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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】多室型熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/20 20060101AFI20220331BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20220331BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20220331BHJP
   F27B 9/02 20060101ALI20220331BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
C23C8/20
C21D1/00 117
C21D1/06 A
F27B9/02
F27D13/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019525390
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2018022065
(87)【国際公開番号】W WO2018230468
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017116608
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198329
【氏名又は名称】株式会社IHI機械システム
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】坂本 治
(72)【発明者】
【氏名】中本 一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓真
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208838(JP,A)
【文献】特開2018-044688(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00,1/06
C23C 8/02,8/20
F27B 9/02
F27D 9/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる熱処理を複数の処理装置で被処理物に施す多室型熱処理装置であって、
前記被処理物をある前記処理装置から搬送装置を経由して他の前記処理装置に搬送するための中間搬送装置と、
当該中間搬送装置に装着され、異なる熱処理を前記被処理物に施す前記複数の処理装置とを備え、
前記被処理物を前記中間搬送装置を経由して前記複数の処理装置の間で移動させることにより前記被処理物に所定の熱処理を施すように構成されている、多室型熱処理装置。
【請求項2】
前記複数の処理装置は、前記被処理物に前記熱処理として浸炭処理を施す浸炭装置と、前記浸炭処理に先行して前記被処理物に前記熱処理として予熱処理を施す予熱装置とを少なくとも含む、請求項1に記載の多室型熱処理装置。
【請求項3】
前記中間搬送装置には複数の前記予熱装置が装着され、各々の前記予熱装置は、前記中間搬送装置における前記被処理物の前記浸炭装置までの移動距離または移動時間が等しくなるように配置されている、請求項2に記載の多室型熱処理装置。
【請求項4】
前記中間搬送装置には複数の前記浸炭装置が装着され、各々の前記浸炭装置は、前記中間搬送装置の搬出口までの移動距離または移動時間が等しくなるように配置されている、請求項2または3に記載の多室型熱処理装置。
【請求項5】
前記複数の処理装置は、前記予熱装置で予熱された前記被処理物に均熱処理を施す均熱装置を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【請求項6】
前記複数の処理装置は、前記被処理物に前記熱処理として冷却処理を施す第1冷却装置を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【請求項7】
前記複数の処理装置は、前記冷却処理と異なる冷却処理を前記熱処理として前記被処理物に施す第2冷却装置を含む、請求項6に記載の多室型熱処理装置。
【請求項8】
複数の前記中間搬送装置が互いに連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【請求項9】
前記複数の中間搬送装置は、平面視で直線状に配置されている、請求項8に記載の多室型熱処理装置。
【請求項10】
各々の前記処理装置は、前記中間搬送装置に対して着脱可能である、請求項1~9のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【請求項11】
各々の前記処理装置は、種類の異なる処理装置に交換可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【請求項12】
前記複数の処理装置のうちの1つの処理装置への、前記中間搬送装置における搬送経路内に前記複数の処理装置のうちの他の処理装置が配置されており、前記中間搬送装置は、前記搬送経路を介して前記1つの処理装置及び前記他の処理装置に前記被処理物をそれぞれ搬送するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の多室型熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多室型熱処理装置に関する。
本願は、2017年6月14日に日本に出願された特願2017-116608号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、被処理物に冷却処理を施す冷却室と被処理物に加熱処理を施す3つの加熱室とを中間搬送室を介して接続した多室型熱処理装置が開示されている。この多室型熱処理装置では、中間搬送室の上側に3つの加熱室を設け、また中間搬送室の下側に冷却室を設けることにより、被処理物を中間搬送室を経由して冷却室や各加熱室に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2014-051695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した多室型熱処理装置では、全く同じ仕様の加熱室を3つ設けるので、被処理物に1種類の加熱処理(熱処理)しか施すことができない。したがって、被処理物に異なる熱処理を施す必要がある場合には、異なる仕様の加熱室が設けられた複数台の多室型熱処理装置を設置する必要がある。
【0005】
しかしながら、複数台の多室型熱処理装置を設置するためには広い設置スペースを確保する必要がある。また、複数台の多室型熱処理装置を設置するためには、初期設備コストが嵩むと共に、各々の多室型熱処理装置の稼働効率が低下する可能性もある。
【0006】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、被処理物に対して異なる熱処理を行うことが可能な多室型熱処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様の多室型熱処理装置は、中間搬送装置と、当該中間搬送装置に装着され、異なる熱処理を被処理物に施す複数の処理装置とを備え、前記被処理物を前記中間搬送装置を経由して前記複数の処理装置の間で移動させることにより前記被処理物に所定の熱処理を施すように構成されている。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様の多室型熱処理装置において、前記複数の処理装置が、前記被処理物に前記熱処理として浸炭処理を施す浸炭装置と、前記浸炭処理に先行して前記被処理物に前記熱処理として予熱処理を施す予熱装置とを少なくとも含む。
【0009】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様の多室型熱処理装置において、前記中間搬送装置には複数の前記予熱装置が装着され、各々の前記予熱装置は、前記中間搬送装置における前記被処理物の前記浸炭装置までの移動距離または移動時間が等しくなるように配置されている。
【0010】
本開示の第4の態様は、上記第2または第3の態様の多室型熱処理装置において、前記中間搬送装置には複数の前記浸炭装置が装着され、各々の前記浸炭装置は、前記中間搬送装置の搬出口までの移動距離または移動時間が等しくなるように配置されている。
【0011】
本開示の第5の態様は、上記第2~第4のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、前記複数の処理装置が、前記予熱装置で予熱された前記被処理物に均熱処理を施す均熱装置を含む。
【0012】
本開示の第6の態様は、上記第2~第5のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、前記複数の処理装置が、前記被処理物に前記熱処理として冷却処理を施す第1冷却装置を含む。
【0013】
本開示の第7の態様は、上記第6の態様の多室型熱処理装置において、前記複数の処理装置が、前記冷却処理と異なる冷却処理を前記熱処理として前記被処理物に施す第2冷却装置を含む。
【0014】
本開示の第8の態様は、上記第1~第7のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、複数の前記中間搬送装置が互いに連結されている。
【0015】
本開示の第9の態様は、上記第8の態様の多室型熱処理装置において、前記複数の中間搬送装置は、平面視で直線状に配置されている。
【0016】
本開示第10の態様は、上記第1~第9のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、各々の前記処理装置は前記中間搬送装置に対して着脱可能である。
【0017】
本開示の第11の態様は、上記第1~第10のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、各々の前記処理装置は種類の異なる処理装置に交換可能である。
【0018】
本開示の第12の態様は、上記第1~第11のいずれか1つの態様の多室型熱処理装置において、前記複数の処理装置のうちの1つの処理装置への、前記中間搬送装置における搬送経路内に前記複数の処理装置のうちの他の処理装置が配置されており、前記中間搬送装置は、前記搬送経路を介して前記1つの処理装置及び前記他の処理装置に前記被処理物をそれぞれ搬送するように構成されている。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、被処理物に対して複数種類の熱処理を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に係る多室型熱処理装置の平面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る多室型熱処理装置の側面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る多室型熱処理装置の水平面における各機器の位置関係及び搬送経路を示す模式図である。
図4】本開示の一実施形態の第1変形例に係る多室型熱処理装置の平面図である。
図5】本開示の一実施形態の第2変形例に係る多室型熱処理装置の平面図である。
図6】本開示の一実施形態の第3変形例に係る多室型熱処理装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る多室型熱処理装置Sは、各種の金属部品Xを被処理物とし、金属部品Xに予熱処理、浸炭処理及び冷却処理を施すことにより当該金属部品X(被処理物)の表面に所定深さの浸炭層を形成する熱処理装置である。
【0022】
この多室型熱処理装置Sは、図1及び図2に示すように、第1中間搬送装置1、4つの予熱装置2A~2D、第2中間搬送装置3、4つの予熱装置4A~4D、均熱装置5、第3中間搬送装置6、4つの浸炭装置7A~7D及びガス冷却装置8(第1冷却装置)を備えている。これら各構成要素のうち、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6は、本開示における中間搬送装置に相当する。また、8つの予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5、及び浸炭装置7A~7Dは、本開示における処理装置に相当する。なお、以下の説明において「平面視」とは、多室型熱処理装置S等を鉛直方向から見た図をいう。
【0023】
すなわち、この多室型熱処理装置Sにおける複数の処理装置は、予熱装置4A~4Dと浸炭装置7A~7Dとを少なくとも含むように構成されており、これら予熱装置4A~4D及び浸炭装置7A~7Dに加えて均熱装置5を含む。なお、これら予熱装置4A~4D及び浸炭装置7A~7Dの個数(4個)、また均熱装置5の個数(1個)は、あくまで一例であり、他の個数であってもよい。
【0024】
第1中間搬送装置1は、内部に第1搬送室を備えた箱形の中空体であり、搬入口1a、第1中継ステーション1b及び搬出口1cを備えている。搬入口1aは、第1中間搬送装置1の一側面に設けられており、開閉シャッタが設けられている。この搬入口1aは、金属部品X(被処理物)を第1搬送室に収容するための開口である。
【0025】
第1中継ステーション1bは、第1中間搬送装置1(第1搬送室)の略中央(平面視略中央)に設けられた待機ステーションである。この第1中継ステーション1bは、金属部品Xを第1中間搬送装置1(第1搬送室)内で搬送する際に金属部品Xが必ず通過する場所である。搬出口1cは、上記搬入口1aに対向するように第1中間搬送装置1(第1搬送室)に設けられており、金属部品Xを第1中間搬送装置1(第1搬送室)の外部に搬出するための開口である。
【0026】
このような第1中間搬送装置1は、搬入口1aから第1搬送室に取り込んだ金属部品Xを第1中継ステーション1bを経由して各予熱装置2A~2Dあるいは搬出口1cに搬送する。図示していないが、この第1中間搬送装置1には、金属部品Xを第1搬送室内で水平移動させる水平搬送装置及び金属部品Xを上下移動させる昇降装置が設けられている。
【0027】
4つの予熱装置2A~2Dは、内部に予熱室を備えた中空な略円筒体であり、中心軸線が鉛直方向と平行になる姿勢で第1中間搬送装置1の上部に装着されている。これら予熱装置2A~2Dは、水平面における位置関係として、第1中間搬送装置1の第1中継ステーション1bから等距離となるように配置されている。このような各予熱装置2A~2Dは、各々に電気ヒータを内蔵しており、各浸炭装置7A~7Dで行われる浸炭処理(本処理)に先行して金属部品Xを所定温度まで予熱する。
【0028】
また、これら予熱装置2A~2Dは、所定構造の装着部を備えており、ボルト等の締結具を用いることにより第1中間搬送装置1に対して着脱可能に取り付けられている。すなわち、上述した第1中間搬送装置1の上部には、予熱装置2A~2Dの装着部に対応する被装着部が4つ設けられている。各予熱装置2A~2Dは、各々の装着部を第1中間搬送装置1の被装着部の何れかと結合させ、かつ、上記締結具によって装着部と被装着部を締結させることによって第1中間搬送装置1に装着される。
【0029】
第2中間搬送装置3は、内部に第2搬送室を備えた箱形の中空体であり、搬入口3a、第2中継ステーション3b及び搬出口3cを備えている。搬入口3aは、第2中間搬送装置3の一側面に設けられており、金属部品X(被処理物)を第2搬送室に収容するための開口である。
【0030】
このような第2中間搬送装置3は、自らの搬入口3aと第1中間搬送装置1の搬出口1cとをボルト等の締結具で締結することにより、第1中間搬送装置1に接続されている。第2中継ステーション3bは、第2搬送室の略中央(平面視略中央)に設けられた金属部品Xの待機ステーションである。また、搬出口3cは、上記搬入口3aに対して直交する姿勢で設けられており、金属部品Xを第2搬送室の外部に搬出するための開口である。すなわち、搬入口3aの開口方向(中心軸方向)と搬出口3cの開口方向(中心軸方向)とが互いに直交している。
【0031】
この第2中間搬送装置3は、搬入口3aから第2搬送室に取り込んだ金属部品Xを第2中継ステーション3bを経由して各予熱装置4A~4D等に搬送する。なお、図示していないが、この第2中間搬送装置3は、第2搬送室内で金属部品Xを水平移動させる水平搬送装置及び金属部品Xを上下移動させる昇降装置を備えている。
【0032】
4つの予熱装置4A~4Dは、内部に予熱室を備えた中空な略円筒体であり、中心軸線が鉛直方向と平行になる姿勢で第2中間搬送装置3の上部に装着されている。これら予熱装置4A~4Dは、水平面における位置関係として、第2中間搬送装置3の第2中継ステーション3bから等距離となるように配置されている。
【0033】
また、これら予熱装置4A~4Dは、所定構造の装着部を備えており、ボルト等の締結具を用いることにより第2中間搬送装置3に対して着脱可能に取り付けられている。このような各予熱装置4A~4Dは、各々に電気ヒータを備えており、各浸炭装置7A~7Dで行われる浸炭処理(本処理)に先行して金属部品Xを所定温度まで予熱する。
【0034】
均熱装置5は、内部に均熱室を備えた中空な略円筒体であり、中心軸線が鉛直方向と平行になる姿勢で第2中間搬送装置3の上部に装着されている。この均熱装置5は、所定構造の装着部を備えており、ボルト等の締結具を用いることにより第2中間搬送装置3に対して着脱可能に取り付けられている。この均熱装置5は、各予熱装置2A~2D,4A~4Dで予熱された金属部品Xを所定時間に亘って収容することにより均熱処理を施す。
【0035】
すなわち、上述した第2中間搬送装置3の上部には、各予熱装置4A~4D及び均熱装置5の装着部に対応する被装着部が5つ設けられている。各予熱装置4A~4D及び均熱装置5は、各々の装着部を第2中間搬送装置3の被装着部の何れかと結合させ、かつ、上記締結具によって装着部と被装着部を締結させることによって第2中間搬送装置3に装着される。
【0036】
第3中間搬送装置6は、内部に第3搬送室を備えた箱形の中空体であり、搬入口6a、第3中継ステーション6b及び搬出口6cを備えている。搬入口6aは、第3中間搬送装置6(第3搬送室)の一側面に設けられており、金属部品X(被処理物)を第3搬送室に収容するための開口である。この搬入口6aは、図示するように第2中間搬送装置3の搬出口3cと接続されている。
【0037】
すなわち、第3中間搬送装置6は、自らの搬入口6aを第2中間搬送装置3の搬出口3cに接続することにより第2中間搬送装置3に連結されている。第3中継ステーション6bは、第3中間搬送装置6(第3搬送室)の略中央(平面視略中央)に設けられた金属部品Xの待機ステーションである。また、搬出口6cは、上記搬入口6aに対向して設けられており、金属部品Xを第3搬送室の外部に搬出するための開口である。
【0038】
この第3中間搬送装置6は、搬入口6aから第3搬送室に取り込んだ金属部品Xを第3中継ステーション6bを経由して各浸炭装置7A~7D等に搬送する。なお、図示していないが、この第3中間搬送装置6は、第3搬送室内で金属部品Xを水平移動させる水平搬送装置及び金属部品Xを上下移動させる昇降装置を備えている。
【0039】
また、第3中間搬送装置6にはガス冷却装置8が連接されている。すなわち、この第3中間搬送装置6には、複数の処理装置の一部として浸炭装置7A~7Dが設けられ、また別の一部としてガス冷却装置8が設けられている。
【0040】
4つの浸炭装置7A~7Dは、内部に浸炭室を備えた中空な略円筒体であり、中心軸線が鉛直方向と平行になる姿勢で第3中間搬送装置6の上部に装着されている。これら浸炭装置7A~7Dは、水平面における位置関係として、第3中間搬送装置6の第3中継ステーション6bから等距離となるように配置されている。このような各浸炭装置7A~7Dは、各々に電気ヒータ及び浸炭ガス供給装置を備えており、浸炭室に収容された金属部品Xを加熱環境下かつ浸炭ガス雰囲気下に保持することにより金属部品Xに所定の浸炭処理を施す。
【0041】
また、これら浸炭装置7A~7Dは、所定構造の装着部を備えており、ボルト等の締結具を用いることにより第3中間搬送装置6に対して着脱可能に取り付けられている。
すなわち、上述した第3中間搬送装置6の上部には、浸炭装置7A~7Dの装着部に対応する被装着部が4つ設けられている。各浸炭装置7A~7Dは、各々の装着部を第3中間搬送装置6の被装着部の何れかと結合させ、かつ、上記締結具によって装着部と被装着部を締結させることによって第3中間搬送装置6に装着される。
【0042】
ガス冷却装置8は、上記第3中間搬送装置6に別途装着されており、搬入口8a、冷却チャンバ8b、循環チャンバ8c、熱交換器8d、循環装置8e及び搬出口8fを備えている。搬入口8aは、金属部品Xを冷却チャンバ8bに収容するための開口である。この搬入口8aは、第3中間搬送装置6の搬出口6cと接続されている。すなわち、このガス冷却装置8は、搬入口8aを第3中間搬送装置6の搬出口6cに接続することにより第3中間搬送装置6に連結されている。
【0043】
冷却チャンバ8bは、内部に冷却室を備えた中空な略円筒体であり、浸炭装置7A~7Dで浸炭処理された金属部品Xに冷却処理を施す。この冷却チャンバ8bは、冷却室に収容した金属部品Xに例えば上方から冷却ガスを吹き付けることにより金属部品Xを冷却する。循環チャンバ8cは、一端が冷却チャンバ8bの上端に接続され、他端が冷却チャンバ8bの下端に接続された管状部材である。この循環チャンバ8cは、上記冷却ガスを上方から冷却チャンバ8bに供給すると共に、金属部品Xの冷却に寄与した冷却ガス(金属部品Xによって加熱された加熱冷却ガス)を冷却チャンバ8bの下方から回収する。
【0044】
熱交換器8dは、このような循環チャンバ8cの途中部位に設けられており、上記加熱冷却ガスを所定の冷媒と間接熱交換させることにより冷却する。循環装置8eは、冷却ガスを循環チャンバ8c介して循環させるための動力源であり、冷却ガスを送風するファンと当該ファンを駆動する電動機等を備えている。搬出口8fは、冷却チャンバ8bにおいて搬入口8aに対向配置されており、冷却室の金属部品Xを外部に取り出す開口である。この搬出口8fには開閉扉が設けられており、当該開閉扉を開放することにより冷却室の金属部品Xが外部に取り出される。
【0045】
ここで、各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dは、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に対してユニット化されている。すなわち、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6の上部に設けられた装着構造(締結構造)は全て同一構造であり、また各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dの下部に設けられた装着構造(締結構造)も全て同一構造である。したがって、各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dは、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に対して交換可能である。
【0046】
例えば、第1中間搬送装置1に予熱装置2A~2Dに代えて予熱装置4A~4D、均熱装置5及び浸炭装置7A~7Dの何れかを装着することが可能である。また、第2中間搬送装置3に予熱装置4A~4Dに代えて予熱装置2A~2D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dの何れかを装着することが可能である。さらに、第3中間搬送装置6に浸炭装置7A~7Dに代えて各予熱装置2A~2D,4A~4D及び均熱装置5各の何れかを装着することが可能である。
【0047】
また、図3は、このように構成された多室型熱処理装置Sについて、水平面における各機器の位置関係及び搬送経路を示している。黒丸は、各機器の位置を示しており、図1に示す各機器に対応した符号が付してある。この図3に示すように、第1中間搬送装置1に装着された4つの予熱装置2A~2D(予熱室)の各位置は、第1中間搬送装置1の第1中継ステーション1bから等しい距離L1となるように設定されている。
【0048】
また、第2中間搬送装置3に装着された4つの予熱装置4A~4D(予熱室)の各位置は、第2中間搬送装置3の第2中継ステーション3bから等しい距離L2となるように設定されている。さらに、第3中間搬送装置6に装着された4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)の各位置は、第3中間搬送装置6の第3中継ステーション6bから等しい距離L3となるように設定されている。
【0049】
なお、本実施形態に係る多室型熱処理装置Sは、図示しない制御装置を備えており、当該制御装置によって統一的に制御されることによって金属部品Xに所望の熱処理を施す。この制御装置は、タッチパネル等を用いた操作盤を備えており、多室型熱処理装置Sの各種機器が担う機能に関する条件、例えば各予熱装置2A~2D,4A~4Dにおける予熱温度や予熱時間等の予熱条件、各浸炭装置7A~7Dにおける浸炭温度や浸炭時間等の浸炭条件、またガス冷却装置8における冷却温度や冷却時間等の冷却条件を適宜設定できるように構成されている。
【0050】
次に、このように構成された多室型熱処理装置Sの動作について説明する。
この多室型熱処理装置Sを用いて金属部品Xに熱処理を施す場合、金属部品Xは、図示しない移載装置によって第1中間搬送装置1の搬入口1aから第1搬送室内に収容される。この金属部品Xは、第1中間搬送装置1によって第1中継ステーション1bに一旦搬送され、さらに空状態の予熱装置、つまり4つの予熱装置2A~2Dの何れかの予熱室に搬送される。
【0051】
そして、空状態の予熱室に収容された金属部品Xは、当該予熱室において加熱されることにより所定の予熱目標温度まで予熱される。すなわち、第1中間搬送装置1に装着された4つの予熱装置2A~2Dは、最大で4つ(4グループ)の金属部品Xを同時並行的に予熱する。
【0052】
また、4つの予熱装置2A~2Dのいずれにも金属部品Xが収容されている場合、つまり第1中間搬送装置1の搬入口1aから第1搬送室内に5つ目~8つ目の金属部品Xが取り込まれた場合、これら金属部品Xは、第1中間搬送装置1の搬入口1aから第1中継ステーション1b及び第1中間搬送装置1の搬出口1cを通過して第2搬送室内に搬送される。そして、これら金属部品Xは、第2中間搬送装置3に装着された4つの予熱装置4A~4Dのうち空状態の予熱室に順次搬送される。このようにして4つの予熱装置4A~4Dに収容された金属部品Xは、所定の予熱目標温度まで予熱される。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る多室型熱処理装置Sによれば、最大で8つの金属部品Xを同時並行的に予熱処理することが可能である。また、第1中間搬送装置1あるいは/及び第2中間搬送装置3の連結数を増すことにより、つまり予熱装置2A~2Dあるいは/及び予熱装置4A~4Dの個数を増やすことにより、同時並行的に予熱する金属部品Xの個数を容易に増加させることが可能である。
【0054】
続いて、各金属部品Xは、4つの予熱装置2A~2Dの何れかで予熱目標温度まで予熱されると、第1中間搬送装置1によって予熱室から第1搬送室の第1中継ステーション1bに一旦搬送される。そして、各金属部品Xは、第1中間搬送装置1の搬出口1c及び第2中間搬送装置3の搬入口3aを経由して第2中継ステーション3bに搬送される。
【0055】
さらに、各金属部品Xは、第2中継ステーション3bから均熱装置5に搬送されて均熱室に収容される。そして、各金属部品Xは、均熱室内で所定時間に亘って放置されることによって均熱化される。すなわち、各金属部品Xは、均熱室内で放置されることによって予熱室における局所的な予熱のむら(予熱むら)が是正され、全体として均一な温度になる。
【0056】
そして、均熱装置5(均熱室)における均熱処理を経た金属部品Xは、均熱装置5(均熱室)から第2中間搬送装置3の搬出口3c及び第3中間搬送装置6の搬入口6aを経由して第3中継ステーション6bに搬送される。そして、この金属部品Xは、空状態の浸炭室、つまり4つの浸炭装置7A~7Dの何れかの浸炭室に順次搬送される。
【0057】
そして、各浸炭装置7A~7D(浸炭室)に収容された金属部品Xは、加熱環境下かつ浸炭ガス雰囲気下で浸炭処理される。すなわち、金属部品Xは、各浸炭装置7A~7D(浸炭室)において表面から所定の深さに亘って炭素原子が注入され、表面近傍領域に浸炭層が形成される。
【0058】
すなわち、本実施形態に係る多室型熱処理装置Sによれば、最大で4つの金属部品Xを同時並行的に浸炭処理することが可能である。また、第3中間搬送装置6の連結数を増やすことにより、つまり浸炭装置7A~7D(浸炭室)の個数を増やすことにより、同時並行的に浸炭処理する金属部品Xの個数を容易に増加させることが可能である。例えば第3中間搬送装置6を2つ連結させることにより、同時並行的に浸炭処理する金属部品Xの個数を8個に増加させることが可能である。
【0059】
各浸炭装置7A~7D(浸炭室)における浸炭処理が完了した金属部品Xは、各浸炭装置7A~7D(浸炭室)から第3中間搬送装置6の第3中継ステーション6bに一旦搬送される。そして、金属部品Xは、搬出口6c及びガス冷却装置8の搬入口8aを経由して冷却チャンバ8bの内部つまり冷却室に搬送される。
【0060】
そして、冷却チャンバ8b(冷却室)に収容された金属部品Xは、冷却チャンバ8b(冷却室)と循環チャンバ8cとを循環する冷却ガスによって所定の冷却履歴に沿って冷却される。そして、冷却チャンバ8b(冷却室)における冷却処理が完了した金属部品Xは、冷却チャンバ8b(ガス冷却装置8)の搬出口8fから外部に搬出される。
【0061】
このような本実施形態に係る多室型熱処理装置Sでは、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に異なる種類の処理装置つまり予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dを装着する構造を採用するので、金属部品Xに対して異なる加熱処理(熱処理)を施すことが可能である。
【0062】
したがって、この多室型熱処理装置Sによれば、複数台の多室型熱処理装置を設置する必要がないので、広い設置スペースを確保する必要がなく、また初期設備コストを抑制することが可能であり、さらに多室型熱処理装置の稼働効率が低下することを抑制あるいは回避することが可能である。
【0063】
また、この多室型熱処理装置Sでは、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6の装着構造(締結構造)が全て同一に構成され、また各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dの装着構造(締結構造)も全て同一に構成されているので、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に装着する処理装置の種類に制限がない。したがって、この多室型熱処理装置Sによれば、金属部品Xに対する熱処理の自由度が高く、極めて使い勝手が良くなっている。
【0064】
また、この多室型熱処理装置Sでは、4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)から第3中間搬送装置6の搬出口6cまでの金属部品Xの移動距離あるいは移動時間が全ての浸炭装置7A~7Dについて等しい。すなわち、金属部品Xは、4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)の何れで浸炭処理されても、同一の移動距離あるいは移動時間を経て冷却チャンバ8b(冷却室)に搬送されて冷却処理を受ける。
【0065】
すなわち、この多室型熱処理装置Sでは、4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)から冷却チャンバ8b(冷却室)に搬送される間の搬送冷却状態が全ての浸炭装置7A~7D(浸炭室)について均一である。したがって、このような多室型熱処理装置Sによれば、浸炭処理後の冷却履歴を均一化できるので、各々の金属部品Xに均一な性質の浸炭層を形成することが可能である。
【0066】
また、本実施形態に係る多室型熱処理装置Sでは、4つの予熱装置4A~4D(予熱室)から4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)までの金属部品Xの移動距離あるいは移動時間が全ての予熱装置4A~4D(予熱室)について等しい。金属部品Xは、4つの予熱装置4A~4D(予熱室)の何れで予熱処理されても、同一の移動距離あるいは移動時間を経て浸炭装置7A~7D(浸炭室)に搬送されて浸炭処理を受ける。
【0067】
すなわち、この多室型熱処理装置Sでは、4つの予熱装置4A~4D(予熱室)から4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)に搬送される間の搬送冷却状態が全ての予熱装置4A~4D(予熱室)について均一である。したがって、このような多室型熱処理装置Sによれば、浸炭処理前における各々の金属部品Xの温度(予熱温度)を均一化できるので、各々の金属部品Xに均一な浸炭処理を施すことが可能である。
【0068】
さらに、本実施形態に係る多室型熱処理装置Sでは、4つの予熱装置2A~2D(予熱室)から4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)までの金属部品Xの移動距離あるいは移動時間が全ての予熱装置2A~2D(予熱室)について等しい。金属部品Xは、4つの予熱装置2A~2D(予熱室)の何れで予熱処理されても、同一の移動距離あるいは移動時間を経て浸炭装置7A~7D(浸炭室)に搬送されて浸炭処理を受ける。
【0069】
すなわち、この多室型熱処理装置Sでは、4つの予熱装置2A~2D(予熱室)から4つの浸炭装置7A~7D(浸炭室)に搬送される間の搬送冷却状態が全ての予熱装置2A~2D(予熱室)について均一である。したがって、このような多室型熱処理装置Sによれば、浸炭処理前における各々の金属部品Xの温度(予熱温度)を均一化できるので、各々の金属部品Xに均一な浸炭処理を施すことが可能である。
【0070】
上記実施形態の第1~第3変形例を、図4図6を参照して説明する。これらの変形例において、上記実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0071】
(第1変形例)
図4に示すように、第1変形例の多室型熱処理装置S1は、上記実施形態における多室型熱処理装置Sの第2中間搬送装置3に代えて、第2中間搬送装置31を備え、さらに4つの予熱装置4E~4H(処理装置)を備えている。第2中間搬送装置31は、内部に第2搬送室(図示せず)を備えた箱形の中空体であり、上述した搬入口3a、第2中継ステーション3b及び搬出口3cを備えている。
【0072】
4つの予熱装置4A~4Dは、平面視において第2中間搬送装置31の四隅に各別に配置されている。第2中間搬送装置31において、第2中継ステーション3bと4つの予熱装置4A~4Dとは、4つの搬送経路41~44を介してそれぞれ連結されている。これら搬送経路41~44は、図示していないが、金属部品Xを水平移動させる水平搬送装置や金属部品Xを上下移動させる昇降装置等から構成されている。搬送経路41~44は、平面視で第2中継ステーション3bから放射状且つ直線状に延びている。
【0073】
搬送経路41~44の各途中には、上記4つの予熱装置4E~4Hがそれぞれ配置されている。すなわち、第2中間搬送装置31における予熱装置4A~4D(処理装置)への搬送経路41~44内に、予熱装置4E~4H(他の処理装置)がそれぞれ配置されている。第2中間搬送装置31は、搬送経路41~44を介して予熱装置4A~4D及び予熱装置4E~4Hに金属部品Xをそれぞれ搬送するように構成されている。なお、複数の予熱装置4A~4Dのうちの1つの予熱装置への、第2中間搬送装置31における搬送経路(41,42,43または44)内に他の予熱装置(4E,4F,4Gまたは4H)が配置されていればよく、第2中間搬送装置31は、上記搬送経路を介して上記1つの予熱装置及び上記他の予熱装置に金属部品Xをそれぞれ搬送するように構成されていればよい。
【0074】
なお、第1変形例の多室型熱処理装置S1では、予熱装置4A~4Dから浸炭装置7A~7Dまでの金属部品Xの各移動距離が、予熱装置4E~4Hから浸炭装置7A~7Dまでの金属部品Xの各移動距離よりも長い。予熱装置4A~4Dから浸炭装置7A~7Dまでの金属部品Xの各移動時間と、予熱装置4E~4Hから浸炭装置7A~7Dまでの金属部品Xの各移動時間とを互いに同等とする場合には、予熱装置4E~4Hにおいて予熱された金属部品Xが浸炭装置7A~7Dに向かう移動速度を、予熱装置4A~4Dにおいて予熱された金属部品Xが浸炭装置7A~7Dに向かう移動速度よりも遅くすればよい。
【0075】
平面視において第2中継ステーション3bから等距離となるように多くの処理装置を配置する場合、第2中継ステーション3bとこれら処理装置との間の搬送経路を長くする必要があり、結果として第2中間搬送装置が大型化する可能性がある。本変形例では、平面視において1つの搬送経路内に2つの処理装置が配置され、当該搬送経路を介してこれら2つの処理装置の各々に金属部品Xを搬送できるため、多くの処理装置を配置しても第2中間搬送装置の大型化を抑制することができる。
【0076】
なお、第2中間搬送装置31において、上記搬送経路の数が1~3または5以上であってもよいし、1つの搬送経路内に3つ以上の処理装置が配置されてもよい。1つの搬送経路内に配置された複数の処理装置の種類が互いに異なっていてもよい。
【0077】
(第2変形例)
図5に示すように、第2変形例の多室型熱処理装置S2は、上記実施形態の多室型熱処理装置Sが備える構成に加え、第3中間搬送装置6に装着された浸漬冷却装置9(処理装置、第2冷却装置)を備えている。第3中間搬送装置6は、上述した搬入口6a、第3中継ステーション6b及び搬出口6cに加え、第2搬出口6dを備えている。第2搬出口6dは、第3中間搬送装置6における第3搬送室から外部に金属部品Xを搬出するための開口である。
【0078】
浸漬冷却装置9は、浸漬槽9a、搬入口9b及び搬出口9cを備えている。浸漬槽9aは、冷媒として用いる油等の液体が貯留される槽であり、貯留された液体に金属部品Xが浸漬されることで金属部品Xの冷却が行われる。搬入口9bは、金属部品Xを浸漬槽9aに搬入するための開口である。浸漬槽9aは、搬入口9bと第3中間搬送装置6の第2搬出口6dとをボルト等の締結具で締結することにより、第3中間搬送装置6に接続されている。搬出口9cは、浸漬槽9a内の冷却後の金属部品Xを外部に取り出すための開口である。なお、図示しないが、金属部品Xを搬送する搬送装置や、浸漬槽9aに貯留された液体に金属部品Xを浸漬したり当該液体から金属部品Xを引き上げたりするための昇降装置等が、浸漬冷却装置9に設けられてもよい。
【0079】
浸漬冷却装置9は、一般的に、冷却ガス(気体)を冷媒として用いるガス冷却装置Rよりも高い冷却能力を有している。また、金属部品Xの種類や冷却条件に応じて、浸漬冷却装置9での冷却が好ましくなく、ガス冷却装置Rでの冷却が好ましい場合もある。本変形例の第3中間搬送装置6には、ガス冷却装置R及び浸漬冷却装置9がいずれも装着されているので、金属部品Xの種類や冷却条件が変更された場合でも段取り替え等を行うことなく、金属部品Xの種類に応じた適切な冷却方法を選択できる。
【0080】
(第3変形例)
図6に示すように、第3変形例の多室型熱処理装置S3は、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6が、平面視で直線状に配置されている。本変形例の第2中間搬送装置3の搬入口3aと搬出口3cとは、互いに対向して配置されている。
【0081】
第2中間搬送装置3の搬入口3aと搬出口3cとが互いに対向して配置されているので、搬入口3aから搬出口3cに向かう搬送経路を直線状とすることができる。よって、金属部品Xを第1中間搬送装置1から第3中間搬送装置6に搬送する際に、第2中間搬送装置3の上記搬送経路を介することで、上記実施形態よりも迅速且つ円滑に金属部品Xを搬送することが可能となる。
【0082】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、処理装置つまり各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dを第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に対してユニット化することにより異なる熱処理を金属部品Xに施すように構成したが、本開示はこれに限定されない。熱処理の他の形態である例えば冷却処理を金属部品Xに施す複数の冷却装置(第1及び第2冷却装置)をユニット化することにより、異なる冷却処理(熱処理)を金属部品Xに施してもよい。
【0083】
金属部品Xに対する冷却手法としては、上述したガス冷却装置8のように冷却ガスを冷媒として用いる手法(ガス冷却)の他に、油(液体)を冷媒として用いる油冷却(浸漬冷却)や水等の冷媒のミスト用いるミスト冷却等が知られている。また、同一の冷却手法を採用する冷却装置であっても、異なる冷却履歴(冷却カーブ)で金属部品Xを冷却する必要が発生し得る。
【0084】
このような金属部品Xに対する冷却処理の需要を考慮すると、異なる冷却手法の冷却装置(油冷却装置あるいはミスト冷却装置等)や冷却手法が同一であっても異なる冷却履歴(冷却カーブ)に設定された冷却装置、つまり金属部品Xに対して異なる冷却処理を施す複数の冷却装置(第1及び第2冷却装置)を第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3あるいは/及び第3中間搬送装置6に装着してもよい。
【0085】
(2)上記実施形態では、3つの中間搬送装置つまり第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6を連接したが、本開示はこれに限定されない。中間搬送装置の個数は1つあるいは2つでもよく、また4つ以上であってもよい。例えば第3中間搬送装置6のみを備える場合には、4つの浸炭装置7A~7Dの何れかを金属部品Xに浸炭処理以外の熱処理を施す処理装置(例えば予熱装置)に交換することによって、異なる熱処理を金属部品Xに施す多室型熱処理装置を構成することができる。
【0086】
(3)上記実施形態では、処理装置として予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び浸炭装置7A~7Dを設けたが、本開示はこれに限定されない。すなわち、処理装置の種類としては、予熱処理、均熱処理、また浸炭処理に代えて、あるいは予熱処理、均熱処理、また浸炭処理に加えて他の処理(本加熱処理あるいは窒化処理等)を行う装置でもよい。
【0087】
例えば、4つの浸炭装置7A~7Dを金属部品Xに本加熱処理を施す本加熱装置に変更してもよい。すなわち、4つの浸炭装置7A~7Dに代えて、本加熱装置を本処理装置として採用してもよい。このような多室型熱処理装置によれば、金属部品Xに焼き入れ処理を行うことができる。また、4つの浸炭装置7A~7Dを加熱環境下で金属部品Xに窒化処理を施す窒化装置に変更してもよい。すなわち、4つの浸炭装置7A~7Dに代えて、窒化装置を本処理装置として採用してもよい。このような多室型熱処理装置によれば、金属部品Xに窒化処理を行うことができる。
【0088】
(4)上記実施形態では、3つの中間搬送装置つまり第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に各々1つの搬入口及び搬出口を設けたが、本開示はこれに限定されない。各中間搬送装置に金属部品Xに関する複数の搬入口あるいは/及び搬出口を設けてもよい。
【0089】
すなわち、上記実施形態では第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6が各々1つの搬入口及び搬出口を備えているので、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6を直列状態に連接したが、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6に搬入口あるいは/及び搬出口を複数設けることにより、第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3及び第3中間搬送装置6を搬送経路が分岐するように連接することが可能となる。
【0090】
(5)上記実施形態では、第3中間搬送装置6の搬出口6cにガス冷却装置8を接続したが、本開示はこれに限定されない。ガス冷却装置8に代えて、例えば油冷却装置あるいはミスト冷却装置を採用しても良い。ガス冷却装置8は、冷却ガス(気体)を冷媒として用いる関係で冷却能率が油冷却やミスト冷却よりも冷却能率が低い。したがって、より高い冷却能率が必要な場合には、ガス冷却装置8に代えて油冷却装置あるいはミスト冷却装置を用いても良い。
【0091】
(6)上記実施形態では1つのガス冷却装置8(冷却装置)を設けたが、本開示はこれに限定されない。すなわち、ガス冷却装置8、油冷却装置及びミスト冷却装置等の冷却装置を複数設けてもよい。また、このような複数の冷却装置を直列的に連接したり、あるいは中間搬送装置に複数設けた搬出口の各々に冷却装置を連接したりしてもよい。
【0092】
(7)上記実施形態では、第2中間搬送装置3に均熱装置5(均熱室)を設けたが、本開示はこれに限定されない。必要に応じて均熱装置5(均熱室)を省略しても良い。また、この場合に予熱装置2A~2D,4A~4D(予熱室)から浸炭装置7A~7D(浸炭室)に搬送する時間(搬送時間)を長時間化することにより、当該搬送時間を均熱時間として利用することが考えられる。
【0093】
(8)上記実施形態では、第2中間搬送装置3のみに均熱装置5を装着したが、本開示はこれに限定されない。例えば第2中間搬送装置3に代えて第1中間搬送装置1及び/あるいは第3中間搬送装置6に均熱装置5を装着してもよく、あるいは第2中間搬送装置3に加えて第1中間搬送装置1及び/あるいは第3中間搬送装置6に均熱装置5を装着してもよい。
【0094】
(9)上記実施形態では、各予熱装置2A~2D,4A~4D、均熱装置5及び各浸炭装置7A~7Dを第1中間搬送装置1、第2中間搬送装置3あるいは第3中間搬送装置6の上側に設けたが、本開示はこれに限定されない。例えば、各予熱装置2A~2Dを第1中間搬送装置1の下側に設け、同じく各予熱装置4A~4D及び均熱装置5を第2中間搬送装置3の下側に設け、また各浸炭装置7A~7Dを第3中間搬送装置6の下側に設けてもよい。
【0095】
(10)金属部品Xは、本開示の多室型熱処理装置によって熱処理される前に、例えば切削加工によって作製される場合がある。当該切削加工後の金属部品Xには切削油や切りくずが付着している可能性があるため、適切な熱処理のためには切削油等を金属部品Xから除去することが好ましい。このため、例えば第1中間搬送装置1の搬入口1a近傍の予熱装置2A及び2B、すなわち本開示の多室型熱処理装置において最も上流側の処理装置を洗浄装置に交換し、当該洗浄装置で金属部品Xを洗浄した後に、下流側の予熱装置に搬送して予熱してもよい。また、第1中間搬送装置1の処理装置を全て洗浄装置としてもよい。すなわち、本開示の中間搬送装置には、予熱処理に先行して金属部品Xを洗浄する洗浄装置が装着されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
S,S1,S2,S3 多室型熱処理装置
X 金属部品(被処理物)
1 第1中間搬送装置
1a 搬入口
1b 第1中継ステーション
1c 搬出口
2A~2D 予熱装置(処理装置)
3,31 第2中間搬送装置
3a 搬入口
3b 第2中継ステーション
3c 搬出口
4A~4D 予熱装置(処理装置)
4E~4H 予熱装置(他の処理装置)
41~44 搬送経路
5 均熱装置
6 第3中間搬送装置
6a 搬入口
6b 第3中継ステーション
6c 搬出口
7A~7D 浸炭装置(処理装置)
8 ガス冷却装置(処理装置、第1冷却装置)
8a 搬入口
8b 冷却チャンバ
8c 循環チャンバ
8f 搬出口
9 浸漬冷却装置(処理装置、第2冷却装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6