(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/09 20060101AFI20220331BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20220331BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G02B27/09
G02B26/08 C
G02B5/04 C
(21)【出願番号】P 2019532022
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(86)【国際出願番号】 US2017066348
(87)【国際公開番号】W WO2018112170
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】チプリアニー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポール イー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ、ジョナサン シー.
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/187564(WO,A1)
【文献】特開2012-242626(JP,A)
【文献】特開2009-122493(JP,A)
【文献】特開2002-239773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/09
G02B 26/08
G02B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム成形およびステアリングアセンブリであって、
入力ビームの第1の横断方向ビーム形状を第2のビームの第2の横断方向ビーム形状に変換するように構成された第1の光学構成要素と、
前記第2の横断方向ビーム形状を、前記第2のビームの光軸を中心に回転させるように構成された第2の光学構成要素と、
目標位置における出力ビームの第1の位置または前記目標位置における前記出力ビームの中心の第1の入射角のうちの1つを調整するように構成された第3の光学構成要素と、
第1の波長で前記第1の光学構成要素の出力を受け取るビームダンプと、
第2の波長を有する前記第2のビームを受け取り、前記第2のビームを前記第3の光学構成要素に向けるように構成された変向ミラーと、を備えるビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項2】
前記第1の光学構成要素を通る最大±3mmの前記入力ビームの変位は、前記第2の横断方向ビーム形状を変化させない、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の光学構成要素は、アナモルフィックプリズム対を含む、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項4】
前記第1の光学構成要素は、前記入力ビームの複数の光波長を空間的に分離し、
前記ビームダンプは、前記第1の波長で前記第1の光学構成要素からの前記出力を受け取るように配置される、請求項1のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項5】
前記第2の光学構成要素は、鳩プリズムを含む、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項6】
前記第3の光学構成要素は、光学窓を含む、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の光学構成要素、前記第2の光学構成要素、および前記第3の光学構成要素を支持するシャーシをさらに備え、
前記シャーシは、前記第2のビームを受け取る受光光学構成要素を有するデバイスが実装されたプリント回路基板(PCB)を含み、
前記デバイスを含むプリント回路基板の領域は、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリに対するデバイスの動きを低減するようにシャーシに取り付けられる、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項8】
前記目標位置における前記出力ビームの第2の位置または第2の入射角のうちの1つを調整するように構成された第4の光学構成要素をさらに備える請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項9】
前記第4の光学構成要素に対する調整によって生じる前記目標位置における前記出力ビームへの第1の影響は、前記第3の光学構成要素に対する調整によって生じる目標位置における出力ビームへの第2の影響に実質的に影響せず、またその逆も同様である、請求項8に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項10】
前記第3の光学構成要素に結合された第1のアクチュエータと、
前記第4の光学構成要素に結合された第2のアクチュエータと、を備え、
前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータの各々は、同一平面に実質的に平行な回転駆動シャフトを含む、請求項8に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータの回転駆動シャフトは、実質的に平行である、請求項10に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項12】
前記第3の光学構成要素によってもたらされる前記目標位置における前記出力ビームへの変化は、前記第4の光学構成要素によってもたらされる前記目標位置における前記出力ビームへの変化と実質的に直交する次元である、請求項10に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項13】
前記第3の光学構成要素は、前記目標位置における前記出力ビームの第1の入射角を調整するように構成され、
前記目標位置における出力ビームの第2の入射角を調整するように構成された第4の光学構成要素と、
前記目標位置における出力ビームの第1の位置を調整するように構成された第5の光学構成要素と、
前記目標位置における出力ビームの第2の位置を調整するように構成された第6の光学構成要素と、をさらに備える請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項14】
前記第3および第4の光学構成要素が集束レンズの第1の側に配置され、前記第5および第6の光学構成要素が前記集束レンズの第2の側に配置されるように構成された前記集束レンズをさらに備える請求項13に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項15】
前記第1の入射角は、前記目標位置における出力ビームのピッチ角であり、
前記第2の入射角は、前記目標位置における出力ビームのヨー角であり、
前記第1の位置は、前記目標位置における出力ビームのX方向の位置であり、
前記第2の位置は、前記目標位置における出力ビームのY方向の位置であり、
前記X方向と前記Y方向は直交している、請求項13に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【請求項16】
前記第2の横断方向ビーム形状は、実質的に楕円形であり、前記第1の横断方向ビーム形状は、実質的に円形である、請求項1に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、レーザまたは他の光源からの出力ビームをハイテク光学システムの入力に結合する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザおよび発光ダイオード(LED)は、光通信システム、バイオ分析システム、医療機器、材料処理システム、および防衛システムなどのハイテク光学システムに有用である1つまたは複数の選択可能な波長で強い放射を提供することができる。レーザまたはLEDからの出力は、コリメートされていてもコリメートされていなくてもよく、放射は、パルス波または連続波であってもよい。場合によっては、短い光パルス(例えば、約1ナノ秒未満の光パルス)が、レーザまたはLEDによって生成され、ハイテク光学システムに提供されてもよい。
【0003】
いくつかのハイテク光学システムは、レーザまたはLEDからの出力が結合されなければならない精密光学装置を含み得る。精密光学装置の一例は、チップ上の集積光導波路である。典型的には、レーザまたはLEDから出力されたビームの空間モードプロファイルは、例えば、導波路によって支持されている基本モードの空間モードプロファイルとうまく一致していない。したがって、ビームの空間モードプロファイルと、ビームが結合された光学システムの受光光学構成要素との間の整合を改善するために、1つまたは複数の光学構成要素が必要となる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態は、ビーム成形およびステアリングアセンブリに関し、ビーム成形およびステアリングアセンブリは、入力ビームの第1の横断方向ビーム形状を第2のビームの第2の横断方向ビーム形状に変換するように構成された第1の光学構成要素と、前記第2の横断方向ビーム形状を前記第2のビームの光軸を中心に回転させるように構成された第2の光学構成要素と、目標位置における出力ビームの第1の位置または第1の指向角のうちの1つを調整するように構成された第3の光学構成要素と、を備える。
【0005】
いくつかの実施形態は、光源からのビームをシステムの受光光学構成要素に結合する方法に関する。方法は、ビーム成形およびステアリングアセンブリが、前記光源からビームを受け取ること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記ビームの第1の横断方向ビーム形状を出力ビームの第2の横断方向ビーム形状に変換すること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記出力ビームを前記受光光学構成要素上に位置決めすること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記第2の横断方向ビーム形状を調整可能に回転させること、の複数の工程を備えることができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、装置への放射ビームを結合する光学システムに関し、光学システムは、3つの回転アクチュエータと、前記3つの回転アクチュエータにそれぞれ結合された3つの光学構成要素であって、各回転アクチュエータは、前記3つの光学構成要素のうちの1つの光学構成要素を動かすためにシャフト軸を中心に回転する駆動シャフトを有し、前記3つの回転アクチュエータのシャフト軸は、同じ平面に実質的に平行であり、前記3つの回転アクチュエータによる3つの光学構成要素の動作は、異なる3つの自由度でビームを変更する、前記3つの光学構成要素と、を備える。
【0007】
いくつかの実施形態は、装置への放射ビームを結合する光学システムに関し、光学システムは、調整可能なマウントに支持された第1の光学構成要素と、前記調整可能なマウントに結合された第1のアクチュエータと、を備え、前記第1のアクチュエータによる前記第1の光学構成要素の動作によって、前記第1の光学構成要素から出射する出射ビームの横断方向形状および偏光を回転させ、該横断方向形状および偏光の回転は、前記出射ビームに沿って中心に延びる光軸を中心に行われる。
【0008】
いくつかの実施形態は、放射ビームを変更する光学システムに関し、光学システムは、第1の軸を中心に第1の光学構成要素を回転させるように構成され、且つ調整可能なマウントによって支持された第1の光学構成要素と、前記第1の軸と平行ではない第2の軸を中心に回転する駆動シャフトを有する回転アクチュエータと、前記駆動シャフトに結合されたカムアームと、
前記カムアームに結合されたベアリングと、前記調整可能なマウントに結合された曲面と、を備え、前記回転アクチュエータが前記第1の光学構成要素を回転させるように作動される場合、前記ベアリングは、前記曲面を横切って移動する。
【0009】
いくつかの実施形態は、光ビームステアリング装置に関し、光ビームステアリング装置は、第1の光学窓を回転させるように構成された第1の回転アクチュエータと、第2の光学窓を回転させるように構成された第2の回転アクチュエータと、レンズと、を備え、前記第1の光学窓の回転によって、目標位置における光ビームの横方向位置を調整し、前記第2の光学窓の回転によって、前記横方向位置を10ミクロンを超えて変更することなく前記目標位置における前記ビームの入射角を調整する。
【0010】
いくつかの実施形態は、直交する3つの自由度で前記光ビームステアリング装置からの出力ビームの3つのパラメータを調整するように構成された回転可能な3つの透明光学窓を備える光ビームステアリング装置に関する。
【0011】
本教示の上記の及び他の態様、実施態様、動作、機能、特徴及び実施形態は、添付の図面とともに以下の説明からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】いくつかの実施形態によるハイテクシステムのブロック図を示す。
【
図1-2】いくつかの実施形態によるハイテクシステム内の光源によって生成される一連の光パルスを示す。
【
図1-3】ハイテクシステムに搭載可能なチップ上に含まれる並列の反応室の一例を示し、いくつかの実施形態による複数の反応室は、1つまたは複数の導波路を介して光学的に励起され、発光は、各室の近くに形成された複数の光検出器によって検出される。
【
図1-4】異なる3つの光パワーの導波路内の時間依存損失を示す。
【
図1-5】異なるいくつかの実施形態による集積反応室、光導波路、及び時間ビニング光検出器のさらなる詳細を示す。
【
図1-6】いくつかの実施形態による反応室内で生じる生物学的反応の1例を示す。
【
図1-7】異なる減衰特性を有する2つの異なる蛍光色素分子の発光確率曲線を示す。
【
図1-8】いくつかの実施形態による蛍光発光の時間ビニング検出を示す。
【
図2-1A】いくつかの実施形態による細長いビームの複数の導波路への結合を示す。
【
図2-1B】いくつかの実施形態による細長く且つ回転されたビームの複数の導波路への結合を示す。
【
図2-2A】いくつかの実施形態によるビーム成形およびステアリングモジュールを示す。
【
図2-2B】いくつかの実施形態による機器内のシャーシに取り付けられ、プリント回路基板を強化するビーム成形およびステアリングモジュールを示す。
【
図2-3】いくつかの実施形態による複数のビーム成形およびステアリングコンポーネントの光学的な詳細を示す。
【
図2-4】いくつかの実施形態による像回転プリズムの回転マウントの複数の要素を示す。
【
図2-5A】いくつかの実施形態による光学構成要素を回転させるための機械的リンク機構を示す。
【
図2-5B】機械的リンク機構における非線形性を補償するように構成された曲面を含む機械的リンク機構に対する線形化されたビーム変位を示す。
【
図2-6】いくつかの実施形態によるチップ上の光カプラに対する光ビームの位置合わせを示す。
【
図2-7】いくつかの実施形態による光レーザからの光パルスをバイオ光電子チップの複数の導波路に結合する検出及び制御回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において記載されている図は、例示を目的としたものにすぎないことを、当業者は理解しよう。いくつかの事例において、本発明の様々な態様は、本発明の理解を容易にするために、誇張又は拡大されて示されている場合があることを理解されたい。図面において、同様の参照符号は、概して様々な図全体を通じて同様の特徴、機能的に類似する及び/又は構造的に類似する要素を参照する。図面は、必ずしも原寸に比例してはおらず、むしろ、本教示の原理を例示しているところが強調されている。図面は、決して本教示の範囲を限定するようには意図されていない。
【0014】
本発明の特徴及び利点は、図面とともに取り上げられるときに下記に記載される詳細な説明からより明らかとなろう。図面を参照して実施形態を説明するとき、方向に関する参照(「上(above)」、「下(below)」、「上部(top)」、「下部(bottom)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」など)が使用される場合がある。そのような参照は、読者が図面を通常の向きで見るのを補助するものとしてのみ意図している。これらの方向に関する記載は、具現化されるデバイスの特徴の好適な向き又は唯一の向きを説明することを意図していない。デバイスは、他の向きを使用して具現化されてもよい。
【0015】
I.導入
本明細書に記載の技術は、複数のレーザまたは複数の発光ダイオードからの光ビームを複数の精密光学構成要素を含む複数のハイテクシステムに結合する装置および方法に関する。ハイテクシステムは、1つまたは複数の精密光学構成要素(例えば、集積光導波路、集積光カプラ、集積光変調器、光回折素子、光ファイバなど)を含んでもよく、さらに機械構成要素、マイクロ機械構成要素、電気回路、マイクロ流体構成要素、マイクロエレクトロ機械構成要素、バイオマイクロエレクトロ機械構成要素、および/またはバイオ光電子構成要素を含んでもよい。いくつかの実施形態による、複数のビームパラメータの5つの自動調整を含む、ロープロファイル(low-profile)でコンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ(beam-shaping and steering assembly)が説明される。アセンブリはまた、ビームフォーカスおよびビーム成形のための手動または自動調整を含み得る。いくつかの実施形態では、アセンブリは、レーザからの円形ビーム(round beam)をバイオ光電子チップ(bio-optoelectronic chip)上の集積光導波路の線形アレイ(linear array)に結合し、複数の導波路に高効率でほぼ均一なパワー結合を提供するように用いられる。複数の導波路にわたる結合の均一性は、ビーム成形およびステアリングアセンブリの光学構成要素の自動操作によって調整され得る。
【0016】
ビーム成形およびステアリングアセンブリは、可搬型の機器(例えば、time-of-flightのイメージング機器、寿命分解蛍光検出を利用するバイオ分析機器、遺伝子配列決定機器、光干渉断層撮影機器、医療機器など)に組み込まれて、小型の光源と小型のハイテクシステムの精密な光学装置との間の精密で安定した光学的結合を提供する。ビーム成形およびステアリングアセンブリは、光源とハイテクシステムとの間の光結合に対する振動、温度変動、および製造変動の影響を低減することができる。そのような実施形態の光源の例は、参照により本願明細書に援用する、2016年5月20日に出願された「パルスレーザおよびバイオアドバンスドシステム(Pulsed Laser and Bioadvanced System)」と題する米国特許出願第15/161,088号、および2016年12月16日に出願された「コンパクトモードロックレーザモジュール(Compact Mode-Locked Laser Module)」と題する米国特許出願第62/435,688号に記載されている。そのような機器は、容易に携帯可能であり、そして大きな光源および大きな光結合構成要素を必要とする従来の機器の場合よりもかなり低いコストで製造され得る。高い可搬性は、そのような機器を、研究、開発、臨床使用、現場開発、及び商業用途により有用であり得る。
【0017】
本発明者らは、パルスレーザおよびLEDなどの光源は、レーザまたはLEDおよびその駆動回路が100ミリワットを超えるパワーレベルを出力することができ、非常にコンパクトなサイズ、例えば約40mm以下の厚さを有するA4用紙のサイズにすることができることが潜在的により有用であることを認識し、諒解するに至った。コンパクトにすると、そのような光源は、医療診断、光通信、医薬品開発のための超並列サンプル分析(massively parallel sample analysis)、遺伝子配列決定、またはタンパク質の分野で使用され得るがこれらに限定されない、携帯可能なハイテク機器に組み込まれ得る。「光学的(optical)」という用語は、紫外線、可視光、近赤外線及び短波長赤外線のスペクトル帯域を参照するように用いられ得る。
【0018】
本発明者らは、携帯型ハイテク機器におよびその機器から容易に交換できるモジュールとしてそのような光源を製造することが有利であり得ることをさらに認識し、諒解するに到った。このようなプラグアンドプレイ機能(plug-and-play capability)により、機器の停止時間を最小限に抑えることができ、且つ単一の光源をさまざまな機器で使用することができる。本発明者らはさらに、レーザおよびLEDは概して、異なるビームパラメータ(例えば、ビームサイズ、ビーム形状、ビームコリメーション(beam collimation)、ビーム方向、横断方向ビームプロファイル)を有する出力ビームを有し、光ビームを受け取るハイテクシステムは、受け取ったビームのパラメータの異なる要件を有することを認識した。
【0019】
光源とハイテクシステムとの間のビームパラメータの違いに対処するために、本発明者らは、ビーム成形およびステアリング装置ならびに関連する方法を想到しており、それらについては以下でさらに詳細に説明する。ビーム成形およびステアリング装置は、光源からの出力ビームを適合させて光源が結合されているハイテクシステムの許容可能なビームパラメータに準拠するように機器に組み込むことができるコンパクトなアセンブリ(例えば、A4紙のシートの半分以下のサイズおよび40mm未満の厚さ)である。以下の説明において、ビーム成形およびステアリング装置の実施形態は、「ハイテク(hi-tech)」機器のほんの一例である遺伝子配列決定機器に関連して説明される。しかしながら、記載された実施形態のビーム成形およびステアリング装置は、それらがハイテクまたは先端光学技術を含むか否かを問わず、他の種類の機器と共に使用され得ることを理解されたい。
【0020】
実施形態では、ハイテク機器1-100は、
図1-1に示されるように、機器内に取り付けられ、または機器に結合された光源1-110を備え得る。いくつかの実施形態によれば、光源1-110は、モードロックレーザ(mode-locked laser)であり得る。モードロックレーザは、レーザキャビティ内にあるか、またはレーザキャビティに結合されているレーザの長手方向周波数モード(longitudinal frequency mode)の位相ロックをかける要素(例えば可飽和吸収体、音響光学変調器、カー・レンズ(Kerr lens))を含み得る。他の実施形態では、光源1-110は、利得切換レーザを含み得る。利得切換レーザは、レーザの利得媒体における光学利得を変調する外部変調器(例えば、パルス駆動回路)を備えてもよい。
【0021】
機器1-100は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150およびハイテクシステム1-160を含み得る。ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、1つまたは複数の光学構成要素(例えば、レンズ、ミラー、光学フィルタ、ビーム成形光学構成要素、減衰器)を含み、光源1-110からの光パルス1-122(または連続波ビーム)に対して動作し、及び/又は、この光パルス(または連続波ビーム)をハイテクシステム1-160に伝達するように構成され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、ハイテクシステムは、光学構成要素、検出器、電子機器、および通信ハードウェアを用いて、光信号を導き、収集し、そして分析することができる。例えば、ハイテクシステム1-160は、光パルスを、分析される少なくとも1つの試料へと方向付け、少なくとも1つの試料から1つ又は複数の光信号(例えば、蛍光発光、後方散乱放射)を受け取り、受け取った光信号を示す1つ又は複数の電気信号を生成するように構成された複数の光学構成要素を含み得る。いくつかの実施形態において、ハイテクシステム1-160は、1つ又は複数の光検出器と、それら光検出器からの電気信号を処理するように構成された信号処理電子装置(例えば、1つ又は複数のマイクロコントローラ、1つ又は複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲートなど)とを含み得る。ハイテクシステムは、データ通信リンク(図示せず)を介して外部装置との間でデータを送受信するように構成されたデータ伝送ハードウェアも含み得る。いくつかの実施形態において、ハイテクシステム1-160は、分析される1つ又は複数の試料を保持するバイオ光電子チップ1-140を受け入れるように構成され得る。試料分析用のデータ信号は、チップ上で部分的に処理されてもよく、および/または分析のために外部プロセッサに送信されてもよい。さらにいくつかの実施形態によれば、チップ1-140および/または試料ウェル(sample well)への光結合を示すデータ信号は、試料分析中にリアルタイムで適切な光結合を維持するためにリアルタイムでビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150に供給され得る。
【0023】
光パルス1-122は、単一の横断方向光学モードを有するものとして示されているが、いくつかの実施形態において、光源1-110からの出力はマルチモードであってもよい。例えば、横断方向の出力ビームプロファイルは、光源のマルチモード動作に起因して、複数の強度ピーク及び最小値を有してもよい。いくつかの実施形態では、マルチモードの出力は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150の1つまたは複数の光学構成要素によって(例えば、拡散光学系によって)均質化されてもよい。いくつかの実施形態において、マルチモード出力は、ハイテクシステム1-160内の複数のファイバ又は導波路に結合され得る。例えば、マルチモード出力の各強度ピークが、バイオ光電子チップ1-140に結合する別個の導波路、または1グループの導波路に結合されてもよい。光源がマルチモード状態で動作することを可能にすることによって、光源からの出力パワーをより高くすることが可能になり得る。いくつかの実装形態では、光源1-110は、これらに限定されないが、トップハットビームプロファイル(top-hat beam profiles)、ドーナツビームプロファイル、および線状ビームプロファイルなどの他の横断方向ビームプロファイル(transverse beam profile)を有するパルス1-122を生成してもよい。そのようなビームプロファイルは、パターン化または段階的なコーティング(graded coatings)を有する光学素子、回折光学素子、バイナリー光学素子、アキシコンレンズ、段階的な屈折率素子、またはこれらの光学素子の2つ以上の組み合わせを用いて生成されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、ハイテク機器は、取り外し可能な、パッケージされたバイオ光電子チップ1-140を受け入れるように構成され得る。チップは、複数の反応室と、光励起エネルギーを反応室に送達するように構成されている集積光学構成要素と、反応室から蛍光発光または他の発光を検出するように構成されている集積光検出器とを含み得る。いくつかの実施態様において、チップ1-140は、使い捨てであってもよく、一方で、他の実施態様では、チップは再使用可能であってもよい。チップが機器によって受け入れられると、チップは、光源1-110と電気的及び光学的に通信することができ、ハイテクシステム1-160と電気的及び光学的に通信することができる。いくつかの実施形態において、バイオ光電子チップは、追加の機器電子装置を含むことができるプリント回路基板(PCB)のような電子回路基板(図示せず)上でシステム内に(例えば、ソケット接続を介して)取り付けることができる。例えば、バイオ光電子チップ1-140が取り付けられたPCBは、電力、1つ又は複数のクロック信号、及び制御信号をバイオ光電子チップ1-140に供給するように構成された回路と、チップ上で反応室から検出される発光を示す信号を受信するように構成された信号処理回路とを含むことができる。PCBはまた、バイオ光電子チップ1-140の導波路に結合されている光パルス1-122の光結合及びパワーレベルに関するフィードバック信号を受信するように構成された回路をも含むことができる。いくつかの実施形態では、PCBは、バイオ光電子チップ1-140への結合を改善するためにビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150に駆動信号を供給してビームパラメータを変更するように構成された回路を含み得る。いくつかの事例では、駆動信号は、ビームパラメータの開ループ制御のために生成されてもよく、例えばユーザによって調整されてもよい。いくつかの実施形態では、駆動信号は、例えば光ビームの位置合わせおよび/または結合効率を維持するために閉ループフィードバック制御システムの一部として生成されてもよい。バイオ光電子チップから戻されるデータは、部分的に又は全体的に機器1-100のデータ処理回路によって処理することができるが、データは、いくつかの実施態様では、データ処理のためにネットワーク接続を介して1つ又は複数の遠隔データ・プロセッサに伝送されてもよい。
【0025】
図1-2は、いくつかの実施形態による、光源1-110からの出力パルス1-122の時間的強度プロファイルを示す。いくつかの事例において、放出されるパルスのピーク強度値は、ほぼ等しくなり、プロファイルはガウス時間プロファイルを有してもよいが、sech
2プロファイルのような他のプロファイルが可能であり得る。いくつかの実装形態では、パルスは、対称時間的プロファイルを有していなくてもよく、利得切換レーザを使用する実施形態などの他の時間的形状を有してもよい。各パルスの持続時間は、
図1-2に示すような、半値全幅(full-width-half-maximum : FWHM)値によって特性化することができる。パルス光源のいくつかの実施形態によれば、超短光パルスが形成されてもよく、約10ピコ秒(ps)と約100psとの間の時間的FWHM値を有してもよい。他の事例では、FWHM値は、10psより短いかまたは100psより長いかもしれない。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、出力パルス1-122は、周期的な間隔Tによって分離され得る。いくつかの実施形態では(例えば、モードロックレーザについて)、Tは、光源1-110のレーザキャビティ内のパルスの往復進行時間によって決定され得る。いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは、約1nsと約30nsとの間であってもよい。いくつかの事例において、パルス分離間隔Tは、約0.7メートルと約3メートルとの間のレーザキャビティ長に対応する、約5nsと約20nsとの間であってもよい。いくつかの実施形態では、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、(たとえば、格子および/または光ファイバなどの周波数分散素子、回折光学素子、またはリング・ダウンキャビティ(ring-down cavity)を用いることによって)光パルスのパルス長をさらに変更し得る。いくつかの実施形態では、ビーム成形およびステアリングアセンブリは、(例えば、光源1-110から受け取ったビームを異なる光路に分離し、異なる光路に異なる遅延を加え、これら光経路を再結合して異なる経路からのパルスをインターリーブすることによって)パルス分離間隔Tをさらに変更することができる。いくつかの事例では、パルス分離間隔Tは、規則的でなくてもよく、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、パルス離間間隔に関係なくそのビーム成形およびステアリング機能を実行してもよい。
【0027】
続いて並行して検出され分析される複数の反応室内で光パルス1-122が蛍光発光を励起する実施形態では、複数の要因、例えば、反応室の数、蛍光発光特性、および反応室からデータを読み出すデータ処理回路の検出速度の組み合わせによって、所望のパルス分離間隔Tを決定することができる。本発明者らは、異なる蛍光色素分子または時間的発光確率曲線を、それらの異なる蛍光減衰率によって識別することができることを認識し、諒解するに至った。したがって、選択される蛍光色素分子がそれらの異なる発光特性を識別するように用いられる十分な統計値を収集するのに十分なパルス分離間隔Tがある必要がある。加えて、パルス分離間隔Tが短すぎる場合、データ処理回路は、大量のデータが多数の反応室によって収集されるのに対応することができない。本発明者らは、約5nsと約20nsとの間のパルス分離間隔Tが、最大約2nsの減衰率を有する蛍光色素分子に適していること、及び、約60,000個と10,000,000個との間の反応室からのデータの処理に適していることを認識し、諒解するに至った。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150は、光源1-110から出力パルスを受け取り、光源1-110からのビームのハイテクシステム1-160への結合を改善するために少なくとも3つのビームパラメータを変更するように構成されてもよい。ビーム成形およびステアリングモジュール1-150によって変更される複数のビームパラメータは、ハイテクシステムの目標位置でのビーム位置、ハイテクシステムの目標位置でのビーム方向または入射角、ビーム形状、ビームコリメーション、ビームの光軸を中心としたビーム回転、ビーム偏光および偏光配向、ビームスペクトル成分、ビームの横断方向強度プロファイル、平均ビームパワー、パルス幅、およびパルス分離時間を含むが、これらに限定されない。
【0029】
図1-3に示された生物分析の実施形態を参照すると、いくつかの具体例では、出力パルス1-122は、バイオ光電子チップ上の1つまたは複数の光導波路1-312に結合され得る。いくつかの実施形態において、光パルスは、格子カプラ1-310を介して1つ又は複数の導波路に結合され得るが、いくつかの事例において、バイオ光電子チップ上の光導波路の端部への結合が用いられてもよい。光パルス1-122のビームの格子カプラ1-310への位置合わせを補助するために、象限(quadrant)(クワッド)検出器1-320が、半導体基板1-305(例えば、シリコン基板)上に位置してもよい。1つ又は複数の導波路1-312及び複数の反応室1-330は、基板、導波路、反応室、及び光検出器1-322の間に誘電体層(例えば、二酸化ケイ素層)を介在させて、同じ半導体基板上に集積されてもよい。
【0030】
各導波路1-312は、導波路に沿って反応室に結合される光パワーを均質化するために、反応室1-330の下の先細り部分1-315または他の光学的特徴を含むことができる。狭まる先細りによって、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外側に押しやることができ、反応室への結合が増大し、反応室に結合する光の損失を含む、導波路に沿った光学的損失が補償される。光エネルギーを集積フォトダイオード1-324に方向付けるために、各導波路の端部に第2の格子カプラ1-317が位置することができる。集積フォトダイオードは、導波路を下って結合されるパワーの量を検出することができ、例えば、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150を制御するフィードバック回路に、検出された信号を供給することができる。
【0031】
反応室1-330は、導波路の先細り部分1-315と位置合わせすることができ、タブ(tub)1-340において陥凹することができる。各反応室1-330に対して、半導体基板1-305上に位置する時間ビニング光検出器1-322があり得る。反応室内にない蛍光色素分子(例えば、反応室の上で溶液中に分散している)の光励起を防止するために、反応室の周囲及び導波路の上に、金属コーティング及び/又は多層コーティング1-350を形成することができる。金属コーティング及び/又は多層コーティング1-350は、各導波路の入力端及び出力端における導波路1-312内の光エネルギーの吸収損失を低減するために、タブ1-340の縁部を越えて隆起することができる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、サンプルの大規模並列分析を実行することができるように、バイオ光電子チップ1-140上に複数列の導波路、反応室、および時間分割光検出器があってもよい。例えば、いくつかの実施態様において、各々が512個の反応室を有する128列があってもよく、反応室は合計で65,536個になる。他の実施態様は、列毎により少ないか又はより多い反応室、より少ないか又はより多い列の導波路を含んでもよく、且つ他のレイアウト構成を含んでもよい。いくつかの事例では、数百、さらには数千の行の導波路が存在してもよい。光源1-110からの光パワーは、チップ1-140への光学カプラと複数の導波路との間に位置する、1つ又は複数の集積スター・カプラもしくはマルチモード干渉カプラ、又は任意の他の手段を介して複数の導波路に分配することができる。
【0033】
本発明者らは、いくつかの事例では、光源1-110からのパワーを多数の集積光導波路1-312に効率的に結合しようと試みる場合に問題が生じ得ることを発見した。多数の反応室に対して各導波路および各反応室1-330に十分なパワーを供給するために、入力ビームの平均出力は、反応室の数の増加に比例して上昇する。(窒化シリコン導波路コア/二酸化シリコンクラッドのような)いくつかの集積光導波路システムでは、高い平均パワーは、導波路の損失に一時的な変化を引き起こし、それによって複数の反応室内で経時的にかなりのパワーの不安定性を引き起こす。高い平均パワーでの集積光導波路における時間依存性損失が、本発明者らによって測定され、例示的な結果が
図1-4にプロットされている。レーザからの平均パワーレベルが高くなりすぎると、特に光がチップに結合する場所の近くで、チップ上の集積導波路または他の集積光学構成要素に光学的損傷が発生する可能性がある。
【0034】
挿入損失は、窒化ケイ素コアを有する3つの同じ長さの単一モード導波路について時間の関数として測定された。3つの導波路に結合された初期平均パワーレベルは、0.5mW、1mW、および2mWであった。
図1-4のプロットは、3つのパワーレベルについて、各長さの導波路について測定された挿入損失の変化を時間の関数として示す。このプロットは、高いパワーレベルでは、損失が、10分以内に3dB変化することを示している。複数の反応が数十分または数時間にわたって行われる単一分子遺伝子配列決定などのいくつかの用途では、そのようなパワーの不安定性は許容できない可能性がある。
【0035】
ハイテクシステム1-160の実施形態のさらなる詳細は、
図1-5に関連して説明される。
図1-5は、超並列試料分析のためにハイテクシステム1-160に挿入することができるバイオ光電子チップ1-140の一部を示す。反応室1-330内で行われる生物学的反応の非限定例が、
図1-5に示されている。この例において、標的核酸に対して相補的である伸長鎖へのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の連続的な取り込みが、反応室内で行われている。ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の連続的な取り込みは、DNAを配列決定するために検出され得る。反応室は、約150nm~約250nmの深さ、及び、約80nm~約160nmの直径を有し得る。隣接する反応室及び他の望ましくない光源からの迷光を阻害する開口部を設けるために、金属化層1-540(例えば基準電位のための金属化)を、光検出器の上にパターニングすることができる。いくつかの実施形態によれば、ポリメラーゼ1-520が、反応室1-330内に位置する(例えば、室の基部に付着する)ことができる。ポリメラーゼは、標的核酸1-510(例えば、DNAから導出される核酸の一部分)に作用し、相補的な核酸の伸長鎖をシーケンシングして、DNA1-512の伸長鎖を生成することができる。異なる蛍光色素分子を用いて標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体は、反応室の上又は中の溶液中に分散され得る。
【0036】
図1-6に示すように、標識化されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1-610が相補的な核酸の伸長鎖に取り込まれると、1つ又は複数の付着した蛍光色素分子1-630を、導波路1-315から反応室1-330に結合されている光エネルギーのパルスによって繰り返し励起することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の蛍光色素分子1-630は、任意の適切なリンカ(linker)1-620を用いて1つ又は複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体1-610に付着することができる。取り込み事象は、最大約100msの期間にわたって継続し得る。この時間の間、蛍光色素分子(複数可)の励起からもたらされる蛍光発光のパルスを、時間ビニング光検出器1-322を用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、信号処理(例えば、増幅、読み出し、ルーティングなど)のために各画素に1つまたは複数の追加の集積デバイス1-323が存在してもよい。いくつかの実施形態によれば、各画素は、蛍光発光を通過させ、励起パルスからの放射の透過を低減する単一または多層の光学フィルタ1-530を含み得る。いくつかの具体例は、光学フィルタ1-530を使用しなくてもよい。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有する蛍光色素分子を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA1-512のストランドが核酸を取り込んでいる間に異なる発光特性を検出及び識別することによって、DNAの伸長鎖の遺伝子配列を決定することが可能である。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、蛍光発光特性に基づいて試料を分析するように構成されたハイテクシステム1-160は、異なる蛍光分子の間の蛍光寿命及び/もしくは強度の差、ならびに/又は、異なる環境における同じ蛍光分子の寿命及び/もしくは強度の差を検出することができる。説明として、
図1-7は、例えば、異なる2つの蛍光分子からの蛍光発光を示す異なる2つの蛍光発光確率曲線(A及びB)をプロットしている。曲線A(破線)を参照すると、短パルス又は超短光パルスによって励起された後、第1の分子からの蛍光発光の確率p
A(t)は、示されているように、時間とともに減衰する。いくつかの事例において、経時的な光子が放出される確率の低減は、指数減衰関数
【0038】
【数1】
によって表すことができ、式中、P
A0は初期発光確率であり、τ
Aは、発光減衰確率を特性化する第1の蛍光分子と関連付けられる時間パラメータである。τ
Aは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」又は「寿命」と称されてもよい。いくつかの事例において、τ
Aの値は、蛍光分子のローカル環境によって変更されてもよい。他の蛍光分子は、曲線Aに示すものとは異なる発光特性を有し得る。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する場合があり、その寿命は、半減期値又は何らかの他の測定基準によって特性化することができる。
【0039】
第2の蛍光分子は、
図1-7の曲線Bについて示すように、指数関数的ではあるが、測定可能に異なる寿命τ
Bを有する減衰プロファイルを有し得る。図示されている例において、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命よりも短く、発光の確率は、第2の分子の励起直後では、曲線Aよりも高い。いくつかの実施形態において、種々の蛍光分子は、約0.1ns~約20nsに及ぶ範囲の寿命又は半減期値を有し得る。
【0040】
本発明者らは、蛍光発光寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の存否を判別し、及び/又は、蛍光分子がさらされる異なる環境もしくは条件の間で判別することができることを認識し、諒解するに至った。いくつかの事例において、寿命(例えば、発光波長ではなく)に基づいて蛍光分子を判別することによって、ハイテク機器1-100の態様を単純化することができる。一例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合、波長弁別光学素子(波長フィルタ、各波長の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、及び/又は回折光学素子)の数を低減することができるか、又は、なくすことができる。いくつかの事例において、単一の固有波長において動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するが、測定可能に異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域内で発光する異なる蛍光分子を励起及び判別するために、異なる波長における複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用するハイテクシステムは、動作及び保守管理の複雑さを低減することができ、よりコンパクトにすることができ、より低いコストで製造することができる。
【0041】
蛍光寿命分析に基づくハイテクシステムは、一定の利点を有することができるが、追加の検出技法を可能にすることによって、ハイテクシステムによって得られる情報の量及び/又は検出精度を増大することができる。例えば、いくつかのハイテクシステム1-160は、蛍光波長及び/又は蛍光強度に基づいて試料の1つ又は複数の特性を判別するようにさらに構成されてもよい。
【0042】
再び
図1-7を参照すると、いくつかの実施形態によれば、蛍光分子の励起後の蛍光発光事象を時間ビニングするように構成された光検出器を用いて、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニング(time binning)は、光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行われ得る。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象の間の間隔であり、その間に光発生キャリアが時間ビニング光検出器の複数のビン(bin)内に蓄積される。発光事象の時間ビニングによって蛍光寿命を決定するという概念は、
図1-8にグラフで紹介されている。t
1の直前の時刻t
eにおいて、蛍光分子又は同じタイプ(例えば、
図1-7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子の集合が、短パルス又は超短光パルスによって励起される。分子の大きい集合について、発光の強度は、
図1-8に示すように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有し得る。
【0043】
一方、単一の分子又は少数の分子について、蛍光光子の放出は、この例については、
図1-7の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器1-322は、発光事象から発生するキャリアを、蛍光分子(複数可)の励起時間に関して時間分解されている個別の時間ビン(
図1-8には3つが示されている)に蓄積することができる。(たとえば、ビン1、ビン2、ビン3の曲線下面積に対応する)多数の発光事象が合計される場合、(挿入図に示す)結果もたらされる時間ビンは、
図1-8に示す減衰強度曲線を近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子又は蛍光分子が位置している異なる環境の間で区別することができる。時間ビニング光検出器1-322の例は、参照により本願明細書に援用する、「受け取られる光子の時間ビニングのための統合デバイス(Integrated Device for Temporal Binning of Received Photons)」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,656号に記載されている。
【0044】
反応室からの放射強度が低い場合、または試料の特性が反応室からの強度値に依存する場合、反応室に供給されるパワーが経時的に安定したままであることが有益である。例えば、導波路内の時間依存性損失のために反応室に供給されるパワーが3dB減少すると(
図1-4参照)、多くの蛍光発光事象は、機器のノイズフロアを下回るレベルに低下する可能性がある。いくつかの事例では、光子信号(photon signal)をノイズと区別できないことは、蛍光色素分子寿命(fluorophore lifetimes)を区別するために用いられる光子統計に悪影響を及ぼし得る。結果として、重要な分析情報が失われる可能性があり、分析におけるエラー(例えば、遺伝的復号化におけるエラー)が発生する可能性があり、または配列決定の実行が失敗する可能性がある。
【0045】
II.ハイテクシステムへの光源からの出力ビームの結合
本発明者らは、光源からの出力ビームをハイテクシステムに結合する装置および方法を見出した。(「ビーム成形およびステアリングアセンブリ」と呼称される)装置は、マルチビームパラメータの動的な調整を自動化するためのすべての光学的および機械的構成要素を支持する単一のロープロファイル・シャーシ(例えば、高さ35mm未満)を使用して手頃なコストで組み立てられることができる。いくつかの実施形態では、ビーム成形およびステアリングアセンブリは、その最も長い側で140mm未満であり、35mm未満の厚さを有し得る。そのコンパクトなサイズのために、アセンブリは、上述の携帯型DNA配列決定機器のような、光源1-110およびハイテクシステム1-160を含む携帯型ハイテク機器に取り付けられることができる。他の用途としては、プレートリーダ(plate reader)、ゲルスキャナ(gel scanner)、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain-reaction : PCR)装置、蛍光ソータ(fluorescence sorter)、およびマイクロアレイアッセイの使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
複数のビームパラメータを調整するその能力のために、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、光源およびハイテクシステムからビーム成形およびステアリングに必要な特殊構成要素を取り除くことができる。ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150はまた、光源およびハイテクシステムにおける製造およびアセンブリの変動に対応することができ、かつ温度変化および振動などの環境要因に対するビーム結合の感度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、ビーム成形およびステアリングアセンブリは、10ピコ秒程度の短いパルス幅で最大2ワットの平均パワーでパルス光ビームを扱うことができる。アセンブリはまた、上記の遺伝子配列決定システムなどのハイテクシステムにおける時間依存性導波路損失に対処するように用いられ得る。
【0047】
時間依存性導波路損失の影響を低減するための1つのアプローチは、チップ上で使用される集積導波路の長さを短くすることである。しかし、いくつかの事例では、光信号を反応室に伝達するのにかなりの長さの導波路が必要になることがある。代替的または追加的に、導波路に結合された放射の強度は低減されてもよい。本発明者らは、時間依存性導波路損失は、光源1-110からのビームが最初に集積光回路の単一導波路に結合され、次いで多くの導波路間で再分配される場合に最も問題となる可能性があることを認識し、諒解するに到った。結合領域では、強度が非常に高くなり、導波路損失に急激な変化を引き起こす可能性がある。
【0048】
結合領域での時間依存導波路損失を低減するために、本発明者らは、その簡略図が
図2-1Aに示されるようなスライス格子カプラ(sliced grating coupler)2-100を見出した。スライス格子カプラは、ハイテクシステム1-160内のチップ上に配置された精密集積光学構成要素であり、複数の導波路2-120に隣接して形成された長さLの格子2-110を含む。導波路は、格子2-110によって回折された光を受け取る複数のテーパ状端部2-122を有し得る。複数のテーパ状端部は、異なる幅(例えば、図示されるような格子と対向する端部に向かってより広い幅)を有し得る。複数のテーパ状端部がまたがる全幅は、格子の長さL以下であるか、またはほぼ等しくてもよい。スライス格子カプラは、例えば、フォトニック回路と複数の反応室1-330とを含む基板上に一体化され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、光源1-110からのビームは、±X方向に延びるように成形され(または光源によって生成され)、長さLを有する格子カプラの許容される大面積ビームプロファイルと実質的に一致するような形状を有してもよい。大面積ビームプロファイルは、格子の長さLとほぼマッチングする(1/e
2強度値の間で測定された)±X方向のビーム長または第1のウエスト、および格子の幅とほぼ一致する(1/e
2強度値の間で測定された)Y方向のビーム幅または第2のウエストを有し得る。例えば、延ばされたビーム2-112は、
図2-1Aにおいて破線の楕円によって示されるような形状を有し得る。そのようなビームが格子に入射すると(例えば、+Z方向に進むと)、格子は、導波路2-120のテーパ状端部2-122に向かって+Y方向にビームを回折する。ビームは、その中心で最も強く、ビームの縁に向かって移動する強度が低減する(±X方向において低減する)X方向における横断方向の強度プロファイルを有し得る。そのようなビームの場合、複数の導波路のテーパ状端部2-122は、格子2-110と対向する端部でより広く、格子の中心部でより狭く、その結果、同様の量のパワーが、複数の導波路2-120のそれぞれの導波路に結合される。図面には10本の導波路が示されているが、スライス格子カプラは、さらに多くの導波路(例えば、20から2000までの間)を有し得る。多くの導波路にわたってパワーの結合を分配することによって、最初にすべてのパワーを単一の導波路に結合し、続いて光パワーを複数の導波路に分配することからの時間依存損失に関連する悪影響が、低減または排除されることができる。拡大されたビームはまた、格子カプラでの強度を低減させ、格子2-110または結合領域を損傷する危険性を低減させる。
図2-1Aおよびその他の図面において、座標軸は、方向を説明するための便宜上に用いられるものに過ぎない。本出願の範囲から逸脱することなく、座標軸の他の向きが用いられ得る。
【0050】
本発明者らは、スライス格子カプラ2-100および
図2-1Aに示されたビーム構造を用いて複数の導波路2-120へのパワーの均一な結合を取得することが予想外に困難であることを見出した。ビームの横断方向強度プロファイルがガウス分布であるかまたは十分に特徴付けられ、複数のテーパ状端部2-122の異なる幅が事前に計算されて理論的に等量のパワーを取得することができるとしても、発明者らは、結合の均一性が、ビームの横断方向強度プロファイルの変化および±X方向のビーム変位に対して非常に敏感であることが分かった。
【0051】
本発明者らは、複数の導波路に結合されたパワーレベルの均一性を改善し、ビームの横断方向強度プロファイルおよびビーム変位に対する結合の感度を低減するための調整を提供する広い幅のビームを複数の導波路に結合するアプローチを見出した。このアプローチは、
図2-1Bに示されている。いくつかの実施形態によれば、(レーザなどの)光源からの円形ビームは、複数の格子線に対してある角度φで配向された楕円形ビーム2-122に再成形されてもよい。楕円形ビームの長軸の長さは、格子2-110およびテーパ状端部2-122のアレイの長さLを超えることができ、楕円の長軸が格子2-110の歯またはラインの長手方向に対してロール角φになるように回転され得る。いくつかの実施形態では、角度φは0.25度から25度の間であり得る。ビーム2-122の一部分は、±X方向および±Y方向において格子2-110の端部を越えて延びてもよい。いくつかの実施形態によれば、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150は、光源1-110からの円形ビームを、受信した格子2-110および隣接するテーパ状導波路端部2-122に対する結合領域の長さを特徴とする長さLと比較した10%から35%の間の大きさである楕円形ビームに再成形し得る。一例として、円形ビームは、ほぼ約120ミクロンの長さLを有する格子2-110の結合領域に対して、(1/e
2の強度値の間で測定された)ほぼ150ミクロンの長さl
1の長軸を有する楕円に成形されてもよい。格子2-110の結合領域の長さLは、50ミクロンから250ミクロンの間であり、格子の幅は、10ミクロンから50ミクロンの間であり得る。
図2-1Aに示す結合構成は、95%を超えるビーム面積からのパワーがテーパ状端部2-122に結合させ、
図2-1Bに示す結合構成は、80%~95%のビーム面積のパワーをテーパ状端部に結合させる一方で、ビームの長軸の長さl
1に対する感度の低下および導波路のアレイにわたるパワー分割均一性の改善も示す。本発明者らは、全体の結合効率の減少が、結合安定性の改善、ビーム長に対する感度の低減、および導波路へ結合されたパワーの均一性の改善によって補償されるだけではないことを認識し、諒解するに到った。しかしながら、いくつかの実施形態では、細長いビームは、格子2-110または他の受信した光学構成要素に対して約0度の角度で位置合わせされてもよい。
【0052】
動作中、ロール角φならびにXおよびY方向のビーム変位は、複数の導波路2-120にわたるパワーの均一な結合を取得して維持するように調整され得る。X方向に非対称の強度プロファイルを有するビーム2-122を補償するために、ビームの位置は、±X方向および/または±Y方向に調整されて、複数の導波路2-120にわたる結合の均一性を向上させることができる。例えば、+X方向のビームの強度が-X方向のビームの強度よりも大きい場合、ビームは、-X方向に移動されて複数の導波路に結合された複数のパワーを等しくするのを助けることができる。追加的または代替的に、ビームは、(図示される角度に対して)+Y方向に移動されてもよく、その結果、+X方向のビームの一部が、格子2-110から+Y方向に離れて移動し、+X方向のテーパ状端部2-122に結合されるパワー量を減少させ、-X方向のビームの一部が、格子2-110上で移動し、-X方向のテーパ状端部2-122に結合されるパワーの量を増加させる。ビーム2-122がX方向において対称の強度プロファイルを有する場合、±Y方向、±X方向、および/または±φ方向の調整が実行されて、例えば、導波路に結合したパワーの均一性および/または結合効率を改善することができる。いくつかの具体例では、結合効率および/または均一性を改善するために、他のビームパラメータ(たとえば、入射角、ビームサイズ、偏光)に対する調整が追加的または代替的に行われてもよい。
【0053】
ビームの角度および方向を説明することに関して、+Zは、光ビームの進行方向を示すように使用され得る。X方向およびY方向は、「横断(transverse)方向」または「横(lateral)方向」と呼称され得る。X方向は水平方向を示すために用いられ、Y方向は垂直方向を示すために用いられ得る。Z軸を中心とするビームの回転は「ロール」と呼称され、符号φによって示される。X軸を中心とした回転は「ピッチ」と呼称され、記号θxで示される。Y軸を中心とした回転は「ヨー」と呼称され、記号θyによって示される。
【0054】
例えば、±X方向および±Y方向の調整は、作動式変向ミラー(actuated turning mirrors)または光学窓(optical windows)を使用して実行することができるが、ビームサイズおよびビームロールまたは回転(±φ)の調整は簡単ではない。例えば、ビームサイズおよびビーム回転の調整は、ビーム位置などの他のビームパラメータに連動して影響を及ぼし得る。本発明者らはまた、ビームを変位させずに格子へのビームの入射角(ピッチ角およびヨー角)を調整することは、導波路への結合効率を改善し、光源1-110およびハイテクシステム1-160の受光光学系の製造ばらつきに適応するために有用であり得る。本発明者らはさらに、ハイテクシステム1-160の光学構成要素への効率的な結合を達成することができるように、ビーム成形およびステアリングアセンブリからのビーム品質は高くなるべきである(例えば、1.5未満のM2値)ことを認識し、諒解するに到った。本発明者らは、現場での使用のためのコンパクトで安定したアセンブリと共に複数のビームパラメータに対する自動制御を用いてビームサイズ、位置、入射角、および回転調整を提供することは困難な課題であることを認識した。
【0055】
ビーム成形およびステアリングモジュール1-150の一例が、
図2-2Aに示されている。いくつかの実施形態によれば、ビーム成形およびステアリングモジュールは、ビーム成形およびステアリングモジュールのアクチュエータ及び光学構成要素を支持するように構成されている中実シャーシ2-210を備えることができる。実施形態では、シャーシは、光学構成要素を取り付け可能である基部を含み、基部に取り付けるか、または基部と一体的に形成され得る側壁またはその一部をさらに含んでもよい。モジュール1-150は、光学構成要素を囲むように、シャーシに取り付けるカバーをさらに含み得る。いくつかの事例では、カバーは、側壁またはその一部を含み得る。
【0056】
シャーシおよびカバーは、金属及び/又は低熱膨張率複合材から形成又は組み立てられてもよい。いくつかの事例では、シャーシおよびカバーは、単一のアルミニウム片から機械加工または鋳造されてもよい。シャーシ2-210が単一の材料から製造される場合、ビーム成形およびステアリングアセンブリ内に光学構成要素を保持する要素および/または光学構成要素自体は、要素および/または構成要素をシャーシに機械加工された位置合わせ特徴またはシャーシに配置された位置合わせピンに位置合わせすることによって互いに正確に位置合わせされ得る。シャーシ2-210は、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150の光学構成要素を収容するのに適した任意の形状であり、光源1-110が配置される機器のフレームまたはシャーシに取り付けられるように構成されてもよい。
【0057】
本発明者らは、ビーム成形およびステアリングモジュールのシャーシ2-210がさらに、分析チップ(例えば、バイオ光電子チップ1-140)等の受光光学構成要素を有する装置が
図2-2Bに示すように取り付けられるハイテクシステム1-160のプリント回路基板(PCB)2-290の少なくとも一領域への支持を提供することができることを認識し、諒解するに到った。ビーム成形およびステアリングモジュールのシャーシ2-210は、その他の点では支持されていないかまたは移動可動なPCBの領域を安定させることができる。例えば、シャーシ2-210は、(例えば、高さ調整ネジを用いて)機械的マウント2-214を用いていくつかの位置でハイテク機器のシャーシまたはフレーム2-212に取り付けられてもよく、PCB2-290の領域全体にわたる剛性アセンブリを提供してもよい。分析チップ1-140を支持するPCBの領域は、モジュールのシャーシ2-210に跨がる領域の近くにあってもよく、ビーム成形およびステアリングモジュールのシャーシ2-210に(例えば、留め具2-216で)固定されて、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150と分析チップ1-140との間の相対運動(例えば、機械的振動からのPCBの板振動などの面外運動)を低減することができる。例えば、留め具2-216(例えば、ネジ)は、PCB2-290の領域(そうでなければ支持されていないかもしれない)をビーム成形及びステアリングモジュール1-150の光出力ポートの近くの位置に堅固に固定し、そうでなければPCBに結合する機械的振動のために発生する可能性があるPCBの面外の撓みを低減または排除することができる。したがって、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150は、そうでなければチップまたはハイテクシステム1-160の受光光学系に作用し、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150に対して変位するであろう振動を機械的に低減することができる。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、シャーシ2-210およびビームステアリングアセンブリ1-150全体は、シャーシの配向を機器のシャーシまたはフレーム2-212に対して調整することができるように、機器のシャーシまたはフレーム2-212に取り付けられ得る。例えば、3点取り付け方式が使用されて、3つの機械的マウント(mechanical mount)2-214がそれぞれシャーシ2-210の独立した高さ調整を提供することができる。これらのマウント2-214を用いて独立して高さを調整することによって、全高に加えて、入力ビーム2-205に対するシャーシ2-210の1つ以上の角度(例えば、ピッチおよびロール角)が調整され得る。いくつかの事例では、(機械的マウントからのねじが延出され得る)2つの取り付け位置に形成された(
図2-2Aに示す)スロット2-203は、入力ビーム2-205に対してシャーシ2-210の角度調整(例えば、ヨー)をさらに可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態では、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150の複数のアクチュエータは、1つまたは複数のステッピングモータ(stepper motor)(図示の実施形態では、5つ、2-221、2-222、2-223、2224、2-225)を含み、ビーム成形およびステアリングモジュールの光学構成要素を作動させるように構成されている。ビーム成形およびステアリングモジュールの高さを低くするために、複数のアクチュエータは、図面に示されているように、それらのシャフトが、ほぼ同じ平面内にあるように取り付けられ得る。いくつかの実装形態では、1つまたは複数のステッピングモータは、その平面直交するかまたは他の向きのシャフトを有することができる。いくつかの事例では、1つまたは複数のステッピングモータが、
図2-2Bの例に示されるように、ビーム成形およびステアリングモジュールに取り付けられたPCB上に部分的に製造されてもよい。例えば、PCB2-290上に製造されたステッピングモータ(図示せず)は、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150内に延在し、光学構成要素を作動させてY軸を中心に回転させることができる。PCBから部分的に製造されたステッピングモータの例は、米国仮特許出願第62/289,019号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。PCBから部分的に製造されたモータは、PCBの平面に対して垂直である軸を中心にビーム成形およびステアリングモジュールの光学構成要素を回転させるように構成された駆動軸を含み得る。いくつかの具体例では、他の種類のアクチュエータ(例えば、圧電アクチュエータ、リニアモータ)が、アクチュエータとして用いられてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、再び
図2-2Aおよび
図2-3の光学的表現を参照すると、ビーム成形およびステアリングモジュール1-150は、第1の光学窓2-231、第2の光学窓2-232、集束レンズ2-233、第3の光学窓2-235、および第4の光学窓2-237を含み得る。いくつかの事例では、λ/20以上の平坦度を有する表面を有する光学的に平坦な面が、光学窓の代わりにより高いビーム品質のために使用されてもよい。安全のために、出力ビームを遮断するために、光シャッタ2-239をアセンブリ1-150に含めることができる。いくつかの実施形態では、透明な光学窓は、集束レンズ2-233の焦点におけるビーム位置およびビーム入射角を調整するように(それぞれ、ステッピングモータ2-221、2-222、2-223、2-224などの)複数のアクチュエータによって作動させることができる。光学窓及び集束レンズは、光学素子からの望ましくないフレネル反射を低減するために反射防止コーティングすることができる。いくつかの実施形態によれば、光学窓の対向面は、10アークセコンド(arc-seconds)以内で平行であってもよいが、いくつかの実施形態によっては、より小さい平行度を許容することができる。光学窓は、同じ厚さを有してもよく、または異なる厚さを有してもよい。光学窓の厚さは、3mmから20mmの間であり得る。いくつかの事例では、複数の変向ミラーが使用されてビーム位置および入射角を調整することができるが、複数の光学窓の利点は、それらは、シャーシ2-210からの機械的振動のビーム位置および入射角の変化への結合による影響を実質的に受けないことである。例えば、たとえ光学窓が振動運動によって変位されても、光学窓を通過するビームの光ビーム経路は、変化しないままである。さらに、複数の光学窓を変位させる可能性がある光学窓用の光学マウントにおける熱膨張効果または製造上のばらつきは、ビーム経路に影響を及ぼさない。いくつかの具体例では、ビーム成形およびステアリングモジュールを通るビーム経路が直線状でも曲線状でもよく、ビーム経路を折り返す(fold)ために変向ミラーを使用しなくてもよいが、ビーム経路を方向転換するためにビーム成形およびステアリングモジュール内に配置された1つまたは複数の変向ミラー2-234が存在してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、変向ミラー2-234は、それが第1の波長範囲内の1つまたは複数の波長を通過させ、第2の波長範囲内の1つまたは複数の波長を反射するように二色性であり得る。例えば、ダイクロイックコーティングされた(dichroic-coated)変向ミラー2-234は、光源1-110からの赤外波長領域の基本波長をビームダンプおよび/または光検出器(図示せず)へと通過させ、可視スペクトル範囲1-140における周波数2倍化波長をバイオ光電子チップに反射してもよい。他の実施形態では、変向ミラー2-234は、単一の固有波長用の反射コーティングを有し、二色性ではなくてもよい。そのような実施形態では、入力ビーム内の波長の分離は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ内の他の光学構成要素(たとえば、干渉フィルタ、ペリクル、プリズム)を用いて達成され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、変更ミラー2-234は、調整可能なマウント2-246に取り付けられ、例えば、止めねじ(set screw)2-247によって調整され得る。そのような調整は、1自由度のみであり得る。例えば、調整止めねじ2-247は、光学窓2-231、2-232、2-235、2-237およびレンズ2-233を通るビーム2-350の仰角方向(elevation angular)を粗く調整してもよい。いくつかの事例では、変向ミラー2-234は、調整不可能な取り付け構成でシャーシ2-210に取り付けられ得る。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、
図2-2A及び
図2-3に示すように、第1の光学窓2-231は、第1の回転軸を中心に第1のアクチュエータ2-221によって回転され得る。説明を容易にするために、+Z軸がビームの進行方向を向いている右直交座標系XYZが、出射ビーム2-350について図面に示されている。第1の回転軸は、入射光ビーム2-350を第1の光学窓の直後に±X方向にシフトさせるために、Y軸と実質的に平行であり得る。第2の光学窓2-232は、第2の光学窓の直後に±Y方向に光ビームをシフトするために、第1の回転軸に対して実質的に垂直である第2の回転軸を中心に第2のアクチュエータ2-222によって回転され得る。いくつかの具体例では、第1の光学窓と第2の光学窓の順序は逆にすることができる。第3の光学窓2-235は、第3の光学窓の直後に±X方向に光ビームをシフトするために、第1の回転軸と実質的に平行な第3の回転軸を中心に第3のアクチュエータ2-223によって回転され得る。第4の光学窓2-237は、第4の光学窓の直後に±Y方向に光ビームをシフトするために、第1の回転軸に対して実質的に垂直である第4の回転軸を中心に第4のアクチュエータ2-224によって回転され得る。いくつかの具体例では、第3および第4の光学窓の順序は逆にすることができる。
【0064】
ビーム成形およびステアリングモジュール1-150内で光ビーム2-350を平行移動させる(translating)ことによる基板表面2-340における集束光ビームへの影響は、
図2-3から理解することができる。基板の表面は、集束レンズ2-233の焦点に又はほぼその焦点に配置されてもよい。例えば、出光ビーム2-350は集束レンズ2-233を通過して、バイオ光電子チップまたは他の分析チップ1-140においてスライスされた格子カプラ2-100上に集束されてもよい。集束レンズ2-233の後に位置する回転光学系による光ビーム2-350の横方向の並進は、表面2-340において±X、±Yの並進をもたらす。一例として、光学窓2-235が約6mmの厚さおよび約1.5の屈折率を有する場合、その回転軸を中心とした第3の光学窓2-235の回転は、表面2-340で集束ビームをX軸に平行に最大で±1200ミクロンで並進させることができる。光学窓2-237が約6mmの厚さおよび約1.5の屈折率を有する場合、その回転軸を中心とした第4の光学窓2-237の回転は、表面2-340で集束ビームをY軸に平行に最大で±1200ミクロンで並進させることができる。
【0065】
より薄いかまたはより厚い光学窓に対して、それぞれ、より少ないまたはより多いビームの動きを達成することができる。さらに、(例えば、約1.5より大きい)高い屈折率を有する材料を有する光学窓は、より大きいビーム変位を提供することができる。
【0066】
集束レンズ2-233の前に位置する光学素子2-231,2-232を回転させることによって光ビーム2-350が並進する結果として、表面2-340におけるビームの(X,Y)位置をそれほど変化させることなく、表面2-340における集束ビームの入射角(ピッチおよびヨーの角度)が変化する。例えば、第1の光学窓2-231をその回転軸を中心に回転させると、集束レンズ2-233において光ビームを±X方向に変位させることができる。光学窓が約9mmの厚さおよび約1.8の屈折率を有する場合、集束レンズにおける光ビームのそのような動きは、表面2-340におけるXZ平面内のZ軸に対する光ビームの入射角θ
yまたはヨー(
図2-3には示されていない)を±1.0度程度だけ変化させる。いくつかの実施形態では、その回転軸を中心とした第2の光学窓2-232の回転は、光ビームを±Y方向に変位させ、表面2-340でのYZ平面における入射角θ
xまたはピッチの変化を生じさせる。表面2-340は概ね、レンズ2-233の焦点距離fに位置するため、レンズの前でビーム2-350を±1.0度程度だけ平行移動させることによる入射角の変化は、表面2-340における集束ビームの(X,Y)位置にそれほど影響を及ぼさない。いくつかの事例では、目標位置(例えば、表面2-340)におけるビームの位置のXおよびYにおけるクロスカップリング横方向変位は、最大でも±10ミクロンである。いくつかの事例では、光学窓2-231、2-232の回転によるターゲット位置でのクロスカップリング横方向変位は、±5ミクロン以下であり得る。クロスカップリング変位(cross-coupling displacement)は変化しないかもしれないが、レンズ2-233がより短い焦点距離を有し、より厚い光学窓が使用される場合、より大きな入射角の変化(例えば、±10度程度)が取得され得る。
【0067】
光学窓2-231、2-232、2-235、2-237のうちの1つまたは複数の動作を自動化することによって、出力ビームの連続的な走査を1つまたは複数の自由度で実行されてもよい。
図2-2Aに示す実施形態では、第2の光学窓2-232および第4の光学窓2-237の連続的な走査は、複数の光学窓を同じ方向に連続的に回転させることによって実施されてもよい。連続走査モードは、出力ビームをハイテクシステム1-160内の受光光学構成要素またはポートに位置合わせするのに有用であり得る。連続的または段階的な走査もまた、出力ビームをハイテクシステム内の複数の受光光学構成要素またはポートに結合するのに有用であり得る。例えば、出力ビームは、ハイテクシステム1-160内の同じチップ上または異なるチップ上の異なる格子カプラに順次進むことができる。このようにして、(それぞれがサンプル分析用の複数の試料ウェルを有する)異なる複数の分析が、ほぼ同時に実行されてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、ビームを-Y方向または+Y方向に偏向させるために、表面2-340とビーム成形およびステアリングモジュール1-150との間に配置された変向ミラー(
図2-3には示されていない)が存在して、表面2-340は入射光ビーム2-350と平行になってもよい。これにより、例えば、
図2-2Bに示すように、バイオ光電子チップ1-140を下にあるプリント回路基板と平行に取り付けることが可能になる。いくつかの事例において、変向ミラーは、シリコン・ウェハ、石英ガラス、または他の研磨基板の小さい部分(例えば、5平方mm未満)から低コストで形成し、反射材料でコーティングし、バイオ光電子チップ1-140を含むパッケージ内に取り付けることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、集束レンズ2-233は、5センチメートルから1メートルの間の焦点距離を有するシングレットレンズ(singlet lens)であり得る。あるいは、集束レンズ2-233は一対のリレーレンズ(relay lense)のうちの1つとすることができ、他方のレンズはビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150の内側または外側に配置され得る。いくつかの実施形態では、レンズ2-233は、ズームレンズでもよい。集束レンズ2-233の位置、倍率、および/または縮小率は、手動で(例えば、レンズが取り付けられているポジショナ(positioner)(図示せず)を操作するユーザによって)制御されてもよく、またはレンズの位置、倍率、および/または縮小率を動的に調整するように、アクチュエータを用いて自動的に制御されてもよい。いくつかの具体例では、レンズ2-233は、製造時に位置決めされるか、またはユーザによって位置決めされる固定レンズマウントに設置されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、ビーム形状およびビーム回転に対する調整は、光学プリズムを用いて達成され得る。いくつかの実施形態では、アナモルフィックプリズム対(anamorphic prism pair)2-252が、入力光ビームの横断方向強度プロファイルの1つの次元を縮小または拡大するように用いられてもよい。
図2-2Aを参照すると、アナモルフィックプリズム対は、(プリズムの形状に応じて)「3」から「8」の間の係数で、入力光ビーム2-205の横断方向強度プロファイルを一方向(入射光ビーム2-205を基準とするX方向)に縮小し、Y方向の横断方向強度プロファイルには影響しない。縮小または拡大の量は、光ビームが通過するプリズムの入射面と出射面との間のカット角によって決定され得る。いくつかの実施形態によれば、プリズムは、入射プリズム面と出射プリズム面との間で15度から45度の間の角度でカッティングされてもよい。プリズム面は、反射防止コーティングで被覆されてもよい。一次元(図示の例ではX次元)での縮小のために、レンズ2-233の焦点におけるX方向の光ビームの幅は、
図2-1Bに示されるように、Y方向の横断方向強度プロファイルと比較して大きいかまたは拡大される。いくつかの実施形態では、集束レンズ2-233を光ビーム経路に沿って移動させること(例えば、線形アクチュエータでレンズ2-233を移動させること)および/または集束レンズ2-233によって提供される有効倍率または縮小倍率を変更すること(例えば、ズームレンズ設定を変更すること)によってビームサイズおよび楕円率の調整が実行され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、一対の円柱レンズ(cylindrical lense)が、光ビームを拡大または縮小するように使用されてよく、本発明者らは、結果として得られるビーム形状がレンズ対の位置合わせに対して非常に敏感であることを見出した。例えば、一対の円柱レンズがビームの光軸を中心に1度程度の小さい量だけ回転すると、結果として生じるビーム形状は、この量の5倍以上で回転する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、一対のアナモルフィックプリズム2-252は、製造時に位置合わせされてもよい。例えば、プリズムは、シャーシ2-210に形成または取り付けられた機械加工された位置合わせ特徴および/またはピン(図示せず)に位置合わせてもよい。いくつかの具体例では、プリズムは、シャーシ2-210上のおよびシャーシ2-210に取り付けられた位置合わせ特徴に位置合わせ可能な機械加工された特徴および/または中間プレート2-250に形成または取り付けられたピンに位置合わせてもよい。いくつかの事例では、一対のプリズムの微調整のために(例えば、工場での位置合わせのために)、中間プレート2-250の配向が、シャーシ内で調整可能である。いくつかの事例では、アナモルフィックプリズム対2-252の各プリズムは、個別に調整可能であり得る(例えば、回転ポジショナに取り付けられる)。追加的に又は代替的に、中間プレート2-250は、回転調整部を含むか又は回転ポジショナに取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、プリズム対、またはその対の個々のプリズムの配向は、1つまたは2つのステッピングモータを用いて自動化され得る。本発明者らは、アナモルフィックプリズム対を製造時に手動で調整して、適切に多様なビーム形状のために光源からハイテクシステムへのビーム形状を柔軟に適応させ、ハイテクシステムへの結合品質は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150内の他の光学構成要素によって提供される自動化されたビーム回転、変位、および入射角調整によって動的に処理され得る。
【0073】
アナモルフィックプリズム対2-252は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150にさらなる利点を提供することができる。第一の利点は、それが異なる波長の光ビームの空間的分離を提供できることである。いくつかの具体例では、アセンブリへの入力ビーム2-205は、複数の周波数(たとえば、レーザからの基本周波数または波長、およびレーザビーム経路内の非線形光学素子からの2倍高調波周波数または周波数2倍化波長出力)を含み得る。アナモルフィックプリズム対2-252は、
図2-2Aにおいて破線および実線で示すように、異なる2つの波長を異なる方向に屈折させることができる。例えば、入射光ビーム2-205の赤外線部分は、点線経路に沿ってビームダンプ2-260および/またはフォトダイオードに伝達し、例えば、光ビーム2-205の周波数倍増部分は、アセンブリ1-150を通る実線経路に沿って伝達してもよい。アナモルフィックプリズム対2-252の第2の利点は、それが入力ビーム2-205の±X変位に対するビーム結合の感度を低下させることである。感度の低下は、プリズム対によるX方向の光ビームの縮小によるものである。
【0074】
さらに、ビームがプリズムペア2-252のいずれかのプリズムの縁部によってクリップ(clipped)されない限り、ビーム形状は、XおよびY方向における入力ビームの位置によって影響されない。これに関して、ビーム形状は、入力ビームに対してプリズム対を変位させるであろう振動、熱膨張、および/または機械加工の変動に対する感度が低下している。例えば、入射光ビーム2-205は、プリズム対2-252の後の楕円形ビーム形状に影響を及ぼすことなく、XまたはY方向に最大±3mm変位し得る。XおよびY変位に対するビーム形状の不変性は、入力ビーム2-205を再成形するために交差した一対の円柱レンズがアセンブリ1-150において使用される場合には不可能である。
【0075】
ビーム成形に関する他の実施形態が採用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、アナモルフィックプリズム対2-252は、楕円形ビームを円形ビームに変換することができるように、または逆に使用または配置され得る。これは、例えばダイオードレーザからの横断方向ビームプロファイルを細長い形状からより丸い形状に変換するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、アナモルフィックプリズム対2-252が使用されないようにビーム形状の変換が必要とされず、アナモルフィックプリズム対2-252の代わりに1つ以上の変向ミラーが設置されてもよい。そのような実施形態では、像回転プリズム(image rotation prism)2-254は、入力ビームの偏光を回転させるように用いられ得る。いくつかの事例では、アナモルフィックプリズム対の代わりにガリレイビームエキスパンダ(Galilean beam expander)を使用して、任意の形状の入力ビームをサイズ変更(拡大または縮小)することができる。いくつかの実施形態によれば、1つまたは複数の偏光回転器(1/2波長板)または変換器(transformer)(1/4波長板、偏光膜)が、入力ビームの偏光を操作するためにビーム成形およびステアリングアセンブリ内の任意の適切な位置に設置され得る。偏光回転器または偏光変換器は、手動で(ユーザによって)または自動的に(アクチュエータによって)回転され得る。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、横断方向ビーム形状および偏光の回転は、像回転プリズム2-254を使用して達成され得る。いくつかの実施形態では、アナモルフィックプリズム対2-252から出射するビームは、プリズムに入る光ビームの光軸とほぼ平行な回転軸を中心に回転する回転プリズムの中心を通過してもよい。プリズムを回転させた場合、光ビームの横断方向形状と、プリズムから出射するその光軸を中心にした偏光とが回転する。このようにして、(
図2-1Bに示されるような)楕円形の横断方向ビーム形状を有する光ビームは、その光軸を中心に(例えば、
図2-1Bに示される±φ方向に)回転され得る。いくつかの実施形態によれば、回転プリズムは鳩プリズム(dove prism)であり得る。異なる光学配置を有する他の実施形態は、他の像回転プリズム(例えばシュミットプリズム(Schmitt prism)、一群のミラー)が使用されてもよい。
【0077】
いくつかの実装形態では、像回転プリズム2-254は、
図2-4の例示の光ビームのZ軸に平行な回転軸を中心に回転するクレードル(cradle)2-410を有する回転アセンブリに取り付けられ得る。クレードルは、いくつかの実施形態によれば、少なくとも3つのベアリング2-420上に載る円柱表面2-412を有してもよい。いくつかの事例では、4つのベアリング2-420が使用され得る。ベアリングは、シャーシ2-210に取り付けられたロッドまたは車軸に取り付けられ得る。アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ)は、レバーアーム2-434を押すかまたは離してクレードルを回転させてもよい。いくつかの実施形態では、支持部2-446の裏面に取り付けられた圧縮ばね2-440(または任意の他の適切なばね)は、レバーアーム2-434を押すアクチュエータに対して安定した釣り合い力を付与し、機械的リンク機構のバックラッシュを取り除き、クレードルをベアリング2-420に対して保持するように、カウンターレバーアーム2-432に作用することができる。いくつかの事例において、支持部2-446は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150を覆って取り付けられたカバーの一部を含み得る。ステッピングモータでレバーアーム2-434を押すと、クレードル2-410が、±12.5度で回転し得る。プリズムを通る光の反射のために、ビーム形状は、表面2-340において±25度も回転し得る。ビーム回転の分解能は、市販のステッピングモータを使用すると、ステッピングモータのステップ当たり0.1度未満(例えば、0.01度/マイクロステップから0.1度/マイクロステップ)であり得る。
【0078】
クレードル2-410は、像回転プリズムの中心がクレードルの回転軸と同心であるように、像回転プリズム2-254が取り付けられた機械加工された凹部を含み得る。機械加工された凹部は、組み立てられたときにビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150内の設計された光ビーム経路とほぼ平行になるように位置合わせされた1つまたは複数の位置合わせ面またはピンを含み得る。組み立て中、像回転プリズム2-254は、プリズムを1つ以上の位置合わせ面またはピンに位置合わせし、任意の適切な固定手段でプリズムをクレードルに固定することによって位置合わせされ得る。加えて、複数のベアリング2-420を支持する複数のロッドは、回転プリズムの中心軸がクレードル2-410の回転軸と、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150を通る設計された光ビーム経路とほぼ一致するように、シャーシ2-210内の機械加工された複数の特徴と平行に整列され得る。したがって、アセンブリを通る設計された光ビーム経路にほぼ位置合わせされた入力ビーム2-205は、ビーム変位およびビーム方向の最小限の変化で回転するその形状(横断方向強度プロファイル)を有することになる。
【0079】
本発明者らはまた、ロープロファイル形状のビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150を有することが有益であることを認識し諒解するに到った。これは、同じ種類のアクチュエータ(例えば、回転ステッピングモータ)が、アセンブリ内のすべての可動光学構成要素を動作させるように用いられる場合には困難になる可能性がある。同じ種類のアクチュエータを使用することは、複雑さの低減、異なる部品の数の低減、数量割引コスト、および互換性の容易さの点で有益であり得る。しかしながら、アセンブリ1-150内の複数の光学構成要素は直交軸を中心とした回転を利用する。例えば、
図2-2Aを再び参照すると、2つの光学窓2-232、2-237は、図面に示すX軸に平行な軸を中心に回転し、ステッピングモータ2-222、2-224によってそれぞれ直接駆動され得る。この場合、複数の光学窓は、例えば、モータの駆動軸の端部に直接取り付けられ得る。一方、2つの光学窓2-231、2-235は、実質的にX軸に直交する軸を中心に回転する。通常、このことは、これら2つの光学窓2-231、2-235のためのアクチュエータを他の2つの光学窓2-232、2-237のためのアクチュエータに直交して取り付けることを必要とし、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150の全高をかなり増大させるであろう。あるいは、このことは、異なる種類のアクチュエータを使用することを必要とし、ビーム成形およびステアリングアセンブリにおいて異なる構成を有する構成要素の数を増加させるであろう。
【0080】
ビーム成形およびステアリングアセンブリの全体的なロープロファイルを維持するために、それらの駆動シャフトがすべてほぼ同じ平面またはほぼ平行平面内にあるようにすべての回転アクチュエータを取り付けることを可能にする機械的リンク機構2-242、2-244が使用され得る。回転アクチュエータのそのような取り付けを可能にする例示的な機械的リンク機構2-242(ギア、プーリー、またはスプロケットを必要としない)が
図2に示されている。ただし、いくつかの実施形態では、他のリンク機構が使用されてもよい。いくつかの実施形態によれば、機械的リンク機構は、アクチュエータの回転駆動シャフト2-530に取り付けられたカムアーム2-510、カムアームに取り付けられたベアリング2-520、および光学マウント2-505に結合されたレバーアーム2-540を含み得る。アクチュエータのシャフト2-530は、第1の軸(例えば、図面に示されているX軸に平行な軸)を中心に回転し得る。光学マウント2-505は、例えば光学窓2-231を保持し、駆動シャフトの回転軸とほぼ直交している第2の回転軸(例えば、Y軸に平行な軸)を中心に軸および/またはベアリング2-550を使用して回転してもよい。アクチュエータが作動されると、ベアリング2-520は、レバーアーム2-540を押し、レバーアームの表面を横切って移動し、光学窓2-231を第2の回転軸を中心に回転させる。支持部2-446の裏面に取り付けられたねじりばね2-560(または他の適当なばね)は、レバーアーム2-540を押すアクチュエータに対して安定した釣り合い力を付与し、機械的リンク機構においてあらゆるバックラッシュを取り除くことができる。いくつかの事例において、支持部2-446は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150を覆うように使用される蓋の一部を含み得る。
図2-5Aに示されている機械的リンク機構は、ビーム成形およびステッピングアセンブリ内の光学窓、回転ミラー、および/または像回転プリズムを回転させるように使用され得る。
【0081】
本発明者らは、第2の回転軸を中心とするレバーアーム2-540の回転運動およびベアリング2-520の円軌道が、アクチュエータの駆動シャフト2-530の角度変化に起因して、通常、光学構成要素2-231の角度における非線形の変化をもたらすことを認識し、諒解するに到った。いくつかの実施形態によれば、非線形性を補償する曲面2-545は、レバーアーム上に形成され得る。レバーアーム2-540に曲面が用いられる場合、レバーアーム2-540の接触面が平坦である場合と比較して光学構成要素の広い可動範囲にわたって回転駆動軸2-530の角度の変化と光学構成要素2-231の角度の変化との間に線形またはほぼ線形の関係があり得る。曲面2-545の湾曲は、所望の用途に対して線形化された関係を提供するように構成され得る。曲面2-545を用いることは、回転アクチュエータの回転運動から生じる線形化された出力(例えば、光学窓2-231の回転運動)の有用な範囲を増大させることができる。例えば、出力は、ベアリング2-550を中心にして30度の回転にわたって±5%の誤差以内で線形を維持し得る。いくつかの実施形態では、出力は、ベアリング2-550を中心に30度の回転にわたって±2%の誤差以内で線形を維持し得る。一例として、
図2-4に示されるクレードル2-410のレバーアーム2-434は、レバーアーム2-434上のベアリング2-520を押すアクチュエータの回転角度と像回転プリズム2-254の回転角度との関係を線形化するための曲面を含み得る。
【0082】
別の例として、曲面2-545は、
図2-5Aに示される機械的リンク機構によって回転される光学窓2-231を通過する光ビームの線形化された変位を提供するように構成され得る。曲面の構成は、カムアーム2-510の回転運動、光学窓2-231の回転運動、および光学窓を通過する光ビームについてのスネル-デカルトの法則(Snell-Descartes law)を考慮に入れることができる。レバーアーム2-540に適切に設計された曲率が取得されると、カムアーム2-510の回転運動の広い範囲にわたって線形化された変位が得られる。カムアーム2-510の広範囲の回転運動にわたる線形化されたビーム変位の一例が、
図2-5Bのグラフに示されている。データへの線形フィットは、0.983のR
2値を示す。複数のデータ点におけるノイズのいくつかは、ベアリング2-520の動きにおける不規則性および曲面2-545の滑らかさに起因すると考えられる。より高品質のベアリングと、曲面2-545のより正確な機械加工または仕上げとにより、より高いR
2値が期待される。実施形態では、いくつかの事例によってはより高い値を得ることができるが、設計された曲面2-545は、機械的リンク機構についての測定された出力を0.98程度の高いR
2値に線形化することができる。
【0083】
ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150に使用される複数の光学構成要素(例えば、アナモルフィックプリズム2-252、ダブプリズム2-254、変向ミラー2-234、および光学窓)は、中程度または高い光学品質のものであり得る。いくつかの実施形態では、複数の光学構成要素は、光ビームが通過するまたはそこから反射される表面について、40-20(スクラッチ、ディグ)またはそれ以上の表面品質を有し得る。これらの表面の平坦度は、633nm以下の波長の1/4程度の高さであり得る。反射防止(Anti-reflection : AR)コーティングは、光ビームが通過する表面に適用され得る。ARコーティングは、いくつかの具体例では狭帯域であり、または他の実施形態では広帯域であり得る。2つの波長のビームが表面を通過する場合(例えば、基本波および第二高調波の光ビーム)、二色性ARコーティングが表面に適用され得る。いくつかの具体例では、光学システムに使用される任意のコーティングは、ビーム成形およびステアリングアセンブリが最大100ワットの出力ビームパワーを生成する複数の光源に使用されるように、高出力コーティングであり得る。
【0084】
ビーム成形およびステアリングモジュール1-150の有利な態様は、受光結合構成要素に入射するビームに対するθ
xおよびθ
yの入射角調整(
図1-3参照)を、
図2-3に関連して説明したように、表面2-340における集束ビームの位置に対するX、Y調整とは実質的に独立して実行可能であることである。さらに、ビームの回転またはロールに対する調整は、θ
x、θ
y、X、およびYの調整とは実質的に独立して実行することができる。したがって、5つのビームパラメータ(θ
x、θ
y、X、Y、およびφ)を実質的に互いに独立して調整することができる。例えば、いずれか1つのパラメータの調整は、他のビームパラメータへのクロスカップリングを実質的に伴わずに実行され得る。さらに、受信光学構成要素上のビーム焦点は、(たとえば、レンズ2-233を平行移動させることによって)他のビーム特性とは本質的に独立して変更され得る。独立した調整のこれらの態様は、受信光学構成要素に対する入射ビームの位置合わせの複雑さを軽減することができ、受信光学構成要素に対する光ビーム2-350の自動位置合わせを可能にすることができる。例えば、
図1-3を再び参照すると、格子カプラ1-310またはスライス格子カプラ2-100を介して1つ又は複数の導波路1-312に結合されるパルス1-122を有する入射光ビームからの光エネルギーは、位置合わせ処理の間に1つ又は複数の導波路の反対の端部にある1つ又は複数のフォトダイオード1-324によって監視することができる。格子カプラ上のビームの位置をそれほど変更することなく、ビームの入射角と回転角は、結合を増加させるかまたは最適化するように調整され得る。さらに、必要に応じて、レンズ2-233を光ビーム経路に沿って移動させることによって、ビーム焦点に対する調整は、他のビームパラメータに対する調整とは独立して実行され得る。複数のビームパラメータの調整は実質的に互いに切り離されているので、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、光源1-110からハイテクシステム1-160への光ビームの位置合わせをより容易に自動化し、高い結合効率に上昇させて維持するように用いられ得る。1つのビームパラメータ(例えば、X位置)に対する調整が他の1つ以上のビームパラメータ(例えば、入射角またはビーム形状)に相互結合する場合には、位置合わせは、より複雑で自動化するのが困難であろう。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、自動位置合わせ処理は、ハイテクシステム1-160において光源1-110から導波路カプラ(例えば、スライス格子カプラ2-100)への光ビームを位置合わせするように用いられ得る。ラスタスキャンや二面体スキャンなどの他の種類の探索パターンを使用することもできるが、位置合わせ処理は、
図2-6に示されるように、格子カプラ2-100について螺旋探索(spiral search)を実行することを含み得る。螺旋探索は、第3の光学窓2-235及び第4の光学窓2-237を回転させて集束ビーム2-350をチップの表面上でX及びY方向において横方向に並進させることによって実行することができる。例えば、チップ1-140がハイテク機器1-100に装填されて光源1-110がオンにされた後、光ビームは、
図2-6において「A」とマークされた位置においてチップの表面に到達し得る。この位置において、クワッド検出器1-320によって信号は検出されない。クワッド検出器からの信号が監視されている間に、螺旋探索経路2-610が実行され得る。位置「B」において、クワッド検出器は、その検出器からのビームのX、Y位置信号を見当合わせし始めることができる。その後、制御回路が、クワッド検出器の中心に対するビームの位置を決定し、螺旋経路の実行を取り消し、ビームをクワッド検出器1-320の中心、すなわち点「C」へと方向制御するように、アクチュエータ2-223,2-224を動作させることができる。格子カプラ2-100は、クワッド検出器の上でほぼ中心に位置することができる。続いて、導波路2-120に結合される光パワーの量を増加させ、各導波路に結合されるパワーの均一性を向上させるために、精密な位置、ビーム回転、および入射角の調整が行われてもよい。いくつかの実施形態において、複数の導波路2-120に結合された複数の集積光検出器1-324からの光パワーが、複数の光導波路に結合されたパワーの均一性を改善させるように、格子カプラで光ビームを微調整するのを助けるために監視され得る。
【0086】
他の方法及び装置を使用して、クワッド検出器1-320を探索し、集束ビーム2-350を格子カプラ2-100に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態において、光ビームを検出することができる範囲を拡大するために、クワッド検出器1-320の感度を改善することができる。例えば、高いパワー(例えば、完全にオン)にある光ビームパワーを有するクワッド検出器からの信号を、低い設定(例えば、オフ)にある光レーザを有するクワッド検出器からの信号に対して比較することができる。加えて、光ビームがクワッド検出器から相当の距離に位置し得るときは、クワッド検出器の位置検出感度を改善するために、より長い期間にわたって信号を積分することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、光散乱素子2-630を、チップ1-140上でクワッド検出器1-320の周囲に作製することができる。集束ビームが不整合になっており、周縁位置においてクワッド検出器から離れているとき、散乱素子は、集束ビームからの光をクワッド検出器1-320に向けて散乱させることができる。このとき、検出される散乱光は、ビームの位置を示す。
【0088】
いくつかの実施態様において、幅が予期される集束ビームサイズと同様である、狭い線形散乱素子(例えば、図示しないトレンチ(trench)またはリブ(rib)、ポスト(post)またはディボット(divot)のアレイ)又はライン検出器が、クワッド検出器の中心または側方を通じて(又はクワッド検出器に対して任意の適切な向きにおいて)設置され、クワッド検出器の対向する辺を大きく越えて(例えば、妥当に予測される初期ビーム・オフセット誤差よりも大きい距離まで)延在することができる。この素子又は検出器の向きは設計によって分かるため、集束ビーム2-350は最初に、クワッド検出器1-320への散乱によって、又は、直にライン検出器によってのいずれかで、ビームが素子又は検出器に衝突され、肯定的に検出されるまで、素子に垂直な方向において走査することができる。その後、ビームは、クワッド検出器1-320を発見するために他の方向において走査することができる。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、光ビームは最初に、チップ1-140の表面2-340において拡張され得る(例えばレンズ2-233をアクチュエータによって、ビーム経路にデフォーカスレンズ(defocusing lens)を挿入することによって、又は、他の手段を使用して動かすことによってビームの集束を解く)。このとき、チップに対するビームのフットプリントが大きく増大され(例えば、10倍以上)、それによって、任意の走査工程が、クワッド検出器1-320を探索するときに、ビーム位置の間でより大きい刻み幅(例えば、螺旋走査における放射ループ間のより大きいオフセット)を使用することができる。この探索方法及び上記の代替的な探索方法は、集束ビーム2-350を格子カプラ2-100に位置合わせすることに関連する探索時間を低減することができる。
【0090】
位置合わせの後、集束された光ビームを能動的に位置合わせされた位置にあるままにすることができる。例えば、クワッド検出器1-320に対する初期位置合わせ後に決定されるビームのX、Y位置を、クワッド検出器からのフィードバックならびにアクチュエータ2-223,2-224の起動を使用して能動的に維持して、ビームをほぼ固定の位置に維持することができる。いくつかの実施形態において、表面における光ビームの入射角は、初期位置合わせの後、導波路に結合されるパワーを最適化するために調整されなくてもよい。加えて、導波路に結合されるパワーの量は、測定全体を通じてほぼ一定のレベルに維持することができる。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、導波路2-120に送達されるパワーは、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150の光学構成要素および/または光源1-110内の光学構成要素または他の構成要素を制御するためにフィードバックを用いることによってほぼ一定のレベルに維持され得る。例えば、複数の導波路のうちの1つ以上から光を受け取るように配置された複数のフォトダイオードからの1つ以上のフォトダイオード1-324の信号は、信号プロセッサによって監視されて、複数の導波路に結合されたパワーレベルを評価してもよい。制御信号は、複数の導波路におけるパワーレベルの検出された変化に応答して生成されてもよく、且つ制御信号は、ビーム成形およびステアリングアセンブリおよび/または光源内のアクチュエータに付与されてもよい。周波数二倍化結晶を用いて周波数二倍化出力ビームを生成するレーザを含む光源に関して、制御信号は、光源内の半波長板の配向を制御するアクチュエータに付与されてもよい。半波長板の回転は、周波数2倍化結晶に入射する光パルスの偏光を変更して、周波数2倍化波長への変換効率およびパワーを変更し得る。これにより、光源の安定性に影響を与えることなく、または格子カプラ2-100に対して光ビームを不整合にすることなく、光パワーを制御することができる。
【0092】
ビーム位置合わせ及びパワー安定化のための例示的な回路が、いくつかの実施形態に従って、
図2-7に示されている。クワッド検出器1-320は4つのフォトダイオードとして示されており、導波路フォトダイオード1-324は、第5のフォトダイオードとして示されている。いくつかの実施態様において、光パワーが単一の格子カプラから結合される多数の導波路2-120があってもよい。したがって、複数の導波路からの放射を受け取るように配置され、且つ制御回路2-730に接続された信号出力を有する多数の導波路フォトダイオード1-324があってもよい。ダイオードの光伝導によって生成される電圧を検出するために、増幅回路2-710が配置され得る。増幅回路2-710は、いくつかの実施形態によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換するCMOS電子装置(例えばFET、サンプリング回路、アナログ-デジタル変換器)を備えることができる。他の実施形態では、アナログ信号が、増幅回路から制御回路2-730に与えられてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、制御回路は、アナログ及びデジタル回路、ASIC、FPGA、DSP、マイクロコントローラ、及びマイクロプロセッサのうちの1つ又は組み合わせを含んでもよい。制御回路2-730は、1つ又は複数の導波路フォトダイオードから受け取った信号を処理して、各導波路における光パワーのレベルを決定するように構成することができる。制御回路2-730は、クワッド検出器1-320からの受信信号を処理して、クワッド検出器に対する光ビームのX、Y位置を決定するように、さらに構成することができる。いくつかの実施態様において、制御回路2-730は、各導波路に結合されるパワーを検出し、パワーが導波路内で均質化され、導波路にわたって最も高い均一性を有するように光ビームを動かすためのアクチュエータに対する制御信号を供給するように構成されている。
【0094】
x方向における光ビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを実行するように適合されている制御回路2-730によって決定することができる:
【0095】
【数2】
式中、S
xはx方向に対応する正規化信号レベルであり、V
Qnは、クワッド検出器のn番目のフォトダイオードから受信される信号レベル(例えば、電圧)であり、V
Tは、4つすべてのフォトダイオードからの信号を合計することによって受信される総信号レベルである。加えて、Y方向における光ビームの位置は、例えば、以下のアルゴリズムを使用して決定することができる:
【0096】
【数3】
チップ1-140上のすべての導波路に結合される平均パワーは、チップ上の導波路の各々におけるパワーを検出するように構成されているすべてのフォトダイオード1-324からの信号を合計することによって決定することができる。
【0097】
X,Yにおける検出されるビーム位置に応答して、ならびに、1つ又は複数の導波路2-120内で検出されるパワーレベルに応答して、制御回路2-730によって制御信号を発生させることができる。制御信号は、1つ以上の通信リンク(SM1、SM2、…SM5)を介してビーム成形およびステアリングモジュール1-150のアクチュエータに、および1つ以上の通信リンクWPを介して光源システム1-110のアクチュエータまたは制御(例えば、半波長板またはビーム減衰器を回転させるように構成されたアクチュエータ、ダイオード光源に電力を印加するための制御)にデジタル信号として提供され得る。制御信号は、パワーを安定化し、および/または光源1-110とハイテクシステム1-160との間の光結合を改善するように印加されてもよい。
【0098】
前述の説明から理解され得るように、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、コストを著しく増大させるであろういくつかのビーム成形およびステアリング構成要素を含まないことが有利であり得る。そのような構成要素には、電気光学構成要素および熱光学構成要素、フェーズドアレイ(phased array)またはビーム結合構成要素、ならびに微小電気機械システムが含まれる。いくつかの実施形態によれば、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150の全ての部分は、標準的な機械加工および成形能力を用いて製造されてもよい。
【0099】
ビーム成形およびステアリングアセンブリの使用は主にスライス格子カプラへの結合のために説明されているが、それは、限定をしないが、光ファイバ、二次元ファイバアレイ、バットカップリング(butt coupling)を介した集積光導波路、1つまたは複数のマイクロ流体チャネル、プリズムカプラ、または表面プラズモンを励起するように構成された光学システムなどの他の光学システムに光ビームを結合するように用いられ得る。
【0100】
ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150のいくつかの実施形態は、アセンブリ内の少なくともいくつかの構成要素の動作状態を監視および評価するための(
図2-2Aには示されていない)センサおよび回路を含み得る。例えば、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150は、複数のビームステアリング構成要素の健全性および/または動作(例えば、アクチュエータの動作状態、光学構成要素の動き)を監視するための回路およびアクチュエータを動作させるための回路を含むプリント回路基板を含み得る。いくつかの事例では、PCBは、受信信号を処理し、処理した受信信号に基づいてアクチュエータに制御信号を出力するマイクロコントローラおよび/または制御回路2-730を含み得る。構成要素の動作を監視するためのセンサは、光学的エンコーダ、機械的エンコーダ、光学的近接スイッチ、および(構成要素の機械的動きを監視してそれらが指示どおりに動くかどうかを判定するための)制限スイッチを含み得る。いくつかの事例では、光学構成要素の動作は、光学構成要素を動作させるアクチュエータに供給される電流量から判定されてもよい。いくつかの実施形態では、温度センサおよび/または電流センサ(たとえば、サーミスタ)は、アセンブリ内の電子部品(たとえば、ステッピングモータまたは他のアクチュエータ)を監視し、それらが安全な動作温度内で動作しているかどうか、またはビーム特性への温度の影響を相殺するための光学構成要素の位置に対する補正の調整を決定するように用いられ得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のフォトダイオード、1つまたは複数の撮像アレイ、および/または1つまたは複数のクワッド検出器は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150に組み込んで、アセンブリ内の1つまたは複数の位置における光ビーム2-350の特性を監視し得る。監視することができる特性は、基本ビームにおけるパワー、第2高調波ビームにおけるパワー、出力ビームの位置、出力ビームの指向方向、出力ビームの形状、および出力ビームの指向角度を含むが、これらに限定されない。例えば、フォトダイオードは、異なる波長のビームが分離される場合にビームダンプ2-260で基本ビームまたは別のビーム内のエネルギー量を監視するように用いられ得る。第2のフォトダイオードは、変向ミラー(例えば、ミラー2-234)を通って漏れるか、または光学窓2-231,2-232,2-235,2-237またはレンズ2-233のファセット(facet)、またはアセンブリ1-150内の他の光学構成要素から反射する基本ビームの第2高調波ビームにおけるパワーの量を監視することができる。いくつかの事例では、フォトダイオードは、光学窓からのファセット反射を受けるために、シャーシ2-210上またはシャーシベース上に配置されたカバーに取り付けられてもよい。いくつかの事例では、基本波および/または第2高調波ビームからの光パワーは、光源の健全性(たとえば、入力ビーム2-205を供給するモードロックレーザの安定性)を評価するように用いられてもよい。実施形態では、モードロックレーザビームを検出するフォトダイオードから生成された信号は、フォトダイオードへの到達時間をパルス化するまでに位相ロックされたクロック信号を生成するように用いられ得る。
【0102】
クワッド検出器またはイメージング・アレイは、ビーム成形およびステアリングアセンブリ内の光学構成要素のファセットからの、またはそのアセンブリの下流に位置する光学構成要素からの1つまたは複数の迷走反射ビーム(stray reflected beam)の位置および/または存在を監視するように用いられ得る。一例として、
図2-3を参照すると、クワッド検出器またはイメージング・アレイは、光学窓2-231、2-232、2-235、2-237に対して任意の位置に取り付けられて、光学窓からの低レベルファセット反射の位置および/またはビーム形状を検出および監視するように用いられ得る。そのように配置された1つまたは複数のクワッド検出器および/またはイメージング・アレイからの出力は、出射ビームの位置、形状、回転角度φ、および指向角度を安定させるのを助けるように用いられ得る。
【0103】
電気的、熱的、および光学的センサからの信号は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ1-150を備えているPCB上の信号処理ロジック(たとえば、マイクロコントローラおよび/またはロジックチップ)に供給されて、ビーム成形およびステアリングアセンブリが安定して期待通りに動作しているかどうかを判定し、アセンブリが誤動作している場合にはエラー信号を生成してもよい。いくつかの具体例では、PCBは、ビーム成形およびステアリングアセンブリのシャーシ2-210に取り付けられるが、他の実施形態では、PCBは、他の位置に配置され、アセンブリ1-150内のセンサ、アクチュエータ、および他の任意の電子機器にマルチワイヤケーブルを介して接続され得る。
【0104】
記載された技術の実施形態は、少なくとも以下の(1)~(51)に記載された構成および方法を含む。
(1)ビーム成形およびステアリングアセンブリであって、入力ビームの第1の横断方向ビーム形状を第2のビームの第2の横断方向ビーム形状に変換するように構成された第1の光学構成要素と、前記第2の横断方向ビーム形状を前記第2のビームの光軸を中心に回転させるように構成された第2の光学構成要素と、目標位置における出力ビームの第1の位置または第1の指向角のうちの1つを調整するように構成された第3の光学構成要素と、を備えるビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0105】
(2)前記第1の光学構成要素を通る最大±3mmの前記入力ビームの変位は、前記第2の横断方向ビーム形状を変化させない、構成(1)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0106】
(3)前記第1の光学構成要素は、アナモルフィックプリズム対を含む、構成(1)または(2)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
(4)ビームダンプをさらに備え、前記第1の光学構成要素は、前記入力ビームの複数の光波長を空間的に分離し、前記ビームダンプは、第1の波長で前記第1の光学構成要素からの出力を受け取るように配置される、構成(1)~(3)のいずれか1つに記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0107】
(5)第2の波長を有する前記第2のビームを受け取り、前記第2のビームを前記第3の光学構成要素に向けるように構成された変向ミラーをさらに備える構成(4)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0108】
(6)前記第2の光学構成要素は、鳩プリズムを含む、構成(1)~(5)のいずれか1項に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
(7)前記第3の光学構成要素は、光学窓を含む、構成(1)~(6)のいずれか1項に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0109】
(8)前記第1の光学構成要素、前記第2の光学構成要素、および前記第3の光学構成要素を支持するシャーシをさらに備え、前記シャーシは、前記第2のビームを受け取る受光光学構成要素を有するデバイスが実装されたプリント回路基板(PCB)を含み、前記デバイスを含むプリント回路基板の領域は、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリに対するデバイスの動きを低減するようにシャーシに取り付けられる、構成(1)~(7)のいずれか1つに記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0110】
(9)前記目標位置における前記出力ビームの第2の位置または第2の指向角のうちの1つを調整するように構成された第4の光学構成要素をさらに備える構成(1)~(8)のいずれか1つに記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0111】
(10)前記第4の光学構成要素に対する調整によって生じる前記目標位置における前記出力ビームへの第1の影響は、前記第3の光学構成要素に対する調整によって生じる目標位置における出力ビームへの第2の影響に実質的に影響せず、またその逆も同様である、構成(9)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0112】
(11)前記第3の光学構成要素に結合された第1のアクチュエータと、前記第4の光学構成要素に結合された第2のアクチュエータと、を備え、前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータの各々は、同一平面に実質的に平行な回転駆動シャフトを含む、構成(9)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0113】
(12)前記第1のアクチュエータおよび前記第2のアクチュエータの回転駆動シャフトは、実質的に平行である、構成(11)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0114】
(13)前記第3の光学構成要素によってもたらされる前記目標位置における前記出力ビームへの変化は、前記第4の光学構成要素によってもたらされる前記目標位置における前記出力ビームへの変化と実質的に直交する次元である、構成(11)または(12)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0115】
(14)前記第3の光学構成要素は、前記目標位置における前記出力ビームの第1の指向角を調整するように構成され、前記目標位置における出力ビームの第2の指向角を調整するように構成された第4の光学構成要素と、前記目標位置における出力ビームの第1の位置を調整するように構成された第5の光学構成要素と、前記目標位置における出力ビームの第2の位置を調整するように構成された第6の光学構成要素と、をさらに備える構成(1)~(13)のいずれか1つに記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0116】
(15)前記第3および第4の光学構成要素が前記集束レンズの第1の側に配置され、前記第5および第6の光学構成要素が前記集束レンズの第2の側に配置されるように構成された集束レンズをさらに備える構成(14)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0117】
(16)前記第1の指向角は、前記目標位置における出力ビームのピッチ角であり、前記第2の指向角は、前記目標位置における出力ビームのヨー角であり、前記第1の位置は、前記目標位置における出力ビームのX方向の位置であり、前記第2の位置は、前記目標位置における出力ビームのY方向の位置であり、前記X方向と前記Y方向は直交している、構成(14)または(15)に記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0118】
(17)前記第2の横断方向ビーム形状は、実質的に楕円形であり、前記第1の横断方向ビーム形状は、実質的に円形である、構成(1)~(16)のいずれか1つに記載のビーム成形およびステアリングアセンブリ。
【0119】
(18)光源からのビームをシステムの受光光学構成要素に結合する方法であって、ビーム成形およびステアリングアセンブリが、前記光源からビームを受け取ること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記ビームの第1の横断方向ビーム形状を出力ビームの第2の横断方向ビーム形状に変換すること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記出力ビームを前記受光光学構成要素上に位置決めすること、前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記第2の横断方向ビーム形状を調整可能に回転させること、の複数の工程を備える方法。
【0120】
(19)前記回転させることは、単一の材料片から製造された光学構成要素を回転させることによって行われる、(18)に記載の方法。
(20)前記第1の横断方向ビーム形状は円形であり、前記第2の横断方向ビーム形状は楕円形である、(18)または(19)に記載の方法。
【0121】
(21)前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記受光光学部品における出力ビームの入射角および位置のうちの一方または両方を変更することをさらに備える(18)~(20)のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
(22)光学窓の回転は、前記受光光学構成要素における出力ビームの入射角を調整するように用いられる、(18)~(21)のいずれか1つに記載の方法。
(23)前記出力ビームの横断方向サイズは、前記受光光学構成要素の結合領域よりも10%から35%で大きく、前記受光光学構成要素に対して任意のロール角で配向される、(18)~(21)のいずれか一つに記載の方法。
【0123】
(24)前記第2の横断方向ビーム形状における強度の非対称性を補償するように、前記受光光学構成要素における前記出力ビームの位置を調整することをさらに備える(23)に記載の方法。
【0124】
(25)前記受光光学構成要素は、前記出力ビームを複数の導波路に結合するように構成されたスライス格子カプラを含む、(18)~(24)のいずれか1つに記載の方法。
(26)前記ビーム成形およびステアリングアセンブリを用いて、前記複数の導波路に結合されたパワーの均一性を調整することをさらに含む(25)に記載の方法。
【0125】
(27)装置への放射ビームを結合する光学システムであって、3つの回転アクチュエータと、前記3つの回転アクチュエータにそれぞれ結合された3つの光学構成要素であって、各回転アクチュエータは、前記3つの光学構成要素のうちの1つの光学構成要素を動かすためにシャフト軸を中心に回転する駆動シャフトを有し、前記3つの回転アクチュエータのシャフト軸は、同じ平面に実質的に平行であり、前記3つの回転アクチュエータによる3つの光学構成要素の動作は、異なる3つの自由度でビームを変更する、前記3つの光学構成要素と、を備える光学システム。
【0126】
(28)前記3つの光学構成要素と前記3つの回転アクチュエータとの結合は、ギア、プーリー、またはスプロケットを含まない、構成(27)に記載の光学システム。
(29)前記3つの光学構成要素のうちの少なくとも2つは、透明光学窓であり、前記駆動シャフトのうちの少なくとも2つは、実質的に平行である、構成(27)または(28)に記載の光学システム。
【0127】
(30)前記3つの回転式アクチュエータは、実質的に同じサイズおよび構造を有する、構成(27)~(29)のいずれか一つに記載の光学システム。
(31)前記3つの回転アクチュエータのうちの第1の回転アクチュエータによる前記3つの光学構成要素のうちの第1の光学構成要素の動作によって、前記第1の光学構成要素から出射するビームに沿って中心に延びる光軸を中心に前記第1の光学構成要素から出射する位置で前記横断方向ビーム形状を回転させる、構成(27)~(30)のいずれか1つに記載の光学システム。
【0128】
(32)前記第1の光学構成要素の動作によって、前記目標位置での前記集束ビームの横方向変位を実質的に伴わずに前記集束ビームに沿って中心に延びる光軸を中心に前記目標位置で前記ビームを回転させる、構成(31)に記載の光学システム。
【0129】
(33)前記装置内の目標位置に前記ビームを集束するレンズをさらに備え、前記3つの回転アクチュエータのうちの2つの回転アクチュエータによる前記3つの光学構成要素のうちの2つの光学構成要素の動作によって、前記目標位置において前記集束ビームの横方向の変位なしに、前記目標位置において前記集束ビームの入射角を変更する、構成(27)~(32)いずれか1つに記載の光学システム。
【0130】
(34)シャフト軸を中心に回転して第4の光学構成要素を動作させる駆動シャフトを有する第4の回転アクチュエータに結合された前記第4の光学構成要素と、シャフト軸を中心に回転して第5の光学構成要素を動作させる駆動シャフトを有する第5の回転アクチュエータに結合された前記第5の光学構成要素と、をさらに備え、前記第4および第5の回転アクチュエータのシャフト軸は、実質的に同じ平面に平行である、構成(33)に記載の光学システム。
【0131】
(35)前記3つの回転式アクチュエータと第4および第5の回転アクチュエータのシャフト軸は、実質的に同じ平面内にある、構成(34)に記載の光学システム。
(36)前記光学システムは、40mm以下の高さを有する、構成(34)または(35)に記載の光学システム。
【0132】
(37)前記第4および第5の光学構成要素の動作によって、前記目標位置において前記集束ビームの入射角を実質的に変化させることなく、前記目標位置において前記集束ビームを2自由度で横方向に並進させる、構成(34)~(36)のいずれか1つに記載の光学システム。
【0133】
(38)受信した円形ビーム形状を細長いビーム形状に変換するように構成されたビーム成形構成要素をさらに備える構成(27)に記載の光学システム。
(39)前記ビーム成形構成要素は、前記ビーム内の異なる放射波長を空間的に分離するようにさらに構成されている、構成(38)に記載の光学システム。
【0134】
(40)装置への放射ビームを結合する光学システムであって、調整可能なマウントに支持された第1の光学構成要素と、前記調整可能なマウントに結合された第1のアクチュエータと、を備え、前記第1のアクチュエータによる前記第1の光学構成要素の動作によって、前記第1の光学構成要素から出射する出射ビームの横断方向形状および偏光を回転させ、該横断方向形状および偏光の回転は、前記出射ビームに沿って中心に延びる光軸を中心に行われる、光学システム。
【0135】
(41)前記第1の光学構成要素は、前記ビームが前記第1の光学構成要素の回転軸に沿って中心に入射するように位置合わせされた単一片の物質からなる、構成(40)に記載の光学システム。
【0136】
(42)前記ビームの第1の横断方向ビーム形状を第2のビームの第2の横断方向ビーム形状に変換し、前記ビームの複数の波長を空間的に分離するように構成された第2の光学構成要素と、前記ビームから空間的に分離された波長を受け取るように構成されたビームダンプと、をさらに備える構成(40)または(41)に記載の光学システム。
【0137】
(43)前記出射ビームの指向角を調整するように構成された追加の光学構成要素をさらに備える構成(40)~(42)のいずれか1つに記載の光学システム。
(44)前記追加の光学構成要素は、透明光学窓である、構成(43)に記載の光学システム。
【0138】
(45)放射ビームを変更する光学システムであって、第1の軸を中心に第1の光学構成要素を回転させるように構成され、且つ調整可能なマウントによって支持された第1の光学構成要素と、前記第1の軸と平行ではない第2の軸を中心に回転する駆動シャフトを有する回転アクチュエータと、前記駆動シャフトに結合されたカムアームと、前記カムアームに結合されたベアリングと、前記調整可能なマウントに結合された曲面と、を備え、前記回転アクチュエータが前記第1の光学構成要素を回転させるように作動される場合、前記ベアリングは、前記曲面を横切って移動する、光学システム。
【0139】
(46)前記曲面は、前記駆動シャフトによる前記カムアームの回転によって前記光学構成要素を通過する光ビームのパラメータの変化を線形化させるような形状を有する、構成(45)に記載の光学システム。
【0140】
(47)光ビームステアリング装置であって、第1の光学窓を回転させるように構成された第1の回転アクチュエータと、第2の光学窓を回転させるように構成された第2の回転アクチュエータと、レンズと、を備え、前記第1の光学窓の回転によって、目標位置における光ビームの横方向位置を調整し、前記第2の光学窓の回転によって、前記横方向位置を10ミクロンを超えて変更することなく前記目標位置における前記ビームの入射角を調整する、光ビームステアリング装置。
【0141】
(48)前記第1の回転アクチュエータの回転駆動シャフトは、前記第2の回転アクチュエータの回転駆動シャフトと実質的に平行である、構成(47)に記載の光ビームステアリング装置。
【0142】
(49)直交する3つの自由度で前記光ビームステアリング装置からの出力ビームの3つのパラメータを調整するように構成された回転可能な3つの透明光学窓を備える光ビームステアリング装置。
【0143】
(50)前記回転可能な3つの透明光学窓を回転させるように構成された3つの回転アクチュエータをさらに備え、前記3つの回転アクチュエータの駆動シャフトは、実質的に同一平面と平行である、構成(49)に記載の光ビームステアリング装置。
【0144】
(51)前記3つの回転アクチュエータの駆動シャフトは、互いに実質的に平行である、構成(50)に記載の光ビームステアリング装置。
VI.結論
このように、ビーム成形およびステアリングアセンブリのいくつかの実施形態のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、及び改善が当業者には容易に想到されることが諒解されるべきである。そのような変更、修正、及び改善はこの開示の1部であるように意図されており、本発明の精神及び範囲内にあることが意図されている。本教示を様々な実施形態及び例に関連して説明したが、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者には諒解されるであろう様々な代替形態、修正、及び均等物を包含する。
【0145】
例えば、実施形態は、ビーム成形およびステアリングアセンブリ内に、上述したよりも多くの又は少ない光学構成要素を含むように修正されてもよい。その上、複数の光学構成要素は、図示されているものとは異なってもよく、いくつかのビーム成形およびステアリングアセンブリは、そのアセンブリを通る光路内でより多い又はより少ない旋回又は折り返しを有してもよい。
【0146】
様々な発明の実施形態が説明及び図示されてきたが、当業者は、その機能を実施し、かつ/又は、それらの結果及び/又は説明されている利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は、説明されている本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者は、説明されているすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例であるように意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に応じて決まることを容易に諒解するであろう。当業者は、日常の実験のみを使用して、説明されている特定の発明の実施形態に対する多くの均等物を認識することになり、又は、それを究明することが可能になる。それゆえ、上記の実施形態は例としてのみ提示されていること、ならびに、添付の特許請求項及びその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明及び特許請求されているのとは他の様態で実践されてもよいことが理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、説明されている各個々の特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法を対象とし得る。加えて、そのような特徴、システム、システム・アップグレード、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、及び/又は方法の任意の組み合わせが、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0147】
さらに、本発明のいくつかの利点が示され得るが、本発明のすべての実施形態がすべての説明されている利点を含むとは限らないことは諒解されるべきである。いくつかの実施形態は、有利であるとして説明されている任意の特徴を実装しなくてもよい。したがって、上記の説明及び図面は例示のみを目的としたものである。
【0148】
限定ではないが、特許、特許出願、論説、著書、論文、及びウェブ・ページを含む、この出願において引用されているすべての文献及び同様の資料は、そのような文献及び同様の資料の形式にかかわらず、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。組み込まれている文献及び同様の資料のうちの1つ又は複数が、限定ではないが、定義されている用語、用語の用法、説明されている技法などを含め、この出願と異なるか、又は、相反する場合、この出願が優先する。
【0149】
使用されている節の見出しは、構成のみを目的としており、決して説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
また、説明されている技術は、そのうち少なくとも1つの例が設けられている方法として具現化され得る。方法の1部分として実施される動作は、任意の適切な様式で順序付けられてもよい。したがって、動作が示されているものとは異なる順序で実施され、たとえ例示的な実施形態においては順次の動作として示されていたとしても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでもよい実施形態が構築されてもよい。
【0150】
定義及び使用されているものとしてのすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれている文書における定義、及び/又は、定義されている用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
【0151】
数値及び範囲は、本明細書及び特許請求の範囲において、近似する又は正確な値又は範囲として記載されている場合がある。例えば、いくつかの事例において、「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」という用語が、値を参照して使用されている場合がある。そのような参照は、参照されている値、ならびに、その値に妥当な変動が加わった値及び差し引かれた値を包含するように意図されている。例えば、「約10と約20との間」という語句は、いくつかの実施形態における「正確に10と正確に20との間」、及び、いくつかの実施形態における「10+δ1と20+δ2との間」を意味するように意図されている。値の変動δ1、δ2の量は、いくつかの実施形態においては値の5%未満であってもよく、いくつかの実施形態においては値の10%未満であってもよく、さらに、いくつかの実施形態においては値の20%未満であってもよい。例えば、2桁以上を含む範囲のような、値の大きい範囲が与えられている実施形態では、値の変動δ1、δ2の量は、50%程度と高くなり得る。例えば、動作可能範囲が2から200まで延在する場合、「約80」は、40と120との間の値を包含してもよく、範囲は、1と300との間と大きくなってもよい。正確な値が意図される場合だけ、例えば、「正確に2と正確に200との間」のように、「正確に」という用語が使用される。「実質的に(essentially)」という用語は、値が同じであること、または±3%以内の目標値もしくは条件にあることを示すように使用される。
【0152】
「隣接する」という用語は、2つの要素が互いに近接近して(例えば、2つの要素のうちの大きい方の横断方向寸法又は垂直方向寸法の約5分の1未満の距離内に)配置されることを指し得る。いくつかの事例において、隣接する要素の間には、介在する構造又は層があってもよい。いくつかの事例において、隣接する要素は、介在する構造又は要素なしに互いに直に隣接してもよい。
【0153】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、明確に逆に指示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するように理解されるべきである。
【0154】
「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているものとしては、そのように結合されている要素、すなわち、いくつかの事例では結合して存在し、他の事例では分離して存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いてリストされている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合されている要素の「1つ又は複数」として解釈されるべきである。「及び/又は」条項によって具体的に識別されている要素以外の他の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定例として、「備える(comprising)」のような限定しない文言とともに使用されているとき、「A及び/又はB」に対する参照は、1実施形態においてはAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態においてはBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態においてはAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る、などであり得る。
【0155】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、「又は」は、上記で定義されているような「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、リスト内で項目を分離しているとき、「又は」又は「及び/又は」は、包含的である、すなわち、複数の要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、2つ以上をも含み、また任意選択的に追加のリストされていない項目も含むものとして解釈されるべきである。「~のうちの1つのみ」もしくは「~のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲において使用されるとき、「~からなる」のように、明確に逆に指示されている用語だけは、複数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、使用されているような「又は」という用語は、「いずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」又は「~のうちの正確に1つ」のような、排他性の用語が先行するときは、排他的な選択肢(すなわち「1方又は他方であり、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。
【0156】
「実質的に~からなる」は、特許請求の範囲において使用されるとき、特許法の分野において使用されるものとしての、その通常の意味を有するべきである。本明細書及び特許請求の範囲において使用されるものとしては、1つ又は複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的にリストされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別されている要素以外の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。したがって、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBのうちの少なくとも1つ」、もしくは、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、1実施形態においては、Bが存在せず、2つ以上のAを任意選択的に含む少なくとも1つのAを指し(また、任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Aが存在せず、2つ以上のBを任意選択的に含む少なくとも1つのBを指し(また、任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態では、任意選択的に2つ以上のAを含む少なくとも1つのA、及び、任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つのBを指し得る(また、任意選択的に他の要素を含む)、などである。
【0157】
特許請求の範囲において、及び、上記の本明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「~から構成される」などのようなすべての移行句は、限定しないものである、すなわち、含むが、それに限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。「~からなる」及び「実質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ限定的な又は半限定的な移行句であるべきである。
【0158】
特許請求の範囲は、その旨述べられていない限り、記載されている順序又は要素に限定されるものとして読み取られるべきではない。添付の特許請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって、形態及び詳細に様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。以下の特許請求項の及びその均等物の精神及び範囲内に入るすべての実施形態が特許請求される。