(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】連結部用幌および緊急車両
(51)【国際特許分類】
B60J 7/12 20060101AFI20220331BHJP
B61D 17/20 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B60J7/12 Z
B61D17/20 C
(21)【出願番号】P 2019118658
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 洋一
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142211(JP,A)
【文献】実開昭63-066322(JP,U)
【文献】実開昭63-111321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/12
B61D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り返した帆布の先端を縫製した縫製部と、
前記帆布と前記縫製部で構成された袋状部と、
長手方向に延伸して形成されたトリムを備え、
前記トリムは、前記長手方向に沿って内部に形成された空間である収容部と、前記収容部から外部にまで形成された切り込みである挟持部とを有し、
前記袋状部内に前記トリムが収容されて
おり、
さらに、車両に取り付けられるアンカー部材を備え、
前記挟持部および前記収容部で前記アンカー部材の先端および前記袋状部の一部を挟持し、
前記アンカー部材には、水抜穴が形成されていることを特徴とする連結部用幌。
【請求項2】
請求項1に記載の連結部用幌であって、
前記トリムは、前記長手方向に沿って可撓性を有することを特徴とする連結部用幌。
【請求項3】
請求項1または2に記載の連結部用幌であって、
前記縫製部は、ウェルダー加工部が形成されていることを特徴とする連結部用幌。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の連結部用幌であって、
前記収容部は、前記アンカー部材の先端と同形状に形成されていることを特徴とする連結部用幌。
【請求項5】
請求項4に記載の連結部用幌であって、
前記アンカー部材の先端は前記車両の前後方向に延出して形成されていることを特徴とする連結部用幌。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の連結部用幌を備えることを特徴とする緊急車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結部用幌および緊急車両に関する。
【背景技術】
【0002】
火災や災害時において、消防活動や救助活動を行うための緊急車両として、前部キャビン内に運転席と隊員待機室を備えたダブルキャビン構造のものや、運転席とオペレーション領域とで隊員が往来可能な構造のものが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また、隊員待機室を後部キャビンに備え、前部キャビンの運転席側と相互に隊員が往来可能なものも提案されている。
図11は、従来例の緊急車両の構造を示した図であり、
図11(a)は緊急車両1を示す側面図であり、
図11(b)は
図11(a)のY部で示すように前部キャビン2と後部キャビン3の連結部分4を拡大して示す断面図である。
【0004】
図11(a)に示すように緊急車両1は、運転席を備える前部キャビン2と隊員待機室を備える後部キャビン3を備えており、両者は分離独立して構成されているため両者間は連結部分4で連結されている。また、前部キャビン2と後部キャビン3の連結部分4には開口部が設けられており、両者の間で隊員が相互に往来可能とされている。また、連結部分4から外気や風雨が前部キャビン2および後部キャビン3に侵入することを防ぐために、連結部分4に連結部用幌が取り付けられている。
【0005】
図11(b)に示すように、従来の連結部用幌は、前側アングル5aと、後側アングル5bと、雨水幌6と、ボルト7a,7bと蝶ナット、スポンジパッキン8a,8bを備えている。前側アングル5aおよび後側アングル5bは、それぞれ前部キャビン2および後部キャビン3の開口部に取り付けられた枠状の部材である。前側アングル5aと後側アングル5bの間には雨水幌6がボルト7aとスポンジパッキン8aおよびボルト7bとスポンジパッキン8bで取り付けられている。また、雨水幌6の形状を開口部に適合させるために、図示しない金属製枠を用いている。
【0006】
図11(b)に示した従来の連結部用幌では、前側アングル5aと後側アングル5bの間に雨水幌6がスポンジパッキン8a,8bを介して保持されているため、外気や風雨が前部キャビン2および後部キャビン3に侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の連結部用幌およびそれを用いた緊急車両では、雨水幌6を金属製の枠に取り付けるために帆布をミシン等で縫製し、防水性を確保するために縫製箇所を目止め剤で処理していた。このような連結部用幌では目止め剤や帆布が劣化するため、定期的に雨水幌6の交換をする必要があった。また、緊急車両1のメンテナンス時には、前部キャビン2をキャブチルトして作業する場合があり、その際にも連結部用幌の取り外しおよび取付作業を行う必要があった。
【0009】
しかし、
図11(b)に示したような従来の連結部用幌では、雨水幌6の着脱作業時には複数箇所のボルト7a,7bと蝶ナットを着脱する必要あり、着脱作業が煩雑化するという問題があった。また、ボルト7a,7bと蝶ナットの締結が不十分だと外気や風雨の侵入を良好に防止できず、目視でも確認しにくいという問題もあった。さらに、雨水幌6は金属製の枠に縫製されているため、連結部用幌の運搬時や保管時に占める空間が大きくなるという問題もあった。
【0010】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、着脱作業を確実かつ容易に行うことが可能な連結部用幌および緊急車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の連結部用幌は、折り返した帆布の先端を縫製した縫製部と、前記帆布と前記縫製部で構成された袋状部と、長手方向に延伸して形成されたトリムを備え、前記トリムは、前記長手方向に沿って内部に形成された空間である収容部と、前記収容部から外部にまで形成された切り込みである挟持部とを有し、前記袋状部内に前記トリムが収容されていることを特徴とする。
【0012】
このような本発明の連結部用幌では、トリムの挟持部と収容部で袋状部の一部を挟持して車両側に取り付けることができるため、着脱作業を確実かつ容易に行うことが可能となる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記トリムは、前記長手方向に沿って可撓性を有する。
【0014】
また本発明の一態様では、前記縫製部は、ウェルダー加工部が形成されている。
【0015】
また本発明の一態様では、車両に取り付けられるアンカー部材を備え、前記挟持部および前記収容部で前記アンカー部材の先端および前記袋状部の一部を挟持する。
【0016】
また本発明の一態様では、前記収容部は、前記アンカー部材の先端と同形状に形成されている。
【0017】
また本発明の一態様では、前記アンカー部材の先端は前記車両の前後方向に延出して形成されている。
【0018】
また本発明の一態様では、前記アンカー部材には、水抜穴が形成されている。
【0019】
また上記課題を解決するために、本発明の緊急車両は、上記何れか一つに記載の連結部用幌を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、着脱作業を確実かつ容易に行うことが可能な連結部用幌および緊急車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る連結部用幌10の概略を示す斜視図である。
【
図2】連結部用幌10を連結部に装着した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図3】連結部に連結部用幌10を装着した状態を示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る連結部用幌10に用いるトリム24の構造を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係るトリム24に押し込むアンカー部材25a,25bの概略を示す図であり、
図5(a)は平面図であり、
図5(b)は正面図である。
【
図6】アンカー部材25a,25bの構造を示す断面図であり、
図6(a)は
図5中A1-A1およびA2-A2位置での断面を示し、
図6(b)はB-B位置での断面を示している。
【
図7】アンカー部材25a,25bに連結部用幌10を装着した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る車体側構造物30に対するアンカー部材の各種取り付け例を模式的に示す図である。
【
図9】第4実施形態に係る緊急車両100に連結部用幌10を装着した状態を示す側面図である。
【
図10】第5実施形態に係る緊急車両110に連結部用幌10を装着した状態を示す側面図である。
【
図11】従来例の緊急車両の構造を示した図であり、
図11(a)は緊急車両1の全体を示す側面図であり、
図11(b)は、
図11(a)のY部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る連結部用幌10の概略を示す斜視図である。
図1に示すように連結部用幌10は、帆布11と袋状部12a,12bと、縫製部13と、トリム14を有している。また、トリム14は収容部14aと挟持部14bを備えている。
【0023】
帆布11は、防水加工が施された厚手の布地であり、例えばターポリン等を用いることができる。帆布11の形状やサイズは限定されないが、
図1に示した例では幅60cm程度で長さが6m程度の長尺状のものを用いている。また、帆布11の長辺を折り返して長辺に沿って縫製部13で縫製することにより、袋状部12a,12bが形成されている。袋状部12a,12bを形成した状態での帆布11の幅は、45cm程度とされている。
【0024】
袋状部12a,12bは、折り返された帆布11によって構成された袋状の部分であり、帆布11の幅方向における両側に設けられ、それぞれにトリム14が収容される。袋状部12a,12bのサイズは限定されないが、トリム14を収容するとともに、後述するように一部がトリム14に挟み込まれる程度のマージンを有する必要がある。
【0025】
縫製部13は、折り返した帆布11の先端を縫製した部分であり、帆布11の長手方向に沿って全域に渡って形成されている。縫製部13を構成するための帆布11の縫製方法は限定されないが、高周波ウェルダー加工や超音波ウェルダー加工を用いて、重ね合わせた帆布11を融着して縫製することが、防水性と耐久性の観点から好ましい。
【0026】
トリム14は、2つの板状部分が折り曲げられて、先端が互いに近接された断面形状を有する長尺状の部材である。
図1に示すように、トリム14は長手方向に沿って内部に形成された空間である収容部14aと、収容部14aから外部にまで形成された切り込みである挟持部14bを有しており、挟持部14bにおいて先端部分が対向している。
図1に示した例では、トリム14の断面形状として略三角形状のものを示したが、略U字形状や略四角形状等であってもよい。トリム14を構成する材料は限定されないが、軽量で弾性変形可能な材料であることが好ましく、例えば軟質塩化ビニル等を用いて押出成形で形成することができる。またトリム14は、長手方向に沿って可撓性を有しており、外力を加えることで所定の曲率で曲げることができる。
【0027】
図2は、連結部用幌10を連結部に装着した状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
図2に示すように緊急車両の前部キャビンと後部キャビンには、それぞれアンカー部材15a,15bが取り付けられており、両者間に
図1に示した連結部用幌10が装着される。このとき、アンカー部材15a,15bの先端と袋状部12a,12bは、それぞれがトリム14の収容部14a内に挿入され、挟持部14bによって一括して挟持される。
【0028】
アンカー部材15a,15bへの連結部用幌10の装着手順は、以下のようになる。はじめに、袋状部12a,12b内に収容したトリム14の先端を袋状部12a,12bを介してアンカー部材15a,15bの先端に押し当てる。トリム14をアンカー部材15a,15b方向に押圧すると、トリム14が弾性変形して挟持部14bが拡がり、アンカー部材15a,15bの先端部とともに袋状部12a,12bの一部が挟持部14bおよび収容部14a内に挿入される。トリム14の先端は弾性力によりアンカー部材15a,15bおよび袋状部12a,12bを両側から挟持して保持する。
【0029】
以上に述べたように、本実施形態の連結部用幌10では、トリム14をアンカー部材15a,15bに押し込む動作だけで帆布11をアンカー部材15a,15bの間に装着することができる。また、トリム14をアンカー部材15a,15bから引き抜く動作だけで連結部用幌10を取り外すことができる。
【0030】
図3は、連結部に連結部用幌10を装着した状態を模式的に示す斜視図である。前部キャビンおよび後部キャビンの間には、隊員が相互に往来可能な開口部が設けられており、アンカー部材15a,15bはその開口部全周に設けられた枠状をなしている。連結部用幌10の幅は連結部の間隔に相当しており、アンカー部材15a,15bの枠に沿って折り曲げられて枠全周に渡って、
図2に示したようにトリム14でアンカー部材15a,15と袋状部12a,12bを挟持している。
【0031】
本実施形態では、トリム14が長手方向に沿って可撓性を有していることにより、
図3に示したように枠状のアンカー部材15a,15bに対しても帆布11とトリム14を折り曲げて形状を追従させ、全周に渡って連結部用幌10を装着することができる。また、連結部用幌10をアンカー部材15a,15bから取り外した際には、袋状部12a,12bからトリム14を取り外し、折りたたんで保管することができるため、連結部用幌10運搬時や保管時の占有スペースを低減することもできる。
【0032】
上述したように、本実施形態の連結部用幌10およびそれを用いた緊急車両では、帆布11の袋状部12a,12bを、トリム14の収容部14aと挟持部14bで挟み込むため、着脱作業を確実かつ容易に行うことが可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4~
図7を用いて説明する。第1実施形態と同様の内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る連結部用幌10に用いるトリム24の構造を示す断面図である。
図5(a)は、本実施形態に係るアンカー部材25a,25bの概略を示す平面図、
図5(b)は正面図である。
図6は、アンカー部材25a,25bの構造を示す断面図であり、
図6(a)は
図5中A1-A1およびA2-A2位置での断面を示し、
図6(b)はB-B位置での断面を示している。
【0033】
図4に示すように、本実施形態のトリム24は、断面が先細りのU字形状をなしており、内部には収容部24aから先端部24bまで挟持部24cが形成されている。収容部24aは断面が略円形の空間であり、後述するようにアンカー部材25a,25bの先端と略同形状で帆布11の厚さ程度小さ大きく形成されている。先端部24bは、トリム24の折り曲げられた板状部分の先端が挟持部24cに向かって内側に傾斜して形成された部分である。挟持部24cは、収容部24aから先端部24bまで形成された間隙であり、トリム24の板状部分が対向している領域である。
【0034】
図5に示すようにアンカー部材25a,25bは、上辺26a、側辺26bおよび底辺26cの4辺を有する枠状の部材であり、4つの角には角部26dが設けられている。上辺26aと側辺26bは、図中A1-A1およびA2-A2位置での断面形状が同じであり、同一の構造を有している。それに対して底辺26cは、図中B-B位置での断面形状がA1-A1およびA2-A2位置での上辺26aおよび側辺26bとは異なっている。角部26dは、内側の縁部形状が一定曲率の曲線で形成されている。
【0035】
図6(a)(b)に示すように、アンカー部材25a,25bは、取付部27aと、側面部27bと、挿入部27cと、先端部27dと、水抜穴27eと、堤部27fとを備えている。
図6(a)に示したように、上辺26aと側辺26bは取付部27aと、側面部27bと、挿入部27cと、先端部27dで構成されている。また
図6(b)に示したように底辺26cは、上辺26aおよび側辺26bと同様の取付部27aと、側面部27bと、挿入部27cと、先端部27dの他に水抜穴27eと、堤部27fを備えている。
【0036】
取付部27aは、緊急車両の前部キャビンまたは後部キャビンの車体側構造物に接触して取り付けられる板状部分であり、螺子等の固定部材を用いて締結される。側面部27bは、取付部27aと一体に形成されるとともに垂直方向に折り曲げて立設された板状部分である。挿入部27cは、側面部27bと一体に形成されるとともに、車両の前後方向に折り曲げて延伸された板状部分である。先端部27dは、挿入部27cの先端に形成された断面略円形状の部分である。
【0037】
水抜穴27eは、底辺26cの側面部27b下端に設けられた開口部であり、取付部27a側から空気や水が流出可能にされている。堤部27fは、底辺26cの側面部27bとは反対側において取付部27aの一部が延伸して立設された板状部分である。水抜穴27eのサイズは限定されないが、堤部27fの高さより低い位置に形成されていることが好ましい。
【0038】
アンカー部材25a,25bの具体的サイズは限定されないが、例えば上辺26aと底辺26cの長さが190cm程度、側辺26bの長さが140cm程度、角部26dの曲率半径が10cm程度などである。また、板状部分の厚みを3mm程度とし、取付部27aの幅が4cm程度、側面部27bの高さが5cm程度、挿入部27cの幅が2.5cm程度、先端部27dの直径が6mm程度、堤部27fの高さが2.3cm程度などとする例が挙げられる。
【0039】
アンカー部材25a,25b上述したサイズ例の場合には、トリム24の収容部24aの直径は8mm程度、挟持部24cの幅は3mm程度、収容部24aの中心から先端部24bの先端までの距離が2.5cm程度とすることが好ましい。
【0040】
図7は、アンカー部材25a,25bに連結部用幌10を装着した状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
図7では図示の簡略化のために上辺26aと底辺26cを相互に近づけて描写しているが、実際の両者の間は
図5に示した程度に離間している。
【0041】
図7に示すように、前部キャビンおよび後部キャビンの車体側構造物30に対して、アンカー部材25a,25bの取付部27aが接触して配置され、図示しない固定部材で固定されている。このとき、前部キャビン側のアンカー部材25aでは挿入部27cが車両前方を向いて配置され、後部キャビン側のアンカー部材25bでは挿入部27cが車両後方を向いており、挿入部27cは緊急車両の前後方向に延出して配置されている。
【0042】
袋状部12a,12bに挿入されたトリム24は、挟持部24cと収容部24aに挿入された挿入部27cと先端部27dと袋状部12a,12bを挟持する。このとき、トリム24の挿入方向および取外し方向は、挿入部27cの向きと同様に緊急車両の前後方向となる。本実施形態では、挿入部27cとトリム24の方向が車両の前後方向であり、地面に対して水平方向となるため、重力によってトリム24が落下することを防止できる。また、トリム24を横方向に挿入するため、トリム24を長手方向に沿って曲げやすくなり、角部26dの曲率に適合させ易い。
【0043】
また、トリム24の収容部24aが先端部27dと同様に、板上部の厚さより直径が大きな円形状であるため、収容部24a内に先端部27dが嵌合してトリム24の脱落を防止することができる。また、トリム24では先端部24bが傾斜して形成されているため、アンカー部材25a,25bの先端と袋状部12a,12bを挟持部24cおよび収容部24a内に挿入することが容易になる。
【0044】
図7中において底辺26cに描かれた涙形状は、水滴を模式的に示すものである。
図3に示したように、連結部用幌10は帆布11を連結部の間でリング状に配置するものであり、上辺26aや側辺26bに到達した雨水等は、帆布11の外周を伝わって底辺26c側まで回り込む場合がある。また、底辺26cにおいて帆布11は袋状部12a,12bで挿入部27cと先端部27dの周囲を挟み込んだだけであり、完全な水密構造をなしているわけではない。したがって、袋状部12a,12bと挿入部27cと先端部27dの間を水滴が伝って、側面部27bの内側に雨水が侵入する可能性がある。
【0045】
しかし、本実施形態では、側面部27bの下端に水抜穴27eが形成されているため、侵入した雨水は水抜穴27eから外部に排出される。また、側面部27bの単体側には堤部27fが形成されているため、侵入した雨水が速やかに水抜穴27eから排出されない場合でも、堤部27fで雨水が堰き止められることで車両内部への雨水の漏洩を防止できる。
【0046】
上述したように、本実施形態の連結部用幌10およびそれを用いた緊急車両でも、帆布11の袋状部12a,12bを、トリム24の収容部24aと挟持部24cで挟み込むため、着脱作業を確実かつ容易に行うことが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図8を用いて説明する。第1実施形態と同様の内容は説明を省略する。
図8は車体側構造物30に対するアンカー部材の各種取り付け例を模式的に示す図である。何れの例でも車体側構造物30に取付部31および挿入部32が取り付けられている。また、取付部31と挿入部32は一体に形成されていてもよく、別部材で形成したうえで溶接するとしてもよい。
【0047】
図8(a)~
図8(f)では車体側構造物30の側面に取付部31が接触して固定され、
図8(g)~
図8(i)では車体側構造物30の上下面に取付部31が接触して固定されている。
図8(a)~
図8(c)および
図8(g)~
図8(i)では、挿入部32の一端側が取付部31の先端と接続されており、
図8(d)~
図8(f)では挿入部32の面内に取付部31の先端が接続されている。また、
図8(a)(d)(g)は挿入部32が水平方向に配置され、
図8(b)(e)(h)は挿入部32の先端が車体側構造物30方向に傾斜して配置され、
図8(c)(f)(i)は挿入部32の先端が車体側構造物30と反対方向に傾斜して配置されている。
【0048】
図8の何れに示した例でも、挿入部32は緊急車両の前後方向に延出して形成されており、連結部用幌10を装着する際にトリム14,24は車両の前後方向となるため、重力によってトリム24が落下することを防止できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図9を用いて説明する。第1実施形態と同様の内容は説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る緊急車両100に連結部用幌10を装着した状態を示す模式図である。緊急車両100は、前部キャビン102と後部キャビン103の間に連結部用幌10を装着するとともに、前部キャビン102と後部キャビン103の上部に上部カバー40を取り付けている。
【0049】
上部カバー40は、弾性を有する材料で構成された板状の部材であり、前部キャビン102の上部から後部キャビン103の上部に渡って連結部を覆うように配置されている。上部カバー40は少なくとも前部キャビン102または後部キャビン103に固定されている。連結部の上に上部カバー40を配置することで、連結部用幌10にまで到達する雨水や雪の量を低減して、連結部用幌10の防水性を向上させ雪詰まりを防止することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図10を用いて説明する。第1実施形態と同様の内容は説明を省略する。
図10は、本実施形態に係る緊急車両110に連結部用幌10を装着した状態を示す模式図である。緊急車両110は、前部キャビン112に運転席と隊員用座席が二列に配置されたダブルキャブ型であり、後部キャビン113に作業空間等が設けられている。この場合であっても、前部キャビン112と後部キャビン113の開口部に連結部用幌10を装着することで、前部キャビン112と後部キャビン113との間で隊員が往来可能である。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
100,110…緊急車両
102,112…前部キャビン
103,113…後部キャビン
10…連結部用幌
11…帆布
12a,12b…袋状部
13…縫製部
14,24…トリム
14a,24a…収容部
14b,24c…挟持部
24b…先端部
15a,15b,25a,25b…アンカー部材
26a…上辺
26b…側辺
26c…底辺
26d…角部
27a,31…取付部
27b…側面部
27c,32…挿入部
27d…先端部
27e…水抜穴
27f…堤部
30…車体側構造物
40…上部カバー