(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】増幅二本鎖デオキシリボ核酸の作製方法ならびに該方法で使用する組成物及びキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20220331BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20220331BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220331BHJP
C12P 19/34 20060101ALI20220331BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220331BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12N9/10
C12N15/10 Z
C12P19/34 A ZNA
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019520576
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(86)【国際出願番号】 US2017060717
(87)【国際公開番号】W WO2018089550
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-12
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500481499
【氏名又は名称】タカラ バイオ ユーエスエー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】トリ,カズオ
(72)【発明者】
【氏名】ボスティック,マグノリア
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,アンドリュー
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/126871(WO,A2)
【文献】特表2015-532127(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222057(WO,A1)
【文献】Zhu, Y. Y. et al.,"Reverse transcriptase template switching: a SMART approach for full-length cDNA library construction",Biotechniques,2001年,Vol. 30,pp. 892-897
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸試料から増幅二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)を作製する方法であって、
(a)テンプレート核酸と、単一産物核酸の隣接領域にハイブリダイズされているテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを含む二本鎖核酸複合体を生成するために十分な条件下で、
核酸試料と、
逆転写酵素と、
ランダム配列またはテンプレート核酸のテール配列と相補的である配列を含む単一産物核酸プライマーと、
3’ハイブリダイゼーションドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、
増幅ポリメラーゼと、
デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)とを
反応混合物で混ぜ合わせることと、
(b)増幅dsDNAを生成するために十分な条件下で、前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと前記単一産物核酸プライマーを用いて、前記単一産物核酸から増幅することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記3’ハイブリダイゼーションドメインが、前記逆転写酵素によって前記単一産物核酸に付加されている非テンプレート配列にハイブリダイズする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非テンプレート配列は、ヘテロポリヌクレオチドまたはホモポリヌクレオチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記増幅ポリメラーゼは、ホットスタートポリメラーゼ、耐熱性ポリメラーゼまたは両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記単一産物核酸プライマー、前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたは両方は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、プライマー結合部位、規定配列、バーコード配列、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクト及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択した‘5-非テンプレート配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
混ぜ合わせることと、増幅することとの間に、前記単一産物核酸を精製しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応容器またはドロップレットで行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記テンプレート核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)を含み、前記単一産物核酸プライマーは、第1鎖相補的DNA(cDNA)プライマーであり、前記dsDNAは、二本鎖cDNAである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ランダム配列またはテンプレート核酸のテール配列と相補的である配列を含む単一産物核酸プライマーと、
3’ハイブリダイゼーションドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、
増幅ポリメラーゼと逆転写酵素とを含むポリメラーゼカクテルと
を含む、キット。
【請求項10】
前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとが、同じ容器に入っている、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記増幅ポリメラーゼは、ホットスタートポリメラーゼ、耐熱性ポリメラーゼまたは両方である、請求項9または10に記載のキット。
【請求項12】
前記逆転写酵素は、レトロウイルス逆転写酵素である、請求項9~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記3’ハイブリダイゼーションドメインが、前記逆転写酵素によって単一産物核酸に付加されている非テンプレート配列にハイブリダイズする、請求項9~12のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
前記非テンプレート配列は、ヘテロポリヌクレオチドまたはホモポリヌクレオチドを含む、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記単一産物核酸プライマー、前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたは両方は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、プライマー結合部位、規定配列、バーコード配列、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクト及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択した‘5-非テンプレート配列を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
前記単一産物核酸プライマーは、ランダム配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項17】
前記単一産物核酸プライマーは、テンプレート核酸のテール配列と相補的である配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項18】
前記テール配列と相補的である配列は、ポリ(dT)配列を含む、請求項17に記載の方
法。
【請求項19】
前記テール配列を前記テンプレート核酸に付加するテーリング反応をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
増幅dsDNAのライブラリーが、核酸試料内の複数の異なるテンプレート核酸から作製され、産物の増幅dsDNAは前記複数の異なるテンプレート核酸の少なくとも一部に対応する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方
法。
【請求項21】
前記単一産物核酸プライマーは、ランダム配列を含む、請求項9~15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
前記単一産物核酸プライマーは、テンプレート核酸のテール配列と相補的である配列を含む、請求項9~15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項23】
前記テール配列と相補的である配列は、ポリ(dT)配列を含む、請求項22に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
逆転写と組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応による増幅(RT-PCRとしても知られている)は、研究者、臨床医などが利用できる最も強力なRNA検出技法の1つである。RT-PCRは、単純な検出と定量とを含む様々な目的で、またはダウンストリームのバイオエンジニアリングとバイオインフォマティクスとの試みにおける原料として使用できるRNAの出発試料から、増幅二本鎖相補的デオキシリボ核酸(cDNA)を作製する例示的なプロセスである。RT-PCRは、例えばノーザンブロット解析とRNaseプロテクションアッセイとを含む以前のRNA調査技法と比べて、飛躍的な進歩を遂げている。
【0002】
RT-PCRの出現により、目的のRNAをさらに迅速に検出及び/または定量可能になるうえに、研究者は、より小さい試料、またはより少ない量(1つの細胞から得られる量ほどの少ない量を含む)のRNAを含む試料が使用可能になる。次世代シークエンシング技術のさらなる進歩により、今では、大量の優れた科学データを得るために、RT-PCR反応の最終産物、すなわち、増幅cDNAの集団を速やかかつ効果的に処理できる。
【0003】
既知の核酸配列の領域が付加されている二本鎖DNA(dsDNA)産物の作製に関わる技法は、バイオテクノロジーと生物医学との研究用途の多くで、同様に強力であることが分かっている。例えば、テンプレートスイッチング(作製されるdsDNAに、既知の配列領域を付加しながら、まったく未知の配列のDNAテンプレートから、dsDNA産物を作製可能にする)は、様々なシークエンシングアプローチで、核酸バーコーディングとライブラリーの作成とに適用されている。
【0004】
これらの強力な技法が広範に用いられていることを踏まえると、dsDNAの作製、RT-PCR及び関連する方法の改良は、多くの分野、特に生物医学技術における研究速度に大きな影響を及ぼす可能性がある。プロトコールの長さの縮小、オペレーター時間の短縮、反応物のコンタミネーションの機会削減、反応特異性の向上、反応精度の向上などのような改善は、非常に有益となる。
【発明の概要】
【0005】
核酸試料から、増幅二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)を作製する方法を提供する。この方法の態様は、単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを用いて増幅して、増幅dsDNA産物を作製することを含む。この方法を行う際に使用する組成物及びキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】テンプレートスイッチングを用いて、単一産物核酸を合成する概略図を示す。
【
図2】スリーステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)プロトコールの概略図を示す。
【
図3】本開示の一実施形態によるツーステップRT-PCRプロトコールの概略図を示す。
【
図4】本開示の一実施形態によるワンステップRT-PCRプロトコールの概略図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態に従って、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとを用いて、単一産物核酸を増幅することを示す。
【
図6】本開示の一実施形態に従って、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと第1鎖cDNAプライマーとを用いて、mRNAテンプレートから逆転写及び増幅を行うプロトコールを示す。
【
図7】A~Dは、BUMIドメインの様々な種の図を示す。
【
図8】本明細書に記載されている本開示の実施形態による、BUMIドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの概略図を示す。
【
図9】本明細書に記載されている本開示の実施形態による、BUMIドメインを含むプライマーの概略図を示す。
【
図10】本明細書に記載されているようなコード付きBUMIドメインの例を示す。
【
図11】本開示の一実施形態に従って、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに結合したケージドキャプチャー部分を用いて、産生dsDNAをキャプチャーする例を示す。
【
図12】本明細書に記載されているようなスリーステップRT-PCRプロトコールの増幅二本鎖cDNA産物の配列長分布を示す。
【
図13】本明細書に記載されているようなツーステップRT-PCRプロトコールの増幅二本鎖cDNA産物の配列長分布を示す。
【
図14】本明細書に記載されているようなワンステップRT-PCRプロトコールの増幅二本鎖cDNA産物の配列長分布を示す。
【
図15】本開示の一実施形態による、ビーズでのテンプレートスイッチングの概略図を示す。
【
図16】PCRプライマーの非存在下で、RT反応後に存在するテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドと第1鎖合成プライマーとを用いて増幅されることを示す。
【
図17】SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとのワークフローを概略的に比較したものを示す。
【
図18】ステップが少ない本開示の様々な方法を用いた場合、スリーステップ方法と比較すると、同程度の遺伝子本体カバレッジが得られ、適切なサイズのライブラリーが作製されることを示す。
【
図19】SMART-Seq HTキットによって、SMART-Seq v4キットと同じ感度及び再現性が得られることを示す。
【
図20】SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとによって生成されたデータにおいて、同定転写産物数に高い相関性があることを示す。
【
図21】スリーステップ方法をベースライン対照として用いると、ステップが少ない方法において、追加のGC含有値のバイアスがないことを示す。
【
図22】ワンステップRT-PCR反応では、GC含有率が高い遺伝子とGC含有率が低い遺伝子との表現が維持されることを示す。
【
図23】SMART-Seq v4キットまたはSMART-Seq HTキットを用いて、個々の細胞から作製したRNA-seqライブラリーが、同様のシークエンシングメトリクスを有することを示す。
【
図24】SMART-Seq HTキットにおける、ステップが少ないワークフローによって、遺伝子発現レベルの測定値に、いずれの大きなバイアスも導入されないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション条件」という用語は、プライマーまたはその他のポリヌクレオチドが、そのプライマーまたはその他のポリヌクレオチドと、ある程度の相補性を有する標的核酸領域に特異的にハイブリダイズする条件を意味する。プライマーが標的核酸に特異的にハイブリダイズするかは、そのポリマーと標的核酸との相補性の程度、ハイブリダイゼーションが行われる温度(プライマーの融解温度(TM )によって知ることができる)のような要因によって判断する。この融解温度は、プライマー-標的核酸デュプレックスの半分がハイブリダイズしたままであり、このデュプレックスの半分が一本鎖に解離する温度を指す。デュプレックスのTmは、実験によって割り出しても、Tm=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(G+Cの割合)-(60/N)という式(Nは、鎖長であり、[Na+]は1M未満である)を用いて予測してもよい。Sambrook and Russell(2001;Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor N.Y.,Ch.10)を参照されたい。様々なハイブリダイゼーション条件に応じて、プライマー/標的デュプレックスのTmを予測するためには、様々なパラメーターに依存する、さらに進化したその他のモデルを用いてもよい。特異的な核酸のハイブリダイゼーションを行うためのアプローチは、例えば、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes,part I,chapter 2,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,”Elsevier(1993)に見ることができる。
【0008】
「相補的な」及び「相補性」という用語は、本明細書で使用する場合、標的核酸の全部または領域(例えば、産物核酸の領域)への非共有結合によって塩基対を形成するヌクレオチド配列を指す。カノニカルなワトソン-クリック塩基対形成では、DNAにおいて、アデニン(A)は、チミン(T)と塩基対を形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する。RNAにおいては、チミンは、ウラシル(U)に入れ替わる。したがって、AはTと相補的であり、GはCと相補的である。RNAでは、AはUと相補的であり、GはCと相補的である。典型的には、「相補的」とは、少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列を指す。「相補的」という用語には、完全に相補的であり、対応する位置において、一方の鎖のすべてのヌクレオチドが、もう一方の鎖のすべてのヌクレオチドと相補的であるようになっているデュプレックスも含めてよい。特定のケースでは、ヌクレオチド配列は、標的と部分的に相補的であってもよく、この場合、すべての対応する位置において、すべてのヌクレオチドが、標的核酸のすべてのヌクレオチドと相補的であるわけではない。例えば、プライマーは、標的核酸と完全に(すなわち100%)相補的であってもよく、あるいは、プライマーと標的核酸とは、完全ではないある程度の相補性(例えば、70%、75%、85%、90%、95%、99%)を有してもよい。
【0009】
2つのヌクレオチド配列の同一性%は、最適な比較目的で、配列をアラインメントすることによって割り出すことができる。(例えば、最適なアラインメントのために、第1の配列の配列にギャップを導入できる)。続いて、対応する位置のヌクレオチドを比較し、2つの配列の同一性%は、これらの配列で共有されている同一な位置の数から導き出されるものである(すなわち、%同一性=同一な位置の数/すべての位置の数×100)。一方の配列における、ある位置が、もう一方の配列の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められているときには、その分子は、その位置において同一である。このような数学的なアルゴリズムの非限定的な例は、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993)に記載されている。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:389-3402(1997)に記載されているように、NBLAST及びXBLASTのプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLAST及びGapped BLASTのプログラムを使用するときには、それぞれのプログラム(例えばNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用できる。一態様では、配列比較のためのパラメーターは、スコア=100、ワード長=12に設定することも、変更することもできる(例えば、ワード長=5またはワード長=20)。
【0010】
ドメインとは、複数のヌクレオチドで構成されている核酸領域または核酸の長さを指し、その領域または長さによって、所定の機能を核酸にもたらす。ドメインの例としては、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメイン、プライマー結合ドメイン、ハイブリダイゼーションドメイン、バーコードドメイン(ソースバーコードドメインなど)、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメイン、次世代シークエンシング(NGS)アダプタードメイン、NGSインデックス付与ドメインなどが挙げられる。所定のドメインの長さは、様々であってよいが、いくつかのケースでは、その長さは、2~100nt(5~50ntなど、例えば5~30nt)の範囲である。
【0011】
以下にさらに詳細に説明されているように、BUMIドメインは、BUMIタグの少なくとも一部を含むドメインである。所定のBUMIドメインは、完全なBUMIタグを含んでよいとともに、BUMIタグと同一の範囲であってもよい。別のケースでは、BUMIドメインは、BUMIタグの一部を含んでよい。これらのいずれのケースでも、BUMIドメインは、そのBUMIドメインに存在するBUMIタグまたはその一部のコード情報を提供するBUMIコーディング成分をさらに含んでよい。
【0012】
核酸試料から増幅二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)を作製する方法を提供する。この方法の態様は、単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを用いて増幅して、増幅dsDNA産物を作製することを含む。この方法を行う際に使用する組成物及びキットも提供する。
【0013】
本開示の方法をさらに詳細に説明する前に、記載されている特定の実施形態は、当然ながら、変更できるので、本開示の方法が、それらの実施形態に限定されないことを理解されたい。本明細書で用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するためのものとしては意図されていないので、本開示の方法の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されることも理解されたい。
【0014】
値の範囲が示されている場合、文脈上明らかに別に解される場合を除き、その範囲の下限の1/10の単位まで、その範囲の上限と下限との中間の各値と、その示されている範囲におけるいずれかのその他の示されている値または中間の値が、本開示の方法に含まれることが分かる。これらのさらに狭い範囲の上限と下限とは独立して、その狭い範囲に含めてよく、また、これらは、示されている範囲内のいずれかの具体的に除外された制限に従うことを条件として、本開示の方法に含まれる。示されている範囲に、1つまたは両方の極限値が含まれる場合、それらの含まれる極限値のいずれかまたは両方を除外した範囲も、本開示の方法に含まれる。
【0015】
本明細書では、特定の範囲は、「約」という用語が付された数値で示されている。「約」という用語は、本明細書では、その用語が付された正確な数と、その用語が付された値に近いかまたはその数と近似である数とを文字通り網羅する目的で用いられている。数が、具体的に示されている数に近いか、または近似であるかを判断する際には、示されていない数のうち、近いか、または近似である数は、その数が示されている文脈において、具体的に示されている数と実質的に均等なものが得られる数であってよい。
【0016】
別段の定めがない限り、本明細書で用いられている技術用語及び科学用語はいずれも、本開示の方法が属する分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本開示の方法を実施または試験する際には、本明細書に記載されている方法と類似または同等のいずれかの方法を用いることができるが、以下では、代表的な実例となる方法及び材料を記載する。
【0017】
本明細書に引用されている文献及び特許はいずれも、参照により、個々の文献または特許が、参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように本明細書に援用されるとともに、参照により、その文献が引用されていることと関連する方法及び/または材料を開示及び説明する目的で、本明細書に援用される。いずれの文献の引用も、出願日前のその開示内容に対するものであり、本発明の方法が、先行発明によるそのような文献に先行する権利を与えられないことを認めるものと解釈すべきではない。さらに、示されている公開日は、実際の公開日と異なることがあり、実際の公開日は、独立して確認する必要がある場合もある。
【0018】
本明細書と、添付の請求項とで使用する場合、「a」、「an」及び「the」という単数形には、文脈上明らかに別に解される場合を除き、複数の言及物が含まれることに留意する。さらに、請求項は、いずれかの任意の要素を除外して書かれていることがあることに留意する。したがって、この記述は、クレーム要素の列挙に関連して、「もっぱら」、「~のみ」などのような排他的な用語を使用したり、または「否定的な」制限を使用したりする際、基礎となる先行詞としての役割を果たすように意図されている。
【0019】
本開示の方法の特定の特徴のうち、明確にするために、別々の実施形態との関連で説明されている特徴を、1つの実施形態において組み合わせてもたらしてもよいことは明らかである。逆に、本開示の方法の特徴のうち、簡潔にするために、1つの実施形態との関連で説明されている様々な特徴を、別々にまたはいずれかの好適なサブコンビネーションでもたらしてもよい。実施形態を組み合わせたものはいずれも、本発明に明確に含まれ、すべての組み合わせが、個別かつ明示的に開示されているかのように、そのような組み合わせに、実施可能なプロセス及び/または器具/システム/キットが含まれる範囲において、本明細書に開示されている。加えて、実施形態に列挙されているサブコンビネーションであって、その変動要素を説明しているすべてのサブコンビネーションも、本発明の方法に明確に含まれ、このようなあらゆるサブコンビネーションが本明細書に個別かつ明示的に開示されているかのように、本明細書に開示されている。
【0020】
本開示を読めば、当業者には明らかになるように、本明細書に記載及び例示されている個々の実施形態にはそれぞれ、別個の成分と特徴があり、これらは、本発明の方法の範囲または趣旨から逸脱しなければ、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に切り離したり、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と組み合わせたりできる。示されているいずれかの方法は、示されている事象の順序、または論理的に可能であるいずれかの他の順序で行うことができる。
【0021】
方法
上記で概説したように、本開示の態様は、増幅二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)を作製することを含む。本発明の方法は、単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを用いて、テンプレート核酸から増幅することを含む。いくつかのケースでは、単一産物核酸から増幅する際に用いるこのようなプライマーは、その単一産物核酸を作製する際、例えば、核酸テンプレートから逆転写反応を行う際に用いるものと同じプライマーであってよい。本明細書で使用する場合、「逆転写」と「逆転写反応」という用語は概して、転写する核酸テンプレートの性質にかかわらず(例えば、テンプレートと相補的である核酸を合成するために、DNAテンプレートを逆転写酵素によって処理するか、またはRNAテンプレートを逆転写酵素によって処理するかにかかわらず)、核酸合成反応で逆転写酵素を用いるいずれかの反応を指すことになる。
【0022】
「増幅dsDNA」とは、一本鎖単一産物核酸の二本鎖DNAコピーの集団を意味する。「単一産物核酸」は様々なものとなり、例えば、リボ核酸(RNA)テンプレートから作られる一本鎖第1鎖cDNA、またはDNAテンプレートから作られる第1一本鎖DNA(ssDNA)鎖を挙げてよい。したがって、単一産物核酸は、DNAテンプレートまたはDNA以外のテンプレート、例えばRNAテンプレートから作製してよい。増幅度、すなわち、作製したdsDNAコピー集団のサイズは、様々なサイズとなるが、いくつかのケースでは、5倍以上の増幅となり、例えば、「5倍以上の増幅」とは、それぞれの単一産物核酸分子から5個以上のdsDNAが作られることを指す。得られる増幅度は、5倍を超えてもよく、例えば、10倍以上の増幅、100倍以上の増幅、1000倍以上の増幅、10,000倍以上の増幅、100,000倍以上の増幅、1,000,000倍以上の増幅などを挙げてよいが、これらに限らない。
【0023】
増幅度の測定値は、必ずしも正確である必要はなく、例えば、試料の平均または近似平均に基づいてよく、例えば、10倍の増幅とは、それぞれの単一産物核酸分子から、平均で10個のdsDNAまたは約10個のdsDNAが作られることを指す。いくつかのケースでは、増幅度及び/または作製したdsDNAコピー集団のサイズは、間接的に定量してよく、例えば、増幅後、反応物に存在するDNAの量を測定し、その量から、増幅度を推定する。いくつかのケースでは、増幅度及び/または作製したdsDNAコピー集団のサイズは、例えば、いずれかの利便的なアプローチ(例えば、定量的シークエンシング方法またはバイオアナライザー(例えば、Agilent Bioanalyzer)を含む)を用いて、作製されたdsDNAコピーの数を直接測定することによって、直接定量してよい。
【0024】
概して、増幅とは、本明細書で使用する場合、例えば、テンプレート核酸から単一産物核酸を作製することを指さないものとする。増幅は概して、単一産物核酸から少数を超えるコピー、例えば、1コピー超のdsDNAを作製することを含むものとし、例えば、2コピー超、3コピー超、4コピー超、5コピー超、10コピー超、15コピー超、20コピー超、30コピー超、100コピー超、1,000コピー超、10,000コピー超、100,000コピー超、106 コピー超、107 コピー超、108 コピー超などが挙げられるが、これらに限らない。増幅は、本明細書に記載されている方法によれば、指数関数的であっても、概ね指数関数的であってもよい。
【0025】
本発明の方法では、増幅プロセスにおいて、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いてよい。テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、テンプレートスイッチング反応(テンプレート核酸からの単一産物核酸の作製、例えば、RNAテンプレートの逆転写またはDNAテンプレートの逆転写を含む)で用いるオリゴヌクレオチドである。したがって、単一産物核酸の作製では、テンプレートスイッチングと、特定の核酸ポリメラーゼの能力とを用いて、「テンプレートスイッチ」(すなわち、第1核酸鎖をポリマー化のテンプレートとして使用し、その後、ポリマー化反応を継続しながら、第2テンプレート核酸鎖(「テンプレートスイッチ核酸」または「アクセプターテンプレート」と称することもある)にスイッチすること)を行ってよい。その結果、第1テンプレート核酸鎖と相補的である5’領域と、テンプレートスイッチ核酸と相補的である3’領域とを有するハイブリッド核酸鎖が合成される。本開示の方法では、テンプレートスイッチングによる単一産物核酸の作製に、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いてよく、そのテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドはさらに、単一産物核酸の増幅でも用いてよい。
【0026】
図1を参照すると、テンプレートスイッチング反応を図式化した例が示されている。示されている実施形態では、単一産物核酸プライマー(100)は、その単一産物核酸プライマーとテンプレートとが共有する相補的配列(「XXXX」によって示されている)を通じて、テンプレート核酸(101)にハイブリダイズする。単一産物核酸プライマーは、テンプレートと相補的でない付加配列(102)の領域(例えば、非テンプレート領域)を含んでよいが、必須ではない。単一産物核酸プライマーをテンプレートにアニーリングした後、逆転写酵素の使用によって、逆転写(103)が進行し、テンプレートと相補的である単一産物核酸鎖(104)を生成させる。ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素は、生成された単一産物核酸に、非テンプレートヌクレオチド(「YYY」によって示されている)を転移し、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチド(105)が、そのテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに存在する相補的ヌクレオチドの配列(これも、「YYY」によって示されており、本明細書では、3’ハイブリダイゼーションドメインという)によって、単一産物核酸の非テンプレートヌクレオチドにハイブリダイズする。このテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、非テンプレートヌクレオチドにハイブリダイズしない付加配列(106)を含む。テンプレートスイッチングが行われ(107)、逆転写酵素がテンプレートからスイッチして、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを第2のテンプレートとして使用し、付加配列(106)を転写して、その相補体(108)を生成する。このようにして完全に生成された単一産物核酸鎖(109)は、テンプレートにハイブリダイズしなかったいずれかの付加配列(102)が存在する場合、その付加配列(102)を含む単一産物核酸プライマーの完全配列と、テンプレートの相補的配列と、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの相補的配列とを含む。テンプレートスイッチングに関連する方法及び試薬は、米国特許第9,410,173号にも記載されており、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0027】
いくつかのケースでは、テンプレートスイッチングのプロセスは、第1鎖の作製に限定してよく、例えば、増幅反応でテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを用いても、テンプレートスイッチングは、増幅の際に行わなくてよい。例えば、ポリメラーゼが、第1の核酸テンプレートから、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(例えば、単一産物核酸を作製するために用いるもの)にスイッチする最初のテンプレートスイッチング反応の後、それ以降には、その後の増幅で、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドをさらに用いるときに、テンプレートスイッチングを行わなくてよい。したがって、いくつかのケースでは、反応の増幅部分(例えば、単一産物核酸を増幅して、増幅dsDNA産物を作製することを含む)において、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いるときには、テンプレートスイッチングは行わない。
【0028】
本開示の方法は、反応混合物において、増幅に必要な反応成分、または単一産物核酸鎖の合成と増幅との両方に必要な反応成分を混ぜ合わせることを含んでよい。例えば、本開示の方法は、1つの反応混合物において、逆転写酵素及び増幅ポリメラーゼを混ぜ合わせることと、その反応混合物において、逆転写及び増幅の両方を行うこととを含んでよい。1つの反応混合物において混ぜ合わせる場合、成分(例えば、本明細書に記載されているものを含む)は、例えばユーザーが反応混合物に加えても、例えば、反応混合物において予め混ぜ合わせた状態で、ユーザーに供給してもよい。
【0029】
本発明の方法は、限られた数のステップを有する方法を含む。特定の方法またはプロトコールで用いる「ステップ」の数は、様々な方法で割り出してよく、いくつかのケースでは、成分を反応混合物に追加したり、または混ぜ合わせたりすることを指してよい。例えば、いくつかのケースでは、「スリーステップ」プロトコールは、1つ以上の成分を反応混合物に加えることを3ラウンドまたは3回含んでよく、「ツーステップ」プロトコールは、1つ以上の成分を反応混合物に加えることを2ラウンドまたは2回含んでよく、「ワンステップ」プロトコールは、1つ以上の成分を反応混合物に加えることを1ラウンドまたは1回含んでよい。いくつかのケースでは、成分を反応混合物に加えるステップ間に、温度を変化させてよい。例えば、反応混合物を予熱してよく、予熱後、さらなる反応プロセスの前に、追加の成分を反応混合物に加えることを含む第2のステップを行ってよい。
【0030】
反応プロセスは、ステップ数が限られているプロトコールのステップ(複数可)の前、最中、間または後に行ってよい。例えば、いくつかのケースでは、プロトコールのステップ(複数可)の前、最中、間または後に、反応混合物を加熱してよい。いくつかのケースでは、反応混合物は、プロトコールのステップ(複数可)の前、最中、間または後に、1つ以上の温度に曝したり、温度を変化させたり、または熱サイクリング手順を行ったりしてよい。このような反応プロセス、例えば、追加の成分を反応混合物に加えることを含めないプロセスは、方法「ステップ」を構成しない。これらのステップは、本明細書では、ステップ数が限られている方法とプロトコールとに関して言及されるからである。例えば、1ラウンドの「混ぜ合わせ」で、1つ以上の成分を反応混合物に加えて、その反応混合物に対して、熱サイクリングプロセスの様々な温度変化を与える「ワンステップ」方法では、個々の温度変化は、本明細書で定義されているような「ステップ」とはみなさない。同様に、2回の別々のラウンドの「混ぜ合わせ」で、1つ以上の成分を反応混合物に加え、その反応混合物に対して、試薬を追加するラウンド間に、1回以上の温度変化を与える「ツーステップ」方法では、成分を加えるステップ間の1回以上の温度変化は、本明細書で定義されているような「ステップ」とはみなさない。
【0031】
したがって、本明細書に記載されている方法は、ツーステップまたはワンステップを含め、限られたステップ数で行ってよい。例えば、いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法は、dsDNAを増幅するツーステップ方法である。いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法は、テンプレート核酸から逆転写して、dsDNAを増幅するツーステップ方法である。いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法は、dsDNAを増幅するワンステップ方法である。いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法は、テンプレート核酸から逆転写して、dsDNAを増幅するワンステップ方法である。
【0032】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)増幅方法は、スリーステップで行ってよい。例えば、
図2に示されているように、第1のステップでは、反応容器に入れた試料(例えば、全RNAまたは細胞)を予熱してよい。いくつかのケースでは、この予熱ステップの前に、1つ以上の追加の試薬を加えても加えなくてもよく、その試薬としては、例えば、RNaseインヒビター、逆転写(RT)プライマー及びバッファー(例えば、試料溶解バッファー)が挙げられるが、これらに限らない。いくつかのケースでは、予熱後に、このような追加の試薬のうちの1つ以上を加えてよい。第2のステップでは、RTに必要な試薬を加えてよく(その試薬としては、例えば、逆転写酵素、RNaseインヒビターなどが挙げられる)、その後に、RTを行ってよい。いくつかのケースでは、この第2のステップは、示したようなテンプレートスイッチング(「TS」)をさらに含んでよく、このステップの最中及び/または前に、TS用の試薬を加えてもよい。次に、第3のステップでは、PCR増幅試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、増幅プライマー(例えば、示されているようなPCR IIAプライマー)などが挙げられる)を加えてよく、PCRを行ってよい。このスリーステッププロセスで得られるものは、例えば、用いるオリゴヌクレオチド/プライマーの構成に応じて、非テンプレート配列(例えば、シークエンシングアダプター、バーコード配列などが挙げられる)を含んでよい二本鎖cDNAまたはそのライブラリーであってよい。
【0033】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、RT-PCRは、例えば、
図3に示されているように、ツーステップで行ってよい。このようなツーステップ方法の第1のステップでは、反応容器に入れた試料(例えば、全RNAまたは細胞)を予熱してよい。このようなステップは、例えば、RNaseインヒビター、バッファー(例えば、溶解バッファー)及び第1鎖プライマー(
図3では「CDS」として示されている)のような追加の試薬を加えることも含んでよい。ツーステップ方法のいくつかの実施形態では、予熱の前に、試料のRNAに加えて、第1鎖プライマーも存在してよい。ツーステップ方法のいくつかの実施形態では、下流のステップで用いるテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、予熱中、反応混合物に存在しなくてよい。次に、ステップ2では、RT及びPCR増幅の両方の成分を反応混合物に加え(その成分としては、例えば、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNaseインヒビター、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(「TSO」として示されている)、dNTP、反応バッファーなどが挙げられるが、これらに限らない)、RT-PCRを、いくつかのケースでは、テンプレートスイッチング(「TS」)とともに行う。いくつかのケースでは、RT反応条件下では不活性であるが、増幅条件下、すなわち変性温度では活性になるDNAポリメラーゼを用いてよく、例えば、ホットスタートDNAポリメラーゼが挙げられる。このツーステッププロセスによって得られるものは、例えば、用いるオリゴヌクレオチド/プライマーの構成に応じて、非テンプレート配列(例えば、シークエンシングアダプター、バーコード配列などが挙げられる)を含んでよい二本鎖cDNAまたはそのライブラリーであってよい。
【0034】
上記の実施形態では、精製は行っても行わなくてもよい。例えば、いくつかのケースでは、上記の実施形態では、例えば、ステップ1で作られる中間産物の精製は行わない。本開示の方法では、反応産物(中間産物または最終産物のいずれか)の精製を除外してよいが、これは、必ずしも必須ではない。したがって、いくつかのケースでは、本明細書に記載されているような方法のステップの前、最中、間または後のステップまたはプロセスでは、精製を除外してよい。したがって、本明細書に記載されている方法では、個々のステップまたは方法全体から精製を除外してよい。精製の除外により、反応混合物の試薬のうち、前のプロセスに関与した1つ以上の試薬が、次のプロセスにおいて存在して、そのプロセスに関与可能にすることができる。例えば、精製を行わないことにより、RT反応成分が、その後の反応(例えば、PCR増幅反応など)に存在して、関与することができる。この構成は、精製を用いて、例えば、最初の反応(例えば、RT反応)で使用した1つ以上の成分を反応混合物から除去して、その1つ以上の試薬が存在しないようにし、その結果、その後の反応(例えば、PCR増幅)に関与しないようにする構成とは対照的である。したがって、いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法の逐次反応間で、精製を行わないことで、1つ以上の成分が、本開示の方法の複数の異なる反応において、複数の役割を果たせるようにできる。
【0035】
あるいは、本明細書に記載されている方法は、個々のステップまたは方法全体に、1回以上の精製を含んでよい。いくつかのケースでは、本開示の方法は、反応産物(中間産物または最終産物のいずれか)を精製することを含んでもよいが、必ずしも必須ではない。したがって、いくつかのケースでは、本明細書に記載されているような方法のステップの前、最中、間または後のステップまたはプロセスは、精製を含んでもよい。
【0036】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、RT-PCRは、例えば、
図4に示されているように、ワンステップで行ってよい。このような方法の唯一のステップでは、RT反応とPCR増幅とで用いるすべての成分を一度に加えてよく(すなわち、その反応において、追加の時間または時点に他の成分を加えない)、このような成分としては、例えば、試料(例えば、細胞または全RNA)、第1鎖プライマー(
図4では「★」で示されている)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNaseインヒビター、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(「TSO」)、dNTP、反応バッファーなどを挙げてよいが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、ワンステップ方法で用いる試料は、精製RNA試料であってよい。第1のステップで加えるオリゴヌクレオチド/プライマー、すなわち、第1鎖プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとをPCR増幅反応で用いてよい。したがって、単一産物核酸の作製で用いるものと同じオリゴヌクレオチド/プライマーを、作製したその単一産物核酸の増幅に用いて、増幅産物dsDNA(例えば、示されているような二本鎖cDNA)を作製してよい。この方法の唯一のステップで、必要なすべての成分を混ぜ合わせた後、その反応混合物を、予熱反応条件、RT反応条件、テンプレートスイッチング(「TS」)反応条件及びPCR反応条件を含む様々な反応条件に付してよい。いくつかのケースでは、ワンステップ方法では、予熱条件を除外して、そのワンステップRT-PCR反応を開始する前に、反応混合物を予熱しないようにしてもよい。
【0037】
いくつかのケースでは、ワンステップ方法で、予熱条件を用いる場合、そのような条件には、50℃以下~70℃以上の温度(例えば、50℃~75℃、55℃~75℃、60℃~75℃、65℃~75℃、70℃~75℃、50℃~70℃、55℃~70℃、60℃~70℃、65℃~70℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、72℃、75℃、70℃未満、65℃未満、60℃未満などが挙げられるが、これらに限らない)でインキュベートすることを含めてよい。インキュベートの長さは、様々であってよく、1分~5分以上の範囲であってよく、例えば、1~5分、1~3分、1分、2分、3分、4分、5分などが挙げられるが、これらに限らない。いくつかのケースでは、予熱条件でインキュベート後、例えば、その反応物を氷上に置くことによって、その反応物を冷却してよく、例えば、その反応物を冷却条件(例えば氷上)に、ある程度の期間(例えば、1分以上、例えば、1~2分、1~3分、1分、2分、3分などが挙げられるが、これらに限らない)維持する場合を含む。
【0038】
上記で概説したように、本発明の方法は、第1鎖の増幅の際に、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと第1鎖プライマーとを用いて、産物の二本鎖核酸を作製することを含んでよい。いくつかのケースでは、産物の二本鎖核酸の作製に用いる反応は、テンプレートスイッチングを用いる単一産物核酸合成反応であってよい。ここで
図5を参照すると、本質的に
図1に示されているようにして作製した単一産物核酸(500)から開始して、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(501)をこの単一産物核酸にハイブリダイズさせ(502)、増幅ポリメラーゼが、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドから伸長を行って、単一産物核酸と相補的である鎖(503)を作製する。それ以降の増幅(504)は、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(501)と第1鎖プライマー(505)(本明細書では、「RTプライマー」及び「CDS」プライマー、すなわち、cDNA合成プライマーともいう)とにアニーリングして、伸長して、鎖を作製し、最終的に増幅dsDNA(506)を作製するラウンドを通じて進行できる。
【0039】
一実施形態では、
図6に示されているように、本発明の方法を行って、ポリdT(オリゴ(dT)ともいう)単一産物核酸プライマー(601)を用いて、ポリAテールを有するテンプレートmRNA(600)を増幅して、テンプレートmRNA(601)と相補的である単一産物核酸(602)を作製してよい。それ以降の増幅は、本質的に上記のように、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(603)と単一産物核酸プライマー(601)とを用いて行って、増幅dsDNA産物(604)を作製してよい。
【0040】
いくつかのケースでは、本発明の方法を行って、テール配列と相補的である配列を有する単一産物核酸プライマーを用いて、テール配列を有するテンプレート核酸を増幅してよい。「テール配列」という用語は、本明細書で使用する場合、概して、テンプレート核酸の3’末端に存在するポリヌクレオチド領域であって、1種類のヌクレオチド(例えば、A、C、G、Tなど)で構成されている領域を指す。mRNAテンプレートのポリ(A)テールは、テール配列の非限定的な例の1つである。さらに、DNAテンプレートの3’末端に存在するポリ(T)配列は、テール配列の別の非限定的な例である。したがって、本発明のテンプレート核酸に存在し得るテール配列の例としては、例えば、ポリ(A)テール、ポリ(C)テール、ポリ(G)テール、ポリ(T)テールなどが挙げられるが、これらに限らない。テール配列は、サイズが、10nt未満~300nt以上の範囲であってよく、例えば、10~300nt、10~200nt、10~150nt、10~100nt、10~90nt、10~80nt、10~70nt、10~60nt、10~50nt、10~40nt、10~30nt、10~20nt、20~300nt、20~200nt、20~150nt、20~100nt、20~90nt、20~80nt、20~70nt、20~60nt、20~50nt、20~40nt、20~30nt、15nt、16nt、18nt、20ntなどが挙げられるが、これらに限らない。テンプレート核酸がテール配列を含む場合、その方法で用いる単一産物核酸プライマーは、そのテール配列と相補的である配列を含んでよく、そのテール配列に、プライマーがハイブリダイズし、単一産物核酸の伸長をプライミングする。単一産物核酸プライマーに存在する配列のうち、テール配列と相補的である有用な配列は、様々なものとなり、例えば、ポリ(dA)配列、ポリ(dC)配列、ポリ(dG)配列、ポリ(dT)配列などを挙げてよいが、これらに限らない。
【0041】
テンプレート核酸に存在するテール配列は、天然のもの(例えば、mRNAテンプレートのポリ(A)テールの場合)であっても、人工的または合成的に作製してもよい。例えば、いくつかのケースでは、テール配列をテーリング反応で核酸テンプレート、例えばDNAテンプレートに付加してよい。テーリング反応は様々となり、その反応としては、例えば、酵素的プロセスを通じて、テール配列をテンプレートに付加する場合を挙げてよい。対象の核酸テンプレートにテールを付加するために有用な酵素としては、例えば、ターミナルトランスフェラーゼ(例えば、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、RNA特異的ヌクレオチジルトランスフェラーゼなど)が挙げられるが、これらに限らない。テーリング配列のヌクレオチド種は、例えば、ターミナルトランスフェラーゼを用いるテーリング反応において、所望の種類のdNTPのみ(例えば、dATPのみ、dCTPのみ、dGTPのみ、またはdTTPのみ)を利用可能にすることによって、所望に応じて制御してよい。いくつかのケースでは、「dNTPテーリングミックス」をテーリング反応で使用し、このようなミックスは、1種類のみのdNTPを含む。いくつかのケースでは、核酸テンプレートは、テーリング反応に備えて、例えば、核酸テンプレートに存在する3’ホスフェートを除去(脱リン酸化)することによって調製してよい。このような目的では、いずれかの利便的かつ適切なホスファターゼを用いてよく、例えば、アルカリホスファターゼ(例えば、エビ由来アルカリホスファターゼ及びその誘導体)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0042】
いくつかのケースでは、本開示の方法は、例えば、dNTP種の存在下、テール配列を有するテンプレート(すなわち、テール付きテンプレート)を作製するために十分な条件下で、テンプレート核酸をターミナルトランスフェラーゼと接触させることによって、テーリング反応を行って、テーリング配列をテンプレート核酸に付加することを含んでよい。dNTP付加率、すなわち、テール配列の長さは、3’末端とdNTP濃度との比率と、どのdNTPを用いるかによって導き出される。ターミナルトランスフェラーゼ反応は、ターミナルトランスフェラーゼが活性となる温度(30℃~50℃など(37℃を含む))で行う。ターミナルトランスフェラーゼ反応におけるdNTPは、0.01mM~1mMの終濃度(0.05mM~0.5mmなど(0.1mMを含む))で存在してよい。テンプレート核酸は、ターミナルトランスフェラーゼ反応において、0.05~500ピコモルの濃度(0.5~50ピコモル(1~25ピコモルを含む)、例えば5ピコモルなど)で存在してよい。ターミナルトランスフェラーゼバッファー溶液、及び、いずれかの他の有用な成分(例えば、Coのような金属補因子など)も、例えば、別の溶液(例えばバッファー)として、または「dNTPテーリングミックス」の一部として、ターミナルトランスフェラーゼ反応物に含めてよい。ターミナルトランスフェラーゼ反応により、核酸テンプレートの3’末端にヌクレオチドが付加され、その結果得られるテール付きテンプレート核酸は、その後、本開示の方法による反応のさらなるステップで用いてよい。
【0043】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、dsDNAの増幅の際に、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマー以外の他のプライマー(この用語は、伸長反応をプライミングするために用いるオリゴヌクレオチドも指す)が存在しなくてもよい。換言すると、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーのみを用いて、増幅を行ってよい。したがって、本発明の増幅方法は、いずれかの追加の増幅プライマーの非存在下で行ってよい(すなわち、増幅に、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマー以外のプライマーを用いない)。したがって、本明細書に記載されている方法で用いる当該反応混合物では、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマー以外のいずれかの増幅プライマーの存在を除外してよい(すなわち、本発明の方法の実施形態に従ってdsDNAを増幅する際に、追加の増幅プライマーを加えたり、または別段の形で用いたりしなくてよい)。
【0044】
「増幅プライマー」とは概して、増幅(例えばPCR増幅)で用いるプライマーを意味し、例えば、第1鎖の合成後に、増幅する目的で、(例えば、反応が開始する前または反応の最中に)RT-PCR反応液に典型的に加えるプライマーが挙げられる。従来、増幅プライマーは、第1鎖合成プライマー(複数可)に加えて、RT-PCR反応液に存在し、その増幅プライマーは、第1鎖合成プライマー(複数可)とは別に用いて、作製した第1鎖cDNAをPCR増幅する。増幅プライマーは、「第2鎖合成プライマー(複数可)」、「第2鎖プライマー(複数可)」、「PCRプライマー」、「フォワードプライマー」、「リバースプライマー」、「ユニバーサル増幅プライマー」などということもあり、「マルチプレックスプライマーミックス」に存在するものとして記載されることもある。増幅プライマーは、第1鎖の合成及び/またはテンプレートスイッチング反応の最中に存在する場合でも(例えば、RT-PCR反応の開始時に加える場合)、概して、単一産物核酸の合成及び/またはテンプレートスイッチングに関与しないことになる。
【0045】
したがって、本開示の方法の実施形態では、増幅は、1つ以上の増幅プライマーの非存在下で行う。いくつかの実施形態では、1つ以上の増幅プライマーは、反応混合物に存在せず(すなわち、不在であり)、その反応混合物が、増幅プライマーを含まないようになっている。換言すると、いくつかの実施形態では、反応混合物は、単一産物核酸の合成及び/またはテンプレートスイッチングに関与しないいずれのプライマーも含まないでよい。
【0046】
本開示の方法は、逆転写酵素、単一産物核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び増幅ポリメラーゼを、テンプレート核酸ととともに反応混合物に混ぜ合わせることを含んでよい。この反応混合物は、逆転写及び/またはPCRで用いる他の成分(必須成分及び非必須成分を含む)を含んでもよく、その成分としては、例えば、デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)、バッファーなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0047】
上述したように、本開示の方法は、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを反応混合物に混ぜ合わせることと、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いて増幅することとを含む。「テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド」とは、核酸ポリマー化反応の際に、ポリメラーゼが初期テンプレート(例えば、テンプレート核酸(例えば、RNAテンプレートまたはDNAテンプレート))からスイッチする対象であるオリゴヌクレオチドテンプレートを意味する。この意味から、テンプレートは、「ドナーテンプレート」と称してよく、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、「アクセプターテンプレート」と称してよい。本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」は、2~500ヌクレオチド、例えば2~200ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドマルチマーである。オリゴヌクレオチドは、合成したものであっても、酵素によって作製したものであってもよく、いくつかの実施形態では、10~50ヌクレオチドの長さである。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマーを含んでも(すなわち、オリゴリボヌクレオチドまたは「RNAオリゴヌクレオチド」であっても)、デオキシリボヌクレオチドモノマーを含んでもよい(すなわち、オリゴデオキシリボヌクレオチドまたは「DNAオリゴヌクレオチド」であってもよい)。オリゴヌクレオチドは、例えば、10~20ヌクレオチド、21~30ヌクレオチド、31~40ヌクレオチド、41~50ヌクレオチド、51~60ヌクレオチド、61~70ヌクレオチド、71~80ヌクレオチド、80~100ヌクレオチド、100~150ヌクレオチドまたは150~200ヌクレオチド、最長で500ヌクレオチド以上の長さであってよい。
【0048】
本開示の方法の反応混合物は、テンプレートからテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドへのポリメラーゼのテンプレートスイッチングを容易に可能にするために十分な濃度で、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いて単一産物核酸を増幅するために十分な濃度で、またはテンプレートスイッチングを容易に可能にするとともに、単一産物核酸を増幅するために十分な濃度で、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを含んでよい。例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、0.01~100μMの終濃度(0.1~10μM、例えば0.5~5μMなど(1~2μMを含む)(例えば1.2μM))で、反応混合物に加えてよい。
【0049】
テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、改変されているか、または別段の形で非天然のものである1つ以上のヌクレオチド(またはそのアナログ)を含んでよい。例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチドアナログ(例えば、LNA、FANA、2’-O-Me RNA、2’-フルオロRNAなど)、結合改変体(例えば、ホスホロチオエート、3’-3’逆結合体、5’-5’逆結合体)、5’及び/または3’末端改変体(例えば、5’及び/または3’アミノ、ビオチン、DIG、ホスフェート、チオール、色素、クエンチャーなど)、1つ以上の蛍光標識ヌクレオチド、またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに所望の機能をもたらすいずれかの他の特徴を含んでよい。
【0050】
特定の態様では、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、3’ハイブリダイゼーションドメインを含む。3’ハイブリダイゼーションドメインは、長さが様々であってよく、いくつかのケースでは、2~10ntの長さ(3~7ntの長さなど)の範囲である。テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインは、単一産物核酸に付加される非テンプレート配列と相補的である配列を含んでよい。非テンプレート配列とは、以下にさらに詳細に説明されているが、概して、テンプレート、例えばRNAテンプレートまたはDNAテンプレートに対応していないとともに、テンプレートを鋳型としていない配列を指す。非テンプレート配列は、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインに存在する場合、3’ハイブリダイゼーションドメイン全体またはその一部を含んでもよい。いくつかのケースでは、非テンプレート配列は、ヘテロポリヌクレオチドを含むか、またはヘテロポリヌクレオチドからなってもよく、このようなヘテロポリヌクレオチドは、長さが、2ntから10ntまで様々であってよい(3~7ntの長さなど(3ntを含む))。いくつかのケースでは、非テンプレート配列は、ホモポリヌクレオチドを含むか、またはホモポリヌクレオチドからなってよく、このようなホモポリヌクレオチドは、長さが、2ntから10ntまで様々であってよい(3~7ntの長さなど(3ntを含む))。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、反応混合物に混ぜ合わせたポリメラーゼ(例えば、MMLV RTのような逆転写酵素)は、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有して、新生鎖の3’末端にホモヌクレオチド領域(例えば、C-C-Cのようなホモトリヌクレオチド)を付加できるようになっており、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインは、新生鎖の3’末端のこの領域と相補的であるホモヌクレオチド領域(例えば、G-G-Gのようなホモトリヌクレオチド)を含む。別の態様では、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有するポリメラーゼが、新生鎖の3’末端にヌクレオチド領域(例えばトリヌクレオチド領域)を付加するときには、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインは、シトシンを含むヌクレオチドと、グアニンを含むヌクレオチドとを含むヘテロトリヌクレオチド(例えば、r(C/G)3オリゴヌクレオチド)とを含み、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドのそのヘテロトリヌクレオチド領域は、新生鎖の3’末端と相補的である。3’ハイブリダイゼーションドメインとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとの例は、米国特許第5,962,272号にさらに記載されており、その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドには、そのテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの5’末端(例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの5’アダプター配列)の相補体を合成した後、ポリメラーゼが、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドから、異なるテンプレート核酸にスイッチングすることを防ぐ改変が含まれている。有用な改変としては、脱塩基損傷(例えば、テトラヒドロフラン誘導体)、ヌクレオチド付加物及びイソヌクレオチド塩基(例えば、イソシトシン、イソグアニン及び/または類似物)、ならびにこれらをいずれかに組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
【0053】
いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、5’アダプター配列(例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインの5’の規定ヌクレオチド配列)を含んでよく、その5’アダプター配列は、ダウンストリームアプリケーションで、様々な目的を果たしてよい。いくつかのケースでは、5’アダプター配列は、増幅dsDNAのさらなる増幅、または例えば、ネステッド増幅もしくはサプレッション増幅のためのプライマー結合部位としての役割を果たしてよい。
【0054】
上記で概説したように、本発明の方法は、単一産物核酸の増幅反応において、第1鎖プライマー、例えば、単一産物核酸プライマーを用いて、増幅dsDNAを作製することを含む。いくつかのケースでは、産物の二本鎖核酸を作製するために用いる反応は、テンプレートスイッチングと第1鎖プライマーとを用いる第1鎖cDNA合成反応であってよい。単一産物核酸から増幅する際に用いる単一産物核酸プライマーは、単一産物核酸を例えば、RNAテンプレートまたはDNAテンプレートから作製する際に用いたものと同じプライマーであってよい。
【0055】
単一産物核酸プライマー(単一産物核酸合成プライマー(例えば、第1鎖cDNA合成プライマー)または第1鎖プライマーともいう)は、テンプレート結合ドメインを含む。例えば、その核酸は、テンプレート核酸、例えば、mRNA、ssDNAなどにハイブリダイズするように構成されている第1の(例えば3’)ドメインを含んでよく、テンプレート核酸にハイブリダイズしない第2の(例えば5’)ドメインとみなしてよい1つ以上の追加のドメイン、例えば、以下にさらに詳細に説明されているような非テンプレート配列ドメインを含んでも含まなくてもよい。このテンプレート結合ドメインの配列は独立して、規定のものであっても、任意のものであってもよい。特定の態様では、テンプレート結合ドメインは、規定配列、例えば、ポリdTまたは遺伝子特異的配列を有する。別の態様では、テンプレート結合ドメインは、任意の配列(例えば、ランダムヘキサマー配列のようなランダム配列)を有する。テンプレート結合ドメインの長さは、様々であってよいが、いくつかのケースでは、このドメインの長さは、5~50nt(6~25ntなど、例えば、6~20nt)の範囲である。
【0056】
単一産物核酸プライマーは、改変されているか、または別段の形で非天然のものである1つ以上のヌクレオチド(またはそのアナログ)を含んでよい。例えば、単一産物核酸プライマーは、1つ以上のヌクレオチドアナログ(例えば、LNA、FANA、2’-O-Me RNA、2’-フルオロRNAなど)、結合改変体(例えば、ホスホロチオエート、3’-3’逆結合体及び5’-5’逆結合体)、5’及び/または3’末端改変体(例えば、5’及び/または3’アミノ、ビオチン、DIG、ホスフェート、チオール、色素、クエンチャーなど)、1つ以上の蛍光標識ヌクレオチド、あるいは所望の機能を単一産物核酸プライマーにもたらすいずれかの他の特徴を含んでよい。
【0057】
いくつかのケースでは、単一産物核酸プライマーは、5’アダプター配列(例えば、単一産物核酸プライマーの3’ハイブリダイゼーションドメインの5’の規定ヌクレオチド配列)を含んでよく、5’アダプター配列は、ダウンストリームアプリケーションで、様々な目的を果たしてよい。いくつかのケースでは、5’アダプター配列は、増幅dsDNAのさらなる増幅、または例えば、ネステッド増幅もしくはサプレッション増幅のためのプライマー結合部位として機能してよい。
【0058】
いくつかのケースでは、本開示の方法で用いるプライマー(例えば、単一産物核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドなどを含む)のうちの1つ以上は、2つ以上のドメインを含んでよい。例えば、このプライマーは、テンプレートにハイブリダイズする第1の(例えば3’)ドメインと、テンプレートにハイブリダイズしない第2の(例えば5’)ドメインとを含んでよい。第1のドメインと第2のドメインとの配列は独立して、規定のものであっても、任意のものであってもよい。特定の態様では、第1のドメインは、規定配列を有し、第2のドメインの配列は、規定のものであるかまたは任意のものである。別の態様では、第1のドメインは、任意の配列(例えば、ランダムヘキサマー配列のようなランダム配列)を有し、第2のドメインの配列は、規定のものであるかまたは任意のものである。いくつかのケースでは、両方のドメインの配列が規定のものである。本開示の方法で用いるプライマー(例えば、単一産物核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドなどを含む)は、2つ以上のドメインを含むが、そのドメインの1つ以上は、以下に説明されているような非テンプレート配列を含んでよい。
【0059】
本開示の方法は、例えば、増幅ポリメラーゼ、逆転写酵素、増幅ポリメラーゼ及び逆転写酵素などを含め、1つ以上のポリメラーゼを反応混合物に混ぜ合わせることを含む。本開示の方法を実施するときには、様々なポリメラーゼを用いてよい。
【0060】
いくつかのケースでは、反応混合物に混ぜ合わせるポリメラーゼは、テンプレートスイッチングすることができ、そのポリメラーゼは、ポリマー化のためのテンプレートとして第1核酸鎖を用いた後、第2のテンプレート核酸鎖の3’末端にスイッチして、同じポリマー化反応を継続する。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチングできるポリメラーゼは、逆転写酵素である。テンプレートスイッチングできる逆転写酵素であって、本開示の方法を実施するために有用である逆転写酵素としては、レトロウイルス逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、レトロプラスミド逆転写酵素、レトロン逆転写酵素、細菌逆転写酵素、グループIIイントロン由来逆転写酵素、ならびにこれらの変異体、バリアント、誘導体もしくは機能的断片、例えば、RNase Hマイナス型酵素またはRNase H低減型酵素が挙げられるが、これらに限らない。例えば、逆転写酵素は、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV RT)またはカイコ逆転写酵素(例えば、カイコR2非LTRエレメント逆転写酵素)であってよい。テンプレートスイッチングできるポリメラーゼであって、本開示の方法を実施するために有用なポリメラーゼは、市販されており、Clontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA)から入手可能なSMARTScribe(商標)という逆転写酵素及びPrimeScript(商標)という逆転写酵素が挙げられる。
【0061】
ポリメラーゼは、テンプレートスイッチング能に加えて、他の有用な機能を含んでよい。例えば、ポリメラーゼは、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有してよく、このポリメラーゼは、RNAまたはDNA分子の3’ヒドロキシル末端へのデオキシリボヌクレオチドの付加を触媒できる。特定の態様では、ポリメラーゼがテンプレートの5’末端に達すると、そのポリメラーゼは、新生鎖の3’末端に、テンプレートによってコードされない1つ以上の追加のヌクレオチドを導入できる。例えば、ポリメラーゼがターミナルトランスフェラーゼ活性を有するときには、そのポリメラーゼは、新生鎖の3’末端に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを超える数の追加のヌクレオチドを導入できてよい。そのヌクレオチドは、すべて同じであってもよく(例えば、新生鎖の3’末端に、ホモヌクレオチド領域を作製する)、またはそのヌクレオチドの1つ以上は、他のヌクレオチド(複数可)と異なっていてもよい(例えば、新生鎖の3’末端に、ヘテロヌクレオチド領域を作製する)。特定の態様では、ポリメラーゼのターミナルトランスフェラーゼ活性により、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを超える数の同じヌクレオチド(例えば、すべてdCTP、すべてdGTP、すべてdATPまたはすべてdTTP)のホモヌクレオチド領域が付加される。例えば、一実施形態によれば、ポリメラーゼは、MMLV逆転写酵素(MMLV RT)である。MMLV RTは、新生鎖の3’末端に、追加のヌクレオチド(主にdCTP、例えば、3つのdCTP)を導入する。本明細書で別段にさらに詳細に説明されているように、これらの追加のヌクレオチドは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインと、新生鎖の3’末端とをハイブリダイゼーションさせて、例えば、そのポリメラーゼがテンプレートからテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドにテンプレートスイッチングすることを促すために有用であってよい。
【0062】
本開示の方法で用いる逆転写酵素は、いくつかのケースでは、熱感受性ポリメラーゼ、すなわち、耐熱性ではないポリメラーゼであってよい。このような熱感受性ポリメラーゼは、その活性温度範囲を上回る温度で不活性になってよい。例えば、いくつかのケースでは、熱感受性ポリメラーゼは、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上の温度に暴露後、不活性になったり、または活性を有意に低下させたりしてよい。
【0063】
逆転写酵素を用いる場合、逆転写酵素は、RT反応産物を所望の量、例えば、単一産物核酸を所望の量で生成させるために十分な終濃度となるように、反応混合物に混ぜ合わせてよい。特定の態様では、逆転写酵素(例えば、MMLV RT、カイコRTなど)は、反応混合物に、0.1~200ユニット/μL(U/μL)(0.5~100U/μL、例えば1~50U/μLなど(5~25U/μLを含む)、例えば20U/μL)の終濃度で存在する。
【0064】
本開示の方法は、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び単一産物核酸プライマーを用いて、単一産物核酸から増幅して、増幅dsDNA産物を作製する際に用いるものとして、増幅ポリメラーゼを用いることを含む。いずれかの利便的な増幅ポリメラーゼを用いてよく、耐熱性ポリメラーゼを含むDNAポリメラーゼが挙げられるが、これに限らない。有用な増幅ポリメラーゼとしては、例えば、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、これらの誘導体などが挙げられる。いくつかのケースでは、増幅ポリメラーゼは、ホットスタートポリメラーゼであってよく、例えば、ホットスタートTaq DNAポリメラーゼ、ホットスタートPfu DNAポリメラーゼなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0065】
ホットスタートポリメラーゼは、様々であり、例えば、そのポリメラーゼと直接会合して、そのプロセッシビティを阻止または阻害する(すなわち、ポリメラーゼが核酸をポリマー化することを阻止する)ポリメラーゼ結合剤との複合体に存在するポリメラーゼを挙げてよい。ポリメラーゼ結合剤は、様々であり、例えば、ポリメラーゼと特異的に結合して、その活性を阻止する抗体、アプタマーなどを挙げてよい。「ホットスタート」反応では、反応物の加熱を用いて、ポリメラーゼ結合剤(複数可)をポリメラーゼから解離して、ポリメラーゼが核酸をポリマー化できるようにできる。ホットスタートポリメラーゼは、耐熱性であってもよい。
【0066】
増幅ポリメラーゼは、反応混合物に混ぜ合わせて、その増幅ポリメラーゼの終濃度が、産物核酸を所望の量で生成させるために、例えば、産物の増幅dsDNAを所望の量で生成させるために十分な濃度となるようにする。特定の態様では、増幅ポリメラーゼ(例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、ホットスタートDNAポリメラーゼなど)は、反応混合物に、0.1~200ユニット/μL(U/μL)(0.5~100U/μL、例えば1~50U/μLなど(5~25U/μLを含む)、例えば20U/μL)の終濃度で存在する。
【0067】
上記したように、本開示の方法は、dNTPを反応混合物に混ぜ合わせることを含んでよい。特定の態様では、4つの天然のdNTP(dATP、dGTP、dCTP及びdTTP)をそれぞれ、反応混合物に加える。例えば、dATP、dGTP、dCTP及びdTTPは、各dNTPの終濃度が、0.01~100mM(0.1~10mMなど(0.5~5mMを含む)、(例えば1mM))になるように、反応混合物に加えてよい。いくつかのケースでは、反応混合物に加える1種類以上のヌクレオチドは、非天然のヌクレオチド、例えば、結合もしくはそのヌクレオチドに結合された他の部分(例えば、蛍光部分)を有する改変ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、または本開示の方法もしくは対象のダウンストリームアプリケーションで有用であるいずれかの他のタイプの非天然ヌクレオチドであってよい。
【0068】
反応混合物は、様々な温度に暴露して、反応の様々な局面を駆動してよく、その局面としては、例えば、核酸の変性/融解、核酸のハイブリダイゼーション/アニーリング、ポリメラーゼによる延伸/伸長などが挙げられるが、これらに限らない。様々なプロセスを行う温度は、行うプロセスに従って呼称してよく、例えば、融解温度、アニーリング温度、延伸温度などが挙げられる。このようなプロセスの最適温度は、例えば、用いるポリメラーゼに応じて、核酸の特徴などに応じて、変動することになる。特定のポリメラーゼ(逆転写酵素及び増幅ポリメラーゼが挙げられる)における最適温度は、参考文献の記載から容易に得ることができる。核酸に関する最適温度、例えば、アニーリング温度及び融解温度は、該当する核酸の既知の特徴(例えば、全長、ハイブリダイゼーション長、G/C含有率、二次構造予測などが挙げられる)に基づき、容易に算出できる。
【0069】
本開示の方法は、増幅dsDNA産物の作製後、その産物を直接、目的のダウンストリームアプリケーションの1つ以上(例えば、クローニング、シークエンシングなど)に投入することを含んでよい。別の態様では、本開示の方法は、クローニング及び/またはライブラリーの構築のために、その産物をdsDNAインサートとして、例えばベクターで用いることを含んでよい。
【0070】
テンプレート核酸
テンプレート核酸は、テンプレート核酸組成物(例えば、規定の組成物)、あるいは生体試料(例えば、生物及び/または生細胞から採取したか、生物及び/または生細胞を含む試料)に存在してよい。テンプレート核酸を含む生体試料は、いずれかの利便的な手段によって調製して、その試料の核酸を、本明細書に記載されている方法の成分(例えば、プライマー、オリゴヌクレオチドなど)が利用できるようにしてよい。テンプレート核酸を含む生体試料の調製としては、例えば、試料をホモジナイズすること、試料の1つ以上の細胞種を溶解すること、試料の所望の核酸を濃縮すること、試料に存在する1つ以上の成分(例えば、タンパク質、脂質、夾雑核酸)を除去すること、核酸の単離を行って、テンプレート核酸を単離することなどを挙げてよいが、これらに限らない。
【0071】
本開示のテンプレート核酸は、異なる配列の複数種のテンプレート核酸を含んでよい。テンプレート核酸(例えば、テンプレートRNA、テンプレートDNAなど)は、いずれかの長さのポリマーであってよい。そのポリマーの長さは、様々であってよいが、いくつかのケースでは、このポリマーは、10nt以上、20nt以上、50nt以上、100nt以上、500nt以上、1000nt以上、2000nt以上、3000nt以上、4000nt以上、5000nt以上またはこれを超えるnt数である。特定の態様では、テンプレート核酸はポリマーであり、そのポリマーの塩基数は様々であってよく、いくつかのケースでは、10nt以下、20nt以下、50nt以下、100nt以下、500nt以下、1000nt以下、2000nt以下、3000nt以下、4000nt以下、5000nt以下、10,000nt以下、25,000nt以下、50,000nt以下、75,000nt以下、100,000nt以下である。
【0072】
特定の実施形態によれば、テンプレート核酸は、テンプレートリボ核酸(テンプレートRNA)である。テンプレートRNAは、いずれかのタイプのRNA(またはそのサブタイプ)であってよく、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランス作用性低分子干渉RNA(ta-siRNA)、天然低分子干渉RNA(nat-siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、長鎖非コードRNA(lncRNA)、非コードRNA(ncRNA)、トランスファー-メッセンジャーRNA(tmRNA)、前駆メッセンジャーRNA(pre-mRNA)、Cajalボディ特異的低分子RNA(scaRNA)、PIWI相互作用RNA(piRNA)、エンドリボヌクレアーゼ調製siRNA(esiRNA)、一過性低分子RNA(stRNA)、シグナル認識RNA、テロメアRNA、リボザイム、またはこれらの種類のRNAもしくはこれらのサブタイプをいずれかに組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
【0073】
特定の実施形態によれば、テンプレート核酸は、テンプレートデオキシリボ核酸(テンプレートDNA)である。テンプレートDNAは、いずれかのタイプのDNA(またはそのサブタイプ)であってよく、ゲノムDNA(例えば、原核生物ゲノムDNA(例えば、細菌ゲノムDNA、古細菌ゲノムDNAなど)、真核生物ゲノムDNA(例えば、植物ゲノムDNA、真菌ゲノムDNA、動物ゲノムDNA(例えば、哺乳類動物ゲノムDNA(例えば、ヒトゲノムDNA、齧歯類動物ゲノムDNA(例えば、マウス、ラットなど)など)、昆虫ゲノムDNA(例えばショウジョウバエ)、両生類動物ゲノムDNA(例えばクセノプス)など))、ウイルスゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、またはこれらの種類のDNAもしくはこれらのサブタイプをいずれかに組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
【0074】
所定のテンプレート核酸組成物中の、異なる配列の別個のテンプレート核酸の数は様々であってよい。所定のテンプレート核酸組成物中の、別個のテンプレート核酸の数は様々であってよいが、いくつかのケースでは、所定のテンプレート核酸組成物中の、別個のテンプレート核酸の数は、1~108 個(1~107 個など(1~105 個を含む))の範囲である。
【0075】
上記のような方法で用いるテンプレート核酸組成物は、いずれかの好適な核酸試料であってよい。テンプレート核酸を含む核酸試料は、産物核酸を生成させるために十分な量で、反応混合物に混ぜ合わせてよい。一実施形態によれば、核酸試料は、反応混合物における核酸終濃度が、1fg/μL~10μg/μL(1pg/μL~5μg/μL、0.001μg/μL~2.5μg/μL、0.005μg/μL~1μg/μL、0.01μg/μL~0.5μg/μLなど(0.1μg/μL~0.25μg/μLを含む))となるように、反応混合物に混ぜ合わせてよい。特定の態様では、テンプレート核酸を含む核酸試料は、例えば、以下に詳細に説明されているように、単一細胞から単離する。別の態様では、テンプレート核酸を含む核酸試料は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上、20個以上、50個以上、100個以上または500個以上の細胞から単離する。特定の実施形態によれば、テンプレート核酸を含む核酸試料は、500個以下、100個以下、50個以下、20個以下、10個以下、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個または2個の細胞から単離する。
【0076】
テンプレート核酸は、いずれかの目的核酸試料に存在してよく、その試料としては、単一細胞、複数の細胞(例えば培養細胞)、組織、器官、または生物(例えば、細菌、酵母など)から単離した核酸試料が挙げられるが、これらに限らない。特定の態様では、核酸試料は、哺乳類動物(例えば、ヒト、齧歯類動物(例えばマウス)、またはいずれかの他の目的哺乳類動物)の細胞(複数可)、組織、器官及び/または類似のものから単離する。別の態様では、核酸試料は、哺乳類動物以外の供給源(細菌、酵母、昆虫(例えばショウジョウバエ)、両生類動物(例えばカエル(例えばクセノプス))、ウイルス、植物または哺乳類動物以外のいずれかの他の核酸試料源など)から単離する。
【0077】
このような供給源から核酸を単離するためのアプローチ、試薬及びキットは、当該技術分野において知られている。例えば、目的の供給源から核酸を単離するためのキット(Clontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA)のNucleoSpin(登録商標)、NucleoMag(登録商標)及びNucleoBond(登録商標)というゲノムDNAまたはRNA単離キットなど)は、市販されている。特定の態様では、核酸は、固定生体試料、例えば、ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)組織から単離する。FFPE組織の核酸は、市販のキット(Clontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA)のNucleoSpin(登録商標)FFPE DNAまたはRNA単離キットなど)を用いて単離してよい。
【0078】
非テンプレート(non-templated)配列と非テンプレート(non-template)配列
「非テンプレート(non-templated)配列」と「非テンプレート(non-template )配列」という用語は概して、本開示の方法に関与する配列のうち、テンプレートに対応しない配列(例えば、テンプレートに存在しないか、テンプレートにおける相補的配列を有さないか、テンプレートに存在したり、テンプレートにおける相補的配列を有したりする可能性が低い配列)を指す。非テンプレート配列は、テンプレート、例えばRNAまたはDNAテンプレートを鋳型としない配列であるので、延伸反応の際、対応するテンプレートの非存在下で付加でき、例えば、テンプレート指向性ではないターミナルトランスフェラーゼ活性を有するポリメラーゼによって付加されるヌクレオチドである。非テンプレート(non-templated)配列と非テンプレート(non-templated)配列とは、プライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに存在する配列のうち、テンプレートにハイブリダイズしない配列(このような配列は、いくつかのケースでは、非ハイブリダイズ配列と称することがある)を指してよいが、これらに限らない。非テンプレート配列は、サイズと組成との両方とも様々となる。いくつかのケースでは、非テンプレート配列、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたは単一産物核酸プライマーに存在する非テンプレート配列は、10nt~1000nt以上の範囲であってよく、例えば、10nt~900nt、10nt~800nt、10nt~700nt、10nt~600nt、10nt~500nt、10nt~400nt、10nt~300nt、10nt~200nt、10nt~100nt、10nt~90nt、10nt~80nt、10nt~70nt、10nt~60nt、10nt~50nt、10nt~40nt、10nt~30nt、10nt~20ntなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0079】
いくつかのケースでは、非テンプレート配列は、上述したように、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインに含まれていてよい。非テンプレート配列は、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインに存在するときには、ヘテロポリヌクレオチドを含んだり、またはヘテロポリヌクレオチドからなったりしてもよく、このようなヘテロポリヌクレオチドは、長さが2ntから10ntまで様々であってよい(3~7ntの長さなど(3ntを含む))。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの3’ハイブリダイゼーションドメインに存在する非テンプレート配列は、ホモポリヌクレオチドを含んだり、ホモポリヌクレオチドからなったりしてもよく、このようなホモポリヌクレオチドは、長さが2ntから10ntまで様々であってよい(3~7ntの長さなど(3ntを含む))。
【0080】
テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたはプライマー、例えば、単一産物核酸プライマーに存在する非テンプレート配列は、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたはプライマーの5’末端に存在してもよく、このようなケースでは、この配列は、5’非テンプレート配列と称してよい。本開示の増幅方法においては、いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドまたは単一産物核酸プライマーのうちの1つのみが、非テンプレート配列(例えば5’非テンプレート配列)を含んでよい。本開示の増幅方法においては、いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとの両方が、非テンプレート配列(例えば5’非テンプレート配列)を含む。テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとの両方が非テンプレート配列を含む場合、非テンプレート配列は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとの両方が、同じ5’非テンプレート配列を有してもよい。
【0081】
いくつかのケースでは、非テンプレート配列(例えば、5’非テンプレート配列を含む)は、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含んでよい。いくつかのケースでは、増幅後に、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を増幅dsDNAに導入して、増幅dsDNAを操作可能にしてよい(例えば、導入した1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ認識部位で、増幅dsDNAを切断可能にしてよい)。
【0082】
いくつかのケースでは、非テンプレート配列(例えば、5’非テンプレート配列を含む)は、1つ以上のプライマー結合部位を含んでよい。いくつかのケースでは、増幅後に、1つ以上のプライマー結合部位を増幅dsDNAに導入して、増幅dsDNAをさらに増幅可能にしてよい(例えば、1つ以上のプライマー結合部位を用いて、増幅dsDNAの一部を増幅することを含み、例えば、1つ以上のプライマー結合部位を用いて、増幅dsDNAのネステッドPCRを通じて行うことを含む)。
【0083】
有用なプライマー結合部位は、そのプライマー結合部位と、対応するプライマーとの所望の複雑度によって大きく異なる。いくつかのケースでは、有用なプライマー結合部位は、II Aプライマー(例えば、Takara Bio USA,Inc.(Mountain View,CA)から入手可能なようなもの)との相補性がある部位を含む。一実施形態によれば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが、II Aプライマー結合部位を含む非テンプレート配列を含む。一実施形態によれば、単一産物核酸プライマーが、II Aプライマー結合部位を含む非テンプレート配列を含む。一実施形態によれば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとの両方が、II Aプライマー結合部位を含む非テンプレート配列を含む。
【0084】
いくつかのケースでは、非テンプレート配列(例えば、5’非テンプレート配列を含む)は、1つ以上のバーコード配列を含んでよく、いくつかのケースでは、このようなバーコード配列は、以下に詳述されているユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメイン及び/またはバーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインであってもよく、またはそれを含んでもよい。いくつかのケースでは、例えば、バーコードをシークエンシングするシークエンシング反応の後に、非テンプレート配列の1つ以上のバーコード配列によって、増幅dsDNAの供給源を遡って特定してよい。例えば、いくつかのケースでは、テンプレートの供給源(例えば、試料、ウェル、細胞など)に特異的なバーコードを含む非テンプレート配列を増幅の際に導入する。供給源を特定するこのようなバーコードは、本明細書では、「ソースバーコード配列」と称することがあり、このような配列は様々であってよく、そのバーコードが特定する供給源に基づいて用語を割り当ててよい。ソースバーコードとしては、例えば、テンプレートの由来元である試料を遡って特定する試料バーコード配列、テンプレートの由来元であるウェル(例えばマルチウェルプレートのウェル)を遡って特定するウェルバーコード配列、テンプレートの由来元であるドロップレットを遡って特定するドロップレットバーコード配列、テンプレートの由来元である細胞(例えば、多細胞試料の細胞)を遡って特定する細胞バーコード配列などを挙げてよい。バーコードは、例えば、バーコーディング後に、例えば、シークエンシングの前に、核酸をプールする場合を含む様々な手順で有用であり得る。
【0085】
いくつかのケースでは、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び/または単一産物核酸プライマーに存在する非テンプレート配列は、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含む。「シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクト」とは、該当するシークエンシングプラットフォーム(Illumina(登録商標)によって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、HiSeq(商標)、MiSeq(商標)及び/またはGenome Analyzer(商標)シークエンシングシステム)、Ion Torrent(商標)(例えば、Ion PGM(商標)及び/またはIon Proton(商標)シークエンシングシステム)、Pacific Biosciences(例えば、PACBIO RS IIシークエンシングシステム)、Life Technolgies(商標)(例えば、SOLiDシークエンシングシステム)、Roche(例えば、454 GS FLX+及び/またはGS Juniorシークエンシングシステム)あるいはいずれかの他の該当するシークエンシングプラットフォームなど)によって用いられる核酸ドメインの少なくとも一部(例えば、シークエンシングプラットフォームアダプター核酸配列)またはその相補体を含む核酸コンストラクトを意味する。
【0086】
特定の態様では、非テンプレート配列は、表面付着シークエンシングプラットフォームオリゴヌクレオチド(例えば、Illumina(登録商標)シークエンシングシステムのフローセルの表面に付着しているP5またはP7オリゴヌクレオチド)に特異的に結合するドメイン(例えば、「キャプチャー部位」または「キャプチャー配列」)である核酸ドメインと、シークエンシングプライマー結合ドメイン(例えば、Illumina(登録商標)プラットフォームのリード1またはリード2プライマーが結合できるドメイン)を含むシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトとを含む。そのシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトは、該当するシークエンシングプラットフォームに適するいずれかの長さ及び配列の核酸ドメイン(例えば、「シークエンシングアダプター」)を含んでよい。特定の態様では、この核酸ドメインは、4~200ntの長さであってよい。例えば、この核酸ドメインは、4~100ntの長さ(6~75nt、8~50ntまたは10~40ntの長さなど)であってよい。特定の実施形態によれば、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトは、2~8ntの長さ(9~15nt、16~22nt、23~29ntまたは30~36ntの長さなど)である核酸ドメインを含む。
【0087】
その核酸ドメインは、例えば、その核酸ドメインに隣接するcDNAインサートの固相増幅及び/または合成によるシークエンシングの際に、該当するシークエンシングプラットフォームで用いられるポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)が、その核酸ドメインに特異的に結合できるようにする長さ及び配列を有してよい。核酸ドメインの例としては、Illumina(登録商標)ベースのシークエンシングプラットフォームで用いられるP5(5’-AATGATACGGCGACCACCGA-3’)(配列番号1)、P7(5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT-3’)(配列番号2)、リード1プライマー(5’-ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’)(配列番号3)及びリード2プライマー(5’-GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT-3’)(配列番号4)ドメインが挙げられる。核酸ドメインの他の例としては、Ion Torrent(商標)ベースのシークエンシングプラットフォームで用いられるAアダプター(5’-CCATCTCATCCCTGCGTGTCTCCGACTCAG-3’)(配列番号5)及びP1アダプター(5’-CCTCTCTATGGGCAGTCGGTGAT-3’)(配列番号6)ドメインが挙げられる。
【0088】
該当するシークエンシングプラットフォームでのシークエンシングに有用な、非テンプレート配列ドメインのヌクレオチド配列は様々であってよく、及び/または時間の経過とともに変化してよい。アダプター配列は典型的には、シークエンシングプラットフォームのメーカーによって供給されている(例えば、シークエンシングシステムとともに供給される技術文書に掲載されていたり、及び/またはメーカーのウェブサイトで入手可能であったりする)。このような情報に基づき、非テンプレート配列のシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクト(例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び/または単一産物核酸プライマー及び/または類似のもの)の配列は、該当するプラットフォームで、核酸インサート(テンプレート核酸に対応しているインサート)をシークエンシング可能にする構成で、1つ以上の核酸ドメインの全部または一部を含むように設計してよい。非テンプレート配列に含めてよいシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトと、本明細書に記載されている他の核酸試薬とは、US2015-0111789A1として公開された米国特許出願第14/478,978号に記載されており、その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。
【0089】
非テンプレート配列は、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド、単一産物核酸プライマー、増幅産物dsDNAなどに、様々な手段によって付加してよい。例えば、上述したように、非テンプレート配列は、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有するポリメラーゼの作用を通じて付加してよい。例えば、プライマーまたはオリゴヌクレオチドに存在する非テンプレート配列は、増幅反応の際に、産物核酸に導入してよい。いくつかのケースでは、非テンプレート核酸配列は、核酸に(例えば、増幅の前に、プライマーまたはオリゴヌクレオチドに、増幅後に、産物核酸になど)直接結合してよい。非テンプレート配列を標的核酸に直接結合する方法は、様々なものとなり、例えば、ライゲーション、化学的な合成/連結、酵素によるヌクレオチドの付加(例えば、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有するポリメラーゼによる付加)などを挙げてよいが、これらに限らない。
【0090】
いくつかのケースでは、本開示の方法は、例えば、単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとが、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含まない実施形態では、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを産物核酸またはその誘導体(上記のような増幅dsDNAなど)の末端に結合することを含んでよい。産物核酸またはその誘導体の末端に結合するアダプターコンストラクトは、ダウンストリームシークエンシングアプリケーションで有用ないずれかの配列エレメントを含んでよく、そのエレメントとしては、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び/または単一産物核酸合成プライマーの任意のシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトに関して上記したエレメントのいずれかが挙げられる。例えば、産物核酸またはその誘導体の末端に結合するアダプターコンストラクトは、表面付着シークエンシングプラットフォームオリゴヌクレオチドに特異的に結合するドメイン、シークエンシングプライマー結合ドメイン、バーコードドメイン、バーコードシークエンシングプライマー結合ドメイン、分子特定ドメイン及びこれらを組み合わせたものからなる群から選択した核酸ドメインまたはその相補体を含んでよい。
【0091】
特定の実施形態によれば、産物核酸またはその誘導体の末端に結合するシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトは、単一核酸分子に存在する。特定の態様では、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトが単一の分子に存在する場合、そのコンストラクトを産物核酸またはその誘導体に結合することにより、産物核酸またはその誘導体とシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトとを含む環状核酸が生成される。このような実施形態は、様々な用途、例えば、複数の核酸配列エレメントを単一の核酸でつなぎ合わせることが望ましい用途に有用である。一例としては、産物核酸またはその誘導体をベクター(例えば、クローニングベクター、発現ベクター、ウイルスベクターまたは該当するいずれかの他の種類のベクター)にクローニングすることが望ましい場合がある。したがって、産物核酸またはその誘導体の末端に結合するシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトが単一核酸分子に存在する場合、その単一の核酸分子は、該当するベクターエレメントをさらに含んでよく、そのエレメントとしては、選択可能なマーカー(例えば、選択剤に対する耐性を宿主生物に付与する遺伝エレメント)、レポーター遺伝子(例えば、蛍光タンパク質(例えば、GFP、RFPなど)、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝子、もしくはいずれかの他の有用なレポーター遺伝子)、プロモーター(例えば、T7、T3もしくはその他のプロモーター)、複製起点(例えば、oriC)、マルチクローニングサイト、またはこのようなエレメントをいずれかに組み合わせたものが挙げられるが、これらに限らない。
【0092】
上記で概説したように、本開示の方法の実施形態は、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを産物核酸またはその誘導体の末端に結合することを含む。産物核酸の「誘導体」とは、産物核酸の改変形態及び/または産物核酸から生成した核酸を意味する。産物核酸の改変形態の一例は、産物核酸を酵素(例えば、ヌクレアーゼ(例えば、制限エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、RNaseなど)、ウラシル-N-グリコシラーゼ(UDG)、ウラシル特異的な切り出し試薬及び/または類似のものなど)、産物核酸の1つ以上のヌクレオチドを改変する化学物質、あるいは産物核酸の1つ以上のヌクレオチドを所望に応じて改変させるいずれかの他の薬剤で処理することによって作製した一本鎖または二本鎖核酸である。
【0093】
特定の態様では、増幅核酸、例えば増幅dsDNAまたはその誘導体の一方または両方の末端は、制限酵素認識部位を含み、二本鎖産物核酸誘導体の末端の改変は、制限酵素をその認識部位と接触させて、その制限酵素が、その末端を切断する(または「消化する」)ようにすることを含む。切断された末端は、平滑末端であっても「粘着」末端であってもよく、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトの結合は、そのコンストラクトを、その平滑末端または粘着末端にライゲーションすることを含んでよい。特定の実施形態によれば、(例えば、制限認識部位を選択して、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド、第1鎖合成プライマーまたはこれらの両方に含めることによって)1つ以上の制限酵素認識部位を操作して、産物核酸に組み込んで、産物核酸またはその二本鎖誘導体の処理末端へのシークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトの結合(例えばライゲーション)を促す。
【0094】
シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトの結合は、いずれかの好適なアプローチを用いて行ってよい。特定の態様では、アダプターコンストラクトは、「シームレス」クローニング法と同じまたは類似のアプローチを用いて、産物核酸またはその誘導体の末端に結合する。シームレス法は、制限酵素解析及び消化、DNA末端修復、脱リン酸化、ライゲーション、酵素の不活化及びクリーンアップ、ならびに核酸物質の対応する喪失を1ラウンド以上排除する。該当するシームレス結合法としては、Takara Bio USA,Inc.(Mountain View,CA)から入手可能なIn-Fusion(登録商標)クローニングシステム、Li & Elledge(2007)Nature Methods 4:251-256に記載されているようなSLIC(配列及びリガーゼ非依存性クローニング)、Gibson et al.(2009)Nature Methods 6:343-345に記載されているようなギブソンアセンブリー、Quan & Tian(2009)PLoS ONE 4(7):e6441に記載されているようなCPEC(環状ポリメラーゼ伸長クローニング)、Zhang et al.(2012)Nucleic Acids Research 40(8):e55に記載されているようなSLiCE(シームレスライゲーションクローニング抽出物法)、及びLife Technologies(Carlsbad,CA)によるGeneArt(登録商標)シームレスクローニング技術が挙げられる。特定の実施形態によれば、アダプターコンストラクトは、ギブソンアセンブリー(断片の長さまたは末端の適合性にかかわらず、シングルチューブでの等温反応で、核酸を効率的に結合させることができる)を用いて、産物核酸またはその誘導体の末端に結合する。このアプローチによれば、エキソヌクレアーゼは、一方の末端(重複領域)において相補性を共有する断片のアニーリングを促す一本鎖3’オーバーハングを作製し、ポリメラーゼが、アニーリングした各断片内のギャップを埋めて(または「修復」して)、DNAリガーゼが、アセンブルされたDNAにおけるニックを埋める。その結果として得られるものは、完全にふさがれた二本鎖DNA分子であって、該当するダウンストリームアプリケーション、例えば、該当するシークエンシングプラットフォームを用いるシークエンシング(シークエンシング前の増幅の有無にかかわらない)で、投入物質として機能できるDNA分子である。
【0095】
該当するシークエンシングプラットフォームに有用もしくは必要なシークエンシングドメインの一部しか有さない産物核酸またはその誘導体に、追加の核酸シークエンシングドメインを付与するために、いずれかの好適なアプローチを用いてよい。例えば、その5’末端(例えば、産物核酸またはその誘導体と相補的であるプライマー領域の5’)にアダプター配列を有するPCRプライマーを用いて、産物核酸またはその誘導体を増幅して、アンプリコンが、いずれかの所望の構成で、元の産物核酸におけるアダプター配列と、プライマーにおけるアダプター配列とを含むようにできる。シームレスクローニング法、制限消化/ライゲーションなどに基づくアプローチを含む他のアプローチを用いてもよい。
【0096】
BUMIドメイン
上述したように、いくつかのケースでは、本開示の方法では、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインを含む非テンプレート核酸配列を用いてよい。例えば、非テンプレート配列は、プライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに結合する非テンプレート配列を含め、BUMIドメインを含んでよい。いくつかのケースでは、BUMIドメインを含む1つ以上の核酸を、本明細書に記載されている核酸(例えば、テンプレート核酸、単一産物核酸、増幅dsDNA産物などが挙げられるが、これらに限らない)にライゲーションするか、または別段の形で結合してよい。
【0097】
BUMIドメインは、BUMIタグまたはその一部を含む核酸領域または核酸サブ配列である。BUMIタグは、一連の散在バーコードとユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)塩基とで構成されている。散在とは、バーコード塩基である塩基(すなわち、BUMIタグのバーコーディング成分を集合的に構成する塩基)が、UMI塩基(すなわち、BUMIタグのUMIドメインを集合的に構成する塩基)の中に分散または配置されていることを意味する。したがって、BUMIドメインに存在する所定のBUMIタグまたはその一部は、少なくとも1つのバーコード塩基に隣接して配置された少なくとも1つのUMI塩基を含むものであり、これらのケースでは、BUMIタグは、3個以上の塩基で構成されており、第1の種類(例えば、UMIまたはバーコード)の少なくとも2個の塩基は、もう一方の種類(例えば、UMIまたはバーコード)の少なくとも1つの塩基によって隔てられていてよい。所定のBUMIタグの長さは、様々であってよく、いくつかのケースでは、2~200nt(3~100ntなど(4~50ntを含む))の範囲であり、いくつかのケースでは、その長さは、5~25nt、例えば、6~20ntの範囲であり、該当する具体的な長さとしては、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt及び16ntが挙げられるが、これらに限らない。
【0098】
所定のBUMIタグでは、バーコード塩基の数は、様々であってよく、いくつかのケースでは、1~20個(1~10個、例えば1~6個など)の範囲である。所定のBUMIタグにおける連続するバーコード塩基の数も様々であってよく、いくつかのケースでは、1~10個(1~5個、例えば1~3個など)の範囲である。所定のBUMIタグでは、UMI塩基の数も様々であってよく、いくつかのケースでは、1~20個(1~12個(1~10個を含む)、例えば1~6個など)の範囲である。所定のBUMIタグにおける連続するUMI塩基の数も様々であってよく、いくつかのケースでは、1~10個(1~5個、例えば1~3個など)の範囲である。加えて、バーコード塩基とUMI塩基とのパターン及び比率は、様々であることができる。いくつかのケースでは、プライマーに対して疑似相同性を有するBUMIタグの確率を低下させるために、バーコード塩基を連続して配置しないようにする。バーコード塩基とUMI塩基とのパターンの別の例としては、(a)1つのバーコード塩基の後に、2つのUMI塩基が続き、BUMIタグの長さ全体にわたって、このパターンが繰り返されるパターン、(b)1つのバーコード塩基の後に、1つのUMI塩基が続き、その後、1つのバーコード塩基と2つのUMI塩基とが続き、5個の塩基からなるこの単位が、合わせて2個以上連なるように、この5塩基単位が繰り返され、その後、1個のバーコード塩基が続き、そして、BUMIタグの末端にUMI塩基が位置するパターンなどが挙げられる。このような多種多様なパターンのバーコード塩基とUMI塩基とを構築できる。BUMIタグは、所望に応じて、天然または非天然の塩基で構成してよい。したがって、BUMIタグは、天然の塩基、例えば、アデニン、グアニン、チミン及びシトシンのみで構成してよい。あるいは、BUMIタグには、ポリメラーゼ酵素に対するテンプレートとして機能できる1つ以上の改変ヌクレオチドとヌクレオチドアナログ(メチル化ヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド(例えば、ビオチン-11-dUTPまたは5-(bio-AC-AP3)dCTP)、色素またはハプテンで修飾したヌクレオチド、ホウ素修飾ヌクレオチド(2’-デオキシヌクレオシド5’-α-[P-ボラノ]-トリホスフェート)、dTTPのフェロセン標識アナログ(例えば、5-(3-フェロセンカルボキサミドプロペニル-1)2’-デオキシウリジン5’-トリホスフェート(Fc1-dUTP))など)を導入することもできる。したがって、BUMIタグには、修飾ヌクレオチドとヌクレオチドアナログ(例えば、LNA、FANA、2’-O-Me RNA、2’-フルオロRNAなど)、結合改変体(例えば、ホスホロチオエート、3’-3’逆結合体及び5’-5’逆結合体)、5’及び/または3’末端改変体(例えば、5’及び/または3’アミノ、ビオチン、DIG、ホスフェート、チオール、色素、クエンチャーなど)、1つ以上の蛍光標識ヌクレオチド、あるいは所望の機能をもたらすいずれかの他の特徴のうちの1つ以上を導入できる。BUMIタグで改変ヌクレオチドを用いると、BUMIタグが導入されているPCR産物を、ハイブリダイゼーション及び/またはシークエンシング方法を用いる検出に加えて、電気泳動移動度の違い、蛍光、抗体結合及び/または酵素活性によって検出することが可能になる。
【0099】
BUMIタグの配列は、所望に応じて様々であってよい。いくつかのケースでは、BUMIの塩基のうち、シークエンシングされる最初の塩基(例えば、最も5’末端にあるヌクレオチド)は、UMI塩基である。この構成により、シークエンシングリードの複雑度が向上し、それにより、いくつかのダウンストリームアプリケーションにおいて、成果が向上する。所定のBUMIタグは、ハミング距離を含むことができ、エラー訂正できる。BUMIは、特定のダウンストリームアプリケーションにおいて、エラー訂正に使用できるように構成できる。BUMIは、SNP信頼性(例えば、観察されるSNPが本物であり、増幅を通じて広がったPCRエラーではない信頼性)を割り出すように構成できる。いくつかのケースでは、BUMIタグは、訂正できる1つ以上のバーコード塩基に、エラーを含むことがある。BUMIタグにおけるバーコード塩基のエラー率を知ることにより、同じBUMIタグにおけるUMI塩基のエラー率の情報を得ることができる。これらの位置は、従来のバーコード-UMIの配向よりもかなり近いからである。
【0100】
図7A~7Dには、様々なタイプのBUMIドメイン、例えば、いくつかのケースで、本発明の方法の核酸、例えば、プライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの非テンプレート配列に含めてよいBUMIドメインの図が示されている。
図7Aでは、示されているBUMIドメインは、BUMIタグと一致しており、すなわち、完全にBUMIタグで構成されており、BUMIタグ(一連のBヌクレオチドとUヌクレオチドとして示されている)が、BUMIドメインと同じ長さとなるようになっている。
図7Bでは、BUMIドメインは、BUBUという4つのヌクレオチド配列によって示されているようなBUMIタグの一部のみを含む。1つ以上の追加のヌクレオチドサブ配列も示されており(黒色のバーで示されている)、このサブ配列は、いずれかの所望の配列を有してよく、所望に応じて様々な長さであってよく、このサブ配列は、いくつかのケースでは、1~10nt(2~8nt、例えば3~6nt)の長さの範囲である。
図7Cには、例えば
図7Aに示されているような完全なBUMIタグが、BUMIコーディング成分(ENCとして示されている)に連結されているものを含むBUMIドメインが示されており、BUMIドメインのENCの成分については、以下にさらに詳細に説明されている。
図7Dには、コーディング成分と部分的なBUMIタグとを含むBUMIドメインが示されている。
【0101】
いくつかのケースでは、核酸組成物(すなわち、特定のタイプの個々の核酸分子が複数集まったものであり、状況に応じて、その個々の核酸はそれぞれ、同じであっても異なっていてもよい)は、別個のBUMIドメインを含む複数の核酸(少なくともBUMIドメインに存在するBUMIタグまたはその一部のUMI部分が互いに異なる核酸)と混ぜ合わせたり、その核酸を用いて増幅したりしてよい。本明細書で使用する場合、「別個のBUMIドメインを含む核酸」という用語は、いくつかのケースでは、BUMIドメインを含むプライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを指してよい。したがって、BUMIドメインは、例えば、BUMIドメインを有するプライマー及び/またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いて増幅することによる反応の増幅産物に付加してよい。
【0102】
いくつかのケースでは、別個のBUMIドメインを含む複数の核酸を、核酸組成物と混ぜ合わせることにより、例えば、ライゲーションまたはその他の結合方法を通じて、その組成物の個々の核酸分子に、そのBUMIドメイン含有核酸を結合させるように促す。例えば、BUMIドメイン含有核酸は、複数の異なるテンプレート(例えば、RNAテンプレート、DNAテンプレート)を含む核酸組成物または単一産物核酸と混ぜ合わせて、その複数のテンプレートまたは単一産物核酸の個々の分子に、そのBUMIドメイン含有核酸を結合させるように促すことができる。
【0103】
BUMIドメインのBUMIタグまたはその一部のUMI部分のユニークな組み合わせの数は様々であることができ、いくつかのケースでは、その数は、50個以上、例えば、250個以上(500個以上を含む)であり、いくつかのケースでは、その数は、1,000個以上、5,000個以上、10,000個以上、50,000個以上、100,000個以上、250,000個以上、500,000個以上、1,000,000個以上(5,000,000個以上を含む)(50,000,000個以上など(100,000,000個以上を含み、1,000,000,000個以上を含む))であり、いくつかのケースでは、その数は、100,000,000個以下(1,000,000個以下、750,000個以下など(500,000個以下を含む))である。BUMIドメインのBUMIタグまたはその一部のUMI部分のユニークな組み合わせの数は、BUMIタグのUMIヌクレオチドの数から導き出すことができる。例えば、BUMIタグに、10個のUMIヌクレオチドがある(例えば上記のように、例えば、BUMIにわたって、バーコードヌクレオチドの間に分散している)場合、UMIヌクレオチドの考え得るユニークな組み合わせは410個である。そのような組成物のBUMIドメインのBUMIタグまたはそれらの一部の中では、いくつかのケースでは、その組成物の、異なるBUMIタグまたはそれらの一部は、共通のバーコード塩基と、異なるUMIヌクレオチドとを有する。換言すると、BUMIドメインの異なるBUMIタグまたはそれらの一部の各バーコード塩基の同一性及び位置は同じであるが、各UMI塩基の同一性は、その組成物のBUMIドメイン含有核酸の2個以上のBUMIタグまたはそれらの一部の間で異なっている。所定の用途では、BUMIタグセットの各タグのバーコード部分が、同じC-G:A-T比を有することにより、BUMIタグ間の融解温度差をなくすように、BUMIタグセットを選択できる。また、各BUMIタグのバーコード部分間に、最低3つのヌクレオチドの差が見られるように、BUMIタグセットを選択することによって、1つのBUMIタグ付き試料に由来する分子が、異なる試料に由来すると誤認される前に、三重のヌクレオチド配列置換を必要とするようにしてよい。
【0104】
上記したように、BUMIドメインを含む核酸は、例えば、いずれかのBUMIドメイン成分(完全なBUMIタグもしくはその一部を含んでよく、これらのタグもしくはそれらの一部をコードしてよい)、またはその核酸の他の成分(複数可)(プライマー結合ドメイン、テンプレートスイッチドメインなど)に関して、様々であってよい。以下では、BUMIドメインを含む核酸の異なるタイプの例について、さらに詳細に検討する。
【0105】
いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、例えば上記のようなBUMIドメインを含んでよい。BUMIドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、テンプレートスイッチドメインと、例えば上記のようなBUMIドメイン(BUMIタグまたはその一部を含んでよく、例えば、以下にさらに詳細に説明されているように、コードされていても、されていなくてもよい)とを含んでよい。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチドメインは、上記のような3’ハイブリダイゼーションドメインであってもよく、またはそれを含んでもよい。テンプレートスイッチドメインは、BUMIドメイン(及びテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドのいずれかの他のドメイン)の3’に配置してよい。
【0106】
図8に、BUMIドメインを有するテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの図が示されている。
図8に示されているように、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(800)は、3’ハイブリダイゼーションドメイン、すなわち、テンプレートスイッチドメイン(801)と、任意に、5’の追加の非テンプレート配列ドメイン(802)と、例えば
図7Aに示されているように、BUMIタグ(803)を有するBUMIドメインであって、上記の2つの隣接ドメインの間に配置されたBUMIドメインとを含み、BUMIドメインが、テンプレートスイッチドメインと、5’の追加の非テンプレート配列ドメインとに隣接するようになっている。
【0107】
いくつかのケースでは、例えば、プライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに含まれているようなBUMIドメインは、BUMIタグの一部を含んでよく、そのBUMIタグ部分は、スプリットBUMIと称することもある。これらの実施形態の核酸のBUMIドメインは、BUMIタグの一部を含んでいるに過ぎないので、このドメインは、完全なBUMIタグを含まない。これらの実施形態のBUMIタグ部分は、その部分の集まりであるBUMIタグの総nt数のうちの、ある割合を含み、所定のBUMIタグ部分におけるntが占める割合は様々であってよく、いくつかのケースでは、10~95%(15~75%、例えば40~60%など(45~65%を含む))の範囲であり、いくつかのケースでは、その割合は、50%であってよく、BUMIタグ部分が、完全なBUMIタグの2分の1となるようになっている。
【0108】
BUMIタグの一部を有するBUMIドメインを含む核酸は、異なる核酸の間で、BUMIタグを分割することが望ましい様々な用途で有用である。1つの核酸、例えば、単一産物核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(TSO)などに、長いBUMIタグを完全に持たせると、所定の用途またはプロトコールの1つ以上の局面(例えば、第1鎖の合成)や、テンプレートスイッチングの効率などを妨げたり、及びまたは、試薬、例えば、プライマー、TSOなどの合成の困難度が増したりし得る。所定のプロトコールで用いる異種の核酸試薬、例えば、単一産物核酸合成プライマーとTSOとにBUMIタグを分割すると、各核酸試薬で用いるBUMIドメインを短縮できる一方で、より長いUMIを伴う多様性が維持される。このような実施形態でスプリットBUMIタグを用いるときには、すべての部分のBUMIタグ、例えば、BUMIタグの両方の半部をシークエンシングして、完全なBUMIタグを再構築できる。所望の場合、コンピューターによって実施されるアルゴリズムを用いて、バーコードとスプリットBUMIの各部のUMI部分とを特定することによって、完全なBUMIタグを再構築してよい。
【0109】
上記で概説したように、いくつかのケースでは、単一産物核酸プライマーのようなプライマーは、BUMIドメインを含んでよい。例えば、
図9には、BUMIドメインを含む単一産物核酸プライマー(900)の図が示されており、例えば、いくつかのケースでは、そのBUMIドメインは、BUMIタグの一部を含む。示されているように、核酸(900)は、3つのドメイン、すなわち、この例では、BUMIタグの一部を含むBUMIドメイン(901)と、テンプレート核酸にハイブリダイズするテンプレート結合ドメイン(902)と、任意に、テンプレート核酸にハイブリダイズしない追加の非テンプレート配列(NTS)ドメイン(903)とを含む。第1のドメイン及び第2のドメイン(すなわち、非BUMIドメイン)の配列は独立して、規定のものであっても、任意のものであってもよい。特定の態様では、テンプレート結合ドメイン(902)は、規定配列(例えば、オリゴ-dT配列もしくはテンプレート特異的配列)、または任意の配列(例えば、ランダムヘキサマー配列のようなランダム配列)を有し、追加のNTSドメイン(903)の配列は、規定されている。
【0110】
いくつかのケースでは、核酸、例えば、プライマー及び/またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、コード付きBUMIドメインを含んでよい。コード付きBUMIドメインは、BUMIタグ成分を含み、その成分は、例えば上記のように、完全なBUMIタグまたはその一部と、BUMIタグ成分における散在バーコードとUMIのヌクレオチドの順序に関する情報をもたらすコーディング成分を有してよい。そのコーディング成分は、散在バーコード及びUMIのヌクレオチドの順序に関する情報をもたらすので、BUMIタグまたはBUMIタグ部分におけるバーコード及びUMIのヌクレオチドの順序を特定するスキームコードとみなすことができる。したがって、コーディング成分の配列を用いて、BUMIタグまたはその一部におけるどの塩基が、バーコードのヌクレオチドであり、どれがUMIのヌクレオチドであるかを割り出して、このコーディングドメインから、BUMIタグにおけるバーコードのヌクレオチドとUMIのヌクレオチドとの位置を割り出すことができるようにする。コード付きBUMIドメインは、多様性が大きいUMI、長さが短いBUMIタグが望まれる用途で有用である。UMIが長いほど、ユニーク配列の多様性は大きくなり、さらに多くの数の分子を特異的に標識可能になる。しかしながら、いくつかのケースでは、配列が長くなることは望ましくない。それにより、例えば、テンプレートスイッチング効率が低下したり、またはその他の問題が生じたりすることがあるからである。上記のようなコード付きBUMIドメインにより、短いBUMIを用いて、長いUMIに匹敵する多様性を所定の集団内で維持できるようになる。このようにして、多様性を維持したままで、BUMIプールの長さを短縮できる。
【0111】
BUMIドメインのコード付きBUMIタグまたはその一部のコーディング成分は、長さが様々であってよく、いくつかのケースでは、1~10nt、例えば1~5nt(2~4ntの長さを含む)の範囲である。このコーディング成分の位置は、所望に応じて様々であってよく、いくつかのケースでは、コーディング成分は、BUMIタグ成分の5’に配置されており、別のケースでは、コーディング成分は、BUMIタグ成分の3’である。コーディング成分は、介在塩基または介在塩基配列によって、BUMIタグ成分から分離されていてもされていなくてもよい。このような介在ドメインは、存在する場合には、長さが様々であってよく、いくつかのケースでは、1~3nt(1~2ntなど)の範囲である。
【0112】
図10には、コード付きBUMIドメインの例が示されており、このコード付きBUMIドメインは、コーディング成分及びBUMIタグ成分を含む。
図10のコード付きBUMIドメインでは、コーディングドメインは、3ntの長さであり、3塩基長の各コーディングドメインによって、ユニークな8nt長のBUMIタグが特定される。
【0113】
コード付きBUMIドメインは、所望に応じて、所定のプロトコールのいずれかの核酸試薬として用いてよい。したがって、コード付きBUMIドメインは、上記のように、核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドなどで用いてよく、その場合、コード付きBUMIドメインは、例えば、上記のように、完全なBUMIタグまたはBUMIタグの一部を含んでよい。コード付きBUMIドメインを用いる用途では、コーディング成分の配列を用いて、BUMIタグ成分をデコードする。所望の場合、コンピューターによって実施されるアルゴリズムを用いて、例えば、BUMIタグ成分におけるバーコード及びUMIの塩基のパターンを特定することによって、コーディング成分をデコードしてよく、すなわち、BUMIタグ成分(上記のように、完全なBUMIタグであってもその一部であってもよい)のバーコード及びUMIの部分を特定する。
【0114】
いくつかのケースでは、本開示の方法において、別個のBUMIドメインを含む複数の核酸で構成されている組成物(例えば、その別個のBUMIドメインは、プライマー(例えば、単一産物核酸プライマー)またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに結合しているか、または結合していない)を用いてよく、例えば、この組成物を、本明細書に記載されている反応混合物の1つ以上に加えてよい。別個のBUMIドメインを含む核酸であって、所定の複数の上記のような組成物を構成する核酸は、少なくともそのBUMIドメイン、より具体的には、そのBUMIドメインのBUMIタグまたはその一部のUMIヌクレオチドが異なる配列の核酸である。したがって、その複数には、そのBUMIドメインのBUMIタグまたはその一部が異なる別個の核酸が数多く含まれる。いくつかのケースでは、異なるBUMIタグまたはその一部は、共通のバーコードヌクレオチドと、異なるUMIヌクレオチドとを有する。このようなケースでは、BUMIドメインのBUMIタグまたはその一部の各バーコードヌクレオチドの同一性及び位置は、その複数におけるBUMIドメインの異なるBUMIタグまたはその一部の間で同じ、すなわち、同一であるが、BUMIタグまたはその一部の残りのUMIの位置におけるUMIヌクレオチドの同一性は異なり、その複数のうちのいずれかの2つの別個の核酸において、BUMIドメインのBUMIタグまたはその一部の少なくとも1つのUMI位における少なくとも1つのUMIヌクレオチドの同一性、例えば、A、G、CまたはTは同じではない、すなわち、同一ではない。所定の組成物における、別個のBUMIドメインを含む核酸の数は、様々であってよく、いくつかのケースでは、その数は、50個以上、例えば、250個以上(500個以上を含む)であり、いくつかのケースでは、その数は、1,000個以上、5,000個以上、10,000個以上、50,000個以上、100,000個以上、250,000個以上、500,000個以上、1,000,000個以上(5,000,000個以上を含み、100,000,000個以上を含み、1,000,000,000個以上を含む)であり、いくつかのケースでは、その数は、100,000,000個以下(1,000,000以下、750,000以下など(500,000以下を含む))である。
【0115】
追加の方法パラメーター
反応混合物成分は、テンプレート核酸と、単一産物核酸の隣接領域にハイブリダイズしたテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを含む二本鎖核酸複合体を生成するために十分な条件下で混ぜ合わせる。テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと第1鎖cDNAプライマーとを用いて、増幅dsDNAを生成するために十分な条件下で、単一産物核酸から増幅を行う。
【0116】
「二本鎖核酸複合体を生成するために十分な条件」とは、その反応における関連する核酸が、所望の形で、互いと相互作用(例えばハイブリダイズ)できるようにする反応条件を意味する。好適な反応条件もたらすこととしては、反応混合物成分、その濃度及び反応温度を選択して、関連する核酸が、配列特異的な形で、互いとハイブリダイズする環境を作ることを挙げてよい。例えば、反応混合物は、テンプレート核酸、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び単一産物核酸に加えて、適切なpH、塩濃度(例えばKCl濃度)などを構築するバッファー成分を含んでよい。二本鎖核酸複合体を生成するために十分な条件としては、ハイブリダイゼーションに適切な条件(「ハイブリダイゼーション条件」ともいう)を挙げてよい。
【0117】
「増幅dsDNAを生成するために十分な条件下」とは、テンプレートにハイブリダイズした核酸鎖の末端が、ポリメラーゼの媒介で伸長できる反応条件を意味する。好適な反応条件としては、増幅ポリメラーゼの媒介による伸長、逆転写酵素の媒介による伸長または増幅ポリメラーゼの媒介による伸長と逆転写酵素の媒介による伸長との両方を可能にする条件を挙げてよい。増幅dsDNAを生成するために十分な条件は、単一産物核酸を生成するために十分な条件を含んでよく、このような条件下で、反応の1つ以上のステップを行ってよい。反応プロセスが、逆転写を必要としない場合(すなわち、単一産物核酸を反応混合物に供給する場合)、好適な反応条件は、逆転写と増幅との両方のために構成する必要がない。単一産物核酸を生成するために用いるテンプレート核酸(例えば、DNAまたはDNA以外のテンプレート(例えばRNAテンプレート))が、出発物質であり、その反応が、ワンステップ反応である場合、好適な反応条件は概して、逆転写とPCR増幅との両方を可能にする条件となる。
【0118】
単一産物核酸を生成するために十分な条件は、ポリメラーゼのテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドへのテンプレートスイッチングと、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドの5’末端への伸長反応の継続とを可能にする反応条件をさらに含んでよい。
【0119】
好適な反応条件の実現には、1つ以上のポリメラーゼが活性になり、及び/または反応物における関連核酸が、所望の形で、互いに相互作用(例えばハイブリダイズ)する環境を作るための反応混合物成分、その濃度及び反応温度を選択することを含めてよい。いくつかのケースでは、好適な反応条件は、2つの異なるポリメラーゼ(例えば、増幅ポリメラーゼと逆転写酵素を含む)が活性になるように構成してよい。好適な反応条件では、反応混合物は、テンプレート、1つ以上のポリメラーゼ、単一産物核酸プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及びdNTPに加えて、伸長反応(複数可)及び/またはテンプレートスイッチングを行うための適切なpH、塩濃度(例えばKCl濃度)、金属補因子濃度(例えば、Mg2+またはMn2+濃度)などを構築するバッファー成分を含んでよい。1つ以上のヌクレアーゼインヒビター(例えば、RNaseインヒビター及び/またはDNaseインヒビター)、GCリッチ配列の増幅/複製を促す1つ以上の添加剤(例えば、GC-Melt(商標)試薬(Clontech Laboratories,Inc.(Mountain View,CA))、ベタイン、DMSO、エチレングリコール、1,2-プロパンジオールもしくはこれらを組み合わせたもの)、1つ以上の分子クラウンディング剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)、1つ以上の酵素安定化成分(例えば、1~10mM(例えば5mM)の範囲の終濃度で存在するDTT)及び/またはポリメラーゼの媒介による伸長反応及び/またはテンプレートスイッチングを促すために有用ないずれかの他の反応混合物成分のようなその他の成分を含めてよい。
【0120】
1つ以上の反応混合物は、プライマー伸長反応及び/またはテンプレートスイッチングに適するpHを有してよい。特定の実施形態では、反応混合物のpHは、5~9(7~9など(8~9を含む)、例えば8~8.5)の範囲である。いくつかのケースでは、反応混合物は、pH調整剤を含む。該当するpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸バッファー溶液、クエン酸バッファー溶液などが挙げられるが、これらに限らない。例えば、pH調整剤を適切な量で加えることによって、反応混合物のpHを所望の範囲に調整することができる。
【0121】
プライマー伸長反応に適する温度範囲は、用いる具体的なポリメラーゼ、用いるいずれかのプライマーの融解温度などのような要因によって変動し得る。いくつかのケースでは、逆転写酵素(例えば、MMLV逆転写酵素)を用いてよく、ハイブリダイズされるプライマーを逆転写酵素の媒介によって伸長するために十分な反応混合物条件としては、反応混合物を4℃~72℃(16℃~70℃、例えば37℃~50℃、40℃~45℃など(42℃を含む))の範囲の温度にすることが挙げられる。
【0122】
いくつかのケースでは、本明細書に記載されている方法は、例えば、テンプレート、例えば、RNAまたはDNAテンプレートの二次構造を変性させるために十分な温度に、テンプレートを含む反応混合物を曝すことによって、テンプレートを変性させることを含んでよい。状況に応じて、変性は、1つ以上の反応成分を反応混合物に加える前または加えた後に行ってよく、いくつかのケースでは、単一産物核酸を生成させるための転写、例えば逆転写の開始前に行う。有用な変性温度は、様々な温度となり、50℃未満~100℃超の範囲であってよく、例えば、50℃以上、55℃以上、65℃以上、70℃以上、72℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上などが挙げられるがこれらに限らない。
【0123】
いくつかのケースでは、増幅反応は、1つ以上の核酸検出試薬、例えば、DNA色素(蛍光DNA色素(例えば、DAPI、Hoechst、PI、DRAQ5、SYBR Green、LC Green、Eva Green、BEBO、BOXTO、SYTO9など)を含む)の存在下で行ってよい。核酸検出試薬としては、本明細書で言及されているように、上記で列挙したような遊離DNA色素と、プローブ結合DNA色素(TaqManプローブ、Molecular Beaconsプローブ、Scorpionsプローブ、Light-Upプローブなどが挙げられるが、これらに限らない)とが挙げられる。いくつかのケースでは、1つ以上の核酸検出試薬を反応混合物に加えてよく、本明細書に記載されている方法に従って、増幅を行って、1つ以上の核酸検出試薬を用いて、増幅産物のdsDNAの存在を検出したり、または増幅産物のdsDNAの産生をモニタリングしたりできるようにしてよい。したがって、増幅dsDNAの存在を検出したり、増幅dsDNAの量を定量したりすることは、核酸検出試薬に基づいてよい。いくつかのケースでは、本明細書に記載されているような増幅方法は、定量PCRを含んでよい。
【0124】
いくつかのケースでは、例えば、増幅反応を適切な反応容器またはドロップレットで行う場合、増幅反応を迅速にスクリーニング及び/またはソーティングする際に、核酸検出試薬に基づく増幅dsDNAの検出及び/または定量を用いてよい。例えば、複数の反応容器(例えば、マルチウェルプレートの複数のウェル)において、核酸検出試薬の存在下で、複数の増幅反応を行ってよく、核酸検出試薬に基づき、増幅dsDNAの生成を行って、(例えば、プレートリーダーまたは類似の装置を用いて)ウェルを迅速にスクリーニングして、増幅反応の成功を検出してよい。いくつかのケースでは、複数のドロップレットにおいて、核酸検出試薬の存在下で、複数の増幅反応を行ってよく、核酸検出試薬に基づき、(例えば、フローサイトメーターを用いたり、マイクロ流体ベースのドロップレットソーターを用いたりするなどして)ドロップレットをソーティングしてよい。
【0125】
いくつかのケースでは、増幅産物dsDNAにおける特定の標的配列の存在を検出するために、特異的な核酸検出試薬(例えば、特定の核酸配列に特異的な標識プローブ)を用いてよい。このようなプローブは、増幅反応の前、最中または後に加えてよく、反応混合物をハイブリダイズ条件に置いて、標識プローブを増幅dsDNAにハイブリダイズすることを伴ってよい。有用なプローブとしては、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)プローブ(例えば、DNA FISHプローブ、Riboprobe、LNA FISHプローブなど)を挙げてよいが、これらに限らない。特異的な標的配列を検出するために有用な標識プローブは、標的配列と相補的なものとなり、増幅dsDNAにハイブリダイズすると、増幅dsDNAにおける標的配列の存在を示すことができる。いくつかのケースでは、例えば、適切な反応容器またはドロップレットで増幅反応を行う場合、例えば、核酸検出試薬に関して上記したように、増幅反応を迅速にスクリーニング及び/またはソーティングするために、標識プローブに基づき、増幅dsDNAにおける標的配列を検出及び/または定量することを用いてよい。
【0126】
いくつかのケースでは、本開示の方法は、増幅dsDNA産物を単離及び/または精製することを含んでよく、増幅反応を行った後に、精製を行う場合を含み、増幅反応を行った後のみに、精製を行う場合を含む(すなわち、増幅反応の中間体成分は精製しない)。いずれかの利便的な精製方法を用いてよく、例えば、核酸沈殿(すなわち、アルコール沈殿)、ゲル精製などが挙げられるが、これらに限らない。
【0127】
いくつかのケースでは、本発明の方法において、固体支持体(例えば、ビーズ、プレートなど)を用いてよい。例えば、いくつかのケースでは、単一産物核酸プライマーを固体支持体に結合して、本明細書に記載されているように、増幅反応で用いてよい。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを固体支持体に結合して、本明細書に記載されているように、増幅反応で用いてよい。例えば、支持体に結合したヌクレオチドを反応の1つ以上の成分または中間体にハイブリダイズする一方で、反応の最中または後にビーズを回収することによって、増幅dsDNAを単離する際に、固体支持体に結合した単一産物核酸プライマー及び/またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いてよい。支持体に結合した核酸を回収するためのいずれかの利便的な方法を用いてよく、例えば、磁気分離、密度/遠心分離/重力ベースの分離、ろ過ベースの分離、分子結合ベースの分離、蛍光ベース(すなわち、固体支持体の蛍光ベース)の分離などが挙げられるが、これらに限らない。
【0128】
核酸、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び/または単一産物核酸プライマーは、固体支持体で直接合成しても、化学的に結合、すなわち「キャプチャー」してもよい。例えば、いくつかのケースでは、本開示の方法の1つ以上の核酸、例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド及び/または単一産物核酸プライマーは、アンケージされると、固体支持体に存在する対応する結合パートナー(例えば、抗ビオチン抗体、アビジン、ストレプトアビジン、NEUTRAVIDIN(登録商標)、抗フルオレセイン抗体など)に核酸を結合させるケージドキャプチャー部分(例えば、ケージドビオチン、ケージドフルオレセインなど)を含んでよい。増幅反応を行って、ケージドキャプチャー部分を増幅dsDNA産物に導入して、アンケージドされたキャプチャー部分が、固体支持体に存在するその結合パートナーに結合するために十分な条件下で、キャプチャー部分をアンケージすることによって、増幅dsDNA産物を固体支持体に結合できるようにしてよい。核酸のケージドキャプチャーに有用な方法と試薬としては、例えば、米国特許第7,947,477号(その開示内容は、その全体が、参照により本明細書に援用される)に記載されているようなものが挙げられるが、これらに限らない。
【0129】
図11に、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドに結合したケージドキャプチャー部分の非限定的な例が示されている。示されているように、例えば、
図5に概説されているような産生dsDNA(1100)は、ケージドキャプチャー部分(1101)をさらに含む。アンケージの前(1102)では、ケージドキャプチャー部分は、固体支持体に結合したその対応する結合パートナー(1103)に結合せず、この例では、固体支持体は、ビーズ(1104)によって表されている。アンケージ後(1105)には、アンケージドキャプチャー部分(1101)は、その対応する結合パートナー(1103)に自由に結合するので、産生dsDNA(1100)のキャプチャーが促される。
【0130】
単一細胞、反応容器及びドロップレット
反応混合物及びその成分を入れることができるとともに、本開示の方法の反応を行うことができる反応容器は、様々なものがある。有用な反応容器としては、例えば、チューブ(例えば、シングルチューブ、マルチチューブストリップなど)、ウェル(例えば、マルチウェルプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、またはいずれかの数(2000個、4000個、6000個もしくは10000個以上など)のウェルがあるプレート)のウェル)が挙げられるが、これらに限らない。マルチウェルプレートは、独立していても、チップ及び/または器具の一部であってもよい。マルチウェルプレートは、独立していても、チップ及び/または器具の一部であってもよい。
【0131】
特定の実施形態では、用いる反応容器は、マルチウェル器具の1つのウェルであっても、複数のウェルであってもよい。本開示は、用いるマルチウェル器具(例えば、プレートまたはチップ)の種類によって限定されない。いくつかのケースでは、このような器具は、液体(例えば、ウェルに取り込んで、重力のみでは、そのウェルから流出できないようになる液体)を入れたり、またはそのような液体を入れる寸法であったりする複数のウェルを有する。例示的なチップの1つは、WAFERGEN(商標)によって販売されている5184ウェルのSMARTCHIP(商標)(WaferGen Bio-systems,Inc.)である。その他の例示的なチップは、米国特許第8,252,581号、同第7,833,709号及び同第7,547,556号(これらの特許はいずれも、参照により、その全体が本明細書に援用される)に示されており、例えば、チップ、ウェル、熱サイクリング条件及びそれらのチップで使われる関連試薬の教示に関するものが含まれている。その他の例示的なチップとしては、QUANTSTUDIO(商標)リアルタイムPCRシステムで用いられるOPENARRAY(商標)プレート(Applied Biosystemsによって販売されている)が挙げられる。別の例示的なマルチウェル器具は、96ウェルまたは384ウェルプレートである。
【0132】
いくつかのケースでは、反応混合物及びその成分は、例えば、以下にさらに詳細に説明されているように、液体ドロップレット(例えば、水中油型エマルジョンドロップレット)で、本開示の方法の反応物に加えてよい。ドロップレットは、個別反応容器の目的を果たすことができるが、ドロップレット(またはエマルジョンを含むドロップレット)は概して、好適な容器(例えば、チューブ、ウェルまたはマイクロ流体チャネルなど)に入れることになる。ドロップレットで行った増幅反応物は、例えば、蛍光(例えば、核酸検出試薬または標識プローブからの蛍光)に基づき、蛍光ベースのドロップレットソーターを用いてソーティングしてよい。有用な蛍光ベースのドロップレットソーターは、様々なものがあり、例えば、フローサイトメーター、マイクロ流体ベースのドロップレットソーターなどを挙げてよい。いくつかのケースでは、反応混合物及びその成分は、マルチサンプルナノディスペンサーを用いて、本開示の方法の反応物に加えてよい。そのディスペンサーは、複数の反応物を一度に分注できるものであってもよく、その反応物に複数の体積で分注してよい(例えば、35nL、50nL、75nLなどを分注してよい)。
【0133】
いくつかのケースでは、エマルジョンPCRを用いてよい。エマルジョンPCRでは、エマルジョンPCR反応物(例えば、ドロップレット、ドロップレットマイクロリアクターでの反応物)を「油中水型」ミックスで作製して、マイクロメートルサイズの水性区画を数千または数百万個生成してよい。核酸の供給源(例えば、任意に固体支持体、例えばビーズに結合した細胞、核酸ライブラリー)は、乳化前に限界希釈液で混合するか、または直接、エマルジョンミックスに混合する。区画サイズと核酸限界希釈液とを組み合わせたものを用いて、平均で、核酸供給源(例えば、細胞、または試料核酸(複数可)(細胞核酸など)、例えば、固体支持体と組み合わせたRNAまたはDNAであって、その核酸が固体支持体(例えばビーズ)と安定的に会合できるようにしたRNAまたはDNAなど)を1つのみ含む区画を作製する。乳化ステップの際に作られる水性区画のサイズに応じて、同じ容器、例えば、チューブ、ウェルまたはその他の好適な容器内で、個々の増幅反応を1μl当たり最大で3×109 回、同時に行うことができる。エマルジョンにおける区画の平均サイズは、乳化条件に応じて、直径がサブミクロン~100マイクロメートル超の範囲である。
【0134】
上記で示したように、プーリングステップを含むプロトコールでは、プーリングステップは、例えば、ドロップレットなどに由来する単一細胞からdsDNA産物を生成する増幅の後または前に行うことができる。したがって、本明細書に記載されている方法の特定の実施形態では、該当する組織から細胞を得て、単一細胞浮遊液を得る。単一細胞をマルチウェルプレートの1つのウェルまたはその他の好適な容器(マイクロ流体チャンバーもしくはチューブなど)に入れる。細胞を溶解し、反応混合物をその溶解液に、例えば、さらなる精製を行わずに直接加える。さらに別の実施形態では、該当する組織から細胞を得て、単一細胞浮遊液を得る。単一細胞をマルチウェルプレートの1つのウェルまたはその他の好適な容器に入れる。細胞を溶解し、反応ミックスをその溶解液に、例えば、さらなる精製を行わずに直接加える。増幅dsDN試料は、プールしてもしなくてもよく、いくつかのケースでは、その後、シークエンシングを行って、リードを得る。これにより、それぞれの単一細胞で発現する遺伝子を特定可能にしてよい。
【0135】
いくつかのケースでは、本開示の方法は、単一細胞を得るステップを含んでよい。単一細胞を得ることは、いずれかの利便的なプロトコールに従って行ってよい。単一細胞浮遊液は、当該技術分野において知られている標準的な方法を用いて得ることができ、その方法としては、例えば、トリプシンまたはパパインを酵素的に用いて、組織試料において、細胞と連結しているタンパク質を消化すること、または培養液における接着細胞を解放すること、または試料中の細胞を機械的に分離することが挙げられる。単一細胞を個々に処理できるいずれかの好適な反応容器に、単一細胞を入れることができる。例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、またはいずれかの数のウェル(2000個、4000個、6000個または10000個以上など)を持つプレートである。マルチウェルプレートは、チップ及び/または器具の一部であることができる。本開示は、マルチウェルプレートのウェルの数によって限定されない。様々な実施形態では、プレートのウェルの総数は、100~200,000個または5000~10,000個である。別の実施形態では、プレートは、さらに小さいチップを含み、そのチップはそれぞれ、5,000~20,000個のウェルを含む。例えば、正方形チップは、直径0.1mmのナノウェルを125×125個含んでよい。
【0136】
本明細書に記載されている方法の特定の実施形態では、ドロップレットを得て、単一ドロップレットをマルチウェルプレートの1つのウェルまたはその他の好適な容器(マイクロ流体チャンバーまたはチューブなど)にソーティングする。反応混合物をそのドロップレットに、例えば、さらなる精製を行わずに直接加えてよい。増幅dsDN試料は、プールしてもしなくてもよく、いくつかのケースでは、その後にシークエンシングして、リードを得てよい。これにより、単一ドロップレットに含まれる、遺伝子を表す核酸または発現核酸を特定可能にできる。
【0137】
いくつかのケースでは、本開示の方法は、単一ドロップレットを得るステップを含んでよい。ドロップレット細胞を得ることは、いずれかの利便的なプロトコールに従って行ってよく、そのプロトコールとしては、(例えば、蛍光ベースのソーター(例えば、フローサイトメーターまたはマイクロ流体ベースのソーター)を用いて)例えばドロップレットを機械的にソーティングすることが挙げられる。単一ドロップレットを個々に処理できるいずれかの好適な反応容器に、単一ドロップレットを入れることができる。例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレート、またはいずれかの数(2000個、4000個、6000個または10000個以上など)のウェルを持つプレートである。マルチウェルプレートは、チップ及び/または器具の一部であることができる。本開示は、マルチウェルプレートのウェルの数によって限定されない。様々な実施形態では、プレートのウェルの総数は、100~200,000個または5000~10,000個である。別の実施形態では、プレートは、さらに小さいチップを含み、そのチップはそれぞれ、5,000~20,000個のウェルを含む。例えば、正方形チップは、直径0.1mmのナノウェルを125×125個含んでよい。
【0138】
マルチウェルプレートのウェル(例えばナノウェル)は、いずれかの利便的なサイズ、形または容積で作られていてよい。ウェルは、長さ100μm~1mm、幅100μm~1mm、深さ100μm~1mmであってよい。様々な実施形態では、各ナノウェルは、アスペクト比(幅に対する深さの比)が1~4である。一実施形態では、各ナノウェルは、アスペクト比が2である。横断面は、円形、楕円形、卵形、円錐形、長方形、三角形、多面体またはいずれかの他の形であってよい。ウェルのいずれかの所定の深さにおける横断面は、大きさ及び形が様々であってもよい。
【0139】
特定の実施形態では、ウェルは、容積が0.1nl~1μlである。ナノウェルは、容積が、1μl以下(500nl以下など)であってよい。容積は、200nl以下(100nl以下など)であってよい。実施形態では、ナノウェルの容積は100nlである。所望の場合、ナノウェルは、容積に対する表面積の比を増大させるように作製でき、それによって、そのユニットを介した熱伝導を促して、それにより、熱サイクルのランプ時間を短縮できる。各ウェル(例えばナノウェル)の穴は、様々な形状を取っていてよい。例えば、ウェルの穴は、別々の隣接する区画を形成するように、直線または曲線状の壁によって隔てられていても、内側の環状区画と外側の環状区画とを形成するように、環状の壁で隔てられていてもよい。
【0140】
1つのウェルに単一細胞または単一ドロップレットが入るように、ウェルを設計できる。個々の細胞またはドロップレットは、いずれかの他の好適な容器、例えば、マイクロ流体チャンバー、ドロップレット、ナノウェル、チューブなどで分離してよい。単一細胞またはドロップレットを操作するいずれかの利便的な方法を用いてよく、そのような方法としては、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、ロボット装置インジェクション、自然流下またはマイクロ操作、及び半自動セルピッカー(例えば、Stoelting Co.のQuixell(商標)細胞移動システム)の使用などが挙げられる。いくつかのケースでは、ポアソン統計に従って(例えば、ウェルの約10%、20%、30%または40%以上が、単一細胞またはドロップレットを含むように(この値は、容器に分注する流体の所定の単位体積における細胞またはドロップレットの数を調整することによって定義できる))、単一細胞またはドロップレットをプレートのウェルに入れることができる。いくつかのケースでは、好適な反応容器は、ドロップレット(例えばマイクロドロップレット)を含む。個々の細胞またはドロップレットは、例えば、顕微鏡による観察によって検出可能な特徴(位置、形態、レポーター遺伝子の存在(例えば発現)、結合抗体(例えば、抗体標識)の存在、FISH、RNA(例えば、細胞内RNA標識)の存在など)またはqPCRに基づき、個別に選択できる。
【0141】
例えば上記のように、単一細胞を得た後、細胞を溶解することによって、DNAまたはRNA(例えばmRNA)を細胞から放出できる。溶解は、例えば、細胞を加熱もしくは凍結融解することによって、または洗剤もしくはその他の化学的方法を用いることによって、またはこれらを組み合わせることによって行うことができる。しかしながら、いずれかの好適な溶解方法を用いることができる。いくつかのケースでは、有益なことには、温和な溶解手順を用いて、核クロマチンの放出を防ぐことによって、cDNAライブラリーのゲノムコンタミネーションを回避するとともに、mRNAの分解を最小限にできる。例えば、細胞を溶解するには、細胞を72℃で2分間、Tween-20の存在下で加熱すれば十分であるとともに、核クロマチンからの検出可能なゲノムコンタミネーションが見られない。あるいは、細胞は、65℃まで10分間、水において(Esumi et al.,Neurosci Res 60(4):439-51(2008))、または70℃で90秒間、0.5%のNP-40を添加したPCRバッファーII(Applied Biosystems)において加熱でき(Kurimoto et al.,Nucleic Acid Res 34(5):e42(2006))、あるいは、溶解は、プロテアーゼ(Proteinase Kなど)によって、またはカオトロピック塩(グアニジンイソチオシアネートなど)を用いることによって行うことができる(米国特許出願公開第2007/0281313号)。いくつかのケースでは、溶解手順は、例えば、RNaseを用いる場合を含め、単一細胞から優先的にDNAを濃縮してよい。
【0142】
本明細書に記載されている方法において、テンプレート核酸から単一産物核酸を合成することは、細胞溶解液で直接行って、逆転写用の反応ミックスを細胞溶解液に直接加えるようにできる。あるいは、核酸テンプレートを細胞から放出後、核酸テンプレートを精製できる。これにより、特定のプロトコールでは望ましくないことがある、核酸種のコンタミネーション(例えば、ミトコンドリア及びリボソーム核酸によるコンタミネーションを含む)を低減することを助けることができる。所望の核酸精製(例えば、DNA精製、mRNA精製)は、当該技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、所望の核酸を固相に結合することによって行うことができる。広く用いられている精製方法としては、常磁性ビーズ(例えばDynabeads)が挙げられる。あるいは、特定の夾雑物(リボソームRNAなど)をアフィニティー精製、夾雑核酸の分解(例えば、RiboGone(商標)(Takara Bio USA Inc.,Mountain View, CA)と、米国特許第9,428,794号及び米国特許出願公開第2015/0225773A1号(これらの開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されている方法と用いる、これらを組み合わせた方法などを用いて選択的に除去できる。
【0143】
所望に応じて、所定の単一細胞またはドロップレットワークフローは、プーリングステップを含んでよく、このステップでは、例えば、合成単一産物核酸または合成dsDNAで構成された核酸産物組成物を、1つ以上の追加の細胞またはドロップレットから得た核酸産物組成物とともに組み合わせたり、またはプールしたりする。異なる細胞またはドロップレットから作製した異なる核酸産物組成物であって、このような実施形態において、組み合わせたり、またはプールしたりする核酸産物組成物の数は、様々であってよく、その数は、いくつかのケースでは、2~50個(3~25個(4~20個を含む)、または10,000個以上など)の範囲である。
【0144】
ライブラリー
特定の実施形態では、本開示の方法を用いて、該当する増幅核酸のライブラリー(例えば、増幅dsDNAライブラリー、増幅cDNAライブラリーなど)を作製してよい。このようなライブラリーは、多種多様な用途で有用であることがある。
【0145】
いくつかのケースでは、本開示の方法を用いて、該当するシークエンシングプラットフォーム(例えば、Illumina(登録商標)、Ion Torrent(商標)、Pacific Biosciences、Life Technologies(商標)、Rocheなどによって供給されているシークエンシングプラットフォーム)でのダウンストリームシークエンシング用に、増幅核酸のライブラリーを作製してよい。例えば、記載されている方法を行って、該当する核酸試料における複数の異なる核酸を増幅して、その複数の異なる核酸の少なくとも一部に対応する産物dsDNAを作製するようにしてよい。続いて、いずれかの利便的な方策に従って、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトをこれらの増幅産物dsDNAまたはその誘導体の末端に結合してよい。アダプターコンストラクトの結合後、これらの核酸種をシークエンシングのために、該当するシークエンシングプラットフォームに直接投入してよく、あるいは、シークエンシングの前に、増幅核酸をさらに処理してよい。
【0146】
特定の実施形態によれば、本開示の方法を用いて、Illumina(登録商標)ベースのシークエンシングシステムでのダウンストリームシークエンシング用に、ポリアデニル化RNAまたは非ポリアデニル化RNAに対応する増幅cDNAライブラリーを作製する。一実施形態では、本明細書に記載されているようなテンプレートスイッチポリマー化と増幅反応とにおいて、マイクロRNA(例えば、人工的にポリアデニル化したマイクロRNAを含む)をテンプレートとして使用する。増幅産物核酸は、アダプターコンストラクトの結合と、その後のシークエンシングとで用いてよい。このような実施形態では、ライブラリーにおける、異なる配列の別個の核酸の数は、様々であってよく、いくつかのケースでは、2~100,000個(例えば、30,000~100,000個)の範囲(50~25,000個、100~10,000個または150~5,000個など、例えば、200~1000個)であってよい。
【0147】
いくつかのケースでは、単一細胞から得た複数のテンプレート核酸から、増幅核酸を作製して、単一細胞増幅核酸ライブラリーを作製する。続いて、このような単一細胞ライブラリーをさらなるダウンストリームアプリケーション(シークエンシングアプリケーションなど)で用いてよい。本明細書で使用する場合、「単一細胞」とは、1つの細胞を指す。テンプレートRNAの供給源として及び/または増幅核酸の単一細胞ライブラリーの作製に有用な単一細胞は、該当する組織、または生検標本、血液試料もしくは細胞培養液から得ることができる。加えて、特定の器官、組織、腫瘍、新生物などの細胞を得て、本明細書に記載されている方法で用いることができる。さらに、原核生物または単細胞の真核生物(細菌または酵母を含む)の集団のようないずれかの集団の細胞を本開示の方法で用いることができる。
【0148】
増幅dsDNA産物の単一細胞ライブラリーか複数細胞ライブラリーを問わず、本明細書に記載されている方法に従って作製したライブラリーは、様々な方法でさらに用いてよい。例えば、いくつかのケースでは、該当するライブラリーの個々の成分を、例えば1つ以上のベクターにクローニングして、ベクターライブラリー(例えば、発現ベクターライブラリー、シークエンシングライブラリーなどを含む)を作製してよい。いくつかのケースでは、ライブラリーは、全体またはその相当部分をシークエンシングプロトコール(例えば、次世代シークエンシング(NGS)プロトコールを含む)で直接用いてよい。
【0149】
特定の態様では、本開示の方法は、NGSライブラリーに対してNGSプロトコールを行うことをさらに含む。このプロトコールは、いずれかの好適なNGSシークエンシングプラットフォームで行ってよい。該当するNGSシークエンシングプラットフォームとしては、Illumina(登録商標)によって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、HiSeq(商標)、MiSeq(商標)及び/またはNextSeq(商標)シークエンシングシステム)、Ion Torrent(商標)によって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、Ion PGM(商標)及び/またはIon Proton(商標)シークエンシングシステム)、Pacific Biosciencesによって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、PACBIO RS II Sequelシークエンシングシステム)、Life Technologies(商標)によって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、SOLiDシークエンシングシステム)、Rocheによって供給されているシークエンシングプラットフォーム(例えば、454 GS FLX+及び/またはGS Juniorシークエンシングシステム)、あるいは該当するいずれかの他のシークエンシングプラットフォームが挙げられるが、これらに限らない。NGSプロトコールは、用いる具体的なNGSシークエンシングシステムに応じて変化することになる。NGSライブラリーをシークエンシングする詳細なプロトコール(例えば、さらなる増幅(例えば、固相増幅)、アンプリコンのシークエンシング、及びシークエンシングデータの解析を含んでよい)は、用いるNGSシークエンシングシステムのメーカーから入手可能である。
【0150】
組成物
本発明の態様は、例えば、上記のような組成物も含む。本開示の組成物としては、例えば、本開示の方法に関して上記した反応混合物成分のいずれかのうちの1つ以上を挙げてよい。例えば、本開示の組成物は、テンプレート核酸(例えば、テンプレートRNA、テンプレートDNAなど)、増幅ポリメラーゼ(例えば、耐熱性ポリメラーゼなど)、逆転写酵素(例えば、テンプレートスイッチングできる逆転写酵素など)、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド、dNTP、塩、金属補因子、1つ以上のヌクレアーゼインヒビター(例えばRNaseインヒビター)、1つ以上の酵素安定化成分(例えばDTT)、またはいずれかの他の所望の反応混合物成分(複数可)の1つ以上を含んでよく、その際、核酸試薬、例えば、プライマー、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドなどは、上記のRTと増幅反応とで直接用いない1つ以上の核酸ドメインを含んでよく、そのドメインとしては、例えば、非テンプレートドメイン(例えば、プライマー結合ドメイン、バーコードドメイン、制限酵素認識部位ドメイン、BUMIドメインなど)が挙げられるが、これらに限らない。
【0151】
本開示の組成物は、いずれかの好適な環境に存在してよい。一実施形態によれば、本開示の組成物は、反応チューブ(例えば、0.2mLチューブ、0.6mLチューブ、1.5mLチューブなど)、またはウェル、またはマイクロ流体チャンバー、またはドロップレット、またはその他の好適な容器に入っている。特定の態様では、本開示の組成物は、2つ以上の(例えば複数の)反応チューブまたはウェル(例えば、96ウェルプレート、マルチウェルプレートのようなプレート(例えば、約1000個、5000個もしくは10,000個以上のウェルを含む))に入っている。このチューブ及び/またはプレートは、いずれかの好適な材料、例えば、ポリプロピレンなど、PDMS、またはアルミニウムで作られていてよい。この容器は、容器の壁に核酸が吸着することを低減するように処理してもよい。特定の態様では、本開示の組成物が入っているチューブ及び/またはプレートは、(例えば、ヒートブロック、ウォーターバス、サーモサイクラー及び/または類似のものに入れたときに)本開示の組成物に効率的に熱を伝導して、例えば、特定の酵素反応を起こすために必要とされるように、短期間で、組成物の温度を変化させることができるようにする。特定の実施形態によれば、本開示の組成物は、薄肉ポリプロピレンチューブ、または薄肉ポリプロピレンウェルまたは熱コンダクタンスが高い材料(アルミニウムなど)を有するプレートに入っている。いくつかのケースでは、本開示の組成物は、ドロップレットに入っていてよい。特定の実施形態では、固体表面またはビーズで反応を行うことが利便的なことがあり、このケースでは、当該技術分野において知られている方法(ビオチン結合または共有結合など)によって、単一産物核酸プライマー及び/またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチド、あるいは1つ以上の他のプライマーを固体支持体またはビーズに結合して、その支持体で、反応を進行させてよい。あるいは、例えば、Macosko,EZ et.al,Cell 161,1202-1214,May 21,2015)に記載されているように、オリゴを固体支持体上で直接合成してよい。
【0152】
本開示の組成物に適する他の環境としては、例えば、マイクロ流体チップ(例えば、「ラボオンチップデバイス」、例えば、チャネル及び入口を備えるマイクロ流体デバイス)が挙げられる。本開示の組成物は、その組成物を所望の温度にするように構成された器具、例えば、温度制御式ウォーターバス、ヒートブロック、ヒートブロックアダプターなどに入れてよい。組成物を所望の温度にするように構成された器具は、組成物を一連の異なる所望の温度に、それぞれ好適な期間にわたって維持するように構成されていてよい(例えば、この器具は、サーモサイクラーであってよい)。
【0153】
キット
本開示の態様は、キットも含む。このキットは、例えば、本開示の方法に関して上記で説明した反応混合物成分のいずれかのうちの1つ以上を含んでよい。例えば、このキットは、テンプレート核酸、増幅ポリメラーゼ(例えば、耐熱性ポリメラーゼなど)、逆転写酵素(例えば、テンプレートスイッチングできる逆転写酵素など)、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチド、単一産物核酸プライマー、dNTP、塩、金属補因子、1つ以上のヌクレアーゼインヒビター(例えば、RNaseインヒビター及び/またはDNaseインヒビター)、1つ以上の分子クラウンディング剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)、1つ以上の酵素安定化成分(例えば、DTT)、あるいはいずれかの他の所望のキット成分(複数可)を含んでよい。
【0154】
いくつかのケースでは、本開示のキットの成分は、「カクテル」として提供してもよく、カクテルとは、本明細書で使用する場合、異なるものであるが、類似のものである成分を2つ以上、1つの容器で集めたりまたは組み合わせたりしたものを指す。本開示のキットにおける有用なカクテルとしては、例えば、「プライマーカクテル」が挙げられるが、これに限られず、このようなカクテルの組成は様々であってよく、例えば、2つ以上のプライマー(例えば、単一産物核酸プライマー(例えばCDSプライマー)とテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを含む)のカクテルを挙げてよい。本開示のキットにおける有用なカクテルとしては、例えば、「ポリメラーゼカクテル」も挙げてよいが、これに限られず、このようなカクテルの組成は様々であってよく、例えば、2つ以上のポリメラーゼ(例えば、増幅ポリメラーゼと逆転写酵素とを含む)のカクテルを挙げてよい。
【0155】
特定の実施形態では、キットは、該当する核酸供給源からDNAまたはRNAを単離するための試薬を含む。この試薬は、単一細胞、培養細胞、組織、器官または生物を含め、様々なDNAまたはRNA供給源から核酸試料を単離するために適していてよい。本開示のキットは、固定した細胞、組織または器官、例えば、ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)組織から核酸試料を単離するための試薬を含んでよい。このようなキットは、1つ以上の脱パラフィン剤、核酸を脱架橋するために適する1つ以上の薬剤及び/または類似のものを含んでよい。
【0156】
本開示のキットの成分は、別々の容器に入っていてよく、あるいは、複数の成分が、1つの容器に入っていてもよい。例えば、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとは、同じチューブに入っていても、異なるチューブに入っていてもよい。いくつかのケースでは、逆転写酵素と増幅ポリメラーゼとは、同じチューブに入っていても、異なるチューブに入っていてもよい。いくつかのケースでは、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーと増幅ポリメラーゼとのうちの1つ以上が、同じチューブに入っていても、異なるチューブに入っていてもよい。いくつかのケースでは、逆転写酵素、増幅ポリメラーゼ、単一産物核酸プライマー及びテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが、同じチューブに入っていても、個々のチューブに入っていてもよく、あるいは、これらを組み合わせたものを同じチューブで混ぜ合わせてもよい。いくつかのケースでは、デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)は、逆転写酵素、増幅ポリメラーゼ、単一産物核酸プライマーまたはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと同じチューブに入っていても、逆転写酵素、増幅ポリメラーゼ、単一産物核酸プライマー及び/またはテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドをいくつか組み合わせたものを含むチューブに入っていてもよい。
【0157】
上記の成分に加えて、本開示のキットは、そのキットの成分を使用して、例えば、上記のような本開示の方法を実施するための説明をさらに含んでよい。加えて、例えば、キットのプライマー及び/またはオリゴヌクレオチドが、BUMIドメインを含む場合には、そのキットは、例えば、コード付きBUMIドメインのデコード、ユニークな分子種の計数などを含め、結果解析のためのプログラミングをさらに含んでよい。この説明及び/または解析プログラミングは概して、好適な記録媒体に記録されている。この説明及び/またはプログラミングは、紙またはプラスチックなどの基材に印刷してもよい。したがって、説明は、キットに、添付文書、キットまたはその成分の容器のラベル(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに付随するラベル)などとして存在してよい。別の実施形態では、説明は、好適なコンピューター可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、ハードディスクドライブ(HDD)などにある電子記憶データファイルとして存在してよい。さらに別の実施形態では、実際の説明は、キットには入っていないが、遠隔の供給源から、例えばインターネットを介して、説明を入手する手段が提供されている。この実施形態の例は、説明を見ることができたり、及び/または説明をダウンロードできたりするウェブアドレスを含むキットである。説明に関しては、説明を入手するこの手段は、好適な基材に記録されている。
【0158】
有用性
本開示の方法は、テンプレート核酸を含む出発試料に由来するdsDNA産物を増幅する必要がある用途を含め、様々な用途で有用である。本開示の方法は、増幅dsDNA産物を得るには、ユーザーによる投入と「ハンズオンタイム」とが最小限であることが望ましい方法でさらに有用である。本開示の方法の短縮型プロトコール(すなわち、上記のように、1つまたは2つのステップしか必要としない)により、ユーザーが反応に関与することが限定され、コンタミネーションの可能性が低下する。
【0159】
本開示の方法はさらに、反応効率及び/または特異性が望まれる場合に用いてよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている増幅反応では、増幅を通じて単一産物核酸を合成した際の1セットのプライマー、すなわち、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと単一産物核酸プライマーとしか使用しない。このような本開示の反応では、プライマーの競合が低減され、いくつかのケースでは、反応効率及び/または特異性を向上させることができる。
【0160】
本開示の方法の用途としては、特定の核酸体、例えば、病原体のRNA(例えば、ウイルスRNA、細菌RNA、真菌RNA、寄生虫RNAなど)、病原体のDNA(例えば、ウイルスDNA、細菌DNA、真菌DNA、寄生虫DNAなど)、マイクロRNA、mRNA、疾患関連のDNAもしくはゲノム変異、疾患関連のRNA及び/または変異転写産物の検出が望まれる医学用途及び研究用途が挙げられる。本開示の方法の用途としては、核酸集団の全体について調べる医学用途及び研究用途(例えば、核酸の多様性を調べたり、核酸の発現レベルを調べたり、核酸のコピー数を調べたりする用途などを含む)も挙げられる。本開示の方法は、クローニング、発現研究などを含む生物工学的用途でも有用である。
【0161】
このような用途は、基礎研究及び診断(例えば臨床診断)の分野に存在し、その用途としては、該当する核酸のシークエンシングレディーライブラリーの作製、サプレッションPCR、クローニング、検出、ライブラリーの増幅、アレイハイブリダイゼーション、全ゲノム増幅及び/または類似のものが挙げられるが、これらに限らない。シークエンシングレディーライブラリーは、いずれかの利便的なシークエンシングプラットフォーム(Illumina(登録商標)のHiSeq(商標)、MiSeq(商標)及びGenome Analyzer(商標)シークエンシングシステム、Ion Torrent(商標)のIon PGM(商標)及びIon Proton(商標)シークエンシングシステム、Pacific BiosciencesのPACBIO RS IIまたはSequelシークエンシングシステム、Life Technologies(商標)のSOLiDシークエンシングシステム、Rocheの454 GS FLX+及びGS Juniorシークエンシングシステムまたはいずれかの他の利便的なシークエンシングプラットフォームを含む)を用いて、ライブラリーメンバーをシークエンシングできるようにするアダプター配列を含む。本開示の方法は、いずれかの該当するDNAまたはRNA出発物質、例えば、ゲノムDNA、mRNA、非ポリアデニル化RNA(例えばマイクロRNA)に対応するシークエンシングレディーライブラリーを作製するために有用である。例えば、本開示の方法を用いて、マイクロRNA、低分子RNA、siRNA及び/または該当するいずれかの他のタイプの非ポリアデニル化RNAを含む非ポリアデニル化RNAから、シークエンシングレディーcDNAライブラリーを作製してよい。
【0162】
下記の実施例は、例示として示されており、限定するものとして示されているものではない。
【実施例】
【0163】
実施例1:テンプレートスイッチング及び増幅によるワンステップRT-PCR
現時点のRT-PCRアッセイでは、スリーステッププロトコールが用いられている。第1のステップは、二次構造を取り除いて、逆転写オリゴをテンプレートにアニーリングする熱変性ステップである。第2のステップでは、逆転写(RT)反応用に試薬を加え、このステップによって、第1鎖相補的DNA(cDNA)を作製する(すなわち、「第1鎖cDNAの合成」)。第3のステップでは、PCR増幅用に試薬を加え、このステップにより、二本鎖cDNA及び増幅コピーを作製する。
【0164】
この実施例では、例えば上記のスリーステップと比較して、テンプレートスイッチングを使用し、最終的に増幅二本鎖cDNA産物を作製する短縮型RT-PCRプロトコールについて説明されている。参考のために、テンプレートスイッチングを用いる典型的なスリーステップRT-PCRプロトコールの熱サイクリングステップと反応成分とを下記の表1に示す。
【0165】
【0166】
説明されている短縮プロトコールでは、RTオリゴヌクレオチドとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチド(TSO)とをPCR増幅のためのプライマーとして使用し、増幅プライマーの必要性が排除されている。すなわち、ツーステップテンプレートスイッチングRT-PCRプロトコールを開発したが、その熱サイクリングステップについては、概ね下記に説明されている。
1.72℃で3分予熱
2.RT-PCR:42℃で90分、95℃で1分、(98℃で10秒、65℃で15秒、68℃で3分)を17~18サイクル
【0167】
ワンステップテンプレートスイッチングRT-PCRプロトコールも開発したが、その熱サイクリングステップは概ね下記に説明されている。
1.42℃で90分、95℃で1分、(98℃で10秒、65℃で15秒、68℃で3分)を17~18サイクル
【0168】
この実施例では、逆転写(RT)の際に、42℃において不活性であるホットスタートDNA増幅ポリメラーゼを用いた。したがって、上記のように、95℃まで1分加熱することによって、(例えば、DNAポリメラーゼに存在する不活性化抗体を除去することによって)増幅のために、DNAポリメラーゼを活性化する。反応物を95℃まで加熱することは、第1鎖の合成後に逆転写酵素を不活化する役割も果たす。
【0169】
この短縮プロトコールでは、反応ミックスに最初に加えるもの以外の余分なプライマー、バッファー(複数可)またはポリメラーゼ(複数可)を反応混合物に加える必要がない(すなわち、反応中(例えば、反応の開始時と、最終産物が作られる前の間)に、追加の成分を加える必要がない)。また、この実施例で用いたDNA増幅ポリメラーゼは、耐熱性ポリメラーゼであった。下記の短縮プロトコール(「ツーステッププロトコール」(表2)と「ワンステッププロトコール」(表3))と、関連する反応成分とを用いて、試験テンプレートmRNAから二本鎖cDNAを増幅し、上記に示した3ステッププロトコールを用いて同じテンプレートmRNAを増幅した場合と比較した。
【0170】
【0171】
【0172】
スリーステッププロトコール(
図12)、ツーステッププロトコール(
図13)及びワンステッププロトコール(
図14)の増幅二本鎖cDNA産物に関して、35~10380塩基対(bp)の範囲における相対度数単位(FU)で表した配列長分布が示されている。これらの結果から、短縮プロトコールでは、それらよりも従来的なスリーステッププロトコールと比較したところ、増幅二本鎖cDNAの産生でいずれの問題も見られないことが示されている。
【0173】
対応する各プロトコール(スリーステップ、ツーステップ及びワンステップ)から得られた増幅二本鎖cDNA産物に対して、バイオアナライザー、CLC Bioバイオインフォマティクス及びStarアライナーによって、従来の方法に従って、さらに解析を行った。これらの解析の結果は、下記の表4に示されている。
【0174】
【0175】
バイオアナライザー解析によって、短縮プロトコールから作製した増幅二本鎖cDNA産物は、サイズ、濃度及び収量の特徴が、それよりも長い3ステッププロトコールを用いて作製した産物cDNAと類似していることが示された。さらに、シークエンシングとアラインメント解析とによって、短縮プロトコールで作製した増幅産物cDNAでは少なくとも、それよりも長いプロトコールで作製した産物と同様の成果が見られたことが示された。
【0176】
実施例2:ビーズでのテンプレートスイッチング
特定の逆転写法では、例えば、ドロップレットまたはマイクロウェルで行ったように、ユーザーは、固体支持体(1つの固体支持体または複数の支持体など)、例えばビーズを用いて、RNA試料のキャプチャーとバーコーディングとを促してよい。広くはmRNA、または目的の特異的RNAとハイブリダイズするオリゴ-dTまたは遺伝子特異的なプライマーが結合しているビーズを用いることが多い。その手順は、結合していない(すなわち、固体支持体、例えばビーズに結合していない)別のテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドにテンプレートスイッチングするように、逆転写を行う構成にしてよい。
【0177】
ここで示すものは、ビーズに結合されているテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドを用いて、ビーズでテンプレートスイッチングを行うプロトコールである。例えば、
図15に示されているように、プライマー結合部位とビーズバーコードとを有するテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが、ビーズに結合している。このテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、ビーズに結合している末端の反対側の末端に、トリヌクレオチド(GGG)を含む。この実施例では、ポリdTプライマーを用いて、ポリAを含むmRNAから逆転写し、逆転写が完了したら、採用したRTのターミナルトランスフェラーゼ活性によって、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドの遊離末端のトリヌクレオチドと相補的である非テンプレートヌクレオチド(この実施例では、
図15に示されているように、「CCC」)が優先的に付加されることが示されている。非テンプレートヌクレオチドをテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドのトリヌクレオチド末端にハイブリダイゼーション後、テンプレートスイッチングが行われ、それにより、ビーズバーコードとプライマー結合部位との配列が逆転写鎖に付加される。
【0178】
続いて、その逆転写鎖は、ビーズに結合しているテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドと引き続きハイブリダイゼーションすることにより、ビーズと会合する。この際、例えば、ビーズを単離及び/またはソーティングすることによって、逆転写鎖をキャプチャーするために、ビーズを用いても用いなくてもよい。増幅、例えば、上記のような長いプロトコールまたは短縮プロトコールを用いる増幅を利用して、ビーズに結合しているテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドのビーズバーコードとプライマー結合部位との配列を含む増幅最終産物の二本鎖cDNAを作製してよい。
【0179】
実施例3:TSOとCDSプライマーが存在するときには、第1鎖cDNAの合成後の増幅の際に、PCRプライマーの付加は不要
この実施例では、TSO及びCDSオリゴが、PCR増幅プライマーとして機能できることが示されている。この実験では、SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Takara Bio USA,Inc.)を下記のように使用した。
【0180】
第1鎖cDNAの合成:
1.19μlの10×Lysis Bufferと1μlのRNase Inhibitorとを混合することによって、10×Reaction Bufferを調製した。
2.1μlの10×Reaction Buffer、1μlの3’SMART-Seq CDS Primer IIA、2μlの5pg/ul Mouse Brain RNA(MBR)及び8.5μlのNuclease-Free Waterを0.2mlのPCRチューブで混合した。
3.このチューブを72℃で3分インキュベートしてから、氷上に2分置いた。
4.4μlの5×Ultra Low First-Strand Buffer、1μlのSMART-Seq v4 Oligonucleotide、0.5μlのRNase Inhibitor(40U/μl)及び2μlのSMARTScribe Reverse Transcriptaseをチューブに加えた(総体積:20μl)。
5.チューブをサーマルサイクラーに入れて、下記のプログラムを実行した。
a.42℃、90分
b.70℃、10分
c.4℃、恒久的
【0181】
第1鎖cDNAを任意に精製することを用いる場合には、その精製は、下記のように行った。
1.20μlのAMPure XPビーズを2つのチューブに加えた。
2.それらのチューブをボルテックスによって混合し、室温で8分インキュベートした。
3.これらのチューブを磁気分離装置に数分置いてから、上清を破棄した。
4.磁気分離装置において、チューブに200μlの80%エタノールを加えてから、慎重にピペッティングして、破棄した。
5.ステップ4を1回繰り返した。
6.ビーズが乾燥した後、cDNAを20μlのElution Buffer中に溶出した。
【0182】
任意のcDNA増幅を用いる場合には、その増幅は、下記のように行った。
1.25μlの2×SeqAmp PCR Buffer、1μlのPCR Primer IIA、1μlのSeqAmp DNA Polymerase及び3μlのNuclease-Free Waterを第1鎖cDNAに加えた(総体積:50μl)。
2.チューブをサーマルサイクラーに入れて、下記のプログラムを実行した。
a.95℃、1分
b.98℃、10秒
c.65℃、30秒
d.68℃、3分
b~dを17サイクル
e.72℃、10分
f.4℃、恒久的
【0183】
増幅cDNAの精製
1.50μlのAMPure XPビーズをチューブに加えた。
2.チューブをボルテックスによって混合し、室温で8分インキュベートした。
3.チューブを磁気分離装置に数分置いてから、上清を破棄した。
4.磁気分離装置において、チューブに200μlの80%エタノールを加えてから、慎重にピペッティングして、破棄した。
5.ステップ4を1回繰り返した。
6.ビーズが乾燥した後、cDNAを17μlのElution Buffer中に溶出した。
【0184】
図16に示されているように、バイオアナライザー波形に示されているように、PCRプライマー(プライマーIIA)を加えず、第1鎖cDNA合成反応物(すなわち、RT反応物)の精製も行わなくても(
図16、左、「-プライマーIIA」)、例えば、ポジティブコントロール(
図16、左、「+プライマーIIA」)と比べて、適切なサイズである産物が検出された。対照的に、第1鎖cDNA合成反応物を精製して、TSO及びCDSオリゴを除去したところ、PCRプライマーを加えた場合(
図16、右、「+プライマーIIA」)を除き、産物が生成されなかった(
図16、右、「-プライマーIIA」)。これらの代表的な波形によって、PCRプライマーを反応に含めなくても、TSO及びCDSオリゴの存在下で、増幅を行うことができることが示されている。しかしながら、精製によって、TSO及びCDSオリゴを反応物から除去すると、増幅産物を生成するには、IIA増幅プライマーを加える必要がある。
【0185】
下記の表5には、これらの成果物の定量結果が示されている。表5の一番右の列に示されているように、精製して、TSO及びCDSオリゴを除去した後、PCRプライマーIIAを加えなかったときには、cDNA産物は形成されなかった。しかしながら、RT後に精製を行わずに、TSO及びCDSオリゴを反応混合物に残したときには、PCRプライマーIIAの存在下(+)と非存在下(-)とで作られた増幅産物は、かなり近かった。
【0186】
【0187】
この実施例では、TSO及びCDSプライマーが反応混合物に存在するときには、第1鎖cDNAの合成後の増幅に、PCRプライマーが不要であることが示されている。示されている結果から、PCRプライマーの非存在下で生成される増幅産物は、PCRプライマーを加えたときに生成される増幅産物と同等であることも示されている。
【0188】
実施例4:複数ステップのRT-PCR手順を用いるワークフローとワンステップRT-PCR手順を用いるワークフローとの比較
図17には、シークエンシングライブラリーを調製する際のSMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとのワークフローの概略的な比較が示されている。SMART-Seq v4の方法(左)を修正して、ハンズオンタイムが最小限であるハイスループットな簡易化ワークフロー(SMART-Seq HT、右)を作成した。
図17で見て取れるように、SMART-Seq HTワークフローにおけるハンズオンタイムの短縮の大半は、ワンステップRT-PCR手順を含めたことによるものである。
【0189】
ここに示されている実施例では、本開示の異なるRTPCR方法の比較が示されている。この実施例では、SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Takara Bio USA,Inc.)を使用した。
【0190】
スリーステップ手順
予熱:
1.19μlの10×Lysis Bufferと1μlのRNase Inhibitorとを混合することによって、10×Reaction Bufferを調製した。
2.1μlの10×Reaction Buffer、1μlの3’SMART-Seq CDS Primer IIA、2μlの5pg/ul Mouse Brain RNA(MBR)及び8.5μlのNuclease-Free Waterを0.2mlのPCRチューブで混合した。
3.そのチューブを72℃で3分インキュベートしてから、氷上に2分置いた。
第1鎖cDNAの合成:
1.4μlの5X Ultra Low First-Strand Buffer、1μlのSMART-Seq v4 Oligonucleotide、0.5μlのRNase Inhibitor(40U/μl)及び2μlのSMARTScribe Reverse Transcriptaseを予熱済みチューブに加えた(総体積:20μl)。
2.チューブをサーマルサイクラーに入れて、下記のプログラムを実行した。
a.42℃、90分
b.70℃、10分
c.4℃、恒久的
cDNAの増幅:
1.25μlの2×SeqAmp PCR Buffer、1μlのPCRプライマーIIA、1μlのSeqAmp DNA Polymerase及び3μlのNuclease-Free Waterを第1鎖cDNAに加えた(総体積:50μl)。
2.チューブをサーマルサイクラーに入れて、下記のプログラムを実行した。
a.95℃、1分
b.98℃、10秒
c.65℃、30秒
d.68℃、3分
b~dを17サイクル
e.72℃、10分
f.4℃、恒久的
【0191】
ツーステップ手順
予熱:
1.19μlの10×Lysis Bufferと1μlのRNase Inhibitorとを混合することによって、10×Reaction Bufferを調製した。
2.1μlの10×Reaction Buffer、1μlの3’SMART-Seq CDS Primer IIA、2μlの5pg/ul Mouse Brain RNA(MBR)及び8.5μlのNuclease-Free Waterを0.2mlのPCRチューブで混合した。
3.チューブを72℃で3分インキュベートしてから、氷上に2分置いた。
第1鎖cDNAの合成反応(及びプログラムにおける適用増幅):
1.4μlの5X Ultra Low First-Strand Buffer、1μlのSMART-Seq v4 Oligonucleotide、0.5μlのRNase Inhibitor(40U/μl)、2μlのSMARTScribe Reverse Transcriptase、4μlの2×SeqAmp PCR Buffer及び1μlのSeqAmp DNA Polymeraseをチューブに加えた(総体積:25μl)。
a.42℃、90分
b.95℃、1分
c.98℃、10秒
d.65℃、30秒
e.68℃、3分
c~eを17サイクル
f.72℃、10分
g.4℃、恒久的
【0192】
ワンステップ手順
予熱ステップを行った場合と行わなかった場合との第1鎖cDNAの合成(及びプログラムにおける適用増幅):
1.19μlの10×Lysis Bufferと1μlのRNase Inhibitorとを混合することによって、10×Reaction Bufferを調製した。
2.1μlの10×Reaction Buffer、1μlの3’SMART-Seq CDS Primer IIA、2μlの5pg/ul Mouse Brain RNA(MBR)及び8.5μlのNuclease-Free Waterを0.2mlのPCRチューブで混合した。
3.4μlの5X Ultra Low First-Strand Buffer、1μlのSMART-Seq v4 Oligonucleotide、0.5μlのRNase Inhibitor(40U/μl)、2μlのSMARTScribe Reverse Transcriptase、4μlの2×SeqAmp PCR Buffer及び1μlのSeqAmp DNA Polymeraseをチューブに加えた(総体積:25μl)。
a.50℃、60℃もしくはは70℃、1分、または予熱なし
b.42℃、90分
c.95℃、1分
d.98℃、10秒
e.65℃、30秒
f.68℃、3分
d~fを17サイクル
g.72℃、10分
h.4℃、恒久的
【0193】
増幅cDNAの精製:
1.50μl(スリーステップ)または25μl(ツーステップ及びワンステップ)のAMPure XPビーズをチューブに加えた。
2.チューブをボルテックスによって混合し、室温で8分インキュベートした。
3.チューブを磁気分離装置に数分置いてから、上清を破棄した。
4.磁気分離装置において、200μlの80%エタノールをチューブに加えてから、慎重にピペッティングして、破棄した。
5.ステップ4を1回繰り返した。
6.ビーズが乾燥した後、cDNAを17μlのElution Buffer中に溶出した。
【0194】
表6に示されているように、予熱処理を行わなかったスリーステップ、ツーステップ、ワンステップRTPCRと、50℃で予熱処理を行ったワンステップRTPCRとではいずれも、同程度の数の転写物の同定、最小限のrRNA、高いピアソン相関、及び高いマッピング率が見られた。この実施例では、60℃及び70℃で予熱処理を行ったワンステップRTPCRプロトコールと、60℃で予熱処理を行って、氷上で低温ショックを行ったワンステップRT PCRプロトコールとではいずれも、成果が得られなかった。50℃で予熱処理を行って、氷上で低温ショックを行ったワンステッププロトコールでは、(示されているように、)産物が得られたが、この産物は、シークエンシングされなかった(「NS」)。これらの結果から、スリーステップ、ツーステップ及びワンステップ(予熱なし、または50℃で予熱)の手順ではいずれも、同程度の産物核酸が得られることが示されている。
【0195】
【0196】
スリーステップ、ツーステップ及びワンステップの手順を用いて作製した産物核酸を遺伝子本体のカバレッジとバイオアナライザー試料の特徴とについて、さらに解析した。このさらなる解析の結果は、
図18に示されている。
図18(上図)で見て取れるように、遺伝子本体カバレッジ(スリーステップ、ツーステップ、予熱処理を行わなかったワンステップ及び50℃で熱処理を行ったワンステップが示されている)は、すべての方法にわたって同程度であったことから、方法間のバイアスが比較的最小限であることが示されている。バイオアナライザー波形(
図18、下図)によって、この実施例では、60℃で予熱処理したワンステップRT PCRを除くすべての方法において、適切なサイズのライブラリーが生成されたことが示されている。
【0197】
さらなる解析を行って、SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとの間で、感度及びマッピング性を比較した。具体的には、10pgのMouse Brain Total RNAから、SMART-Seq v4キットまたはSMART-Seq HTキットを用いて、複製cDNAライブラリーを作製した。Nextera XT DNA Library Preparation Kitを用いて、アウトプットcDNAからRNA-seqライブラリーを作製し、Illumina NextSeqという装置でシークエンシングした(2×75bp)。すべての試料を1300万ペアエンドリードに対して正規化した後、配列を解析した。上記の2つのキットでは、
図19に示されているように、同様のシークエンシングメトリックが得られ、強いピアソン相関及びスピアマン相関に加えて、高いマッピング率と、同程度の数の同定転写産物とが見られた。これらのデータから、SMART-Seq HTキットでは、SMART-Seq v4キットと同じ感度及び再現性が得られることが示されている。
【0198】
さらなる解析を行って、SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとによって生成されたデータにおいて、同定転写産物の数を比較した。具体的には、各キットにおける技術的複製間で、(上記のように)10pgのMouse Brain Total RNAから調製したライブラリーを同定転写産物の数の重複(100万マッピングリード当たりの転写産物1キロベース当たりのフラグメント、FPKM>0.1)についてさらに評価した。
図20に示されているように、これらの結果は、非常に似通っていることが分かった(61~63%の重複)。続いて、各キットにおける3回のすべての複製による同定転写産物を互いに比較したところ、71%の重複が示された(
図20を参照)。重複転写産物の平均発現レベルは37FPKMであった一方で、個々のキットにおいて一意的に同定された転写産物はあまり多くなく、平均で6~7FPKMであったことから、同定されない可能性が高い転写産物が、低レベルで発現するものであることが示されている。この解析によって、SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとで生成されたデータにおける同定転写産物の数において、高い相関が示された。
【0199】
さらなる解析を行って、SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとにおける遺伝子GC含有値を評価した。具体的には、(上記のように)10pgのMouse Brain Total RNAから作製したライブラリーをGC含有値についてさらに解析した。遺伝子をGC含有値によってビニングし、各ビンに関して、同定遺伝子の数が
図21に示されている(示されている数は、3回の技術的複製の平均である)。示されているデータで見て取れるように、各ビンで同定された遺伝子の割合は、2つのキットにおいて同程度であった。参考までに、アノテーション付きのRefSeq遺伝子は35,495個あり、そのうちの4.7%は、低いCG含有率(≦36%)として任意に分類されており、89.9%は、中程度のCG含有率(37~54%)として分類されており、5.4%は、高いGC含有率(≧55%)として分類されている。この解析によって、ステップが少ない方法では、3ステップ方法と比べて、GC含有値のバイアスがないことが示されている。
【0200】
さらなる解析を行って、SMART-Seq v4キットとSMART-Seq HTキットとの間で、遺伝子のGC含有率によって発現レベルを比較した。(上記のように)示されている10pgのMouse Brain Total RNAから作製したライブラリーをGC含有値についてさらに解析した(
図21を参照)。遺伝子をGC含有率によってビニングし、相関プロットを用いて、各ビンにおける遺伝子の発現レベル(FPKM)の再現性を可視化した(
図22)。平均遺伝子カウントは、SMART-Seq v4キット(パネルA)またはSMART-Seq HTキット(パネルB)を用いて解析した複製試料について再現性が非常に高い。GC含有率が高いかまたは低い遺伝子では、SMART-Seq v4キットとSMART-SeqHTキットとでは、同程度の発現レベルが見られる(パネルC)。すなわち、この解析によって、新規なSMART-seq HTキットに導入されているワンステップRT-PCR反応では、GC含有率が低い遺伝子と高い遺伝子との表現が保持されることが示されている。
【0201】
さらなる解析を行って、SMART-Seq v4キットまたはSMART-Seq HTキットを用いて、293T細胞から作製したシークエンシングライブラリーを比較した。具体的には、SMART-Seq v4キットまたはSMART-Seq HTキットを用いて、FACSによって単離した個々の293T細胞からライブラリーを作製した。
【0202】
FACSソーティングでは、ほぼコンフルエントになるまで増殖した293T細胞をトリプシン処理によって回収し、FITCマウス抗ヒトCD47(Clone B6H12、BD、カタログ番号556045)で染色し、氷冷したBD FACS Pre-Sort Buffer(BD、カタログ番号563503)に再懸濁した。BD FACSJazz(登録商標)Cell Sorterを用いて、12.5μlのFACS Dispensing Solutionにおいてソーティングを行った。処理できる状態になるまで、細胞を-80℃で凍結した。cDNAを合成し、シークエンシングライブラリーを調製して、シークエンシングした。すべてのライブラリーから得られたリードをトリミングし、CLC Genomics Workbenchを用いて、哺乳動物rRNAと、ヒトまたはマウスミトコンドリアゲノムとにマッピングした。その後、CLCを用いて、RefSeqアノテーションを有するヒト(hg19)またはマウス(mm10)ゲノムに残りのリードをマッピングした。これらの解析に関して示されている割合はいずれも(イントロン、エキソンまたは遺伝子間領域にマッピングされたリードの数を含む)、ライブラリーにおける総リードに対する割合である。各ライブラリーにおける同定転写産物の数は、FPKMが1または0.1以上である転写産物の数によって割り出した。
【0203】
Nextera XT DNA Library Preparation Kitを用いて、RNA-seqライブラリーを作製し、Illumina NextSeqという装置でシークエンシングした(2×75bp)。すべての試料を700万ペアエンドリードに対して正規化した後に、配列を解析した。
図23に示されている結果から見て取れるように、上記の2つのキットでは、同様のシークエンシングメトリックが得られ、SMART-Seq HTキットでは、高いマッピング率と、600個前後の追加の同定転写産物とが得られた。これらのデータによって、SMART-Seq HTキットでは、SMART-Seq v4キットと比べて、同じかまたは若干高い感度が得られることが示されている。
【0204】
さらなる解析を行って、SMART-seq v4キットとSMART-Seq HTキットとを用いて、FACSソーティングした293T細胞から得た遺伝子発現データの再現性を比較した。具体的には、21個の個々の293T細胞から作製したライブラリー(
図23を参照)をさらに解析して、SMART-Seq v4キット(SSv4_1~SSv4_12)とSMART-Seq HTキット(HT_1~HT_9)とによって、各細胞で得られた遺伝子発現測定値の再現性を評価した。
図24には、すべての細胞間のユークリッド距離を示している階層クラスタリングヒートマップが示されており、0.74~0.97の範囲のピアソン相関が報告されている。これらのデータによって、2つのキットの間では、相関性が非常に高いことと、細胞は、ライブラリー調製方法に基づき、クラスター化されなかったこととが示されている。これらのデータから、SMART-Seq HTキットにおける修正ワークフローによって、遺伝子発現レベルの測定値に、大きなバイアスが導入されなかったことがさらに示されている。全体として、この解析によって、SMART-seq v4キットとSMART-Seq HTキットとを用いて、FACSソーティングした293T細胞から得た遺伝子発現データの再現性が高いことが示されている。
【0205】
添付の請求項にもかかわらず、本開示は、以下の付記によっても定義される。
1.核酸試料から増幅二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)を作製する方法であって、
(a)テンプレート核酸と、単一産物核酸の隣接領域にハイブリダイズしたテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとを含む二本鎖核酸複合体を生成するために十分な条件下で、
核酸試料と、
逆転写酵素と、
単一産物核酸プライマーと、
3’ハイブリダイゼーションドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、
増幅ポリメラーゼと、
デオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)とを
反応混合物において混ぜ合わせることと、
(b)増幅dsDNAを生成するために十分な条件下で、前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、前記単一産物核酸プライマーを用いて、前記単一産物核酸から増幅することと
を含む、方法。
2.前記3’ハイブリダイゼーションドメインが、前記逆転写酵素によって前記単一産物核酸に付加された非テンプレート配列にハイブリダイズする、付記1に記載の方法。
3.前記非テンプレート配列は、ヘテロポリヌクレオチドを含む、付記2に記載の方法。
4.前記ヘテロポリヌクレオチドは、ヘテロトリヌクレオチドを含む、付記3に記載の方法。
5.前記非テンプレート配列は、ホモポリヌクレオチドを含む、付記2に記載の方法。
【0206】
6.前記ホモポリヌクレオチドは、ホモトリヌクレオチドを含む、付記5に記載の方法。
7.前記逆転写酵素は、レトロウイルス逆転写酵素である、付記1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.前記レトロウイルス逆転写酵素は、マウス白血病ウイルス逆転写酵素である、付記7に記載の方法。
9.前記増幅ポリメラーゼは、ホットスタートポリメラーゼである、付記1~8のいずれか一つに記載の方法。
10.前記増幅ポリメラーゼは、耐熱性ポリメラーゼである、付記1~9のいずれか一つに記載の方法。
【0207】
11.前記単一産物核酸プライマーは、‘5-非テンプレート配列を含む、付記1~10のいずれか一つに記載の方法。
12.前記5’-非テンプレート配列が、10nt~100ntの長さである、付記11に記載の方法。
13.前記‘5-非テンプレート配列は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、付記11または12に記載の方法。
14.前記‘5-非テンプレート配列は、プライマー結合部位を含む、付記11~13のいずれか一つに記載の方法。
15.前記‘5-非テンプレート配列は、規定配列を含む、付記11~14のいずれか一つに記載の方法。
【0208】
16.前記‘5-非テンプレート配列は、ソースバーコード配列を含む、付記11~15のいずれか一つに記載の方法。
17.前記ソースバーコード配列は、試料バーコード配列を含む、付記16に記載の方法。
18.前記ソースバーコード配列は、ウェルバーコード配列を含む、付記16または17に記載の方法。
19.前記ソースバーコード配列は、細胞バーコード配列を含む、付記16~18のいずれか一つに記載の方法。
20.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)を含む、付記11~19のいずれか一つに記載の方法。
【0209】
21.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメインを含む、付記11~20のいずれか一つに記載の方法。
22.前記‘5-非テンプレート配列は、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインを含む、付記11~21のいずれか一つに記載の方法。
23.前記‘5-非テンプレート配列は、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含む、付記11~21のいずれかに一つに記載の方法。
24.前記単一産物核酸プライマーは、増幅の際に前記増幅dsDNAに組み込まれるケージドキャプチャー部分を含む、付記1~23のいずれか一つに記載の方法。
25.前記ケージドキャプチャー部分をアンゲージして、前記増幅dsDNAを固体支持体に結合することをさらに含む、付記24に記載の方法。
【0210】
26.前記固体支持体を回収して、前記増幅dsDNAを単離することをさらに含む、付記25に記載の方法。
27.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、5’-非テンプレート配列を含む、付記1~26のいずれか一つに記載の方法。
28.前記5’-非テンプレート配列が、10nt~100ntの長さである、付記27に記載の方法。
29.前記5’-非テンプレート配列は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、付記27または28に記載の方法。
30.前記‘5-非テンプレート配列は、プライマー結合部位を含む、付記27~29のいずれか一つに記載の方法。
【0211】
31.前記‘5-非テンプレート配列は、規定配列を含む、付記27~30のいずれか一つに記載の方法。
32.前記‘5-非テンプレート配列は、ソースバーコード配列を含む、付記27~31のいずれか一つに記載の方法。
33.前記ソースバーコード配列は、試料バーコード配列を含む、付記32に記載の方法。
34.前記ソースバーコード配列は、ウェルバーコード配列を含む、付記32または33に記載の方法。
35.前記ソースバーコード配列は、細胞バーコード配列を含む、付記32~34のいずれか一つに記載の方法。
【0212】
36.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)を含む、付記27~35のいずれか一つに記載の方法。
37.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメインを含む、付記27~36のいずれか一つに記載の方法。
38.前記‘5-非テンプレート配列は、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインを含む、付記27~37のいずれか一つに記載の方法。
39.前記‘5-非テンプレート配列は、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含む、付記27~38のいずれか一つに記載の方法。
40.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが、増幅の際に前記増幅dsDNAに組み込まれるケージドキャプチャー部分を含む、付記1~39のいずれか一つに記載の方法。
【0213】
41.前記ケージドキャプチャー部分をアンゲージして、前記増幅dsDNAを固体支持体に結合することをさらに含む、付記40に記載の方法。
42.前記固体支持体を回収して、前記増幅dsDNAを単離することをさらに含む、付記41に記載の方法。
43.前記単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとの両方は、5’-非テンプレート配列を含む、付記11~42のいずれか一つに記載の方法。
44.前記単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとは、同じ5’-非テンプレート配列を含む、付記43に記載の方法。
45.前記単一産物核酸プライマーとテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとは、異なる5’-非テンプレート配列を含む、付記43に記載の方法。
【0214】
46.前記単一産物核酸プライマーが、固体支持体に結合されている、付記1~45のいずれか一つに記載の方法。
47.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが、固体支持体に結合されている、付記1~46のいずれか一つに記載の方法。
48.増幅することは、サプレッションPCRを含む、付記1~47のいずれか一つに記載の方法。
49.増幅することは、定量PCRを含む、付記1~48のいずれか一つに記載の方法。
50.増幅することは、エマルジョンPCRを含む、付記1~49のいずれか一つに記載の方法。
【0215】
51.前記テンプレート核酸を転写前に変性させることを含む、付記1~50のいずれか一つに記載の方法。
52.増幅後に、前記増幅dsDNAを精製することをさらに含む、付記1~51のいずれか一つに記載の方法。
53.混ぜ合わせることと増幅することとの間に、前記単一産物核酸を精製しない、付記1~52のいずれか一つに記載の方法。
54.反応容器で行う、付記1~53のいずれか一つに記載の方法。
55.前記反応容器は、チューブである、付記54に記載の方法。
【0216】
56.前記反応容器は、マルチウェルプレートのウェルである、付記54に記載の方法。
57.ドロップレットで行う、付記1~53のいずれか一つに記載の方法。
58.前記反応混合物は、核酸検出試薬を含む、付記1~57のいずれか一つに記載の方法。
59.前記核酸検出試薬に基づき、増幅dsDNAの存在を検出することをさらに含む、付記58に記載の方法。
60.ドロップレットで行うとともに、前記検出することに基づき、前記ドロップレットをソーティングすることをさらに含む、付記59に記載の方法。
【0217】
61.蛍光ベースのドロップレットソーターを用いて、前記ソーティングを行う、付記60に記載の方法。
62.前記蛍光ベースのドロップレットソーターは、フローサイトメーターである、付記61に記載の方法。
63.前記蛍光ベースのドロップレットソーターは、マイクロ流体ベースのドロップレットソーターである、付記61に記載の方法。
64.前記増幅dsDNAに標識プローブをハイブリダイズすることをさらに含む、付記1~63のいずれか一つに記載の方法。
65.前記標識プローブが、標的配列と相補的であり、前記増幅dsDNAにハイブリダイズすると、前記増幅dsDNAに前記標的配列が存在することを示す、付記64に記載の方法。
【0218】
66.前記標的配列の存在を検出することをさらに含む、付記65に記載の方法。
67.ドロップレットで行うとともに、前記検出に基づき、前記ドロップレットをソーティングすることをさらに含む、付記66に記載の方法。
68.蛍光ベースのドロップレットソーターを用いて、前記ソーティングを行う、付記67に記載の方法。
69.前記蛍光ベースのドロップレットソーターは、フローサイトメーターである、付記68に記載の方法。
70.前記蛍光ベースのドロップレットソーターは、マイクロ流体ベースのドロップレットソーターである、付記68に記載の方法。
【0219】
71.前記単一産物核酸プライマーは、ランダム配列を含む、付記1~70のいずれか一つに記載の方法。
72.前記ランダム配列は、ランダムヘキサマー配列である、付記71に記載の方法。
73.前記テンプレート核酸は、テール配列を含む、付記1~72のいずれか一つに記載の方法。
74.前記テール配列は、ポリ(A)配列を含む、付記73に記載の方法。
75.前記テール配列は、ポリ(T)配列を含む、付記73に記載の方法。
【0220】
76.前記テール配列を前記テンプレート核酸に付加するテーリング反応をさらに含む、付記73~75のいずれか一つに記載の方法。
77.前記単一産物核酸プライマーは、前記テール配列と相補的である配列を含む、付記73~76のいずれか一つに記載の方法。
78.前記テール配列と相補的である配列は、ポリ(dT)配列を含む、付記77に記載の方法。
79.前記テール配列と相補的である配列は、ポリ(dA)配列を含む、付記77に記載の方法。
80.前記テンプレート核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)を含む、付記1~79のいずれか一つに記載の方法。
【0221】
81.前記DNAは、ゲノムDNAである、付記80に記載の方法。
82.前記テンプレート核酸は、リボ核酸(RNA)を含む、付記1~79のいずれか一つに記載の方法。
83.前記RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である、付記82に記載の方法。
84.前記単一産物核酸プライマーは、第1鎖相補的DNA(cDNA)プライマーであり、前記dsDNAは、二本鎖cDNAである、付記82または83に記載の方法。
85.単一産物核酸プライマーと、
3’ハイブリダイゼーションドメインを含むテンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、
増幅ポリメラーゼと逆転写酵素とを含むポリメラーゼカクテルと
を含む、キット。
【0222】
86.前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとが、別々の容器に入っている、付記85に記載のキット。
87.前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとが、同じ容器に入っている、付記85に記載のキット。
88.前記単一産物核酸プライマーと、テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドと、ポリメラーゼカクテルとが、同じ容器に入っている、付記87に記載のキット。
89.前記増幅ポリメラーゼは、ホットスタートポリメラーゼである、付記85~88のいずれか一つに記載のキット。
90.前記増幅ポリメラーゼは、耐熱性ポリメラーゼである、付記85~89のいずれか一つに記載のキット。
【0223】
91.前記逆転写酵素は、レトロウイルス逆転写酵素である、付記85~90のいずれか一つに記載のキット。
92.前記レトロウイルス逆転写酵素は、マウス白血病ウイルス逆転写酵素である、付記91に記載のキット。
93.前記3’ハイブリダイゼーションドメインが、前記逆転写酵素によって、単一産物核酸に付加されている非テンプレート配列にハイブリダイズする、付記85~92のいずれか一つに記載のキット。
94.前記非テンプレート配列は、ヘテロポリヌクレオチドを含む、付記93に記載のキット。
95.前記ヘテロポリヌクレオチドは、ヘテロトリヌクレオチドを含む、付記94に記載のキット。
【0224】
96.前記非テンプレート配列は、ホモポリヌクレオチドを含む、付記85~93のいずれか一つに記載のキット。
97.前記ホモポリヌクレオチドは、ホモトリヌクレオチドを含む、付記96に記載のキット。
98.前記単一産物核酸プライマーは、‘5-非テンプレート配列を含む、付記85~97のいずれか一つに記載のキット。
99.前記5’-非テンプレート配列が、10nt~100ntの長さである、付記98に記載のキット。
100.前記‘5-非テンプレート配列は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、付記98または99に記載のキット。
【0225】
101.前記‘5-非テンプレート配列は、プライマー結合部位を含む、付記98~100のいずれか一つに記載のキット。
102.前記‘5-非テンプレート配列は、規定配列を含む、付記98~101のいずれか一つに記載のキット。
103.前記‘5-非テンプレート配列は、ソースバーコード配列を含む、付記98~102のいずれか一つに記載のキット。
104.前記ソースバーコード配列は、試料バーコード配列を含む、付記103に記載のキット。
105.前記ソースバーコード配列は、ウェルバーコード配列を含む、付記103または104に記載のキット。
【0226】
106.前記ソースバーコード配列は、細胞バーコード配列を含む、付記103~105のいずれか一つに記載のキット。
107.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)を含む、付記98~106のいずれか一つに記載のキット。
108.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメインを含む、付記98~107のいずれか一つに記載のキット。
109.前記‘5-非テンプレート配列は、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインを含む、付記98~108のいずれかに一つに記載のキット。
110.前記‘5-非テンプレート配列が、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含む、付記98~109のいずれかに記載のキット。
【0227】
111.前記単一産物核酸プライマーは、ケージドキャプチャー部分を含む、付記85~110のいずれか一つに記載のキット。
112.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、5’-非テンプレート配列を含む、付記85~111のいずれか一つに記載のキット。
113.前記5’-非テンプレート配列が、10nt~100ntの長さである、付記112に記載のキット。
114.前記5’-非テンプレート配列は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む、付記112または113に記載のキット。
115.前記‘5-非テンプレート配列は、プライマー結合部位を含む、付記112~114のいずれか一つに記載のキット。
【0228】
116.前記‘5-非テンプレート配列は、規定配列を含む、付記112~115のいずれか一つに記載のキット。
117.前記‘5-非テンプレート配列は、ソースバーコード配列を含む、付記112~116のいずれか一つに記載のキット。
118.前記ソースバーコード配列は、試料バーコード配列を含む、付記117に記載のキット。
119.前記ソースバーコード配列は、ウェルバーコード配列を含む、付記117または118に記載のキット。
120.前記ソースバーコード配列は、細胞バーコード配列を含む、付記117~119のいずれか一つに記載のキット。
【0229】
121.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー配列(UMI)を含む、付記114~120のいずれか一つに記載のキット。
122.前記‘5-非テンプレート配列は、ユニークモレキュラーアイデンティファイアー(UMI)ドメインを含む、付記114~121のいずれか一つに記載のキット。
123.前記‘5-非テンプレート配列は、バーコード付きユニークモレキュラーアイデンティファイアー(BUMI)ドメインを含む、付記114~122のいずれか一つに記載のキット。
124.前記‘5-非テンプレート配列は、シークエンシングプラットフォームアダプターコンストラクトを含む、付記114~123のいずれか一つに記載のキット。
125.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドは、ケージドキャプチャー部分を含む、付記85~124のいずれか一つに記載のキット。
【0230】
126.前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとの両方は、5’-非テンプレート配列を含む、付記98~125のいずれか一つに記載のキット。
127.前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとは、同じ5’-非テンプレート配列を含む、付記126に記載のキット。
128.前記単一産物核酸プライマーと前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドとは、異なる5’-非テンプレート配列を含む、付記127に記載のキット。
129.前記単一産物核酸プライマーが固体支持体に結合されている、付記85~128のいずれか一つに記載のキット。
130.前記テンプレートスイッチオリゴヌクレオチドが固体支持体に結合されている、付記85~129のいずれか一つに記載のキット。
【0231】
131.核酸検出試薬をさらに含む、付記85~130のいずれか一つに記載のキット。
132.標識プローブをさらに含む、付記85~131のいずれか一つに記載のキット。
133.dNTPをさらに含む、付記85~132のいずれか一つに記載のキット。
134.前記単一産物核酸プライマーは、ポリ(dT)配列を含む、付記85~133のいずれか一つに記載のキット。
135.前記単一産物核酸プライマーは、ポリ(dA)配列を含む、付記85~134のいずれか一つに記載のキット。
【0232】
136.前記単一産物核酸プライマーは、ランダム配列を含む、付記85~135のいずれか一つに記載のキット。
137.前記ランダム配列は、ランダムヘキサマー配列である、付記136に記載のキット。
138.テーリング反応を行うための1つ以上の試薬をさらに含む、付記85~137のいずれか一つに記載のキット。
139.テーリング反応を行うための前記1つ以上の試薬は、ターミナルトランスフェラーゼを含む、付記138に記載のキット。
140.テーリング反応を行うための前記1つ以上の試薬は、dNTPテーリングミックスを含む、付記138または139に記載のキット。
【0233】
141.テーリング反応を行うための前記1つ以上の試薬は、ホスファターゼを含む、付記138~140のいずれか一つに記載のキット。
【0234】
明瞭な理解のために、上記の発明について、実例と実施例とによって、ある程度詳細に説明してきたが、本発明の教示に鑑みれば、添付の請求項の趣旨または範囲から逸脱せずに、本発明に対して特定の変更及び修正を行ってよいことは当業者には容易に分かる。
【0235】
したがって、上記の内容は、本発明の原理を例示しているに過ぎない。当業者は、本明細書に明示的には説明されたり示されたりしていないが、本発明の原理を具体化するとともに、その趣旨及び範囲に含まれる様々な構成を考案できることが分かる。さらに、本明細書に示されている実施例と特定の用語はいずれも、原則として、当該技術分野の促進に本発明者が寄与する本発明の原理及び概念を読み手が理解することを補助するように意図されており、このように具体的に示されている実施例及び条件には限定しないものとして解釈すべきである。さらに、本発明の原理、態様及び実施形態、ならびにその具体的な実施例を示している本明細書の記述はいずれも、その構造的均等物と機能的均等物との両方を含むように意図されている。加えて、このような均等物には、構造にかかわらず、現在知られている均等物と、将来開発される均等物、すなわち、開発されるいずれかの要素のうち、同じ機能を果たす要素との両方が含まれるように意図されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示されたり、説明されたりしている例示的な実施形態に限定されるようには意図されていない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の請求項によって具体化される。
【0236】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119(e)条に従って、2016年11月10日に出願した米国特許仮出願第62/420,503号の出願日に基づく優先権を主張するものであり、この仮出願の開示内容は、参照により、本明細書に援用される。
【配列表】