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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220331BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018154678
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020031468
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】302038844
【氏名又は名称】東芝シュネデール・インバータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 占強
(72)【発明者】
【氏名】有馬 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】計良 尚志
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-42076(JP,A)
【文献】特開2017-225254(JP,A)
【文献】特開平9-47039(JP,A)
【文献】特開2018-125955(JP,A)
【文献】特開2013-46195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0205097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続されたスイッチング素子を備え、該スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電圧源の直流電圧を任意の振幅及び周波数の相電圧に変換し、ケーブルを介して接続されている電動機に出力するインバータと、
前記相電圧と前記直流電圧との電圧比である変調率を演算して出力する変調率演算部と、
前記変調率と前記相電圧の位相とに基づいて3相の指令信号を出力する指令信号生成部と、
前記指令信号と搬送波信号とを比較して、前記スイッチング素子をスイッチング制御する信号を発生させる信号発生部と、
前記電動機に流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記インバータの出力電圧値と前記電流検出器により検出された電流値との関係から、前記ケーブルの長さを予測するケーブル長予測部と、
前記インバータが出力する線間電圧が一方の極性から他方の極性に反転するまでに確保すべき時間である最小離間時間と前記ケーブルの長さとの関係が、予め記憶されている記憶部と、
前記ケーブル長予測部により予測されたケーブルの長さと前記記憶部に記憶されている関係とに基づいて、前記最小離間時間を決定する時間決定部とを備える電力変換装置。
【請求項2】
ブリッジ接続されたスイッチング素子を備え、該スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電圧源の直流電圧を任意の振幅及び周波数の相電圧に変換し、ケーブルを介して接続されている電動機に出力するインバータと、
前記相電圧と前記直流電圧との電圧比である変調率を演算して出力する変調率演算部と、
前記変調率と前記相電圧の位相とに基づいて3相の指令信号を出力する指令信号生成部と、
前記指令信号と搬送波信号とを比較して、前記スイッチング素子をスイッチング制御する信号を発生させる信号発生部と、
前記電動機に流れる電流値を検出する電流検出器と、
前記インバータの出力電圧値と前記電流検出器により検出された電流値との関係から、前記ケーブルの長さを予測するケーブル長予測部と、
前記ケーブルを介して出力される電圧の波高値が許容値まで低下する時間である減衰時間を演算するための減衰比定数及び減衰振動周波数定数と前記ケーブルの長さとの関係が予め記憶されている記憶部と、
前記ケーブル長予測部により予測されたケーブルの長さと前記記憶部に記憶されている減衰比定数及び減衰振動周波数定数とに基づいて、ケーブル減衰時間を演算するケーブル時間演算部と、
前記ケーブル減衰時間に基づいて、前記インバータが出力する線間電圧が一方の極性から他方の極性に反転するまでに確保すべき最小離間時間を決定する最小離間時間決定部とを備える電力変換装置。
【請求項3】
前記ケーブル長予測部は、
前記インバータと前記電動機とが、長さが基準配線長よりも十分短い第1ケーブルで接続された状態で、前記電流検出器により検出された電流値に基づいて測定された電流値から第1抵抗値を測定し、
前記インバータと前記電動機とが、前記基準配線長よりも長い第2ケーブルで接続された状態で、前記電流検出器により検出された電流値に基づいて測定された電流値から第2抵抗値を測定し、
前記第1抵抗値と前記第2抵抗値とから前記ケーブルの長さを予測する請求項1又は2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記基準配線長は30mであり、前記第1ケーブルの長さは10m未満である請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記最小離間時間と前記変調率とに基づいて、前記搬送波信号の周波数の最大値を決定する周波数決定部を備える請求項1から4の何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記最小離間時間に基づいて、前記搬送波信号の周波数の最大値を決定する周波数決定部を備える請求項1から4の何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記最小離間時間と前記周波数の最大値とに基づいて、前記変調率の最大値を決定する変調率決定部を備える請求項6記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ケーブル長に応じた電圧降下値を算出する電圧降下算出部を備え、
前記指令信号生成部は、前記指令信号に、前記電圧降下値に相当する指令値を加算する請求項1から7の何れか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータを備える電力変換装置には、線間電圧の極性を切り換える際にスイッチング電圧よりも高いサージ電圧が発生するため、電動機の絶縁特性を劣化させるという課題がある。図11は、特許文献1の図4相当図であり、線間電圧の極性を切り換えるタイミングで、スイッチング電圧の約4倍となるサージ電圧が発生している。
【0003】
この問題点を解決するため、特許文献1では、PWM指令に基づくパルス幅が最小パルス幅の設定値より短い場合に、そのパルス幅を拡げる構成を採用している。最小パルス幅の設定は、インバータと電動機とを接続するケーブルの長さに応じた最小離間時間により定めている。また、最小離間時間は、ケーブルの長さによる電圧減衰時間の1/2としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-42076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、インバータと電動機とを接続するケーブルの長さを事前に測定しておくことで最小離間時間を設定している。しかしながら、例えば、インバータが室内に設置され電動機が室外に設置されている場合のように、両者が同じ場所に設置されておらずケーブルの長さが未知の場合には、その長さを測定することが困難になり最小離間時間が設定できない場合がある。
そこで、サージ電圧を抑制するための最小離間時間の決定に必要な、インバータと電動機とを接続するケーブルの長さを演算できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の電力変換装置は、ブリッジ接続されたスイッチング素子を備え、該スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電圧源の直流電圧を任意の振幅及び周波数の相電圧に変換し、ケーブルを介して接続されている電動機に出力するインバータと、前記相電圧と前記直流電圧との電圧比である変調率を演算して出力する変調率演算部と、前記変調率と前記相電圧の位相とに基づいて3相の指令信号を出力する指令信号生成部と、前記指令信号と搬送波信号とを比較して、前記スイッチング素子をスイッチング制御する信号を発生させる信号発生部と、前記電動機に流れる電流値を検出する電流検出器と、前記インバータの出力電圧値と前記電流検出器により検出された電流値との関係から、前記ケーブルの長さを予測するケーブル長予測部と、前記インバータが出力する線間電圧が一方の極性から他方の極性に反転するまでに確保すべき時間である最小離間時間と前記ケーブルの長さとの関係が、予め記憶されている記憶部と、前記ケーブル長予測部により予測されたケーブルの長さと前記記憶部に記憶されている関係とに基づいて、前記最小離間時間を決定する時間決定部とを備える。
【0007】
請求項2記載の電力変換装置は、ブリッジ接続されたスイッチング素子を備え、該スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電圧源の直流電圧を任意の振幅及び周波数の相電圧に変換し、ケーブルを介して接続されている電動機に出力するインバータと、前記相電圧と前記直流電圧との電圧比である変調率を演算して出力する変調率演算部と、前記変調率と前記相電圧の位相とに基づいて3相の指令信号を出力する指令信号生成部と、前記指令信号と搬送波信号とを比較して、前記スイッチング素子をスイッチング制御する信号を発生させる信号発生部と、前記電動機に流れる電流値を検出する電流検出器と、前記インバータの出力電圧値と前記電流検出器により検出された電流値との関係から、前記ケーブルの長さを予測するケーブル長予測部と、前記ケーブルを介して出力される電圧の波高値が許容値まで低下する時間である減衰時間を演算するための減衰比定数及び減衰振動周波数定数と前記ケーブルの長さとの関係が予め記憶されている記憶部と、前記ケーブル長予測部により予測されたケーブルの長さと前記記憶部に記憶されている減衰比定数及び減衰振動周波数定数とに基づいて、ケーブル減衰時間を演算するケーブル時間演算部と、前記ケーブル減衰時間に基づいて、前記インバータが出力する線間電圧が一方の極性から他方の極性に反転するまでに確保すべき最小離間時間を決定する最小離間時間決定部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態であり、電力変換装置の構成を示す機能ブロック図
図2】制御装置による処理内容を示すフローチャート
図3】ケーブルの種類に応じた導体抵抗Rの一例を示す図
図4】ケーブル長Lと最小離間時間Tminとの関係を示す図
図5】第2実施形態であり、電力変換装置の構成を示す機能ブロック図
図6】制御装置による処理内容を示すフローチャート
図7】時間の経過に伴いサージ電圧が減衰する状態を示す図
図8】第3実施形態であり、電力変換装置の構成を示す機能ブロック図
図9】第4実施形態であり、電力変換装置の構成を示す機能ブロック図
図10】第5実施形態であり、電力変換装置の構成を示す機能ブロック図
図11】特許文献1の図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、電力変換装置1は、インバータ2及び制御装置3を備えている。インバータ2は、スイッチング素子である例えばIGBT4を三相ブリッジ接続して構成されている。IGBT4には、フリーホイールダイオード5が逆並列に接続されている。インバータ2には、直流電源6より駆動用電源が供給される。インバータ2の各相出力端子は、ケーブル7を介して電動機8の各相巻線端子にそれぞれ接続されている。
【0010】
電流検出器9は、例えば電流センサであり、インバータ2より電動機8の各相巻線に通電される相電流Iu,Iv,Iwを検出して、制御装置3のケーブル長演算部10に入力する。ケーブル長演算部10は、インバータ3が電動機8に印加する相電圧Vu,Vv,Vwや、相電流Iu,Iv,Iw等からケーブル7の長さLを演算して記憶部11に入力する。
【0011】
記憶部11には、図4に示すように、ケーブル7の長さLと、インバータ2が出力する線間電圧が正極性のVdcから負極性の-Vdcに反転するまでに確保すべき最小離間時間Tminとの関係を示すデータが予め書き込まれている。そして、ケーブル長演算部10よりケーブル7の長さLが入力されると、上記データに従い決定した最小離間時間Tminを駆動信号生成部12に出力する。記憶部11は時間決定部にも相当する。
【0012】
変調率演算部13は、直流電源6の電圧と、外部より入力される相電圧振幅指令値とに基づいて変調率αを演算し、指令信号生成部14に出力する。指令信号生成部14は、外部より入力される相電圧位相と変調率αとに基づいて三相電圧指令Vu,Vv,Vwを生成し、駆動信号生成部12に出力する。駆動信号生成部12は、例えば三角波である搬送波信号と三相電圧指令Vu,Vv,Vwとを比較してPWM信号を駆動信号として生成する。駆動信号は、ドライブ回路15を介してインバータ2の各IGBT4のゲートに出力される。
【0013】
次に、本実施形態の作用について説明する。図2は、制御装置3におけるケーブル長演算部10による処理内容を中心に示すフローチャートである。先ず、PWM信号の最小出力パルス幅を制限する動作モードか否かを判断し(S1)、パルス幅を制限しない場合は(NO)そのまま電力変換装置1としての通常の操作を行う(S2)。最小出力パルス幅を制限する場合は(YES)ステップS3に移行する。
【0014】
ステップS3では、使用されているケーブル7の種類を初期設定する。図3に3心シールド線の一例を示すように、ケーブルの導体抵抗R[Ω/m]は製品に応じて異なる。ケーブル長演算部10は、図3に示すテーブルを予め記憶しており、そのテーブルに基づいてケーブル7の種類に対応した導体抵抗Rを設定する。それから、ケーブル7の抵抗値Rの演算を開始する(S4)。
【0015】
抵抗値Rは、以下のようにして求める。
(1)先ず、電動機8の巻線抵抗Rを求めるため、インバータ2と電動機8との間を、基準配線長よりも十分短いケーブルで接続する。例えば基準配線長を30mとすると、ケーブル長を10m未満にする。
(2)インバータ2により、電動機8の例えばU-V相間に一定の直流電圧を印加し、この時得られた相電流と前記直流電圧とから求める。
(3)インバータ2と電動機8との間をケーブル7で接続する。ケーブル7の長さは、基準配線長以上とする。
【0016】
(4)インバータ2によって(2)と同様に一定の直流電圧を印加し、この時得られた相電流と前記直流電圧とから、抵抗RLMを求める。
(5)抵抗値Rを、抵抗RLMより巻線抵抗Rを減じて求める。
抵抗値Rを求めると(S5:YES)、ケーブル7の長さLを次式により算出する(S6)。
L=R/R …(1)
【0017】
このように、ケーブル7の抵抗値測定は直流電圧を印加して実施するので、高周波電流が発生せず、自己インダクタンスとケーブルの交流減衰率の関係から、(1)式で求めた長さLは自己インダクタンスによる影響を受けない。そして、ケーブル7の長さLを求めると、ケーブル長演算部10は、その長さLを記憶部11に入力して、最小離間時間Tminを出力させる(S7)。
【0018】
以上のように本実施形態によれば、ケーブル7を介して接続されている電動機8に相電圧を印加するインバータ2と、変調率αを演算して出力する変調率演算部13と、変調率αと相電圧の位相とに基づいて3相の指令信号を出力する指令信号生成部14と、前記指令信号と搬送波信号とを比較して、インバータ2を構成するIGBT4をスイッチング制御するPWM信号を発生させる駆動信号生成部12とを備える。
【0019】
ケーブル長演算部10は、インバータ2の出力電圧値と電流検出器9により検出された電流値との関係からケーブル7の長さLを予測する。記憶部11には、最小離間時間Tminとケーブル7の長さLとの関係が予め記憶されており、記憶部11は、長さLが入力されると最小離間時間Tminを決定して出力する。これにより、インバータ2と電動機8とを接続するケーブル7の長さLを自動的に演算することができる。そして、長さLに基づいて、電動機8を駆動する際の最小離間時間Tminを最適的に設定できる。
【0020】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図5に示すように、第2実施形態の電力変換装置21は、記憶部11に替えて、記憶部22及び減衰時間演算部23を備えている。減衰時間演算部23は、ケーブル時間演算部及び最小離間時間決定部に相当する。
【0021】
図7に示すように、サージ電圧が発生すると、その振幅は時間の経過に伴って次第に減衰する。この場合の減衰比定数ζ及び減衰振動周波数定数ωは、ケーブル7の長さLに依存する。そして、減衰時間をt(s)とすると、これらには(2)式の関係がある。
【0022】
【数1】
【0023】
尚、許容電圧レベルは、電源電圧の10%に設定される。(2)式における各パラメータの値を決定すれば、減衰時間tを求めることができる。
t=-ln(Vtolerance/Vsurge)/(ζω) …(2a)
この場合、最小離間時間Tminは(3)式で求める。
Tmin=t/2 …(3)
【0024】
記憶部22には、ケーブル7の長さLに応じた減衰比定数ζ及び減衰振動周波数定数ωが、予めテーブルとして記憶されている。そして、ケーブル長演算部10よりケーブル長Lが与えられると、定数ζ及びωを読み出して減衰時間演算部23に入力する。減衰時間演算部23は、(2),(3)式より最小離間時間Tminを求めると(図6,S8)、駆動信号生成部12に入力する。
【0025】
以上のように第2実施形態によれば、記憶部22に、ケーブル7を介して出力されるサージ電圧の波高値Vsurgeが許容値Vtoleranceまで低下する時間である減衰時間tを演算するための減衰比定数ζ及び減衰振動周波数定数ωとケーブル7の長Lさとの関係を予め記憶し、減衰時間演算部23は、ケーブル長予測部10により予測されたケーブル長Lと記憶部22に記憶されている定数ζ及びωに基づいて、ケーブル減衰時間tを演算すると、減衰時間tに基づいて最小離間時間Tminを決定する。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0026】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態の電力変換装置31は、補償電圧演算部32を備えている。補償電圧演算部32は、ステップS5で求めたケーブル7の抵抗値Rに基づいて、ケーブル7において発生する電圧降下Vdropを推定し、指令信号生成部33に入力する。指令信号生成部33は、電圧降下Vdropを用いてPWM信号の電圧指令値Vu,Vv,Vwを補償する。これにより、特に低速域において制御性能が悪化することを防止する。補償電圧演算部32は、電圧降下算出部に相当する。
【0027】
電圧降下Vdropは、下記の(4)式により演算する。
drop=K×I×L×Z …(4)
I:電流(A)
Z:ケーブル7のインピーダンス(Ω/m)
K:係数(単相の場合は「2」,三相の場合は「√3」)
【0028】
以上のように第3実施形態によれば、補償電圧演算部32は、ケーブル7の長さLに応じた電圧降下値Vdropを算出し、指令信号生成部33は、電圧指令値Vu,Vv,Vwに、電圧降下値Vdropに相当する指令値を加算して補償する。これにより、制御性能が悪化することを防止できる。
【0029】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態の電力変換装置41は、搬送波周波数制限部42を備えている。搬送波周波数制限部42は、最小離間時間Tminと、変調率αとに基づきPWM制御に用いる搬送波周波数の最大値fcを、下記の(5)式で決定する。
fc≦(1-α)/(4Tmin) …(5)
そして、最大値fcで規定した周波数の搬送波信号を駆動信号生成部12に入力する。搬送波周波数制限部42は、周波数決定部に相当する。
【0030】
以上のように第4実施形態によれば、搬送波周波数制限部42は、最小離間時間Tminと変調率αとに基づいて搬送波信号の周波数の最大値fcを決定するので、PWM制御に用いる搬送波の周波数を適切に制限できる。
【0031】
(第5実施形態)
図10に示すように、第5実施形態の電力変換装置51は、搬送波周波数制限部42に替わる搬送波周波数制限部52と、変調率制限部53とを備えている。搬送波周波数制限部52は、最小離間時間Tminに基づき搬送波周波数の最大値fcを、下記の(6)式で決定する。
fc≦1/(2Tmin) …(6)
そして、変調率決定部に相当する変調率制限部53は、周波数の最大値fcに基づき、(5)式より変調率αの最大値αmaxを決定する。
αmax≦1-4Tmin×fc …(7)
【0032】
以上のように第5実施形態によれば、搬送波周波数制限部52は、最小離間時間Tminに基づいて、PWM制御における搬送波周波数の最大値fcを決定し、変調率制限部53は、最小離間時間Tminと周波数の最大値fcとに基づいて変調率αの最大値αmaxを決定する。これにより、変調率αを適切に制限できる。
【0033】
(その他の実施形態)
配線基準長は、30mに限らない。
第1実施形態において、巻線抵抗Rを求めて抵抗RLMより減じる処理は、要求される制度に応じて行えば良い。
PWM制御の搬送波は、三角波に限らない。
スイッチング素子は、IGBTに限ることなく、MOSFET等でも良い。
各実施形態を、適宜組み合わせて実施しても良い。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
図面中、1は電力変換装置、2はインバータ、3は制御装置、4はIGBT、7はケーブル、8は電動機、9は電流検出器、10はケーブル長演算部、12は駆動信号生成部、13は変調率演算部、14は指令信号生成部、21は電力変換装置、22は記憶部、23は減衰時間演算部、31は電力変換装置、32は補償電圧演算部、33は指令信号生成部、41は電力変換装置、42は搬送波周波数制限部、51は電力変換装置、52は搬送波周波数制限部、53は変調率制限部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11