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特許7050079少なくとも1つの脆弱なナノ構造を含むサンプルに適した電子ビームリソグラフィプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】少なくとも1つの脆弱なナノ構造を含むサンプルに適した電子ビームリソグラフィプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220331BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20220331BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01L21/30 541K
H01L21/30 541P
G03F9/00 H
G03F7/20 504
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019545285
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018053398
(87)【国際公開番号】W WO2018149777
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】17305169.9
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】519297263
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ ディデロ-パリ セット
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DIDEROT-PARIS 7
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】メートル,アニエス
(72)【発明者】
【氏名】ダワン,アミット ラージ
(72)【発明者】
【氏名】セネラール,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ベラセル,シェリフ
【審査官】冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0302442(US,A1)
【文献】特開昭51-147264(JP,A)
【文献】特表2010-515267(JP,A)
【文献】特開2005-175166(JP,A)
【文献】国際公開第2016/019212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 -5/136
G03F 7/20 -7/24
9/00 -9/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの構造(1)を含むサンプル(2)に対するリソグラフィプロセスであって、
前記サンプル(2)と接触する下側レジスト層(3)と、前記下側レジスト層(3)の上方にある上側レジスト層(4)とを含む少なくとも2つのレジスト層(3、4)を前記サンプル(2)の上方に置くステップと、
光学デバイス(8)によって、選択構造(1)から放射(14)を受け取り、前記光学デバイス(8)を基準として、前記選択構造(1)の位置および前記サンプル(2)と一体のマーカ(21)の位置を画像化または決定するステップと、
電子ビームデバイスによって、前記電子ビームデバイスを基準として各マーカ(21)の位置を画像化または決定するステップと、
前記電子ビームデバイスを基準とした各マーカ(21)の位置、および
前記光学デバイス(8)を基準とした前記選択構造(1)の位置および前記マーカ(21)の位置によって、
前記電子ビームデバイスを基準として前記選択構造(1)の位置を推定するステップと、
前記選択構造(1)の位置の上方の前記上側レジスト層(4)の厚さをすべて除去するために、ただし、前記選択構造(1)の位置の上方の前記下側レジスト層(3)の厚さはまったくまたは不完全な部分しか除去しないように、前記電子ビームデバイスによって、前記選択構造(1)の位置の上方の前記上側レジスト層(4)を電子ビームで露光するステップ
を含む、リソグラフィプロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、前記選択構造(1)の位置の上方の前記上側レジスト層(4)のすべての厚さを除去した後、前記選択構造(1)の位置の上方の前記下側レジスト層(3)の残りの厚さの少なくとも一部を除去することを含む別の除去ステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記光学デバイス(8)を基準として前記選択構造(1)の位置を画像化または決定することは、前記マーカ(21)および前記選択構造(1)からの蛍光放射(14)を画像化する画像を取得するステップを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記マーカ(21)が光リソグラフィによって作成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記マーカ(21)が同じ前記光学デバイス(8)を有するレーザによって作成されることを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記マーカが、少なくとも前記上側レジスト層(4)上、好ましくは前記下側レジスト層(3)上および前記上側レジスト層(4)上に作成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記下側レジスト層(3)が少なくとも50nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記上側レジスト層(4)が5μm未満の厚さを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスは、前記上側レジスト層(4)を電子ビームで露光し、前記選択構造(1)の位置の上方の前記上側レジスト層(4)のすべての厚さを除去する前記ステップの前に、前記選択構造(1)からの前記放射(14)に基づいて前記選択構造(1)を選択するステップを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記選択構造(1)を選択する前記ステップは、
前記選択構造(1)からの前記放射(14)の
波長および/もしくは
偏光および/もしくは
強度および/もしくは
集束もしくは非集束放出特性、ならびに/または
前記選択構造(1)の推定寿命に基づくことを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスは、前記上側レジスト層(4)のすべての厚さが除去された、前記選択構造(1)の位置の上方に金属層(11)を堆積するステップを含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの構造(1)が、構造層(7a、7b)の内側の前記サンプル中に含まれることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの構造(1)は、前記構造層を形成する同じ誘電体材料の2つの層(7a、7b)の間のサンプル中に含まれることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記構造層(7a、7b)の1つの第1の面は、前記少なくとも2つのレジスト層(3、4)のうちの1つ(3)と接触し、かつ
前記構造層(7a、7b)の1つの第2の面は、金属層(6)またはブラッグミラーと接触することを特徴とする、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
各構造(1)が、量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心、または蛍光分子であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心、および蛍光分子のような個別の(または集合体の)蛍光ナノエミッタがナノメートル精度で中に配置されているフォトニックおよびプラズモンナノ構造は、単一光子放出およびプラズモニクスのような多くの分野に応用され、これらの構造は、単一エミッタレベルで光-物質相互作用を調査するためのツールとしての役割を果たす。そのような構造の作製は、構造の内側にナノエミッタを配置することに対するナノメートルの横方向および垂直方向の制御を必要とする。この目的のために、リソグラフィは、ナノエミッタを破壊することなく、ナノエミッタの周囲で実行されなければならない。個別のエミッタはエミッタの集合体ほどロバストでなく、明るくないため、個別のナノエミッタを扱う場合、この作業は非常に困難になる。
【0003】
コロイドCdSe/CdS量子ドットのような敏感な個別のエミッタにリソグラフィを行うことは非常に困難である。なぜなら、リソグラフィはエミッタの真上で行われなければならないが、リソグラフィを行うのに必要なレーザ強度は、関連するエミッタを光退色させ、したがって破壊し、したがってプロセスを失敗させるためである。
【0004】
本発明の目的は、好ましくはナノメートルスケールで、先行技術と比較してエミッタの光退色または破壊の危険性が制限された、脆弱なエミッタ(特に個別のエミッタまたは単一のエミッタ)に対して実施することができるリソグラフィプロセスを提案することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、少なくとも1つの構造を含むサンプルに対するリソグラフィプロセスに関し、上記プロセスは、
サンプルと接触する下側レジスト層と、下側レジスト層の上方にある上側レジスト層とを含む少なくとも2つのレジスト層をサンプルの上方に置くことと、
光学デバイスによって、選択構造から放射を受け取り、光学デバイスを基準として、選択構造の位置およびサンプルと一体のマーカ(好ましくは少なくとも3つのマーカ)の位置を画像化または決定することと、
電子ビームデバイスによって、電子ビームデバイスを基準として各マーカの位置を画像化または決定することと、
電子ビームデバイスを基準とした各マーカの位置、および
光学デバイスを基準とした選択構造の位置およびマーカの位置によって、
電子ビームデバイスを基準として選択構造の位置を推定することと、
選択構造の位置の上方の上側レジスト層の厚さをすべて除去するために、ただし、選択構造の位置の上方の下側レジスト層の厚さはまったくまたは不完全な部分しか除去しないように、電子ビームデバイスによって、選択構造の位置の上方の上側レジスト層を電子ビームで露光することと
を含む。
【0006】
本発明によるプロセスは、選択構造の位置の上方の上側レジスト層のすべての厚さを除去した後、(好ましくは溶剤または化学溶液によって)選択構造の位置の上方の下側レジスト層の残りの厚さの少なくとも一部を除去することを含む別の除去ステップを含むことができる。
【0007】
光学デバイスを基準として選択構造の位置を画像化または決定することは、マーカおよび選択構造からの蛍光放射を画像化する画像を取得するステップを含むことができる。
【0008】
マーカは、光リソグラフィによって作成することができる。
【0009】
マーカは、光学デバイスを基準として、選択構造の位置を画像化または決定するために使用されるのと同じ光学デバイスを有するレーザによって作成することができる。
【0010】
マーカは、少なくとも上側レジスト層、好ましくは下側レジスト層および上側レジスト層上に作成することができる。
【0011】
下層は、少なくとも50nm、好ましくは少なくとも200nmの厚さを有することができる。
【0012】
上層は5μm未満、好ましくは400nm未満の厚さを有することができる。
【0013】
本発明によるプロセスは、上側レジスト層を電子ビームで露光し、選択構造の位置の上方の上側レジスト層のすべての厚さを除去するステップの前に、選択構造からの放射に基づいて選択構造を選択するステップを含むことができる。
【0014】
選択構造を選択するステップは、
選択構造からの放射の波長および/もしくは
偏光および/もしくは
強度および/もしくは
集束もしくは非集束放出特性、ならびに/または
選択構造の推定寿命に基づくことができる。
【0015】
本発明によるプロセスは、上側レジスト層のすべての厚さが除去された、選択構造の位置の上方に(好ましくはサンプルと接触して)金属層を堆積するステップを含むことができる。
【0016】
少なくとも1つの構造は、構造層の内側のサンプル中に含まれ得る。少なくとも1つの構造は、構造層を形成する同じ誘電体材料の2つの層の間のサンプル中に含まれ得る。さらに、
構造層の1つの第1の面は、少なくとも2つのレジスト層のうちの1つと接触することができ、かつ/または
構造層の1つの第2の面は、金属層またはブラッグミラーと接触することができる。
【0017】
各構造は、蛍光エミッタ(量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心、または蛍光分子など)、または透過もしくは反射顕微鏡によって検出することができる任意の構造(蛍光または非蛍光)であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の他の利点および特徴は、決して限定的ではない実施形態の詳細な説明、および添付の図面を検討すると明らかになるであろう。
図1(a)~(f)は、プラズモンパッチアンテナを製造する特定の事例において説明される、最良の実現形態である本発明によるプロセスの一実施形態の、異なるステップを示すサンプル2の側面図である。
図2は、図1のプロセスのステップ1(b)を実装するための光学デバイス8を示す図である。
図3は、光学デバイス8を用いて作成されたエミッタ1およびマーカ21の蛍光画像の図である。
図4は、図3の蛍光画像上に描かれた電子ビーム描画露光パターンを示す図である。
図5は、電子ビームに露光されたレジスト最上層4(PMMA)の部分をエッチングした後のサンプル2の反射顕微鏡画像の図である。
図6は、レジスト最下層3の化学現像後の作業領域の蛍光顕微鏡画像の図である。
図7は、電子ビームリソグラフィ前(線19)および電子ビームリソグラフィ後(線20)の選択構造1(CdSe/CdS量子ドット)の寿命の測定を示す図である。
図8(a)~8(d)は、本発明によるプロセスの実施形態の変形形態の異なるステップを示すサンプル2の側面図である。
図9は、本発明によるプロセスによって製造することができる他の構造である、プラズモンパッチアンテナの部分斜視図(左)および側面図(右)である。
図10は、本発明によるプロセスによって製造することができる他の構造である、金属誘電体アンテナの部分斜視図(左)および側面図(右)である。
図11は、本発明によるプロセスによって製造することができる他の構造である、タム構造の部分斜視図(左)および側面図(右)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの実施形態は決して限定的なものではなく、他の説明または例示される特徴から分離された、以下に説明または例示される特徴の選択のみを含む本発明の変形を、この特徴の選択が、技術的利点を与えるのに、または現行技術水準に対して本発明を区別するのに十分である場合に、(この選択がこれらの他の特徴を含むセンテンスから行われたとしても)考慮することができる。この選択は、少なくとも1つの特徴、好ましくは構造的詳細のない、またはその部分が技術的利点を与えるのに、もしくは現行技術水準に対して本発明を区別するのに十分である場合に、構造的詳細の一部のみを有する機能的特徴を含む。
【0020】
本発明によるプロセスの実施形態を説明することとする。
特定の特性(発光強度、波長、配向、偏光など)を有する量子ドット(コロイドまたはエピタキシャル)、蛍光分子、およびナノダイヤモンド窒素空孔中心のような蛍光エミッタ1(個別または集合体)が蛍光顕微鏡法によって(水銀灯15および適切な光学フィルタを使用して)画像化される。
(電子ビームリソグラフィのための)位置整合マーカ21が、エミッタ1を被覆する2つのレジスト層3、4上で(レーザ17によって実行される)光リソグラフィによってエミッタ1の周りに作成される。
【0021】
対象の選択蛍光エミッタ1および位置整合マーカ21を含む蛍光顕微鏡画像が、電子ビーム描画パターンを描くために使用される。位置整合マーカ21の走査型電子顕微鏡走査が蛍光顕微鏡画像と位置合わせされると、電子ビームリソグラフィが、2つのレジスト層3、4の下に埋め込まれている選択ナノエミッタ1に対して行われる。上側レジスト層4は電子レジストであり、下側レジスト層3は電子ビームリソグラフィの電子がその層の下方の蛍光エミッタ1を損傷するのを防止し、リフトオフステップにも役立つ。さらに、リソグラフィ手順の堆積ステップおよびリフトオフステップが実行され、所望のデバイスが作製される。
【0022】
ここで、本発明によるプロセスのこの実施形態および本発明によるこのプロセス実施形態を実装するためのシステムを、図1図7を参照して詳細に説明する。
【0023】
本発明によるこのリソグラフィプロセス実施形態は、個別のまたは複数の蛍光エミッタ1上に金属パッチ11を決定論的に位置決めするために、光リソグラフィと電子ビームリソグラフィとの組み合わせを使用する。
【0024】
本発明によるこのリソグラフィプロセス実施形態は、少なくとも1つの構造1を含むサンプル2に対して実装される。
【0025】
各構造1は、個別の光エミッタ1(すなわち、一度に単一の光子を放出することができる構造)または(複数の個別の構造1から成るアセンブリによって形成される)集合光エミッタ1である。各構造1は、好ましくは個別の光エミッタ1である。
【0026】
各エミッタは、ナノエミッタ、すなわち、直径100nmの球の内側に完全に入ることができる体積を有するエミッタである。
【0027】
各光エミッタ1は、光子を吸収した後に光を放出するものである。吸収された光子は、光、紫外線、赤外線、または一般的には電磁スペクトルの任意の部分からのものであり得る。
【0028】
各構造1は、典型的には、量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心、または蛍光分子である。
【0029】
図3図7の実施形態の特定の事例において、各構造1はコロイドCdSe/CdS量子ドット、より正確にはCdSe/CdSコア/シェルコロイド量子ドットである。
【0030】
少なくとも1つの構造1は、構造層7a、7bの内側のサンプル2中に含まれる。
【0031】
図1(a)に示すように、少なくとも1つの構造1は、2つの層7a、7bの間、好ましくは、構造層を形成する同じ誘電体材料、典型的にはPMMA(ポリメチルメタクリレート)の2つの層7a、7bの間のサンプル中に含まれる。
【0032】
サンプル2は、基板5(典型的にはシリコンウェハ)と構造層7a、7bとの間に含まれる中間層6を含む。中間層6は金属層6である。図3図7の実施形態の特定の事例において、プラズモニック金属として金(Au)が選択された。
【0033】
サンプル2は以下のように調製される。
ウェハ5(例えば、シリコンウェハ)上に、プラズモニック金属(例えば、金または銀)の光学的に厚い層6(約200nm)がプラズマ蒸着によって堆積される。
次いで、誘電体材料層7aがその上に(例えばスピンコーティングによって)堆積される。層7aの典型的な厚さは0nmと2μmとの間に含まれる。
次に、誘電体層7aの上に、個別のまたは複数の蛍光構造1(例えば、量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心など)を液体(CdSe/CdS量子ドットの場合のヘキサン、またはトルエンもしくはクロロホルムなど)中に分散させる。この分散系をスピンコートする。
次いで、他の誘電体材料層7bが堆積される。層7bの典型的な厚さは0nmと200nmとの間に含まれる。最後に、誘電体材料層7a、7bに個別構造1または複数の蛍光構造1を埋め込む。
【0034】
図1(a)に示すように、本発明によるプロセス実施形態は、サンプル2の上方に少なくとも2つのレジスト層3、4を置くステップを含む。
【0035】
少なくとも2つのレジスト層3、4は、2つの異なるレジストから成る2つの層を含み、2つの層は、サンプル2と接触する下側レジスト(LOR)から成る下層3と、下層3の上方にある(好ましくは下層と接触している)上側レジスト(PMMA)から成る第2の(または上)層4とを含む。
【0036】
より正確には、誘電体層7a、7bの上方に、LOR(登録商標)5Aレジストから成る層3(厚さ約500nm)がスピンコートおよびベーキングされる。LOR(登録商標)5Aは、MicroChem Corp.によって製造されている市販のリソグラフィリフトオフレジストである。
【0037】
LOR(登録商標)5A層3の上方に、厚さ50nmのPMMA(ポリメチルメタクリレート)から成る層4がスピンコートおよびベーキングされる。
【0038】
下層3は上層4よりも厚い(好ましくは少なくとも3倍厚い)。
【0039】
この段階で、
構造層7a、7bの1つの第1の面が、下側レジスト層3と接触している。
構造層7a、7bの1つの第2の面が金属層6と接触している。
【0040】
第2の(または上)層4は、400nm未満、好ましくは100nm未満、好ましくは60nm未満の厚さを有する。レジスト層4の厚さの選択は、レジスト層の下のエミッタを観察することができることを所与として、レジストの性質(その化学的性質および密度)およびビームの電子のエネルギーに依存する。層3および4のレジストの厚さ、ならびに電子露光パラメータ(電子電圧、作動距離、開口、電子線量)を確認するために、線量試験が実施される。数回の線量試験の結果から、レジスト3、4の種類および厚さを規定することができる。
【0041】
層4の厚さは、光学顕微鏡によるレジスト3、4の下のエミッタ1の画像化を可能にするために実験的に十分に薄く選択される。
【0042】
上側レジスト4は、電子レジスト(すなわち、電子ビームリソグラフィに敏感なレジスト、すなわち電子ビームリソグラフィを実施することができるレジスト)である。このレジスト4を電子ビームの低エネルギー電子に局所的に露光することにより、露光部分を意図したように除去することができる。非常に薄い上側レジスト層4が使用されるため、低電子線量露光が可能である。電子レジスト4にアンダーカット12を形成するために、電子ビームリソグラフィに対するレジスト4の露光のみに依拠するのではないため、薄膜電子レジストを使用することができる。以下に示すように、電子レジスト4内のアンダーカット12は、下側レジスト3を化学的にエッチングすることによって形成され、それゆえ、首尾よくリフトオフすることが可能になる。
【0043】
第1の(または下)層3は、少なくとも50nm、好ましくは少なくとも200nm、好ましくは少なくとも400nmの厚さを有する。下側レジスト3は、エミッタ1(直下に存在する)に電子が破壊的に侵入するのを防ぐ。適切な溶剤を使用することによって、下側レジスト層3が選択的に除去され、計画されている構造が生成される。さらに、下側レジスト3を除去することによって、上側レジスト4内にアンダーカット12が形成され、これが最終的なリフトオフに役立つ。
【0044】
下側レジスト層3は電子レジストとすることができるが、これは必須ではない。
【0045】
層3の厚さは、以下の2つの制約の間で実験的に選択される。
光学顕微鏡によるレジスト3、4の下のエミッタ1の画像化を可能にするために十分に薄い。
エミッタ(複数可)1への電子の破壊的侵入を防ぐのに十分に厚い。
【0046】
下側レジスト3および/または上側レジスト4は、少なくとも上側レジスト4内に穴またはマーカ21(後述するように、好ましくは少なくとも3つのマーカ)を形成するために、光リソグラフィレジスト、すなわち、(レーザ17の)適切な波長および強度の電磁波によって露光または焼き付けすることができるレジストである。
【0047】
マーカ21は光学顕微鏡および電子顕微鏡で見ることができる。
【0048】
この特定の実施形態では、下側レジスト(LOR)は、下側レジストによるレーザ光の吸収によって発生した熱により、加熱領域の上方に位置する上側レジスト(PMMA)が蒸発し、それによって上側レジストに穴が残るように、適切な強度の光(紫外線)レーザビームによって焼きつけることができる光学レジストである。
【0049】
少なくとも2つのレジスト層3、4のルミネセンスは非常に低い。したがって、意図的でない露光の問題なしに、比較的明るくない個別の蛍光エミッタ1を容易に観察することができる。
【0050】
次に、本発明によるプロセス実施形態は、サンプル2を光学デバイス8内に置く、より正確にはサンプル2をモータ駆動ステージ33に置くステップを含む。
【0051】
図2は光学デバイス8を示す。光学デバイス8は、ステージ33、顕微鏡35、顕微鏡35の対物レンズ34、およびレーザ17を備える。
【0052】
ステージ33は、対物レンズ34の前方に配置された圧電ステージ33である。
【0053】
図1(b)に示すように、本発明によるプロセス実施形態は、
光学デバイス8によって、各構造1からの蛍光放射14を受け取るステップであって、サンプル2がステージ33上にある、受け取るステップと、
レーザ17を用いた(好ましくは同じ光学デバイス8を用いた)光リソグラフィによって、少なくとも上側レジスト層4上に(および好ましくは下側レジスト層3上にも)マーカ21を作成するステップであって、サンプル2は以前と同じステージ33上にある、作成するステップと
を含む。これは、堆積のリソグラフィ残留物を洗浄するためのプロセスがサンプル2に損傷を与え、望ましくない残留物を残す可能性があるため、サンプル2にとって破壊的な、金属位置整合マーカを作成する余分なステップを回避する。
【0054】
サンプル2は、(顕微鏡35の顕微鏡ランプ15を使用して)蛍光顕微鏡法によって画像化され、エミッタ1は、顕微鏡35のカメラ16上で約90×60μmの領域で観察される。適切な密度のエミッタ1を有する領域が選択され、この領域の縁部において、穴21の3つの2D格子18を含む位置整合マークが、顕微鏡対物レンズ34によって集束されたレーザ17を用いて焼きつけられる(光リソグラフィ)。
【0055】
図2は次のことを示している。
ランプ15からの励起ビーム13がエミッタ1の位置を画像化または決定するために、エミッタ1を励起する。対物レンズ34は励起ビーム13を用いて同時にいくつかのエミッタを照明するため、図2は概略にすぎない。
ビーム13によって励起される各エミッタ1によって蛍光14が放射され、対物レンズ34によって集束される。
【0056】
サンプル2上で、サンプル2をレーザ17の集束ビーム(4.5~5mW、連続波、405nmレーザ)で3秒間露光することによって、格子18の各穴21が焼きつけられた。画像化領域の大きさは、CCDカメラ16の視野および画像化光学系に依存する。
【0057】
図3は、エミッタ1および焼き付け穴21の格子の蛍光画像である。サンプル2は100倍対物レンズ34を用いて画像化される。光学設定8を所与として、CCDカメラ16の画像上の1392×1040ピクセルは92.17×68.86μmの実寸法に対応した。これから、CCDカメラ画像の1ピクセルの長さは66.21nmと推測される。
【0058】
本発明によるプロセス実施形態は、光学デバイス8を基準として、各構造1の位置およびサンプル2と一体のマーカ21の位置を画像化または決定するステップを含む。
【0059】
光学デバイス8を基準として各構造1の位置を画像化または決定することは、マーカ21および各構造1からの蛍光放射14を画像化する画像を取得するステップを含むことができる。
【0060】
各格子18からの1つのコーナー穴21は、今後の電子ビームリソグラフィのための位置整合マーカとして機能する。各格子18内の穴21の数は異なり、これによってそれらの穴が区別可能になり、これはCCD(電荷結合素子)カメラ画像内の各蛍光エミッタ1に対する位置を指定することを可能にし、プロトコル全体を通してサンプル2を方向づけるのを助ける。
【0061】
次に、本発明によるプロセス実施形態は、(電子ビームで上側レジスト層4を露光するステップと、各選択構造1の位置の上方の上側レジスト層4の厚さをすべて除去するステップとの前に)電子ビームリソグラフィに露光されるべき少なくとも1つの選択構造1を選択するステップを含み、この選択は、選択構造1によって放出される検出光14に基づく。
【0062】
少なくとも1つの選択構造1を選択するステップは、
各選択構造1によって放出され、光学デバイス8によって検出される光14の波長および/もしくは
偏光および/もしくは
強度および/もしくは
集束もしくは非集束放出特性、ならびに/または
各選択構造1の推定寿命に基づく。この寿命推定は時間分解蛍光測定に基づくことができる。
【0063】
エミッタ1および位置整合マーク21のCCDカメラ蛍光顕微鏡画像から、互換性のあるソフトウェアを使用して電子ビーム露光パターンが作成される。画像寸法が較正され、その中心が原点として扱われる。露光されるナノ結晶1には、それに応じて座標が割り当てられる。各選択構造1の周囲には、露光領域形状が描かれる。
【0064】
例えば、図4に示すように、それぞれ、異なる選択構造1を中心とする、
直径600nmの多数の円22、
直径1000nmの多数の円23、および
直径1500nmの多数の円24
が描かれている。
【0065】
蛍光画像上では、3つの位置整合穴21(格子18毎に1つの穴21)のそれぞれの中心にフラグが立てられている。このタスクには、Raith ELPHY Quantumソフトウェアが使用されている。図4は、蛍光画像上に描かれた電子ビーム描画露光パターンを示す。
【0066】
次に、本発明によるプロセス実施形態は、サンプル2を電子ビーム顕微鏡デバイス(図示せず)内に置くステップを含む。
【0067】
本発明によるプロセス実施形態は、電子ビームデバイスによって、電子ビームデバイスを基準として各マーカ21の位置を画像化または決定するステップを含む。
【0068】
サンプル2が走査型電子顕微鏡を用いて迅速に走査され、位置整合格子18が観察される。特に高電圧での同一領域上での低速走査または複数回の走査は、走査されているPMMAを露光し、その領域をリソグラフィにとって役に立たなくする可能性があるため、走査は迅速にされ、かつ高度に最適化されるべきである。位置整合穴21にズームインした後、マーカの位置決めが確認され、したがって、走査型電子顕微鏡の出力が電子ビームリソグラフィソフトウェアにより蛍光画像と対応するようになる。電子ビームは一時的にカットされる。
【0069】
したがって、本発明によるプロセス実施形態は、
電子ビームデバイスを基準とした各マーカ21の位置
光学デバイス8を基準とした各選択構造1の位置およびマーカ21の位置
によって、電子ビームデバイスを基準として各選択構造1の位置を推定するステップを含む。
【0070】
本発明によるプロセス実施形態は、次に、電子ビームデバイスによって、各選択構造1の位置の上方の上側レジスト層4を電子ビームで露光するステップを含む。
【0071】
その後、描画手順が、指定された露光電荷量でパターンを露光するように電子ビームに命令する。このプロセスには約1分かかる。以下に挙げるのは、本発明において首尾よく使用された電子ビームのパラメータである。
電圧=10kV
作動距離=8mm
開口=10μm
描画フィールド=100μm
円あたりの頂点の数=128
露光線量(面積線量とも呼ばれる。下の表を参照)
【表1】
【0072】
ここに述べた電子ビーム露光パラメータは、50nm厚のPMMA層(重量平均モル質量、M=101000)および500nmのLOR5A(厚さが、電子が下のエミッタを破壊するのを防ぐ)に関するものである。
【0073】
これらの電荷線量値は、個別のエミッタ1の蛍光を悪化させることなく層4を十分に露光するためのパラメータを研究した後に見出された。
【0074】
厚さtRUの上側レジスト4は電子レジストである。電子ビームリソグラフィステップにおいて、厚さtRLの下側レジスト3は、対象の構造1を電子による破壊から保護する。電子線量の量は、少なくとも上側レジスト4を露光するのに必要な量になるように選択される。上側レジスト4の所与の厚さおよび電子線量に対して、下側レジスト3の厚さおよび種類は、電子ビームリソグラフィが行われている構造が電子ビームの電子によって完全に破壊されないように選択される。
【0075】
本発明によるプロセス実施形態は、溶剤または化学溶液によって、以前に電子ビームにさらされた少なくとも2つのレジスト層3、4のすべての部分をすべて除去するステップ、すなわち、各選択構造1の位置の上方の上側レジスト層4の厚さのすべてを除去するが、各選択構造1の位置の上方の下側レジスト層3の厚さはまったくまたは不完全な部分のみを除去するステップを含み、電子ビーム露光後、サンプル2が電子ビーム顕微鏡デバイスから取り出され、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびイソプロパノール(1:3の比で混合した)の溶液槽に20~21℃で45秒間逆さに浸漬されて振とうされる。次に、サンプル2はイソプロパノールの溶液槽に浸漬することによって洗浄され、風乾される。この手順によって露光したPMMAが除去され、図1(c)のステップの終わりを示す。電子ビーム露光層4(PMMA)をMIBKによってエッチングした後の反射顕微鏡画像が図5に示されている。
【0076】
次に、本発明によるプロセス実施形態は、前出の溶剤または化学溶液とは異なる別の溶剤または化学溶液によって、各選択構造1の位置の上方の下側レジスト層3の一部またはすべての残りの厚さを除去するステップを含む。
【0077】
PMMA中のエッチングされた穴22、23、24の下の層3(LOR(登録商標)5A)は、サンプル2をMicroposit(登録商標)MF(登録商標)319(Shipley Co.製の市販の現像剤)の溶液槽に3~5秒間浸漬することによって除去される。これにより、エッチングされた層4(PMMA)の下から層3(LOR(登録商標)5A)が除去され、図1(d)のステップに示すように、各選択エミッタ1の上方に層3の穴10および層4(PMMA)のアンダーカット12が生成される。
【0078】
図6の画像は、層3(LOR(登録商標)5A)の現像後の作業領域の蛍光顕微鏡画像である。層3の材料(LOR(登録商標)5A)は発光材料である。それゆえ、この材料が一部の領域から除去されると、画像内でそれらがより暗く表示される。図6は、現像された穴22、23、24の内側のいくつかの選択エミッタ1(白い点)を示す。
【0079】
図1(e)に示すように、本発明によるプロセス実施形態は、次に、サンプル2と接触させて、各選択構造1の位置の上方に金属層11(または「パッチ」11)を堆積するステップを含み、ここで、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4のすべての厚さが除去される。
【0080】
プラズモニック金属パッチ11および金属膜111は物理気相成長法によって堆積される。
【0081】
次いで、図1(f)に示すように、サンプル2は、MF(登録商標)319の溶液槽に逆さに浸漬されて、約50秒間振とうされてリフトオフが実施される。この手順により、各選択エミッタ1の上方に位置するプラズモニック金属パッチ11の近傍から層3(LOR(登録商標)5A)、層4(PMMA)およびプラズモニック金属膜111が除去され、したがって、プラズモニック金属パッチアンテナが得られる。
【0082】
図7は、電子ビームリソグラフィ前(線19)および電子ビームリソグラフィ後(線20)の選択構造1(CdSe/CdS量子ドット)の寿命の測定を示す。両方の場合において、寿命は11nsであることが注目された。これは本発明がその電子露光防止戦略に起因して、エミッタ1を損傷または変化させないことを示す。寿命推定は時間分解蛍光測定によって行われる。
【0083】
本発明によるプロセスは電子ビームリソグラフィを含むが、上方でリソグラフィが実行されるエミッタ1は直接および破壊的な電子露光から保護される。したがって、この技法は、直接電子露光によって損傷を受けるエミッタ1に対しても使用することができる。本発明によれば、電子ビームリソグラフィを使用して、エミッタ1を描画ビームの電子に直接かつ破壊的に露光ことなく単一エミッタ構造を決定論的に作製することができ、これはエミッタ1の画像化が、走査型電子顕微鏡という従来の方法(これは電子とエミッタとの直接相互作用を含み、走査型電子顕微鏡と電子ビームリソグラフィの両方が同じ機械で行われる)を使用せずに、光学的励起および検出によって行われるために、可能である。本発明によるプロセスの実施形態によれば、光学蛍光画像が電子ビーム描画パターンとして使用され、選択領域が予め設定された電子線量に露光され、それにより、下方のエミッタ1は厚い下側レジスト層3によって保護されるため、これを損傷することなくレジスト4が露光される。
【0084】
本発明によるプロセスは、共鳴電磁場が最大となり、したがってエミッタ1と場との間の相互作用も最大になる位置にナノエミッタ1が正確に決定論的に配置される、プラズモニック(またはフォトニック)ナノ構造を実現する目的を達成する。ナノ構造の内部でのエミッタ1の決定論的な位置決めは、望ましい特性(発光波長、寿命、偏光など)を有する特定の選択ナノエミッタ1を選択することができ、ナノエミッタの横方向および垂直方向の位置決めを制御して、作製されるナノ構造の内部に含めることができることを意味する。本発明によって達成可能なリソグラフィサイズは、電子ビームリソグラフィの分解能(フォトリソグラフィよりも高い分解能を有する)によって制限される。
【0085】
本発明は室温または超低温で使用することができる。
【0086】
本発明は、ランダムに分布したエミッタ1から任意のエミッタ1(脆弱またはロバスト、単一または集合体)を選択し、それらの上方でリソグラフィを実行することを可能にする。図1(a)~図1(f)では、エミッタ1は位置整合しているように見えるが、これらのエミッタはランダムに配向することもできる。
【0087】
本発明は室温で機能する。
【0088】
本発明は低温でも機能する。
【0089】
無論、本発明は、ちょうど説明された例には限定されず、本発明の範囲を超えることなくこれらの例に多数の補正を行うことができる。
【0090】
本発明は図1(f)のアンテナの作製に限定されない。
【0091】
本発明は、量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心などのような単一または複数の蛍光構造1を使用する様々なフォトニック構造を作製するために使用することができる。そのようなフォトニック構造の例は、単一構造プラズモニックパッチアンテナ、金属誘電体アンテナ、タム構造などである。
【0092】
この技法の精度は、蛍光顕微鏡画像上の距離のより良好な較正(より適切な光学系、サブピクセル分解能を使用することによる)および光学マーカのより正確な電子顕微鏡走査によって主に改善することができる。
【0093】
以下の分野/デバイスが、本発明から利益を得るであろう。
1)デバイス内部の構造の制御された最適な位置決めを必要とする任意の単一構造デバイス。
2)量子情報のための有望な単一光子源およびもつれ光子源を含む単一構造発光デバイス。
3)単一光子検出器、および光子状態の検出器。
4)キャビティに最適に結合された構造のセットを有するマイクロレーザ。
5)高感度かつ低ルミネセンス構造(例えば、コロイド量子ドット、蛍光分子など)の正確なナノメートル位置決めを必要とする様々なナノ構造デバイス。
【0094】
組み合わせることができる種々の変形形態において、
図8(a)(図1(a)のステップに対応する)、図8(b)(図1(c)のステップに対応する)、図8(c)および図8(d)に示すように、少なくとも2つのレジスト層は、3つ以上のレジスト層を含むことができる。例えば、下層3をいくつかの層3a、3bに分離することができ、図1(d)の化学現像ステップを図8(c)および図8(d)のいくつかの化学現像ステップにおいて分離することができ、結果、関心領域に到達するために、底部レジスト3a、3bが化学現像によって連続的にエッチングされ、および/または
図9に示すように、本発明によるプロセスは同じサンプル2上に複数のアンテナを作製することができ、および/または
図10に示すように、本発明によるプロセスは、少なくとも1つの金属誘電体アンテナを得るために、各アンテナの金属層11、好ましくは封入層11の上方にかつ接触して誘電体キャップ37を堆積するステップを含むことができ、各パッチ11上に誘電体キャップ37を配置するために、リソグラフィは、最初にパッチ11を配置するために、次にパッチ11上に誘電体キャップ37を配置するために、2回実行され、および/または
図11に示されるように、サンプル2の層6は、必ずしも金属である必要はなく、存在しなくてもよく、または少なくとも1つのタム構造を得るために、例えばブラッグミラー9によって置き換えられてもよく、および/または
作製された構造において、レジスト3、4、基板5、金属6、誘電体層7a、7b、およびパッチ11の厚さは、必要に応じて修正することができる。同じことが材料および形状にも当てはまる。例えば、基板は、Si、ガラス、Agなどのような任意の適切な材料とすることができ、ならびに/または
構造1の上方のパッチ11は、Au、Ag、Al、Ptなどのような任意のプラズモニック金属、もしくは他の何らかの新規材料であってもよく、ならびに/または
層11は、非金属および/もしくは半導体および/もしくは誘電体層11であってもよく、ならびに/または
層5もしくは6上に直接配置される大きな構造1の場合、層7a、7bは存在しなくてもよく、ならびに/または
可能な構造1のセットは、量子ドット、ナノダイヤモンド窒素空孔中心、もしくは蛍光分子以外のはるかに多くの可能性を含み、ならびに/または
各構造1は、必ずしも光もしくは蛍光エミッタ1である必要はなく、および/もしくは構造から受け取られる放射14は、必ずしも蛍光ではなく、透過放射もしくは反射放射であってもよい。本発明の範囲は、光学デバイス8を基準としてそれらの位置を決定するために反射遠視野光学顕微鏡または透過顕微鏡によって画像化することができる、非エミッタ構造1に拡張することができる。透過光学顕微鏡が光学画像化に使用される場合、層5、6、7aおよび/または7bは十分に透明である。本発明は蛍光エミッタ1に限定されない。他の目的(これは蛍光エミッタではなくてもよく、光に対して感受性を示しても示さなくてもよい)も本発明から利益を得ることができる。例えば、構造1は、いくつかの非蛍光分子が付着した金属ディスクとすることができ、これらの分子は電子との相互作用に起因して破壊または変換することができ、そのため、光リソグラフィによって位置整合マーカ21が作成され、ディスク1および位置整合マーカ21が反射顕微鏡によって画像化される。この画像は電子ビーム露光パターンを描くために使用され、電子ビームリソグラフィによって、分子の上方の所望の位置に金属パッチ11が配置され、それゆえ、上記の説明では、「エミッタ」または「蛍光エミッタ」という表現は任意の構造に一般化することができ、および/または
選択構造1の位置の上方の下側レジスト層3の残りの厚さをすべて除去する必要はない。例えば、選択エミッタ1の上方の金属パッチ11の垂直距離を増加させるために、エミッタ1の上方に層3の一部を残すことができ、および/または
層5および/または6なしで、(例えばSiO2の)層7aと(例えばPMMAの)層7bとの間にエミッタ1を挟むことが可能である。
【0095】
当然ながら、本発明の種々の特徴、形態、変形、および実施形態は、それらが不適合ではない、または相互に排他的ではないという範囲で、様々な組み合わせで互いに組み合わせることができる。特に、上記のすべての変形形態および実施形態は互いに組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11