101をオフして、交付装置10を梱包する。
【0035】
(2)初期設定作業
交付装置10を開梱した操作者は、まず、初期設定作業を行う。初期設定作業は、交付装置10によって交付する正規の投票用紙の「選挙種別」及び「正規色情報」を特定する。
【0036】
(2-1)操作者は、装置本体1の電源スイッチ101をオンする。そうすると、設定作業の案内音声がスピーカー62から流れ始める。
【0037】
(2-2)まず、「選挙種別指定スイッチ903を押して選挙種別を選択し、確認スイッチ(SW)を押して下さい」との案内音声が流れる。操作者は、案内音声に従って、選挙種別指定スイッチ903を押して選挙種別を選択した後、確認スイッチ95を押す。
【0038】
確認スイッチ95が押されると、正規色情報取得部79が、作動する。正規色情報取得部79は、選挙種別指定スイッチ903によって選択された選挙種別に基づいて、当該選挙種別に対応する正規色情報を、データテーブル771から取得する。これにより、この交付装置10によって交付する投票用紙の「選挙種別」及び「正規色情報」が特定される。
【0039】
(2-3)そして、例えば選挙種別として「参議院比例代表」を選定している場合には、「参議院比例代表を選定」及び「正しければ確認スイッチを押して下さい」との案内音声が流れる。操作者が確認スイッチ95を押すと、初期設定作業が終了する。
【0040】
(3)交付作業
(3-1)確認スイッチ95が押されると、「上カバーを開けて下さい」との案内音声が流れる。案内音声に従って、操作者が、上カバー111を開けると、作業検知センサー65及び報知部78が作動して、「これからセットする投票用紙に、センサーをかざして下さい」との案内音声が流れる。
【0041】
(3-2)案内音声に従って、操作者が、投票用紙にカラーセンサー81をかざすと、カラーセンサー81、読取色情報設定部73、判定部74、及び交付中止部75が作動する。カラーセンサー81は、かざされた投票用紙の色情報を読み取る。読取色情報設定部73は、カラーセンサー81によって読み取られた投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する。判定部74は、正規色情報取得部79によって取得された正規色情報と、読取色情報設定部73によって設定された読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する。なお、判定部74は、読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれない場合には「不一致」と判定し、含まれる場合には「一致」と判定する。交付中止部75は、判定部74による判定結果が「不一致」である場合に、例えば用紙交付機構3の作動を中止することによって、交付作動を中止するとともに、コントローラ部9の表示パネル94に「用紙が間違っています」と表示したりスピーカー62から「用紙が間違っています」と報知したりすることによって警告を発する。
【0042】
(3-3a)判定部74による判定結果が「不一致」である場合とは、初期設定作業によって選定された選挙種別とは異なる投票用紙をセットしようとしている場合である。その場合には、操作者は、セットしようとしている投票用紙が間違っていることに気付かされるので、投票用紙のセットを中止できる。更に、仮に投票用紙をセットしたとしても、交付作動が中止されているので、間違った投票用紙は交付されない。
【0043】
(3-3b)判定部74による判定結果が「一致」である場合とは、初期設定作業によって選定された選挙種別と同じ投票用紙をセットしようとしている場合である。その場合には、「白いレバーを突きあたりまで引いて下さい」及び「用紙をよくさばいてセットして下さい」の案内音声が流れる。操作者は、案内音声に従って、上カバー111を開けて、投票用紙を収容部2に積載し、その後、上カバー111を閉じる。操作者は、投票用紙が間違っていないことを認識できているので、安心して、投票用紙をセットすなわち収容部2に収容できる。なお、レバーは、押さえ部材25である。そして、操作者は、交付作業を開始する。すなわち、操作者は、投票者が一人来ると、操作キー92又は93を1回オンする。このとき、投票者が男性の場合には男性用の操作キー92をオンし、投票者が女性の場合には女性用の操作キー93をオンする。
【0044】
[効果]
上記構成の交付装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0045】
(a)投票用紙をセットする前に、投票用紙の正誤、すなわち、投票用紙が交付装置10の交付予定の正規の投票用紙であるか否か、を判断できるので、間違った投票用紙がセットされるのを防止できる。
【0046】
(b)仮に間違った投票用紙がセットされたとしても、交付中止部75によって交付作動は中止されているので、間違った投票用紙が交付されるのを防止できる。
【0047】
(c)判定部74は、読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれるか否かによって、判定するので、融通のある判定を実行できる。例えば、時間の経過に起因して、投票用紙が僅かに色褪せたりカラーセンサー81の感度が僅かに変動したりした場合でも、判定部74は、そのような僅かな差異に捕らわれることなく、正当な判定結果を得ることができる。
【0048】
(d)正規色情報取得部79は、正規色情報を、データテーブル771から取得するので、作業性良く取得できる。
【0049】
(e)基準紙をカラーセンサー81にかざすだけでデータ設定作業を実行できるので、作業性を向上できる。
【0050】
[変形構成]
上記構成の交付装置10は、次のような変形構成を採用してもよい。
【0051】
(i)制御部7が、正規色情報取得部79に代えて、正規色情報設定部を、有している。正規色情報設定部は、カラーセンサー81で読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定するようになっている。これによれば、選挙種別入力手段及びデータテーブルを、不要にできる。なお、基準指標物は、交付予定の正規の投票用紙自体である。又は、基準指標物は、交付予定の正規の投票用紙と同じ色情報を有しており、例えば、正規の投票用紙と同じ素材の指標用紙が薄板に貼り付けられて構成されている。
【0052】
(ii)カラーセンサー81が、ケーブルを介して、装置本体1に直接に接続されている。
【0053】
(iii)カラーセンサー81が、
図9に示されるような用紙挟み型の形態を、有している。これによれば、投票用紙を先端上部815と先端下部816とで挟むことにより、投票用紙の色情報を読み取ることができるので、安定した読取を実行できる。
【0054】
(iv)カラーセンサー81が、装置本体1の外壁に直接固定されている。具体的には、
図10及び
図10のXI-XI断面図である
図11に示されるように、カラーセンサー81が、装置本体1の一方の側壁23の内部に、設けられている。側壁23の外面には、カラーセンサー81用の小窓818が形成されている。カラーセンサー81は、小窓818の前にかざされた投票用紙の色情報を、読み取ることができる。これによれば、ケーブルを介してカラーセンサーを設ける必要がないので、交付装置10の全体構成を簡素化できる。
【0055】
(v)上カバー111の開閉が、次のような作業検知センサー67によって検知される。作業検知センサー67は、
図12及び
図13に示されるように、上カバー111の前縁部112付近に設けられている。作業検知センサー67は、遮光部671とフォトインタラプタ672とで構成されている。遮光部671は、上カバー111の前縁部112の回動軸と共に回動するように、前縁部112に固定されている。作業検知センサー67は、上カバー111が閉じている時は、
図12に示されるように、遮光部671がフォトインタラプタ672を遮光した状態、すなわち、オン状態であり、上カバー111が開いている時は、
図13に示されるように、遮光部671がフォトインタラプタ672を遮光していない状態、すなわち、オフ状態である。これにより、作業検知センサー67は、上カバー111の開閉をオン・オフで検知するようになっている。
【0056】
(vi)選挙種別入力手段が、装置本体1内に設けられた選挙種別指定スイッチを、備えている。この選挙種別指定スイッチは、
図7の選挙種別指定スイッチ903と同じ機能を有しており、例えば、立壁21又は一方の側壁23に、設けられている。
【0057】
(vii)選挙種別入力手段が、選挙種別の識別コードが付された選挙種別表示板から、識別コードを読み取る、選挙種別識別コード読取センサーを、備えている。具体的には、次のとおりである。
図14は、選挙名プレート(選挙種別表示板)8を示している。選挙名プレート8の表面801には、選挙名、例えば「参議院比例代表選挙」が印刷されている。選挙名プレート8の裏面802には、4個の識別符号用印刷領域821、822、823、824が設定されており、4個の識別符号用印刷領域821、822、823、824は、例えば、白黒の4ビットの符号に色分けされる。このように、識別符号が印刷された領域の組み合わせによって、「選挙種別」が選択されるようになっている。一方、装置本体1の前面の上部には、選挙名プレート用取付面85(
図1)が設けられており、取付面85には、識別符号を検知するための選挙種別識別コード読取センサーである4個の反射型センサー(図示せず)が設けられている。4個の反射型センサーは、選挙名プレート8が取付面85に取り付けられた際に4個の領域821、822、823、824のそれぞれに対向するように、配置されている。したがって、選挙名プレート8が取付面85に取り付けられると、4個の領域821、822、823、824の内の、識別符号が印刷された領域の組み合わせが、反射型センサーによって検知され、これにより、この交付装置10で交付する投票用紙の「選挙種別」が選択される。そして、上述した選挙種別指定スイッチ903の場合と同様に、「選挙種別」が選択されると、確認スイッチ95が押されることにより、正規色情報取得部79が作動し、選挙名プレート8によって選択された「選挙種別」に基づいて、当該選挙種別に対応する正規色情報がデータテーブル771から取得される。これにより、この交付装置10で交付する投票用紙の「選挙種別」及び「正規色情報」が特定される。
【0058】
なお、この選挙種別入力手段は、上述した選挙種別指定スイッチすなわちコントローラ部9の背面の選挙種別指定スイッチ903及び/又は装置本体1内に設けられた選挙種別指定スイッチと併用するのが好ましい。
【0059】
また、選挙名プレートとして、種々の選挙種別の表示を有さないで単に「投票用紙交付装置」という表示を有するプレートを、付属品として用意してもよい。該プレートも、ユーザーの希望に応じて取付面85に取付可能となっている。但し、この場合は、選挙種別入力手段が別途必要になる。
【0060】
(viii)投票用紙が、収容部2において平積み形式で積載されて収容されている。これによっても、上記構成の交付装置10と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(ix)読取色情報設定部を非作動状態に設定できる、読取非作動設定手段を、更に備えている。読取非作動設定手段は、具体的には、
図7に示されるようなコントローラ部9の背面のスイッチ群によって構成されている。すなわち、読取非作動設定手段は、電源スイッチ101をオフからオンにした状態で、スイッチ905を長押してサービスマンモードに入り、更にスイッチ901、902を押すことによって、「読取の作動/非作動」モードに入って非作動を選択することによって、実行される。これによれば、投票用紙が色情報を有していない選挙にも、交付装置10を有効に使用できる。
【0062】
(x)データテーブル771に記憶されている正規色情報を、任意の別の正規色情報に変更できる、正規色情報変更手段を、更に備えている。正規色情報変更手段は、具体的には、
図7に示されるようなコントローラ部9の背面のスイッチ群によって構成されている。すなわち、正規色情報変更手段は、電源スイッチ101をオフからオンにした状態で、スイッチ905を長押してサービスマンモードに入り、更にスイッチ901、902を押すことによって、「正規色情報再登録」モードに入って設定することによって、実行される。これによれば、データ設定作業が終了している交付装置10を、急遽、予定していない選挙に使用する場合に、容易に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の投票用紙交付装置は、間違った投票用紙が交付されるのを確実に防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0064】
1 装置本体
2 収容部
3 用紙交付機構
73 読取色情報設定部
74 判定部
75 交付中止部
771 データテーブル
79 正規色情報取得部
10 投票用紙交付装置
81 カラーセンサー
903 選挙種別指定スイッチ
99 ケーブル