(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】酵素処理プラントおよび酵素処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20220331BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220331BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01F5/00 D
C12M1/02 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114837
(22)【出願日】2020-07-02
(62)【分割の表示】P 2017534001の分割
【原出願日】2015-09-14
【審査請求日】2020-07-16
(32)【優先日】2014-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517089628
【氏名又は名称】アルキマル, アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュペヴォーグ, オラヴ アスル
(72)【発明者】
【氏名】フランツェン, トルステイン
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】ロシア国特許出願公開第02490323(RU,A)
【文献】特表2006-507838(JP,A)
【文献】特開昭62-048375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0115209(US,A1)
【文献】国際公開第2009/113609(WO,A3)
【文献】米国特許出願公開第2007/0241060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00- 5/26
C12M 1/00- 3/10
C12N 11/00-13/00
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
C12P 1/00-41/00
C02F 11/00-11/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続流に基づく魚由来成分の酵素処理のための酵素処理プラントであって、
酵素処理領域を含み、該酵素処理領域が、乱流を発生させて反応混合物を混合しかつ該反応混合物が乱流生成パイプを通って流れているときの粒子の沈殿を防止するための、繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を有する前記乱流生成パイプを含み、
前記乱流生成パイプは、
相互接続された一連の水平な層において、積層型、コイル型または入れ子型に配置された配管であり、
10より大きい概念的繰り返し単位を含み、
全長が少なくとも50mであり、
平均直径が20mm~200mmの範囲内であり、
繰り返し単位の幅p/深さの比率は2より大きく25未満の波形パイプであり、
前記酵素処理プラントおよび前記酵素処理領域が、前記反応混合物を15分以上の反応時間の間、前記酵素処理領域内で乱流に供するように設計されており、
前記乱流生成パイプを通る前記反応混合物の流速が2m/s未満で作動するように設計されており、
前記乱流生成パイプ内の反応混合物の流れは、レイノルズ数が1000未満で乱流である、
プラント。
【請求項2】
前記反応時間が30分超である、請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記乱流生成パイプが、変化する横断面積を有する、請求項1または2に記載のプラント。
【請求項4】
前記乱流生成パイプが波形パイプである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項5】
前記プラントが、前記乱流生成パイプを通る前記反応混合物の流速が1m/s未満である状態で作動するように設計されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項6】
前記乱流生成パイプが、前記乱流生成パイプの内面に付着した固定化酵素の層を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項7】
前記反応混合物の特性を変化させる試薬を導入するための注入地点を含み、好ましくは該試薬が酸、塩基または水である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項8】
前記乱流生成パイプの少なくとも一部を加熱するための熱交換器を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項9】
分離機システムを含み、好ましくは該分離機システムが、油および油溶性成分の流れと、水溶性成分の流れと、沈殿物の流れとを産出するように作動可能な三相分離型デカンター、ならびに/または遠心分離機および/もしくはフィルターを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のプラント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のプラントを装備した船舶。
【請求項11】
乱流生成パイプを含む第1酵素処理領域内に反応混合物を通すことを含む、魚由来成分の酵素処理方法であって、
前記乱流生成パイプが、繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を有し、
前記乱流生成パイプは、
相互接続された一連の水平な層において、積層型、コイル型または入れ子型に配置されており、
10より大きい概念的繰り返し単位を含み、
全長が少なくとも50mであり、
平均直径が20mm~200mmの範囲内であり、
繰り返し単位の幅p/深さeの比率は2より大きく25未満の波形パイプであり、
前記乱流生成パイプにより発生した乱流が、前記反応混合物を混合しかつ前記混合物が前記乱流生成パイプを通って流れているときの粒子の沈殿を防止するために用いられ、
前記反応混合物が、15分以上の反応時間の間、前記第1酵素処理領域内で乱流に供せられ、
前記反応混合物は、乱流生成パイプを通る2m/s未満の流速を有し、
前記乱流生成パイプ内の反応混合物の流れは、1000未満のレイノルズ数で乱流である、
方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のプラントを使用することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1酵素処理領域の下流にある第2酵素処理領域内に前記反応混合物を通すことを含み、
前記第2酵素処理領域内で行われる化学反応が、前記第1酵素処理領域内で行われる化学反応とは異なる、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機分子の酵素処理、例えば有機分子の酵素的加水分解のための、装置および方法に関する。有機分子には、高分子、例えば、タンパク質、脂質および多糖類が含まれる。
【0002】
有機分子の酵素処理は、少なくとも下記プロセスを包含する:(酸化還元酵素による)酸化/還元、(転移酵素による)官能基(例えばメチル基またはリン酸基)の転移、(加水分解酵素による)加水分解、加水分解と酸化とを除く手段による(リアーゼによる)様々な結合の切断、(異性化酵素による)単一分子内での異性化変化、ならびに(リガーゼによる)2分子の共有結合での連結。
【0003】
酵素的加水分解では、酵素が反応の触媒として作用して水の付加によって分子内の化学結合が開裂する。この反応を促進するには、反応混合物の種々の成分(例えば、加水分解される分子、水および適切な酵素を含む原料)を適切な反応条件下で混ぜ合わせなければならない。一例を挙げると、海洋生物源から得られたタンパク質(例えば、藻類または魚由来物質)を加水分解により処理して、(用いる酵素および処理条件に応じて)果ては単一アミノ酸にまで及ぶ多様なペプチドを得ることができる。
【0004】
起こっている反応が加水分解であるかまたは別の形態の酵素処理であるかに拘らず、反応混合物の種々の成分を混合する必要がある。したがって、以下の論述の焦点は加水分解であるものの、技術的考察および本発明自体は、より広く酵素処理に等しく適用できる。
【背景技術】
【0005】
特許文献1には、タンパク質含有原料を加水分解するためのプラントが開示されている。プラントは、反応混合物を搬送しかつ穏やかに混合する回転オーガーを中に備えたパイプを含む、加水分解領域を含む。混合は、乳化物の形成を回避し(またはその程度を最小限に抑え)つつ、酵素と原料との接触を制御するために制御された様式で行わねばならない、ということが認識される。プロセスは、連続プロセスまたは回分プロセスとして実行できる。
【0006】
このような能動的混合は、流れのバルク全体に亘って混合力が均一に分散されないという欠点につながり得る。これは、システム内での機械的応力の集中、および反応混合物の混合の不十分な区域の形成につながり得る。さらに、システムは、オーガーを備えていることによってシステムの複雑さ、重量およびコストが増大するという欠点を有する。加えて、残留物および堆積物がオーガー上に蓄積し得るため、オーガーを定期的に清掃する必要が生じるであろう。しかし、その複雑な形状ゆえに、オーガーの清掃は容易ではない。オーガーを清掃するのに必要な時間と労力は、システムを運転するコストを増大させ、オーガーを清掃する間に必要な中断時間ゆえにその効率を低下させる。
【0007】
特許文献2には、タンパク質の酵素的加水分解のための装置が開示されており、静的混合要素の備わった管内で加水分解が行われる。静的混合要素は、互いに噛み合った金属製またはプラスチック製の留め具を含む。しかし、この装置は、特許文献1に記載されているのと同じ加水分解反応を行うことができないかもしれない、というのも、特許文献2の装置を使用して連続反応プロセスを行うのは可能ではないからである。
【0008】
しかも、静的混合要素は清掃が難しく(長い中断時間および低い効率につながり)、またシステムの複雑さ、重量およびコストを増大させる。その上、静的混合要素が生成する
混合力は、反応混合物流のバルク全体に亘って均一に分散されないかもしれず、結果として反応混合物の混合の不十分な区域の形成につながる可能性がある。
【0009】
したがって、従来技術の問題点に鑑みれば、加水分解領域、より広くは酵素処理プラントの酵素処理領域において種々の試薬を混合する代替手段を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2004/049818号公報
【文献】欧州特許第0566877号明細書
【文献】米国特許第4126517号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、有機分子の酵素処理のための連続流に基づく酵素処理プ
ラントであって:酵素処理領域を含み、酵素処理領域が、乱流を発生させて反応混合物を混合しかつ混合物が乱流生成パイプを通って流れているときの粒子の沈殿を防止するための、繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を有する乱流生成パイプを含み、酵素処理プラントおよび酵素処理領域が、反応混合物を15分以上の反応時間の間、酵素処理領域内で乱流に供するように設計されている、プラントが提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、連続流に基づく有機分子の酵素処理方法であって:乱流
生成パイプを含む酵素処理領域内に反応混合物を通すことを含み、乱流生成パイプが、繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を含み、乱流生成パイプにより発生した乱流が、反応混合物を混合しかつ混合物が乱流生成パイプを通って流れているときの粒子の沈殿を防止するために、用いられ、反応混合物が、15分以上の反応時間の間、酵素処理領域内で乱流に供せられる、方法が提供される。
【0013】
繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を有する乱流生成パイプを使用することによって、可動部品を有する混合機械または特許文献2に示されている類の静的混合要素を必要とすることなく乱流が発生する。パイプ内での乱流による混合は、従来技術でのような撹拌混合機または静的混合機と比べて重要な利点を有し、混合力がバルク全体に亘って分散される。これは、応力の集中および混合の不十分な区域の形成を軽減する。
【0014】
さらに、特許文献2のように送り管内に混合要素を使用する従来技術も、また特許文献3のように波形配管を使用する従来技術さえも、固形粒子の詰まりまたは沈殿のない完全な混合を長時間維持する一方で異種の生物学的基質の連続流を考慮に入れていない。少なくとも15分の長い反応時間、好ましくはより長い反応時間、例えば20分以上、30分以上、または以下に提示するようにそれ以上長い反応時間さえをも考慮に入れることが重要である。当該反応時間は、以下でまた述べるように、遅い流速と十分な長さの配管との組み合わせによって獲得できる。上で言及した従来技術では、連続流プロセスで要求される反応時間を得るには流速が大き過ぎであり配管が短過ぎる。
【0015】
乱流生成パイプを通る乱流の結果として、反応混合物が混合され、プロセスを通じて均一な混合が維持される。また、乱流は沈殿のおそれを軽減する。そうして乱流は、供給原料の実際の粒子組成および流速に応じて反応混合物のより重い相の沈降を完全に防ぐことができる。
【0016】
ある程度の乱流は反応混合物の混合のために重要であるが、パイプ内での剪断力の発生
を軽減する(理想的には最小限に抑える)こともまた望ましいことである。剪断力は、大きすぎる流体速度によって引き起こされ、乳化物の生成に寄与する可能性があり、それは望ましくないことである。
【0017】
乳化物の形成を回避または軽減することは、酵素処理システム(例えば、タンパク質/脂質混合物の加水分解)において重要な検討事項である。乳化物は、乳化物の中に捕捉された供給原料の部分に酵素が接近するのを妨害し、それゆえ酵素処理の効率を低下させる。さらに、乳化物に関する問題は分離段階にまで及ぶ。乳化物中では、脂質は、機械的分離機による分離ができないペプチド材料などの水溶性成分と強固に会合している可能性がある。それゆえ、結果として、例えばタンパク質相中の脂質および/または脂質相中のタンパク質の分離が不十分となり得る。乳化物を後の段階で濾過によって取り出すことはできるが、乳化した成分を回収して非乳化画分とまとめ合わせることは依然としてできない。つまり、特定の装置がなければ、乳化物から水溶性成分を分離してそれらを再び水溶性非乳化画分とまとめ合わせることはできず、また乳化物から脂質および脂溶性成分を分離してそれらを再び非乳化脂質および脂溶性非乳化画分とまとめ合わせることもできない。
【0018】
上記のことから、乳化物を生じることなく反応混合物の良好な混合を得ることは難題であることが理解されよう。その上、固形粒子がパイプに詰まるのを防ぐために流速を最小限に抑えることが要求される。繰り返し変動する横断面および/または中心線を用いる、提案した乱流生成パイプは、従来の静的混合機などに比べて小さな流速でかつ小さな剪断応力で乱流を生成することができる。この種のパイプを長い反応時間および連続流プロセスと組み合わせることで、従来技術では不可能であるか、または複雑で清掃し難くたいてい回分処理に限定される装置を要求する酵素処理を、効果的に行うことが可能である。
【0019】
酵素処理は酵素的加水分解であってもよい。連続流プロセスへの言及は、繰り返しの循環路または回分的処理がなく、反応混合物が連続的に処理プラントに流入して反応生成物が連続的に処理プラントから流出して、処理プラント内の流れが単回通過で起こる、というプロセスを包含することを意図している。反応の特質によっては、部分的にプロセスを通じて連続的に添加されるさらなる原料があってもよく、かつ/または部分的にプロセスを通じて生成物を連続的に取り除いてもよく、例えば油溶性成分を分離機などによって連続的に取り除いてもよい。
【0020】
乱流生成パイプは、管、ホース、またはそれに類似するものであってもよい。それは固いものであっても柔軟性のものであってもよい。酵素処理領域は、反応時間が全体として乱流生成パイプ内で生じるように、単一のパイプからなっていてもよい。あるいは、酵素処理領域は、繋ぎ合わせた多数の乱流生成パイプからなっていてもよい。以下の論述では、総じてパイプを単一のパイプであるかのように述べているが、これは、要求された乱流を発生させるために繋ぎ合わせた多数のパイプ、例えば、断面および/または中心線が同じように変動する同じような多数の断片をも包含すると解釈されるべきである。
【0021】
実現例では、著しい長さのパイプを比較的小さな空間に収容するのを可能にするために、積層型、コイル型および/または入れ子型に配置した配管に乱流生成要素を提供することを含んでもよい。例えば、好ましくは下方すなわち下の層へと向かう流れを有する、相互接続された一連の水平な層が存在してもよい。
【0022】
乱流生成パイプ内、例えば波形パイプ内の流体速度の小さい乱流は、横断面積の変化によってもたらされ得る。流体が拡張部の中を流れるとき、壁に負圧が生じる。圧力勾配は、滑らかなパイプ内の乱流に類似して流れパターンのランダムな崩壊を作る。横断面積は一定であるがパイプに屈曲部、形状を変化させる断面、または螺旋形状がある、という場合にさえ同じ機構が存在する、というのも、壁に沿って流れる流体は経路に沿った拡張を
経験するからである。
【0023】
乱流生成管を使用する場合、直径が等しく滑らかで真っ直ぐなパイプに比べて、より小さな流体速度で乱流を発生させることができる。流れ抵抗は流体速度の2乗に比例するの
で、小さな流体速度での乱流の可能性は、劇的なエネルギー節約につながる。乱流生成パイプの特性は、直径の等しい滑らかなパイプに比べて幾分かの余分な流れ抵抗を引き起こし得るが、小さな流動速度で流れさせる能力の結果として生じる節約を相殺する程のものではない。その上、小さな速度は、所与の加水分解時間にしては管の長さが短くなるという実用上の付加的利点を与える。
【0024】
乱流生成パイプは、特許請求の範囲に記載の横断面積および/または中心線の繰り返し変化がないパイプよりも簡単に乱流を生じるように設計され得る。都合のよいことに、パイプの乱流生成能は閾値レイノルズ数に関して定義され得、それを超えると乱流が生じることになる。簡略化されたモデル(丸い一定の横断面および一定の流体特性を有する真っ直ぐなパイプを通って流れている流体)では、パイプ内の乱流は無次元のレイノルズ数Reによって定量され得、それは次のとおりに定義される:
【0025】
【0026】
ここで、νは流体の平均速度、ρは流体の密度、Dはパイプの直径、μは流体の粘度である。レイノルズ数は、粘性力に対する慣性力の比率として解釈することができる。粘度が増加するかまたは密度が低下する場合、その流れについて設定レベルのレイノルズ数を維持するためには流速を増大させねばならないことが理解されよう。例えば、パイプ形状を同じにして異なる供給原料を使用して乱流を獲得するには異なる流速が要求され得、あるいはパイプ形状を調節して乱流生成特徴の激しさを増大させるのであれば同じ流速が用いられ得る。
【0027】
丸い一定の横断面を有する真っ直ぐなパイプの場合、2300を上回るレイノルズ数において流れが乱流になると想定される。本明細書において記載される乱流生成パイプの場合、より低いレイノルズ数で層流から乱流への遷移が起こる。
【0028】
様々な要件、例えば、沈殿を回避するためには乱流および十分な抗力が必要であるがしかしエネルギー消費を減らし管長さを短くするためにはそれと同時にできる限り小さい速度が必要であるということをバランスさせることで、好ましい範囲のレイノルズ数が得られる。好ましくは、乱流生成パイプ内での反応混合物の流れは、1000未満のレイノルズ数、場合によっては800未満のレイノルズ数、場合によっては600未満のレイノルズ数において乱流となる。したがって、乱流生成パイプは、流れが遷移値を上回る1000未満のレイノルズ数、場合によっては800未満のレイノルズ数、場合によっては600未満のレイノルズ数を有する場合に常に乱流を生むように設計され得る。つまり、好ましいパイプに関して、層流は、1000未満、場合によっては800未満、場合によっては600未満の遷移値を下回る場合にのみ可能となるであろう。
【0029】
反応混合物中の重く移動の遅い固形粒子が乱流生成パイプに詰まるのを回避するために、流速を最小限に抑える必要がある。このことは、乱流のゆらぎに追従するには重すぎて流れの中で減速する固形粒子を考慮することによって、理解できる。パイプ内で固形物を
移動させるには、粒子に作用している流体からの平均抗力が十分に大きくなければならない。実現例では、2m/s未満、場合によっては1m/s未満、場合によっては0.5m/s未満の流速で作動するようにプラントを設計してもよい。
【0030】
乱流生成パイプの平均直径および反応混合物の流速は、十分な乱流および十分な流動速度を与えながらも乳化物の形成を回避するように選択される。
【0031】
固有の直径、流速およびプロセス時間は、供給原料および処理される特定の反応混合物の組成ならびに望まれる最終製品を含めた数々の因子に応じて調節する必要があることが理解されよう。
【0032】
プロセス時間は少なくとも15分であり、少なくとも20分であってもよい。プロセス時間(すなわち、反応混合物が酵素処理領域を走行するのに要する時間)は、典型的には90分~30分、より好ましくは80分~40分、最も好ましくは約50分であろう。勿論、プロセス時間は、供給原料の組成、酵素の効率および濃度、温度、pH、イオン状態および用いる流速などの因子を含めた関係する特定の反応に応じて変動し得る。
【0033】
乱流生成パイプの長さは、所望の流速およびプロセス時間から計算することができる。要求される全処理時間によって管の合計長さが決まるであろうものの、いくつかの場合では、温度、pHおよびイオン状態もしくは基質速度などの反応条件を調節するため、または単にパイプの流路長を所与の設置空間内に収容するために、管すなわち処理領域を介在送液機械があるかまたはない一連の2つ以上の連続区画へと分割することが好ましいかもし
れない。
【0034】
乱流生成パイプ(連結された一連のパイプ)の長さは、少なくとも50m、場合によって
は少なくとも100mであり得る。以下に述べる例から明らかとなるように、長さはこれよりもかなり長くてもよい。提案した設計の特質は、付加的な配管などを処理段階に加える柔軟性を念頭に入れるようなものであり、かつ単一の連続プロセスにおいて非常に長い反応時間を考慮に入れることができるようなものである。
【0035】
横断面は、流れの主方向を横切る断面である。「変化する横断面」は、流れの主方向に沿って、つまりパイプの広がり(長さ)に沿って、変化する面積、変化する形状または、変化する形状と変化する面積との両方を有する、横断面を指す。
【0036】
本発明との関連において、「繰り返し変化する」とは、乱流生成パイプが、パイプに沿った1つの場所で第1の構成(横断面および/または中心線)を有しかつパイプに沿った第2の場所で第2の構成(横断面および/または中心線)を有し、乱流生成パイプがパイプの長さに沿って1つの構成から第2の構成へ、そしてまた元の構成へ、と繰り返し切り替わることを意味する。したがって、乱流生成パイプは概念的に、継ぎ合わせた数々の繰り返し単位を含むものとみなしてもよい。
【0037】
繰り返し単位の数は、典型的には10より大きく、より好ましくは20より大きく、最も好ましくは50より大きい。酵素処理領域に乱流を発生させるための、繰り返し変化する横断面および/または中心線の繰り返し単位をこれらの数で有する乱流生成パイプの使用は、それ自体が新規性および進歩性を有すると考えられ、それゆえ、別の態様において本発明は、有機分子の酵素処理のための連続流に基づく酵素処理プラントであって:酵素処理領域を含み、酵素処理領域が、乱流を発生させて反応混合物を混合しかつ混合物が乱流生成パイプを通って流れているときの粒子の沈殿を防止するための、繰り返し変化する中心線および/または繰り返し変化する横断面を有する乱流生成パイプを含み、酵素処理領域が、繰り返し変化する横断面および/または中心線の繰り返し単位の数が10より大きく、よ
り好ましくは20より大きく、最も好ましくは50より大きい乱流生成パイプまたは継ぎ合わせた多数の乱流生成パイプを含む、プラントを提供する。上記および下記の特徴は、この態様および本明細書に記載されたその他の態様と組み合わせて用いることができる。
【0038】
単位を繰り返す頻度は、1メートルあたり5~200の範囲内、より好ましくは1メートルあたり10~100の範囲内にあり得る。単位を繰り返す頻度は、より好ましくは、1メートルあたり25~75の範囲内にあり得、最も好ましくは1メートルあたり40~60の範囲内にある。
【0039】
繰り返し単位の特性は、それらの深さ(e)および幅(p)に関して定義され得る。繰り返し単位の幅p(または間隔もしくはピッチ)は、繰り返し単位における1つの点と次の繰り返し単位における対応する点との間の距離である(波の波長に類似する)。深さeは、
繰り返し単位の最も外側にある極値点に対する接線と、繰り返し単位の最も内側にある極値点に対する接線との垂直距離である。
【0040】
乱流生成パイプのp/eの比率は、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは1より大き
く、最も好ましくは2より大きい。乱流生成パイプのp/eの比率は、好ましくは50未満、より好ましくは25未満、最も好ましくは10未満である。乱流生成パイプのp/eの比率は、好
ましくは3~6の範囲内にある。
【0041】
上記のとおり、横断面積は繰り返し変化し得る。例えば、横断面は、パイプの長さに沿って減少し、次いで増加し、次いでまた減少し得る(つまり、パイプが収縮、拡張および収縮し得る)などである。横断面は、横断面積を周期的に変化させつつ同じ形状の横断面を維持してもよい、つまり、パイプは波形パイプであってもよい。
【0042】
乱流生成パイプが、変化する横断面積を有する場合、最大横断面積と最小横断面積との差は、平均横断面積の20%~3%、より好ましくは平均横断面積の15%~5%、最も好ましくは平均横断面積の約10%であり得る。
【0043】
あるいは、またさらに、横断面の形状が繰り返し変化してもよい。例えば、横断面は、パイプの長さに沿って円から楕円、そして円へ、などと変化してもよい。横断面にその他の形状、例えば、多角形、ルーローの多角形、カッシーニの卵形線などの卵形、星形などを用いてもよい。横断面は、いかなる急角度の曲がり角(特に内側の曲がり角)も有さないことが好ましい。横断面は、周期的に形状を変えつつ同じ横断面積を維持してもよい。あるいは、横断面積もまた変動してもよい。
【0044】
中心線は、パイプの長さに沿って横断面の幾何学中心を通る連続線である。本出願との関連において、変化しない中心線は、パイプの両端における横断面の中心同士が直線で繋がったもののことである。変化する中心線は、中心線がそのような直線に従わないもののことである。したがって、パイプは、繰り返された多数の屈曲部を有してもよい。パイプは、中心線が螺旋となるように、螺旋形状を有してもよい。
【0045】
いくつかまたは全ての屈曲部は、設置空間内でパイプを前後に走らせるために90°以上の屈曲部、例えば180°の屈曲部であってもよい。これらは、好ましくは大半径の屈曲部
である(好ましくは、曲率半径がパイプの直径の2倍超、パイプの直径の4倍超、またはパイプの直径の6倍超、またはそれ以上である)。そのような大半径の屈曲部を使用するこ
とにより、パイプ内の圧力損失が低減され、それゆえ詰まりのおそれも軽減される。しかしながら、大半径の屈曲部は設置体積を増大させる。当業者であれば、利用可能な設置空間を考慮して屈曲部の曲率半径を選択し得ることを理解するであろう。それゆえ、小さな空間(例えば船舶上など)では、例えば大きな工場に配置された同様のシステムに比べて、屈曲部の曲率半径をより小さくする必要があり得る。
【0046】
また、圧力損失および詰まりが大して問題にならない場合には、より急な角度の屈曲部を使用してもよい。これは実際上、大きな固形粒子の存在しない(詰まりのおそれがないような)流体および(小さな圧力損失につながる)小さな流体速度に適し得る。
【0047】
乱流生成パイプの平均直径は、典型的には20~200mmの範囲内、好ましくは40~100mmの範囲内、最も好ましくは50~90mmの範囲内となるであろう。例えば、乱流生成パイプの平均直径は、約60mm~約80mmであってもよい。
【0048】
パイプが(中心線が螺旋となるような)螺旋形状を有する場合、螺旋状中心線のピッチは、好ましくは10~100mmの範囲内、より好ましくは13~40mmの範囲内、最も好ましくは17~25mmの範囲内とするべきである。
【0049】
また、螺旋形乱流生成パイプを提供することは、反応混合物中に乱流の発生をもたらすと同時に、より長い流路長の乱流生成パイプをより小さな空間内に適合させることも可能にする。ここで、流路長は、螺旋形乱流生成パイプを通って流れが走行する長さ、すなわち、螺旋をほどいてパイプを真っ直ぐにしたときのパイプの長さである。
【0050】
滑らかかつ/または真っ直ぐなパイプの断片を、乱流生成パイプの断片に先行させるかもしくはその後に続けてもよく、または管の屈曲部に連結して使用することもできよう。滑らかで真っ直ぐなパイプは、等しい長さの乱流生成パイプに比べて、流れに対する抵抗が少なく、その結果として生じる圧力損失が少ない。滑らかなパイプを提供する場合、滑らかなパイプの長さは、反応混合物が滑らかなパイプを走行するうちに分離を起こす時間がない程に十分短くすべきである。
【0051】
それは、乱流生成パイプが波形パイプである場合に特に好都合であり、それゆえ、好ましい設計では波形パイプを使用する。
【0052】
波形パイプは、一連の平行な隆起部および溝部(交互になった隆起部および谷部)を表面に有するパイプ、管、またはホースなどであり、隆起部および溝部は、パイプの長さに沿って様々な横断面形状および/または様々な横断面積を生じる。溝部および隆起部は、周囲を取り巻く(環状の)模様に形成されるかまたはパイプの長さに沿ってパイプのまわりに螺旋(渦巻き)模様を描いたものとすることができる。螺旋模様は1つ、2つまたは多数の開始点を有し得る。波形模様は、乱流生成パイプの繰り返し単位を形成する。
【0053】
隆起部および谷部は、(ほぼ)同じ形状を有してもよい(つまり、谷部が隆起部の鏡像または近似的な鏡像になっている)。波形の形状は、正弦波であってもよく、または近似的な正弦波であってもよい。代替的な好ましい実施形態において、波形の形状は(横断面を見た場合)、卵形の形状(例えば卵形、円または楕円)の扇形の周を複数個継ぎ合わせたものに類似し得る。
【0054】
溝部および隆起部は、好ましくは、乱流生成パイプの内側に急角度の曲がり角を有さないべきであり、例えば曲がり角は、好ましくは少なくとも3mm以上、より好ましくは6mm以上の半径を有する。好ましくは、溝部および隆起部は、乱流生成パイプの内側において、隣り合う表面または平面の間で急角度の交差部を何ら有することなく形成されているべきであり、好ましくは90度よりも急角度の交差部を有することなく形成されているべきである。
【0055】
波形パイプは、真っ直ぐでもよく、(第1または第2の態様に関して上述したように)螺旋形状に形成されていてもよく、または(第1または第2の態様に関して上述したように)
繰り返された複数の屈曲部を有していてもよい。
【0056】
波形パイプが複数の屈曲部を有するかまたは螺旋形状に形成されている場合、屈曲部または螺旋形状は、波形パイプ内でのさらなる乱流生成を容易にするために提供され得、または(第1または第2の態様に関して上述したように)より長い流路長の波形パイプが設置空間内に提供され得るために提供され得る。波形パイプは、(例えばコイルばねの形状に似て)きつい螺旋に形作られていてもよい。これは、より長い流路長の波形パイプを設置空間内に提供することを可能にし得る。螺旋は、実質的に水平(つまり、コイルの軸が実質的に水平)であってもよく、または実質的に鉛直(つまり、コイルの軸が実質的に鉛直)であってもよい。勿論、螺旋を鉛直と水平との間のいかなる配向で提供してもよい。
【0057】
乱流生成パイプは、適切な耐食性材料で作られるべきであり、例えばステンレス鋼製であってもよい。好ましい実施形態において、パイプは、食品グレードの耐酸性ステンレス鋼、例えば、ANSI316などの適切なモリブデン合金化ステンレス鋼で作られていてもよい
。
【0058】
乱流生成パイプは、パイプの内面に付着した固定化酵素の層を含み得る。そのような場合、固定化酵素の層を含み得る乱流生成パイプを通る流れが主に液体の流れとなるように、固定化酵素の層は、システムにおいて流れから固形成分を取り出す地点よりも下流側の地点に提供することが好ましい。
【0059】
酵素処理を開始するときにはパイプ内での粘度が変化する場合があり、十分な乱流混合および抗力を維持するために全処理領域を様々な直径の連続的な管区画へと分割することが望ましい場合がある。したがって、(例えば)約30分~1時間の第1酵素処理段階は流れ特性の変化を必然的に伴い得る。これは、酵素処理の様々な段階に、様々な設計およびそれに対応する流速の変化の乱流生成パイプを有することによって、配慮され得る。
【0060】
上記のことから、提案した酵素処理は、工業規模での生物学的材料の酵素処理、例えば加水分解処理の通常の反応時間を考慮に入れるために可動部品を殆ど有さない単純なシステムを提供する、ということが理解されよう。したがって、システムは、同程度の量の反応混合物を処理するように設計された従来技術のシステムに比べてより小さな重量を有し得、より重いシステムを許容できないかもしれないさらなる応用に適するものとなり得る。また、システムは、能動的混合用または静的混合用の構成要素を有する従来技術のシステムに比べて清掃がより簡単である。
【0061】
酵素処理プラントは、酵素処理領域の投入部と連通した、水、原料および酵素を混和する混合ユニットを含み得る。それに対応して、酵素処理方法は、酵素処理の前に、反応混合物を予混合するステップを含み得る。
【0062】
混合ユニットは、原料、水および酵素をまとめ合わせる容器の形をとり得る。混合ユニットの提供は、反応混合物が酵素処理領域に到達する時までに既に反応混合物の大まかな混合(すなわち予混合または部分的な混合)が行われるため好都合である。これは、酵素処理に必要な時間を減らし、原料、酵素および水を非混合状態で酵素処理領域に供給する場合に比べて(所与の流速で)乱流生成パイプの長さをより短くすることを可能にする。したがって、プラントは、密閉空間内、例えば漁船などの船舶内での使用のためにより適している。
【0063】
混合ユニットは密封されていてもよく(つまり、開放型タンクではない)、予混合を密封雰囲気内で行ってもよい。これは、供給原料に触れる酸素の量を減らし、それゆえ供給原料中の成分の望ましくない酸化を少なくした。好ましくは、混合タンクはいかなる顕著
な上部空間をも有しない。
【0064】
酵素処理プラントは、最初の酵素処理が起こる(酵素が第1化学反応を触媒する)第1断片の乱流生成パイプを含んでもよく、さらに、第1化学反応とは異なる第2化学反応を触媒できる新規な酵素の流れを受け入れるように構成された第2断片の乱流生成パイプを含ん
でもよい。第2化学反応には、第1反応に関与した成分とは異なる反応混合物の成分が関与し得る。さらに、プロセスの様々な段階において、様々な種類の酵素が使用され得る。
【0065】
例えば、第1加水分解段階は、供給原料のタンパク質成分を処理し得る。その段階の後
、油溶性画分が反応混合物から分離され得、続いてリパーゼで処理され得る。
【0066】
第2化学反応には、最初の酵素処理の生成物が関与し得る。その1つの例は、先行する第1段階からの(プロテアーゼで処理された)水溶性画分を他のプロテアーゼで処理する第2加水分解段階である。
【0067】
1つの酵素処理から別の酵素処理への遷移時にはいずれも、温度、pHおよびイオン状態
などの反応条件の調節が伴い得る。例えばpHまたはイオン強度に関して反応混合物の特性を調節できる注入地点を提供してもよい。さらに、注入地点は、水の導入を考慮に入れたものであってもよい。これは、酵素は(油溶性でなく)水溶性であるが処理される画分は油系であるという場合に必要となり得る。酵素を油系画分に作用させるためには、懸濁液を形成させて酵素と油系画分との接触を可能にしてもよい。
【0068】
一例を挙げると、第1加水分解段階では、pH約6.5~8.5の範囲内で最もよく働くエンド
ペプチダーゼであるalcalase(Novozymes)が使用され得、第2加水分解段階では、pH2.5
で最もよく働く酸性のプロテアーゼA(天野エンザイム株式会社)が使用され得る。それ
ゆえ、第1加水分解段階は中性pH付近で行われ、その一方で第2加水分解段階は酸性条件下で行われる。
【0069】
各断片において1つ以上の酵素を同時に利用してもよい。例えば、いくつかの実施形態
では、最初の酵素処理の間または、任意もしくは代わりに次の酵素処理段階の間に、プロテアーゼをその他の酵素、例えばリパーゼおよび/またはカルボヒドラーゼなどと一緒に使用してもよい。
【0070】
酵素処理プラントは、使用中に酵素が熱で不活性化(失活または変性)するようにある温度に加熱されるように構成された、乱流生成パイプの断片を含み得る。例えば、魚材料を処理する場合、55℃で最適に機能するプロテアーゼ酵素を使用するのが普通である。この特定のプロテアーゼは、温度を約95℃に上げることによって不活性化する。しかし、別の酵素による処理の前に酵素を失活させることは必須ではない。
【0071】
上に述べたことから、提案した設計にとって、可動部品を有しない効果的な単一の管内での酵素処理を多様な温度で行えることは重要な利点である、ということが理解されよう。パイプの温度は、いかなる適切な熱交換器によって制御および調節してもよい。例えば、パイプを熱交換流体で取り囲み、パイプ内の酵素処理領域内で要求される温度を供給するために熱交換流体をパイプに流しかつ/または加熱もしくは冷却してもよい。二重管式熱交換器が使用され得る。熱交換流体は、例えば蒸気または水とすることができる。
【0072】
各々の断片の長さは、各断片において必要な処理時間を与えるように選択され得る。
【0073】
酵素処理プラントは、分離機システムを含み得る。分離機システムは、例えば脂質から水溶性成分を分離させるように作動可能であり得る。分離機システムは、油(脂質および
油溶性成分)の流れと、水溶性成分の流れと、沈殿物の流れとを産出するように作動可能な三相分離型デカンターを含み得る。分離機システムは、油溶性の流れの中の成分および/または水溶性の流れの中の成分をさらに分離するための1つ以上の遠心分離機を含み得
る。また、分離機システムは、1つ以上のフィルター(例えばモレキュラーシーブまたは
力学的フィルター)を含み得る。
【0074】
供給原料は、油系成分、例えば、魚油、魚肝油、哺乳動物油(例えばアザラシ)、甲殻類油(例えばオキアミ)および軟体動物油(例えばイカ)、ならびに海洋性および淡水性の藻類、酵母または油糧種子に存在する油を含み得る。
【0075】
酵素処理プラントには、最初の処理からの産出物、例えば脂質流と、脂質を改変するためのリパーゼの添加とを受け入れるように構成された、乱流生成パイプのさらなる断片が備わっていてもよい。
【0076】
酵素処理プラントには、油系成分を浄化するための清浄機が備わっていてもよい。
【0077】
酵素処理プラントには、反応混合物の固形成分を分離および乾燥させるための分離機システムおよび乾燥機が備わっていてもよい。固形成分は、例えば、不溶性タンパク質、骨、甲殻類の殻(炭水化物および/またはキチン質を含む)であり得る。
【0078】
不溶性タンパク質を残りの固形成分から分離させるために、何らかの形態の分離機システム(例えばフィルター)を使用してもよい。その後、不溶性タンパク質および残りの固形成分は、引き続き(例えばさらなる酵素処理段階において)別々に処理され得る。
【0079】
システム内に存在するあらゆる乳化成分は、フィルターを使用して主流から分離され得、また固形画分中にも含まれて乾燥機内で乾燥処理され得る。
【0080】
例えば供給原料が魚材料を含有する場合、少なくともいくらかの固形成分(乳化成分も含み得る)を乾燥させて例えば骨粉または魚粉を形成させてもよく、それを動物用飼料または肥料などの製品に使用してもよい。
【0081】
酵素処理プラントには、酵素処理ステップにおいて少なくともいくらかの固形成分と固形成分を処理するための酵素とを受け入れるように構成された、乱流生成パイプのさらなる断片が備わっていてもよい。例えば、オキアミなどの甲殻類を処理する場合、固形成分は(甲殻類の殻に由来する)キチン質を含むであろう。このキチン質は、酵素的加水分解ステップにおいてキチナーゼで処理してもよい。
【0082】
このように、酵素処理プラントの上記構成要素は、モジュール式システム、すなわち多段階すなわち多数のステップを有するシステムとして提供され得る。そのようなシステムは、数々の異なる製品を産出するように構成され得る。そのようなモジュール式システムにおいて乱流生成パイプの提供は有益であるが、必須とは考えられない。これらの概念は、単独で特許性があると見なされる。乱流生成パイプ、より広くは上記の酵素処理領域は、以下の態様に記載する酵素処理領域として好適に含まれ得る。
【0083】
したがって、本発明のさらなる態様は、反応混合物を酵素処理するためのモジュール式酵素処理プラントを製造する方法であって、要求される酵素処理プロセスを決定することを含み、そして:
酵素処理プラント内へ反応混合物を送り込むためのポンプ;
第1段階の酵素処理を行うための第1酵素処理領域;
水溶性成分、油溶性成分および固形成分の流れを分離するためのデカンターを含む分離
機システム
を提供することによって、モジュール式部品一式から適切な酵素処理プラントを製造することを含み;
当該方法がさらに:
要求される酵素処理プロセスを行える処理プラントに下記の構成要素の各々:フィルター;第2酵素処理段階;第3酵素処理段階;分離機システム後段階;流れ分割段階;および流れ統合段階が必要であるか否かを検討することを含み;
さらに、必要な構成要素を該モジュール式プラントに含めることを含む、方法を提供する。
【0084】
方法は、第2酵素処理段階を提供することを含み得る。第2酵素処理段階は、第1酵素処
理段階の下流に提供され得、かつ、使用時に第2酵素処理段階が第1酵素処理領域からの反応産出物の少なくとも一部を受け入れるように第1酵素処理領域と連通するように構成さ
れ得る。
【0085】
方法は、第3酵素処理段階を提供することを含み得る。第3酵素処理段階は、第2酵素処
理段階の下流に提供され得、かつ、使用時に第3酵素処理段階が第2酵素処理領域からの反応産出物の少なくとも一部を受け入れるように第2酵素処理領域と連通するように構成さ
れ得る。
【0086】
方法はさらに、必要な処理を提供できる処理プラントに下記の分離機システム後段階の各々:さらなる酵素処理段階、乾燥機、または清浄機が必要であるか否かを検討することを含み得る。方法は、分離機システム後段階を提供することを含み得る。
【0087】
(1つ以上の)第2および/もしくは第3処理段階、または(1つ以上の)さらなる処理段階は、分離機システムの下流に提供され得、かつ、使用時に第2および/または第3酵素処理段階が分離機システムからの下記産出物のうちの1つを受け入れるように分離機システ
ムと連通するように構成され得る:水溶性成分の流れ、油溶性成分の流れ、または固形成分。
【0088】
方法は、固形成分を乾燥させるための乾燥機を提供することを含み得る。方法は、油溶性成分を浄化するための清浄機を提供することを含み得る。
【0089】
方法は、流れを2つ以上の流れへと分割する流れ分割段階を提供することを含み得る。
プラントは、使用時に2つ以上の流れを下流側の種々の段階で処理するかまたは1つ以上の流れをそれより前の段階に戻し得るように、構成され得る。
【0090】
流れ分割段階は、第1酵素処理段階の後、第2酵素処理段階の後、第3酵素処理段階の後
、または分離機システムの後に提供され得る。
【0091】
方法は、使用時にプラント内で下流からの流れとそれより前の流れとを統合する、流れ統合段階を提供することを含み得る。
【0092】
流れ統合段階は、第1酵素処理段階の前、第2酵素処理段階の前、第3酵素処理段階の前
、分離機システムの前、または乾燥機の前に提供され得る。
【0093】
方法は、段階内での反応条件を改変するために、化学物質を導入するための注入地点を当該段階よりも前に提供することを含み得る。注入地点は、第1酵素処理段階の前、第2酵素処理段階の前、第3酵素処理段階の前、または分離機システムの前、または乾燥機の前
に提供され得る。
【0094】
方法は、段階を加熱または冷却するための熱交換器を提供することを含み得る。
【0095】
方法は、第1酵素処理段階の上流に密閉型混合チャンバを提供することを含み得る。混
合チャンバは、反応混合物を第1加水分解段階での最適な酵素作用に適した温度にするた
めに、熱交換器によって加熱してもよい。あるいは、またさらに、供給原料に熱水を添加することによって反応混合物を要求される温度(またはそれに近い温度)にしてもよい。混合チャンバ内で酵素を反応混合物に直接添加する実施形態では、酵素が熱水で失活(変性)しないように、反応混合物の温度を失活温度未満に保つことに注意しなくてはならない。そのような問題を回避するには、酵素を混合チャンバ内に添加するのではなく、代わりに第1酵素処理段階の開始時に注入地点を通じて酵素を反応混合物に添加してもよい。
【0096】
方法は、分子の大きさが所与の大きさ以上である成分を反応混合物から分離するためのフィルターを提供することを含み得る。
【0097】
また、反応混合物中の有機化合物の酵素処理のための酵素処理プラントを作るための部品一式であって:酵素処理プラント内へ反応混合物を送り込むためのポンプ;第1段階の
酵素処理を行うための第1酵素処理領域;ならびに水溶性成分、油溶性成分および固形成
分の流れを分離するためのデカンターを含む分離機システムを含み;かつ
部品一式がさらに:フィルター;第2酵素処理段階;第3酵素処理段階;;流れ分割段階;流れ統合段階;注入地点;混合チャンバ;清浄機;および乾燥機のうちの1つ以上を含
む、部品一式にまで、本発明の範囲が及ぶ。
【0098】
好ましい実施形態において、部品一式は、モジュール式酵素処理プラントを製造する上記方法の要件を満たすべく選択された部品を含む。上記のとおり、部品一式は、本発明のこれより前の態様に関して記載した酵素処理領域を含み得る。
【0099】
上記の全ての態様および好ましい設計の際立った利点は、システム内の酸素を最小限に抑え得るかまたは少なくとも従来技術のシステムに比べて少なくし得るという意味でシステムが閉鎖型システムとして作動し得る点である。好都合なことに、あらゆる油成分の酸化がそれによって軽減され得る。閉鎖型システムは、開放型タンクおよび開放された液面を有さないことが好ましい(つまり、混合タンクなどのいかなるタンクも、顕著な上部空間を少しも有さないことが好ましい)。
【0100】
上記のいずれかの実施形態の装置または方法を船上で使用してもよい。したがって、本発明の範囲は、提供した酵素処理プラントを装備した船舶および、船上で上記の酵素処理を行うことを含む方法にまで及ぶ。乱流生成管および、混合チャンバの使用は、要求される装置の大きさおよび重量の低減に寄与することができ、それは船上での使用のために重要な利点である。さらに、船上で使用するための装置または方法は、好ましくは、いかなる開放形タンクまたはその他の開放された液面も有さずにシステムを作動させることを含む。これはさらなる利点を提供する、というのも、液面揺動のおそれおよびそれがもたらす船の不安定性のために船上では一般に、いかなる開放された液面も防ぐべきであるからである。
【0101】
これより図面を参照して特定の好ましい実施形態を単なる例としてより詳しく説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1C】
図1Cは、屈曲部を有する乱流生成パイプの部分を示す。
【
図1D】
図1Dは、変化する横断面形状を有する乱流生成パイプの部分を示す。
【
図1E】
図1Eは、螺旋状波形模様を有するパイプの横断面図である。
【
図2】
図2は、波形パイプの深さおよび幅のパラメータを示す。
【
図3】
図3は、酵素処理のためのモジュール式プラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1Aは、波形乱流生成パイプの部分を示す。パイプは、直径が約60mmであり、波形深さeが約6mmであり、p/eが約13である。そのようなパイプでは、おおよそ800超のレイノルズ数で乱流が起こる。
【0104】
図1Bは、螺旋形乱流生成パイプの部分を示す。パイプの直径は約60mmである。螺旋状中心線のピッチは20mmであり、螺旋状中心線の曲率半径は1.5mmである。
【0105】
図1Cは、屈曲部を有する乱流生成パイプの部分を示す。
パイプは、約60mmの辺を有する正方形の横断面を有する。屈曲部の角度は15°~30°の範囲内にある。
【0106】
図1Dは、変化する横断面形状を有する乱流生成パイプの部分を示す。パイプは、円形の横断面から楕円形の横断面へと変化する。横断面積は約2800mm
2である。
【0107】
図1Eは、螺旋状波形模様を有するパイプの横断面図であり、螺旋は単一の開始点を有している。
【0108】
図2は、波形パイプの波形のピッチ(幅)pおよび深さeを示す。
【0109】
図3は、有機分子の酵素処理のためのモジュール式プラントを示す。この事例では、プ
ラントは、タンパク質-脂質混合物中のタンパク質を加水分解するためのものである。加水分解のためのプラントの使用は例示的なものであり、本発明に対して限定を加えるものではない。同様の装置をいかなる多段階酵素処理に使用してもよいことは明らかであろう。さらに、この事例では、システムによって処理される原料は魚である。しかしながら、魚の処理のためのプラントの使用は例示的なものであり、本発明に対して限定を加えるものではない。別の原料を使用して同様の装置を使用してもよいことは明らかであろう。提案した装置を使用するプロセスのさらなる例を以下に示す。
【0110】
各段階で使用する特定の酵素(したがって反応条件)は、原料および得られる生成物に依存するものであり、適宜選択することができる。
【0111】
プラントは、反応混合物を第1加水分解段階へ注入する前に予混合するための混合チャ
ンバを含む。原料を受け入れるための投入部と次の加水分解プラントの断片に連結されるための産出部とを除けば、混合チャンバは反応混合物に接触する酸素の量を減らすために密閉されており、無視できるほど小さい上部空間を有する。これは、供給原料中に存在する油の酸化を軽減する。混合チャンバは、反応混合物を第1加水分解段階での最適な酵素
作用に適する温度にするために、熱交換器によって加熱される。
【0112】
魚、水およびプロテアーゼは、混合チャンバ内で混合および加熱される。混合後、反応混合物はポンプで第1加水分解段階の中に送り込まれる。ここで、反応混合物中のタンパ
ク質は、加水分解されて高分子量ペプチドを形成する。第1加水分解段階は、平均直径が46mmであり複数の180°屈曲部を有し曲率半径が200mmである波形パイプである。
【0113】
第1加水分解段階では、反応混合物は下記の特性を有する:
密度ρ=1000kg/m3
粘度μ=0.02Ns
レイノルズ数Re=800
平均速度ν=0.35m/s
所与の直径での体積流速は下記で与えられる:
【0114】
【0115】
上記のパラメータ値の場合、これは2.1m3/hの体積流速を与える。第1加水分解段階の全長は1km程度であり、処理時間は1時間程度である。
【0116】
第1加水分解段階の終端に向かって波形パイプは、プロテアーゼを失活(変性)させる
のに十分高い温度に加熱される。
【0117】
第1加水分解段階からの流れは、ポンプを使用して分離機システムへと送り込まれる。
分離機システムは、油(脂質および油溶性成分)の流れと、水溶性成分の流れと、固形成分とを産出するように作動可能な三相分離型デカンターを含む。
【0118】
分離機システムからの固形成分(主に骨)は、2つの別個の方法で処理される。固形物
の一部は、乾燥機へと(例えば図示されていないコンベアによって)送られ、乾燥処理されて魚粉を形成する。魚粉はシステムの製品として産出される(システムの有用な産出物は暗い色の矢印で示されている)。固形物のもう1つの部分は、さらなる処理のためにさ
らなる酵素処理段階へと(例えば図示されていないコンベアによって)送られる。
【0119】
さらなる酵素処理段階は、反応混合物のpHまたはイオン特性を酵素の最適機能条件に適するように改変するための投入手段(網掛けした矢印として示される)を含む。さらなる酵素処理の生成物は、さらなる乾燥機(図示せず)内で乾燥処理された後にシステムの製品として産出される。
【0120】
分離機システムからの油溶性成分もまた、2つの別個の方法で処理される。油溶性成分
の一部は、油を浄化する清浄機へと(図示されていないポンプを使用して)送られる。浄化された油は、遠心分離機およびフィルター(図示せず)を使用して部分成分に分けられ、結果として生じる成分はシステムの製品として産出される。油溶性成分のもう1つの部
分は、(図示されていないポンプを使用して)脂質加水分解段階へと送られ、リパーゼで処理される。脂質加水分解段階は、反応混合物のpHまたはイオン特性をリパーゼの最適機能条件に適するように改変するための(網掛けした矢印として示される)投入手段を含む。さらに、投入手段は、水の導入を考慮に入れたものである。このことは、リパーゼが(油溶性でなく)水溶性であるがゆえに必要である。例えば、リパーゼを脂質に作用させるために、懸濁液を形成させてリパーゼと脂質との接触を可能にしてもよい。そのようなプロセスでは、効率的に混合するがしかし乳化物の形成を最小限に抑える乱流生成パイプを提供することが有用である。リパーゼ処理の生成物はシステムの製品として産出される。
【0121】
分離機システムからの水溶性成分もまた、2つの別個の方法で処理される。高分子量ペ
プチド成分の一部は、(図示されていないフィルターを使用して)濾取され、製品として
システムから産出される。残りの部分は第2加水分解段階へと投入される。
【0122】
第2加水分解段階は、反応混合物のpHまたはイオン特性を第2のプロテアーゼの最適機能条件に適するように改変するための(網掛けした矢印として示される)投入手段を含む。プロテアーゼは、高分子量ペプチド成分を加水分解して中分子量ペプチド成分を形成させる。第2加水分解段階の終端に向かって第2加水分解段階は、プロテアーゼを失活させるのに十分高い温度に加熱される。
【0123】
フィルターを使用して第2加水分解段階から中分子量ペプチド成分の一部が濾取され、
製品としてシステムから産出される。残りの部分は第3加水分解段階へと投入される。
【0124】
第3加水分解段階は、反応混合物のpHまたはイオン特性を第3のプロテアーゼの最適機能条件に適するように改変するための(網掛けした矢印として示される)投入手段を含む。プロテアーゼは、中分子量ペプチド成分を加水分解して低分子量ペプチド成分を形成させる。
【0125】
第3加水分解段階の終端に向かって第3加水分解段階は、必要に応じて、プロテアーゼを失活(変性)させるのに十分高い温度に加熱され得る。
【0126】
第3加水分解段階から反応混合物が分離機システムへと送られ、それは残留するあらゆ
る固形物または油溶性成分から低分子量ペプチド成分を分離させる。あらゆる固形成分は乾燥機(または酵素的骨処理段階)へと戻され、あらゆる油成分は脂質加水分解段階(または清浄機)へと戻される。低分子量ペプチド成分はシステムから産出される。
【0127】
当業者であれば、これらの構成要素の全てが必須であるとは限らず、原料および望まれる最終製品に応じてこのシステムの要素の組み合わせが用いられることを理解するであろう。
【0128】
また、処理プラントを他の処理のために同様に用いてもよく、それは、比較的長い反応時間を要するいかなるプロセスにも利点を与える。以下の例において種々の可能なプロセスを提示する。
【0129】
加水分解プロセス例1
プロセスは、そのままの鰯(アンチョビ)を6mmダイですり潰したものをAlcalase(Novozymes)と共に、原料/水の比を50/50(w/w)として反応温度60℃で使用する。目標%DH=17(%DH=切断されたペプチド結合の数/合計のペプチド結合の数)であり、酵素製造者からの情報をもとにして見積った反応時間は45分である。添加した酵素は、添加した水を除いて原料(w.w)の0.1%(d.w)である。プラントは、1時間あたり7MTの容量で運転
し、そのうち3.5MTが魚であり3.5MTが水である。管長さは863mとなるであろう。
【0130】
補足情報 この事例では、大きな骨粒子は存在せず、したがって硬質粒子の沈殿による詰まりのおそれは小さい。管の全長は、全体を通じて形状および直径が類似したものであるが、進むにつれて粘度が低下する。詰まりに対する安全防御として入口から1/3の長さ
のところに増圧ポンプを取り付ける。ペプチドの濃度はタンパク質加水分解が進むにつれて時間とともに増加する。ペプチドは乳化剤として作用する可能性があり、管に沿った乳化物の形成を回避することが重要である。
【0131】
反応混合物の特性:
密度ρ=1000kg/m3
粘度μ=25cP(入口)
選択した流れ特性:
レイノルズ数Re=1125
平均速度ν=0.32m/s
これらのパラメータを用いると直径D=88mmが得られる。
上記のパラメータ値の場合、この例での体積流速は7m3/hである。
【0132】
加水分解プロセス例2
この例は、Protamex(Novozymes)を使用して加水分解される鮭の頭部と背骨を使用す
る。酵素濃度は、原料(w.w)の0.1%(d.w)である。50℃の反応温度で処理する前に、
原料を6mmダイですり潰し、原料/水の比50/50(w/w)に混合する。目標加水分解度%DH
=10(%DH=切断されたペプチド結合の数/合計のペプチド結合の数)であり、酵素製造者からの情報をもとにして見積った反応時間は30分である。
【0133】
補足情報 大きな骨粒子が存在するこの事例において、加水分解ユニットの最適構成は、管の詰まりを生じる骨粒子の沈殿のおそれが小さい最初の部分(1/3)である(比較的
粘度が高いため)。プロセスが進行するにつれて、粘度は減少し、詰まりのおそれが大きくなる。したがって、この実施形態では、繋がり合った異なる3つの管直径によって加水
分解ユニットを構築する。
【0134】
加水分解ユニットのパイプ入口、中間長さおよびパイプ出口におけるパラメータを下記に示す。
反応混合物の特性:
密度ρ=1000kg/m3
粘度μ=23cP、17cPおよび9cP
選択した流れ特性:
レイノルズ数Re=1035、1655、3620
平均速度ν=0.23m/s、0.32m/s、0.43m/s
【0135】
これらのパラメータを使用すると、開始部でD=104mm、中間部分で88mm、最終部分で76mmの直径が得られる。合計管長さは586であり、137mの最初の部分、192mの中間部分、お
よび257mの最終部分に分かれる。断片2の前および断片3の前には増圧ポンプが存在するであろう。
この例での体積流速は7m3/hとなるであろう。
【0136】
加水分解プロセス例3
この事例では、Alcalase(Novozymes)により鮭の骨格および頭部を処理した加水分解
物を、風味が最適化され苦みが少なくなるように特別に考案されたエキソペプチダーゼ/エンドペプチダーゼ複合物であるFlavourzyme(Novozymes)を使用する第2加水分解によ
って、さらに処理する。10%の乾燥物を含有するように加水分解物を希釈したが、そのうち主な部分を占めるのはタンパク質である(おおよそ90%)。基質は実質的に脂質を含まない。反応時間は20分であり、反応温度は55℃である。酵素濃度は原料(w.w)の0.1%(d.w)である。
【0137】
補足情報 この事例では、基質は粒子も脂質も存在せず自由に流動する液体であり、それゆえ、詰まりまたは乳化物形成のおそれがない。粘度はプロセス管の全体に亘って低く、当該プロセス管の構造は全体に亘って類似している。
【0138】
以下の計算例は、作動しているシステムに典型的であり得るパラメータの値を使用する。
反応混合物の特性:
密度ρ=1040kg/m3
粘度μ=6.5cP
選択した流れ特性:
レイノルズ数Re=1811
平均速度ν=0.09m/s
【0139】
これらのパラメータの使用はパイプ直径D=125mmを与える。管長さは109mである。
上記のパラメータ値の場合、体積流速は4m3/hである。