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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ヒト化親和性成熟抗FCRN抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220331BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220331BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220331BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220331BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220331BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220331BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220331BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220331BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 N
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P39/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018555892
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2017029375
(87)【国際公開番号】W WO2017189556
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】62/326,907
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517396386
【氏名又は名称】シンティミューン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ.ブランバーグ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エス.ブランバーグ
(72)【発明者】
【氏名】スーザン ダーナ ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】デリー ルーペニアン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジョージ エドワード ホールゲイト
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー デイビッド ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】アーロン ロバート ハーン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0107845(US,A1)
【文献】国際公開第2015/167293(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/071330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変部及び軽鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変部の配列が配列番号26、配列番号28、または配列番号32であり、及び前記軽鎖可変部の配列が配列番号22である、前記抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項2】
重鎖可変部及び軽鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記重鎖可変部の配列が配列番号28であり、前記軽鎖可変部の配列が配列番号22である、前記抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体ある、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体が、アイソタイプIgG4を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が前記重鎖においてS241P修飾を含み、及び/または前記抗体が前記重鎖においてC末端リジンを欠乏する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
scFv、Fv、Fab’、Fab、F(ab’)、または二特異性抗体である、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸。
【請求項8】
請求項記載の単離された核酸を含む核酸ベクター。
【請求項9】
請求項記載の単離された核酸を含む原核宿主細胞または真核宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメント、及び医薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項11】
FcRnを抗体または抗原結合フラグメントと接触させるによる、FcRnとアルブミンとの相互作用の阻害に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項12】
対象に抗体または抗原結合フラグメントを投与することによる、対象におけるアルブミンのレベルの低下、あるいは対象に抗体または抗原結合フラグメントを投与することによる、対象におけるアルブミン結合毒素のレベルの低下に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記アルブミン結合毒素が、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、またはアセトアミノフェンである、請求項12記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記アルブミン結合毒素が、アセトアミノフェンである、請求項13記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項15】
冠動脈アテローム性硬化症及び末梢血管疾患、糖尿病性血管合併症、アルツハイマー病、外傷性脳障害、糖尿病、または末期腎不全である、アルブミン毒性に関連する医学的病態の治療に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項16】
(a)治療の必要がある対象に抗FcRn抗体またはそのフラグメントを投与することによる、アルブミンベースの治療薬を投与する前の内因性アルブミン分解;または
(b)対象に抗FcRn抗体またはそのフラグメントを投与することによる、対象に投与された外因性アルブミンベースの治療薬の分解
の促進に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記抗FcRn抗体またはそのフラグメントが配列番号26、配列番号28、または配列番号32の重鎖可変部のアミノ酸配列及び配列番号22の軽鎖可変部配列を含む、請求項16記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月25日に出願された米国特許出願第62/326,907号の優先権を主張し、これはその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、FcRnに結合する抗体及びそれらの抗体結合部分ならびにFcRnとアルブミンとの相互作用を調節または阻害するための、これらの使用に関する。抗体は、アルブミンが結合する特定の化合物または分子の中毒作用を最小化するための治療薬として有用である。
【0003】
配列表
本出願には、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表が含まれており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2017年4月25日に作成された配列表は、162255.46276_Sequence-Listing.txtと題され、サイズが58,787バイトである。
【背景技術】
【0004】
新生児型Fc受容体(FcRn)は、IgGに対する細胞内輸送膜内在性Fcレセプターである。FcRnは元来、新生児の生命において機能するレセプターとして同定された。げっ歯類の腸から、12kDa~40~50kDaのタンパク質のヘテロ二量体として最初に単離され(Rodewald&Kraehenbuhl 1984,J.Cell.Biol 99(1 Pt2)159s-154s;Simister&Rees,1985,Eur.J.Immunol.15:733-738)、1989年にクローン化された(Simister&Mostov,1989,Nature 337:184-187)。FcRnのクローン化及び続く結晶化により、12kDaのβ2-ミクログロブリン軽鎖と非共有結合した約50kDaの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI様重鎖を有することが明らかとなった(Raghavan et al.,1993,Biochemistry 32:8654-8660;Huber et al.,1993,J.Mol.Biol.230:1077-1083)。胎児及び新生児の生命に関連して最初に同定されたが、現在FcRnは、成人期を通じて機能し続けることが知られている。FcRnは、pH6.5でマイクロモル~ナノモル親和性で、pH依存的にIgGのFc領域に結合する初期の酸性エンドソームに主に存在し、生理的pHでのFcRnのFcへの結合は無視できる。大部分の細胞において、FcRnの大半はエンドソームに存在し、FcRnとそのIgG Fc配位子との相互作用は、その酸性環境内で生じる。造血細胞などの一部の細胞において、細胞内発現に加えて細胞表面でFcRnの有意なレベルが検出することができる(Zhu et al.,2001,J.Immunol.166:3266-3276)。この場合、細胞外環境が酸性であるとき、腫瘍性または感染性病態の場合のように、これらの細胞型の細胞表面でFcRnがIgGに結合することが可能である。FcRnは、取り込まれたモノマーIgGに結合し、それをリソソームのコンパートメントにおける分解から保護し、中性の細胞外pHで放出させるためにIgGを細胞表面に輸送することによって、血清IgG濃度を調節する。FcRnにより結合されないIgGはリソソーム経路に入り、分解されるため、この機構を通して、FcRnはIgGの長い血清半減期の原因となる。
【0005】
FcRnは、FcRnとFcRn重鎖の反対側の表面上のIgGまたはアルブミンとの間のイオン相互作用に起因して、IgGのFcドメインに対する結合部位とは異なるアルブミンの結合部位を含む(Chaudhury et al.,2006,Biochemistry 45:4983-4990)。IgGへの結合と同様、FcRnのアルブミンへの結合は、酸性pH(典型的にはpH6未満、最適にはpH5)で起こるが、中性pHでは起こらず、非常にpH依存性である。アルブミンのFcRn結合は、アルブミンを分解から保護し、アルブミンの血清半減期を延長させる。マウスにおけるFcRn発現の非存在下で、アルブミンは血液循環から胆汁に失われる(Kim et al.,2006,Am J Gastrointest Liver Phsiol 290(2):G352-60)。更に、アルブミンは、複数の病気の状態、例えば急性及び慢性毒性曝露(Taguchi,J Pharm Sci 2012)、冠動脈アテローム性硬化症及び末梢血管疾患(Song,Atherosclerosis 2012)、糖尿病性血管合併症 (Kim,Diab Metab J 2012;Murea, Am J Nephrol 2012)、及びアルツハイマー病(Byun,PLoS One 2012)の病原であるというエビデンスが増えてきている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、FcRnに結合する抗体及びそれらの抗原結合部分を提供する。抗体はアルブミンのFcドメインへの結合部分にオーバーラップするFcRnのエピトープに結合し、FcRnのアルブミンへの結合を減少または阻害する。
【0007】
本明細書では、重鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、重鎖可変部はCDR1、CDR2及びCDR3を含み、
CDR1の配列は配列番号2であり、
CDR2の配列は配列番号4であり、
CDR3の配列は配列番号48である。
【0008】
一実施形態においては、CDR3の配列は配列番号46である。別の実施形態においては、CDR3の配列は配列番号44である。
【0009】
他の実施形態においては、CDR3の配列は、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号44、配列番号46、及び配列番号48からなる群から選択される。一実施形態においては、CDR3の配列は、配列番号27または配列番号31である。
【0010】
また、本明細書では、重鎖可変部及び軽鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、重鎖可変部及び軽鎖可変部はそれぞれCDR1、CDR2及びCDR3を含み、
重鎖のCDR1の配列は配列番号2であり、
重鎖のCDR2の配列は配列番号4であり、
重鎖のCDR3の配列は、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、及び配列番号39からなる群から選択され、
軽鎖のCDR1の配列は配列番号6であり、
軽鎖のCDR2の配列は配列番号8であり、
軽鎖のCDR3の配列は配列番号10である。
【0011】
一部の実施形態においては、重鎖のCDR3の配列は配列番号27または配列番号31である。
【0012】
一部の実施形態においては、本明細書の抗体及び抗原結合フラグメントはキメラ抗体もしくはヒト化抗体または抗原結合フラグメントである。
【0013】
また、本明細書では、重鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、重鎖可変部の配列は、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、もしくは配列番号40であるか、または重鎖可変部の配列は、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、もしくは配列番号40の重鎖可変部のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である。
【0014】
一部の実施形態においては、抗体またはその抗原結合フラグメントは軽鎖可変部を更に含み、軽鎖可変部の配列は配列番号22である。一部の実施形態においては、重鎖可変部の配列は配列番号28または配列番号32である。一部の実施形態においては、重鎖可変部の配列は配列番号28である。他の実施形態においては、重鎖可変部の配列は配列番号32である。
【0015】
また、本明細書では軽鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、軽鎖可変部の配列は、配列番号18、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号24であるか、または軽鎖可変部の配列は、配列番号18、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号24の軽鎖可変部のアミノ酸配列と少なくとも95%同一である。一部の実施形態においては、軽鎖可変部の配列は配列番号22である。一部の実施形態においては、軽鎖可変部の配列は配列番号22であり、抗体または抗原結合フラグメントは重鎖可変部を更に含み、重鎖可変部は配列番号12のフレームワーク領域を含む。一部の実施形態においては、軽鎖可変部の配列は配列番号22であり、抗体または抗原結合フラグメントは重鎖可変部を更に含み、重鎖可変部の配列は配列番号28である。他の実施形態においては、軽鎖可変部の配列は配列番号22であり、抗体またはそ抗原結合フラグメントは重鎖可変部を更に含み、重鎖可変部の配列は配列番号32である。
【0016】
また、本明細書では重鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、重鎖可変部は、配列番号12、配列番号14、もしくは配列番号16の重鎖可変部のアミノ酸配列のフレームワーク領域、または配列番号12、配列番号14、もしくは配列番号16のフレームワーク領域と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。一部の実施形態においては、重鎖可変部は、配列番号12の重鎖可変部のアミノ酸配列のフレームワーク領域、または配列番号12のフレームワーク領域と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0017】
また、本明細書では、軽鎖可変部を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、軽鎖可変部は、配列番号18、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号24の軽鎖可変部のアミノ酸配列のフレームワーク領域、または配列番号18、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号24のフレームワーク領域と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。一部の実施形態においては、軽鎖可変部は、配列番号22の軽鎖可変部のアミノ酸配列のフレームワーク領域、または配列番号22のフレームワーク領域と少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。
【0018】
本明細書に記載の抗体の一部の実施形態においては、抗体はアイソタイプIgG4を有する。一部の実施形態においては、抗体は重鎖においてS241P修飾を含む。一部の実施形態においては、抗体は重鎖においてC末端リジンを欠乏する。一部の実施形態においては、抗体は重鎖においてS241P修飾を含み、重鎖においてC末端リジンを欠乏する。
【0019】
一部の実施形態においては、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントは、scFv、Fv、Fab’、Fab、F(ab’)、または二重特異性抗体である。
【0020】
また、本明細書では、本明細書に記載のFcRnに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するまたはそれを交差ブロックする抗体が提供される。
【0021】
また、本明細書では、本明細書に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸が提供される。また、本明細書では、本明細書に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸を含む核酸ベクターが提供される。また、本明細書では、本明細書に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸を含む原核または真核宿主細胞が提供される。また、本明細書では、本明細書に記載のFcRn抗体または抗原結合フラグメント及び医薬的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0022】
また、本明細書では、FcRnとアルブミンとの相互作用を調節する方法であって、FcRnを本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントと接触させることを含む、方法が提供される。
【0023】
また、本明細書では、対象におけるアルブミンのレベルを低下させる方法であって、対象にアルブミンのレベルを低下させるのに有効な量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、対象は哺乳動物である。一部の実施形態においては、哺乳動物はヒトである。
【0024】
また、本明細書では、対象におけるアルブミン結合毒素のレベルを低下させる方法であって、対象にアルブミン結合毒素のレベルを低下させるのに有効な量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は外因性または内因性であり得る。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、またはアセトアミノフェンである。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は、アセトアミノフェンであり得る。一部の実施形態においては、治療的有効量の本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分を、他の作用剤、薬剤、またはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、または別々に)投与してもよい。一部の実施形態においては、周知の治療は標準治療であり得る。例えば、アルブミン結合毒素がアセトアミノフェンであり得る実施形態においては、方法は、同時に、別々に、または連続的にN-アセチルシステインの投与を更に含み得る。
【0025】
また、本明細書では、対象において、毒素への曝露を予防、治療、阻害、または減少させる方法であって、対象に有効量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は外因性または内因性であり得る。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、またはアセトアミノフェンである。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素はアセトアミノフェンであり得る。一部の実施形態においては、治療的有効量の本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分を、他の作用剤、薬剤、またはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、または別々に)投与してもよい。一部の実施形態においては、周知の治療法は標準治療であり得る。例えば、アルブミン結合毒素がアセトアミノフェンであり得る実施形態においては、方法は、同時に、別々に、または連続的にN-アセチルシステインの投与を更に含み得る。
【0026】
また、本明細書では、アルブミン毒性に関連する医学的病態を予防するまたは治療する方法であって、対象に有効量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、医学的病態は、冠動脈アテローム性硬化症及び末梢血管疾患である。一部の実施形態においては、医学的病態は、糖尿病性血管合併症である。一部の実施形態においては、医学的病態は、アルツハイマー病である。一部の実施形態においては、医学的病態は、外傷性脳障害である。一部の実施形態においては、医学的病態は、糖尿病である。一部の実施形態においては、医学的病態は、末期腎不全である。一部の実施形態においては、治療的有効量の本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分を、他の作用剤、薬剤、またはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、または別々に)投与してもよい。一部の実施形態においては、他の作用剤、薬剤、またはホルモンはそれぞれ医学的病態用の周知の治療法であり得る。一部の実施形態においては、周知の治療法は標準治療であり得る。
【0027】
また、本明細書では、アルブミンベースの治療薬を用いる治療の必要がある対象に、FcRnのアルブミン結合部位に特異的である抗FcRn抗体またはそのフラグメントを投与することを含む、アルブミンベースの治療薬を投与する前に内因性アルブミン分解を促進する方法が提供される。
【0028】
また、本明細書では、対象に投与されている外因性アルブミンベースの治療薬の分解を促進する方法が提供され、この方法は、FcRnのアルブミン結合部位に特異的である、有効量の抗FcRn抗体またはそのフラグメントを対象に投与することを含む。
【0029】
一部の実施形態においては、方法は対象にアルブミンベースの治療薬を投与するステップを更に含む。一部の実施形態においては、アルブミンベースの治療薬の薬物動態または薬力学が増強される。
【0030】
本特許または特許出願ファイルには、少なくとも1つのカラーの図面が含まれる。カラー図面(複数可)付きで公開された本特許または特許出願の写しは、要請及び必要な手数料の納付があれば、米国特許商標庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ヒト化重鎖変異体(V1、V1及びV4)のアミノ酸配列を示す図である。変異体はヒト重鎖可変ドメイン配列に基づき、潜在的な免疫原性を最小限にするために特定の位置に取り込まれたアミノ酸の変化を示すように整列される。ヒト化フレームワーク間で変動するアミノ酸残基には、下線を引く。Kabat CDRは枠で囲む。
図2】ヒト化軽鎖変異体(Vκ1~Vκ4)のアミノ酸配列を示す図である。変異体は、ヒト軽鎖可変ドメイン配列に基づき、潜在的な免疫原性を最小限にするために特定の位置に取り込まれたアミノ酸の変化を示すように整列される。ヒト化フレームワーク間で変動するアミノ酸残基には、下線を引く。Kabat CDRは枠で囲む。
図3】pH6.0及びpH7.4での競合ELISAの比較を示す図である。親scFvを中央に示す。更なる分析のための対象のscFvを枠で強調する。
図4】(a)pH7.4または(b)pH6.0のいずれかでの、ヒト化親和性成熟抗FcRn抗体の抗FcRn競合ELISA試験を示す図である。IgGはHEK細胞で一時的に発現した。pH7.4またはpH6.0のいずれかで、組換えヒトFcRnへの結合に関し、抗FcRnヒト化親和性成熟変異体の希釈系列を、固定された濃度のビオチン化されたマウスの親に対して試験した。結合したビオチン化されたマウスの親はストレプトアビジン-HRP及びTMB基質を用いて検出した。
図5】pH6.0での、ヒト化親和性成熟抗FcRn抗体の抗FcRn競合ELISA試験を示す図である。IgGは安定してNS0細胞において発現した。pH6.0で、組換えヒトFcRnへの結合に関し、抗FcRnヒト化親和性成熟変異体の希釈系列を、固定された濃度のビオチン化されたマウスの親に対して試験した。結合したビオチン化されたマウスの親をストレプトアビジン-HRP及びTMB基質を用いて検出した。
図6】pH7.4での、ヒト化親和性成熟抗FcRn抗体の抗FcRn競合ELISA試験を示す図である。IgGは安定してNS0細胞において発現した。pH7.4で、組換えヒトFcRnへの結合に関し、抗FcRnヒト化親和性成熟変異体の希釈系列を、固定された濃度のビオチン化されたマウスの親に対して試験した。結合したビオチン化されたマウスの親をストレプトアビジン-HRP及びTMB基質を用いて検出した。
図7-1】pH7.4及びpH6.0での、mAbのヒトFcRnへの結合を示す図である。固定化されたmAb(A)SYNT002h(ヒト化親V1/Vκ1)、(B)SYNT002-3(G15_C3/Vκ3)、(C)SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)、(D)SYNT002-16(G50_C10/Vκ3)、(E)SYNT002-17(G54_D11/Vκ3)、及び(F)SYNT002-21(G49_H9.3/Vκ3)上に注入された滴定量のhFcRnの結合を示す代表的なセンサーグラム。
図7-2】pH7.4及びpH6.0での、mAbのヒトFcRnへの結合を示す図である。固定化されたmAb(A)SYNT002h(ヒト化親V1/Vκ1)、(B)SYNT002-3(G15_C3/Vκ3)、(C)SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)、(D)SYNT002-16(G50_C10/Vκ3)、(E)SYNT002-17(G54_D11/Vκ3)、及び(F)SYNT002-21(G49_H9.3/Vκ3)上に注入された滴定量のhFcRnの結合を示す代表的なセンサーグラム。
図8】Aは、指示された時点での、24時間ベースライン(±標準誤差)に基づいて残存するアルブミンの平均%としてプロットされたSYNT002-8(G47_B10/Vκ3)及びSYNT002-16(G50_C10/Vκ3)の試験結果を示す図である。Bは、用量依存的に、SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)が効果的にアルブミン異化反応を増加させたことを示す図である。結果を、指示された時点での、24時間ベースラインと比較して残存するヒトアルブミンの平均百分率(±SEM)のlog10として示す。
図9】PCS、NAC(140mg/kg)、SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)(10mg/kg)、またはAPAP投与の2時間後にIgG4アイソタイプ対照(10mg/kg)を受けるFcgrtTGマウスにおけるより低いレベルのAPAP投与の6及び8時間後の血清ALTレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一態様においては、本明細書では、FcRnに結合する抗体及び結合タンパク質が提供される。より詳細には、抗体は、アルブミンの結合部位にオーバーラップするFcRnのエピトープに結合する。それゆえ、抗体は、アルブミンへのFcRnの結合、分解からのアルブミンの保護、及びアルブミン結合化合物の半減期延長などのFcRn媒介機能を調節する。別の態様においては、FcRn抗体またはその抗原結合部分をコードする配列を含む単離された核酸が提供される。別の態様においては、FcRn抗体またはその抗原結合部分及び薬学的に許容される担体を含む対象への投与に好適な組成物が提供される。
【0033】
一部の実施形態においては、本明細書に開示の抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合を阻害するが、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合は阻害しない。一部の実施形態においては、本明細書に開示の抗体はアルブミンの血清半減期は減少させるが、ヒトIgGの血清半減期は減少させない。
【0034】
別の態様においては、FcRnとアルブミンとの相互作用を調節する方法が提供される。例えば、アルブミンのFcRnへの結合を減少させることにより、本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部分を使用して、循環するアルブミンの半減期を短縮させ、急性及び慢性毒性曝露を治療または予防することができる。アルブミンは広範囲の化合物及び分子、例えば、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、及びキニジンに結合することが周知である(例えば、Varshney et al.,Ligand binding strategies of human serum albumin:How can the cargo be optimized.Chirality.2010(22):77-87参照)。リシンはアルブミンに結合することも周知である(Blome and Schengrund.,Toxicon.2008 51(7):1214-24)。また、アセトアミノフェンはヒト血清アルブミンに結合することが見出されている(Damsten et al.,Drug Metab Dispos.2007 35(8):1408-17)。かかる化合物及び分子の排泄は、種々の薬剤(アルブミン結合薬物及び融合タンパク質)の毒性過剰投与、重金属毒性、細菌性過負荷、細菌性敗血症、及び種々の他の病態を含むが、これらに限定されない様々な病態の治療において有利である。
【0035】
同様に、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合部分を使用して、アルブミン毒性に関連する医学的病態、またはより低いレベルが有益であると示されている医学的病態を治療するため、循環するアルブミンの半減期を短縮させてもよい。例えば、アルブミンは、冠動脈アテローム性硬化症及び末梢血管疾患(Song,Atherosclerosis 2012)、糖尿病性血管合併症(Kim,Diab Metab J 2012;Murea,Am J Nephrol 2012)、アルツハイマー病(Byun,PLoS One 2012)、及び外傷性脳障害(The SAFE Study Investigators,N Engl J Med 2007)に関連している。循環するアルブミンを減少させることは、糖尿病、末期腎不全、及び他の病気、疾病、または疾患の治療においても有用であり得る。
【0036】
新生児Fcレセプターとしても周知のFcRnは、アルブミンの内在性膜Fcレセプターである。FcRnは、膜結合アルファ鎖(GenBank受託番号NM004107)及び可溶性β2-ミクログロブリン(β2m)(GenBank受託番号NM004048)のヘテロ二量体であり、MHCクラスI分子と構造的に関連している。FcRnは、取り込まれたアルブミンに結合し、それをリソソームコンパートメントにおける分解から保護すること、及び中性細胞外pHで放出するためにアルブミンを細胞表面に輸送することによって、アルブミン濃度を調節する。この機構を介して、FcRnはアルブミンの長い半減期の原因となる。従って、病原性アルブミン結合毒素の分解を促進するため、FcRn-アルブミン相互作用の特定の遮断が使用できる。
【0037】
FcRnに特異的に結合し、FcRnのアルブミンへの結合をブロックするがFcRnのIgG-Fc結合部位に実質的に結合しないマウスの抗体から誘導される抗体が提供される。この抗体は、pH7.4及びpH6.0でのFcRnに対する結合親和性の実質的な改善を有し、その結果、生理的及び酸性条件下でのアルブミンのFcRnへの結合をブロックする。抗体は自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用である。抗体は、1つ以上の親和性成熟CDRを含む。親和性成熟化手順により、6.0~7.4の臨界pH範囲を超えて高親和性でFcRnと結合する抗体が提供される。こうして、抗体はエンドソームの酸性環境に一旦内在化されたアルブミンの結合を、効果的にブロックする。
【0038】
特定の実施形態によれば、改善された抗体はまた、免疫原性の低下のためのヒト化フレームワークを特徴とする。特定の実施形態においては、FcRn特異抗体のCDRはヒト抗体から得られるフレームワークに位置づけられる。他の実施形態においては、FcRn特異抗体のCDRは2つ以上のヒト抗体の複合体であるフレームワークに位置づけられる。他の実施形態においては、FcRn特異抗体の表面曝露フレームワーク残基はヒト抗体のフレームワーク残基と置き換えられる。好ましい実施形態においては、フレームワークは、広い個体群範囲にわたってT細胞エピトープであると予測されるアミノ酸配列の存在を最小化するように選択される。CDRは、ヒト定常領域(すなわち、キメラ抗体)に連結するマウスフレームワークに位置づけられ得る。
【0039】
更に本明細書に記載のように、親和性成熟化のため、重鎖可変ドメインCDR3領域を、pH6.0~pH7.4でscFv形態で突然変異させ、選別した。アミノ酸配列の変形形態を、以下:a.a.94:K、R;a.a.95:A、C、D、E、F、G、H、I、L、P、Q、R、S、V、W、Y;a.a.96:A、D、E、G,H、K、N、P、Q、R、S、T;a.a.97:A、C、D、F、G、H、L、P、R、S、T、V、Y;a.a.98:A、D、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V;a.a.99:A、C、D、G、H、N、P、R、S、T、Y;a.a.100:A、G、S、Tのようにそれぞれの位置で選択されたアミノ酸を提供する配列ARGBNSVVSBNCVNCNVCRSC(配列番号41)を含むオリゴヌクレオチドを用いて、アミノ酸位置94~100(CDR3Hのa.a.95~100及びFW3のa.a.94)で重鎖CDR3H領域に導入した。アミノ酸配列の変形形態を、以下:a.a.94:R;a.a.95:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.96:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.97:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.98:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.99:A、G、S、Tのようにそれぞれの位置で選択されたアミノ酸を提供する配列AGGNNSNNSNNSNNSRSC(配列番号42)を含むオリゴヌクレオチドを用いて、アミノ酸位置94~99(CDR3Hのa.a.95~99及びFW3のa.a.94)で重鎖CDR3H領域に導入した。
【0040】
以下の実施例に示すように、これにより、いくつかのFcRn結合親和性が実質的に改善したCDR3H変異体がもたらされる。CDR3Hライブラリに導入された可変性と比較して得られた変異体の検査により、アミノ酸が比較的変化しない特定の位置、及び変異が導入されることができ、結合が改善される他の位置が示される。従って、FcRnに結合する抗体またはその結合部分が提供され、重鎖は可変であり得る特定のアミノ酸を含むCDR3Hを含む。かかる一実施形態においては、CDR3HはXESTTX(XはA、またはLであり、XはT、またはRである)(配列番号43)を含む。かかる別の実施形態においては、重鎖CDR3HはXESTTXVGDY(XはA、またはLであり、XはT、またはRである)(配列番号44)である。かかる別の実施形態においては、重鎖CDR3HはXESTTX(XはG、A、またはLであり、XはT、またはRである)(配列番号45)を含む。かかる別の実施形態においては、重鎖CDR3HはXESTTXVGDY(XはG、A、またはLであり、XはT、またはRである)(配列番号46)である。かかる別の実施形態においては、重鎖CDR3HはX(XはG、A、F、またはLであり、XはE、A、またはDであり、XはS、T、またはAであり、XはT、L、P、またはVであり、XはT、S、またはAであり、XはTまたはAである)(配列番号47)を含む。かかる別の実施形態においては、重鎖CDR3HはXVGDY(XはG、A、F、またはLであり、XはE、A、またはDであり、XはS、T、またはAであり、XはT、L、P、またはVであり、XはT、S、またはAであり、XはTまたはAである)(配列番号48)である。
【0041】
特定の実施形態においては、CDR3HはGESTTTVGDY(配列番号25)、AESTTTVGDY(配列番号27)、FSSLSTVGDY(配列番号29)、またはLESTTAVGDY(配列番号31)である。特定の実施形態においては、CDR3HはFDTPATVGDY(配列番号33)、FDTPSTVGDY(配列番号35)、FDSLSTVGDY(配列番号37)、またはLEAVSAVGDY(配列番号39)である。これらの実施形態の特定のものにおいては、重鎖可変ドメインの位置103でのアミノ酸は、トリプトファンである。これらの実施形態の特定のものにおいては、重鎖可変ドメインの位置103でのアミノ酸は、アルギニンである。
【0042】
CDR3Hが上記に記述される通りである特定の実施形態においては、CDR1Hは配列番号2により記述され、CDR2Hは配列番号4により記述される。
【0043】
いくつかの重鎖及び軽鎖フレームワークを開発した。免疫原性T細胞エピトープを最小化することに目を付けて、ヒト化フレームワークをヒト可変ドメイン配列から組み立てた。3つのかかるヒト化重鎖フレームワーク及び4つのかかる軽鎖ヒト化フレームワークを例証する:V1(配列番号12);V3(配列番号14);V4(配列番号16);Vκ1(配列番号18);Vκ2(配列番号20);Vκ3(配列番号22);及びVκ4(配列番号24)。これらの例証されたヒト化フレームワークに対応するオリゴヌクレオチド配列は、配列番号11(V1);配列番号13(V3);配列番号15(V4);配列番号17(Vκ1);配列番号19(Vκ2);配列番号21(Vκ3);及び配列番号23(Vκ4)により記述される。配列番号12、配列番号14、配列番号16、及び配列番号18、CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hアミノ酸に提供される重鎖可変ドメイン配列は、「Xaa」として代表的である。CDR1H及びCDR2Hのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2及び配列番号4として記述される。CDR1Hに対応するオリゴヌクレオチド配列は配列番号1により記述され、CDR2Hに対応するオリゴヌクレオチド配列は配列番号3により記述される。配列番号18、配列番号20、配列番号22、及び配列番号24で提供される軽鎖可変ドメイン配列においては、特定のアミノ酸は全ての位置で特定されている。CDR1Lのアミノ酸配列は配列番号6として記述され、CDR2Lは配列番号8として記述され、CDR3Lは配列番号10として記述される。対応するオリゴヌクレオチド配列は、配列番号5(CDR1L);配列番号7(CDR2L);及び配列番号9(CDR3L)により記述される。重鎖及び軽鎖におけるFW及びCDRの位置は、それぞれ図1及び図2から明白である。
【0044】
表1は、親和性成熟された、ヒト化FcRn結合抗体重鎖及び軽鎖可変ドメインならびにCDRの非限定例を提供する。本明細書に記載のように、可変ドメインは、pH6.0及びpH7.4で結合を改善するように選択され、親マウス抗体に対して実質的に改善された結合を実証した。
【表1】
【0045】
親和性成熟重鎖CDR3を、重鎖CDR1(例えば、配列番号2を有するCDR1)及び/または重鎖CDR2(例えば、配列番号4を有するCDR2)と組み合わせてもよい。
【0046】
以下の実施例に開示のように、本明細書で例証される様々な抗体可変ドメインは、マウス抗体に基づき、親和性成熟CDRを含み、特定の実施形態はまたヒト化FWを特徴とする。表1に開示の任意の重鎖可変ドメインを、任意の開示される軽鎖と共発現させ、官能性抗FcRn抗体を作製してもよい。また、親和性成熟重鎖可変ドメインを、本明細書に開示のヒト化非親和性成熟軽鎖可変ドメインと対にしてもよく、親和性成熟軽鎖可変ドメインをヒト化非親和性成熟重鎖可変ドメインと対にしてもよい。好ましい実施形態においては、親和性成熟重鎖可変ドメインをヒト化軽鎖可変ドメインと対にしてもよい。また、表1ではV1における重鎖CDRが記述される。重鎖CDRはまた、例えば本明細書に開示のフレームワークV3、及びV4と適合性がある(図1参照)。本明細書で用いられる、呼称V1、V3、V4、Vκ1、Vκ2、Vκ3、及びVκ4は、本明細書に開示の代表的なヒト化フレームワークを指し、ヒト生殖系列遺伝子ファミリの参照ではない。本明細書に開示の重鎖または軽鎖可変ドメインを相補性可変ドメインのライブラリに組み合わせ、改良されたまたは改変された結合特性を有する新規の抗体を同定するため選別しすることができることは明白であろう。
【0047】
本明細書では、表1に開示されたものに類似するが同一ではない抗体及び抗原結合部分が提供される。抗体は1つ以上のアミノ酸置換、欠損、挿入、及び/または付加を有することができる。特定の実施形態においては、FcRn抗体は、表1に記述される重鎖可変ドメインに少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一の重鎖可変ドメインを含む。
【0048】
実施形態においては、FcRn抗体は、CDR配列、すなわち表1に記述されるCDR1H、CDR2H、及びCDR3HならびにV1、V3、もしくはV4のフレームワーク(すなわち、FW1、FW3、及びFW4)またはV1、V3、もしくはV4のフレームワークに少なくとも85%、90%、または95%同一のフレームワークを含む重鎖可変ドメインを含む。実施形態においては、FcRn抗体は、表1に記述されるCDR配列及び重鎖重鎖可変ドメインが表1に記述される可変ドメインに少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一となるようにフレームワークを含む重鎖可変ドメインを含む。
【0049】
実施形態においては、FcRn抗体は、CDR配列、すなわち表1に記述されるCDR1H、CDR2H、及びCDR3H及びV1、V3、もしくはV4のフレームワーク(すなわち、FW1、FW3、及びFW4)またはV1、V3、もしくはV4のフレームワークに少なくとも85%、90%、または95%同一のフレームワークを含む重鎖可変ドメイン、ならびにVκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ4またはVκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ4に少なくとも85%、90%、または95%同一の配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0050】
「同一性」は、2つの配列の最適なアラインメントに導入される必要がある、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れて、2つのアミノ酸または核酸配列により共有される同一の位置の数または百分率を指す。
【0051】
アミノ酸配列が別のアミノ酸配列と少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であると記載される場合、アミノ酸配列は保存的置換(全ての置換が保存的置換である場合を含む)により異なってもよい。
【0052】
アミノ酸置換は、ある場合には、(a)置換領域におけるペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さの保持に対する作用において大幅に異ならない置換を選択することにより行うことができる。例えば、天然残基を、側鎖特性;(1)疎水性アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン)、(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリン、及びスレオニン)、(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、及びアルギニン)、(5)鎖の配向に影響するアミノ酸(グリシン及びプロリン)、ならびに(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニン)に基づくグループに分割することができる。これらのグループの範囲内で行われる置換は、保存的置換であると考えられる。置換の例としては、限定されるものではないが、アラニンに対するバリン、アルギニンに対するリジン、アスパラギンに対するグルタミン、アスパラギン酸に対するグルタミン酸、システインに対するセリン、グルタミンに対するアスパラギン、グルタミン酸に対するアスパラギン酸、グリシンに対するプロリン、ヒスチジンに対するアルギニン、イソロイシンに対するロイシン、ロイシンに対するイソロイシン、リジンに対するアルギニン、メチオニンに対するロイシン、フェニルアラニンに対するロイシン、プロリンに対するグリシン、セリンに対するスレオニン、スレオニンに対するセリン、トリプトファンに対するチロシン、チロシンに対するフェニルアラニン、及び/またはバリンに対するロイシンの置換が挙げられる。
【0053】
配列の類似性を同定するための方法及びコンピュータプログラムは公的に入手可能であり、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Research 12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)及びALIGN program(version 2.0)が挙げられる。周知であるSmith Watermanのアルゴリズムを使用して類似性を決定してもよい。BLASTプログラムはNCBI及び他の供給元(BLAST Manual,Altschul,et al.,NCBI NLM NIH,Bethesda,Md.20894;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/でのBLAST2.0)から公的に入手可能である。配列の比較において、これらの方法は様々な置換、欠損、及び他の修飾を説明する。
【0054】
本明細書で用いられる用語「相補性決定領域」(CDR、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3)は、その存在が抗原結合に必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは通常、CDR1、CDR2及びCDR3として識別される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatにより定義される(すなわち、軽鎖可変部において残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおいて31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)について)「相補性決定領域」由来のアミノ酸残基を含み得る。同様に、「フレームワーク」(FW)は、Kabatナンバリングシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987,1991))を考慮に入れて、軽鎖可変部において、アミノ酸1~23(FW1)、35~49(FW2)、57~88(FW3)、及び98~107(FW4)ならびに重鎖可変ドメインにおいて1~30(FW1)、36~49(FW2)、66~94(FW3)、及び103~113(FW4)を含む。
【0055】
Kabatの残基指定は、必ずしもアミノ酸残基の直鎖の番号付けと直接対応するとは限らない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワークであっても、相補性決定領域(CDR)であっても、構造成分の短縮もしくは挿入に対応する厳密なKabatナンバリングよりも少ない、または追加のアミノ酸を含み得る。抗体の配列における相同性の残基の、「標準的な」Kabat番号付き配列とのアラインメントにより、所定の抗体に関して残基の正しいKabatナンバリングを同定することができる。
【0056】
本明細書で用いられる「抗体可変ドメイン」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)及びフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖の一部を指す。Vは重鎖の可変ドメインを指す。Vは軽鎖の可変ドメインを指す。
【0057】
抗体は特定の抗原または物質を認識し結合するタンパク質である。好ましい実施形態においては、本明細書に記述される抗体または抗原結合部分は、少なくとも天然の配位子(すなわち、アルブミン)と同程度強くFcRnに結合する。抗原の抗体との解離の平衡定数(Kd)に表される親和性により、抗原決定基と抗体結合部位との結合強度が測定される。抗体の抗原への親和性は、好適な表面プラズモン共鳴測定値の使用により測定され得る。かかる測定は、国際特許出願公開WO2005/012359及び本明細書の他の箇所に記載のBIACORE(登録商標)アッセイであり得る。親和性を測定する他の方法としては、酵素結合免疫吸着測定法またはラジオイムノアッセイなどの競合アッセイが挙げられる。
【0058】
アビディティは、抗体とその抗原との結合強度の尺度である。アビディティは、抗原決定基と抗体上の抗原結合部位との親和性及び抗体あたりの結合部位の数(原子価)の両方に関連する。例えば、一価の抗体(例えば、FabまたはscFv)は、特定のエピトープに1つの結合部位を有する。IgG抗体は2つの抗原結合部位を有する。Kの典型的な値(解離定数Kの逆数)は、10~1011リットル/モルである。10リットル/モルよりも弱い任意のKは、非特異性である結合を示すと考えられている。
【0059】
特定の実施形態においては、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合部位は、10~1012リットル/モル、10~1012リットル/モル、10~1012リットル/モル、10~1012リットル/モル、10~1012リットル/モル、1010~1012リットル/モル、または1011~1012リットル/モルのKでヒトFcRnのアルブミン結合部位に結合する。他の実施形態においては、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合部位は、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、または1010~1011リットル/モルのKでヒトFcRnのアルブミン結合部位に結合する。他の実施形態においては、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合部位は、10~1010リットル/モル、10~1010リットル/モル、10~1010リットル/モル、10~1010リットル/モル、または10~1010リットル/モルのKでヒトFcRnのアルブミン結合部位に結合する。他の実施形態においては、本明細書に記載の抗体またはそれらの抗原結合部位は、10~10リットル/モル、10~10リットル/モル、または10~10リットル/モルのKでヒトFcRnのアルブミン結合部位に結合する。
【0060】
ヒトに投与する際に免疫原性を最小化するため、本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部位は、好ましくはヒト定常ドメインを含む。従って、抗体は、IgG、IgG2a、IgG2b、IgG、IgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgEを含むが、これらに限定されないアイソタイプまたはサブタイプであり得る。抗体クラスは、エフェクター機能(例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増加または減少)を最適化するように選択され得る。特定の実施形態においては、定常領域(すなわち、C1、C2、C3、及び/またはヒンジ領域)は改変され、例えばFcレセプターへの結合が増加または減少する。特定の実施形態においては、定常ドメインは改変され、重鎖-重鎖結合を促進または安定化させる。特定の実施形態においては、抗体はIgG抗体であり、重鎖のヒンジ領域は、位置241でのセリンのプロリンへの変化により変性され、血清半減期の延長がもたらされる(Angal et al.,1993,Mol.Immunol.30:105-108)。特定の実施形態においては、抗体はIgG抗体であり、重鎖の位置478でC末端リジンが除去される。一部の実施形態においては、IgG抗体はS241P修飾の両方を有し、C末端リジンを欠く。
【0061】
特定の実施形態においては、FcRn結合抗体フラグメントが提供される。Fvは、6つの超可変ループ(CDR)を含む完全な重鎖及び軽鎖可変ドメインを含む最小のフラグメントである。定常ドメインが不足していると、可変ドメインは非共有結合的に結合している。重鎖及び軽鎖は、V及びVドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にするリンカーを用いて、単一のポリペプチド鎖(「単鎖Fv」または「scFv」)に連結され得る。例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423及びHuston et al,,1988,Proc. Natl.Acad.Sci USA 85:5879を参照されたい。実施形態においては、リンカーは(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)である。全抗体の定常ドメインを欠くため、scFvフラグメントは全抗体よりもかなり小さい。scFvフラグメントはまた、特定の実施形態において所望であり得る他の生物学的分子との通常の重鎖定常ドメイン相互作用を含まない。
【0062】
本明細書で用いられる「抗体」は、モノマーならびに多量体及び結合フラグメントを指す。多量体を含むインタクトな抗体、または抗体の抗原結合領域を有する抗体フラグメントを使用することができる。抗原結合領域は、限定されないが、Fv、scFv、Fab、Fab’及びF(ab’)フラグメントを含む。抗体フラグメントの調整方法は、当該技術分野において周知である。例えば、重鎖ヒンジ領域を欠く一価のFabフラグメントを、パパインを用いるタンパク質消化により全免疫グロブリンから調製することができる。重鎖ヒンジ領域を保持する二価のF(ab’)フラグメントは、ペプシンを用いるタンパク質消化により調製することができる。
【0063】
、V、及び場合によりC、C1、または他の定常ドメインを含む抗体のフラグメントも使用することができる。かかるフラグメントもまた、組換え産生され得る。多くの他の有用な抗原結合抗体フラグメントは当該技術分野において公知であり、限定されることなく、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単一ドメイン抗体、ならびに他の一価及び多価の形態を含む。
【0064】
限定されないが、抗体、それらの抗原結合フラグメントの形態であり得る、多価の抗原結合タンパク質、及び抗体の抗原結合部分の全てまたは一部を含むタンパク質が更に提供される。多価の抗原結合タンパク質は、単一特異性、二重特異性、または多特異性であり得る。特異性という用語は、特定の分子が結合できる異なる種の抗原決定基の数を指す。免疫グロブリン分子が一種の抗原決定基にのみ結合する場合、免疫グロブリン分子は単一特異性である。免疫グロブリン分子が異なる種の抗原決定基に結合する場合、免疫グロブリン分子は多特異性である。
【0065】
一実施形態においては、多価の単鎖抗体は、可変重鎖フラグメント(scFvに類似)に結合された可変軽鎖フラグメントを含み、更に別のペプチドリンカーによって少なくとも1つの他の抗原結合ドメインに結合されている。通常、ペプチドリンカーは約15のアミノ酸残基からなる。好ましい実施形態においては、V及びVドメインの数は同等である。例えば、二価の単鎖抗体は、以下に代表されることができる:V-L-V-L-V-L-VまたはV-L-V-L-V-L-VまたはV-L-V-L-V-L-VまたはV-L-V-L-VL-L-V。三価以上の多価の単鎖抗体は、追加のペプチドリンカーにより二価の単鎖抗体に結合する1つ以上の抗体フラグメントを有する。三価の単鎖抗体の一例は:V-L-V-L-V-L-V-L-V-L-Vである。
【0066】
2つの単鎖抗体を組み合わせて、二価の二量体としても既知の二重特異性抗体を形成することができる。例えば、欧州特許出願0 404 097号またはHollinger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444を参照されたい。二重特異性抗体は2つの鎖を有する。二重特異性抗体の各鎖は、約5~10のアミノ酸残基、例えば、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)の短いリンカーによりVドメインに結合するVドメインを含む。かかるリンカーは、同一鎖上のドメイン間の、鎖間のペアリングを防止のするに十分短く、従って、異なる鎖上の相補ドメイン間の鎖間のペアリングを促進し、2つの抗原結合部位を再現する。二重特異性抗体の構造は小型であり、分子の反対側の末端に抗原結合部位を有する。
【0067】
及びVフレームワーク配列変異体ならびに親和性成熟抗体を、前臨床ex vivoアッセイに供し、潜在的な免疫原性を評価することができる。1つのかかるアッセイは、タンパク質治療に対するT細胞の応答の定量化によりT細胞免疫原性を予測する効果的な技術を提供するEPISCREEN(商標)である。アッセイは、世界人口で発現されるHLA-DRアロタイプの数及び頻度を最もよく表すために、MHCクラスIIハプロタイプに基づいて慎重に選択された献血者のコホートを使用する。アッセイは、全タンパク質の免疫原性をT細胞応答の程度及び頻度の両方で評価することができる方法を提供する(Jones et al.,J Interferon Cytokine Res.2004 24(9):560-72;Jones et al.,J Thromb Haemost.2005 3(5):991-1000)。
【0068】
本明細書に開示された抗体のFcRnへの結合に競合するか、もしくはそれを交差ブロックする抗体、または本明細書に開示の抗体により結合するFcRnから交差ブロックされる抗体が、本明細書に開示のFcRn活性をブロックする方法において使用され得る。ある場合には、これらの競合する、交差ブロックする、または交差ブロックされた抗体は、本明細書に記載の抗体により結合されたエピトープと接する及び/または重なるFcRnのエピトープに結合する。ある場合には、これらの競合する、交差ブロックする、または交差ブロックされた抗体は、本明細書に記載の抗体により結合されたエピトープと同じであるFcRnのエピトープに結合する、キメラ抗体、完全ヒト抗体、またはヒト化抗体である。
【0069】
競合する、交差ブロックする、及び交差ブロックされた抗体は、競合するまたは交差ブロックする抗体のヒトFcRnへの結合が、本明細書に開示の抗体の結合を阻止するか、もしくはその逆である競合ELISAまたはBIACORE(登録商標)アッセイを含む当該技術分野において公知の任意の好適な方法により同定することができる。
【0070】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックする抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックし、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、及び配列番号40からなる群から選択される重鎖配列ならびに配列番号18、配列番号20、配列番号22、及び配列番号24からなる群から選択される軽鎖配列を有する抗体の結合と競合するまたはそれを交差ブロックする抗体である。一部の実施形態においては、競合または交差ブロックは80%超、85%超、90%超、または95%超である。
【0071】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックする抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックし、配列番号28の重鎖配列及び配列番号22軽鎖配列を有する抗体の結合と競合するまたはそれを交差ブロックする抗体である。一部の実施形態においては、競合または交差ブロックは80%超、85%超、90%超、または95%超である。
【0072】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックする抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックし、配列番号32の重鎖配列及び配列番号22軽鎖配列を有する抗体の結合と競合するまたはそれを交差ブロックする抗体である。一部の実施形態においては、競合または交差ブロックは80%超、85%超、90%超、または95%超である。
【0073】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックする抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックする抗体であり、このFcRnへの結合は、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、及び配列番号40からなる群から選択される重鎖配列ならびに配列番号18、配列番号20、配列番号22、及び配列番号24からなる群から選択される軽鎖配列を有する抗体により競合または交差ブロックされる。一部の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックされる抗体は、80%超、85%超、90%超、または95%超に競合または交差ブロックされる。
【0074】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックされる抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックする抗体であり、このFcRnへの結合は、配列番号28の重鎖配列及び配列番号22の軽鎖配列を有する抗体により、競合または交差ブロックされる。一部の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックされる抗体は、80%超、85%超、90%超、または95%超に競合または交差ブロックされる。
【0075】
特定の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックされる抗体は、アルブミンのヒトFcRnへの結合をブロックする抗体であり、このFcRnへの結合は、配列番号32の重鎖配列及び配列番号22の軽鎖配列を有する抗体により、競合または交差ブロックされる。一部の実施形態においては、競合するまたは交差ブロックされる抗体は、80%超、85%超、90%超、または95%超に競合または交差ブロックされる。
【0076】
一部の実施形態においては、競合する、交差ブロックする、または交差ブロックされた抗体は、キメラ抗体、完全ヒト抗体、またはヒト化抗体である。一部の実施形態においては、競合する、交差ブロックする、または交差ブロックされた抗体は、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、10~1011リットル/モル、または1010~1011リットル/モルの親和性でヒトFcRnのアルブミン結合部位に結合する。
【0077】
本明細書では、抗FcRn抗体をコードする核酸ならびにこれらの官能基フラグメント、ベクター、宿主細胞及び発現系もまた提供される。抗FcRn抗体をコードする核酸及びこれらの官能基フラグメントは、例えば、DNA、cDNA、RNA、合成的に産生されたDNAもしくはRNA、またはそれらのポリヌクレオチドのいずれかを単独でまたは組み合わせて含む組換え産生されたキメラ核酸分子であってもよい。例えば、真核及び/または原核宿主細胞における発現に好適な発現制御配列に作動可能に連結されている、本明細書に記載の抗FcRn抗体をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。開発されている酵母及び哺乳動物細胞培養系を含むが、これらに限定されない、細菌群及び真核細胞系などの原核細胞での抗体及びフラグメントの効率的な合成のための種々の発現ベクターが開発されている。ベクターは染色体、非染色体及び合成DNAのセグメントを含むことができる。一部の実施形態においては、核酸は配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号41、または配列番号42を含み得る。
【0078】
任意の好適な発現ベクターを使用することができる。例えば、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、pUC、pKSM、及びRP4などのE.coliからのプラスミドを含む原核クローン化ベクターが挙げられる。原核ベクターはまた、M13及び他の繊維状単鎖DNAファージなどのファージDNAの誘導体も含む。酵母における有用なベクターの例は2μプラスミドである。哺乳動物細胞における発現に好適なベクターとしては、周知のSV40の誘導体、アデノウィルス、レトロウィルス由来DNA配列及び上記のものなどの官能性哺乳動物ベクターの組合せから誘導されたシャトルベクターならびに官能性プラスミド(例えば、pLenti6.3/V5-DEST(登録商標)、pT-Rex(商標)-DEST31(登録商標)、pGene/V5-HispGene/V5-His(登録商標)(Life Technologies,Norwalk,CT))が挙げられる。
【0079】
更なる真核発現ベクターは、当該技術分野において公知である(例えば、P.J.Southern and P.Berg,J.Mol.Appl.Genet.,1,327-341(1982);Subramani et al.,Mol.Cell.Biol.,1:854-864(1981);Kaufmann and Sharp,“Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene,”J.Mol.Biol.159,601-621(1982);Kaufmann and Sharp,Mol.Cell.Biol.159,601-664(1982);Scahill et al.,“Expression And Characterization Of The Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells,”Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 80,4654-4659(1983);Urlaub and Chasin,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 77,4216-4220,(1980))。
【0080】
発現ベクターは、発現されるDNA配列またはフラグメントに作動可能に結合する少なくとも1つの発現制御配列を含み得る。制御配列は、クローン化されたDNA配列の発現を制御及び調節するため、ベクター内に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ラムダファージの主要なオペレータ領域及びプロモータ領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモータ(例えば3-ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモータ)、酵母酸性ホスファターゼのプロモータ(例えばPho5)、酵母α-交配因子のプロモータ、サイトメガロウイルス、ポリオーマ、アデノウィルス、レトロウィルス、及びシミアンウイルス由来のプロモータ(例えば初期及び後期プロモータまたはSV40)、ならびに原核または真核細胞及びそれらのウイルスまたはそれらの組み合わせの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列である。使用され得る他の発現制御配列は、チャイニーズハムスター延長因子-1α(CHEF1)遺伝子由来のDNA制御配列を含む(Running Deer&Allison,2004,Biotechnol.Prog.20:880-889;米国特許第5,888,809号)。
【0081】
以前に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞もまた提供される。本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部位は、ハイブリドーマ以外に細胞株において発現することができる。本明細書に記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸を、好適な哺乳動物宿主細胞の変換に使用することができる。
【0082】
特に好ましい細胞株は、高レベルの発現、目的のタンパク質の構成的発現及び宿主タンパク質からの最小の汚染に基づいて選択される。発現のための宿主として入手可能な哺乳動物細胞株は当該技術分野において周知であり、NS0細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及び多くの他のものなどであるが、これらに限定されない多くの不死化細胞株を含む。一部の実施形態においては、細胞は、腹水から高濃度のIgGを回収することができるマウスの腹腔内での培養においてトランスフェクトして増殖させることができる骨髄腫細胞、例えばSP2/0である。好適な更なる真核細胞としては、酵母及び他の菌類が挙げられる。有用な原核宿主としては、例えば、E.coli SG-936、E.coli HB101、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli X2282、E.coli DHI及びE.coli MRClなどのE.coli、Pseudomonas、Bacillus subtilisなどのBacillus、ならびにStreptomycesが挙げられる。
【0083】
これらの本発明の組換え宿主細胞を、抗体またはその抗原結合部分を産生するために、抗体またはそのフラグメントの発現を可能にする条件下で細胞を培養し、宿主細胞または宿主細胞を取り囲む培地から抗体またはそのフラグメントを精製することによって、使用することができる。従って、一実施形態においては、FcRnのアルブミン結合領域に結合できる抗体を産生するための方法が提供され、当該方法は、(a)上記の通り、宿主細胞を培養すること、及び(b)当該抗体を宿主細胞または宿主細胞の培養培地から抗体を単離することを含む。
【0084】
形質転換された宿主を、発酵槽で増殖させ、当該技術分野において公知の技術により培養することができる。抗体の発現が所望のレベルに到達する際、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムでの精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当該技術分野の標準的な手順に従い抗体を精製することができる。本明細書に記載の治療的な方法における使用に関し、抗体を少なくとも90%、95%、98%、または99%の純度まで精製することが好ましい。
【0085】
組換え宿主細胞における分泌のために発現された抗体またはフラグメントのターゲティングは、対象の抗体をコードする遺伝子の5’末端においてシグナルまたは分泌リーダーペプチドコード配列を挿入することにより促進することができる(Shokri et al.,Appl Microbiol Biotechnol.60(6):654-64(2003),Nielsen et al.,Prot.Eng.10:1-6(1997)及びvon Heinje et al.,Nucl.Acids Res.14:4683-4690(1986)参照)。これらの分泌リーダーペプチド要素は、原核または真核の配列のいずれかに由来し得る。従って、適切には、宿主細胞の細胞質ゾルからのポリペプチドの移動及び培地への分泌を導くために、ポリペプチドのN末端に結合したアミノ酸である分泌リーダーペプチドが使用される。
【0086】
抗体またはそれらの抗原結合部分は、更なるアミノ酸残基に融合することができる。かかるアミノ酸残基は、恐らく単離を容易にするために、ペプチドタグであり得る。特定の臓器または組織に対する抗体のホーミングのための他のアミノ酸残基も考えられる。
【0087】
一部の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分は、抗体またはその抗原結合部分に何らかの所望の性質(例えば、増加した半減期)を提供する1つ以上のエフェクター分子にコンジュゲートされる。特定の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分は、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされる。PEGは、任意のアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基(例えば、遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル、もしくはカルボキシル基)に結合し得る。PEGを抗体に結合する方法は、当該技術分野において公知であり、使用され得る。例えば、欧州特許出願EP0948544号、欧州特許出願EP1090037号、“Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications,”1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York;“Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications,”1997,J.Milton Harris&S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washington DC;“Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences,”1998,M.Aslam&A.Dent,Grove Publishers,New York;またはChapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531-545を参照されたい。
【0088】
別の実施形態においては、本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分は、抗体が発現し回収できるように、遺伝子導入動物において抗体をコードする核酸を発現することにより作成される。例えば、抗体は回収及び精製を容易にする組織に特異的な方法で発現することができる。かかる一実施形態においては、抗体は泌乳中の分泌のため、乳腺で発現される。遺伝子導入動物としては、マウス、ヤギ及びウサギが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書では、酸性pH及び生理的pHの両方でFcRnに結合し、FcRnに結合するアルブミンと競合するエピトープでも結合する抗体を同定する方法が提供される。方法は、酸性pH(例えば、pH5.0~6.6、pH5.8~6.4、pH6.0~6.2またはpH6.0)で行われる2以上の選別ステップを含む。2つ以上の酸性選別ステップは、生理的pH(例えば、pH6.8~8.2、pH6.8~7.6、pH7.2~7.4またはpH7.4)で行われる選別ステップと交互に行われる。
【0090】
例えば、かかる方法の一実施形態は、
(a)pH5.8~6.4で、候補抗体のコレクションとFcRnまたはその一部とを接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離するステップと、
(b)pH6.8~7.6で、ステップ(a)の単離した抗体とFcRnまたはその一部とを接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離するステップと、
(c)pH5.8~6.4で、ステップ(b)の単離した抗体とFcRnまたはその一部とを接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離するステップと、
(d)FcRnへのアルブミンの結合をブロックする能力について、ステップ(c)の単離した抗体を分析するステップと、を含む。
【0091】
別の実施形態は、
(a)候補FcRn結合抗体のコレクションを提供するステップと、
(b)pH6.0で、FcRnまたはその一部と、少なくとも一部の候補FcRn結合抗体との間に複合体を形成するような条件下で、候補FcRn結合抗体のコレクションをFcRnまたはその一部と接触させるステップと、
(c)複合体を単離するステップと、
(d)単離した複合体から候補FcRn結合抗体を分離するステップと、
(e)pH7.4で、FcRnまたはその一部と、少なくとも一部の候補FcRn結合抗体との間に複合体を形成するような条件下で、ステップ(d)からの分離された候補FcRn結合抗体をFcRnまたはその一部と接触させるステップと、
(f)ステップ(e)において形成した複合体を単離するステップと、
(g)ステップ(f)の単離した複合体から候補FcRn結合抗体のコレクションを分離するステップと、
(h)pH6.0で、FcRnまたはその一部と、少なくとも一部の候補FcRn結合抗体との間に複合体を形成するような条件下で、ステップ(g)からの分離された候補FcRn結合抗体をFcRnまたはその一部と接触させるステップと、
(i)ステップ(h)において形成した複合体を単離するステップと、
(j)ステップ(i)の単離された複合体から候補FcRn結合抗体を分離して、酸性pH及び生理的pHの両方でFcRnに結合する抗体を得るステップと、
(k)FcRnへのアルブミンの結合をブロックする能力について、候補FcRn結合抗体を分析するステップと、を含む。
【0092】
一部の実施形態においては、候補FcRn結合抗体のコレクションは、抗体またはそれらの部分のライブラリ(例えば、ファージ上に提示されたscFvのライブラリ)であり得る。
【0093】
一部の実施形態においては、FcRnまたはその一部の濃度は、各接触ステップで減少される。例えば、ステップ(b)は25nMの濃度で行われ、ステップ(e)は2.5nMの濃度で行われ、ステップ(h)は0.25nMの濃度で行ってもよい。
【0094】
一部の実施形態においては、FcRnまたはその一部は、固体支持体、例えば電磁ビーズに結合し得る。かかる実施形態においては、単離ステップは、例えば、固体支持体がクロマトグラフィーカラムである場合に、固体支持体に結合するFcRnまたはその一部への単純な抗体の結合であり得る。一部の実施形態においては、FcRnまたはその一部は、FcRnまたはその一部と抗体との間の複合体の単離を促進する部分に結合し得る。例えば、FcRnまたはその一部は、ビオチンに結合し得る。
【0095】
本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部分物理的性質及び機能的性質は、通常の手順により決定することができる。例えば、抗体のFcRn-アルブミン相互作用をブロックする能力を、多くの方法により評価することができる。かかる方法としては、抗体によりFcRnへの結合からブロックされたアルブミンの量を試験するin vivoアッセイ、アルブミンとの結合について競合する既知のFcRn抗体に対する競合アッセイ、または抗体の投与に起因するアルブミン分泌の量を調べるin vivoアッセイが挙げられる。
【0096】
FcRnとアルブミンとの間の結合の破壊を検出する種々の方法のいずれか、例えばU.S.8,232,067に記載されているものを使用してよく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(「FRET」)またはクロマトグラフィー法が使用され得る。ある場合には、タンパク質-タンパク質相互作用は、酵素、例えばβ-ガラクトシダーゼのドメインを再構成することによって検出することができる(Rossi et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:8405-8410(1997)参照)。一部の実施形態においては、FcRnとアルブミンとの相互作用を妨害する抗体もしくは抗原結合フラグメントの試験、またはFcRnの結合が欠損している変異体アルブミンポリペプチドの試験は、動物モデルで行うことができる。例えば、抗体または抗原結合フラグメントによるFcRnポリペプチドとアルブミンポリペプチドとの間の破壊を測定する方法は、対象、例えば実験動物(例えば、哺乳動物)に抗体または抗原結合フラグメントを投与して抗体または抗原結合フラグメントを有するFcRnポリペプチド及びアルブミンポリペプチドを発現すること、ならびに対象の体液におけるアルブミンポリペプチドのレベルを測定することを含み、ここで、抗体または抗原結合フラグメントの非存在下で動物の体液中に存在し得るアルブミンポリペプチドのレベルと比較して、抗体または抗原結合フラグメントの存在下での対象の体液中のアルブミンポリペプチドのレベルの差は、試験化合物がFcRnポリペプチドとアルブミンポリペプチドとの間の相互作用を破壊することを示す。一部の実施形態においては、本明細書に開示の1つ以上の方法に従い使用される動物は、遺伝子導入動物であり得る。例えば、本明細書に開示の1つ以上の方法に従い使用される動物は、FcRn、アルブミン、または両方を発現するように遺伝子導入され得る。一部の実施形態においては、動物はヒトFcRn、アルブミン、または両方を発現するように遺伝子導入され得る。
【0097】
本明細書に開示される抗体が結合するヒトFcRnの特定の領域またはエピトープは、当該技術分野で公知の任意の好適なエピトープマッピング方法によって同定することができる。かかる方法としては、FcRnのどのアミノ酸に抗体が結合するかを同定するために、抗体への結合について様々な長さのペプチドをFcRnから選別することが挙げられる。ペプチドは、FcRnのタンパク質消化または化学合成のような周知の方法によって製造することができる。質量分析などの技術も、抗体に結合するペプチドを同定するために使用してもよい。あるいは、NMR分光法またはX線結晶解析を用いることができる。同定されると、FcRnの同じエピトープに結合する更なる抗体を得るために、結合ペプチドを免疫原として使用することができる。
【0098】
本明細書に記述される抗FcRn抗体またはそれらの抗原結合部分は、予防または治療の目的で哺乳動物において使用される場合、医薬的に許容される担体を更に含む組成物の形態で投与されることが理解される。好適な医薬的に許容される担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、ヒスチジン、グルタミン酸、クエン酸、マンニトール、トレハロース、スクロース、アルギニン、アセテート、ポリソルベート80、ポロクサマー188などの1つ以上、及びそれらの組み合わせが挙げられる。医薬的に許容される担体としては、少量の補助物質(例えば、抗体の貯蔵寿命または有効性を高める湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤)が更に挙げられる。
【0099】
一部の実施形態においては、抗体及び医薬的に許容される担体を含む組成物は凍結乾燥される。
【0100】
抗体及び医薬的に許容される担体を含む組成物は、様々な濃度で、本明細書に記述される抗FcRn抗体またはそれらの抗原結合部分を含み得る。例えば、組成物は10mg/ml~200mg/ml、25mg/ml~130mg/ml、50mg/ml~125mg/ml、75mg/ml~110mg/ml、または80mg/ml~100mg/mlで抗体を含み得る。また、組成物は約10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/ml、または150mg/mlで抗体を含み得る。
【0101】
「アルブミン結合毒素」は、アルブミンに結合する化合物、薬剤、または分子を指す。一部の状況下では、対象におけるアルブミン結合毒素の濃度を低下させることが望ましい可能性があるが、この用語は、「毒素」として標識されているかまたは一般に理解されている化合物、薬物または分子に限定されない。また、この用語は外因性毒素と内因性毒素との両方も含み得る。アルブミン結合毒素としては、例えば、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、及びアセトアミノフェンが挙げられる。
【0102】
一実施形態においては、対象におけるアルブミン結合毒素のレベルを低下させる方法であって、対象にアルブミン結合毒素のレベルを低下させるのに有効な量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は外因性または内因性であり得る。実施形態においては、アルブミン結合毒素は、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、またはアセトアミノフェンである。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素はアセトアミノフェンであり得る。アルブミン結合毒素がアセトアミノフェンであり得る他の実施形態においては、方法は、同時に、別々に、または連続的にN-アセチルシステインを投与することを更に含み得る。
【0103】
別の実施形態においては、対象において、毒素への曝露を予防、治療、阻害、またはその重篤度を減少させる方法であって、対象に有効量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素は外因性または内因性であり得る。実施形態においては、毒素は、銅、ヘマチン、長鎖脂肪酸、亜鉛、ビリルビン、チロキシン、エイコサノイド、トリプトファン、ビタミンD3、胆汁酸、カルシウム、マグネシウム、塩化物、インドメタシン、ブロモフェノールブルー、サリチレート、ワルファリン、フェニルブタゾン、ジゴキシン、フロセミド、フェニトイン、クロルプロパミド、ベンジルペニシリン、エバンスブルー、ジアゼパム、イブプロフェン、ナプロキセン、クロフィブレート、クロルプロマジン、イミプラミン、キニジン、リシン、アミオダロン、またはアセトアミノフェンである。一部の実施形態においては、アルブミン結合毒素はアセトアミノフェンであり得る。アルブミン結合毒素がアセトアミノフェンであり得る他の実施形態においては、方法は、同時に、別々に、または連続的にN-アセチルシステインを投与することを更に含み得る。
【0104】
本明細書に記載の方法は、例えば、過量投与(例えば、偶発的もしくは意図的な曝露もしくは摂取から、ヒトもしくは動物の健康にとって安全と考えられるレベルを超えた毒素の量まで)により、または対象における内因的に高レベルアルブミン結合毒素(例えば、ヒトもしくは動物の健康に正常で安全と考えられるよりも高レベルの毒素を産生する対象に由来する)によるアルブミン結合毒素に関連する(例えば、かかる毒素の毒性量を有する)疾患を治療するための方法を含む。
【0105】
本明細書では、アルブミン毒性に関連する医学的病態を予防または治療する方法であって、対象に有効量の、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法が提供される。本明細書で用いられる「アルブミン毒性」は、アルブミンが有害または弊害をもたらすと考えられ、例えば死、臓器損傷または神経的損傷をもたらし得る状態を指す。一部の実施形態においては、医学的病態は、冠動脈アテローム性硬化症及び末梢血管疾患である。一部の実施形態においては、医学的病態は、糖尿病性血管合併症である。一部の実施形態においては、医学的病態は、アルツハイマー病である。一部の実施形態においては、医学的病態は、外傷性脳障害である。一部の実施形態においては、医学的病態は、糖尿病である。一部の実施形態においては、医学的病態は、末期腎不全である。
【0106】
本明細書に記載の方法においては、本明細書に記述される治療有効量の抗体またはそれらの抗原結合部分を、他の作用剤、薬剤またはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、または別々に)投与することができる。一部の実施形態においては、他の作用剤、薬剤、またはホルモンはそれぞれの医学的病態用の周知の治療法であり得る。一部の実施形態においては、周知の治療法は標準治療であり得る。例えば、アルブミン結合毒素がアセトアミノフェンである、対象におけるアルブミン結合毒素のレベルを低下させる方法または対象における毒素への曝露の重篤度を予防、治療、阻害、もしくは軽減する方法の一部の実施形態において、方法はN-アセチルシステインを同時に、別々に、または連続的に投与することを更に含み得る。
【0107】
一部の実施形態においては、アルブミン低下剤でFcRnをブロックすることは、内因性アルブミンレベルを低下させるのに有益であり、アルブミンベースの治療剤の薬物動態及び薬力学の増強を可能にする。この場合は、かかる治療剤の投与前にアルブミン結合部位に特異的な抗FcRn抗体を用いた前処理により、内在性アルブミンに由来する競合を低下させ、投与されたアルブミンベースの治療剤の保護を高めることを可能にする。他の実施形態においては、アルブミン結合部位に特異的な抗FcRn抗体を用いた治療は、投与後の血清からアルブミンベースの治療剤を除去するために使用され得る。これは、かかるアルブミンベースの治療薬の処置がもはや望ましくない場合、または治療的に過剰な投与の副作用を減少させる場合に有用であり得る。
【0108】
アルブミンは、FcRnとのその相互作用に起因して、半減期延長のための、及び薬物の標的化細胞内送達のための候補として研究されてきた。本明細書で用いられる用語「アルブミンベースの治療薬」は、アルブミンに関連する治療薬を指す。アルブミンベースの治療薬は、例えば、共有結合、遺伝的融合、または非共有結合的結合を介してアルブミンと結合し得る(本明細書に参照により全体が組み込まれるLarsen et al.,Molecular and Cellular Therapies(2016)4:3参照)。アルブミンとの結合は、投与前に行われてもよく、すなわち、アルブミンベースの治療薬は、外因性アルブミン分子(複数可)と結合する。例えば、GlaxoSmithKlineによって製造され、II型糖尿病の治療のためにEperzan/Tanzeumとして市販されているアルビグルチドは、2つのヒトGLP-1リピートの組換えヒトアルブミンへの融合によって開発されたGLP-1レセプターアゴニストである。アルブミンとの結合は、治療薬の投与後に行われてもよく、すなわち、アルブミンベースの治療薬は、内因性アルブミン分子(複数可)と結合する。例えば、Novo Nordiskによって製造され、I型糖尿病の治療のためにLevemirとして市販されているインスリンデテミールは、ミリスチン酸修飾インスリン類似体である。注入時、脂肪酸部分はアルブミンに結合し、経時的に解離し、生物学的利用能及び分布を増強する。アルブミンベースの治療薬の他の例には、Larsen et alに記載のリラグルチド、オゾラリズマブ、MTX-HSA、アドロキソルビシン、CJC-1134、アルブフェロン、アブラキサン、ABI-008、ABI-009、ABI-010、99mTc-Albures、99mTc-Nanocollなどが挙げられる。
【0109】
本明細書に記載の方法においては、治療的有効量の、本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分を必要とする哺乳動物に投与する。本明細書で用いられる用語「投与する」は、求められる結果を達成し得る任意の方法によって、本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部分を哺乳動物に送達することを意味する。それらは、例えば、皮下、静脈内または筋肉内に投与され得る。本明細書に記述される抗体またはそれらの抗原結合部分は、ヒトへの投与に特に有用であるが、他の哺乳動物に投与することもできる。本明細書で用いられる用語「哺乳動物」は、ヒト、実験動物、飼育動物及び家畜を含むことが意図されるが、これらに限定されない。「治療有効量」は、哺乳動物に投与された場合に、所望の治療効果を生じるのに有効である、本明細書に記述される抗体またはその抗原結合部分の量を意味する。これは例えば、疾病に応じて、抗体については、0.1、1.0、3.0、6.0、または10.0mg/Kgを要求し得る。150,000g/モルの分子量を有するIgG(2つの結合部位)については、これらの用量は、5Lの血液量について約18nM、180nM、540nM、1.08μM及び1.8μMの結合部位に対応する。
【0110】
特定の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分は、静脈内注入、すなわち抗体またはその抗原結合部分の哺乳動物の静脈への特定の時間の導入によって哺乳動物に投与される。特定の実施形態においては、時間は約5分、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、または約8時間である。
【0111】
特定の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分は、皮下送達によって投与され、すなわち、哺乳動物の皮膚の下で、一般的に皮膚を挟んで下にある組織から持ち上げて、それによって形成された皮膚の下の空間に抗体または抗原結合部分を注射することによって投与される。
【0112】
特定の実施形態においては、化合物または組成物の用量を、毎日、隔日、数日ごと、3日ごと、週1回、週2回、週3回、または2週に1回、対象に投与する。他の実施形態においては、化合物または組成物の2、3または4用量を、毎日、数日ごと、3日ごと、週1回または2週に1回、対象に投与する。一部の実施形態においては、化合物または組成物の用量(複数可)を、2日間、3日間、5日間、7日間、14日間、または21日間投与する。一部の実施形態においては、化合物または組成物の用量を、1か月間、1.5か月間、2か月間、2.5か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、またはそれ以上投与する。一部の実施形態においては、化合物または組成物は、毒素に曝露する前に、それと同時に、またはその後に投与してもよい。
【0113】
投与の方法としては、限定されないが、非経口、皮内、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、腟内、経皮、経粘膜、経直腸、吸入による、または局所的、特に耳、鼻、目、もしくは皮膚への局所的投与の方法が挙げられる。投与様式は施術者の裁量に委ねられる。多くの場合、投与は血流への化合物の放出をもたらす。
【0114】
特定の実施形態においては、化合物を局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、限定目的ではないが、例えば局所注入、局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、またはインプラントによって達成され得、インプラントは、多孔性、非多孔性またはシアラスティック膜などの膜を含むゼラチン質材料、または繊維のものである。かかる場合において、投与は、化合物を血流中に実質的に放出させることなく、局所組織を選択的に標的とし得る。
【0115】
また、例えば、吸入器もしくは噴霧器の使用、及びエアロゾル化剤を用いた配合物の使用、またはフルオロカーボンもしくは合成肺サーファクタントの灌流を介いて肺投与を使用することができる。特定の実施形態においては、化合物は、伝統的な結合剤及びトリグリセリドなどのビヒクルを用いて坐剤として処方される。
【0116】
別の実施形態においては、化合物は小胞、特にリポソーム中で送達される(Langer,1990,Science 249:1527-1533;Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Bacterial infection,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989);Lopez Berestein,同上,pp.317-327参照;一般的に同上参照)
【0117】
別の実施形態においては、化合物は制御放出系において送達される(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,上記参照,vol.2,pp.115-138(1984)参照)。制御放出系の例は、Langer,1990,Science 249:1527-1533のレビューで論じられ、使用され得る。一実施形態においては、ポンプが使用され得る(Langer,上記参照;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574参照)。別の実施形態においては、ポリマー材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61;また、Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105参照)。
【0118】
毒性及び治療効果は、例えば、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって測定し、LD50(集団の50%において致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することができる。LD50/ED50の間の比として表される用量比は、治療指数として知られている。高い治療指数を示す抗体または抗原結合フラグメントが好ましい。
【0119】
ヒトにおける使用のための投薬量範囲の処方は、細胞培養アッセイ及び/または動物研究からのデータから得られ、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態及び利用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。当業者は、治療される患者のタイプ、疾病または疾患の重篤度、以前の治療、患者の一般的な健康状態及び/または年齢、及び存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、患者を効果的に治療するために必要な投薬量及びタイミングに特定の因子が影響を及ぼすことを理解するであろう。また、治療有効量の抗体または抗原結合フラグメントを有する患者の治療は、単一の治療を含むことができ、または一連の治療を含むことができる。
【0120】
上記の投与スケジュールは、例示のためにのみ提供されており、限定的であるとみなされるべきではない。当業者は、全ての用量が本発明の範囲内にあることを容易に理解するであろう。
【0121】
本明細書に開示された発明の原理の変形が当業者によってなされ得ること、及びそのような変更が本発明の範囲内に含まれることが意図されることが理解され、期待されるべきである。
【0122】
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物は、本発明が属する技術水準をより完全に説明するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。以下の実施例は本発明を更に説明するが、決して本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【実施例
【0123】
実施例1
可変ドメインのヒト化
ヒトへの投与に好適な重鎖及び軽鎖可変領域を、FcRnに結合し、FcRn及びアルブミンの結合をブロックする能力について選択されたマウスモノクローナル抗体に基づいて設計した。マウス抗体は実質的にFcRnとIgG Fcとの結合をブロックしない。既存の抗体構造に基づくモノクローナル抗体のモデルを用いて、ヒト抗体の可変領域フレームワークをヒトV領域のセグメントから設計した。潜在的な免疫原性を最小化するため、ヒトT細胞エピトープを除去するように設計された特定のフレームワーク位置で選択されたアミノ酸を有するいくつかの変異体を設計した。
【0124】
重鎖及び軽鎖V領域遺伝子は、リガーゼ連鎖反応(LCR)を用いて全長遺伝子に組み立てられた重複オリゴヌクレオチドから構築され、続いて増幅及びクローン化に好適な制限部位の付加が行われた。
【0125】
S241P突然変異を含むヒトIgG4定常領域を有する3つの重鎖変異体を構築した。変異体はV1、V3、及びV4と命名された。重鎖変異体の可変ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号12、14及び16によって表される。重鎖変異体の可変ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号11、13及び15によって表される。図1は3つの変異体のアラインメントを示す。4つの軽鎖変異体を構築し、ヒトκ鎖として発現させた。変異体はVκ1、Vκ2、Vκ3、及びVκ4と命名された。軽鎖変異体の可変ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号18、20、22及び24によって表される。軽鎖変異体の可変ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号17、19、21及び23によって表される。図2は4つの変異体のアラインメントを示す。
【0126】
抗体は、上流のサイトメガロウイルスの即時/初期プロモータ/エンハンサー、免疫グロブリンシグナル配列、及び免疫グロブリン定常領域を有する哺乳動物発現ベクターにV領域遺伝子をクローン化することによって全IgGとして発現させた。ベクターをHEK EBNA細胞にトランスフェクトし、発現を定量し、プロテインAカラムで抗体を精製した。
【0127】
HEK EBNA細胞への一過性トランスフェクションによって、3つの重鎖及び4つの軽鎖変異体の12種類の重鎖-軽鎖の組合せを全て発現させた。抗体をプロテインAセファロースカラムで精製し、定量した。上記の通り、FcRnは主に、低pHでエンドサイトーシスされたアルブミンを捕捉する初期の酸性エンドソームに主に存在する。FcRnのアルブミンへの結合をブロックするために、FcRn抗体が、生理的pH(例えば、pH7.4)で細胞間環境に曝露されたFcRnに結合することも望ましい。従って、FcRnへの精製された抗体の結合を、競合ELISAアッセイ(pH6.0及びpH7.4)で評価した。
【0128】
ELISAのために、Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底マイクロタイタープレートを、アルブミン結合領域とは異なるIgG結合エピトープに特異的なFcRn抗体でpH7.4で一晩プレコートした。翌日、PBS pH7.4で希釈した組換えヒトFcRn(Sino Biological Inc.カタログ番号CT009-H08H)1μg/mlをウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。30μg/ml~0.0018μg/mlの試験抗体または対照IgG4抗体の4倍希釈系列を、一定濃度のビオチン化親マウス抗体と予め混合し、プレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。ストレプトアビジンHRP及びTMB基質を用いて、ビオチン化mAbの結合を検出した。吸光度を450nmで読み取り、結合曲線をプロットした。12の組み合わせの結合をpH7.4及びpH6.0の両方で試験し、表2に示すように、親抗体との比較によって定量した。
【表2】
【0129】
実施例2
親和性成熟化
酸性及び生理的pHでの結合親和性を改善するため、pH6.0及びpH7.4で、重鎖及び軽鎖可変ドメインCDR3領域を突然変異させ、scFv形態で選別した。scFvを調製するため、オーバーラップPCRを用いてV及びVκをコードする遺伝子を15アミノ酸(GS)リンカーで構築した。scFv配列を遺伝子3融合タンパク質としてファージミドベクターにクローン化し、ベクターをE.coli(TG1)に形質転換した。親和性成熟プロセスは、V1及びVκ1変異体を用いて行った。選別のため、V1中の重鎖CDR3のライブラリをヒト化親Vκ1軽鎖と組み合わせ、Vκ1中の軽鎖CDR3のライブラリをヒト化親V1重鎖と組み合わせた。
【0130】
アミノ酸配列の変形形態を、以下:a.a.94:K、R;a.a.95:A、C、D、E、F、G、H、I、L、P、Q、R、S、V、W、Y;a.a.96:A、D、E、G,H、K、N、P、Q、R、S、T;a.a.97:A、C、D、F、G、H、L、P、R、S、T、V、Y;a.a.98:A、D、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V;a.a.99:A、C、D、G、H、N、P、R、S、T、Y;a.a.100:A、G、S、Tのようにそれぞれの位置で選択されたアミノ酸を提供する配列ARGBNSVVSBNCVNCNVCRSC(配列番号41)を含むオリゴヌクレオチドを用いて、アミノ酸位置94~100(CDR3Hのa.a.95~100及びFW3のa.a.94)で重鎖CDR3H領域に導入した。アミノ酸配列の変形形態を、以下:a.a.94:R;a.a.95:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.96:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.97:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.98:A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y;a.a.99:A、G、S、Tのようにそれぞれの位置で選択されたアミノ酸を提供する配列AGGNNSNNSNNSNNSRSC(配列番号42)を含むオリゴヌクレオチドを用いて、アミノ酸位置94~99(CDR3Hのa.a.95~99及びFW3のa.a.94)で重鎖CDR3H領域に導入した。
【0131】
各CDRについて、約3~6×10個のDNA配列(すなわち、各DNA配列の約10~20コピーが示された)を含む約5~10×10のファージのライブラリを、可溶性抗原への結合について選別した。具体的には、ファージライブラリーを可溶性ビオチン化FcRnと混合し、続いてストレプトアビジン被覆ビーズ上のFcRn-抗体ファージ複合体の捕捉を行った。酸性エンドソームにおいて、及び生理的pHでFcRnに結合する抗体を得るために、交互のpHで連続的なラウンドのライブラリ選別を行った。また、各連続選別ラウンドのストリンジェンシーを増加させるために、FcRn抗原の濃度を減少させた。最初の選択ラウンドは、pH6.0で25nMのFcRn濃度で行った。2ラウンド目は、pH7.4で2.5nMで行った。3ラウンド目は、pH6.0で0.25nMで行った。3ラウンド目の間、pH6.0で0.25nMで「オフレート」選択を行った。4ラウンド目は、pH7.4で0.1nMで行った。
【0132】
scFv抗体は、細菌ペリプラズム抽出物から調製し、pH6.0及びpH7.4の競合ELISAによって試験した。4100超のpH6.0で解析したペリプラズム調製物のうち、pH7.4での更なる分析のため、99を選択した。競合ELISAにおいて、scFv抗体フラグメントを、固定化FcRnへの結合について、FcRn-アルブミン相互作用をブロックすることが以前に示されたビオチン化親マウス抗体と競合させた。ヒト化変異体を試験するために使用したELISAと同様に、96ウェル平底マイクロタイタープレートに、アルブミン結合領域とは異なるIgG結合エピトープに特異的な1μg/mlのFcRn抗体をプレコートした。結合はpH7.4及びpH6.0で同定した。図3は、親scFv(すなわち、V1/Vκ1からなる)に関するpH6.0及びpH7.4での競合ELISAの比較を示す。
【0133】
1フレームワークにおいて、親和性成熟重鎖CDR3を含むscFvについて結合の実質的な改善を測定した。従って、これらの重鎖は、改善された軽鎖と組み合わせて試験するため進めた。改良された変異体は、Vκ3フレームワークにおいて親和性成熟軽鎖CDR3を含むscFvについて同定されなかった。
【0134】
実施例3
IgG抗体の開発
21の親和性成熟重鎖(G03_B2、G15_C10、G15_C3、G15_B7、G02_F4、G24_C11、G19_F8、G47_B10、G47_H11、G47_H6、G48_G10、G48_E3、G49_F11、G50_B10、G50_G5、G50_C10、G54_D11、G52_G9、G51_H6、G49_H9.3、またはG49_H9.5)を選択し、ヒト化軽鎖(Vκ3)と発現させた。21種の組み合わせを、HEK細胞の一過性トランスフェクションによるS241P突然変異を含む二価IgG4抗体として発現させ、続いてIgG4抗体を精製した。
【0135】
実施例4
ELISAによって同定されるIgG4抗体の抗原結合特性
IgG4抗体を、pH6.0及びpH7.4の競合ELISAにおいて抗原結合について試験した。Nunc Immuno MaxiSorp 96ウェル平底マイクロタイタープレート(Fisher,カタログ番号DIS-971-030J)に、アルブミン結合領域とは異なるIgG結合エピトープに特異的な1μg/mlのFcRn抗体で、pH7.4で一晩プレコートした。翌日、pH7.4のPBSで希釈した組換えヒトFcRn(Sino Biological Inc.カタログ番号CT009-H08H)1μg/mlをウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをpH7.4のPBSTで3回洗浄した後、プレートをpH7.4のPBSMで1時間ブロックした。この点以降、選択されたアッセイpH(pH6.0または7.4)で全ての洗浄及びインキュベーションステップを実施した。PBSTで3回洗浄した後、25μg/ml~0.006μg/mlの最終濃度の試験抗体の4倍希釈系列を、一定濃度のビオチン化親マウス抗体(最終濃度0.4μg/ml)と予め混合し、FcRnでコーティングしたプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。3回のPBST洗浄後、ビオチン化mAbの結合をストレプトアビジン-HRP(Sigma,カタログ番号S5512)及びTMB基質(Invitrogen,カタログ番号00-2023)で検出した。反応を3MのHClで停止させ、Dynex Technologies MRX TC IIプレートリーダーで吸光度を450nmで読み取り、結合曲線をプロットした。4つの抗体(G02_F4V1_Vκ3、G24_C11V1_Vκ3、G19_F8V1_Vκ3、G47_B10V1_Vκ3)のデータの例を、pH7.4でのものを図4(a)に、pH6.0でのものを図4(b)に示す。得られた全結果を表3に要約する。表3は、pH7.4及びpH6.0で行った実験の平均相対IC50値及び実験の数(n)を示す。組み合わせのIC50値を、同じプレートで試験したヒト化親抗体に対して正規化した。
【表3】
【0136】
pH6.0またはpH7.4のいずれかでヒト化親と同等またはそれよりも良好な活性を有する14の組み合わせを同定し、NS0マウス骨髄腫細胞への安定なトランスフェクションのために進めた。
【0137】
実施例5
抗体の安定な発現及び精製
ヒト化親(すなわち、V1/Vκ1からなる)と同等またはそれよりも良好な活性を有する14のIgG組み合わせ(G15_C10/Vκ3、G15_C3/Vκ3、G02_F4/Vκ3、G19_F8/Vκ3、G47_B10/Vκ3、G47_H6/Vκ3、G49_F11/Vκ3、G50_B10/Vκ3、G50_G5/Vκ3、G50_C10/Vκ3、G54_D11/Vκ3、G52_G9/ Vκ3、G49_H9.3/Vκ3、またはG49_H9.5/Vκ3)をコードするpAntベクターDNAを、電気穿孔によって安定にNS0マウス骨髄腫細胞へトランスフェクションした。加えて、好適なヒト化抗体、V1/Vκ3を含んだ。安定なトランスフェクションは、200nMのメトトレキセートを用いて最初に選択したが、これは増殖の間に500nMに増加した。各コンストラクトについてのメトトレキセート耐性コロニーを、IgG4 ELISAを用いてIgG発現レベルについて試験し、最良の発現系を選択し、液体窒素下で増殖させ、凍結させた。成功したトランスフェクション及び安定したクローン選択は、14種のヒト化変異体全てに加えてV1/Vκ3で達成された。
【0138】
抗体をプロテインAセファロースカラム上の細胞培養上清から精製し、緩衝液をpH7.2のPBSに交換し、予想されるアミノ酸配列に基づく吸光係数を用いてOD280nmで定量した。
【0139】
ヒト化親和性成熟抗体のFcRnへの結合を、上記の競合ELISAによってpH7.4及びpH6.0の両方で試験し、キメラ親と比較した。NS0産生ヒト化親和性成熟IgGを、一時的に発現するHEK細胞から精製したG50_C10/Vκ3以外の全てのアッセイに使用した。pH6.0でのデータの例を図5に示し、pH7.4でのデータの例を図6に示す。データを以下の表4に要約する。
【表4】
【0140】
8つの変異体(G15_C3/Vκ3、G47_B10/Vκ3、G47_H6/Vκ3、G50_C10/Vκ3、G54_D11/Vκ3、G52_G9/Vκ3、G49_H9.3/Vκ3、及びG49_H9.5/Vκ3)を、pH6.0及びpH7.4の両方で改善し、好ましいヒト化変異体と比較した。1つの抗体はpH6.0では改善されたが、pH7.4では改善されなかった。これらの8つの抗体を、Biacore分析のために進めた。
【0141】
実施例6
表面プラズモン共鳴を使用したmAb結合キネティクスの決定
選択された変異体の結合キネティクスを、T200 Instrumentを用いてBIACORE(登録商標)によってマウスの親及びヒト化親(V1/Vκ1)と比較した。抗体を、標準的なアミンカップリング化学を用いてシリーズS CM5センサーチップ表面上に固定化し、表面上に分析物(FcRn)を流した。2倍の希釈範囲を、50~0.01nMのFcRnから選択した。FcRn分析物の結合相を450秒間モニターし、解離を250または2500秒間、40μl/分で最初に測定した。F1は参照チャネルであり、非特異的結合を補正するために他のフローセルから差し引かれた。Kにおける倍数差は、ヒト化親のKを同じチップ上の試験抗体のKで除して計算した。キネティクス値は1:1結合モデルに基づく(表5)。
【0142】
親和性成熟ヒト化抗体G15_C3/Vκ3、G47_B10/Vκ3、及びG50_C10/Vκ3は、ヒト化親と比較して親和性において有意な改善(平均約7.1~約50倍の範囲)を示した。G50_C10/Vκ3はについて観察された遅いオフレートは、Biacore機器の検出限界に近づいていた。G50_C10/Vκ3の解離定数をより正確に決定するために、3つの最良の変異体を再度アッセイして、解離時間を4500秒に増加させた直接順位比較を提供した。
【表5】
【0143】
更なる試験において、表面プラズモン共鳴(SPR)は、メーカーによって記載されたアミンカップリング化学を用いてmAb(約500~700共鳴単位)とカップリングされたCM5センサーチップを有するBiacore 3000機器(GE Healthcare)を用いて行われた。カップリングは、2μg/mlの各タンパク質を10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5(GE Healthcare)にアミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて注入することにより行った。ランニング緩衝液及び希釈緩衝液として、HBS-P緩衝液pH7.4(0.01MのHEPES、0.15MのNaCl、0.005%界面活性剤P20)またはリン酸緩衝液pH6.0(67mMのリン酸緩衝液、0.15MのNaCl、0.005%Tween20)を使用した。結合キネティクスは、pH7.4またはpH6.0の固定化Ab上に、滴定された量の単量体Hisタグ付きhFcRn(400.0~12.5nM)を注入することによって決定した。全てのSPR実験は、25℃、流速40μl/分で行った。結合データを零点調整し、参照細胞値を差し引いた。結合キネティクスを決定するために、BIAevaluationソフトウェア(バージョン4.1)によって提供されるラングミュア1:1配位子結合モデルを使用した。適合の近さは、統計値χによって記述される。
【0144】
図7は、(A)SYNT002h(ヒト化親V1/Vκ1)、(B)SYNT002-3(G15_C3/Vκ3)、(C)SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)、(D)SYNT002-16(G50_C10/Vκ3)、(E)SYNT002-17(G54_D11/Vκ3)、及び(F)SYNT002-21(G49_H9.3/Vκ3)について表面プラズモン共鳴により決定された結合会合及び解離のプロットを示す。キネティクス速度定数は、以下の表6に示される。キネティクス速度定数は、単純な一次(1:1)ラングミュア二分子相互作用モデルを用いて得られた。キネティクス値は、重複の平均を表す。χ(カイ二乗)値は、使用された結合モデルへの適合を表す。
【表6】
【0145】
結果は、全ての抗体が、両方のpH条件で異なる動態でヒトFcRnに結合することを示す。親和性成熟変異体は、pH6.0でのみ改善されたG54_D11/Vκ3を除いて、ヒト化親と比較して両方のpH条件で改善された親和性でヒトFcRnに結合した。
【0146】
実施例7
アルブミンクリアランス試験
トランスジェニックマウスを用いたin vivo試験を実施して、アルブミンクリアランスに対する抗FcRn抗体の効果を調べた。0日目に、全てのマウスに、500mg/kgのヒトアルブミンを静脈内注射することによって予め負荷した。1日目に、各群のマウス(n=6)にPBSまたは20mg/kgのG47_B10/Vκ3(SYNT002-8)もしくはG50_C10/Vκ3(SYNT002-16)のいずれかを投与した。静脈内注射後、24時間、32時間、48時間、56時間、72時間、96時間、120時間及び144時間後に各マウスから血液サンプルを採取し、血漿に処理した。アルブミンの血漿濃度をELISAによって定量した。
【0147】
図8Aは、示された時点における24時間ベースライン(±標準誤差)に基づいて残存する平均アルブミン%としてプロットされたSYNT002-8(G47_B10/Vκ3)及びSYNT002-16(G50_C10/Vκ3)の試験結果を示す。
【0148】
図8Bは、SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)がアルブミン異化作用を用量依存的に効果的に増加させることを実証する第2の実験の結果を示す。PBS、IgG4アイソタイプ対照(20mg/kg)、及び3つの異なる濃度のSYNT002-8(G47_B10/Vκ3)(5mg/kg、10mg/kg及び20mg/kg)を投与し、結果を24時間のベースラインと比較して指示された時点で残存するヒトアルブミンの平均パーセンテージ(±SEM)のlog10として示す。曲線は、90%信頼区間を有する非線形回帰分析を示す。これらの曲線±SDの傾きは、一元配置ANOVA(n=5~11;P=0.031;**P=0.0069;***P=0.0003;****P<0.0001)によって分析した。
【0149】
実施例8
アセトアミノフェン(APAP)保護試験
トランスジェニックマウスを用いたin vivo試験を行って、アセトアミノフェン(APAP)肝毒性に対する抗FcRn抗体の保護効果を調べた。そのようにするために、FcgrtTGマウスに亜致死量のAPAP(400mg/kg)を投与した。PBS、標準的な臨床解毒剤N-アセチルシステイン(NAC)(140mg/kg)、SYNT002-8(G47_B10/Vκ3)(10mg/kg)、またはIgG4アイソタイプ対照(10mg/kg)を、APAP投与の2時間後に投与した。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを、APAP投与の6時間後及び8時間後に測定した。
【0150】
図9は、10mg/kgの用量でのSYNT002-8(G47_B10/Vκ3)が、対照治療(n=3~5;P<0.05;**P<0.0038;***P<0.001)と比較して、FcgrtTGマウスに亜致死APAP投与の2時間後に投与されたNACによって提供されるものと同等の保護を提供したことを示す。従って、治療的状況において、SYNT002-8により、現在の標準的な解毒剤であるNACと同様の範囲への毒素APAP曝露が保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
【配列表】
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