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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】種子コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/06 20060101AFI20220331BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
A01N25/00 102
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019527421
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2017001536
(87)【国際公開番号】W WO2018096394
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】62/425,870
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516248587
【氏名又は名称】インコテック ホールディング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】タイラー アラン リース
(72)【発明者】
【氏名】ライアン トーマス レサム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード ヘンリー デニー
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/060230(WO,A1)
【文献】特開2001-120012(JP,A)
【文献】特表2002-532390(JP,A)
【文献】国際公開第2015/003624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/06
A01N 25/00
A01N 37/46
A01N 43/36
A01N 43/54
A01N 43/78
A01N 51/00
A01P 3/00
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物であって:
前記種子コーティング組成物は、8~12重量%のポリマー結合剤を含有し;
前記充填剤は、タルクを含み;並びに
前記繊維材料は、セルロース繊維を含み、ここで、前記セルロース繊維は、10~120μmの範囲の中央体積粒径値(median volume particle diameter value)(D(v,0.5)値)を有する、
種子コーティング組成物
【請求項2】
前記ポリマー結合剤が、少なくとも1つのポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の種子コーティング組成物。
【請求項3】
前記ポリマー結合剤が、ポリビニルピロリドンを含む、請求項1又は2に記載の種子コーティング組成物。
【請求項4】
20重量%未満の水を含有する、請求項1からのいずれか一項に記載の種子コーティング組成物。
【請求項5】
充填剤粒子と繊維材料との比が、重量で0.5~15.0:1である、請求項1からのいずれか一項に記載の種子コーティング組成物。
【請求項6】
ポリマー結合剤の50重量%超が、ポリビニルピロリドンである、請求項1からのいずれか一項に記載の種子コーティング組成物。
【請求項7】
前記ポリマー結合剤が、ポリビニルピロリドン、並びにビニルアセテートコポリマー及び/又はポリビニルアルコールを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の種子コーティング組成物。
【請求項8】
ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物を形成する方法であって、前記方法は、ポリマー結合剤を含有する水性組成物プレブレンド(pre-blend)と、充填剤及び繊維材料を含有する粉末プレブレンドとを組み合わせることを含み、ここで:
前記種子コーティング組成物は、8~12重量%のポリマー結合剤を含有し;
前記充填剤は、タルクを含み;並びに
前記繊維材料は、セルロース繊維を含み、ここで、前記セルロース繊維は、10~120μmの範囲の中央体積粒径値(median volume particle diameter value)(D(v,0.5)値)を有する、方法。
【請求項9】
前記粉末プレブレンドが、70~90重量%の充填剤及び/又は10~30重量%の繊維材料を含有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー結合剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項及びのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性組成物プレブレンドが、(i)22~50重量%のポリマー結合剤、(ii)45~65重量%の水、及び任意により(iii)5~15重量%の顔料を含有する、請求項から1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記水性組成物プレブレンドと粉末プレブレンドとの比が、0.25~0.60:1である、請求項から1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
種子をコーティングする方法であって、前記方法は、ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物を、種子に塗布することを含み、ここで:
前記種子コーティング組成物は、8~12重量%のポリマー結合剤を含有し;
前記充填剤は、タルクを含み;並びに
前記繊維材料は、セルロース繊維を含み、ここで、前記セルロース繊維は、10~120μmの範囲の中央体積粒径値(median volume particle diameter value)(D(v,0.5)値)を有する、方法。
【請求項14】
前記ポリマー結合剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
外殻層(encrustment layer)を形成する、請求項1及び1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有するコーティングを有する種子であって:前記種子コーティング組成物は、8~12重量%のポリマー結合剤を含有し;
前記充填剤は、タルクを含み;並びに
前記繊維材料は、セルロース繊維を含み、ここで、前記セルロース繊維は、10~120μmの範囲の中央体積粒径値(median volume particle diameter value)(D(v,0.5)値)を有する、種子
【請求項17】
前記ポリマー結合剤がポリビニルピロリドンを含む、請求項1に記載の種子。
【請求項18】
コーティング層と種子との比が、重量で0.05~0.5:1である、請求項1及び17のいずれか一項に記載の種子。
【請求項19】
前記種子が、トウモロコシ、ダイズ又はイネである、請求項1から18のいずれか一項に記載の種子。
【請求項20】
ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物におけるセルロース繊維の使用であって、前記セルロース繊維の使用は、前記組成物が種子上にコーティングされる際に必要とされる乾燥時間を短縮するための使用であり、ここで:
前記種子コーティング組成物は、8~12重量%のポリマー結合剤を含有し;
前記充填剤は、タルクを含み;並びに
前記繊維材料は、セルロース繊維を含み、ここで、前記セルロース繊維は、10~120μmの範囲の中央体積粒径値(median volume particle diameter value)(D(v,0.5)値)を有する、使用
【請求項21】
前記セルロース繊維が、ポリビニルピロリドンと組み合わせて使用される、請求項2に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で2016年11月23日に出願された米国仮特許出願第62/425,870号の優先権を主張し、当該出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、種子コーティング組成物、種子コーティング組成物を形成する方法、及び種子上にコーティングする方法、並びにコーティングされた種子に関する。
【背景技術】
【0003】
植物種子は、例えば取り扱い中の損傷から種子を保護するため、及び/又は取り扱い特性を改善するために、播種前にしばしばコーティングされる。種子は、発芽時に種子及び苗に有用な物質(活性成分)、例えば植物栄養素、成長促進剤、及び植物保護製品を提供するために、しばしばコーティングされる。種子コーティング中に活性成分を提供することの重要な利点は、苗ごとに正確かつ制御された放出及び用量を可能にすることである。典型的な種子コーティング方法は、種子のフィルムコーティング、ペレット化及びエンクラスティング(encrusting)を含む。
【0004】
種子をコーティングすることの利点としては、サイズの増大、化学的充填能力の増加、耐摩耗性、滑らかな表面、低粉塵、高い植栽性(plantability)、及び良好な耐久性が挙げられる。改善された前述の特性を提供し、かつ低減された乾燥要件を有する種子コーティング組成物が必要とされている。
【0005】
典型的な種子コーティング方法は、種子のフィルムコーティング、ペレット化及びエンクラスティングを含む。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、前述の問題の少なくとも1つを克服するか又は有意に減少させる種子コーティング組成物を発見した。
【0007】
従って、第1の態様では、本発明は、ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、種子コーティング組成物を形成する方法であって、ポリマー結合剤を含有する水性組成物プレブレンドと、充填剤及び繊維材料を含有する粉末プレブレンドとを組み合わせることを含む、方法に関する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、種子をコーティングする方法であって、ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有する種子コーティング組成物を、種子に塗布することを含む、方法に関する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、ポリマー結合剤、充填剤及び繊維材料を含有するコーティングを有する種子に関する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、種子コーティング組成物におけるセルロース繊維の使用であって、当該組成物が種子上にコーティングされる際に必要とされる乾燥時間を短縮するための、使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の種子コーティング組成物は、驚くべきことに、幅広い望ましい種子コーティング特性、例えば水透過性、良好な耐摩耗性、低粉塵放出、短い乾燥時間、良好な流動性及び植物性、低凝集性、良好な化粧性及び/又は被覆率、増加する数の望ましい栄養素を添加するためのより高い能力、及び種子及び植物保護剤、及び/又は植栽性のための増大した種子サイズを提供することができる。
【0013】
用語「種子」は、本明細書で使用される場合、特に、保護的覆いで囲まれた胚を含む、被子植物及び裸子植物の成熟した胚珠を指すことを意味する。特に、前記用語は穀類の仁(kernels)を包含する。保護的覆いは種子被膜(種皮)を含み得る。いくつかの種子は、種子被膜の周りに果皮又は果実被膜を含む。特に、穀類の仁のように、この層が種子に密着している場合、一部の場合には、それは穎果又は痩果と称される。本明細書で使用される場合、用語「種子被膜」は、穎果又は痩果を含むことを意味する。用語「種子」とは、ペレット種子、真正種子(true seeds)、植物苗、根茎、再生可能かつ植物を形成する組織、及び塊茎又は球根を含む、植物を生産するために農業で植えられる任意のものを含む。
【0014】
用語「コーティング(coating)」は、本明細書で使用される場合、例えば種子の周りの材料の層として、種子の表面に材料を塗布することを指すことを意味する。コーティングは、フィルムコーティング、ペレット化、及びエンクラスティング、又は当該技術分野で知られているこれらの技術の組み合わせを含む。ペレット化によって得られるペレットは、種子ピル(seed pills)としても知られている。エンクラスティングは、特に好ましい。コーティングは好ましくは、実質的に種子の表面全体にわたって、例えば種子の表面積の90%以上にわたって塗布されて、層を形成する。しかしながら、コーティングは完全又は部分的であってもよく、例えば種子の表面積の20%以上、又は50%以上にわたってもよい。
【0015】
用語「種子コーティング組成物」は、本明細書で使用される場合、種子のコーティングのために使用されることになる組成物を指すことを意味する。
【0016】
用語「異なる位置」は、本明細書で使用される場合、異なる混合容器内、好ましくは異なる建物又は敷地内にあり、より好ましくは少なくとも5マイル離れていることを意味する。したがって、一実施形態では、本明細書に定義された水性組成物プレブレンド及び粉末プレブレンドは、それらの関連する個々の成分を混合することによって別々に調製され、次いで包装され、保存及び/又は輸送されて、その後にのみ、異なる位置で、他の任意の成分、例えば生物学的活性成分と一緒に組み合わされて、種子コーティング組成物を形成する。
【0017】
用語「植物増強剤」は、本明細書で使用される場合、例えば植物、種子、又は植物に有害な生物、例えば真菌、害虫及び昆虫に対する生物学的効果を通じて、直接的又は間接的に植物又は植物種子に有利である任意の成分を指すことを意味する。植物増強剤は、植物保護製品、薬害軽減剤、成長促進剤、成長調節剤、栄養素、などを含む。
【0018】
種子は、植物種子、例えば農作物あるいは畑作物の種子、野菜種子、ハーブ種子、野草種子、観賞用種子、草種子、樹木種子、又は低木種子である。
【0019】
好ましくは、植物種子は、農作物の種子である。種子は、単子葉植物網(Monocotyledoneae)の目、又は双子葉植物網(Dicotyledoneae)の目の種子であり得る。好適な種子は、ダイズの種子、ワタ、トウモロコシ(corn)、ピーナッツ、トウモロコシ(maize)、小麦、大麦、オーツ麦、ライムギ、マスタード、アブラナ(キャノーラ)、ヒマワリ、サトウダイコン、ベニバナ、キビ(millet)、チコリ、亜麻、レイプ種子(rapeseed)、ソバ、タバコ、麻種子、アルファルファ、シグナルグラス(signal grass)、クローバー、ソルガム、ヒヨコマメ、豆、エンドウ豆、ベッチ(vetch)、イネ、サトウキビ、グアユール、及び亜麻仁、を含む。好適な野菜種子の例としては、アスパラガス、チャイブ(chives)、セロリ、ニラ、ニンニク、ビートルート(beetroot)、ホウレンソウ、ビート、カーリーケール、カリフラワー、発芽ブロッコリー、サボイキャベツ、白キャベツ、赤キャベツ、コールラビ(kohlrabi)、ハクサイ、カブ、エンダイブ(endive)、チコリ、スイカ、メロン、キュウリ、ガーキン(gherkin)、マロー(marrow)、パセリ、フェンネル、エンドウ豆、豆、ダイコン、ブラック・サルシファイ(black salsify)、ナス、スイートコーン、ポップコーン、ニンジン、タマネギ、トマト、ピーマン(pepper)、レタス、サヤエンドウ、ウリ科植物、エシャロット、ブロッコリー、アブラナ属(Brassica)、及び芽キャベツ、が挙げられる。
【0020】
好ましくは、植物種子は、トウモロコシ、ダイズ及びイネからなる群から選択され、特に、トウモロコシである。
【0021】
好ましくは、植物種子は、発芽することが可能である。任意により、種子は、殻が除かれていてもよい(いわゆる脱穀(husked)種子又は脱皮(de-hulled)種子)。種子は、プライミング(発芽率を改善するための処理、例えばオスモプライミング(osmopriming)、ハイドロプライミング(hydropriming)、マトリクスプライミング(matrix priming)に供されていること)されていてもいなくてもよい。
【0022】
1つ以上のポリマー結合剤が、本願発明の種子コーティング組成物中に存在する。少なくとも1つのポリマー結合剤は、好ましくは有機ポリマー結合剤であり、より好ましくは合成ポリマー結合剤である。ポリマー結合剤は、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリウレタン、セルロース(エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシメチルプロピルセルロースを含む)、ポリビニルピロリドン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、多糖類、脂肪、油、タンパク質、アラビアゴム、セラック、塩化ビニリデン、塩化ビニリデンコポリマー、カルシウムリグノスルホネート、ポリアクリレート、アクリルコポリマー、デンプン、ポリビニルアクリレート(polyvinylacrylates)、ゼイン、カゼイン、ゼラチン、キトサン、プルラン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、アクリルアミドポリマー、アクリルアミドコポリマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリルアミドポリマー、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、アルギン酸ナトリウム、ポリクロロプレン及びシロップからなる群から選択され得る。これら結合剤は、単独で、あるいは2つ、もしくは3つ、又はそれ以上の組み合わせで使用されてもよい。好ましい結合剤は、以下、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリレート、特にポリビニルピロリドン、ビニルアセテートコポリマー、及びポリビニルアルコール、からなる群から選択することができる。
【0023】
一実施形態では、コーティング組成物中のポリマー結合剤は、ポリビニルピロリドンを含み、好適には、存在するポリマー結合剤の総重量に基づいて30重量%超、好ましくは50重量%超が、ポリビニルピロリドンである。
【0024】
一実施形態では、コーティング組成物は好適には、(i)60~98重量%、好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~92重量%、特に87~91重量%、及び特に88~90重量%の範囲のポリビニルピロリドン、並びに(ii)2~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~20重量%、特に9~13重量%、及び特に10~12重量%の範囲のポリビニルピロリドン以外のポリマー結合剤;を含み、これらはいずれも、コーティング組成物中のポリマー結合剤の総重量に基づく。
【0025】
本明細書で使用されるポリビニルピロリドンは、好適には、1,000~40,000、好ましくは5,000~20,000、より好ましくは9,000~11,000、特に9,500~10,500、及び特に9,800~10,200の範囲の分子量(重量平均)を有する。
【0026】
ポリビニルピロリドン以外の任意のポリマー結合剤は、本明細書に記載された他のポリマー結合剤から選択されてもよく、特に、ビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。好適なビニルアセテートコポリマーは、ビニルアセテート-Veova(又はビニルバーサテート(vinyl versatate))コポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、ビニルアセテート-(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレートコポリマー、及び特にビニルアセテート-Veovaコポリマーを含む。Veova(商標)は、Momentive Speciality Chemicals Inc.によって販売されている、様々な高度に分岐した合成カルボン酸を有するビニルエステル(ビニルバーサテート)である。
【0027】
一実施形態では、コーティング組成物中のポリマー結合剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びビニルアセテートコポリマー、好ましくはビニルアセテート-Veovaコポリマーの混合物を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0028】
コーティング組成物中に存在するビニルアセテートコポリマー、好ましくはビニルアセテート-Veovaコポリマーと、ポリビニルアルコールとの比は、好適には、重量で0.1~10.0:1、好ましくは0.3~3.0:1、より好ましくは0.6~2.0:1、特に1.0~1.2:1、及び特に1.05~1.15:1の範囲である。
【0029】
ポリビニルアルコールは好適には、2,000~100,000、好ましくは25,000~60,000、より好ましくは35,000~45,000、特に38,000~41,000、及び特に39,000~40,000の範囲の分子量(重量平均)を有する。ビニルアセテートコポリマー、好ましくはビニルアセテート-Veovaコポリマーは、好適には、2,000~100,000、好ましくは20,000~70,000の範囲の分子量(重量平均)を有する。
【0030】
本明細書に記載のポリマー結合剤の分子量(重量平均)は、当該技術分野で良く知られている技術、例えば光散乱、サイズ排除HPLC又は質量分析によって、好ましくは質量分析によって決定することができる。
【0031】
種子コーティング組成物中のポリマー結合剤の量は、好適には、組成物の総重量に基づいて3~40重量%、好ましくは6~25重量%、より好ましくは8~12重量%、特に9.4~9.9重量%、及び特に9.6~9.7重量%の範囲である。
【0032】
種子コーティング組成物の充填剤成分は、任意の好適な有機又は無機材料であり得る。本明細書で使用される定義によれば、充填剤成分は、任意の繊維材料を除く。好適な有機充填剤材料は、トウモロコシデンプン粉末である。好適な無機充填剤材料は、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、軽石、パーライト、炭酸カルシウム、シリカ、ケイ酸塩、硫酸バリウム、二酸化チタン、及び硫酸カルシウム、からなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくはタルクを含む。
【0033】
充填剤は好ましくは、タルク及び/又はトウモロコシデンプン粉末、より好ましくはタルクを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0034】
充填剤は、好ましくは粒子状であり、例えば、不規則形状、球状、略球状、ディスク、小板(platelet)又は棒状であり得る。充填剤は好ましくは、粒子状の板状である。充填剤成分は、非繊維状である。
【0035】
充填剤、好ましくはタルクは、好適には、Sedigraph III Plus Particle Size Analyzerを用いてx線沈降(x-ray sedimentation)によって決定された、0.1~50μm、好ましくは3~25μm、より好ましくは8~18μm、特に11~14μm、及び特に12~13μmの範囲の中央粒径(median particle size)を有する。
【0036】
種子コーティング組成物中の充填剤、好ましくはタルクの量は、好適には、組成物の総重量に基づいて20~90重量%、好ましくは35~80重量%、より好ましくは45~70重量%、特に51~63重量%、及び特に55~59重量%の範囲である。
【0037】
繊維材料は、任意の好適な有機又は無機繊維又は繊維粒子を含み得る。繊維は、天然及び/又は合成材料の繊維であり得る。好適な繊維は、野菜繊維、木材繊維、及び動物繊維を含む。
【0038】
野菜繊維は、通常セルロースの繊維であり、しばしばリグニンとの組み合わせである。好適な例としては、綿、竹、大麻、黄麻、亜麻、ラミー(ramie)、サイザル麻、バガス、及びバナナが挙げられる。
【0039】
木材繊維は、樹木源由来であることから、野菜繊維とは区別される。形態としては、砕木、レース樹皮(lacebark)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、並びに漂白若しくは未漂白クラフトパルプ又は亜硫酸パルプが挙げられる。リグニンは、クラフト及び亜硫酸タイプのパルプ化プロセスでは除去される。
【0040】
動物繊維は、主にタンパク質ベースである。例としては、カイコシルク、スパイダーシルク、腱、腸線、羊毛、シーシルク(sea silk)、並びに毛髪、例えばカシミヤウール、モヘア及びアンゴラ、毛皮、例えば羊皮、ウサギ、ミンク、キツネ、ビーバー、等が挙げられる。
【0041】
個々の繊維粒子は、好適には、平均アスペクト比d1:d2(ここで、d1及びd2はそれぞれ、繊維の長さ及び幅である)であって、3~50:1、好ましくは5~25:1、より好ましくは7~15:1、特に8~12:1、及び特に9~11:1の範囲の平均アスペクト比を有する。繊維の数による平均の長さは、好適には、20~1,000μm、好ましくは50~500μm、より好ましくは200~400μm、特に260~340μm、及び特に280~320μmの範囲である。繊維の数による平均の幅は、好適には、5~100μm、好ましくは10~50μm、より好ましくは20~40μm、特に26~34μm、及び特に28~32μmの範囲である。繊維粒子のサイズは、透過型電子顕微鏡を用いることによって得られる投影画像から選択された繊維の長さ及び幅を測定することによって決定することができる。正確な平均値を統計的に保証するために、少なくとも1,000個の繊維粒子が測定され得る。
【0042】
本発明で使用される繊維材料は、好ましくは、セルロース繊維を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。セルロース繊維は、天然繊維又は製造繊維(すなわちパルプに形成され、次いで押し出し成形された)であってもよく、好ましくは天然繊維である。セルロース繊維は、それらの天然の化学的形態であっても、又は化学的に修飾されていてもよく、好ましくは、非化学的に修飾されている。
【0043】
セルロース繊維は、好ましくは、実質的に非化学的に修飾された及び/又は非化学的に誘導体化されたセルロースを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。好ましくは、少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、及び特に少なくとも99重量%のセルロース繊維が、非修飾及び/又は非誘導体化セルロースのセルロース繊維である。
【0044】
セルロースとは、繰り返しモノマー式(C6105nを有し、各グルコースモノマー単位がグリコシドβ(1→4)結合を介して隣接モノマーに結合している、有機多糖化合物を含む材料を意味することが理解されるであろう。
【0045】
セルロース繊維は、例えば全てが同一の分子量を有する、1つの特定のタイプのセルロースのみからなるという点で均質であり得る。代替実施形態では、セルロース繊維は、それらが混合物、例えば異なる分子量を有する混合物を含むという点で不均一であり得る。
【0046】
セルロースは当然のことながら、好ましくは、天然供給源(例えば、木材パルプセルロース、綿由来セルロース、又は竹由来セルロース)に由来し、そのように由来するセルロース繊維は、供給源に応じて複数の類似成分を含むことになる。セルロース繊維は、好ましくは、木材パルプに由来する。硬質木材に由来するセルロース繊維が好ましい場合がある。
【0047】
本明細書で使用されるセルロース繊維は、500~20,000、好ましくは1,000~15,000、より好ましくは2,000~10,000個の範囲のモノマー単位を含むセルロースを含み得る。
【0048】
セルロース繊維は、いくつかの既知のタイプのセルロース、例えばアルファ-セルロース(α-セルロース)、ベータ-セルロース(β-セルロース)及びガンマ-セルロース(γ-セルロース)を含み得る。
【0049】
一実施形態では、セルロース繊維は、好適には、高α-セルロース含有量、好ましくは70重量%超、より好ましくは80重量%超、特に90重量%超、及び特に98重量%超を含む。
【0050】
セルロース繊維のカルボキシル含有量は、5モル%未満、好ましくは1モル%未満であり得る。
【0051】
セルロース繊維は、低い灰分含有量、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.75重量%未満、及び特に0.5重量%未満を有し得る。
【0052】
セルロース繊維は好ましくは、20~200g/l、より好ましくは40~100g/l、及び特に60~80g/lの範囲のかさ密度(bulk density)を有する。
【0053】
繊維粒子径(又は任意の他の非球状形態)は、前記繊維の球径に正規化又は変換され得る。粒子径の分布の形では、繊維粒子は、中央体積粒径値(median volume particle diameter value)を有する。中央体積粒径とは、母集団を正確に二等分する分布上の点に相当する球相当径(equivalent spherical diameter)を指すことが理解されるであろう。それは、粒子の直径に体積百分率を関連付ける累積分布曲線上で読み取られる全繊維粒子の体積の50%に相当する点であり、すなわち、分布の50%はこの値よりも上であり、かつ50%は下である。この値は、「D(v,0.5)」値と称され、好適には、本明細書で記載のように決定される。
【0054】
さらに、「D(v,0.9)」及び「D(v,0.1)」値も参照され、これらの値は、粒子の直径に体積百分率を関連付ける累積分布曲線上で読み取られる全繊維粒子の体積のそれぞれ90%又は10%に相当する球相当径であり、すなわち、これらは、分布の10%又は90%がこの値よりも上であり、かつ90%又は10%がそれぞれ値よりも下である点である。
【0055】
D(v,0.5)、D(v,0.1)、及びD(v,0.9)値を決定するために使用される繊維粒子径値は、好適には、動的光散乱分析に基づく技術により、好ましくは本明細書に記載された特定の方法を用いて測定される。
【0056】
繊維、好ましくはセルロース繊維のメジアン径(median size)及び/又はサイズ分布は、所望の特性を有する種子コーティング組成物を得る際の重要なパラメータであり得ることが見出された。
【0057】
繊維、好ましくはセルロース繊維の粒子は、好適には、10~120μm、好ましくは30~100μm、より好ましくは45~75μm、特に55~65μm、及び特に58~62μmの範囲のD(v,0.5)値を有する。
【0058】
繊維粒子は、好適には、700μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満、特に350μm未満、及び特に300μm未満のD(v,0.9)値を有する。
【0059】
好適には、繊維粒子は、70μm超、より好ましくは150μm超、特に230μm超、及び特に250~290μmの範囲のD(v,0.9)値を有する。
【0060】
繊維粒子は、好適には、25μm未満、より好ましくは、20μm未満、特に18μm未満、及び特に17μm未満のD(v,0.1)値を有する。
【0061】
好適には、繊維粒子は、5μm超、より好ましくは、8μm超、特に12μm超、及び特に14~16μmの範囲のD(v,0.1)値を有する。
【0062】
D(v,0.9)とD(v,0.1)との値の比は、粒子径分布の幅を表し、従って、中央粒径値の付近で分布がどのように定義されるかを表す。繊維粒子についてのD(v,0.9)値とD(v,0.1)値との比は、好ましくは、5~40:1、より好ましくは10~30:1、特に15~25:1、及び特に17~20:1の範囲である。
【0063】
分布の幅は、D(v,0.9)値とD(v,0.1)値との間の差によって表すこともできる。繊維粒子についてのD(v,0.9)値とD(v,0.1)値との差は、好適には、50~600μm、好ましくは120~400μm、より好ましくは180~330μm、特に220~290μm、及び特に240~270μmの範囲である。
【0064】
繊維、好ましくはセルロース繊維の粒子の重量平均分子量は、好ましくは1,000~10,000,000、より好ましくは50,000~5,000,000、及び特に100,000~2,000,000の範囲である。
【0065】
種子コーティング組成物中の繊維材料、好ましくはセルロース繊維の量は、好適には、組成物の総重量に基づいて4~40重量%、好ましくは8~25重量%、より好ましくは11.0~18.0重量%、特に13.0~15.5重量%、及び特に14.0~14.5重量%の範囲である。
【0066】
好適なセルロース繊維は、例えば、CreaFill Fiber s Corp.(チェスタータウン、メリーランド州、USA)から、CreaTechの商標の下で、又はJ.Rettenmaier & Sohne Gmbh(ローゼンベルク、ドイツ)から、Arbocelの商標の下で市販されている。
【0067】
種子コーティング組成物中に存在する充填剤粒子、好ましくはタルクと、繊維材料、好ましくはセルロース繊維との比は、好適には、重量で0.2~30.0:1、好ましくは0.5~15.0:1、より好ましくは2.0~8.0:1、特に3.0~5.0:1、及び特に3.5~4.5:1の範囲である。
【0068】
種子コーティング組成物は、1つ又は複数の生物学的活性成分(植物増強剤、特に植物保護製品(plant protective product)(PPPとも称される)を含む)を含有してもよい。活性成分、特に植物増強剤の好適な例は、殺真菌剤、殺菌剤、殺虫剤(insecticidal agent)、殺線虫剤、殺軟体動物剤、生物製剤(biologicals)、殺ダニ剤(acaricides)又は殺ダニ剤(miticides)、殺害虫剤、及び殺生物剤である。さらに可能な活性成分としては、消毒剤、微生物、殺齧歯類剤(rodent killer)、除草剤(weed killers)(herbicides)、誘引剤、(鳥)忌避剤、植物成長調節剤(例えばジベレリン酸、オーキシン又はサイトカイニン)、栄養素(例えば硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄キレート)、植物ホルモン、ミネラル、植物抽出物、発芽刺激剤、フェロモン、生物学的製剤等が挙げられる。
【0069】
塗布される活性成分の量は、言うまでもなく、活性成分の種類及び使用される種子の種類に大きく依存する。しかしながら通常、1つ又は複数の活性成分の量は、種子の1kgあたり0.001~200gの範囲である。当業者は、活性成分及び使用される種子の種類に応じて活性成分の好適な量を決定することができる。例えば技術データシートを使用し及び/又は推奨事項に従うことによって、活性成分の供給業者(例えば、BASF、Bayer、Syngenta、DuPont等)の助言を使用し及びそれに従うことは、当業者にとって一般的な方法である。
【0070】
典型的な殺真菌剤は、キャプタン(N-トリクロロメチル)チオ-4-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシイミド)、チラム(テトラメチルチオペルオキシジカルボニックジアミド)(Proseed(商標)として市販されている)、メタラキシル(メチル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-(メトキシアセチル)-D,L-アラニナート)、フルジオキソニル(4-(2,2-ジフルオロ-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル)-1-H-ピロール-3-カルボニトリル;Maxim(商標)XLとしてメフォノキサム(mefonoxam)とのブレンドで市販されている)、ジフェノコナゾール(Dividend(商標)3FSとして市販されている)、カルベンダジム・イプロジオン(Rovral(商標)として市販されている)、イプコナゾール(Aristaから、以前はAgriphar又はChemturaから、Ranconaとして市販されている)、メフォノキサム(Apron(商標)XLとして市販されている)、テブコナゾール、カルボキシン、チアベンダゾール、アゾキシストロビン、プロクロラズ、プロチオコナゾール(BayerからRedigoとして市販されている)、セダキサン(SyngentaからVibranceとして市販されている)、シモキサニル(1-(2-シアノ-2-メトキシイミノアセチル)-3-エチルウレア)、フルジオキソニル、Syngentaからワキル(Wakil)として市販されているメタラキシル、シモキサニル及びフルジオキソニルの混合物、並びにオキサジキシル(N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-メトキシ-N-(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)アセトアミド)を含む。殺真菌剤(fungicide)は、種子コーティング組成物中に、コーティングされた種子の総重量で0.0001~10%の量で含まれ得る。
【0071】
典型的な殺菌剤は、ストレプトマイシン、ペニシリン、テトラサイクリン、アンピシリン、及びオキソリン酸を含む。
【0072】
典型的な殺虫剤は、ピレスロイド、有機リン酸塩、カラモイルオキシム(caramoyloxime)、ピラゾール、アミジン、ハロゲン化炭化水素、ネオニコチノイド、及びカルバメート並びにそれらの誘導体を含む。殺虫剤の特に好適なクラスは、有機リン酸塩、フェニルピラゾール及びピレスロイド(pyrethoid)を含む。好ましい殺虫剤は、テルブホス、クロルピリホス、フィプロニル、クロルエトキシホス、テフルトリン、カルボフラン、イミダクロプリド、及びテブピリムホスとして知られている殺虫剤である。市販の殺虫剤は、イミダクロプリド(Gaucho(商標)として市販されている)、及びクロチアニジン(BayerからPoncho(商標)として市販されている)、チアメトキサム(SyngentaからCruiser(商標)として市販されている)、チアクロプリド(BayerからSonidoとして市販されている)、シペルメトリン(Cypermetrin)(ChemturaからLangis(商標として市販されている)、メチオカルブ(BayerからMesurolとして市販されている)、フィプロニル(BASFからRegent(商標)として市販されている)、クロラントラニリプロール(リナキシピル(rynaxypyr)、5-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-(メチルカルバモイル)フェニル]-2-(3-クロロピリジン-2-イル)ピラゾール-3カルボキサミドとしても知られ、DuPontからCoragen(商標)として市販されている)並びにシアントラニリプロール(シアジパル、3-ブロモ-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-4’-シアノ-2’-メチル-6’-(メチルカルバモイル)ピラゾール-5-カルボキサニリドとしても知られる)を含む。
【0073】
市販の殺線虫剤は、アバメクチン(SyngentaからAvicta(商標)として市販されている)チオジカルブ(BayerからAeris(商標)として市販されている)を含む。
【0074】
典型的な殺軟体動物剤は、メタアルデヒド(LonzaからMeta(商標)として市販されている)又はニクロサミド(BayerからBayluscide(商標)として市販されている)、シアジピル(Cyazypir)及びリナキシピル(Rynaxypir)(DuPontから入手可能)を含む。
【0075】
好適な生物学的製剤の例としては、桿菌、トリコデルマ(Trichoderma)、根粒菌(窒素固定用)などが挙げられ、これらは、植物を保護し、及び/又は、植物の健康及び/又は生産能力を増強する種子処理材料として同定されている。
【0076】
これらのリストは網羅的なものではなく、新たな活性成分が継続的に開発されており、種子コーティング組成物に組み込まれ得る。
【0077】
本発明の種子コーティング組成物はまた、種子上にコーティングされた際に美的効果をもたらすように機能する1つ又は複数の任意の顔料を含み得る。顔料は好ましくは、無機材料であり、例えば、当該技術分野で知られている効果顔料及び/又は着色顔料であってもよい。
【0078】
好適な効果顔料の例としては、異なる粒子径の真珠光沢顔料が挙げられる。60μm以下の粒子径、又は15μm以下の粒子径を有する効果顔料が使用され得る。効果顔料の粒子径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。通常、効果顔料の粒子径は、1μm以上である。別の効果顔料は、アルミニウムであり得る。効果顔料は、種子上に魅力的な化粧的外観を作り出すために使用され得る。
【0079】
着色顔料の例としては、ピグメントレッド112(CAS No.6535-46-2)、ピグメントレッド2(CAS No.6041-94-7)、ピグメントレッド48:2(CAS No.7023-61-2)、ピグメントブルー15:3(CAS No.147-14-8)、ピグメントグリーン36(CAS No.14302-13-7)、ピグメントグリーン7(CAS No.1328-53-6)、ピグメントイエロー74(CAS No.6358-31-2)、ピグメントオレンジ5(CAS No.3468-63-1)、ピグメントバイオレット23(CAS No.6358-30-1)、ピグメントブラック7(CAS No.97793-37-8)、及びピグメントホワイト6(CAS No.98084-96-9)が挙げられる。着色顔料の粒子径は、好ましくは、100μm以下、より好ましくは50μm以下である。通常、着色顔料の粒子径は、25μm以上である。
【0080】
染料、例えばアントラキノン、トリフェニルメタン、フタロシアニン、それらの誘導体、及びジアゾニウム塩が、着色顔料に加えて、又はそれに代えて使用され得る。
【0081】
種子コーティング組成物中の顔料の量は、好適には、組成物の総重量に基づいて0~15重量%、好ましくは1.0~8.0重量%、より好ましくは2.0~5.0重量%、特に2.5~3.5重量%、及び特に2.8~3.2重量%の範囲である。
【0082】
本発明の種子コーティング組成物の1つの利点は、比較的低い含水量を有する組成物を用いて、必要な又は改善された種子コーティング特性を得ることができ、これによって、必要とされる乾燥のかなりの短縮、及び種子コーティングプロセスの効率の増大がもたらされることである。種子コーティング組成物中の水の量は、好適には、組成物の総重量に基づいて30重量%未満、好ましくは25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、特に14.0~17.0重量%、及び特に15.0~16.0重量%の範囲である。
【0083】
本発明の種子コーティング組成物はまた、界面活性剤、例えば湿潤剤、分散剤及び/又は乳化剤を含んでもよい。界面活性剤は、プレブレンド及び種子コーティング組成物中のワックス及び/又は顔料粒子を混合/乳化/分散させることを助けることができる。好適な界面活性剤は、イオン性及び非イオン性製品を含み、そして、有機変性ポリアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリウレタン、リン酸エステル、スターポリマー、及び/又は変性ポリエーテルの溶液を含む。
【0084】
本発明の種子コーティング組成物は、さらなる成分を含むことができ、斯かる成分は、例えば溶媒、増粘剤、消泡剤、保存剤、及び滑剤から選択される1つ又は複数である。
【0085】
好適な増粘剤は、寒天、カルボキシメチルセルロース、カラギーン、キチン、フコイダン、ガティ(ghatti)、アラビアガム、カラヤ(karaya)、ラミナラン、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸塩、グアーガム、キサンタンガム、ダイユータンガム、及びトラガカント、ベントナイト粘土、HEUR(疎水変性エトキシ化ウレタン)増粘剤、HASE(疎水変性、アルカリ膨潤性エマルジョン)増粘剤、及びポリアクリレートを含む。ガムが一般的に好ましく、それは、低コスト、有用性、及び得られるコーティングされたフィルムの物理的特性を高める優れた能力のためである。
【0086】
好適な消泡剤の例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、鉱油消泡剤、シリコーン消泡剤、及び非シリコーン消泡剤(例えばポリエーテル、ポリアクリレート)、ジメチルポリシロキサン(シリコーン油)アリールアルキル変性ポリシロキサン(arylalkyd modified polysiloxanes)、フュームドシリカを含有するポリエーテルシロキサンコポリマーが挙げられる。消泡剤は、種子コーティング組成物のいくつかの実施形態では、少なくとも1重量ppm、又は種子コーティング組成物の総重量に基づいて0.1~0.3重量%の量で存在してもよい。
【0087】
殺生物剤は、種子コーティング組成物のいくつかの実施形態では、種子に塗布する前、例えば貯蔵される際に、種子コーティング組成物の貯蔵寿命を延ばすために、例えば保存剤として含まれ得る。好適な殺生物剤の例としては、MIT(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン;CAS No.2682-20-4)、BIT(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン;CAS No.2632-33-5))、CIT(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、ブロノポール(2-ブロモ-2-ニトロ-プロパン-1,3-ジオール)、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
一実施形態では、種子コーティング組成物は、例えば国際公開第03/003812号に記載されたような、光反射性外観を有する種子を提供するために、不活性担体(存在する量で、環境に、特に種子又は成長する植物に有害な検出可能な結果をもたらさない担体)上に半透明ポリマーフィルムのフレークをさらに含む。好ましくは、半透明ポリマーフィルムは光反射性粒子を含む。
【0089】
種子コーティング組成物は、水以外の1つ又は複数の溶媒をさらに含有し得る。溶媒は、アルコール、及び炭化水素からなる群から選択され得る。溶媒の混合物も使用され得る。溶媒は、20℃及び1atmで液体であることが好ましい。好適な溶媒の例としては、グリコール並びにそのエステル及びエーテル、特にエチレン及びプロピレングリコール並びにそのエステル及びエーテル、例えば、C1-C6アルキル基及び/又は芳香族基を有するエステル及びエーテル、例えば、モノエーテル及びジアルキルエーテルを含む、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンジル及びフェニルエーテル、並びにこれらエーテルのエステル、例えばアセテート、及び、例えば脂肪酸のエチレン及びプロピレングリコールエステル;ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール並びに、特に脂肪酸とのそのエステル;ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ポリエチレングリコール;N-メチルピロリドン、グリセリン、最大で10個の炭素原子を有するアルキルアルコール、例えばエタノール、プロパノール及びブタノール、が挙げられる。溶媒の他の例としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。重要な溶媒はエチレングリコールである。さらなる例としては、プロピレンテトラマー及び合成エステル油、例えば乳酸エステル、特に乳酸エチル及び安息香酸エステル、例えばイソプロピル又は2-エチルヘキシルベンゾエートが挙げられる。芳香族炭化水素、例えばキシレン、脂肪族及びパラフィン系溶媒並びに植物油がまた、溶媒として使用されてもよい。芳香族溶媒はあまり好ましくない。
【0090】
種子コーティング組成物はまた、可塑化効果を有する成分、例えば界面活性剤又は不凍剤を含んでもよい。一般的な界面活性剤は両親媒性有機化合物を含み、両親媒性有機化合物は通常、分枝状、直鎖状、又は芳香族炭化水素、フッ化炭素又はシロキサン鎖を尾部及び親水基として含む。いくつかの種類の界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性界面活性剤、並びに有機シリコーン(organosilicone)及び有機フッ素界面活性剤を含む。界面活性剤の一部の例としては、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシプロピレンエーテル及びエステル、特にそのアルキル、アリール及びアルキルアリールエーテル、並びにそのようなエーテルのスルフェート、ホスフェート及びスルホン酸化合物、グルコシド(アルキル)エーテル、グリセロールエステル、例えばアルキル及び脂肪酸エステル、ソルビタン(アルキル)エステル、アセチレン化合物、コカミド化合物、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールのブロックコポリマー、が挙げられる。界面活性剤のさらなる例としては、アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩、例えばベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤;及び多面体(polyhedric)アルコール、脂肪酸エステル、特にC12-C18脂肪酸、例えばポリグリセリンの、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びショ糖、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、及びプロポキシル化及びエトキシル化化合物、例えば脂肪アルコールエトキシレート、ポリエトキシ化牛脂アミン(polyethyxlated tallow amine)及びアルキルフェノールエトキシレートが挙げられる。アニオン性界面活性剤のいくつかの例としては、カルボン酸、カルボン酸のコポリマー、スルフェート、スルホン酸化合物及びホスフェート、例えばリグニンスルホネート及び(直鎖状)アルキルアリールスルホネート、が挙げられる。
【0091】
不凍剤としては、例えば:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、好ましいグリコールは、エチレングリコール及びプロピレングリコールである。
【0092】
一実施形態では、粉末調合物又はプレブレンド、及び水性組成物プレブレンドは、別々に形成され、次いで一緒に混合されて、本発明の種子コーティング組成物を形成する。粉末プレブレンド及び水性組成物プレブレンドは、種子コーティング組成物が形成される場所とは異なる場所で形成されてもよく、好ましくは、コーティングされた種子を形成するための種子への種子コーティング組成物の塗布時まで別々に保たれる。種子コーティング組成物は、好適には、粉末プレブレンド、水性組成物プレブレンド及び任意の他の任意成分、例えば生物学的活性成分を組み合わせることによって形成され;そして同時又はその後まもなく、例えば5時間以内、好ましくは30分以内に、種子に塗布する。種子コーティングプロセスは、種子の種類、種子コーティング組成物、必要とされる構築レベル、及び他の変数に応じて、数秒、例えば15秒から、数時間、例えば最大で8時間の範囲にわたり得る。粉末プレブレンド、水性組成物プレブレンド及び他の成分は好ましくは、種子コーティングプロセス中に、少なくとも一部の時間、種子に同時に添加される。
【0093】
粉末プレブレンドは好適には、実質的に無水の自由流動性固体材料であり、斯かる材料は、本明細書に定義された充填剤及び繊維材料を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0094】
水性組成物プレブレンドは好ましくは、本明細書に定義されたポリマー結合剤を含有する。水性組成物プレブレンドはまた、本明細書に定義された顔料、及び本明細書に定義された他の任意の種子コーティング組成物成分のいずれかを含有してもよい。水性組成物プレブレンドはまた、本明細書に定義された生物学的活性材料の1つ又は複数を含有してもよい。付加的に、又は代替的に、1つ又は複数の生物学的活性材料は、粉末プレブレンド及び水性組成物プレブレンドが一緒に混合されて、本願発明の種子コーティング組成物を形成する際に別々に添加されてもよい。
【0095】
水性組成物プレブレンドは好適には、(i)組成物の総重量に基づいて5~70重量%、好ましくは15~60重量%、より好ましくは22~50重量%、特に27~40重量%、及び特に32~35重量%の範囲のポリマー結合剤;(ii)組成物の総重量に基づいて0~40重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは5~15重量%、特に9~12重量%、及び特に10~11重量%の範囲の顔料;及び/又は(iii)組成物の総重量に基づいて20~75重量%、好ましくは35~70重量%、より好ましくは45~65重量%、特に50~60重量%、及び特に54~57重量%の範囲の水、を含有する。
【0096】
粉末プレブレンドは、(i)組成物の総重量に基づいて30~99重量%、好ましくは50~95重量%、より好ましくは70~90重量%、特に75~85重量%、及び特に78~82重量%の範囲の充填剤;及び/又は(ii)組成物の総重量に基づいて1~70重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~30重量%、特に15~25重量%、及び特に18~22重量%の範囲の繊維粒子、を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0097】
粉末プレブレンド中の充填剤粒子、好ましくはタルクと、繊維材料、好ましくはセルロース繊維との比は、好適には、重量で0.5~15.0:1、好ましくは2.0~8.0:1、より好ましくは3.0~5.0:1、特に3.5~4.5:1、及び特に4.0:1の範囲である。
【0098】
一実施形態では、本発明に係る種子コーティング組成物は、成分を組み合わせること、又は一緒に混合することによって、形成され、斯かる成分は、以下(i)本明細書に定義された水性組成物プレブレンド、及び(ii)本明細書に定義された粉末プレブレンドを、好適には、重量で0.05~3.0:1、好ましくは0.10~1.0:1、より好ましくは0.25~0.60:1、特に0.35~0.45:1、及び特に0.40:1の範囲の比で、及び任意により(iii)本明細書に定義された1つ又は複数の生物学的活性成分、を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0099】
種子コーティング組成物中の1つ又は複数の活性成分の量は、好適には、組成物の総重量に基づいて0~5.0重量%、好ましくは0.1~2.5重量%、より好ましくは0.2~1.0重量%、特に0.3~0.8重量%、及び特に0.4~0.6重量%の範囲である。
【0100】
一実施形態では、種子は、本発明の種子コーティング組成物を塗布する前に人工層、例えばポリマーなどの結合剤を含むプライマー層が設けられていない。従って、種子コーティング組成物は好ましくは、種子の天然の外表面に直接塗布される。それにも関わらず、種子表面が、種子コーティング組成物を塗布する前に表面処理を受けている可能性がある。そのような表面処理は、人工層の提供を伴わないが、種子の一部の表面又は種子の表面全体の物理的変化又は改変を含むことが可能である。例えば、表面処理は、例えば種子被膜の一部の選択的除去、種子被膜の選択的変形、又はそれらの組み合わせによって、種子の表面粗さの増大を伴い得る。典型的には、前記処理は、種子表面上に微細な粗さを導入することを含み得る。種子表面を、人工層の提供を含む表面処理、例えば種子表面へのプライマーコーティング層の塗布に供することも可能である。他の好適な表面処理は、例えば、プラズマ表面処理、種子と研磨剤との接触、高温及び湿潤空気への暴露、火炎処理、レーザー処理、並びに電子ビーム表面処理を含む。
【0101】
好ましくは、種子コーティング組成物は、液体組成物及び/又はエマルジョン及び/又は分散液及び/又はラテックス組成物として塗布され、その後固化されて(硬化及び/又は乾燥を含む)、種子コーティングを形成する。用語「液体コーティング組成物」は、本明細書で使用される場合、懸濁液、エマルジョン、及び/又は分散液、好ましくは分散液の形態でのコーティング組成物を含むことを意味する。
【0102】
従来の手法のコーティングが、種子をコーティングするために採用され得る。種々のコーティング装置が当業者に利用可能である。いくつかのよく知られた技法としては、ドラムコーター(drum coaters)の使用、流動床技法、ロータリーコーター(rotary coaters)(統合乾燥(integrated drying)有り及び無し)、及び噴流層、が挙げられる。好適には、種子コーティング組成物は、ロータリーコーター、ロータリードライコーター、パンコーター又は連続処理装置によって種子に塗布される。
【0103】
典型的には、種子に塗布される種子コーティング組成物の量は、10~1,000g乾燥重量/kg種子、例えば30~650g乾燥重量/kg種子、100~400g乾燥重量/kg種子、又は150~250g乾燥重量/kg種子の範囲であり得る。種子コーティング組成物は、例えば、種子コーティング組成物のエンクラスティング、フィルムコーティング、噴霧、浸漬、又ははけ塗りによって塗布することができる。任意により、種子コーティング組成物は、2~50℃の温度で、例えば5~35℃、より多くの場合15~30℃で、例えば室温で、例えば18~25℃で塗布される。好ましくは、種子コーティング組成物は、エンクラスティングによって種子に塗布される。種子コーティングは好適には、種子上に液体水性組成物プレブレンドを噴霧することによって塗布されてもよく、粉末プレブレンドも塗布しながら、典型的には種子がコーティング装置内を移動しながら塗布されてもよい。好ましくは、方法は、種子コーティング組成物を塗布して、外殻層(encrustment layer)を形成することを含む。
【0104】
種子コーティング組成物は好適には、乾燥したコーティング層と種子との比が、好適には、重量で0.001~20:1、好ましくは0.05~10:1、より好ましくは0.01~1.0:1、特に0.05~0.5:1、及び特に0.1~0.2:1の範囲であるように、種子に塗布される。
【0105】
付加的なフィルムコート層が、任意により、本発明のコーティング層、好ましくは外殻層の上に塗布されて、化粧性、被覆率、活性成分、栄養素、及び加工改善、例えば速乾性、種子の流れ(seed flow)、耐久性などを含むがこれらに限定されない付加的な利点を提供してもよい。
【0106】
以下の試験方法を使用した;本明細書における繊維材料のD(v,0.5)、D(v,0.1)、及びD(v,0.9)値を決定するために使用した粒子径値を、2,100rpmに設定した水で作動するHydro 2000SMアタッチメントを備えたMalvern Mastersizer 2000を用いることによって、動的光散乱分析によって決定した。材料の屈折率は0.1の吸光度で1.53として設定された。12,000スナップが12秒にわたって行われて、データを取得した。3回の実施の平均を使用して、最終粒子径を決定した。得られた粒子径値から、D(v,0.5)、D(v,0.1)、及びD(v,0.9)値は容易に決定された。
【0107】
本発明を以下の比限定的例によって説明する。
【実施例
【0108】
実施例1
プレブレンド調合物を表1に従って調製した。
【0109】
【表1】
【0110】
PPP(植物保護製品)カクテルを使用し、これは20.77%のCruiser 5FS(殺虫剤、ex Syngenta)及び6.0%のMaxim Quattro(殺真菌剤、ex Syngenta)を含有した。トウモロコシ種子を、0.7重量%のPPPカクテル、30.5重量%の水性組成物プレブレンド及び68.8重量%の粉末プレブレンドの混合物でコーティングした;1kgの種子当たり200gの乾燥フィルムコーティングが塗布されるような塗布率であった。コーティングされた種子を、10分間温風中で乾燥させた。
【0111】
実施例2
実施例1で生成された種子の乾燥速度を、コットンインジケーター(cotton indicator)を用いて測定した。コーターを出た後のコーティングされた種子を、平らなトレイに集め、タイマーを作動した。毎回、種子トレイ中の新しい種子の表面に新鮮なコットンインジケーターを置くことによって、乾燥を10秒毎に確認した。種子からコットンインジケーター上への色移りの兆候が無かった時点で、タイマーを停止し、時間を記録した。
【0112】
コーターから出る濡れた種子が貯蔵ホッパーに集められ、対向する種子によって圧縮される際に、種子の凝集(Clumping)/架橋(bridging)が起こる。これは、設備の遮断、労力及び時間の観点から種子処理施設にとって課題となる。
【0113】
10秒後にコットンインジケーターへの色移りはなく、コーティングされたトウモロコシ種子は、すぐに指触乾燥状態、非粘着性になり、かつ凝集を示さなかった。
【0114】
実施例3
100gの実施例1で生成したコーティングされたトウモロコシ種子を、二連で4分のHeubach試験に供し、結果を100,000個の種子当たりの粉塵(dust-off)の総量に対して平均化した。トウモロコシの場合、処理されたトウモロコシ種子についてESAによって開発された粉塵基準値は、100,000個の種子当たり最大で0.75gの粉塵である。実施例1のコーティングされたトウモロコシ種子を使用した場合に、粉塵レベルは、100,000個の種子当たり0.12~0.14gに低減された。トウモロコシ種子に対する摩耗は、Heubach装置での粉塵実験後に可視化して観察された。摩耗スコアは、産業での取り扱い条件を厳密にシミュレートするHeubach装置に4分供した後の種子の品質の視覚的定量化である。摩耗スコアを、1(高耐摩耗性/良質の種子)から5(低耐摩耗性/低品質の種子)まで割り当てた。コーティングされたトウモロコシ種子は、1の摩耗スコアを有した。
【0115】
実施例4
コーティングされた種子の流れ(flow)は、種子処理施設で、並びに農場で播種機(planter)を通り抜ける間に重要である。種子間の摩擦が少ないほど、様々な段階で効率が良くなる。典型的には、PPPの添加、及びトウモロコシ種子に対する従来のフィルムコートは、種子の流れをかなり遅くし、これは望ましい特徴ではない。実施例1で生成したコーティングされたトウモロコシ種子の流れを試験するために、1kgの種子を栓付きの漏斗に入れた。栓を開け、同時にタイマーを始動した。最後の種子が漏斗を出るまでに要する時間を、(s/kg)で流速として記録した。6.18s/kgの流速を有するコーティングされていないトウモロコシ種子と比較して、コーティングされたトウモロコシ種子は6.39s/kgの流速を有した。すなわち、コーティングされたトウモロコシ種子は、未処理トウモロコシ種子とほぼ同じ速さの流れを可能にした。
【0116】
上記実施例は、本発明に係る種子コーティング組成物及びコーティングされた種子の改善された特性を説明する。