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  • 特許-靴、特にスポーツ靴のレーシング方法 図1
  • 特許-靴、特にスポーツ靴のレーシング方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】靴、特にスポーツ靴のレーシング方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20220331BHJP
   A43B 3/38 20220101ALI20220331BHJP
   A43B 5/04 20060101ALI20220331BHJP
   A43B 7/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A43B23/02 105
A43B3/38
A43B5/04 L
A43B7/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018524270
(86)(22)【出願日】2015-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2015002425
(87)【国際公開番号】W WO2017092775
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2018-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ボック、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】マウスナー、ランドルフ
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/042216(WO,A1)
【文献】特開2013-140158(JP,A)
【文献】特開2014-133121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345681(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0104429(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0289594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴(1)のレーシング方法であって、前記靴(1)は、
アッパー(2)を備え、前記アッパー(2)には、少なくとも1つのテンション要素(4)によって着用者の足において前記靴(1)を紐締めするためのロータリークロージャ(3)が配置されており、
前記ロータリークロージャ(3)は、回転可能に配置されたテンションローラ(5)を有し、前記テンションローラ(5)は、電気モータ(6)によって駆動され、
前記ロータリークロージャ(3)は、さらに、少なくとも1つの閉ボタン(7)と開ボタン(9)と具備しており、前記閉ボタン(7)と開ボタン(9)とは、前記電気モータ(6)を作動させる制御システム(8)に接続されており、
前記靴(1)のレーシングは、前記靴(1)の使用者が前記閉ボタン(7)によって閉信号を発することにより実行し、
当該方法は、
前記靴(1)の使用者が前記閉ボタン(7)によって第1の閉信号(S1)を発したときに、前記少なくとも1つのテンション要素(4)の第1の張力が結果的に得られる第1の紐締め力レベルで、前記靴(1)を紐締めするステップであって、前記第1の閉信号(S1)は、所定の待ち時間(tW)内に後続の追加のタップパルスがない、前記閉ボタン(7)のシングルタップであり、前記待ち時間(tW)は、最大で1.0秒である、ステップ、および、
前記靴(1)の使用者が前記閉ボタン(7)によって前記第1の閉信号とは異なる第2の閉信号(S2)を発したときに、前記少なくとも1つのテンション要素(4)の前記第1の張力よりも高い第2の張力が結果的に得られる第2の紐締め力レベルで、前記靴(1)を紐締めするステップであって、前記第2の閉信号(S2)は、2つのタップパルスが所定のフォローアップ時間(tF)内に互いに続いて生じ、前記2つのタップパルスに続く所定の待ち時間(tW)内に後続の追加のタップパルスがない、前記閉ボタン(7)のダブルタップであり、前記フォローアップ時間(tF)は、0.05秒~0.75秒の間であり、前記待ち時間(tW)は、最大で1.0秒であ
前記靴(1)のインステップ(10)上に配置された、ロータリークロージャ(3)を使用し、前記テンションローラ(5)の回転軸は、前記靴(1)のインステップ領域(10)に対して垂直であり、前記ロータリークロージャ(3)上に前記閉ボタン(7)と開ボタン(9)とが配置された、ロータリークロージャ(3)を使用するステップ、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
当該方法は、
前記靴(1)の使用者が前記閉ボタン(7)によって前記第1および第2の閉信号とは異なる第3の閉信号(S3)を発したときに、前記少なくとも1つのテンション要素(4)の前記第2の張力よりも高い第3の張力が結果的に得られる第3の紐締め力レベルで、前記靴(1)を紐締めする追加ステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付与された閉信号(S1,S2)に応じて、前記第1または第2の紐締め力レベルを達成した後に、
前記靴(1)の使用者が前記閉ボタン(7)によって追加の閉信号(S4)を発したときに、前記紐締め力レベルを、前記第1の紐締め力レベルから前記第2の紐締め力レベルに、または前記第2の紐締め力レベルから第3の紐締め力レベルに、増加させるステップを実行することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の閉信号(S4)は、前記閉ボタン(7)のシングルタップであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の閉信号(S3)は、タップパルスのうちの2つが、いずれも所定のフォローアップ時間(tF)内に互いに続いて生じ、3つのタップパルスに続く所定の待ち時間(tW)内に後続の追加のタップパルスがない、前記閉ボタン(7)のトリプルタップであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記フォローアップ時間(tF)は、0.1秒~0.5秒の間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の紐締め力レベルは、紐締めの過程で前記電気モータ(6)の前記制御システム(8)が指定する第1の最大電流によって規定され、前記第1の最大電流は、好ましくは1.1A~1.9Aの間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の紐締め力レベルは、紐締めの過程で前記電気モータ(6)の前記制御システム(8)が指定する第2の最大電流によって規定され、前記第2の最大電流は前記第1の最大電流よりも大きく、前記第2の最大電流は、好ましくは2.1A~2.9Aの間である、ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の紐締め力レベルは、紐締めの過程で前記電気モータ(6)の前記制御システム(8)が指定する第3の最大電流によって規定され、前記第3の最大電流は前記第2の最大電流よりも大きく、前記第3の最大電流は、好ましくは3.1A~3.9Aの間である、ことを特徴とする、請求項2又は3に記載された方法を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御システム(8)は、前記閉ボタン(7)とは異なる開ボタン(9)が操作されたときに、前記少なくとも1つのテンション要素(4)の張力解除をトリガすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記テンション要素(4)と前記電気モータ(6)との間にトランスミッションが配置された、ロータリークロージャ(3)を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特にスポーツ靴のレーシング方法に関するものであり、靴は、
- アッパーを備え、アッパーには、少なくとも1つのテンション要素によって着用者の足において靴を紐締めするためのロータリークロージャが配置されており、
- ロータリークロージャは、回転可能に配置されたテンションローラを有し、テンションローラは、電気モータによって駆動され、
- ロータリークロージャは、さらに、少なくとも1つの閉ボタンを具備または包含しており、その閉ボタンは、電気モータを作動させる制御システムに接続されており、
靴のレーシングは、靴の使用者が閉ボタンによって閉信号を発することにより実行する。
【背景技術】
【0002】
電気モータ駆動のロータリークロージャを備えた靴は、特許文献1で知られている。この場合、靴の紐締めおよび紐緩めが自動的に可能であるように、テンション要素を巻回するためのテンションローラは、電気モータで駆動される。
【0003】
靴の紐締めのためには、使用者が電気スイッチを操作し、スイッチが押下されている間は、ロータリークロージャの電気モータが作動する。これに応じて、紐締め力は徐々に増大する。所望の紐締め力レベルに達すると、使用者はスイッチを解除する。靴の紐緩めのためには、同様に、別のスイッチを操作することができる。
【0004】
これによれば、靴のレーシングでは、それに応じた時間が、スイッチを使用者が押下しなければならない時間として必要になる。さらには、所望の紐締め力レベルを、使用者が紐締めのたびに調整しなければならない。
【0005】
一般的な方法は、特許文献2に開示されている。同様のソリューションおよび他のソリューションは、特許文献3および特許文献4に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国実用新案第29817003号
【文献】国際公開第2014/036374号
【文献】米国特許出願公開第2014/0082963号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0289594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より快適に、かつより容易に、靴のレーシングを実現することができるように、上記の類の方法をさらに改良することである。この場合、特に、靴の紐締めを個々の要求に合わせて簡便に適応させることが可能でなければならない。これにより、多大な操作力を用いることなく、使用者の要望に応じて、規定の紐締め力レベルを靴に付与することが可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるこの目的のソリューションは、本方法が、
- 靴の使用者が閉ボタンによって第1の閉信号を発したときに、少なくとも1つのテンション要素の第1の張力が結果的に得られる第1の紐締め力レベルで、靴を紐締めするステップであって、このとき、第1の閉信号は、所定の待ち時間内に後続の追加のタップパルスがない、閉ボタンのシングルタップである、ステップ、または代替的もしくは追加的に、
- 靴の使用者が閉ボタンによって第1の閉信号とは異なる第2の閉信号を発したときに、少なくとも1つのテンション要素の第1の張力よりも高い第2の張力が結果的に得られる第2の紐締め力レベルで、靴を紐締めするステップであって、このとき、第2の閉信号は、2つのタップパルスが所定のフォローアップ時間内に互いに続いて生じ、その2つのタップパルスに続く所定の待ち時間内に後続の追加のタップパルスがない、閉ボタンのダブルタップである、ステップ、を含むことを特徴とする。
【0009】
このコンセプトの延長で、さらに、本方法は、代替的もしくは追加的に、
- 靴の使用者が閉ボタンによって第1および第2の閉信号とは異なる第3の閉信号を発したときに、少なくとも1つのテンション要素の第2の張力よりも高い第3の張力が結果的に得られる第3の紐締め力レベルで、靴を紐締めする追加ステップを含むものと規定することができる。
【0010】
付与された閉信号に応じて、第1または第2の紐締め力レベルを達成した後に、さらなる実施形態によれば、
靴の使用者が閉ボタンによって追加の閉信号を発したときに、紐締め力レベルを、第1の紐締め力レベルから第2の紐締め力レベルに、または第2の紐締め力レベルから第3の紐締め力レベルに、増加させるステップを実行することができる。
【0011】
この追加の閉信号は、閉ボタンのシングルタップであることが好ましい。
【0012】
従って、提案するコンセプトは、最初に、電気モータ駆動による様々に異なる紐締め力レベルを達成する可能性を提供し、この場合、それぞれの紐締め力レベルは、個々の閉信号を付与することによって達成される。第1または第2の紐締め力レベルが既に達成されて、さらに使用者が閉ボタンによって追加の閉信号を付与すると、さらに高い張力による紐締め力レベルが自動的に達成される。
【0013】
第3の閉信号は、タップパルスのうちの2つが、いずれも所定のフォローアップ時間内に互いに続いて生じ、3つのタップパルスに続く所定の待ち時間内に後続の追加のタップパルスがない、閉ボタンのトリプルタップであることが好ましい。
【0014】
待ち時間は、好ましくは、最大で1.0秒である。
【0015】
フォローアップ時間は、好ましくは、0.05秒~0.75秒の間であり、特に好ましくは、0.1秒~0.5秒の間である。
【0016】
この場合、第1の紐締め力レベルは、好ましくは、紐締めの過程で電気モータの制御システムが指定する第1の所定最大電流によって規定され、この場合、その電流は、好ましくは、1.1A~1.9Aの間である。
【0017】
同様に、第2の紐締め力レベルは、好ましくは、紐締めの過程で電気モータの制御システムが指定する第2の所定最大電流によって規定され、この場合、第2の最大電流は第1の最大電流よりも大きく、その電流は、好ましくは、2.1A~2.9Aの間である。
【0018】
同様に、第3の紐締め力レベルは、好ましくは、紐締めの過程で電気モータの制御システムが指定する第3の所定最大電流によって規定され、この場合、第3の最大電流は第2の最大電流よりも大きく、その電流は、好ましくは、3.1A~3.9Aの間である。
【0019】
また、制御システムは、閉ボタンとは異なる開ボタンが操作されたときに、少なくとも1つのテンション要素の張力解除をトリガすることもできる。
【0020】
この場合、好ましくは、テンション要素と電気モータとの間にトランスミッションが配置された、ロータリークロージャを使用する。
【0021】
ロータリークロージャは、好ましくは、靴のインステップ上に配置される。この場合、テンションローラの回転軸は、好ましくは、インステップ領域の靴表面に対して垂直に配置される。
【0022】
さらに、効果的な実施形態では、ロータリークロージャに閉ボタンとオプションの開ボタンとが配置された、ロータリークロージャを提供する。
【0023】
本発明の特殊な実施形態として、特にBluetooth(登録商標)接続である無線接続によって携帯電話機(スマートフォン)と通信する制御システムを用いることができ、この場合、閉ボタンとオプションの開ボタンは、携帯電話機によって構成される。従って、この場合、この目的のための対応するアプリを備えたスマートフォンによって、ロータリークロージャの制御を、Bluetooth(登録商標)により無線で提供することもできる。
【0024】
電気モータの回転軸は、水平かつ、靴の長手方向に対して交差するように配置されることが好ましい。
【0025】
テンション要素は、好ましくは、テンションワイヤである。それらは、ポリアミドを含むか、またはこの材料で構成することができる。
【0026】
モータの運転に必要なバッテリは、好ましくは、充電式バッテリとして構成される。バッテリには、誘導コイルを介して充電電流を供給することができる。バッテリは、靴のミッドソールに配置することができる。充電のために必要な電子システムは、バッテリ上に直接配置することができる。誘導コイルを設けることによって、バッテリの非接触充電が可能となる。この目的で、靴を、対応する充電板上に載せることができ、これにより、バッテリの充電が可能である。
【0027】
よって、提案するコンセプトは、様々に異なる信号(すなわち、例えば、閉ボタンのシングルタップ、ダブルタップ、トリプルタップのそれぞれ)によって、規定の対応する閉位置に、または対応する紐締め力レベルに、電動ロータリークロージャを駆動するという考えに基づいている。それらの紐締め力レベルは、この場合、好ましくは、事前設定された対応するモータ電流(例えば、第1のレベル:1.5A、第2のレベル:2.5A、第3のレベル:3.5A)によって規定され、これにより、対応する最大トルクでモータを作動させることで、採用されるトランスミッションを介して、対応して増大していく引張力がテンション要素において得られる。
【0028】
閉ボタンの複数回タップは、それらのタップパルスが時限内(上記のフォローアップ時間を参照)であることによって、制御システムが認識し、また、靴の使用者からの要求の信号は、それらの記録されたタップパルスの後の所定の待ち時間内に、さらなるパルスが検出されないことによって認識される。
【0029】
上記の(3通りの)紐締め力レベルを、このように直接達成することに加えて、靴を締め付けた後に、シングルタップによって、次に高い紐締め力レベルを達成することも可能である。
【0030】
レーシングの(完全な)開操作は、対応する開ボタンの操作によって、一段階で行うことができる。完全に紐緩めされた端位置に関して、テンションローラは、テンションローラのゼロ位置を検出可能な回転角度センサを備えることができる。
【0031】
当然のことながら、上記の方法は、3通りよりも多くの異なる紐締め力レベルを用いて実現することもできる。
【0032】
このように、より効果的に、ロータリークロージャによる電動レーシングシステムを備えた靴の使用時の操作快適性を向上させることができる。
【0033】
図面に、本発明の実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、ロータリークロージャによるレーシングが可能なスポーツ靴を側面図で概略的に示している。
図2図2は、図1のCから見た靴のインステップ部分を概略的に示しており、そこには、閉ボタンと開ボタンによって操作可能なロータリークロージャが配置されている。
図3a図3aは、ロータリークロージャに関する第1の閉信号の概略図を示している。
図3b図3bは、ロータリークロージャに関する第2の閉信号の概略図を示している。
図3c図3cは、ロータリークロージャに関する第3の閉信号の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、アッパー2とソール11とを備えるスポーツ靴の形態の靴1を示している。靴1のレーシングは、ロータリークロージャ3(すなわち、センタークロージャ)によって行われ、この場合、テンションローラ5が回転することによって、少なくとも1つのテンション要素4は、テンションローラ5に巻回され、これにより、アッパー2は、靴1の着用者の足に締め付けられるか、または紐締めされる。
【0036】
ロータリークロージャ3は、靴1のインステップ10上に配置される。この場合、テンションローラ5の回転軸は、靴1のインステップ領域10に対して垂直である。これにより、靴の使用者がロータリークロージャ3に簡便にアクセス可能であることが確保され、また、ロータリークロージャ3は電気モータによって作動するので、ロータリークロージャの開操作および閉操作のために靴の使用者がしなければならないことは、該当するボタン、すなわち閉ボタン7および開ボタン9(図2を参照)を操作することのみである。そのために必要な電気モータ6を示しており、これにより、トランスミッション(図示せず)を介してテンションローラ5を駆動することができる。この例示的な実施形態では、電気モータ6の回転軸は、水平かつ、靴の長手方向に対して交差する向きに配置される。
【0037】
ロータリークロージャ3の開操作および閉操作のための電気モータ6の作動は、制御システム8によってトリガされ、従って、制御システムは、閉ボタン7および開ボタン9にも接続されている。
【0038】
靴1の閉操作の場合には、使用者は次のように進める。
【0039】
使用者は、第1の(低い)紐締め力レベルで靴を自身の足に装着したい場合には、閉ボタン7を1回タップする。このタップパルスを、図3aに矢印で示している。制御システム8は、このタップパルスを記録し、そして、使用者からの後続の追加のタップパルスがあるかどうかを確認するために、待ち時間tWにわたって待機する。追加のタップパルスがない場合には、制御システム8に格納されたソフトウェアは、第1の紐締め力レベルに対応する第1の閉信号S1を使用者が発しようとしたと認識する。
【0040】
従って、モータ電流の第1の所定最大値である例えば1.5Aを得るまで、電気モータ6を駆動する。
【0041】
使用者は、第2の(中程度の)紐締め力レベルで靴を自身の足に装着したい場合には、閉ボタン7を2回タップする。この連続したタップパルスを、図3bに矢印で示している。制御システム8は、これらのタップパルスをやはり記録し、この場合、図3bに示すような意図されたダブルパルスは、それらが所定のフォローアップ時間tF内に互いに続いて生じることによって認識されることができる。さらに、制御システムは、最後に認識されたタップパルスの後に、使用者からの後続のさらなる追加のタップパルスがあるかどうかを確認するために、やはり待ち時間tWにわたって待機する。追加のタップパルスがない場合には、制御システム8に格納されたソフトウェアは、第2の紐締め力レベルに対応する第2の閉信号S2を使用者が発しようとしたと認識する。
【0042】
従って、このときは、モータ電流の第1の値よりも高い第2の所定最大値である例えば2.5Aを得るまで、電気モータ6を駆動する。
【0043】
使用者が、第3の(高い)紐締め力レベルで靴を自身の足に装着したい場合についても、同様である。この場合、使用者は、閉ボタン7を3回タップする。この連続したタップパルスを、図3cに矢印で示している。制御システム8は、これらのタップパルスをやはり記録し、この場合、図3cに示すような意図されたマルチパルスは、2つのタップパルス間の時間間隔が所定のフォローアップ時間tF内にあることによって認識されることができる。さらに、制御システムは、最後に認識されたタップパルスの後に、使用者からの後続のさらなる追加のタップパルスがあるかどうかを確認するために、やはり待ち時間tWにわたって待機する。追加のタップパルスがない場合には、制御システム8に格納されたソフトウェアは、第3の紐締め力レベルに対応する第3の閉信号S3を使用者が発しようとしたと認識する。
【0044】
従って、このときは、モータ電流の第2の値よりも高い第3の所定最大値である例えば3.5Aを得るまで、電気モータ6を駆動する。
【0045】
このように、提案する手順により、指定の紐締め力レベルを得ることが、それを目的とした様々に異なる閉信号S1、S2、S3のそれぞれによって可能である。
【0046】
この目的で、使用者は、現状技術のように閉ボタン7をより長い時間にわたって操作する必要はなく、むしろ、この目的で、対応するパルスシーケンスを発すれば十分である。さらに、これにより、使用者は、自身の要望に沿った紐締め力レベルを、それを閉ボタンの対応する長押しによって調整する必要なく、直接得ることが可能である。
【0047】
靴を、少なくとも第1の紐締め力レベルで使用者の足に装着して、閉ボタン7を1回押し、これにより使用者がシングルタップパルスをボタンで付与すると、さらなる実施形態により、次の紐締め力レベルを、すなわち、第1の紐締め力レベルから第2の紐締め力レベルを、または第2の紐締め力レベルから第3の紐締め力レベルを、自動的に得ることができる。これを、追加の閉信号によって上述しており、追加の閉信号は、この場合、使用者が閉ボタンで付与する。
【0048】
靴の開操作の場合、すなわちテンション要素4を緩める場合には、使用者は開ボタン9を1回押す。このとき、電気モータ6は、テンションローラ5の対応する回転角度センサによって検出可能な完全無張力状態に移行させる。
【符号の説明】
【0049】
1 靴
2 アッパー
3 ロータリークロージャ
4 テンション要素
5 テンションローラ
6 電気モータ
7 閉ボタン
8 制御システム
9 開ボタン
10 インステップ
11 ソール
1 第1の閉信号
2 第2の閉信号
3 第3の閉信号
4 追加の閉信号
W 待ち時間
tF フォローアップ時間
図1
図2
図3a
図3b
図3c