(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】表面検査装置、部品の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20220331BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G01B11/30 A
(21)【出願番号】P 2018183149
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304650(JP,A)
【文献】特開2010-135872(JP,A)
【文献】特開2014-169988(JP,A)
【文献】特開2002-116015(JP,A)
【文献】特開2005-337857(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105445194(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 5/50
G06T 9/00 - G06T 9/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射し、当該被検査体を予め定められた軸を中心として回転させながら、当該軸の方向と交差する方向から当該被検査体を撮影する撮影手段から、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得部と、
前記画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出部と、
抽出された欠陥を、前記被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成部と、
前記2次元マップの中の欠陥を、前記被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成部と、
前記3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出部と、
を備える表面検査装置。
【請求項2】
前記2次元マップ作成部は、抽出された欠陥を、予め定められた図法で平面上に展開し、前記回転角度に対応する分の位置を補正し重ね合わせることで、前記2次元マップを作成することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記2次元マップ作成部は、前記被検査体の表面上における欠陥の出現頻度を考慮した補正値により、補正して前記2次元マップを作成することを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
作成された前記2次元マップからノイズを除去する第1のノイズ除去部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記2次元マップ作成部は、抽出された欠陥を正積図法により平面上に展開し、
前記3次元マップから予め定められた画素数以下の欠陥をノイズとして取り除く第2のノイズ除去部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記3次元マップは、直交座標系により欠陥の位置を示すものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記被検査体は、検査を行なう対象である表面が半球形状であり、
前記欠陥検出部は、半球上において設定される緯度および/または経度により検査の基準となる欠陥の大きさを変更することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記欠陥
抽出部は、前記撮影手段により取得された前記複数枚の画像の平均画像を作成し、当該複数枚の画像のそれぞれと当該平均画像との差分を求めることで欠陥を抽出することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項9】
表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射する照明手段と、
前記被検査体を予め定められた軸を中心として回転させる回転手段と、
前記回転手段により前記被検査体を回転させながら、前記軸の方向と交差する方向から当該被検査体を撮影することで、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された前記画像を基に、前記被検査体の表面に存在する欠陥を検出する検出手段と、
を備え、
前記検出手段は、
前記画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出部と、
抽出された欠陥を、前記被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成部と、
前記2次元マップの中の欠陥を、前記被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成部と、
前記3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出部と、
を備える表面検査装置。
【請求項10】
前記照明手段は、短冊形状を複数並べることで形成される縞模様をなし、当該照明手段から発する光の一部を遮るマスクを備え、
前記マスクは、前記短冊形状を予め定められた角度で組み合わせたV字形状を並べることで形成される縞模様をなすことを特徴とする請求項9に記載の表面検査装置。
【請求項11】
前記照明手段は、発光源から発した光を反射させ、反射した光を前記被検査体に照射する反射面を備え、前記マスクは、当該反射面に配されることを特徴とする請求項10に記載の表面検査装置。
【請求項12】
前記照明手段は、曲面に沿って光を照射することを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項13】
前記照明手段は、前記被検査体を挟み、前記撮影手段と反対側に設けられ、当該被検査体の背後から光を照射するバックライトをさらに含むことを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載の表面検査装置。
【請求項14】
前記撮影手段は、前記被検査体に投影された前記マスクの縞模様をぼかして撮影することを特徴とする請求項10に記載の表面検査装置。
【請求項15】
前記撮影手段は、前記被検査体に焦点を合わせることで、前記マスクの縞模様をぼかして撮影することを特徴とする請求項14に記載の表面検査装置。
【請求項16】
半球形状を少なくとも一部に有する部品を製造する製造工程と、
前記部品の前記半球形状の表面を検査する検査工程と、
を含み、
前記検査工程は、
前記半球形状の表面に対し光を照射し、前記部品を予め定められた軸を中心として回転させながら、当該軸の方向と交差する方向から当該半球形状の表面を撮影する撮影手段より、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出工程と、
抽出された欠陥を、前記半球形状の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成工程と、
前記2次元マップの中の欠陥を、前記半球形状の表面に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成工程と、
前記3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出工程と、
を有する半球形状を少なくとも一部に有する部品の製造方法。
【請求項17】
コンピュータに、
表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射し、当該被検査体を予め定められた軸を中心として回転させながら、当該軸の方向と交差する方向から当該被検査体を撮影する撮影手段より、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得機能と、
取得した前記画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出機能と、
抽出された欠陥を、前記被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成機能と、
前記2次元マップの中の欠陥を、前記被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成機能と、
前記3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置、部品の製造方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査体に光を照射し、被検査体を撮影した画像を基に、被検査体の表面における傷等の欠陥の有無を検出する表面検査装置が知られている。
このとき、被検査体の表面が、球面形状等の曲面形状である場合、被検査体を真上から撮影するか、回転させながら複数枚の画像を撮影することで、画像を取得する手法が用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、球体外観検査装置が、検査対象の球体を球体回転機構で回転させて、球体の全表面をCCDカメラで撮像する。そして、そのCCDカメラで得られた画像データをコンピュータで画像処理することにより、球体の外表面に生じているキズや色ムラの有無を検出することが記載されている。
また、特許文献2には、表面検査装置が、曲面状壁を有する計測空間を構成し、計測空間内の計測対象物に対して照明装置の光源光を均一に減光して照明し、照明された計測対象物の全照明画像の撮影を行うとともに、パターン光投影装置によりパターン光を計測対象物に直接当たらないように曲面状壁に投影して反射させ、カメラ装置によりこの反射パターン光が投影された計測対象物の反射パターン画像の撮像を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-13083号公報
【文献】特開2011-179982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、被検査体の表面が、球面形状等の曲面形状であると、欠陥の大きさが同じでも、場所により撮影された画像における大きさが異なって見える。また、欠陥の傾斜を陰影として検出しようした場合、被検査体の表面全体を撮影するのに適切な照明方法を定めることが、困難である。
本発明は、表面が曲面形状の被検査体に対し、一方向から平面的に欠陥の大きさを測定する場合に比較して、欠陥の大きさをより把握しやすい表面検査装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとで、本発明は、表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射し、被検査体を予め定められた軸を中心として回転させながら、軸の方向と交差する方向から被検査体を撮影する撮影手段から、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得部と、画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出部と、抽出された欠陥を、被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成部と、2次元マップの中の欠陥を、被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成部と、3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出部と、を備える表面検査装置である。
ここで、2次元マップ作成部は、抽出された欠陥を、予め定められた図法で平面上に展開し、回転角度に対応する分の位置を補正し重ね合わせることで、2次元マップを作成するようにすることができる。
また、2次元マップ作成部は、被検査体の表面上における欠陥の出現頻度を考慮した補正値により、補正して2次元マップを作成するようにすることができる。
さらに、作成された2次元マップからノイズを除去する第1のノイズ除去部をさらに備えるようにすることができる。
さらに、2次元マップ作成部は、抽出された欠陥を正積図法により平面上に展開し、3次元マップから予め定められた画素数以下の欠陥をノイズとして取り除く第2のノイズ除去部をさらに備えるようにすることができる。
そして、3次元マップは、直交座標系により欠陥の位置を示すものであるようにすることができる。
また、被検査体は、検査を行なう対象である表面が半球形状であり、欠陥検出部は、半球上において設定される緯度および/または経度により検査の基準となる欠陥の大きさを変更するようにすることができる。
さらに、欠陥抽出部は、撮影手段により取得された複数枚の画像の平均画像を作成し、複数枚の画像のそれぞれと平均画像との差分を求めることで欠陥を抽出することができる。
【0007】
また、本発明は、表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射する照明手段と、被検査体を予め定められた軸を中心として回転させる回転手段と、回転手段により被検査体を回転させながら、軸の方向と交差する方向から被検査体を撮影することで、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する撮影手段と、撮影手段により取得された画像を基に、被検査体の表面に存在する欠陥を検出する検出手段とを備え、検出手段は、画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出部と、抽出された欠陥を、被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成部と、2次元マップの中の欠陥を、被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成部と、3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出部と、を備える表面検査装置である。
【0008】
ここで、照明手段は、短冊形状を複数並べることで形成される縞模様をなし、照明手段から発する光の一部を遮るマスクを備え、マスクは、短冊形状を予め定められた角度で組み合わせたV字形状を並べることで形成される縞模様をなすようにすることができる。
また、照明手段は、発光源から発した光を反射させ、反射した光を被検査体に照射する反射面を備え、マスクは、反射面に配されるようにすることができる。
さらに、照明手段は、曲面に沿って光を照射するようにすることができる。
またさらに、照明手段は、被検査体を挟み、撮影手段と反対側に設けられ、被検査体の背後から光を照射するバックライトをさらに含むようにすることができる。
そして、撮影手段は、被検査体に投影されたマスクの縞模様をぼかして撮影することができる。
さらに、撮影手段は、被検査体に焦点を合わせることで、マスクの縞模様をぼかして撮影するようにすることができる。
【0009】
さらに、本発明は、半球形状を少なくとも一部に有する部品を製造する製造工程と、部品の半球形状の表面を検査する検査工程と、を含み、検査工程は、半球形状の表面に対し光を照射し、部品を予め定められた軸を中心として回転させながら、軸の方向と交差する方向から半球形状の表面を撮影する撮影手段より、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得工程と、画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出工程と、抽出された欠陥を、半球形状の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成工程と、2次元マップの中の欠陥を、半球形状の表面に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成工程と、3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出工程と、を有する半球形状を少なくとも一部に有する部品の製造方法である。
【0010】
またさらに、本発明は、コンピュータに、表面が曲面形状の被検査体に対し光を照射し、被検査体を予め定められた軸を中心として回転させながら、軸の方向と交差する方向から被検査体を撮影する撮影手段より、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得機能と、取得した画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出機能と、抽出された欠陥を、被検査体の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成機能と、2次元マップの中の欠陥を、被検査体の表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成機能と、3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面が曲面形状の被検査体に対し、一方向から平面的に欠陥の大きさを測定する場合に比較して、欠陥の大きさをより把握しやすい表面検査装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る表面検査装置の概略構成を示した図である。
【
図2】(a)~(b)は、ワークの外観形状について示した図である。
【
図3】(a)は、
図2(a)のIIb方向から半球部の表面に生じた欠陥を見たときの模式図である。(b)は、半球部に照明を行なった例を示している。
【
図4】(a)~(b)は、本実施の形態のドーム照明について、さらに詳しく示した図である。
【
図5】ワークの半球部に生じたゆがみと、問題になる欠陥との相違を示した図である。
【
図6】制御部の機能構成例について示したブロック図である。
【
図7】(a)~(b)は、欠陥抽出部が、輪郭を検出し、これからワークの半球部の画像上の中心を求める方法を説明した図である。
【
図8】(a)~(c)は、複数枚の画像のそれぞれと平均画像との差分を求める方法について示した図である。
【
図9】(a)~(b)は、2次元マップ作成部が、欠陥を平面上に展開する場合を示した概念図である。(c)は、展開図を作成する上で使用する球上の座標について示した図である。
【
図10】2次元マップ作成部が作成した2次元マップの例を示した図である。
【
図11】(a)は、膨張処理について示した図である。(b)は、収縮処理について示した図である。
【
図12】(a)~(b)は、第1のノイズ除去部により、ノイズを除去する前と後とで比較した図である。
【
図13】(a)~(b)は、3次元マップ作成部が、第1のノイズ除去部でノイズ除去後の2次元マップ上の欠陥を、3次元マップに変換する方法を説明した図である。
【
図14】第2の実施形態に係る表面検査装置の概略構成を示した図である。
【
図15】リング照明により、ワークの半球部に対し照明を行なった場合を示している。
【
図16】表面検査装置の動作について説明したフローチャートである。
【
図17】(a)~(b)は、サンソン図法による展開図と正距円筒図法による展開図とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
<表面検査装置の構成の説明>
{第1の実施形態}
ここでは、まず表面検査装置の構成の第1の実施形態について説明を行なう。
図1は、第1の実施形態に係る表面検査装置1の概略構成を示した図である。
図示する表面検査装置1は、ワークWに対し照明を行なう照明10と、ワークWを回転させる回転機構20と、ワークWの表面を撮影するカメラ30と、表面検査装置1の全体の制御を行なう制御部40とを備える。
【0015】
ここでは、まずワークWについて説明を行なう。ワークWは、表面が曲面形状の被検査体の一例である。
図2(a)~(b)は、ワークWの外観形状について示した図である。
このうち、
図2(a)は、ワークWの正面図であり、
図2(b)は、ワークWを
図2(a)のIIb方向から見た上面図である。
図2(a)に図示するように、ワークWは、全体形状として、半球部Waで示した半球形状の部分と円柱部Wbで示した円柱形状の部分とが一体化した形状をなす。ワークWの表面は、光を反射する性質を有する。即ち、ワークWは、例えば、金属からなり、表面を研磨した部品等である。また、ワークWは、表面にメッキなどを施した部品等である。なお、本実施の形態では、ワークWの表面の全体を検査するわけではなく、半球部Waが検査対象であり、半球部Waの表面に生じた欠陥の大きさを検査する。対して、円柱部Wbの表面は、表面検査装置1を使用した検査対象ではない。
【0016】
なお、以後、この半球部Waを、地球の北半球に例え、図中横方向に沿った周方向の位置を経度、図中縦方向に沿った周方向の位置を緯度として、半球部Wa上の位置を表すことがある。この場合、半球部Waの底部の外周円は、赤道(緯度0°)に対応し、半球部Waの頂部は、北極点(緯度90°)に対応する。
【0017】
図3(a)は、
図2(a)のIIb方向から半球部Waの表面に生じた欠陥Kを見たときの模式図である。
図では、欠陥Kとして、「◇」の形状の傷が、半球部Waの表面に存在する場合を示している。ここでは、欠陥Kとして、欠陥K1、欠陥K2、欠陥K3が存在する場合を例に取り説明を行なう。
欠陥K1は、半球部Waの頂部に位置する。また、欠陥K2、欠陥K3は、半球部Waの頂部以外の側部に位置し、欠陥K2より欠陥K3の方が、頂部からより離れた箇所に位置する。この場合、欠陥K1は、直上から見ることになり、その形状および大きさを、ほぼ正確に判断することができる。対して、欠陥K2、欠陥K3は、斜め方向から見ることになり、その形状および大きさは、実際の形状および大きさと異なって見える。これは、欠陥K2より欠陥K3の方が、より顕著である。つまり、半球部Waの頂部から離れるに従い、欠陥Kの形状および大きさは湾曲し、実際とは異なるものとなっていく。これは、欠陥Kの存在する緯度が低いほど、欠陥Kの形状および大きさは湾曲し、実際とは異なるように見えると言い換えることもできる。その結果、欠陥K2、欠陥K3の場合は、大きさを正確に検出することは困難である。
【0018】
また、
図3(b)は、半球部Waに照明を行なった例を示している。
ここでは、図中上方向から矩形状の照明Sにより照明を行なった例を示している。この場合、エリアArの範囲で、より明るく半球部Waを照らすことができる明部となるが、他の箇所は、この照明Sでは、暗くなり、暗部となる。暗部では、欠陥Kを検出することは困難である。つまり、この例では、全体を明るくする照明とはならず、欠陥Kを検出できる範囲も限定的となる。また、広範囲を明るくする照明にした場合、欠陥Kである傷等の傾斜が陰影となりにくく、その結果、欠陥Kも見えにくくなり、欠陥Kが検出しにくくなることがある。対して、
図3(b)で示したような狭い範囲を照らした方が、傷等の傾斜が陰影として検出でき、欠陥Kが見えやすくなる。ただし、上述したように、欠陥Kを検出できる範囲が限定的となる。
このように、ワークWの表面が、半球部Wa等の曲面形状を有し、その曲面上の欠陥Kを検出したい場合、一方向だけから、欠陥Kの大きさを検出したり、一方向から照明を行なうだけでは、欠陥Kを検出するのが困難である。
【0019】
一方、ワークWを回転させながら、斜め方向からワークWを撮影し、欠陥Kを検出する方法もあるが、斜め方向から撮影すると、欠陥Kの位置の判定が困難になりやすい。また、検出結果を累積していくと、小さなノイズも累積して大きくなり、ノイズが、欠陥Kとして誤検出されやすくなる。
【0020】
そこで本実施の形態では、
図1の表面検査装置1を使用し、これらの問題の抑制を図っている。以下、本実施の形態の表面検査装置1について説明を行なう。
【0021】
照明10は、照明手段の一例であり、ワークWに対し光を照射する。
本実施の形態では、照明10は、ワークWの表面の曲面に沿って光を照射する。これにより、照明10は、ワークWに対し、全体を明るく照らす照明にすることができる。この場合、照明10は、ワークWを覆うようにして、光を照射するドーム照明10aを含む。即ち、照明10として、ワークWの半球部Waの半球面に沿った形状である半球形状のドーム照明10aを採用している。このドーム照明10aにより、ワークWの上方から光を照射することができる。
【0022】
図4(a)~(b)は、本実施の形態のドーム照明10aについて、さらに詳しく示した図である。
このうち、
図4(a)は、
図1と同様の正面方向からドーム照明10aを見た図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb方向から、ドーム照明10aを見た図である。
図示するように、ドーム照明10aは、ドーム11の底面の円環部に、発光源として、白色のLED(Light Emitting Diode)12が配される。ただし、発光色は、白色に限られるものではなく、他の色であってもよい。LED12から発した光は、ドーム11の内面11aに拡散反射され、ワークWの半球部Waに照射する。図では、拡散反射される光を、矢印Lで模式的に表している。即ち、ドーム11の内面11aは、LED12から発した光を反射させ、反射した光をワークWに照射する反射面であると捉えることができる。ドーム照明10aを利用することで、ワークWの半球部Waの表面の広範囲を明るく照らすことができる。
【0023】
また、
図4(b)に示すように、本実施の形態では、ドーム照明10aは、ドーム11の内面11aにマスク13を備える。このマスク13は、短冊形状Taを複数並べることで形成される縞模様Smをなし、ドーム照明10aのLED12から発する光の一部を遮る。
また、この縞模様Smは、2つの短冊形状Ta1、Ta2を予め定められた角度で組み合わせたV字形状Vjを並べることで形成される。即ち、図示する例では、短冊形状Taが、それぞれ基準線Lsから、予め定められた角度をなすように傾斜している。この角度は、例えば、30°である。この縞模様Smは、カメラ30の視野を確保するためにドーム11に形成された穴部11b以外の、内面11a全体に形成される。
【0024】
このような縞模様Smにてマスク13を形成すると、縞模様Smのパターンが、ワークWの半球部Waの表面に投影される。即ち、ワークWの半球部Waに縞状の明部と暗部とが交互に生じる。これにより、傷等の傾斜が陰影として検出されやすくなり、欠陥Kがより見えやすくなる。そして、明部と暗部との境界に欠陥Kがある場合は、それが、より顕著となる。
【0025】
そして、この縞模様Smを、予め定められた角度で組み合わせたV字形状Vjを並べて形成することで、種々の方向に生じた傷等の欠陥Kを見ることがでできる。即ち、縞模様Smが一方向のみに形成された場合、傷等の欠陥Kの方向によっては、傷等の傾斜が陰影となりにくく、欠陥Kが検出できない場合がある。これを抑制するため、縞模様Smの方向が異なるマスク13が形成された複数のドーム11を交換して、測定を行うことも考えられるが、交換を行なう手間が生じ、測定を何回も行なう必要がある。本実施の形態のマスク13では、縞模様Smが、V字形状Vjを並べて形成されることで、2つの方向を向くため、1度の測定で、種々の方向に生じた傷等の欠陥Kを見ることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、照明10は、ワークWを挟み、カメラ30と反対側に設けられ、ワークWの背後から光を照射するバックライト10bをさらに含む。バックライト10bにより、ワークWの下方から光を照射することができる。詳しくは後述するが、これにより、カメラ30でワークWの半球部Waを撮影する際に、その輪郭を容易に識別することができる。バックライト10bは、例えば、LEDを複数配列した発光源を備えるが、これに限られるものではなく、蛍光ランプ、白熱灯、液晶パネル、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)パネル、無機EL(IEL:Inorganic Electro-Luminescence)パネル等を発光源としてもよい。また、上述したドーム照明10aのLED12をこれらの発光源としてもよい。
【0027】
図1に戻り、回転機構20は、回転手段の一例であり、ワークWを予め定められた軸を中心として回転させる。回転機構20は、ワークWを保持する図示しない保持部を有する。回転機構20は、例えば、モータを回転動力源として備え、この回転動力源により保持部を回転させることで、ワークWを回転させる。このとき、回転機構20の回転軸の方向は、ワークWの軸の方向と一致するようにする。
【0028】
カメラ30は、撮影手段の一例であり、回転機構20によりワークWを回転させながら、軸の方向と交差する方向からワークWを撮影する。そしてこれにより、ワークWについて、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する。交差する方向の角度としては、例えば、
図1に示すように、40°とする。また、この角度は、水平面を基準にしたときは50°であると見ることもできる。カメラ30は、照明10のドーム11の穴部11bを通して、ワークWの半球部Waを撮影する。この場合、穴部11bは、ドーム11の頂部に形成されており、カメラ30は、鉛直方向からワークWの半球部Waを撮影する。
また、カメラ30は、ワークWに対し、予め定められた回転角度毎に撮影を行なう。この回転角度は、例えば、6°であり、この場合、ワークWが1回転(360°回転)すると、合計60枚の撮影画像が得られる。
【0029】
またこのとき、カメラ30は、ワークWに投影されたマスク13の縞模様Smをぼかして撮影する。これにより、ワークWの半球部Waに生じたゆがみを撮影しないようにすることができる。
【0030】
図5は、ワークWの半球部Waに生じたゆがみUgと、問題になる欠陥Kとの相違を示した図である。
図5において、ゆがみUgは、半球面の一部が、半球面からわずかに外れた面であり、例えば、半球面の一部が、平らになった面、半球面の曲率とは少し異なる曲率を有する面、緩やかに凹んだ面である。この場合、ゆがみUgは、理想の半球面からは外れるが、存在しても支障がない。対して、欠陥Kは、擦過傷、打痕、圧痕等であり、例えば、半球面に対し角度のついた溝形状を有する。このような欠陥Kが、予め定められた大きさ以上になると、ワークWの機能を損ない、製品として不良品になりやすい。
【0031】
実際には、カメラ30は、ワークWに焦点を合わせることで、マスク13の縞模様Smをぼかして撮影する。つまり、マスク13の位置に焦点を合わせると、マスク13の縞模様Smは、ぼけなくなる。よって、焦点をこの箇所以外の箇所に合わせる必要がある。そして、ワークWの半球部Waの表面に焦点を合わせることで、欠陥Kの存在する箇所に焦点を合わせることになり、欠陥Kがより見えやすくなる。
【0032】
再び
図1に戻る。制御部40は、検出手段の一例であり、表面検査装置1全体の制御を行なうとともに、カメラ30により取得された画像を基に、ワークWの表面に存在する欠陥Kを検出する。
図6は、制御部40の機能構成例について示したブロック図である。
図示するように、制御部40は、ワークWの欠陥Kを抽出する欠陥抽出部41と、欠陥Kの2次元マップを作成する2次元マップ作成部42と、2次元マップ上のノイズの除去を行なう第1のノイズ除去部43と、欠陥Kの3次元マップを作成する3次元マップ作成部44と、3次元マップ上のノイズの除去を行なう第2のノイズ除去部45と、欠陥Kの大きさを検出する欠陥検出部46とを備える。
【0033】
欠陥抽出部41は、カメラ30で撮影した画像の中に存在する欠陥Kを抽出する。
このとき、欠陥抽出部41は、まず、ワークWの輪郭を利用して、それぞれの画像について位置合わせを行なう。具体的には、欠陥抽出部41は、ワークWの輪郭から中心の位置を求め、中心の位置を合わせることで位置合わせを行なう。この輪郭は、バックライト10bにより照射された光により検出できる。
【0034】
図7(a)~(b)は、欠陥抽出部41が、輪郭を検出し、これからワークWの半球部Waの画像上の中心を求める方法を説明した図である。
このうち、
図7(a)は、撮影された複数枚の画像Gのうち1枚の画像Gについて、ワークWの半球部Waの輪郭Rkを検出した場合を示している。この場合、画像Gの上方において半球部Waの部分と背景とが、バックライト10bにより照射された光により明確に区別できるため、その境界を検出して、輪郭Rkとする。そして、以下に説明するように、検出した輪郭Rkを利用して複数枚の画像Gの位置合わせを行なった上で欠陥Kを抽出する。
【0035】
図7(b)は、検出された輪郭Rkから、ワークWの半球部Waの画像の中心を求める場合を示している。この場合、輪郭Rkは、円の一部と考えられるため、この輪郭Rkを輪郭Rkの下方に延長し、円を作成する。図では、輪郭Rkと延長部Enとにより円を作成した場合を表している。そして、この円の中心Oの座標を求める。なお、本実施の形態で、画素の座標は、画素(pixel)の数で表されるピクセル座標である。
そして、欠陥抽出部41は、撮影した複数枚の各画像Gについて同様の処理を行ない、中心Oの座標を求める。さらに、各画像Gについて、図中左右上下方向に移動させることで、中心Oを同じ座標に揃え、位置合わせを行なう。
【0036】
次に、欠陥抽出部41は、カメラ30により取得された複数枚の画像Gの平均画像Ghを作成する。ここで、平均画像Ghとは、位置合わせを行なった後の複数枚の画像Gについて、同じ座標にある各画素の画素値を平均し、その平均値を画素値とする画像である。この場合、複数枚の画像Gは、グレーの画像である。そして、画素値は、例えば、8ビットで表され、0以上255以下の何れかの整数値となる。欠陥抽出部41は、画像G中で同じ座標にあるそれぞれの画素について、画素値を合算し、合算した積算値を画像Gの枚数で除算することで、それぞれの画素値の平均値を求める。画像Gの枚数は、上述した場合では、60枚である。そして、この60枚の画像Gの平均画素値を有する画素からなる画像を1枚の平均画像Ghとする。このとき、平均画像Ghは、欠陥Kがない場合の画像であるとみなせる。つまり、欠陥Kは、ワークWを回転させながら撮影するために、各画像Gで異なる位置に撮影される。そして、欠陥Kは、高い頻度で出現するものではなく、その数は少ない。欠陥Kがあると、欠陥Kがない場合に比べ、画像Gの画素値が変化するが、平均画像Ghの場合、その変化が均されてしまい、画素値は、欠陥がない場合とほぼ同じとなる。
【0037】
そして、欠陥抽出部41は、位置合わせ後の複数枚の画像Gのそれぞれと平均画像Ghとの差分を求めることで欠陥Kを抽出する。
図8(a)~(c)は、複数枚の画像Gのそれぞれと平均画像Ghとの差分を求める方法について示した図である。
このうち、
図8(a)は、平均画像Ghについて示した図である。そして、撮影された複数枚の画像Gのうち1枚の画像Gについて、平均画像Ghとの差分を求める。差分は、上述したように、中心Oの位置合わせを行ない、それぞれの画像Gについて同じ座標にある画素について求める。
【0038】
図8(b)は、差分の画素値を有する画像を差分画像Gsとして示した図である。この差分画像Gsは、上述した例では、60枚作成される。なおこの場合、差分は、負の数となる場合もあるため、ここで言う差分の画素値は、正の数および0だけでなく負の数となる場合がある。この差分画像Gsでは、欠陥Kが存在する箇所の画素値の絶対値が大きくなる。即ち、欠陥Kが存在しない箇所では、画素値は、平均画像Ghの画素値と近いため、0または0に近くなる。対して、欠陥Kが存在する箇所では、画素値は、平均画像Ghの画素値の近くならないため、より大きな正の数またはより小さな負の数となる。よって、欠陥Kが存在する箇所は、絶対値が予め定められた閾値以上であると考えられる。この場合、例えば、閾値を30とし、欠陥Kの存在する箇所として、差分の画素値の絶対値が30以上の場合、欠陥Kとする。
【0039】
さらに、欠陥抽出部41は、差分画像Gsから、高周波成分を求めることで、欠陥Kのエッジ画像を求める。上述したゆがみUgの場合、エッジの画素値の絶対値は、小さくなる。対して、傷等の欠陥Kの場合、エッジの画素値の絶対値は大きくなる。よって、欠陥Kが存在する箇所は、求めたエッジの画素値の絶対値が予め定められた閾値以上であると考えられる。この場合、閾値を25とし、求めたエッジの画素値の絶対値が25以上の場合、欠陥Kとする。つまり、欠陥抽出部41は、差分を求めることで抽出された欠陥Kのエッジの画素値が、予め定められた範囲以外の場合に、欠陥Kとは扱わないようにする。これにより、さらに、ゆがみUgを排除することができる。
【0040】
図8(c)は、これらの処理の結果、欠陥抽出部41が抽出した欠陥Kの画像である抽出画像Gcを示している。そして、欠陥抽出部41は、この欠陥Kの抽出を、各差分画像Gsについて行なう。この画像は、二値画像であり、抽出された欠陥Kの箇所は、1、欠陥Kでない箇所は、0の画素値で表される。また、差分画像Gsが60枚の場合、抽出画像Gcも60枚となる。
本実施の形態では、上述したように、照明10にバックライト10bを設ける。そして、欠陥抽出部41は、バックライト10bにより照射された光によりワークWの半球部Waの輪郭Rkを検出し、検出した輪郭Rkにより複数枚の画像Gの位置合わせを行なった上で欠陥Kを抽出する。
【0041】
2次元マップ作成部42は、欠陥抽出部41により抽出された欠陥Kを、ワークWの表面を平面にて表す2次元マップMpに展開する。この場合、2次元マップ作成部42は、まず、欠陥抽出部41が抽出した欠陥Kを予め定められた図法で平面上に展開する。
図9(a)~(b)は、2次元マップ作成部42が、欠陥Kを平面上に展開する場合を示した概念図である。
このうち、
図9(a)は、
図8(c)と同じ図であり、抽出画像Gcを示している。また、
図9(b)は、
図9(a)に示す抽出画像Gc中の欠陥Kを、予め定められた図法で平面上に展開した場合を示している。
ここでは、2次元マップ作成部42は、図法として、正積図法を用いる。正積図法は、球上の微小面積と平面上のこれに相応する小面積とが一定の比例関係にあるようにした図法である。本実施の形態では、この正積図法として、サンソン図法を用いる。サンソン図法は、平行直線とする全ての緯線(緯度を表す線)と、それに直交する直線の中央経線に沿って距離が正しく表される正距としたもので、経線(経度を表す線)が正弦曲線となる正積図法である。
この場合、
図9(a)に示す欠陥Kは、
図9(b)に示す平面上に展開される。この場合、半球部Wa上の欠陥Kは、平面上の座標に変換され、プロットされる。なお以後、
図9(b)のように、欠陥Kが展開された平面を、「展開
図Tn」と言うことがある。この展開
図Tnは、矩形の左下の頂点が、経度および緯度が0°であり、経度は、右方に行くに従い、大きくなり、最も右方では、360°-経度分解能以下である。なお、図では、説明をわかりやすくするため、360°と表記している(以下の図面も同じ)。また、緯度は、上方に行くに従い、大きくなり、最も上では、90°である。また、展開
図Tnは、二値画像であり、展開された欠陥Kの箇所の画素値は、1であり、欠陥Kでない箇所の画素値は、0である。
【0042】
次に、展開
図Tnを作成する具体的な方法について説明する。
図9(c)は、展開
図Tnを作成する上で使用する球上の座標について示した図である。
2次元マップ作成部42は、まず、
図9(a)に例示される1枚の抽出画像Gcの欠陥Kを構成する画素のうち1つの画素を選択する。そして、この画像の球中心座標(半球部Waの中心座標)の基準画像の球中心座標からのズレ量を考える。この基準画像は、例えば、1枚目に撮影された画像Gを基に作成された
図9(a)の画像である。この画素の座標を(Row、Col)とし、ズレ量を、(Row
offset、Col
offset)とすると、この画素の球上の座標(X、Y、Z)は、下記数1式で表すことができる。なお、数1式において、Rは、画素数で表した球の半径である。
【0043】
【0044】
次に、2次元マップ作成部42は、ワークWを撮影したときのワークWの角度を補正する。上記画素の球上における補正後の座標(A、B、C)は、下記数2式で表すことができる。なお、数2式において、θは、ワークWを撮影したときの水平面を基準にしたときのワークWの角度に対応し、上述した例では、50°である。
【0045】
【0046】
そして、2次元マップ作成部42は、球上における補正後の座標(A、B、C)を、緯度、経度の座標(φ、λ)に変換する。緯度、経度の座標(φ、λ)は、下記数3式で表すことができる。
【0047】
【0048】
さらに、2次元マップ作成部42は、緯度、経度の座標(φ、λ)を、展開
図Tnの横方向、縦方向の画素数に合わせる。その結果、展開
図Tnにおける緯度、経度の座標(Row
Dev、Col
Dev)は、下記数4式で表すことができる。なお、数4式で、Height
Devは、展開
図Tnの縦方向の画素数である。また、Scale
Devは、展開
図Tnの経度分解能(rad/pixel)である。これにより、1つの画素を展開
図Tn上に展開することができる。なお、展開
図Tnで展開後の欠陥Kの画素値は、1であり、欠陥Kがない箇所の画素値は、0となる。即ち、展開
図Tnは、二値画像となる。
【0049】
【0050】
そして、2次元マップ作成部42は、欠陥Kを構成する他の画素について、同様の処理を行ない、
図9(b)に示すような、1枚の展開
図Tnが完成する。以後、他の抽出画像Gcについて同様の処理を行なう。抽出画像Gcが60枚である場合、展開
図Tnは、60枚となる。
【0051】
図9(b)に示すように、この場合、展開
図Tnの図中横方向は、半球面である半球部Waの経度を表し、縦方向は、緯度を表す。経度は、0°以上360°-経度分解能以下である。以下となり、緯度は、0°以上90°以下となる。この展開
図Tnの解像度は、緯度、経度ごとにそれぞれ角度分解能を定めることで決まる。例えば、緯度については、90°/緯度分解能とすることができ、経度については、360°/経度分解能とすることができる。そして、この展開
図Tn上に欠陥Kが、プロットされる。
【0052】
そして、2次元マップ作成部42は、展開
図Tn上に展開された欠陥Kを、回転角度に対応する分の位置を補正し重ね合わせることで、2次元マップMpを作成する。抽出画像Gc上の欠陥Kは、上述したようにワークWを回転させながら撮影した画像Gを基にしている。これにより、各画像Gには、経度方向に0°~360°-経度分解能以下の範囲で、ずれが生じているため、回転角度に応じて経度方向の位置を補正する必要がある。なお、補正にあたり、1枚目に撮影した画像Gを0°の位置とし、これを基準として、回転角度を求め、補正する。そして補正後に、同じ座標にある画素の画素値を、全て合算する。このとき、展開
図Tnが60枚である場合、この60枚が合算の対象となり、その結果、1枚の2次元マップMpが作成される。上述したように、展開
図Tnでは、欠陥Kの箇所の画素の画素値は1であり、欠陥Kでない箇所の画素の画素値は0である。よって、展開
図Tnが60枚である場合、2次元マップMpを構成する各画素の画素値は、0以上60以下となる。
図10は、以上の処理により、2次元マップ作成部42が作成した2次元マップMpの例を示している。
【0053】
さらに、本実施の形態では、2次元マップ作成部42は、ワークWの表面上の測定範囲における欠陥Kの出現頻度を考慮した補正値により、補正して2次元マップMpを作成することが好ましい。つまり、ワークWを回転させた場合、半球部Waの赤道では、最も測定範囲が狭く、緯度が大きくなるほど測定範囲が広くなる。また、緯度90°近傍では、略全周分測定範囲に含まれる。そのため、ワークWが一周する間に撮影された画像内の同一の欠陥Kの出現頻度は半球部Waの赤道付近では低く、緯度が大きくなるほど高くなる。その結果、赤道付近では、欠陥Kの画像は、撮影される枚数が少なくなり、緯度が大きくなるほど、撮影される枚数が多くなる。即ち、欠陥Kの出現頻度が緯度により異なる。この場合、展開
図Tnの画素値に影響を与えるため、出現頻度を補正する必要が生ずる。具体的には、欠陥Kが測定範囲内で通過する経線の本数に応じた係数を各緯度ごとに設定し、それを補正値として合算した画素値に乗算する。
【0054】
第1のノイズ除去部43は、2次元マップ作成部42により作成された2次元マップMpからノイズを除去する。第1のノイズ除去部43は、例えば、2種類の方法により2次元マップMpの中のノイズを除去する。
1つ目の方法は、2次元マップMpを二値化し二値画像を作成することで、ノイズを除去する方法である。この場合、予め定められた閾値を用意し、2次元マップMp上の各画素の画素値についてこの閾値以下の場合、画素値を0、閾値を超える場合は、画素値を1とする二値画像を作成する。これにより、カメラ30により撮影された画像で、少数しか撮影されていないものは、2次元マップMpの画素値が小さくなるため、ノイズとして除去される。
【0055】
2つ目の方法は、2次元マップMpに対し膨張処理および収縮処理することで、ノイズを除去する方法である。
図11(a)は、膨張処理について示した図である。
膨張処理は、2次元マップMp中の1つの画素を注目画素Pcとし、注目画素Pcの画素値が0のときに、注目画素Pcの周囲8近傍に1つでも画素値1の画素があれば、画素値を0から1に置き換える処理である。
図11(b)は、収縮処理について示した図である。
収縮処理は、2次元マップMp中の1つの画素を注目画素Pcとし、注目画素Pcの画素値が1のときに、注目画素Pcの周囲8近傍に1つでも画素値0の画素があれば、画素値を1から0に置き換える処理である。
膨張処理および収縮処理を組み合わせて行なうことで、ノイズを除去することができる。このとき、膨張処理、収縮処理は、1回ずつとは限らず、2回以上であってもよい。
【0056】
図12(a)~(b)は、第1のノイズ除去部43により、ノイズを除去する前と後とで比較した図である。
このうち、
図12(a)は、ノイズを除去する前の画像であり、上述した2次元マップMpである。また、
図12(b)は、2次元マップMpから、ノイズを除去した後のノイズ除去2次元マップMp’である。
図12(b)は、
図12(a)に比較して細かい点が消え、ノイズが除去される。
第1のノイズ除去部43で2次元マップMpからノイズを除去することで、小さなノイズが累積して大きくなり、ノイズが、欠陥Kとして誤検出されやすいという問題を抑制できる。
【0057】
3次元マップ作成部44は、2次元マップMpの中の欠陥Kを、ワークWの表面の曲面形状に合わせた3次元マップに変換する。
図13(a)~(b)は、3次元マップ作成部44が、第1のノイズ除去部43でノイズ除去後の2次元マップMp’上の欠陥Kを、3次元マップMsに変換する方法を説明した図である。
ここでは、曲面は、半球面であるため、ノイズ除去後の2次元マップMp’上の欠陥Kは、半球面上に位置するように座標変換される。この場合、
図13(a)に示す2次元マップMp上の欠陥Kは、
図13(b)に示す球面上にプロットされる。
【0058】
以下、3次元マップMsを作成する具体的な方法について説明する。
まず、3次元マップ作成部44は、2次元マップMp上の欠陥Kを構成する画素のうち1つの画素を選択する。そして、この画素の2次元マップMp上の緯度、経度の座標(φ、λ)を求める。緯度、経度の座標(φ、λ)は、下記数5式で表すことができる。
【0059】
【0060】
そして、3次元マップ作成部44は、緯度、経度の座標(φ、λ)を、球上の座標(A、B、C)に変換する。この変換は、下記数6式で表すことができる。
【0061】
【0062】
これにより、1つの画素を3次元マップMs上に展開することができる。なお、3次元マップMsで展開後の欠陥Kの画素値は、1であり、欠陥Kがない箇所の画素値は、0となる。即ち、3次元マップMsは、3次元の二値画像となる。
そして、3次元マップ作成部44は、2次元マップMp上の欠陥Kを構成する他の画素について、同様の処理を行なう。その結果、3次元マップMs上に欠陥Kが、プロットされ、1枚の3次元マップMsが完成する。この3次元マップMsは、直交座標系により欠陥Kの位置を示すものになる。そして、3次元マップMsは、直交座標系で位置が定められた画素群により欠陥Kを表す。
【0063】
第2のノイズ除去部45は、3次元マップMsからノイズを取り除く。本実施の形態では、第2のノイズ除去部45は、3次元マップMsにプロットされた欠陥Kに対し、予め定められた大きさ以下の欠陥Kをノイズとして取り除く。
【0064】
欠陥検出部46は、第2のノイズ除去部45でノイズが取り除かれた3次元マップMsを基に、欠陥Kの大きさを検出する。
具体的には、欠陥検出部46は、プロットされノイズが除去された後の欠陥Kについて、ラベリングを行なう。そして、ラベリングした欠陥Kについて、この欠陥Kを構成する点群の座標から、欠陥Kの大きさを求める。欠陥Kの大きさは、欠陥Kの幅が最も大きくなるときの長さとして定義される。欠陥Kの幅を求める際の方向は、経度方向や緯度方向のみならず、これらの方向と交差する方向、いわゆる斜め方向であってもよい。
【0065】
そして、欠陥検出部46は、予め定められた大きさ以上の欠陥Kの数を求める。そして、この数が予め定められた個数以上存在したときは、検査結果として、ワークWが、不良品であるとする。対して、この数が予め定められた個数未満であるときは、検査結果として、ワークWが、良品であるとする。
【0066】
また、欠陥検出部46は、半球部Wa上において設定される経度および/または緯度により、検査の基準となる欠陥の大きさを変更するようにしてもよい。例えば、ある緯度範囲や経度範囲では、50μm以上の大きさの欠陥Kの数を求める。一方、他の緯度範囲や経度範囲では、100μm以上の大きさの欠陥Kの数を求める。
【0067】
{第2の実施形態}
次に、表面検査装置1の構成の第2の実施形態について説明を行なう。第2の実施形態では、第1の実施形態に対し、照明10の変更を行なう。
図14は、第2の実施形態に係る表面検査装置1の概略構成を示した図である。
図示する表面検査装置1は、
図1に示した表面検査装置1と同様に、ワークWに対し照明を行なう照明10と、ワークWを回転させる回転機構20と、ワークWの表面を撮影するカメラ30と、表面検査装置1の全体の制御を行なう制御部40とを備える。
ただし、図示する表面検査装置1は、
図1に示した表面検査装置1とは、照明10において、ドーム照明10aではなく、リング照明10cを使用している点で異なる。なお、他の箇所は、同様の構成および機能を有する。
リング照明10cは、検査等の用途で用いられる通常のリング照明であり、円環形状(リング形状)をなす。そして、この円環の部分に発光源であるLED等が備えられ、ワークWの上方から光を照射することができる。なお、第1の実施形態で説明したような縞模様Smは、リング照明10cには、形成されない。
リング照明10cも円環の部分が、ワークWの半球部Waの半球面に沿った形状となっており、ワークWの曲面に沿って光を照射する。よって、リング照明10cは、ワークWに対し、より広い範囲で明るく照らす照明にすることができる。
【0068】
図15は、リング照明10cにより、ワークWの半球部Waに対し照明を行なった場合を示している。
リング照明10cは、発光源がリング状に配されるため、より明るくワークWの半球部Waを照らすことができる明部もリング形状となる。図では、エリアArで明部を示している。なお、バックライト10bにより、ワークWの半球部Waの輪郭Rkが、明確に検出できるのは、第1の実施形態と同様である。
この場合、このリング状の照射範囲について、欠陥Kの抽出などを行なうことになる。なお、エリアAr以外の箇所は、暗部となるが、明部と暗部との境界では、欠陥Kが、検出しやすく、特に検出したい緯度をこの箇所とすると、より正確に欠陥Kが検出できる。
【0069】
以上説明した表面検査装置1によれば、3次元マップ作成部44により欠陥Kを3次元マップMs上にプロットする。これにより、欠陥Kの大きさや形状がより正確に再現される。そのため、欠陥Kの大きさを、より正確に把握することができ、欠陥Kの大きさを測定する際に、より正確に測定が可能である。即ち、ワークWを回転させながら、斜め方向からワークWを撮影する方法でも、欠陥Kの位置の判定が容易である。
【0070】
また、この3次元マップMsは、直交座標系により欠陥Kの位置を示すものになる。そして、3次元マップMsは、直交座標系で位置が定められた画素群により欠陥Kを表す。そのため、欠陥Kの大きさの算出がより容易である。この場合、緯度、経度方向だけでなく、特に緯度、経度方向と交差する斜め方向の欠陥Kの大きさを、より正確に測定できる。よって、被検査体であるワークWの表面が曲面形状であっても、欠陥Kの大きさをより正確に測定することができる。
【0071】
また、以上説明した表面検査装置1によれば、第1のノイズ除去部43により、2次元マップMpからノイズを除去する。これにより、小さなノイズが累積して大きくなり、ノイズが、欠陥Kとして誤検出されやすいという問題を抑制できる。
【0072】
さらに、第1の実施形態によれば、照明としてドーム照明10aを用いる。これにより、より広い範囲でワークWの半球部Waの表面の照明を行なうことができる。また、本実施の形態では、回転機構20によりワークWを回転させながら、軸の方向と交差する方向からワークWを撮影する。そして、ワークWについて、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する。そのため、欠陥Kも複数の角度から撮影することになり、広範囲を明るくする照明にしても、欠陥Kが検出されやすくなる。
またさらに、ドーム照明10aのドーム11の内面11aに、縞模様Smとなるマスク13を形成することで、傷等の傾斜が陰影として検出されやすくなり、欠陥Kがより見えやすくなる。そして、この縞模様Smを、予め定められた角度で組み合わせたV字形状Vjを並べ形成することで、種々の方向に生じた傷等の欠陥Kを見ることができる。
【0073】
そして、本実施形態によれば、サンソン図法等の正積図法を用いることで、展開
図Tnや2次元マップMpを作成した場合、欠陥Kが存在する緯度によらず、元の画像Gにおける面積の比率は維持される。これは、元の画像Gにおいて、欠陥Kの面積が同じならば、展開
図Tnや2次元マップMpで欠陥Kを構成する画素数は、緯度により変化しないと言うこともできる。よって、3次元マップMsでも、緯度によらず、欠陥Kを構成する画素数は変化しない。そのため、第2のノイズ除去部45において、3次元マップMsにプロットされた欠陥Kに対し、予め定められた画素数以下の欠陥Kをノイズとして取り除くという処理が可能となる。その結果、他の図法の場合よりも、計算時間がより少なくなりやすい。さらに、
図9(b)に例示されるサンソン図法により作成された展開
図Tnは、全体の画素数が、他の図法よりも少なくなりやすい。その結果、他の図法の場合よりも、座標変換に要する計算回数がより少なくなり、計算時間がより少なくなる。
【0074】
<表面検査装置の動作の説明>
次に、表面検査装置1の動作の説明を行なう。
図16は、表面検査装置1の動作について説明したフローチャートである。
まず、ワークWを回転機構20にセットし、照明10により光を照射する(ステップ101)。
次に、回転機構20を動作させることでワークWを回転させ、予め定められた回転角度でカメラ30による撮影を行ない、画像Gを取得する(ステップ102)。このとき、第1の実施形態では、カメラ30は、ワークWに焦点を合わせることで、ドーム照明10aのマスク13の縞模様Smをぼかして撮影する。撮影する画像Gの枚数は、例えば、60枚である。
撮影された画像Gの画像データは、制御部40に送られ、制御部40により以下の処理が行われる。
【0075】
まず、欠陥抽出部41が、撮影された複数枚の画像Gのうち1枚の画像Gについて、
図7(a)で説明した方法により、ワークWの半球部Waの輪郭Rkを検出する(ステップ103)。
次に、欠陥抽出部41は、
図7(b)で説明した方法により、輪郭Rkを延長した延長部Enと併せて円を作成し、この円の中心Oの座標を求める(ステップ104)。
そして、欠陥抽出部41は、全ての画像Gについて、ステップ103~ステップ104の処理を行なった後、円の中心Oを同じ座標に揃え、位置合わせを行なう(ステップ105)。
【0076】
そして、欠陥抽出部41は、位置合わせ後の複数枚の画像Gを使用して、
図8(a)に示すような平均画像Ghを作成する(ステップ106)。
さらに、欠陥抽出部41は、複数枚の画像Gのそれぞれと平均画像Ghとの差分を求め、
図8(b)に示すような差分画像Gsを作成する(ステップ107)。
そして、欠陥抽出部41は、差分画像Gsについて、画素値の絶対値およびエッジの画素値の絶対値が、予め定められた閾値以上の画素値である場合、欠陥Kとし、
図8(c)および
図9(a)に示すような抽出画像Gcを作成する(ステップ108)。
【0077】
次に、2次元マップ作成部42が、欠陥抽出部41が抽出した欠陥Kを予め定められた図法で平面上に展開する。即ち、2次元マップ作成部42は、ステップ108で作成した抽出画像Gcから、
図9(b)で示すような展開
図Tnを作成する(ステップ109)。この図法は、サンソン図法となる。
そして、2次元マップ作成部42は、展開
図Tn上に展開された欠陥Kを、回転角度に対応する分の位置を補正し重ね合わせることで、欠陥Kの2次元マップMpを作成する(ステップ110)。このとき、上述した出現頻度補正を行うことが好ましい。作成された2次元マップMpは、例えば、
図10で示したようなものとなる。
【0078】
次に、第1のノイズ除去部43が、2次元マップMpを二値化し二値画像を作成することで、ノイズを除去する(ステップ111)。
さらに、第1のノイズ除去部43は、2次元マップMpに対し膨張処理および収縮処理することで、ノイズを除去する(ステップ112)。
【0079】
次に、3次元マップ作成部44が、2次元マップMpの中の欠陥Kを、ワークWの表面の球面形状に合わせた3次元マップMsを作成する(ステップ113)。作成された3次元マップMsは、例えば、
図13(b)で示したようなものとなる。
そして、第2のノイズ除去部45が、3次元マップMsからノイズを取り除く(ステップ114)。このとき、第2のノイズ除去部45は、3次元マップMsにプロットされた欠陥Kに対し、予め定められた画素数以下の欠陥Kをノイズとして取り除く。
【0080】
欠陥検出部46は、第2のノイズ除去部45でノイズが取り除かれた3次元マップMsを基に、欠陥Kの大きさを検出する(ステップ115)。
そして、欠陥検出部46は、予め定められた大きさ以上の欠陥Kの数を求める(ステップ116)。
さらに、欠陥検出部46は、この数が予め定められた個数以上であるか否かを判断する(ステップ117)。
その結果、この数が予め定められた個数以上である場合(ステップ117でYes)、検査結果として、ワークWが、不良品であるとする(ステップ118)。対して、この数が予め定められた個数未満である場合(ステップ117でNo)、検査結果として、ワークWが、良品であるとする(ステップ119)。
【0081】
なお、上述した方法は、半球面形状を少なくとも一部に有する部品として、ワークWの製造方法であると捉えることができる。ワークWの製造方法は、半球形状を少なくとも一部に有するワークWを製造する製造工程と、ワークWの半球形状の表面を検査する検査工程と、を含む。そして、検査工程は、半球形状の表面に対し光を照射し、ワークWを予め定められた軸を中心として回転させながら、軸の方向と交差する方向から半球形状の表面を撮影する撮影手段より、回転角度が異なる複数枚の画像を取得する画像取得工程と、画像の中に存在する欠陥を抽出する欠陥抽出工程と、抽出された欠陥を、半球形状の表面を平面にて表す2次元マップに展開する2次元マップ作成工程と、2次元マップの中の欠陥を、半球形状の表面に合わせた3次元マップに変換する3次元マップ作成工程と、3次元マップを基に、欠陥の大きさを検出する欠陥検出工程と、を有する。
【0082】
なお、第1の実施形態では、ゆがみUgを検出しないようにするため、マスク13の縞模様Smをぼかして撮影していたが、ワークWの検査として、ゆがみUgを検出する必要がある場合も生じ得る。この場合は、ぼかさずに、縞模様Smに焦点を合わせて撮影を行なうことで、ゆがみUgの検出が可能である。また、この場合、ぼかすことで、縞模様Smの境界がグラデーションとなると考えられる。よって、ゆがみUgを検出しないようにするためには、上述したマスク13の縞模様Smをぼかして撮影する方法以外に、マスク13の縞模様Smの外縁をグラデーションのパターンにするようにしてもよい。この場合、マスク13は、短冊形状Taの短辺方向において、中央部が、例えば、黒色であり、外縁部が、中央部から外縁部に向かう方向に対し、明度が明るくなるグラデーションとなる。そしてこの場合は、縞模様Smをぼかして撮影するのではなく、マスク13の縞模様Smに焦点を合わせて撮影を行なう。
また、マスク13のパターンは、縞模様Smであったが、これに限られるものでなく、例えば、水玉模様、チェッカーボード(市松模様)等であってもよい。ただし、この場合、ゆがみUgを、より検出しやすい傾向にあり、縞模様Smの方が、ゆがみUgを検出しにくいという観点から、より好ましい。
さらに、上述した形態では、被検査体であるワークWの検査対象である半球部Waの表面は、半球面であったが、これに限られるものではなく、表面が曲面である被検査体であれば、本実施の形態の表面検査装置1の適用が可能である。よって、例えば、表面検査装置1を使用して、ワークWの円柱部Wbの表面を検査することもできる。
【0083】
またさらに、上述した形態では、サンソン図法等の正積図法により欠陥Kを平面上に展開して展開
図Tnを作成したが、図法は、これに限られるものではなく、例えば、正距円筒図法を用いた展開法でもよい。
図17(a)~(b)は、サンソン図法による展開
図Tnと正距円筒図法による展開
図Tnとを比較した図である。
このうち、
図17(a)は、サンソン図法による展開
図Tnであり、
図17(b)は、正距円筒図法による展開
図Tnである。上述したように、サンソン図法では、経線が正弦曲線となる。また、緯線は、直線である。対して、正距円筒図法では、緯線および経線は、ともに直線であり、直角かつ等間隔に交差する。
【0084】
<プログラムの説明>
ここで、以上説明を行った本実施の形態における制御部40が行なう処理は、例えば、アプリケーションソフトウェア等のプログラムとして用意される。そして、この処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、制御部40に設けられたコンピュータ内部の図示しないCPUが、上述した各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0085】
よって、本実施の形態で、制御部40が行なう処理は、コンピュータに、表面が曲面形状の被検査体であるワークWに対し光を照射し、ワークWを予め定められた軸を中心として回転させながら、軸の方向と交差する方向からワークWを撮影するカメラ30より、回転角度が異なる複数枚の画像Gを取得する画像取得機能と、取得した画像G中に存在する欠陥Kを抽出する欠陥抽出機能と、抽出された欠陥Kを、ワークWの表面を平面にて表す2次元マップMpに展開する2次元マップ作成機能と、2次元マップMpの中の欠陥Kを、ワークWの表面の曲面形状に合わせた3次元マップMsに変換する3次元マップ作成機能と、3次元マップMsを基に、欠陥Kの大きさを検出する欠陥検出機能と、を実現させるプログラムとして捉えることもできる。
【0086】
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろんCD-ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0087】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0088】
1…表面検査装置、10…照明、10a…ドーム照明、10b…バックライト、20…回転機構、30…カメラ、40…制御部、41…欠陥抽出部、42…2次元マップ作成部、43…第1のノイズ除去部、44…3次元マップ作成部、45…第2のノイズ除去部、46…欠陥検出部、G…画像、Gh…平均画像、K…欠陥、Rk…輪郭、Mp…2次元マップ、Ms…3次元マップ、W…ワーク、Wa…半球部