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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】虚像投射装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20220331BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20220331BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220331BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
G02F1/13357
G02B27/01
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019557078
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2018040242
(87)【国際公開番号】W WO2019107044
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2017231373
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】川村 友人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-090694(JP,A)
【文献】特開2016-095411(JP,A)
【文献】特開2004-102132(JP,A)
【文献】国際公開第2005/093493(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0280031(US,A1)
【文献】特開2013-045649(JP,A)
【文献】特開2004-157173(JP,A)
【文献】特開2008-287049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
H04N 5/64
G02F 1/13357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を人の眼に見せる虚像投射装置であって、
所定の角度分布の光を出射する仮想光源面と、
前記仮想光源面からの光を集光する結像レンズと、
映像を生成する表示器と、
前記表示器で生成された映像を人の眼に伝達する虚像投射器と、
光を出射する光源と、
該光源から出射する光を略平行に変換する集光レンズと、
を備え、
前記結像レンズの前側の略焦点位置に前記仮想光源面が配置され、前記結像レンズの後側の略焦点位置に前記表示器が配置され、
前記仮想光源面は、前記集光レンズから出射した光を拡散またはレンズアレイにより光の角度を変換する機能を有しており、
前記表示器から出射する光を取り込む前記虚像投射器のF値は、前記仮想光源面から出射する光を取り込む前記結像レンズのF値と一致し、且つ、前記光源から出射した光を取り込む前記集光レンズのF値は、前記虚像投射器のF値と一致し、
前記結像レンズは、内面反射を利用して光を折り曲げる反射面を有し、
前記仮想光源面から出射した光は、前記結像レンズの反射面で反射した後に前記表示器に入射させる構成とする、
ことを特徴とする虚像投射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の虚像投射装置であって、
前記仮想光源面のサイズは、前記結像レンズの直径よりも小さいことを特徴とする虚像投射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の虚像投射装置であって、
前記表示器の映像表示領域は長方形であり、前記仮想光源面は略正方形とすることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の虚像投射装置であって、
前記結像レンズは、前記仮想光源面から出射する光が入射する入射面と、前記表示器へ光を出射する出射面とを備え、
前記結像レンズの前記入射面と前記出射面とで形成される角度が90度よりも小さいことを特徴とする虚像投射装置。
【請求項5】
請求項1に記載の虚像投射装置であって、
前記結像レンズは、前記仮想光源面から出射する光が入射する入射面と、前記表示器へ光を出射する出射面とを備え、
前記出射面に非球面レンズを備えていることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項6】
請求項4に記載の虚像投射装置であって、
前記結像レンズは、透明な素材で一体成型されていることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の虚像投射装置であって、
前記結像レンズは、透明な素材で一体成型されていることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項8】
請求項1に記載の虚像投射装置であって、
前記表示器の映像表示領域は長方形であり、
前記結像レンズの前記反射面は、前記映像表示領域の短手方向に光を折り曲げる機能を有していることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項9】
請求項8に記載の虚像投射装置であって、
前記結像レンズの前記反射面の反射前後の光軸を含む平面に対して映像表示領域の短手方向が平行であることを特徴とする虚像投射装置。
【請求項10】
請求項1に記載の虚像投射装置であって、
前記虚像投射器を含み、前記表示器で生成された画像を映像光として投射する投射部と、
前記投射部から投射された映像光を結合するプリズムである映像光結合部と、
前記映像光結合部から出射した映像光を利用者の目に導光する導光部と、
を備え、
前記映像光結合部の頂角は、前記導光部の入射面の法線と前記投射部の光軸がなす角と略一致することを特徴とする虚像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ等の虚像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、利用者が自身の頭部に装着して利用するヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display、以下ではHMDと省略する)と呼ばれる虚像投射装置が知られている。利用者は、HMDが表示する動画や静止画の虚像を視覚により認識することにより、様々な情報を取得することができる。
【0003】
HMDを様々な環境下で使用可能とするため、HMDを携帯したいという要望がある。HMDを携帯するためには、HMDが小型でなければならない。また、携帯して駆動するためには、電池を搭載して利用する形態が考えられる。画像の輝度を明るく、駆動時間を長くするためには、電池の放電容量を大きくする必要がある。特に両眼式HMDでは、左右のそれぞれの目に表示する画像を、同時に光源を点灯させて生成すると、光源の消費電力が大きくなる。大きな消費電力に耐え、放電容量が大きい電池は大型になり、HMDも大型化してしまう。
【0004】
これに関し特許文献1には、映像光をプリズム形の部材で導光させて中間像を生成することにより、光学系全体を小型にすることが可能な虚像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-174429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HMDが画像を表示するためには、HMDが備えている光源の発光で表示器に照明し、表示器により生成された映像光を投射系によって虚像を生成する機能を有する光学系が必要である。光源からの光は、照明系によって表示器に導かれるが、単位当たりの光源の発光に対して明るい映像を提供するためには、高効率な照明系が必要である。さらに、表示器で生成された映像光を利用者の目に入射させて映像を認識させるには、映像光を網膜上で結像する光束に変換する投射系が必要である。高効率なHMDを実現しようとすると、照明系の効率を高める必要があり、その結果照明系は大型化してしまう傾向にある。また、HMDの光学系を小型にするためには、照明系と投射系を組み合わせるための空間を小さくしなくてはならない。
【0007】
特許文献1に記載の虚像表示装置では、映像光を導光部材内部で反射させ中間像を生成する構成となっている。これによれば、光学系全体を小型で軽量なものにしつつ、広画角で明るい表示を実現できるとある。しかし、導光部材は透明材質でできた曲面を持つ塊であるため、重量が増すという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、虚像投射装置において、光学系の輝度効率を低下させることなく、高効率で小型の虚像投射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、映像を人の眼に見せる虚像投射装置であって、所定の角度分布の光を出射する仮想光源面と、前記仮想光源面からの光を集光する結像レンズと、映像を生成する表示器と、を備え、前記結像レンズの前側の略焦点位置に前記仮想光源面を配置した場合、前記結像レンズの後側の略焦点位置に表示器を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有効な照明光を低下させることなく照明系を小型化し、投射系と小型に組み合わせることで、光源への電力供給を抑えながらも、高輝度の画像を表示する高効率で小型の虚像投射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】利用者3の頭に搭載されるHMD1の概略構成を示す図。
図1B】HMD1の正面を示す図(実施例1)。
図1C】HMD1の上面を示す図。
図2】映像表示部10の構成の一例を示す図。
図3A】映像表示部10の構成の一例を示す正面図。
図3B】映像表示部10の構成の一例を示す上面図。
図4】色合成部115の構成の一例を示す図。
図5】マルチレンズアレイ116の機能を示す図。
図6】仮想光源と結像レンズ117の位置関係の説明図。
図7】仮想光源と結像レンズ117が近接したケースを示す図。
図8】仮想光源と結像レンズ117の位置関係の説明図。
図9A】結像レンズ117の構成の一例を示す図(実施例2)。
図9B】結像レンズ117の構成の一例を示す図。
図10】結像レンズ117の構成の一例を示す図。
図11】プリズム付き結像レンズ118の構成の一例を示す図(実施例3)。
図12】表示器120の配置構成の変形例を示す図(実施例4)。
図13】表示器120の配置構成の変形例を示す図。
図14】映像光結合部15の変形例を示す図(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明では、虚像投射装置としてヘッドマウントディスプレイ(HMD)を取り上げているが、利用者が視認できる虚像を表示する装置であれば、本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0013】
図1A図1Cは、両眼式HMDの使用形態と概略構成を示す図である。図1Aは、両眼式HMD1の概略構成を示す。利用者3は、両眼式HMD1を自身の頭部に装着して、両眼式HMD1が表示する左右の画像を視覚により認識する。
【0014】
図1Bは、実施例1のHMD1の正面を示す図である。利用者3が装着する側から見た図である。両眼式HMD1は、右目用映像表示部10Rと左目用映像表示部10L、右目用導光部11Rと左目用導光部11L、及び保持部19を備えている。右目用映像表示部10Rは、照明部13Rと投射部14Rを、左目用映像表示部10Lは、照明部13Lと投射部14Lをそれぞれ備えている。右目用映像表示部10R、左目用映像表示部10Lと右目用導光部11R、左目用導光部11Lは、それぞれ右目用映像光結合部15R、左目用映像光結合部15Lを備えている。保持部19は、両眼式HMD1の構成部品の全てまたは一部を保持するための筐体である。利用者3は、少なくとも保持部19を含む装置を頭部に装着して両眼式HMD1を使用する。
【0015】
図1Cは、実施例1のHMD1の上面を示す図である。右目用映像表示部10R及び前記左目用映像表示部10Lは、それぞれ右目用及び左目用の画像を生成し、映像光12R及び映像光12Lを出射する。照明部13R、及び照明部13Lから照明された照明光が、投射部14R、及び14Lを経由し、出射された映像光12R及び映像光12Lは、それぞれ右目用導光部11R及び左目用導光部11Lにより、利用者3の右目及び利用者3の左目まで導光される。利用者3の右目及び利用者3の左目まで導光された映像光12R及び映像光12Lの一部または全部が、図示しない利用者3の網膜まで到達する。
【0016】
以下では、右目用映像表示部10R及び左目用映像表示部10L、右目用導光部11R及び左目用導光部11L、映像光12R及び映像光12L、照明部13R及び照明部13L、投射部14R及び投射部14L、映像光結合部15R及び映像光結合部15Lについては、左右の区別する必要がない場合は、まとめて映像表示部10、導光部11、映像光12、照明部13、投射部14、映像光結合部15と記載する。
【0017】
図2は、映像表示部10の構成の一例を示す図である。映像表示部10は、光源部110と、集光レンズ114と、色合成部115と、マルチレンズアレイ116と、結像レンズ117と、プリズム付き結像レンズ118と、反射部119と、表示器120と、虚像投射器130と、を備えている。
【0018】
光源部110は、映像表示部10が画像を生成する為の光を出射する。光源部110は、赤色(R)の光を出射する光源と、緑色(G)の光を出射する光源と、青色(B)の光を出射する光源とを備えている。これらを順に周期的に点灯させ、フィールドシーケンシャル方式でフルカラーの画像を表示する。光源部110から出射した光は、集光レンズ114に入射する。
【0019】
集光レンズ114は、光源部110から出射した光束を略平行光(以下、コリメート光と呼ぶ。)にする。
【0020】
色合成部115は、光源部110が出射する光束の波長によって、選択的に反射、透過させることによって各色の光束を合成することで、フルカラーの映像光12を提供するための照明光を生成する。
【0021】
マルチレンズアレイ116は、入射面と出射面に対向したレンズを複数備えている。入射面に備えられたレンズは、入射した略コリメート光を出射面に備えているレンズに向かって集光する。一方、マルチレンズアレイ116の出射面に備えられたレンズは、それぞれ対向する入射面に備えられたレンズの開口形状に対応した配光分布で出射する。
【0022】
結像レンズ117は、マルチレンズアレイ116が出射する光束を表示器120に向かって結像させる。結像されるのは、マルチレンズアレイ116の入射面に備えられたそれぞれのレンズの開口の像を重ね合わせたものになる。マルチレンズアレイ116が備える開口を照明する光の強度分布は一様ではないが、後段の結像レンズ117などによって重ね合わせられるため、均一な強度分布を持つ照明光を提供できる。すなわち、輝度ムラを抑えた映像を提供できる利点がある。
【0023】
プリズム付き結像レンズ118は結像レンズ117の出射光の進行方向を変更する。出射光の進行方向を変更することにより、照明部13と投射部14の配列を一直線以外の、折り曲がった形状として、デザインの自由度が上がる利点がある。
【0024】
反射部119は、反射するだけでなく、入射光を少なくとも1度反射するように構成され、偏光の向きによっては光を透過させてもよい。表示器120に偏光を利用して映像を生成する液晶パネルなどを利用する場合に、映像となる有効光と不要光を分離して映像光12を生成することができる。利用する表示器120が透過型液晶パネルのように表示器120の透過光が映像光12になる場合には、反射部119に透過しない光学部材を利用しても良い。
【0025】
表示器120は例えば反射型LCOS(Liquid Crystal On Silicon)を備え、映像信号に基づいて、光源部110から入射した光を変調して画像を生成する。ただし、フィールドシーケンシャル方式の場合には、表示器120には色を変換するフィルタ等を備えておらず、入射した光と略同じ色の画像を生成する。表示器120で生成した画像の光は映像光12となり、虚像投射器130に入射する。
【0026】
虚像投射器130は、表示器120の像を投射する。表示器120の像を利用者3から所望の距離に存在しているように網膜に結像するためには、虚像投射器130は映像表示部10の像を虚像として提供する。表示器120は、虚像として提供するためには、このようにして生成された映像光12は、映像光結合部15を介して導光部11へ向かう。
【0027】
映像光結合部15は、虚像投射器130が投射する映像光12を入射させたのち、映像光結合部15が備える平面で内面反射させ、導光部11に対して略垂直な方向に映像光12を出射する。映像光結合部15は、該反射面では全反射を用いてもよいし、内部を通過する映像光12が反射面の法線に対して臨界角よりも小さい角度で入射する場合には、漏洩による損失を防ぐためにミラーコートをしても良い。全反射面を利用できれば、ミラーコートによるコスト増加を回避可能で、低コストで高効率に映像光12を伝播できる。ミラーコートを利用すれば、映像光結合部15の屈折率で決定される臨界角の制約を受けず、保持部19のデザインの自由度が向上する利点がある。
【0028】
導光部11は、表示器120が生成した映像光12を虚像投射器130から取り込み、内部反射させて、利用者3の目前にまで導く。そして導光部11の目に対向している領域から映像光12を出射して、利用者3の網膜に映像光12を結像させる。前記構成であれば、虚像投射器130と利用者3の目の位置関係の制約が緩和され、虚像投射装置の配置を自由に設定することができるし、利用者3の目と虚像投射器130の瞳がずれて映像の一部、または全部が欠けてしまう状況を回避することができるため、利用者3にとって見えやすい虚像を提供できる利点がある。導光部11の内部面反射には、回折現象を利用したホログラム、鏡面反射するミラー、入射した光束を透過光と反射光に分離するハーフミラー、全反射を利用することができる。
【0029】
以上述べた光学部品のうち、照明部13は、光源部110、集光レンズ114、色合成部115、マルチレンズアレイ116、結像レンズ117、プリズム付き結像レンズ118、反射部119から構成される。表示器120を照明できるのであれば、一部の部品が省略されていても良い。
【0030】
投射部14は、虚像投射器130から、表示器120の間に存在する光学部品で構成される。例えば、表示器120が生成した映像光12を反射部119が透過するのであれば、反射部119の透過特性、及び屈折を考慮して投射部14を構成する。虚像投射器130のバックフォーカス位置は、反射部119の屈折、及び映像光12が反射部119の内部を透過する距離によって伸びる。投射部14のバックフォーカスは、虚像投射器130のバックフォーカス位置よりも伸びるため、その伸びた距離を補正するように投射部14を配置しなければならない。また、照明部13、投射部14を別体にした場合には相対的な配置に自由度があるため、照明部13を構成する光学部品の配置ズレなどによる光学性能のばらつきと、投射部14を構成する光学部品の配置ズレなどによる光学性能のばらつきとを映像表示部10を組み立てる際に最適化する余地ができる。さらに、それぞれを独立して扱えるため、照明部13、投射部14を組み立てる際に、それぞれを構成する光学部品の調整が容易になる。したがって、照明部13と投射部14が別体で構成されると、組み立て時に調整して高性能な映像表示部10を提供することが容易になる。
【0031】
図3A図3Bは、映像表示部10の構成例を示す図であり、図3Aは正面図、図3Bは上面図を示す。映像表示部10にカラー映像を提供させるため、光源部110は3色に発光するために光源部110G、光源部110RBを備えている。
【0032】
光源部110Gは緑色の光(G光)を出射し、光源部110RBは赤色と青色の光(R光とB光)を出射する。光源部110RBは、光源部110Rと光源部110Bが同一パッケージに実装されている。図3A,3Bでは、2色が同一のパッケージに実装されている光源部110RBを例として示しているが、3個の光源は各々が独立したパッケージ内に実装されていても良いし、2個以上の光源が1つのパッケージ内に集積して実装されていても良い。以下、「光源部」を単に「光源」とも呼ぶ。
【0033】
光源110RB、110Gのいずれかから出射した光は、集光レンズ114に入射する。集光レンズ114は、その略合成焦点位置に各光源部110が位置する関係で配置されている。光源部110から出射した光束は、集光レンズ114に入射してコリメート光となる。各光源部110からのコリメート光は、色合成部115に向かって出射する。
【0034】
図3Bでは、色合成部115に楔形のダイクロイックミラーを用いた例を示している。ダイクロイックミラーは、R光とB光とG光の光軸を揃えて合成し、各色のコリメート光を合成して出射する。
【0035】
マルチレンズアレイ116は、色合成部115から出射した略コリメート光束を受光する。略コリメート光は集光レンズ114で生成されていて、光源部110の発光領域に応じた光の広がりを持つコリメート光束になっている。これをマルチレンズアレイ116の入射側に備えられたレンズで集光すると、マルチレンズアレイ116の出射側のレンズ上に光源部110の像を結像する。マルチレンズアレイの出射側に備えられたレンズは、マルチレンズアレイの入射側に備えられたレンズの開口形状に応じた配光分布の光束を出射する。
【0036】
マルチレンズアレイから出射した光束は、結像レンズ117に入射する。結像レンズ117は、コリメート光を集光しながらプリズム付き結像レンズ118に向かって出射する。
【0037】
プリズム付き結像レンズ118は、透明材質で構成され、入射面と反射面と出射面を有する光学材である。図3Aに示したように、プリズム付き結像レンズ118は、結像レンズ117の光軸に対して傾斜した入射面と、平面の反射面と、出射面にレンズを備えている。これらは一体成型されていて、レンズは非球面レンズとして収差を補正するよう構成されていてもよい。結像レンズ117とプリズム付き結像レンズ118によって、マルチレンズアレイ116から出射したコリメート光を集光しながら進路を略直角に曲げる。
【0038】
反射部119は、偏光選択性の反射性能を有する。例えば、S偏光は反射するがP偏光は透過する。図3Aでは、プリズム付き結像レンズ118から出射した光束のうち、S偏光が反射をして表示器120を照明する。その照明光は、マルチレンズアレイ116の入射側に備えられたレンズセルの開口形状の略相似形となる。
【0039】
図3Aに示した表示器120は、反射型LCOSの例を示している。本構成では、反射部119から表示器120に入射する照明光はS偏光である。映像信号に応じて入射した照明光の偏光を空間的に変調し、映像として有効な画素として明るく光らせるには偏光を回してP偏光とする。反射部119のP偏光を透過させる偏光選択性を利用して、映像光12を虚像投射器130に向かって透過させる。反射部119の表面に微細な凹凸やゆがみがあった場合、映像光12が透過する際に微細な凹凸面で屈折して、映像が乱れる原因となりうる。しかし、反射であれば反射部119の面の乱れ、例えば1°の傾斜を持っているとした場合、反射した光は2°ずれてしまうが、透過する場合の屈折の乱れはそれよりも小さい。照明光は使用上、ゆがんでも映像光12を生成する前であり、利用者3の目に届くものではないため、視覚的には影響が少ない。しかし、映像光12がゆがむと、利用者3の目にそのゆがみが映像のゆがみとして見えてしまう可能性がある。したがって、反射部119に対して、映像光12が透過する方式で映像を生成した方が、高画質にできる利点がある。
【0040】
表示器120は、当然ながら映像光12に対して映像信号の強度によって偏向度合いを調整し、階調をつけることが可能である。反射部119を透過した映像光12は、虚像投射器130に入射する。虚像投射器130は、少なくとも1枚以上のレンズで構成される。虚像投射器130は、表示器120上の空間的な光強度の強弱を、配光分布に変換させる光学的特性を有する。虚像光学系を構成するには、虚像投射器130の焦点位置よりも表示器120が内側に存在する。例えば、無限遠に虚像を結像させるには、虚像投射器130の焦点位置と一致させる。また、出射する映像光12の画角は、表示器120の大きさと虚像投射器130の焦点距離で定まる。虚像投射器130の焦点距離が短いほど、また表示器120が大きいほど、画角が大きくなる。
【0041】
映像光結合部15は、プリズムで構成される。プリズムであれば、ミラー反射で折り返すよりも光路長を維持したまま物理的距離を短くすることができるため、小型に構成できる利点がある。また、導光部11と虚像投射器130の傾斜角に応じて定まる。映像光結合部15の反射面は、鏡面仕上げされた全反射面で反射させると光学的損失がないため望ましい。しかしながら、画角が広い映像光12を反射させる場合であって、全反射条件を満たさず漏洩する光束が発生する場合にはミラーコートを施しても良い。映像光結合部15の形状が、映像光12に対して、映像光結合部15の入射面に対して垂直で入射し、出射面に対して垂直に出射させる形状であれば、出射後の映像光12に色分離が発生せず高画質な映像表示部10を提供できるため望ましい。前記条件を満たさない場合には、映像光結合部15に用いた媒質の分散によって、入射時と出射時の波長による屈折角度の違いによって、映像光12に色ずれが発生してしまう。映像光結合部15は、二等辺三角形を断面とする柱形状であると製造が容易で安価に提供できる利点がある。
【0042】
導光部11は、映像光結合部15から出射した映像光12を利用者3の目に対向する位置まで伝播する。導光部11に入射した映像光12は、導光部11内部を伝播した後に出射するとき、その出射方向は維持されている必要がある。前記条件を満たす光学系として、例えば、少なくとも1つ以上のホログラム素子や、平行に構成される1枚以上のハーフミラーを備えた構成を用いることができる。また、導光部11の入射面で、透過せず反射した映像光12が存在すると、前記反射した映像光12は投射部14を逆行する。そして、いずれかの光学部品によって反射し、再び投射部14を抜けて映像光12に重畳して、映像品質を劣化させるゴースト像の原因となってしまう。これを防ぐために、導光部11の入射部の手前に1/4波長板を備えてもよい。ゴーストとなりうる映像光12が透過、反射したときに偏向を略90度回し、偏光選択性を持つ反射部119で再び投射部14に戻らないようにすることで、ゴースト像の発生を防ぐことができる。特に、導光部11がホログラフィック面を備え、映像光12をフレネル反射率よりも高い、例えば4%以上の反射率がある場合に大きな効果を奏する。このような構成であれば、ゴースト像の発生を抑えた高品質な虚像投射装置を提供できる。
【0043】
図4は、色合成部115を示す図である。色合成部115の作用について詳細を説明する。集光レンズ114は各光源部110の前方に配置されるレンズであって、光源部110からの出射光束をコリメートする機能を有する。1枚以上のレンズやミラーで構成されていてもよい。図4では、光源110Gに対応する集光レンズ114を集光レンズ114G、光源110RBに対応する集光レンズ114を集光レンズ114RBとして図示している。また、集光レンズ114がそれぞれ2枚で構成されている例を示している。
【0044】
図4では、色合成部115にダイクロイックミラーを利用した例を示している。色合成部115は、G光に対する入射面と出射面の傾斜角度が異なっているため、入射時と出射時で屈折角が違い、G光の入出射の過程で光軸1140Gの方向を変化させることができる。一方、光源110R、光源110Bの光軸について、ダイクロイックミラーの各面の光源110RBに対向する面115Rと面115Bを利用して光軸を揃える機能を備える。面115RはR光を反射し、R光よりも短い波長の光であるG光とB光を透過する波長選択性を持つ。また面115Bは、B光よりも短い波長の光を反射して、B光よりも長い波長のG光やR光は透過する波長選択性を持つ。光源110RBからのR光の光軸1140Rは、面115Rで反射してG光の光軸1140Gと一致する。B光の光軸1140Bは、面115Rで屈折して透過し、面115Bで反射して再度面115Rに入射する。空気中に出射する際には屈折してG光の光軸1140Gと一致する。その結果、3色の光の光軸は略一致して光軸1140RGBをなし、マルチレンズアレイ116に向かって出射する。
【0045】
前記の構成にするためには、図4の向きに見たとき、R光を発光する光源110Rが左、B光を発光する光源110Bが右側に配置され、集光レンズ114RBを抜けた後に光軸1140Rと光軸1140Bが一度交差する位置よりも遠方に色合成部115が配置される。光軸1140R、光軸1140Bを含む平面を切断面とした色合成部115の断面が、光源110RB側に向かって細くなる楔形であり、光源110R側が光源110RBから遠ざかる方向の傾斜となっている向きとする。そして、色合成部115の光源110RBに対向する面の順番が、面115Bよりも面115Rが光源110RBに近く配置されている姿勢で配置されていれば良い。光源110Gと集光レンズ114Gは、楔形の色合成部115を透過後の光軸を光軸1140RGBに揃えるために、色合成部115に対して時計回りに傾斜させる。すなわち、光源110RBと光源110Gは、90度よりも大きい角度で配置される。光源部110G、及び光源部110RBからの発光光束は、集光レンズ114を通過してコリメート光となって出射され、色合成部115で合成されて光軸1140RGBに沿ったコリメート光となって、マルチレンズアレイ116に入射する。
【0046】
例えば、色合成部115は、頂角4.39°の楔形形状を用いることができる。本形状であれば、3色の光を合成してあたかも一つの光源部110から出射しているかのように扱うことができる。
【0047】
図5では、マルチレンズアレイ116について詳細を説明する。マルチレンズアレイ116の入射側に備えられたレンズセル116i(入射側レンズセル)は、光源部110の像をマルチレンズアレイ116の出射側に備えられたレンズセル116o(出射側レンズセル)の開口に結像することが望ましい。これを実現するには、入射側レンズセル116iに入射する照明光のF値が、入射側レンズセル116iのF値よりも大きければよい。
【0048】
前記構成であれば、集光レンズ114と入射側レンズセル116iまでを含む光学系によって、出射側レンズセル116oの開口よりも小さく光源を結像することができる。すなわち、光源の発光領域よりも出射側レンズセル116oの開口が大きい場合、集光レンズ114の焦点距離に対して入射側レンズセル116iの焦点距離は短い。また、集光レンズ114から出射されるコリメート光が結像する位置は焦点位置であるため、マルチレンズアレイ116の厚さと入射側レンズセル116iの焦点距離は、略同一となる。一方、マルチレンズアレイ116の全体の有効開口は、集光レンズ114からの照明光を十分に受ければよい。したがって、マルチレンズアレイ116の開口を照明光が略円形で照明している場合には、例えば円形や、それに外接する略正方形としておくと、過不足なく照明光を入射させることができて高効率である。
【0049】
前記構成であれば、マルチレンズアレイ116への入射光は、対向する出射側レンズセル116oの開口内に収まるため、開口で損失することなく高効率で出射できる利点がある。
【0050】
出射側レンズセル116oは、入射側レンズセル116iの開口の形状を、配光分布に変換してコリメート光を出射する機能を有する。すなわち、出射側レンズセル116oの焦点位置は、入射側レンズセル116iに略一致している。また、焦点距離は、入射側レンズセル116iを二次光源とみなしたとき、結像レンズ117に向かう光束の広がり角から決定される。
【0051】
したがって、入射側レンズセル116iの焦点距離と、出射側レンズセル116oの焦点距離と、マルチレンズアレイ116の厚さは略同一となる。前記の条件から、マルチレンズアレイ116に入射する光束の入射光の発散角度θiと出射光の発散角度θoは等しくなる。図5には図示していないが、集光レンズ114が出射する光束の広がりが、入射光の発散角度θiよりも小さい光束についても、損失なく出射側レンズセル116oから出射させることができるため、通過率が高い高効率な照明系を構成できる利点がある。
【0052】
図6図7図8では、マルチレンズアレイ116と結像レンズ117の位置関係について詳細を説明する。また、マルチレンズアレイ116はそのほかの仮想光源面でもよい。
【0053】
効率、及び照明光の均一性を高めるため、マルチレンズアレイ116と光源部110、集光レンズ114を組み合わせた構成を用いているが、その他の面発光する光源を上記の構成の代わりに仮想光源面として用いることもできる。例えば、OLED(Organic Electro-Luminescence)などの平面光源や、レーザー光源と透過性の拡散板を組み合わせたものであってもよい。
【0054】
図6では、マルチレンズアレイ116と結像レンズ117の位置関係の一例について示す。マルチレンズアレイ116が結像レンズ117に対して、結像レンズ117の前側焦点1170bよりも離れる方向に位置している。
【0055】
表示器120は透過型の映像表示素子を例示しており、例えば透過型の液晶素子を利用することができる。もちろん、反射型の映像表示素子など他の映像表示素子を用いても良い。虚像投射器130は、表示器120で変調された出射光を受光し、虚像を投射する機能を備えている。
【0056】
マルチレンズアレイ116から出射した照明光は、角度を持った光束であるため、結像レンズ117に到達するまでに広がる。図6では、結像レンズ117とマルチレンズアレイ116間の距離を十分にとり、結像レンズ117の開口を十分広く照明している様子を示している。マルチレンズアレイ116からの照明光は、結像レンズ117に入射して後側焦点1170aに結像する。前記の像は、マルチレンズアレイ116の入射面に備えられたレンズセル116iの実像である。レンズセル116iの実像と表示器120とが略一致するように、結像レンズ117の後側焦点1170aに略一致して配置されている。前記の構成であれば、マルチレンズアレイ116から出射した照明光を、表示器120に対して過不足なく効率的に照明できる利点がある。
【0057】
マルチレンズアレイ116は結像レンズ117に対して、結像レンズ117の前側焦点1170bよりも離れた位置にあるため、結像レンズ117から出射した光束は収束する方向に出射する。結像レンズ117を通過した光束は、表示器120と略同一の位置に結像した後、結像レンズ117の光軸に向かう収束する方向に進行する。そのため、光束は効率的に虚像投射器130に取り込まれるようになり、損失を抑制した虚像投射装置を提供することができる。また、マルチレンズアレイ116、集光レンズ114、光源部110を小型に配置することができ、小型の虚像投射装置を提供することができる。
【0058】
例えば、マルチレンズアレイ116は、レンズセル116i及びレンズセル116oの横方向の周期が0.502、縦方向が0.283、曲率半径0.51、厚さ1.2とすれば、横方向で略F2.4の照明光が得られる。別のF値の照明光が必要な場合には、例えばレンズセル116i、116oの形状を変えないとすると、曲率半径及びレンズセル116i、レンズセル116o間の厚さを、所望のF値と略比例させた形状であれば良い。ただし、F値を大きくするためには、光源からの照明光の制約によって、通過率が低下する傾向にある、そのため、レンズセル116i、116oの大きさを変更して、曲率半径、レンズ間距離を実現しやすい値に調整しても良い。
【0059】
マルチレンズアレイ116の有効開口は、F2.4のとき、例えば、横方向5.44、縦方向5.53と略正方形になっていても良い。この形状は、前段の光源部110から照明される光の照明範囲の形状に合わせればよく、マルチレンズアレイ116が出射する照明光のF値によらない。
【0060】
図7では、マルチレンズアレイ116と結像レンズ117とが近接している構成を示している。マルチレンズアレイ116の出射光が結像レンズ117で集光され、結像レンズ117の後側焦点1170aで結像する。
【0061】
図7の構成の場合、マルチレンズアレイ116からの出射光を表示器120上で結像して効率的に照明できているが、表示器120を通過した光束のうち、斜線部で示した光軸に対して角度がついた側の光束は、虚像投射器130に入射できず、映像光として利用することができず損失となる。また、表示器120を照明するためには結像レンズ117の開口全体を光束で満たさなければならない。図7の構成ではマルチレンズアレイ116と結像レンズ117が近接しているため、両者は同等の大きさが必要となる。さらに、マルチレンズアレイ116の開口全域から光束を出射させるためには、集光レンズ114も同等のサイズが必要となる。このように、マルチレンズアレイ116と結像レンズ117が近接すると、集光レンズ114、及び光源部110が大きくなり照明部13が大型化してしまう。
【0062】
図8では、マルチレンズアレイ116と結像レンズ117の位置関係の変形例を示す。マルチレンズアレイ116が、結像レンズ117の前側焦点1170bに略一致している。
【0063】
マルチレンズアレイ116から出射した光束は、角度を持った光束であるため、結像レンズ117に到達するまでに広がっている。図8では、結像レンズ117とマルチレンズアレイ116間の距離に対して、マルチレンズアレイ116の出射光束が十分に広がっていて、結像レンズ117の開口を十分に照明している様子を示している。結像レンズ117の前側焦点1170bとマルチレンズアレイ116を略一致させて配置しているため、マルチレンズアレイ116の中央から出射した光束、すなわち結像レンズ117の前側焦点1170bから出射した光束は、結像レンズ117で集光されコリメート光となって表示器120を照明する。また、マルチレンズアレイ116の出射開口から出射する光軸に対して角度を持って照明する光束は、表示器120上で結像する光束となる。特に、角度を持ってマルチレンズアレイ116を出射した照明光は、表示器120の法線に対して対称となる角度範囲で到達する。前記の構成であれば、表示器120を通過した後の映像光12も、結像レンズ117、及び虚像投射器130の光軸に対して対称な広がりを持って進行する。このような映像光12であれば、虚像投射器130がテレセントリック系であっても、表示器120を通過した映像光12を効率的に取り込むことができるため、高効率な光学系を提供できる。
【0064】
なお、テレセントリック光学系で構成されている虚像投射器130を利用すると、画面全域で輝度ムラが小さい虚像投射装置を提供できる利点がある。
【0065】
結像レンズ117の開口形状に注目すると、図6図7図8いずれの構成であっても、結像レンズ117の開口は表示器120よりも大きくなければならない。前記の構成であれば、表示器120を通過した後に、表示器120全域から虚像投射器130に向かう広がりを持った映像光12を提供でき、映像における暗部の発生や映像の欠落を抑えた映像を提供できる。
【0066】
結像レンズ117は、例えば、曲率半径R12.676でコーニック係数-5.063366の非球面を持つ平凸レンズを用いることができる。これは、前記マルチレンズアレイ116の照明光に合わせ、また後段に備えているプリズム付き結像レンズ118と組み合わせることで、表示器120にF2.4で照明する光学系を構成できる。
【0067】
以上のように、実施例1の構成であれば、高効率で小型な照明部13によって照明光を表示器120に照明し、高効率にフルカラーで高画質な虚像を生成して投射する投射部14を組み合わせることで、高効率でありながら小型の虚像投射装置を提供できる。
【実施例2】
【0068】
図9A図9B図10では、実施例2における結像レンズ117について詳細を説明する。
【0069】
結像レンズ117は、マルチレンズアレイ116からの出射光を表示器120上に結像し、その後段に備えた虚像投射器130に有効な光束として映像光を提供する機能が期待される。虚像投射器130から出射する映像光12が、映像全域で十分に明るく表示されるためには、虚像投射器130が取り込めるF値に対して、表示器120からの光束が十分な広がりを持つ必要がある。そのためには、表示器120から出射する映像光12のF値を、虚像投射器130のF値よりも小さくせねばならない。また、表示器120を出射した光束は、損失しないように効率よく虚像投射器130に取り込まれる必要があるため、表示器120の出射光のF値を不必要に小さくして虚像投射器130に取り込まれない損失光を発生させないようにしたほうが良い。すなわち、虚像投射器130と照明光のF値を一致させると、集光レンズ114から出射した照明光が過不足なくマルチレンズアレイ116を通過し、結像レンズ117は前記照明光を効率よく通過させて表示器120を照明する。表示器120で変調された映像光12のF値、すなわち照明光のF値が結像レンズ117のF値と合わせられているときに、損失が抑えられて効率が最も高くなる。
【0070】
また、光学部品のF値が一定のとき、焦点距離が長くなれば、有効径が大きくなる関係にある。
【0071】
表示器120は、結像レンズ117の後側焦点に略一致させて配置させる場合、光学系の小型化を図るためには、結像レンズ117の焦点距離を短くすることが望ましい。しかし、焦点距離を短くすると曲率半径が小さくなる。曲率半径が小さくなると収差が発生しやすく、光学性能が低下する傾向にあるため、むやみに焦点距離を短くすることができない。また、結像レンズ117は表示器120よりも大きくなければならないため、焦点距離を短くして結像レンズ117の有効径を小さくするにも限界がある。
【0072】
図9Aでは、結像レンズ117が単レンズである構成を示している。結像レンズ117のF値が小さい場合には、結像レンズ117の開口を大きく、焦点距離を短くしなければならない。単レンズで実現するためには曲率半径が小さくなってしまい、幾何的な制約によって結像レンズ117に必要な有効径が得られない場合がある。
【0073】
図9Bでは、結像レンズ117を、2個の結像レンズ117a、117bに分割した構成の一例を示している。ここでは、分割した結像レンズ117a、117bの間に空間がある構成を示しているが、それぞれが一体成型されていてもよいし、接着されて構成されていてもよい。
【0074】
分割した結像レンズ117a、117bの合成焦点距離が、分割前の結像レンズ117の焦点距離と一致させた場合、結像レンズ117a、117bの曲率半径を大きくすることができる。曲率半径が大きくなるとレンズのコバ面を確保しやすく、単レンズで結像レンズ117を構成するよりも、結像レンズ117a、117bの有効径を大きくしやすい。さらに、球面収差も発生しにくくなり、照明光をさらに効率よく表示器120に照明することができる。
【0075】
前記の構成であれば、F値を一定にする場合、有効径を大きくしたまま焦点距離を縮めて小型化できる。逆に、焦点距離が一定のとき、有効径を大きくして取り込み光を増加させることができる。前記の関係があるため、光学系のデザインの自由度を向上することができる利点がある。
【0076】
虚像投射器130のF値と一致させると、照明光を表示器120の全域に照明した後、虚像投射器130が映像光12を過不足なく投射することができるため、損失を抑えて高効率な光学系を提供できる。
【0077】
図10では、結像レンズ117の別の形態を示している。2個の結像レンズ117a、117bに分割し、プリズム117cを挿入した構成を示している。図10では、結像レンズ117a、117bとプリズム117cの間に空間がある構成を示しているが、いずれかの組み合わせ、もしくは全てが一体成型されていても良いし、接着されて構成されていても良い。
【0078】
結像レンズ117a、117bが空間を挟んで配置され合成レンズを構成している場合、空間にプリズム117cを挿入すると、プリズム117cを挿入前の合成レンズの光学性能を維持したまま、結像レンズ117a、117b間を物理的に離すことができる。結像レンズ117a、117bの間を物理的に離すことができると、その間に空間的な余裕を生成でき、光学系のデザインの自由度を改善する利点がある。
【0079】
前記の構成で生成された空間的な余裕を活用して、光軸を折り曲げるなどの機能を備えたプリズム117cと、結像レンズ117a、117bの少なくとも1つ以上を一体化し、かつ光軸を折り曲げる反射面を備えたものをプリズム付き結像レンズ118として利用できる。
【0080】
以上のように、実施例2の構成であれば、結像レンズ117を複数のレンズ面に分割することで曲率半径を大きくできる。これにより取り込み光を増加させ、かつ球面収差を抑えた高効率な照明系を構成し、高効率な虚像投射装置を提供できる。また、プリズム117cを利用すると、光学系のデザインの自由度を向上した虚像投射装置を提供できる。
【実施例3】
【0081】
図11では、実施例3におけるプリズム付き結像レンズ118について詳細を説明する。
【0082】
プリズム付き結像レンズ118は、入射面118aと、光軸を反射する反射面118bと、出射面118cを備えている。プリズム付き結像レンズ118は透明体で構成される。例えば、光学プラスチックなど樹脂で構成されている場合には、金型を用いて射出成型が可能である。射出成型では、プリズムとレンズを一体化して製造できる。これに対し、ガラスレンズとガラスプリズムの組み合わせで構成した場合には、ガラスレンズは球面レンズ以外の曲面では製造コストが増大し、プリズムと一体化するためには光学的な貼り合わせる手間が発生する。さらに、全反射する角度を広げるためには屈折率を高めることが有効であるが、高い屈折率のガラスは、同屈折率の樹脂に比べて高価になる傾向がある。したがって、樹脂を用いて一体成型されたプリズム付き結像レンズ118を用いると、虚像投射装置の製造コストを低減できる利点がある。
【0083】
図11に示したプリズム付き結像レンズ118は、入射面118aが結像レンズ117の光軸に対して傾斜し、出射面118cには非球面レンズを備えた形状で一体成型されている。別の方法として、安価なガラスプリズムの反射面にミラーコートを施し、別の部材として非球面レンズを併用する方法が考えられる。しかし、プリズム付き結像レンズ118を高機能化させようとしたとき、例えば、レンズ面に非球面レンズを用いる場合には、ガラス製の非球面レンズを切削、研磨の工程が高価になり、もしくはガラスモールドで製造する場合には材料の選択肢が少なく高価になる。また、非球面レンズの製造コストに加えて、プリズムと別々の部材となることから、光学性能を得るためにプリズムの張り合わせ面の研磨や、貼り付け位置精度が求められるため製造コストが増大する。一方、樹脂を利用して一体成型する構成であれば、非球面レンズを利用しても、一体成型が可能であるため貼り合わせに必要な工程を省略可能で、射出成型に利用できる材料の選択肢もあり、安価に製造できる利点がある。
【0084】
図11の場合、結像レンズ117は単体で存在しているが、プリズム付き結像レンズ118に備えられた出射面118cのレンズと組み合わせて、合成レンズとして機能する。また、一体成型されるとき、球面レンズに対する非球面レンズの製造コスト増分は金型加工費が大半を占めるため、切削研磨で製造する場合よりも非球面化による製造コスト増分は小さい。したがって、プリズムとレンズを一体化成型することを前提として製造されるプリズム付き結像レンズ118では、出射面118cを非球面レンズとして製造コスト増分を抑え、結像レンズ117は比較的製造コストが安い曲面レンズとする。これにより、結像レンズ117とプリズム付き結像レンズ118の合成レンズとしての光学性能を維持したまま、製造コストを抑えることができる。
【0085】
また、本実施例のプリズム付き結像レンズ118は、入射面118aが結像レンズ117の光軸に対して傾斜している。傾斜の方向は、結像レンズ117の光軸が出射面118c側に屈折する方向であり、反射面118bに対して浅い角度となる光軸を屈折させる。前記構成であれば、光束が全反射しやすくなり、ミラーコートをしなくても光束を漏洩させることなく、照明光を効率よく反射できる。
【0086】
入射面118aは、結像レンズ117の光軸に対してθ1だけ傾斜している。反射面118bはプリズム付き結像レンズ118の出射光軸に対して、θ2だけ傾斜している。θ1及びθ2は、照明光が伝播するように定められる。最も単純な例として、直角二等辺三角形の断面を持つプリズムを使う例が考えられる。図11で例えると、θ1=0°、θ2=45°の場合である。しかし、照明光F値が小さければ、反射面の法線方向に近づいた抜けやすい光束が含まれる場合がある。そこで、θ2を大きくすると、プリズム付き結像レンズ118の出射光軸に対して反射面118bが浅くなり、全反射しやすくなる。出射光軸を入射側にたどると、結像レンズ117の光軸に対して傾斜することがわかる。このとき、結像レンズ117の光軸と、プリズム付き結像レンズ118の出射光軸を直交させようとすると、プリズム付き結像レンズ118の入射面118aを傾斜角度θ1が正になるように傾ければよい。このとき、θ1>0となるため、頂角が90°よりも小さなプリズムとなる。前記の構成であれば、プリズム付き結像レンズ118は入射前と出射後で光軸を90°折り曲げることができるので、照明部13と投射部14を高効率で小型に組み合わせることが可能である。
【0087】
例えば、伝播させる照明光のF値が2.4のとき、プリズム付き結像レンズ118に屈折率1.64以上の樹脂を利用し、θ1=2.57°、θ2=45.5°、となる形状であれば入射光束を漏洩させることなく全反射で出射させることができる。また、曲率半径8.879、コーニック係数-1.823791の非球面レンズとすれば、結像レンズ117と組み合わせてF2.4で表示器120を照明することができる。
【0088】
照明対象となる表示器120の形状は、一般的に横と縦の比率が異なる。横と縦の比率が16:9のとき、表示器120に対して過不足なく照明するために、照明光も略16:9の形状で照明されていることが望ましい。表示器120と照明光のずれを許容させるために、例えば5%ほど照明範囲を大きくするなど、若干のマージンを持たせても良い。照明光のサイズは、結像レンズ117に入射する照明光のF値に依存している。表示器120が位置する平面上で、照明範囲が狭ければ発散角度が狭く、照明範囲が広ければ発散角度が大きい関係にある。言い換えると、照明範囲が狭ければF値が大きく、広ければF値が小さい。すなわち、結像レンズ117に入射する照明光は、横方向と縦方向でF値を異ならせることで、表示器120に過不足なく照明することができ、高効率に照明することができる。
【0089】
表示器120の形状の横と縦の比率が16:9のとき、横方向と縦方向のF値の比率は9:16とすれば、表示器120に入射できない照明光の損失を抑えた高効率な照明を実現できる。結像レンズ117に入射する照明光は、マルチレンズアレイ116からの出射光であり、前記照明光のF値の横と縦の比率は、マルチレンズアレイ116の入射側に備えられたレンズセル116iの形状の比率に依存する。レンズセル116iの横と縦の比率が16:9であれば、有効な画面領域の横と縦の比率が16:9の表示器120を過不足なく高効率に照明できる。
【0090】
また、プリズム付き結像レンズ118は、表示器120の短手方向に光軸を折り曲げる。前記構成にしていれば、表示器120、及び虚像投射器130の光軸と、結像レンズ117の光軸間を短くでき、小型の光学系を提供できる。逆に、表示器120の長手方向に折り曲げたとすると、折り曲げるための空間が大きくなってしまうため、虚像投射器130の光軸と結像レンズ117の距離が長くなるとともに、照明部13の有効径も大きくなってしまうため、本実施例の構成が望ましい。
【0091】
以上のように、実施例3の構成であれば、プリズム付き結像レンズ118が樹脂の一体成型で製造され、非球面レンズとプリズムを貼り合わせる手間を省き、かつ高い屈折率の透明部材を使用し、全反射を利用してミラーコートを省略した、安価なプリズム付き結像レンズ118を提供できる。また、結像レンズ117は球面レンズに、プリズム付き結像レンズ118の出射面118cのレンズを非球面にすることで、光学性能を維持したまま全体の製造コストを低減することができる。前記の構成であれば、安価で小型な虚像投射装置を提供できる。
【実施例4】
【0092】
図12図13では、実施例4における表示器120の変形例について詳細を説明する。表示器120は反射型であって、映像光12を反射部119に反射させて虚像投射器130に導く配置構成について説明する、
【0093】
反射型の表示器120には、例えばLCOSを利用できる。LCOSは、偏光光を照明光として受け、空間的に偏光を変えて映像光を生成する素子である。図12では、P偏光の照明光を透過させるように、反射部119には偏光選択性のある、例えばワイヤーグリッドフィルムを利用することができる。別の方法として、プリズムを備えたPBS(Polarized Beam Splitter)を利用することもできる。反射部119を透過したP偏光の照明光は、表示器120により映像信号に応じて空間的に偏光が変換され、映像光として必要な光がS偏光に変換される。S偏光の映像光は、偏光選択性を持つ反射部119のS偏光を反射する性質によって、虚像投射器130に導かれる。
【0094】
本構成であれば、図13に示すように、表示器120を照明部13と反対の方向に配置できる。表示器120は、映像光12を生成する側ではない背面に、電源供給や信号供給をするための回路基板、放熱や保持を目的とした金属板などが備えられている場合がある。本変形例によれば、表示器120に付随する回路や保持部19などと他の光学部品が干渉することを防いだ配置を可能にする。
【0095】
別の変形例として、表示器120にDMD(Digital Mirror Device)を用いても良い。DMDは、映像画素に相当するマイクロミラーの傾斜がONとOFFを高速に切り替えることで、映像信号に応じた光の濃淡を表現する素子である。偏光に依存しない映像表示素子であるため、反射部119は偏光依存性がない反射ミラーを利用することができる。
【実施例5】
【0096】
図14では、実施例5における映像光結合部15の変形例について詳細を説明する。
【0097】
映像光結合部15は、投射部14内の虚像投射器130が投射する映像光12を入射させたのち、映像光結合部15が備える平面で内面反射させ、導光部11に対して略垂直な方向に映像光12を出射する。映像光12が入出射する光軸方向に対して、映像光結合部15の入射面15aと出射面15cがそれぞれの光軸に対して垂直とすれば、映像光結合部15から出射する映像光12の全域で色分離を防ぐことができる。映像光結合部15は、二等辺三角形を断面とする柱形状であれば製造が容易であり製造コストを抑えることができる。映像光結合部15の反射面15bは、全反射を用いてもよいし、内部を通過する映像光12が反射面の法線に対して臨界角よりも小さい角度で入射する場合には、漏洩による損失を防ぐためにミラーコートをしても良い。
【0098】
ミラーコートを利用すれば、映像光結合部15の屈折率で決定される臨界角の制約を受けず、保持部19のデザインの自由度が向上する利点がある。内面反射で反射して光軸を曲げる角度θpは、照明部13及び投射部14と導光部11の取り付け角度を決める。折り曲げ角度をθpにするとき、映像光結合部15を構成するプリズムの頂角はθpとすればよい。保持部19を利用者3の額に沿って配置する場合には、折り曲げ角度θpを大きく、逆に頭部の側面に沿わせる場合には折り曲げ角度θpを小さくすれば良い。また、利用者3の頭部と、導光部11の法線方向と、視線eと間に角度をつける場合には、その分折り曲げ角度を調整すれば良い。
【0099】
例えば、導光部11の法線と投射部14の取り付け角度が10°のとき、頂角80°のプリズムを利用することができる。
【0100】
実施例5によれば、導光部11を利用者3の目前に配置しながら、保持部19を頭部に沿わせるように配置でき、利用者3にとって装着を容易にする虚像投射装置を提供できる。
【0101】
以上、本発明の各実施例を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0102】
また各実施例では、両眼式ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を取り上げて説明したが、これに限らず、虚像を表示する虚像投射装置であれば本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1:HMD、3:利用者、10:映像表示部、11:導光部、12:映像光、13:照明部、14:投射部、15:映像光結合部、19:保持部、110:光源部、114:集光レンズ、115:色合成部、116:マルチレンズアレイ、117:結像レンズ、118:プリズム付き結像レンズ、119:反射部、120:表示器、130:虚像投射器、1140:光軸。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14