(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20220331BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20220331BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20220331BHJP
C22C 12/00 20060101ALI20220331BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 Q
C22C13/00
C22C13/02
C22C12/00
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
(21)【出願番号】P 2019035079
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 真之
(72)【発明者】
【氏名】掘 修一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 理大
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026904(WO,A1)
【文献】特開2013-229295(JP,A)
【文献】特開2016-085948(JP,A)
【文献】特開2019-029244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
C22C 13/00
C22C 13/02
C22C 12/00
B23K 35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板に発熱素子と少なくとも一対の主電極と発熱素子の通電電極とが設けられており、第1の低融点合金からなり主電極と通電電極との間の隙間を埋めて低融点合金を増量する拡張合金部と、第2の低融点合金と第1および第2の低融点合金よりも固相線温度が高い高融点金属材との複合材からなり主電極と通電電極と拡張合金部の上に設けた
無鉛錫系はんだ材からなるヒューズ素子とを有し、高融点金属材は主電極と通電電極および拡張合金部とに当接しないように設け
、かつ前記拡張合金部は、前記第2の低融点合金と同一の組成からなり、少なくとも前記主電極と前記通電電極とを橋設した前記ヒューズ素子の電極橋設部において、第2の低融点合金の前記両電極間の下面全面に隙間なく接触させて設けたことを特徴とする保護素子。
【請求項2】
前記第1および第2の低融点合金は、溶融すると協働して前記高融点金属材を溶かして溶断する請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記高融点金属材は前記第1および第2の低融点合金に溶解する金属材で構成された請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記高融点金属材は、銀、銅またはこれらを含む合金の何れか1つの金属導体である請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項5】
前記合金は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1および第2の低融点合金は、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金、Agを3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~60質量%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金から選択された合金材である請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項7】
前記第1および第2の低融点合金は、96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金から選択された合金材である請求項
6に記載の保護素子。
【請求項8】
絶縁基板の下面に設けた発熱素子と、前記絶縁基板の上面に設けた少なくとも一対の主電極と、前記絶縁基板の上面に設けられ前記発熱素子への通電に用いられる通電電極と、前記主電極と前記通電電極との電極間に設けた第1の低融点合金からなる拡張合金部と、前記主電極と前記通電電極と前記拡張合金部との上に設けた
無鉛錫系はんだ材からなる第2の低融点合金と前記第1および第2の低融点合金よりも固相線温度が高い
無鉛錫系はんだ材からなる高融点金属材との複合材からなるからなるヒューズ素子とを有し、前記高融点金属材は、前記主電極と前記通電電極および前記拡張合金部とに当接しないように設け
、かつ前記拡張合金部は、前記第2の低融点合金と同一の組成からなり、少なくとも前記主電極と前記通電電極とを橋設した前記ヒューズ素子の電極橋設部において、第2の低融点合金の前記両電極間の下面全面に隙間なく接触させて設けられており、さらに前記ヒューズ素子を覆って塗布した動作用フラックスと、前記ヒューズ素子と前記動作用フラックスとを覆って前記絶縁基板に固着した蓋体とで構成されたことを特徴とする保護素子。
【請求項9】
前記第1および第2の低融点合金は、溶融すると協働して前記高融点金属材を溶かして溶断する請求項
8に記載の保護素子。
【請求項10】
前記高融点金属材は前記第1および第2の低融点合金に溶解する金属材で構成された請求項
8または請求項
9に記載の保護素子。
【請求項11】
前記高融点金属材は、銀、銅またはこれらを含む合金の何れか1つの金属導体である請求項
8ないし請求項
10の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項12】
前記合金は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である請求項
11に記載の保護素子。
【請求項13】
前記第1および第2の低融点合金は、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金、Agを3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~60質量%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金から選択された合金材である請求項
8ないし請求項
12の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項14】
前記第1および第2の低融点合金は、96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金から選択された合金材である請求項
13に記載の保護素子。
【請求項15】
絶縁基板の上面に設けた発熱素子と、前記絶縁基板の上面に設けた少なくとも一対の主電極と、前記絶縁基板の上面に設けられ前記発熱素子への通電に用いられる通電電極と、前記主電極と前記通電電極との電極間に設けた第1の低融点合金からなる拡張合金部と、前記主電極と前記通電電極と前記拡張合金部との上に設けた
無鉛錫系はんだ材からなる第2の低融点合金と前記第1および第2の低融点合金よりも固相線温度が高い
無鉛錫系はんだ材からなる高融点金属材との複合材からなるヒューズ素子とを有し、前記高融点金属材は、前記主電極と前記通電電極および前記拡張合金部とに当接しないように設け
、かつ前記拡張合金部は、前記第2の低融点合金と同一の組成からなり、少なくとも前記主電極と前記通電電極とを橋設した前記ヒューズ素子の電極橋設部において、第2の低融点合金の前記両電極間の下面全面に隙間なく接触させて設けられており、さらに前記ヒューズ素子を覆って塗布した動作用フラックスと、前記ヒューズ素子と前記動作用フラックスとを覆って前記絶縁基板に固着した蓋体とで構成されたことを特徴とする保護素子。
【請求項16】
前記第1および第2の低融点合金は、溶融すると協働して前記高融点金属材を溶かして溶断する請求項
15に記載の保護素子。
【請求項17】
前記高融点金属材は前記第1および第2の低融点合金に溶解する金属材で構成された請求項
15または請求項
16に記載の保護素子。
【請求項18】
前記高融点金属材は、銀、銅またはこれらを含む合金の何れか1つの金属導体である請求項
15ないし請求項
17の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項19】
前記合金は、少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金である請求項
18に記載の保護素子。
【請求項20】
前記第1および第2の低融点合金は、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金、Agを3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~60質量%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金から選択された合金材である請求項
15ないし請求項
19の何れか1つに記載の保護素子。
【請求項21】
前記第1および第2の低融点合金は、96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金から選択された合金材である請求項
20に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器の保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器など小型電子機器の急速な普及に伴い、搭載する電源の保護回路に実装される保護素子も小型薄型のものが使用されている。例えば、二次電池パックの保護回路には、表面実装部品(SMD)のチップ保護素子が好適に利用される。これらチップ保護素子には、被保護機器の過電流により生ずる過大発熱を検知し、または周囲温度の異常過熱に感応して、所定条件でヒューズを作動させ電気回路を遮断する非復帰型保護素子がある。該保護素子は、機器の安全を図るために、保護回路が機器に生ずる異常を検知すると信号電流により抵抗素子を発熱させ、その発熱で可融性の合金材からなるヒューズ素子を溶断させて回路を遮断するか、あるいは過電流によってヒューズ素子を溶断させて回路を遮断できる。特開2013-239405号公報(特許文献1)には、異常時に発熱する抵抗素子をセラミックス基板などの絶縁基板上に設けた保護素子が開示されている。
【0003】
現在、上述した保護素子のヒューズ素子を構成する可溶合金は、改正RoHS指令などの化学物質の規制強化により鉛フリー化が進んでいる。特開2015-079608号公報(特許文献2)に記載されるように、無鉛金属複合材のヒューズ素子であって、この保護素子を外部回路板に表面実装する際のはんだ付け作業温度において、溶融可能な易融性の低融点金属材と、前記はんだ付け作業温度で液相の低融点金属材に溶解可能な固相の高融点金属材とから成り、低融点金属材と高融点金属材とを一体成形することで、液相化した低融点金属材を固相の高融点金属材ではんだ付け作業が終わるまで保持することを特徴とするヒューズ素子がある。このヒューズ素子の低融点金属材と高融点金属材とは互いに固着成形され、はんだ付け作業の熱で液相化した低融点金属材を上記はんだ付け作業温度で固相の高融点金属材で、溶断しないように保持しながら、液相の低融点金属材でヒューズ素子を保護素子の電極パターンに接合できるようにし工夫されている。さらに、この保護素子を回路基板に表面実装する際のはんだ付け作業温度においてヒューズ素子が溶断するのを防止している。この保護素子は内蔵してる抵抗素子を発熱させ、その熱でヒューズ素子の高融点金属材を、媒質である低融点金属材中に拡散または溶解させて溶断動作するようなっている。
【0004】
これら保護素子は被保護デバイスの異常を検知してメイン回路の電流を遮断する働きをするため、保護素子の電極間抵抗値は、ヒューズ動作前はできるだけ小さく極力通電のロスが無いように、ヒューズ動作後の遮断時はできるだけ大きい絶縁抵抗値を示すようになっていることが好ましい。上述した従来の保護素子の内部抵抗値は、ヒューズ素子を取付けた電極間に橋設された可溶合金の電気導電度によって決まっていた。しかし、可溶合金の電気導電度は、銀や銅などの導体金属よりも劣ってしまうため、従来は特開2015-079608号公報(特許文献2)に記載されるように可溶合金の表面に銀や銅の高融点金属材を被覆するか、特開2017-228379号公報(特許文献3)に記載されるように電極基板上に、溶融した可溶合金に可溶性の銀または銀合金の焼結電極からなるバイパス電極を設ける必要があった。しかし銀や銅の高融点金属材は銀または銀合金の焼結電極材は保護素子の発熱体の加熱のみでは溶融できず、可溶合金に溶解させ切る必要があり、これが残った場合には、ヒューズ動作不良やヒューズ動作後における絶縁抵抗値の低下につながるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特開2013-239405号公報
特許文献2:特開2015-079608号公報
特許文献3:特開2017-228379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保護素子の化学物質規制に対応しながら、ヒューズ素子を取付けた電極間にヒューズ素子の溶融を補助または溶融残りが生じる心配が無いようにヒューズ動作時の遮断安定性を向上させ、かつヒューズ動作前の通電ロスが少なくなるように内部抵抗値を低減した電気・電子機器の保護素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、絶縁基板に発熱素子と少なくとも一対の主電極と発熱素子の通電電極とが設けられており、第1の低融点合金からなり主電極と通電電極との間の隙間を埋めて低融点合金を増量する拡張合金部と、第2の低融点合金と第1および第2の低融点合金よりも固相線温度が高い高融点金属材との複合材からなり主電極と通電電極と拡張合金部の上に設けたヒューズ素子とを有し、高融点金属材は主電極と通電電極および拡張合金部とに当接しないように設けたことを特徴とする保護素子が提供される。上記ヒューズ素子は、第2の低融点合金と高融点金属材とで構成されており、第1および第2の低融点合金が溶融すると協働して高融点金属材を溶かして溶断することができる。主電極と通電電極との電極間に第1の低融点合金からなる拡張合金部を設けることで、少なくともヒューズ素子を完全に溶断させねばならない電極間部において、低融点合金の量を集中的に増やして高融点金属材を溶解させることでヒューズ素子の溶断を確実にすると共に、ヒューズ素子の全体の厚みを減じ保護素子の低背化にも寄与する。さらに第1の低融点合金が主電極と通電電極との間の隙間を埋めていることで、ヒューズ動作前における保護素子の内部抵抗値を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、ヒューズ動作時において通電をより確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の保護素子10であり、(a)は(b)のd-d線に沿ってキャップ状蓋体を切断した平面図を示し、(b)は(a)のD-D線に沿った断面図を示し、(c)はその下面図を示す。
【
図2】本発明の保護素子20であり、(a)は(b)のd-d線に沿ってキャップ状蓋体を切断した平面図を示し、(b)は(a)のD-D線に沿った断面図を示し、(c)はその下面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る保護素子10は、
図1に示すように、絶縁基板11に発熱素子12と少なくとも一対の主電極13と発熱素子12の通電電極14とが設けられており、第1の低融点合金からなり主電極13と通電電極14との間の隙間を埋めて低融点合金の量を増やす拡張合金部15と、第2の低融点合金16と第1および第2の低融点合金よりも固相線温度が高い高融点金属材17との複合材からなり主電極13と通電電極14と拡張合金部15の上に設けたヒューズ素子100とを有し、高融点金属材17は主電極13と通電電極14および拡張合金部15とに当接しないように設けたことを特徴とする。主電極13および通電電極14は、動作時に開成するように設けられており、ヒューズ素子100は、第2の低融点合金16と高融点金属材17とで構成されており、第1および第2の低融点合金16が溶融することで、第1の低融点合金からなる拡張合金部15と第2の低融点合金16とに高融点金属材17を溶かし込んでヒューズ動作する。第1および第2の低融点合金は、発熱素子12の加熱で溶融しかつ高融点金属材17を溶解可能な無鉛の易融金属であれば何れの合金を用いてもよく、特に限定されないが、第1および第2の低融点合金の一例として、Agを3~4質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金、Cuを0.5~0.7質量%さらに必要に応じてAgを0~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Cu-Ag合金(但し銀は必須ではない)、Agを3~4質量%さらにCuを0.5~1質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag-Cu合金、Biを10~60質量%含有し残部がSnからなるSn-Bi合金および96.5Sn-3.5Ag合金、99.25Sn-0.75Cu合金、96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金、95.5Sn-4Ag-0.5Cu合金、42Sn-58Bi合金などの無鉛錫系はんだ材が利用できる。(合金材の係数は元素の質量%を示す。)なお、拡張合金部(第1の低融点合金)15と第2の低融点合金16は、互いに異なる組成の物または同一組成の物の何れを採用してもよい。拡張合金部(第1の低融点合金)15は一様一体の金属材からなる。高融点金属材17は、発熱素子12の加熱によって第1および第2の低融点合金に溶解する金属材であれば何れの金属材を用いてもよく、特に限定されないが、高融点金属材17の一例として、銀、銅またはこれらを含む合金が好適に利用できる。例えば銀合金として、Agを25~40質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金などの無鉛錫系はんだ材が利用できる。拡張合金部15は、少なくとも主電極13と通電電極14とを橋設したヒューズ素子100の電極橋設部において、第2の低融点合金16の前記両電極間の下面全面に隙間なく接触させて設ける。
【実施例】
【0011】
本発明に係る実施例1の保護素子10は、
図1に示すように、アルミナ製絶縁基板11の下面に設けた厚膜抵抗体からなる発熱素子12と、絶縁基板11の上面に設けた一対の焼結銀製の主電極13と、絶縁基板11の上面に発熱素子12への通電に用いられる焼結銀製の通電電極14とが設けられており、ハンダペーストを加熱して前記電極間に設けた96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金の第1の低融点合金からなる拡張合金部15と、主電極13と通電電極14と拡張合金部15の上に設けた96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金製の第2の低融点合金16と銀製の高融点金属材17との複合材からなるヒューズ素子100とを有し、ヒューズ素子100を構成する高融点金属材17は主電極13と通電電極14および拡張合金部15とに当接しないように設けられており、さらに、図示しないがヒューズ素子100を覆って塗布した動作用フラックスと、ヒューズ素子100と動作用フラックスとを覆って絶縁基板11に固着した液晶ポリマー製のキャップ状蓋体18とで構成される。発熱素子12は、表面にガラスグレーズ(保護絶縁膜)を施しており、拡張合金部15は、その平面端面が主電極13と通電電極14の電極平面と平坦になるまで充填されている。絶縁基板11の上面に設けた主電極13と通電電極14は、基板下面の通電電極14とパターン電極19に電気接続する焼結銀製ハーフ・スルーホールの配線手段110を有する。銀製の高融点金属材17は、Agを25~40質量%含有し残部がSnからなるSn-Ag合金に変更することができる。
【0012】
本発明に係る実施例2の保護素子20は、実施例1の保護素子10を変形したもので、
図2に示すように、アルミナ製絶縁基板21の上面に設けた厚膜抵抗体からなる発熱素子22と、絶縁基板21の上面に設けた一対の焼結銀製の主電極23と、絶縁基板21の上面に発熱素子22への通電に用いられる焼結銀製の通電電極24とが設けられており、ハンダペーストを加熱して前記電極間に設けた96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金の第1の低融点合金からなる拡張合金部25と、主電極23と通電電極24と拡張合金部25の上に設けた96.5Sn-3Ag-0.5Cu合金製の第2の低融点合金26と70Sn-30Ag合金製の高融点金属材27との複合材からなるヒューズ素子200とを有し、ヒューズ素子200を構成する高融点金属材27は主電極23と通電電極24および拡張合金部25とに当接しないように設けられており、さらに、図示しないがヒューズ素子200を覆って塗布した動作用フラックスと、ヒューズ素子200と動作用フラックスとをさらに覆って絶縁基板21に固着した液晶ポリマー製のキャップ状蓋体28とで構成される。発熱素子22は、表面にガラスグレーズ(保護絶縁膜)を施しており、拡張合金部25は、その平面端面が該当電極間の発熱素子22を覆って主電極23と通電電極24の電極平面と平坦になるまで充填されている。絶縁基板21の上面に設けた主電極23と通電電極24は、基板下面のパターン電極29に電気接続する焼結銀製ハーフ・スルーホールの配線手段210を有する。実施例2の保護素子の発熱素子22は、ヒューズ素子200が設けられた絶縁基板21の基板面(上面)と同一の基板面(上面)に設けられている。
【0013】
実施例1および実施例2の保護素子は、主電極および通電電極とパターン電極とを絶縁基板を隔てて電気接続する配線手段は、ハーフ・スルーホールに替えて該基板を貫通した導体スルーホールや、平面電極パターンによる表面配線に変更してもよい。高融点金属材は、銀または銅に替えて少なくとも銀、銅の何れかまたは両方を含む錫基合金を利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の保護素子は、リフローはんだ付けにより他の回路基板に実装することができ、電池パックなど2次電池の保護装置に利用できる。
【符号の説明】
【0015】
保護素子10,20、絶縁基板11,21、発熱素子12,22、主電極13,23、通電電極14,24、拡張合金部(第1の低融点合金)15,25、第2の低融点合金16,26、高融点金属材17, 27、蓋体18,28、パターン電極19,29、ヒューズ素子100,200、配線手段110,210。