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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20220331BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20220331BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220331BHJP
【FI】
E04B1/86 D
E04B2/56 643J
B32B7/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020126044
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2018540012の分割
【原出願日】2017-01-30
(65)【公開番号】P2020190191
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】20165069
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】518266071
【氏名又は名称】フラメリー オーユー
【氏名又は名称原語表記】FRAMERY OY
【住所又は居所原語表記】Patamaenkatu 7, 33900 Tampere Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ハルフォース サム
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-002408(JP,A)
【文献】特開2015-229839(JP,A)
【文献】特開平10-121600(JP,A)
【文献】特開2013-194475(JP,A)
【文献】特開昭62-225662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/86,1/82
E04B 2/56
E04H 1/12,1/14
B32B 5/32,7/02
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話ブース壁構造(200,300,500)であって、
音響効果を有する内面を形成するように、及び音を減衰させるように構成され、多孔質材を有する少なくとも一つのレイヤー(20,20a-c)を備える、第1の制振要素(A)と;
音を遮断するように構成され、金属を有する少なくとも一つのレイヤー(30)を備える、第1の遮断要素(B)であって、前記金属を有する少なくとも一つのレイヤー(30)の面密度は5~15kg/mである、第1の遮断要素(B)と;
音響効果を有する内面を形成するように、及び/又は音を減衰させるように構成され、多孔質材を有する少なくとも一つのレイヤー(40,40',50)を備える、第2の制振要素(C)と;
音を遮断するように構成される少なくとも一つのレイヤー(60)を備える、第2の遮断要素(D)と;
を備え、
前記第2の制振要素(C)はエアーレイヤーである第5のレイヤー(50)を備える、
壁構造。
【請求項2】
前記第1の遮断要素(B)の前記少なくとも一つのレイヤー(30)は0.5mmから2mmの厚さを有する、請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記第1の制振要素(A)の前記少なくとも一つのレイヤーは、フェルト、気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、テント地、テント地で覆われた素材、またはこれらを組み合わせたもの、のいずれかを備える、請求項1又は2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記第1の制振要素(A)の前記少なくとも一つのレイヤーは、前記壁構造の最初のレイヤーであり、その後ろに、前記壁構造の他のレイヤーや要素が配される、請求項3に記載の壁構造。
【請求項5】
前記第5のレイヤーは、前記第2の制振要素(C)の前記少なくとも一つのレイヤーと、前記第2の遮断要素(D)との間に存在する、請求項1から4のいずれかに記載の壁構造。
【請求項6】
前記第5のレイヤーは、前記第2の制振要素(C)の前記少なくとも一つのレイヤーを覆うように存在する、請求項1から5のいずれかに記載の壁構造。
【請求項7】
前記第1の遮断要素(B)は前記第1の制振要素(A)の次に配され、前記第2の制振要素(C)は前記第1の遮断要素(B)の次に配され、前記第2の遮断要素(D)は前記第2の制振要素(C)の次に配される、請求項1から6のいずれかに記載の壁構造。
【請求項8】
構造の両端にフレーム要素(10)を有する、請求項1から7のいずれかに記載の壁構造。
【請求項9】
前記壁構造の両端に支持要素(70,80)を有し、
前記第5のレイヤーは、前記壁構造の一端の前記支持要素から、前記壁構造の他端の前記支持要素まで延在する、
請求項1から8のいずれかに記載の壁構造。
【請求項10】
前記第5のレイヤーは、電気配線の通路として構成される、請求項1から9のいずれかに記載の壁構造。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の壁構造を備える、電話ブース。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の壁構造(200,300,400,500)を製造する方法であって、
前記第1の制振要素(A)を準備するステップと;
前記第1の遮断要素(B)を準備するステップと;
前記第2の制振要素(C)を準備するステップと;
前記第2の遮断要素(D)を準備するステップと;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は全体的に壁の構造に関する。限定するわけではないが、本願は特に、防音や音響特性改善に関する壁構造に関し、また比較的小さな空間のための壁構造に関する。
【背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
これまで、防音の目的のために、壁の材質や構造に関して様々なものが開発されてきた。また、吸音パネルや吸音繊維など、空間の音質や音特性を改善するための様々な音響表面材が開発されてきた。
【0004】
オープンプラン式のオフィスの電話ブースや会議室のような小さな空間においては、空間的な制限のために、防音や音質は最も重要な事項であり、また制御することが難しい事項である。
【0005】
防音や音響特性改善に関する既存のソリューションは、しばしば高価であり、また導入することが困難なものである。さらにこれらのソリューションはしばしば分厚く扱いづらく、多くの空間を必要とするものである。
【0006】
本発明は、コンパクトで、且つ防音空間内で適切な音質を確保しうる防音壁構造を提供することにより、先行技術の不満足な点を軽減することを目的とする。
【摘要】
【0007】
本発明の例の様々な側面が特許請求の範囲に提示されている。
【0008】
本発明の第1の例示的側面によれば、次のような壁構造がもたらされる。この壁構造は、
音響効果を有する内面を形成するように、及び/又は音を減衰させるように構成される少なくとも一つのレイヤーを備える、第1の制振要素と;
音を遮断するように構成される少なくとも一つのレイヤーを備える、第1の遮断要素(B)と;
音響効果を有する内面を形成するように、及び/又は音を減衰させるように構成される少なくとも一つのレイヤーを備える、第2の制振要素と;
音を遮断するように構成される少なくとも一つのレイヤーを備える、第2の遮断要素と;
備え、前記第1の制振要素及び前記第2の制振要素は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む。
【0009】
前記第1の遮断要素の前記少なくとも一つのレイヤーは金属を含んでもよい。
【0010】
前記第2の遮断要素の前記少なくとも一つのレイヤーは0.5mmから2mmの厚さ(好ましくは1mm)を有してもよい。
【0011】
前記第2の遮断要素の前記少なくとも一つのレイヤーは、ベニヤ板、ハードボード、プラスチック、複合材、金属、またはこれらを組み合わせたものいずれかを有してもよい。
【0012】
前記第2の遮断要素の前記少なくとも一つのレイヤーは5mmから15mmの厚さ(好ましくは9mm)を有してもよい。
【0013】
前記第1の制振要素は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第1のレイヤーと、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第2のレイヤーとを備えてもよい。
【0014】
前記第1のレイヤーの密度は50~250kg/mであり、好ましくは150~250kg/mであり、最も好ましくは200kg/mであってもよく、前記第2のレイヤーの密度は10~100kg/mであり、好ましくは30~50kg/mであり、最も好ましくは40kg/mであってもよい。
【0015】
前記第1のレイヤーの厚さは5mmから15mm(好ましくは10mm)であってもよく、前記第2のレイヤーの厚さは30mmから50mm(好ましくは40mm)であってもよい。
【0016】
前記第2の制振要素は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第4のレイヤーと、エアーギャップを有する第5のレイヤーとを備えてもよい。
【0017】
前記第2のレイヤーの密度は10~150kg/mであり、好ましくは60~100kg/mであり、最も好ましくは80kg/mであってもよい。
【0018】
前記第4のレイヤーの厚さは20mmから40mm(好ましくは30mm)であってもよく、前記第5のレイヤー(50)の厚さは5mmから15mm(好ましくは10mm)であってもよい。
【0019】
前記壁構造は、その両端にフレーム要素を有してもよい。
【0020】
本発明の第2の例示的側面によれば、上記の第1の例示的側面に従う壁構造を備える電話ブースが提供される。
【0021】
本発明の第3の例示的側面によれば、上記の第1の例示的側面に従う壁構造を製造する方法が提供される。この方法は、
フレーム要素を準備するステップと;
前記第1の制振要素を準備するステップと;
前記第1の遮断要素を準備するステップと;
前記第2の制振要素を準備するステップと;
前記第2の遮断要素を準備するステップと;
を含む。
【0022】
本発明の様々な側面や実施形態を提示したが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。これらの実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられたに過ぎない。いくつかの実施形態は、本発明の特定の例示的側面を使ってのみ説明されるかもしれない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の例示的実施形態をより明確に理解しうるように、添付図面を参照しつつ更なる説明が提供される。
【0024】
図1】本発明のある実施形態が使用される電話ブースの例の概念図である。
【0025】
図2】本発明のある実施形態に従う壁構造の断面の概略図である。
【0026】
図3】本発明のある実施形態に従う壁構造の断面の更なる概略図である。
【0027】
図4】本発明のある実施形態に従う壁構造の断面の更なる概略図である。
【0028】
図5】本発明のある実施形態に従う壁構造の断面の更なる概略図である。
【0029】
図6】本発明のある実施形態に従う壁構造を製造する方法のフローチャートである。
【図面の詳細な説明】
【0030】
本発明及びその利点は、図1から6を参照することにより理解されうる。本明細書において、同じような符号は同じような要素又はステップを示す。
【0031】
図1は、本発明のある実施形態が使用される電話ブースの例の概念図である。電話ブース100は、壁120とドア140とを有する。本発明のある実施形態に従う壁構造200(図2)が、電話ブース100の壁120に用いられてもよい。本発明のある実施形態に従う壁構造200はまた、追加の構造として既存の壁の表面に装備されてもよく、それによって、その既存の壁が存在する空間の音響特性の改善や制音能力の改善が図られてもよい。更に、本発明に従う壁構造200は、様々な種類の機械に用いられることもでき、例えば、車両の中やエンジンルームの中、カプセルの中、ハウジングやケース等に使われることができる。
【0032】
図2は、本発明のある実施形態に従う壁構造200の断面の概略図である。この断面は、壁に垂直な方向の断面を示しており、壁が設置される空間の内側が図の下側に、外側が図の上側に、示されている。壁構造200は、第1の制振要素Aと、第1の遮断要素Bと、第2の制振要素Cと、第2の遮断要素Dとを有する。これらの構造や機能については後述する。壁構造200は更に、その構造の両端にフレーム要素10を有する。ある実施形態において、フレーム要素10は、ベニヤ板、ハードボード、プラスチック、複合材、金属、又はこれらの組み合わせのような材料からできていてもよい。実施形態によっては、フレーム要素10の材料は、後述するような特性を有するものであってもよい。
【0033】
実施形態によっては、壁構造200は、その両端にサポート要素70,80を備えていてもよい。実施形態によっては、サポート要素70,80は、ベニヤ板、ハードボード、プラスチック、複合材、金属、又はこれらの組み合わせのような材料からできていてもよい。実施形態によっては、サポート要素70,80は、フレーム要素10に一体化されていてもよい。
【0034】
図2や、壁構造200の要素A,B,C,Dのレイヤーを図示している。要素A,B,C,Dは、音響特性の改善や防音効果を提供するように構成されている。実施形態によっては、壁構造200のこれらのレイヤーや要素は、例えば糊のような既存の手段で互いに接合させられていてもよい。
【0035】
壁構造200の内面から説明を始めると、第1の制振要素Aは、第1のレイヤー(又は内面)20aを有する。レイヤー20aは、音響特性改善や防音効果を提供する。第1のレイヤー20は、多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、所望の音響特性を有する音響内壁面を形成する。すなわち、空間の音響特性を改善するために、特定の音声周波数を通過させるように構成されている。第1のレイヤー20aは耐摩耗性を有し、空気を通すことができる。すなわち「呼吸する」。実施形態によっては、第1のレイヤー20aの材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、テント地、テント地で覆われた素材、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第1のレイヤー20aの密度は50~250kg/mであり、好ましくは150~250kg/mであり、最も好ましくは200kg/mである。
【0036】
壁構造200の第1の制振要素Aは、第1のレイヤー20aの次に、第2のレイヤー(又は内側制振レイヤー)20bを有する。レイヤー20bは、音響特性改善や防音効果を提供する。第2のレイヤー20bは多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、音を吸収したり減衰させたりするように構成される。実施形態によっては、第2のレイヤー20bの材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第2のレイヤー20bの密度は10~100kg/mであり、好ましくは30~50kg/mであり、最も好ましくは40kg/mである。
【0037】
壁構造200の第1の遮断要素Bは、第2のレイヤー20bの次に、第三のレイヤー(又は遮断レイヤー)30を有する。レイヤー30は、音響特性改善や防音効果を提供する。第三のレイヤ30は、音を遮断するように構成される材料からなる。実施形態によっては、第三のレイヤー30の材料は、金属であるか、中質繊維版(Medium-Density Fiberboard ;MDF)である。実施形態によっては、第三のレイヤーの材料の面密度は5~15 kg/mである。実施形態によっては、第三のレイヤー30の材料は、スチール、鉛、または銅である。実施形態によっては、第三のレイヤー30は、図2に描かれるように、サポート要素70と80に挟まれる。
【0038】
壁構造200の第2の制振要素Cは、第三のレイヤー30の次に、第四のレイヤー(又は外側制振レイヤー)40を有する。レイヤー40は、音響特性改善や防音効果を提供する。第四のレイヤー40は多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、音を吸収したり減衰させたりするように構成される。実施形態によっては、第四のレイヤー40の材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第四のレイヤー40の密度は10~150kg/mであり、好ましくは60~100kg/mであり、最も好ましくは80kg/mである。
【0039】
壁構造200の第2の制振要素Cは、第四のレイヤー40の次に、第五のレイヤー(又はエアーレイヤー)50を有する。レイヤー50は、音響特性改善や防音効果を提供する。第五のレイヤー50はエアーギャップである(又はエアーギャップを含む)。このエアーギャップは、第四のレイヤー40と共に、音を減衰させる減衰エアーギャップを形成する。
【0040】
壁構造200の第2の遮断要素Dは、第五のレイヤー50の次に、第六のレイヤー(又は画面)60を有する。レイヤー60は、音響特性改善や防音効果を提供する。第六のレイヤー60は、壁構造200の外側の表面を形成する。第六のレイヤー60は、音を遮断するように構成される材料から形成されてもよい。ある実施形態において、第六のレイヤー60の材料は、ベニヤ板やハードボード、プラスチック、複合材、金属、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第六のレイヤー60の材料は、後述するような特性を有するものであってもよい。実施形態によっては、壁構造200は、上述の要素の間に、音を減衰させるように設けられる一つ又は複数の追加のエアーギャップを有していてもよい。実施形態によっては、エアーギャップ50や上述の追加のエアーギャップは、音を減衰させることの他に、電気配線などを配するために使われてもよい。
【0041】
壁構造200が図1の電話ブース100に使用されるような実施形態において、フレーム要素10、外側レイヤー60、サポート要素70,80の材料は、特定の特性を有するものであってもよい。実施形態によっては、この材料は、表面に垂直な方向の弾性係数がおよそ5500N/mm以上であり、表面に平行な方向の弾性係数がおよそ7000N/mmであり、曲げ強度がおよそ33 N/mmである。
【0042】
本発明に従う壁構造200は、防音能力や必要な音響特性を保ちつつ、コンパクトなサイズを実現する。このため、壁構造の各レイヤーのサイズは、壁構造200の厚さが50~150mmになるように(好ましくは80-120mmになるように、更に好ましくは約100mmになるように)、選択される。一つの例ではあるが、実施形態によっては、第1から第6のレイヤーの厚さは次の通りになる。

厚さ 範囲(mm) 好適な厚さ(mm)
第1のレイヤー20a 5-15 10
第2のレイヤー20b 30-50 40
第3のレイヤー30 0.5-2(金属), 7-12(MDF) 1(金属), 9(MDF)
第4のレイヤー40 20-40 30
第5のレイヤー50 5-15 10
第6のレイヤー60 5-15 9
【0043】
図3は、本発明のある実施形態に従う壁構造300の断面の更なる概略図である。フレーム要素10、サポート要素70,80、第3~第6のレイヤー30~60は、図2を参照して既に説明したような構造を有している。壁構造300の第1の制振要素は、その内側表面に、第1のレイヤー又は内面20を有する。この第1のレイヤー又は内面20は、制振レイヤーである。制振レイヤー20は、図2で説明された第1のレイヤー20aや第2のレイヤー20bの代わりに、音響特性改善や防音効果を提供する。
【0044】
第1のレイヤー20は、多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、所望の音響特性を有する内壁面を形成する。すなわち、空間の音響特性を改善するために、特定の音声周波数を通過させるように構成されている。更に第1のレイヤー20は、音を吸収したり減衰させたりするように構成される。実施形態によっては、第1のレイヤー20は耐摩耗性を有し、空気を通すことができる。すなわち「呼吸する」。実施形態によっては、第1のレイヤー20の材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第1のレイヤー20の密度は10~250kg/mであり、好ましくは30~200kg/mである。
【0045】
図4は、本発明のある実施形態に従う壁構造400の断面の更なる概略図である。フレーム要素10、サポート要素70,80、第1~第3のレイヤー20a~30、第6のレイヤー60は、図2を参照して既に説明したような構造を有している。壁構造400の第2の制振要素は、第四のレイヤー(又は外側制振レイヤー)40'を有する。レイヤー40'は、音響特性改善や防音効果を提供する。レイヤー40'は、第3のレイヤーから第6のレイヤーの間の範囲に存在する。レイヤー40'と第6のレイヤー60との間には、図2に描かれるようなエアーギャップ50は存在しない。
【0046】
第四のレイヤー40'は多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、音を吸収したり減衰させたりするように構成される。実施形態によっては、第四のレイヤー40'の材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、第四のレイヤー40'の密度は10~150kg/mであり、好ましくは60~100kg/mであり、最も好ましくは80kg/mである。
【0047】
図5は、本発明のある実施形態に従う壁構造500の断面の更なる概略図である。フレーム要素10、サポート要素70,80、第1~第6のレイヤー20a~60は、図2を参照して既に説明したような構造を有している。壁構造500の第1の制振要素Aは、第1のレイヤー20aと第2のレイヤー20bの間に、追加レイヤー(又は第2の内側制振レイヤー)20cを有する。追加レイヤー20cは、音響特性改善や防音効果を提供する。
【0048】
追加レイヤー20cは多孔質又はオープンセル型の材料から形成されており、音を吸収したり減衰させたりするように構成される。実施形態によっては、追加レイヤー20cの材料は、フェルトや気泡ゴム、ポリエステル繊維、グラスウール、ロックウール、ミネラルウール、またはこれらを組み合わせたものいずれかでありうる。実施形態によっては、追加レイヤー20cの密度は30~150kg/mであり、好ましくは50~100kg/mであり、最も好ましくは75 kg/mである。
【0049】
当業者は、図2から図5を参照してここに説明された実施形態の特徴は、図示されない別の実施形態にも組み合わせ可能であることは理解されたい。例えば、図2に例示される壁構造を有するがエアーギャップ50を有さないような実施形態にも組み合わせ可能である。更に、壁構造200,300,400,500の第1の遮断要素Bや第2の遮断要素Dは、実施形態によっては、例示されたように単一のレイヤーではなく、複数のレイヤーから構成されていてもよい。更に、第1の遮断要素の第3のレイヤー30は、例えば鉄のプレートであってもよいが、実施形態によっては、複数のレイヤーからなる積層構造を有していてもよい。
【0050】
更に、ここに例示される壁構造の実施は、垂直壁としての実施に限られない。例えば、天井や床のような、水平的な構造としても実施可能である。
【0051】
図6は、本発明のある実施形態に従う壁構造を製造する方法のフローチャートである。ステップ610では、フレーム要素10が準備される。ステップ620では、要素A-Dのレイヤー20a~60が、それぞれ既存の手法で取り付けられていく。
【0052】
請求項に係る発明の技術的範囲やその解釈、その適用の仕方を限定するものではないが、本願が開示する一つ又は複数の実施例の技術的効果を一つ挙げると、それは、小さな空間のためのコンパクトな構造を提供することである。本願が開示する一つ又は複数の実施例の技術的効果を別に一つ挙げると、それは、壁のために優れた防音機能を提供することである。本願が開示する一つ又は複数の実施例の技術的効果を更に一つ挙げると、それは、防音機能を犠牲にせずに、小さな空間のための優れた音響効果を提供することである。
【0053】
添付の特許請求の範囲の独立請求項には、本願が開示する技術思想のいくつかの側面が示されている。しかし、本願が開示する技術思想の別の側面には、明細書や図面にのみ開示される特徴や従属請求項に記載される特徴が、独立請求項に記載の特徴と組み合わされて、含まれることがある。そのような組み合わせの中には、請求項には定義されていないものもある。
【0054】
本願が開示する技術思想の例示的な実施形態を説明してきたが、これらの説明は、当該技術思想を限定するような意味で捉えられるべきではない。むしろ、請求項に特定される発明が、その範囲を逸脱せずに様々な実施形態を取り得ることを示すものである。
【0055】
最後に、本願の原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載されていた実施形態を次に載せておく。
[1]壁構造であって、
音響効果を有する内面を形成するように、及び/又は音を減衰させるように構成される少なくとも一つのレイヤー(20,20a-c)を備える、第1の制振要素(A)と;
音を遮断するように構成される少なくとも一つのレイヤー(30)を備える、第1の遮断要素(B)と;
音響効果を有する内面を形成するように、及び/又は音を減衰させるように構成される少なくとも一つのレイヤー(40,40',50)を備える、第2の制振要素(C)と;
音を遮断するように構成される少なくとも一つのレイヤー(60)を備える、第2の遮断要素(D)と;
を備え、前記第1の制振要素(A)及び前記第2の制振要素(C)は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む、壁構造。
[2]前記第1の遮断要素(B)の前記少なくとも一つのレイヤー(30)は金属を有する、[1]に記載の壁構造。
[3]前記第2の遮断要素(B)の前記少なくとも一つのレイヤー(30)は0.5mmから2mmの厚さ(好ましくは1mm)を有する、[2]に記載の壁構造。
[4]前記第2の遮断要素(D)の前記少なくとも一つのレイヤー(60)は、ベニヤ板、ハードボード、プラスチック、複合材、金属、またはこれらを組み合わせたものいずれかを有する、[1]から[3]のいずれかに記載の壁構造。
[5]前記第2の遮断要素(D)の前記少なくとも一つのレイヤー(60)は5mmから15mmの厚さ(好ましくは9mm)を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の壁構造。
[6]前記第1の制振要素(A)は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第1のレイヤー(20a)と、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第2のレイヤー(20b)とを備える、[1]から[5]のいずれかに記載の壁構造。
[7]前記第1のレイヤー(20a)の密度は50~250kg/m3であり、好ましくは150~250kg/m3であり、最も好ましくは200kg/m3であり、
前記第2のレイヤー(20b)の密度は10~100kg/m3であり、好ましくは30~50kg/m3であり、最も好ましくは40kg/m3である、
[6]に記載の壁構造
[8]前記第1のレイヤー(20a)の厚さは5mmから15mm(好ましくは10mm)であり、
前記第2のレイヤー(20b)の厚さは30mmから50mm(好ましくは40mm)である、
[6]又は[7]に記載の壁構造。
[9]前記第2の制振要素(C)は、多孔質又はオープンセル型の材料を含む第4のレイヤー(40)と、エアーギャップを有する第5のレイヤー(50)とを備える、[1]から[8]のいずれかに記載の壁構造。
[10]前記第4のレイヤー(40)の密度は10~150kg/m3であり、好ましくは60~100kg/m3であり、最も好ましくは80kg/m3である、[9に記載の壁構造。
[11]前記第4のレイヤー(40)の厚さは20mmから40mm(好ましくは30mm)であり、
前記第5のレイヤー(50)の厚さは5mmから15mm(好ましくは10mm)である、
[9]または[10]に記載の壁構造。
[12]構造の両端にフレーム要素(10)を有する、[1]から[11]のいずれかに記載の壁構造。
[13][1]から[12]のいずれかに記載の壁構造(200,300,400,500)を備える、電話ブース。
[14][1]から[12]のいずれかに記載の壁構造(200,300,400,500)を製造する方法であって、
フレーム要素(10)を準備するステップと;
前記第1の制振要素(A)を準備するステップと;
前記第1の遮断要素(B)を準備するステップと;
前記第2の制振要素(C)を準備するステップと;
前記第2の遮断要素(D)を準備するステップと;
を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6