(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】防虫性マルチフィラメントおよび織編物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/10 20060101AFI20220331BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20220331BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20220331BHJP
A01P 7/00 20060101ALI20220331BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20220331BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20220331BHJP
D03D 15/00 20210101ALI20220331BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A01N25/10
A01N25/00 101
A01N31/14
A01P7/00
A01P17/00
D01F6/92
D03D15/00
D04B21/16
(21)【出願番号】P 2018558016
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2017045613
(87)【国際公開番号】W WO2018117128
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2016245266
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514215457
【氏名又は名称】株式会社イノベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】印藤 ▲たかし▼
(72)【発明者】
【氏名】内田 剛人
(72)【発明者】
【氏名】勝山 直也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143809(WO,A1)
【文献】特開平10-167907(JP,A)
【文献】特表2010-532325(JP,A)
【文献】特開平04-241116(JP,A)
【文献】岩波 理化学辞典,第5版,日本,株式会社 岩波書店,1998年04月24日,1321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/10
A01N 25/00
A01N 31/14
A01P 7/00
A01P 17/00
D01F 6/92
D03D 15/00
D04B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂中にエトフェンプロックスが含有され、染色されている
、防虫性染色マルチフィラメントにおいて、
前記防虫性染色マルチフィラメントの繊度が30~300デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本であると共に、
前記エトフェンプロックスを0.18~1.97質量%含有することを特徴とする防虫性染色マルチフィラメント。
【請求項2】
融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂中にエトフェンプロックスが含有されており、染色されていない
、防虫性未染色マルチフィラメントにおいて、
前記防虫性染色マルチフィラメントの繊度が30~300デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本であると共に、
前記エトフェンプロックスを0.25~3.00質量%含有することを特徴とする防虫性未染色マルチフィラメント。
【請求項3】
請求項1記載の防虫性染色マルチフィラメントを使用していることを特徴とする防虫性織物又は編物。
【請求項4】
請求項2記載の防虫性未染色マルチフィラメントを使用していることを特徴とする防虫性織物又は編物。
【請求項5】
融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂にエトフェンプロックスを0.4~5.0質量%混合して混合物を得て、
該混合物を、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点+10~30℃の温度で溶融混練して、得られた溶融混練物を紡糸し、
繊度が30~300デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本とし、
染色して、
エトフェンプロックスを0.18~1.97質量%含有す
る防虫性染色マルチフィラメントを得ることを特徴とする、防虫性染色マルチフィラメントの製造方法。
【請求項6】
融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂にエトフェンプロックスを0.4~5.0質量%混合して混合物を得て、
該混合物を、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点+10~30℃の温度で溶融混練して、得られた溶融混練物を紡糸して、
繊度が30~300デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本とし、
エトフェンプロックスを0.25~3.00質量%含有す
る防虫性未染色マルチフィラメントを得ることを特徴とする、防虫性未染色マルチフィラメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫性マルチフィラメントおよび織編物に関し、より詳細には、低融点ポリブチレンテレフタレート樹脂中にエトフェンプロックスが含有された防虫性マルチフィラメントおよび該マルチフィラメントを用いた織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種布製品や網戸等の防虫ネットに対して、防虫剤を使用することにより防虫性を付与する試みがなされている。
【0003】
例えば特許文献1では、マルチフィラメント糸のレースに、防虫剤を含有させてなる防虫網が開示されている。特許文献1の防虫網は、マルチフィラメント糸のレースに、防虫剤と接着剤を含有する水性液体を含浸させたのち乾燥することにより製造される。特許文献1の防虫網は、虫の屋内への侵入等を物理的に妨げるだけでなく、防虫剤による化学的な防虫性も発揮する。更に、多数のフィラメントの間隙やレースの結節点に防虫剤が固着されているので、防虫剤の付着量が多く、しかも防虫剤が脱落しにくい。しかしながら、特許文献1の防虫網を以てしても、摩擦等の強い応力がかかると防虫剤は脱落してしまう。更に、防虫剤を脱落させずに長期に亘ってレース表面に保持できたとしても、経時とともに防虫剤は徐々にその効果を失ってしまう。このように、特許文献1の防虫網には防虫性の持続の点で未だ改善の余地があった。
【0004】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂100重量部に対して、害虫忌避剤1~15重量部を含有した樹脂組成物から成る防虫性モノフィラメントおよびかかる防虫性モノフィラメントを使った織物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-220970号公報
【文献】特開2008-169141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、防虫剤であるエトフェンプロックスは特許文献2のように太い一本の糸であるモノフィラメントであれば問題なく使用できても、複数の細いフィラメントからなるマルチフィラメントに使用すると、その防虫性を存分に発揮できないことがわかった。あるいは、十分な防虫性を付与するためにエトフェンプロックスを多量に使用することも考えられるが、エトフェンプロックスの使用量が過多となると、糸切れや糸毛羽等が起こりやすくなり、紡糸操業性が損なわれることもわかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、防虫性を最大限に且つ長期に亘って発揮することができ、更に、糸切れ等を回避して良好な品質を維持した防虫性マルチフィラメントおよびその製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、防虫性を最大限に且つ長期に亘って発揮することができる防虫性の織物または編物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂中にエトフェンプロックスが含有されており、染色されている、防虫性染色マルチフィラメントにおいて、前記エトフェンプロックスを0.18~1.97質量%含有することを特徴とする防虫性染色マルチフィラメント、および、かかる防虫性染色マルチフィラメントを使用した防虫性織物又は編物が提供される。かかる防虫性織物または編物においては、防虫性染色マルチフィラメントの繊度が30~2000デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂中にエトフェンプロックスが含有されており、染色されていない、防虫性未染色マルチフィラメントにおいて、前記エトフェンプロックスを0.25~3.00質量%含有することを特徴とする防虫性未染色マルチフィラメント、および、かかる防虫性未染色マルチフィラメントを使用した防虫性織物又は編物が提供される。かかる防虫性織物または編物においては、防虫性未染色マルチフィラメントの繊度が30~2000デシテックスであり、且つ、単糸数が10~300本であることが好ましい。
【0011】
更に、本発明によれば、融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂にエトフェンプロックスを0.4~5.0質量%混合して混合物を得て、該混合物を、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点+10~30℃の温度で溶融混練して、得られた溶融混練物を紡糸し、染色して、エトフェンプロックスを0.18~1.97質量%含有する防虫性染色マルチフィラメントを得ることを特徴とする、防虫性染色マルチフィラメントの製造方法が提供される。
【0012】
更にまた、本発明によれば、融点が150~190℃のポリブチレンテレフタレート樹脂にエトフェンプロックスを0.4~5.0質量%混合して混合物を得て、該混合物を、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点+10~30℃の温度で溶融混練して、得られた溶融混練物を紡糸して、エトフェンプロックスを0.25~3.00質量%含有する防虫性未染色マルチフィラメントを得ることを特徴とする、防虫性未染色マルチフィラメントの製造方法が提供される。
【0013】
本明細書においては、防虫性染色マルチフィラメントと防虫性未染色マルチフィラメントを、防虫性マルチフィラメントと総称することがある。同様に、防虫性染色マルチフィラメントを使用した織物または編物と防虫性未染色マルチフィラメントを使用した織物または編物を、防虫性織編物と総称することがある。また、織物と編物を織編物と総称することがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防虫性マルチフィラメント並びに防虫性織編物では、エトフェンプロックスがマルチフィラメントに練り込まれており、蚊等の虫がマルチフィラメント表面のエトフェンプロックスに触れるとこれを嫌がって去っていくという原理により防虫性が発揮される。本発明では、経時とともにマルチフィラメント内部からエトフェンプロックスが徐々に染み出してくるので、防虫性を長期に亘って発揮することができる。
【0015】
エトフェンプロックスをフィラメントに練り込む技術は、従来も一応存在していたが(例えば特許文献2)、かかる技術はあくまでモノフィラメントに関するものであり、マルチフィラメントには充分な防虫性を付与できなかった。しかし、本発明は、マルチフィラメントにおいて、使用したエトフェンプロックスに最大限に防虫性を発揮させることに成功している。その理由は定かではないが、本発明者は以下のように考えている。
【0016】
即ち、防虫性フィラメントは、マトリクス樹脂や防虫剤等の材料をブレンドし、このブレンド物を樹脂の融点以上に加熱して溶融紡糸することで得られる。防虫剤としてエトフェンプロックスを使用する場合、エトフェンプロックスは融点が低くて昇華しやすいという性質を持つので、過度の高温に曝されると多くはフィラメント外に揮散してしまう。
【0017】
特に本発明は、太い一本の糸であるモノフィラメントではなく、複数本の細い糸からなるマルチフィラメントに関する。マルチフィラメントはモノフィラメントよりも表面積が大きく、従って、前述の過度の高温による揮散が特に起きやすい。
【0018】
しかし、本発明では、マトリクス樹脂として低融点(150~190℃)のポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBT樹脂と略称することがある。)を使用することで、紡糸時における溶融温度を低くし、エトフェンプロックスの揮散を有効に抑制している。その結果、本発明では、多量のエトフェンプロックスを材料として使用しなくても、十分量のエトフェンプロックスをマルチフィラメント中に存在させることができ、マルチフィラメントが、糸切れ等を起こすことなく、防虫性を最大限且つ長期に亘って発揮することができると考えられる。
【0019】
更に、本発明では、マトリクス樹脂として上述の低融点PBT樹脂を採用することで、染色工程におけるエトフェンプロックスの揮散も抑制される。詳述すると、例えば、紡糸後のマルチフィラメントを織編物に加工後、染料などを溶解させた染色浴槽を所定の温度に加熱し、かかる染色浴槽に織編物を数時間浸けることで染色をする場合がある。これまでは、染色工程でエトフェンプロックスが大量に失われるとは考えられてこなかったが、本発明者の検討により、染色工程では溶融紡糸工程以上にエトフェンプロックスの損失が起こることがわかった。染色温度が紡糸時の溶融温度に比べて低温であることを考慮すると、これは驚くべき事実である。本発明者は、染色工程では、マルチフィラメントが長時間にわたって加熱される結果、損失量が多くなると推察している。しかし、本発明では、前述の通り低融点PBT樹脂をマトリクス樹脂として採用しているので、染色温度も抑えることができ、浸漬時間が長くてもエトフェンプロックスがほとんど失われない。
【0020】
このように、本発明では、マトリクス樹脂として低融点PBT樹脂を採用するという極めてシンプルな手段により、マルチフィラメントを製造する上で必須である紡糸工程でのエトフェンプロックスの損失を抑制し、更に、大量のエトフェンプロックスが損失する染色工程においてもエトフェンプロックス量を維持できる。そのため、過剰のエトフェンプロックスを配合する必要がないので、糸切れ等を回避して良好な品質を維持したまま、高い防虫性を発揮するマルチフィラメントの実現に成功している。
【0021】
しかも、PBT樹脂は、風合いに優れており、多様な用途に好適であるので、本発明は、生活資材や産業資材に幅広く適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、防虫性マルチフィラメントおよびかかるマルチフィラメントを用いた防虫性織編物に関する。
【0023】
<防虫性マルチフィラメント>
本発明の防虫性マルチフィラメントでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)中に防虫剤であるエトフェンプロックスが練り込まれている。
【0024】
PBT樹脂は、テレフタル酸単位と1,4-ブタンジオール単位とがエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であり、ポリブチレンテレフタレート(ホモポリマー)であってもよく、テレフタル酸単位及び1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよく、ホモポリマーと当該共重合体との混合物であってもよい。
【0025】
PBT樹脂が含んでいてもよいテレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類;および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;等が挙げられる。
【0026】
PBT樹脂が含んでいてもよい1,4-ブタンジオール以外のジオールとしては、例えば、炭素原子数2~20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。
【0027】
PBT樹脂が共重合体である場合、かかる共重合体は、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含んでいる。
【0028】
PBT樹脂では、紡糸操業性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4-ブタンジオールの割合は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。
【0029】
上記した二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリオール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパン)等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0030】
PBT樹脂が共重合体である場合、好ましい共重合体として、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、共重合体とは、共重合量が、PBT樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満、好ましくは1モル%以上、30モル%未満のものをいう。
【0031】
本発明で用いるPBT樹脂の固有粘度(IV)は、0.6~1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1[質量比]の混合溶媒中、25℃で測定することができる。
【0032】
本発明は、PBT樹脂の融点が150~190℃、好適には160~180℃と低い点に重要な特徴を有する。融点が高すぎると、紡糸工程での溶融温度や染色工程での染色温度を高くしなければならず、これらの工程でエトフェンプロックスが多く揮散してしまう。融点が低すぎると耐熱性等が不十分になる。融点は、例えば示差走査熱量分析により確認することができる。かかる融点のPBT樹脂を得るために、必要に応じて公知の手段を採ればよく、例えば適当な種類および適当な量の共重合成分を配合して融点を調整するとよい。
【0033】
エトフェンプロックスは、下記化学式で表される、化学名が2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル=3-フェノキシベンジル=エーテルであり、ピレスロイドと同様の作用機構により防虫性を発揮するが、温血動物に対する毒性が低く、皮膚・粘膜への刺激が弱く、魚毒性も低いという利点を有する。
【化1】
【0034】
本発明の防虫性マルチフィラメントには、染色されていない場合、エトフェンプロックスが全体に対して0.25~3.00質量%含まれており、好適には0.28~2.75質量%含まれている。即ち、本発明ではマトリクス樹脂として低融点のPBT樹脂を使用しているため、紡糸時の加熱温度を低くすることができる。そのため、紡糸時にエトフェンプロックスが揮散することを有効に抑制し、温度の影響を受けやすく、繊細な紡糸条件が求められるマルチフィラメントであるにも関わらず、十分量のエトフェンプロックスが含有されており、良好な防虫性を発揮する。エトフェンプロックスの含有割合が上記数値範囲を超えると、紡糸操業性や延伸操業性、織編加工性が損なわれる虞がある。また、風合いが損なわれる虞もある。
【0035】
上述の防虫性未染色マルチフィラメントを染色して得られる防虫性染色マルチフィラメントには、エトフェンプロックスが0.18~1.97質量%含まれており、好適には0.24~1.97質量%含まれている。マトリクス樹脂として低融点PBT樹脂を用いることで、上述の紡糸時の加熱温度だけでなく、染色を行う場合には、染色温度も低温にすることができ、それ故、本発明の防虫性染色マルチフィラメントは、染色後であるにもかかわらず十分量のエトフェンプロックスを含んでいる。
【0036】
尚、マルチフィラメントが未染色の場合は、マルチフィラメントが染色されていないという意味であり、染色されていない限り、無機顔料や有機顔料といった顔料により原着されたマルチフィラメントを含む。一方、マルチフィラメントが染色されたものである場合には、織編物等に加工後に染色されたものも、加工前に染色されたものも含まれ、また、顔料により原着されたマルチフィラメントを染色したものも含まれる。
【0037】
本発明では、その効果が損なわれない限り、エトフェンプロックスの他に公知の防虫剤を併用してもよい。エトフェンプロックス以外の公知の防虫剤としては、例えば、ピレトリン、シネリン、ジャスモリン、アレスリン、レスメトリン、フェンバレラートなどのピレスロイド系防虫剤;トキサフェン、ベンゾエピンなどの環状ジエン系防虫剤;マラチオン、フェニトロチオンなどの有機リン系防虫剤;カルバリル、メソミル、プロメカルブなどのカルバメート系防虫剤;などを挙げることができる。
【0038】
本発明のマルチフィラメントは、更に公知の添加剤を含んでいてもよい。公知の添加剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸アミド等の徐放助剤;分散助樹脂、親和性樹脂(例えばエチレン‐エチルアクリレート)等として使用される異種の熱可塑性樹脂類;耐候剤;難燃剤;酸化防止剤;酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、カーボンブラックなどの無機顔料;フタロシアニン金属系、コバルト青などの有機顔料;ステアリン酸金属塩類;エチレンビスステアリルアミド;メタケイ酸カルシウム;含水ケイ酸マグネシウム;アミノシラン;メラミンシアヌレート;アイオノマー類;金属イオン封鎖剤;包接化合物;着色防止剤;帯電防止剤;シリコーンオイル;界面活性剤;強化繊維;カルボジイミド;エポキシ化合物;オキサゾリン化合物;クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの無機粒子や架橋高分子粒子などの粒子類;抗酸化剤;イオン交換剤;などが挙げられる。
添加剤として無機顔料や有機顔料といった顔料を用い、染色工程を省略する態様は、エトフェンプロックスの揮散を極限まで抑制し且つ所望の色を呈したマルチフィラメントを得ることができるという点で、好ましい。
【0039】
本発明のマルチフィラメントの繊度は、用途に応じて適宜決めればよいが、一般的には30~2000デシテックスが好ましく、30~300デシテックスがより好ましい。マルチフィラメントが細すぎると、糸切れや単糸切れ(糸毛羽)が起きやすくなる虞があり、太すぎると、所望の品質(柔軟性、手触り)が得られない虞がある。
【0040】
本発明のマルチフィラメントの単糸数も、用途に応じて適宜決めればよいが、紡糸の容易性およびコストの観点から、10~300本が好ましく、10~50本がより好ましく、12~36本が特に好ましい。
【0041】
本発明のマルチフィラメントは、公知の方法により製造することができる。例えば、所望の材料を用意し、常法の溶融紡糸装置によって材料を出来るだけ低温で、好適にはマトリクス樹脂であるPBT樹脂の融点+10~30℃で溶融混練する。
【0042】
各材料は、直接混合してもよいが、必要に応じてマスターバッチの状態にしてから混合してもよい。マスターバッチには、公知の熱可塑性樹脂を使用すればよい。
【0043】
PBT樹脂は紡糸にあたり、材料を混合後溶融前に乾燥させ、水分を飛ばす必要がある。乾燥条件は、80~130℃で3~5時間乾燥することが好ましい。
【0044】
材料の配合量は、最終的に得られるマルチフィラメントにおける各成分量が上述の数値範囲内となるように適宜決定すればよい。例えば、マトリクス樹脂である低融点PBT樹脂を、材料全体に対して90.0質量%以上、好ましくは95.0~99.6質量%を使用することが好ましい。また、エトフェンプロックス(純分)を、材料全体に対して0.4~5.0質量%使用することが好ましく、0.5~3.5質量%使用することがより好ましく、0.5~3.0質量%使用することが特に好ましい。
【0045】
次いで、溶融混練物を押し出す。押し出す際には、滞留時間を短くして過剰な熱履歴を避けることが大切である。装置の規模等にもよるが、通常は、滞留時間を2~10分とすることが好ましく、4~8分とすることが特に好ましい。滞留時間が短すぎると、溶融・混練が不十分なままで糸になり、糸切れが起こりやすくなる虞がある。滞留時間が長すぎると、紡糸時のエトフェンプロックス揮散量の増加につながり好ましくない。また、粘度の低下、黄変、強度伸度不十分等の不都合が起こる虞もある。
【0046】
次いで、押し出された溶融混練物を口金から吐出し、空気を吹き付けて冷却固化する。これにより、未延伸糸が得られる。
【0047】
次いで、得られた未延伸糸を延伸する。延伸温度は30~70℃が好ましい。延伸倍率は3.0~5.5倍が好ましい。
【0048】
次いで、必要に応じて、製織や編立等に供する前のマルチフィラメントを染色してもよい。つまり、通常、染色は、製織や編立等の後で行うことが多いが、用途等によっては製織等の前に行ってもよいのである。染色は、後述の織編物と同様、例えば公知の染料および助剤を溶解した染色浴槽を用意し、温度を80~120℃に調整し、かかる浴槽に未染色マルチフィラメントを浸けて行う。
【0049】
かくして得られる本発明のマルチフィラメントは、染色前だけでなく染色後にも十分量のエトフェンプロックスを含み、優れた防虫性を発揮する。更に、エトフェンプロックスは、表面に塗布等されているのではなく、マルチフィラメント内部に練り込まれており、少しずつマルチフィラメント表面に染み出てくるので、防虫性は長期に亘って持続される。しかも、本発明は、複数本の細い糸からなるマルチフィラメントである。マルチフィラメントは一般にモノフィラメントに比べて糸切れ、糸毛羽が起こりやすい。特にエトフェンプロックスのような異物を樹脂に練り込む場合には、糸切れ、糸毛羽等の紡糸操業性の問題は非常に顕著である。しかし、本発明では、低融点PBTを用い、エトフェンプロックスの多量使用を回避することで、更に、好ましくは紡糸条件を細かく調整することで、糸切れ、糸毛羽の発生を有効に抑制している。
【0050】
本発明の防虫性マルチフィラメントは、そのまま長繊維の状態で利用してもよいが、適当な長さに切断して短繊維の状態で利用してもよい。
短繊維の状態で利用する場合としては、例えば織物、編物、不織布、各種補助材に利用することが考えられる。利用にあたっては、短繊維同士を撚りあわせて紡績糸としてから利用してもよい。
長繊維のままで利用する場合としては、糸のままでの利用や、織物または編物への利用が挙げられる。
本発明の効果が最大限に発揮されるという観点から、本発明の防虫性マルチフィラメントを、長繊維のままで織物または編物に利用することが好ましい。
【0051】
<織編物>
本発明では、長繊維のままの本発明の防虫性マルチフィラメントを、経糸または緯糸の少なくとも一部として、好適には、全ての経糸または全ての緯糸として、特に好適には全ての経糸および全ての緯糸として使用して、織物を得ることができる。以下、かかる織物を、本発明の織物と呼ぶことがある。
【0052】
本発明の織物には、公知の織物組織を適用可能である。織物組織としては、例えば、三原組織(平織、斜文織、朱子織等)、変化組織(変化平織、斜子織、変化斜文織、急斜文、山形斜文、変化朱子織等)、特別組織(蜂須織、梨地織)、混合組織等の一重組織;よこ二重織(玉ラシャ等)、たて二重織(両面朱子等)、二重組織(風通織、袋織等)等の重ね組織;たてパイル組織(たてビロード等)、よこパイル組織(別珍、コーデュロイ等)、タオル組織等のパイル組織;絽、紗等の搦組織;紋組織;が挙げられる。上記した具体例以外に、JIS L 0206:1999に記載されている織物組織がある。
【0053】
製織は、公知の方法に従って行えばよく、即ち、選択した織物組織等に応じて公知の方法を選択すればよい。
【0054】
また、本発明では、長繊維のままの本発明の防虫性マルチフィラメントを、少なくとも編み糸の一部として用い、好適には全ての編み糸として用いて、経編みまたは緯編みし、編物を得ることもできる。以下、かかる編物を、本発明の編物と呼ぶことがあり、前述の本発明の織物と併せて本発明の織編物と総称することがある。
【0055】
本発明の編物には、公知の編組織が適用可能である。編組織としては、例えば、平編み、リブ編み、パール編み、両面編み等の緯編組織;シングルデンビー編み、シングルコード編み、シングルアトラス編み、ハーフトリコット編み等の経編組織;がある。編組織によっては、編糸(地糸)以外に柄糸を使用することがある。柄糸には、本発明のマルチフィラメントを使用してもよく、公知の糸を使用してもよい。
【0056】
編立は、公知の方法に従って行えばよく、即ち、選択した編組織等に応じて適切な公知の方法を選択すればよい。
【0057】
本発明の織物を製織する前または本発明の編物を編み立てる前には、上述の本発明のマルチフィラメントに巻き返し、整経、糊付け等の下準備をしておいてよい。
【0058】
製織または編立後には、用途に応じて得られた織編物を染色してよい。染色は公知の浸染または捺染の方法で行えばよい。マルチフィラメントのマトリクス樹脂が低融点PBT樹脂であることに起因して、本発明は、染色温度をはじめとする各工程の加熱温度を低温とすることができ、これによりエトフェンプロックスの揮散を有効に抑制する点に重要な特徴を有する。例えば浸染の場合であれば、必要に応じて、プレセットとして90~130℃で15~30m/分の速度で織編物を加熱する。次いで、公知の染料および助剤を溶解した染色浴槽を用意し、温度を80~120℃に調整する。かかる浴槽に織編物を浸け、染色する。浸漬中は、浴槽内を撹拌することが好ましい。染色後には、必要に応じて、ファイナルセットとして100~140℃で15~25m/分の速度で織編物を加熱してよい。かかる染色工程で織編物が過度に高温にさらされたり、過度に長時間加熱されたりすると、マルチフィラメント中に十分量存在するエトフェンプロックスが、染色工程で揮散する虞がある。そのため、染色工程の各加熱操作における加熱温度および加熱時間は上述した数値範囲に設定し、染色工程でのエトフェンプロックスの減少を回避することが好ましい。
【0059】
製織・編立後又は必要に応じて行う染色後、織編物には、柔軟剤やのりを使った風合い調整や、100~140℃の温度で加熱しての生地歪みの修正といった仕上げ加工を施してよい。
【0060】
かくして得られる本発明の織編物では、染色されていない場合、防虫性未染色マルチフィラメント中にエトフェンプロックスが0.25~3.00質量%、好ましくは0.28~2.75質量%含まれている。
一方、染色された場合、本発明の織編物では、防虫性染色マルチフィラメント中にエトフェンプロックスが0.18~1.97質量%、好ましくは0.24~1.97質量%含まれている。
即ち、紡糸後の本発明のマルチフィラメントを織編物に使用するとき、製織、編立、染色等の工程での加熱によりエトフェンプロックスがわずかに揮散する可能性があるが、最終的にエトフェンプロックスが織編物中のマルチフィラメントに上述した数値範囲で含有されていることが好ましい。
また、染色の有無や他のフィラメント使用の有無にかかわらず、本発明の織編物全体では、エトフェンプロックスが0.11~2.40g/m2、特に0.15~2.40g/m2存在していることが好ましい。本発明の織編物において、エトフェンプロックスの量がこれらの数値範囲を満たしていると、優れた防虫性を有し、フィラメント割れ、毛羽等の発生も抑制された、製品価値の高い織編物が得られる。
【0061】
本発明の織編物では、繊度が30~2000デシテックスであり且つ単糸数が10~300本であるマルチフィラメントを使うことが好ましい。風合いを重視する場合には、繊度が30~300デシテックスであり且つ単糸数が10~50本であるマルチフィラメントを使うことがより好ましい。高強度と高耐久性を重要視する場合には、繊度が300~2000デシテックスであり且つ単糸数が50~300本であるマルチフィラメントを使うことがより好ましい。本発明の効果が最大限に発揮されるので、繊度が30~300デシテックスであり且つ単糸数が10~50本であるマルチフィラメントを使うことが特に好ましい。
【0062】
本発明の織編物は、様々な用途に広く適用することができ、即ち、生活資材だけでなく産業資材にも適用することができる。生活資材としては、例えば健康器具(トランポリン等)、寝具、インテリア(カーテン等)、衣料、装飾品(帽子、スカーフ、手袋等)、ベビーカー、防虫ネット、エアコンフィルタ、網戸用ネット、アウトドア用品(テント、ひさし等)等を挙げることができる。産業用資材は、例えば、土木建築、自動車、住宅、電子、航空機産業向け資材などを意味する。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。各実施例および比較例において、諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
【0064】
<マルチフィラメント中のエトフェンプロックス量の測定>
未染色編物および染色編物中のマルチフィラメントにおけるエトフェンプロックスの含有量を液体クロマトグラフィーで測定した。
【0065】
<糸切れ、糸毛羽>
紡糸および延伸中の糸切れ発生頻度を単位時間当たりの回数でカウントし、以下の基準により評価した。
非常に良い;0回/2hr
良い;1回/2hr
悪い;2回以上/2hr
【0066】
<引張強度、引張伸度>
JIS L-1013:1999-8.5に従い、各実施例および比較例で得られたマルチフィラメントの引張強度および引張伸度を測定した。具体的には、サンプル(40cm)を、強く引っ張った状態で引張試験機(島津製作所社製AGSJ-1KN)につかみ間隔200mmで取り付け、引張り速度200mm/分の定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引っ張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強さ(引張強度)及び伸び率(引張伸度)を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
Tb=SD/F0
Tbは引張強さを表し、SDは切断時の強さを表し、F0は試料の正量
繊度を表す。
伸び率(%)=[(E2-E1)/(L+E1)]×100
E1は緩み(mm)を表し、E2は切断時の伸び(mm)を表し、Lは
つかみ間隔(mm)を表す。
【0067】
<防虫性>
チャバネゴキブリが暗く狭い空間を好む習性を利用したシェルター試験にて、選択忌避試験を行った。試験方法の詳細を以下に示す。
まず、試験容器内に、試料{各実施例および比較例で得られた未染色編物または染色編物(5cm×5cm)}、エサ、水を設置した。次いで、試料の上にそれぞれ営巣用シェルターを設置した。次いで、チャバネゴキブリ10匹を試験容器に投入した。次いで、試験容器上方より明かりを照らした。10時間以上放置した後、試験容器全体を動画撮影しながら、シェルターを取り除いた。撮影した動画より、各々のシェルターにいたチャバネゴキブリの数をカウントし、次式より忌避率を算出した。
忌避率(%)={(C0-C)/C0}×100
Cは処理区の虫の数を表し、C0は無処理区の虫の数を表す。
【0068】
<編立操業性>
編立中の糸切れ回数をカウントし、以下の基準により評価した。
非常に良い;0回/2hr
良い;1回/2hr
悪い;2回以上/2hr
【0069】
<風合い>
各実施例および比較例で得られた未染色編物(20cm×20cm)を利き手の掌で軽く握り、柔らかさおよび反撥力を手触りおよび感触から認識し、以下の基準により評価した。
非常に良い;柔らかく反発力がある(シャリ感)
良い;やや硬い
悪い;硬い又は柔らかすぎる
【0070】
<染め上げ色調>
各実施例および比較例で得られた染色編物の色調を以下の基準で評価した。
非常に良い;濃染
良い;やや淡染
悪い;淡染(薄めの色)
【0071】
<実施例1>
酸化チタンのマスターバッチ(濃度40重量%)(日本ピグメント社製 RX-4214)、エトフェンプロックスのマスターバッチ(三井アグロ社製エトフェンプロックス)及びマトリクス樹脂(ポリプラスチックス社製イソフタル酸共重合PBT樹脂ジュラネックス500LP、融点170℃、IV=0.875)を用意した。マトリクス樹脂100質量部に対し、酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを3質量部加え、ドライブレンドした。このとき、エトフェンプロックスの純分質量は、材料全体に対して0.58質量%であった。次いで、ブレンド物を90℃で5時間乾燥させた。乾燥後のドライブレンド物を溶融紡糸装置に投入し、温度190℃、滞留時間8分、押出量0.5kg/hr・spで口金から溶融混練物を押し出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を延伸倍率3.6倍、延伸温度50℃で延伸し、繊度83デシテックス、単糸数12本の防虫性マルチフィラメントを得た。
【0072】
得られた未染色マルチフィラメントをフロント筬、ミドル筬、バック筬に用い、経編機(KARL MAYER社製)を使用して未染色編物を得た。
【0073】
得られた未染色編物を染色した。具体的には、110℃18m/分の条件でプレセットを行った後、下記表1の条件の染色浴槽を用意し、この浴槽にプレセット後の未染色編物を100℃で4時間浸漬した。その後、125℃18m/分の条件でファイナルセットを行い、染色編物を得た。
【表1】
【0074】
<実施例2>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを5質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を0.94質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0075】
<実施例3>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを7質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を1.30質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0076】
<実施例4>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを10質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を1.80質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0077】
<比較例1>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを20質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を3.30質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0078】
<比較例2>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを0.3質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を0.06質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0079】
<比較例3>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを1質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を0.20質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0080】
<比較例4>
PBT樹脂100質量部あたり酸化チタンマスターバッチを1質量部、エトフェンプロックスマスターバッチを1.5質量部ブレンドし、エトフェンプロックスの純分を0.29質量%とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0081】
実施例1~4と比較例1~4で得られた未染色マルチフィラメント、未染色編物および染色編物について各種測定を行った。結果を表2および表3に示す。
【表2】
【表3】
【0082】
<実施例5>
単糸数を24本とした点以外は実施例1と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例1と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0083】
<実施例6>
単糸数を24本とした点以外は実施例2と同様にして防虫性未染色マルチフィラメントを得た。次いで、実施例2と同様にして、得られた未染色マルチフィラメントから未染色編物を得た。次いで、実施例2と同様にして、得られた未染色編物を染色し、染色編物を得た。
【0084】
実施例5および6で得られた未染色マルチフィラメント、未染色編物および染色編物について各種測定を行った。結果を表4および表5に示す。
【表4】
【表5】