(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】操作を位相制御するための原子量子ビットの光制御
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20220331BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G06N10/00
G02F3/00
(21)【出願番号】P 2020528923
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019012296
(87)【国際公開番号】W WO2019136213
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】モンロー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】セティナ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】リンケ ノルベルト
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0064108(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0262765(US,A1)
【文献】国際公開第2017/111949(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/072806(WO,A2)
【文献】J. J. Garcia-Ripoll ほか,Fast and robust two-qubit gates for scalable ion trap quantum computing,arXiv.org [online],v1,2003年06月01日,[検索日 2022.03.08], インターネット:<URL:https://arxiv.org/abs/quant-ph/0306006>,DOI: 10.1103/PhysRevLett.91.157901
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子量子ビット(キュービット)を光制御するための方法であって、
キュービット操作を識別するステップと、
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップであって、前記光ビームは、位相不感応構成に構成され、前記光ビームは、前記キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動不感応である場合、共伝搬光ビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動感応である場合、対向伝搬光ビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記原子キュービットが、イオントラップによって形成された結晶内の原子イオンに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶内のN個の原子イオンに対して個別にアドレス指定する最大でN個のラマンビームであって、前記個別にアドレス指定するラマンビームのそれぞれに複数の光周波数を有する、ラマンビームと、前記個別にアドレス指定する前記最大でN個のラマンビームに対する単一のグローバル対向伝搬ラマンビームを含むように、前記光ビームを構成するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キュービット操作は、拡張量子計算における多重キュービット操作のうちの1つであり、前記拡張量子計算の全体にわたって前記位相不感応構成が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される前記光ビーム内の前記場を制御するステップは、前記原子キュービットのうちの前記少なくとも1つにおけるキュービットレベルのACシュタルクシフトを補償するために、前記光ビームの偏光を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ACシュタルクシフトを補償するために、前記光ビームを偏光することは、前記ACシュタルクシフトをバランスさせ、量子操作の実行に関連する異なるタイプのキュービットゲートを可能にするように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光ビームの偏光は、動的偏光、静的偏光、またはこれらの組合せである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光ビームがラマンビームであるように構成するステップをさらに含み、前記構成するステップは、単一の光周波数コムから、および/または光源を変調する結果として、または位相ロックされた複数の位相コヒーレント源から、前記ラマンビームを生成するステップを含み、前記単一の光周波数コムの複数のトーンまたは歯の間の位相安定性は、前記光源に直接フィードバックするロック技術を用いて維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの前記少なくとも1つに印加される前記光ビーム内の場を制御するステップは、前記光ビームの幾何学形状、スペクトル、または偏光のうちの1つまたは複数をさらに制御するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記キュービット操作は回転操作であり、前記光ビームは、前記回転操作を可能にするように構成されたヘリシティを有する一方で、ACシュタルクシフトの少なくとも一部分を相殺する共伝搬光ビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘリシティは、σ
+偏光とσ
-偏光との間に不均衡を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
原子量子ビット(キュービット)を光制御するための量子情報処理(QIP)システムであって、
光ビームを生成する1つまたは複数の光源と、
光学コントローラと、
を備える、量子情報処理(QIP)システムにおいて、前記光学コントローラは、
キュービット操作を識別し、
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するように構成され、
前記光ビームは、位相不感応構成に構成され、前記光ビームは、前記キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む、量子情報処理(QIP)システム。
【請求項15】
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動不感応である場合、共伝搬光ビームを含む、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項16】
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動感応である場合、対向伝搬光ビームを含む、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項17】
イオントラップをさらに備え、前記原子キュービットが、前記イオントラップによって形成された結晶内の原子イオンに対応する、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項18】
前記光学コントローラは、結晶内のN個の原子イオンに対して個別にアドレス指定する最大でN個のラマンビームであって、前記個別にアドレス指定するラマンビームのそれぞれに複数の光周波数を有する、ラマンビームと、前記個別にアドレス指定する前記最大でN個のラマンビームに対する単一のグローバル対向伝搬ラマンビームを含むように、前記光ビームを構成するように、さらに構成される、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項19】
前記キュービット操作は、拡張量子計算における多重キュービット操作のうちの1つであり、前記拡張量子計算の全体にわたって前記位相不感応構成が使用される、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項20】
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される前記光ビーム内の場を制御するように構成された前記光学コントローラは、前記原子キュービットのうちの前記少なくとも1つにおけるキュービットレベルのACシュタルクシフトを補償するために、前記光ビームの偏光を制御するようにさらに構成される、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項21】
前記光学コントローラは、前記光ビームがラマンビームであるようにするために、単一の光周波数コムから、および/または1つの光源を変調する結果として、または位相ロックされた複数の位相コヒーレント源から、前記ラマンビームを生成するように構成するようにさらに構成され、前記単一の光周波数コムの複数のトーンまたは歯の間の位相安定性は、前記1つの光源に直接フィードバックするロック技術を用いて維持される、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項22】
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの前記少なくとも1つに印加される前記光ビーム内の場を制御することは、前記光ビームの幾何学形状、スペクトル、または偏光のうちの1つまたは複数をさらに制御することを含む、請求項14に記載の量子情報処理(QIP)システム。
【請求項23】
原子量子ビット(キュービット)を光制御するための量子情報処理(QIP)機器であって、
キュービット操作を識別するための手段と、
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するための手段と、
を備える、量子情報処理(QIP)機器において。
前記光ビームは、位相不感応構成に構成され、前記光ビームは、前記キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む、量子情報処理(QIP)機器。
【請求項24】
前記原子キュービットが、イオントラップによって形成された結晶内の原子イオンに対応する、請求項23に記載の量子情報処理(QIP)機器。
【請求項25】
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動不感応である場合、共伝搬光ビームを含み、または
前記光ビームは、前記キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動感応である場合、対向伝搬光ビームを含む、請求項23に記載の量子情報処理(QIP)機器。
【請求項26】
原子量子ビット(キュービット)を光制御するために、プロセッサによって実行可能な命令を有するコードを記憶する計算機可読媒体であって、
キュービット操作を識別するためのコードと、
前記キュービット操作を位相制御するために、前記原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するためのコードと、
を備える、計算機可読媒体において、
前記光ビームは、位相不感応構成に構成され、前記光ビームは、前記キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む、計算機可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2019年1月3日に出願された「操作を位相制御するための原子量子ビットの光制御」と題する米国特許非仮出願第16/239,319号、および2018年1月4日に出願された「操作を位相制御するための原子量子ビットの光制御」と題する米国特許仮出願第62/613,608号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府実施許諾権)
本発明は、インテリジェンス高等研究計画活動(Intelligence Advanced Research Projects Activity:IARPA)によって与えられたW911NF-16-1-0082に基づく政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示の態様は、一般に、量子システムに関し、より具体的には、量子論理ゲートに印加されるように、またキュービット間の一般化相互作用に関連して、制御場によって媒介される原子量子ビット(キュービット)上の量子位相をコヒーレントに制御する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
トラップされた原子は、量子情報処理の主要な実施の1つである。原子ベースのキュービットは、量子メモリとして、量子計算機およびシミュレータの量子ゲートとして使用でき、量子通信ネットワークのノードとして機能することができる。トラップされた原子イオンベースのキュービットは、属性の稀有な組合せを享受する。例えば、トラップされた原子イオンをベースとするキュービットは、非常に良好なコヒーレンス特性を有し、ほぼ100%の効率で準備および測定することができ、光場またはマイクロ波場などの適切な外部制御場とのクーロン相互作用を変調することによって、互いに容易にエンタングルし合う。これらの属性によって、量子計算または量子シミュレーションのような拡張量子操作に対する原子ベースキュービットが魅力的なものになる。しかしながら、キュービット位相の同期、安定性、および制御は、拡張量子操作の性能にとって極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、原子ベースのキュービット操作において、位相を制御できるようにする技法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は、そのような態様の基本的な理解を提供するために、1つまたは複数の態様の簡略化した概要を提示する。この概要は、すべての企図された態様の広範な概観ではなく、すべての態様の主要なまたは重大な要素を識別することも、任意または全部の態様の範囲を線引きすることも意図されていない。その目的は、以下に提示されるより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の態様のいくつかの概念を簡略化された形態で提示することである。
【0007】
本開示は、レーザビームを使用して、トラップされた原子イオンの結晶内で、キュービット操作を制御するための技術を記載する。適用された場のいくつかの自由度と、原子キュービット構造によって、トラップされたイオンキュービットに適用される種々の量子操作の位相を制御できるようになることを説明する。
【0008】
本開示の一態様では、原子量子ビット(キュービット)を光制御するための方法が記載され、この方法は、キュービット操作を識別するステップと、キュービット操作の位相制御のために、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップとを含み、光ビームは、位相不感応構成に構成され、光ビームは、キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む。
【0009】
本開示の別の態様では、原子キュービットを光制御するための量子情報処理(QIP)システムが記載され、このシステムは、1つまたは複数の光源と、光学コントローラとを含み、光学コントローラは、キュービット操作を識別するように構成され、キュービット操作の位相制御のために、原子キュービットのうちの少なくとも1つに適用される光ビーム内の場を制御し、光ビームは、位相不感応構成に構成され、光ビームは、キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、原子キュービットの光制御のためにプロセッサによって実行可能な命令を有するコードを記憶する計算機可読媒体であり、この媒体は、キュービット操作を識別するためのコードと、キュービット操作の位相制御のために原子キュービットのうちの少なくとも1つに適用される光ビーム内の場を制御するためのコードとを含み、光ビームは、位相不感応構成に構成され、光ビームは、キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む。
【0011】
本明細書では、操作を位相制御するために、原子量子ビットを光制御することに関連する様々な態様のための方法、機器、および計算機可読記憶媒体を説明する。
【0012】
添付の図面は、いくつかの実施態様のみを示しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本開示の態様に従って、原子イオンを線形結晶にトラップするための電極を収容する真空チャンバの図を示す。
【
図1B】本開示の態様に従って、状態初期化のためのレーザ放射線の印加を示す低減エネルギー準位図の一例を示すダイアグラムである。
【
図1C】本開示の態様に従って、蛍光を介したキュービット状態検出のためのレーザ放射線の印加を示す低減エネルギー準位図の一例を示すダイアグラムである。
【
図2A】本開示の態様によるラマンビーム幾何学形状の一例を示すダイアグラムである。
【
図2B】本開示の態様に従って、キュービット状態を結合するコヒーレント誘導ラマン遷移を示すエネルギー準位図を示すダイアグラムである。
【
図3A】本開示の態様による共伝搬光ビームの一例を示すダイアグラムである。
【
図3B】本開示の態様による対向伝搬光ビームの一例を示すダイアグラムである。
【
図4】本開示の態様による計算機装置の一例を示すダイアグラムである。
【
図5】本開示の態様による方法の一例を示すフロー図である。
【
図6A】本開示の態様による量子情報処理(QIP)システムの一例を示すブロック図である。
【
図6B】本開示の態様による光学コントローラの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成を説明することを意図しており、本明細書で説明される概念が実施され得る唯一の構成を表すことを意図していない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供ことを目的として、特定の詳細を含む。しかしながら、これらの概念は、これらの特定の詳細なしに実施されてもよいことは、当業者には明らかであろう。場合によっては、そのような概念を曖昧にすることを避けるために、周知の構成要素をブロック図の形態で示す。
【0015】
上述のように、トラップされた原子は、量子情報処理を実施するために使用されてもよい。原子ベースのキュービットは、量子メモリ、量子計算機およびシミュレータにおける量子ゲート、および量子通信ネットワークのためのノードとして、様々なタイプの装置として使用できるが、これらに限定されない、トラップされた原子イオンベースのキュービットは、非常に良好なコヒーレンス特性を有することができ、ほぼ100%の効率で準備および測定することができ、光場またはマイクロ波場などの適切な外部制御場とのクーロン相互作用を変調することによって、互いに容易にエンタングルし合うことができる。本開示で使用されるように、用語「原子イオン」、「原子」、および「イオン」は、トラップ内に閉じ込められるか、または実際に閉じ込められて、結晶または同様の配置もしくは構成を形成する粒子を説明するために、互換的に使用されることもある。本開示は、トラップされた原子イオンの結晶内でキュービット操作を制御するために、レーザビームを使用するための方法またはプロセスおよび装備または機器の形式の技術を記載する。これらの技術を利用して、適用された場と原子キュービット構造のいくつかの自由度を説明することができ、トラップされたイオンキュービットに適用される種々の量子操作の位相の制御が可能になる。キュービット位相の同期、安定性、および制御は、量子計算または量子シミュレーションで使用されるような拡張量子操作の性能にとって重要である。
【0016】
量子情報および計測目的に使用される典型的なイオントラップの幾何学形状または構造は、線形無線周波数(RF)パウルトラップ(RFトラップ、表面トラップ、または単にパウルトラップとも呼ばれる)であり、近くの電極は、静的および動的電位を保持し、これが、イオンの効果的で不均一な高調波閉じ込めにつながる。RFパウルトラップは、電場を使用して、特定の領域、位置、または場所に荷電粒子をトラップまたは閉じ込めるタイプのトラップである。原子イオンがこのようなトラップで極低温までレーザ冷却されると、原子イオンはキュービットの静止結晶(例えば、キュービットの構造化配列)を形成し、クーロン斥力が外部閉じ込め力と釣り合う。イオンは、十分なトラップ異方性のために、閉じ込めの弱い方向に沿って線形結晶を形成することができ、これは、量子情報および計測学における応用に典型的に採用される構成である。
【0017】
図1Aは、線形RFパウルトラップを用いて、線形結晶110内に原子イオンをトラップするための電極を収容する真空チャンバ100の部分図を示す。
図1Aに示す例では、量子システム内の真空チャンバは、20個のイッテルビウムイオン(例えば、
171Yb
+イオン)をトラップするための電極を含み、これらのイオンは、線形結晶110内に閉じ込められ、ほぼ静止状態になるようにレーザ冷却されている。この例では、20個の原子イオンが示されているが、トラップされる原子イオンの数は構成可能であり、トラップされる原子イオンの数は、20個より多くても、あるいは少なくてもよい。これらの原子は、
171Yb
+の共鳴に同調させたレーザ放射で照射され、原子イオンの蛍光がカメラ上に画像化される。この例では、原子イオンは、蛍光によって示されるように、互いに約5ミクロン(μm)の距離115だけ離れている。原子イオンの分離は、外部閉じ込め力とクーロン反発力との間のバランスによって決定される。
【0018】
個々のトラップ原子イオンの強い蛍光は、光子の効率的なサイクルに依存し、したがって、イオンの原子構造は、運動のレーザ冷却、キュービット状態の初期化、および効率的なキュービット読み出しを可能にする強い閉じた光学遷移を有さなければならない。これは、アルカリ土類金属(Be
+、Mg
+、Ca
+、Sr
+、Ba
+)と、特定の遷移金属(Zn
+、Hg
+、Cd
+、およびYb
+)のように、単一の外殻電子を有するシンプルな原子イオンを除いて、多くの原子イオン種を除外する可能性がある。これらの原子イオン内では、量子ビットは、2つの安定な電子準位によって表すことができ、しばしば、2つの状態│↑>および│↓>、または同等に│1>および│0>を有する有効スピンによって特徴付けられる。
図1Bおよび
図1Cは、原子イオン
171Yb
+に対する低減エネルギー準位
図120および150をそれぞれ示し、ここで、キュービットレベル│↑>および│↓>130は、基底電子状態における安定な超微細準位によって表され、周波数ω
0/2π=12.642812GHzだけ分離される。
171Yb
+の励起電子状態│e>および│e’>140は、それ自身がより小さな超微細結合によって分裂し、369.53nmの光波長に対応するエネルギーを有する光間隔だけ基底状態から隔てられている。
【0019】
これらの光学遷移における共振直下で調整されたレーザ放射によって、ドップラーレーザ冷却がトラップの底部近くに原子イオンを閉じ込めることを可能になる。他のより洗練された形態のレーザ冷却は、原子イオンをトラップ内でほぼ静止させることができる。
【0020】
二色性レーザビーム(例えば、光変調から生じる側波帯によって生成される2つのトーンを有するビーム)が、│↑>⇔│e>遷移および│↓>⇔│e’>遷移の両方と共鳴して原子に印加されると、それは、速やかに│↓>状態になり、もはや光場と相互作用せず、本質的に100%の忠実度でキュービットの初期化を可能にする(例えば、
図1B参照)。
【0021】
│↑>⇔│e>遷移と共鳴する単一のレーザビームが印加されると、閉サイクル光学遷移は、│↑>状態のイオンを強く蛍光を発するが、│↓>状態のイオンは、レーザ周波数がその共鳴から離れているので、暗いままである(例えば、
図1C参照)。この蛍光のごくわずかな部分の収集ですら、ほぼ完全な効率または精度で原子キュービット状態の検出を可能にする。他の原子種も同様の初期化/検出スキームを有することができる。
【0022】
図1Bおよび
図1Cでは、励起電子状態│e>および│e’>140からの許容されるすべての遷移が、下向きの波打った矢印として示されている。一方、印加されたレーザ放射(上向きの直線矢印として示されている)は、これらの遷移を駆動して、
図1Bに示されているように│↓>状態に初期化し、また
図1Cに示されているようにキュービット状態の蛍光を検出する(│↑>=蛍光、│↓>=蛍光なし)。
【0023】
キュービットレベル間のコヒーレント遷移の場合、単一キュービット回転操作およびエンタングリング多重キュービット操作が存在することができる。単一キュービット回転操作は、単一キュービット操作または単にキュービットフリッピングと呼ばれることもある。
【0024】
単一キュービット回転操作に関して、
図1Bおよび
図1Cのキュービットレベル│↑>および│↓>130は、外部制御場と直接的に結合され、単一キュービット回転操作をもたらすことができる。E(t)=E
0e
ik・x-iωt-iψ(ここで、kは波動ベクトル、ωは場周波数、ψは位相である)によって記述される進行波(共振)場に対して、共振(ω=ω
0)では、結果は、以下の式(1)および式(2)に示すように、位置xにおけるキュービットに対する回転操作(回転波近似を仮定し、位相ψが操作中は一定であると仮定する)である:
【数1】
ここで、θ=Ωtであり、φ=k・x-ψである。ここで、Ω=μE
0/hは、モーメントμを有する有効双極子遷移を仮定して、場・キュービット結合をパラメータ化するラビ周波数である。中間仮想準位を介して結合する二場光ラマン場AおよびBでは、有効ラビ周波数はΩ
AΩ
Bに比例し、場の有効周波数は差ω
A-ω
Bとなり、波動ベクトルkは2つの場の間の波動ベクトル差δk=k
A-k
Bによって与えられ、位相は位相差δΦ=δk・x(ψ
A-ψ
B)となる。実際には、2つのラマン場は、キュービット周波数分割ω
0を橋渡ししなければならない。これは、離散変調素子、またはモードロック周波数コムレーザの使用によって達成することができる。光周波数コムは、一連の離散的で等間隔の周波数ラインを有するスペクトルを有するレーザ光源である。結合効果は、連続波レーザの周期的変調(例えば、振幅および/または位相における)、非線形媒質における四波混合、またはモードロックレーザ(例えば、上述のモードロック周波数コムレーザ)によって生成されるパルス列の安定化を含む多数の機構によって生成され得る。
【0025】
時間Tだけ離れたキュービット上の二つの連続した回転に対して、蓄積されたキュービット相はψ+ωTである。制御場が光領域における単一場結合である場合、これは、拡張操作(例えば、より長い操作またはより複雑な操作)にわたる光周波数および位相の制御を必要とすることがある。しかしながら、キュービット間の二場光ラマン結合に対して、累積キュービット相は、ψA-ψB+(ωA-ωB)Tであり、周波数差ωA-ωBと位相差ψA-ψBの制御を必要とする。場が同じレーザから発生し、同様の経路をたどるとき、周波数差および位相差は、通常、RF場またはマイクロ波場によって駆動される光変調器で作成され、これは絶対光学位相よりもはるかに制御が容易である。さらに、共伝搬ラマンビーム(例えば、同じ方向に伝搬するラマンビーム)を使用することによって、dx=1μmの変位にわたる実効位相は、171Yb+システムでは、わずか、│δk│dx~ω0dx/c=2π(4.2×10-5)ラジアンである。このレベルの位相ノイズ除去が与えられると、以下に説明する技術では、一般に二場結合が使用される。
【0026】
エンタングリング多重キュービット操作に関しては、多くのトラップイオンの運動は、バネによって連結された振り子のアレイのように、クーロン相互作用を介して結合される。結晶内の原子イオン間に量子論理ゲートをエンタングルさせることを実施する自然な方法は、
図2Aに示すように、その運動を仲介物として使用することである。
図2Aは、ラマンビーム幾何学形状の一例を示すダイアグラム200と、ビームの印加によってキュービット内に運動が生成される場所を示している。ダイアグラム200には、原子イオンキュービットを有する線形格子または結晶110に向けられた光ビーム210および220がある。同じ方向の光ビームは、共伝播光ビームと呼ばれることもあり、反対方向の光ビームは、非共伝播光ビームまたは対向伝播光ビームと呼ばれることもある。ビーム210(共伝搬する)は、集束ビームまたは個々にアドレス指定されたビームであるが、ビーム220(ビーム210に対して対向伝搬する)は、集束しないグローバルビームである。本明細書で使用される用語「光ビーム」、「ビーム」、「光場」、および「場」は、交換可能に使用されることがある。
【0027】
運動を媒介として用いることは、キュービット状態に依存する光学双極子力またはマイクロ波双極子力を原子イオンに印加することによって達成できる。この外部的に印加されたキュービット状態に依存する力を使用して、制御されたNOTゲートおよび他の関連する多重キュービットエンタングリング操作を生成するための多くのプロトコルがある。例として、一般的なモルマー・ソレンセンゲート操作(MS、Ising、またはXXゲート操作とも呼ばれる)は、2つのトラップされたイオンキュービット間の操作であるが、位相依存性は、多くの類似したクラスのゲートで類似している。
【0028】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、本開示の態様による共伝搬光ビームおよび対向伝搬光ビームを有するビーム幾何学形状の例を示すダイアグラム300および330を示す。ダイアグラム300では、共伝播光ビーム210aおよび210b(
図2Aの共伝播ビーム210と同様)はともに、原子イオン320a(例えば、結晶110内の原子イオン)を標的とし、同じ方向または同様の方向に伝播する。ダイアグラム330では、共伝播光ビーム210cおよび対向伝播(または非共伝播)光ビーム220a(
図2Aの対向伝播ビーム220と同様)は、両方とも原子イオン320bを標的とし、反対または実質的に反対方向に伝播する。
【0029】
図2Aに戻って、ダイアグラム200は、図示された選択イオン間の2つのキュービットゲートの例について、ラマンビーム幾何学形状を示す。対向伝搬ビーム(一対のビーム)210およびビーム220は、2つのトラップされたイオン上に重なり、集団運動モードに結合するラマン遷移によって、エンタングリング操作が可能になる。単一キュービット回転では、個々のイオンがアドレス指定され、対向伝搬する幾何学形状では必要でない場合がある。
【0030】
周波数ω
mでの単一モードの収集イオン運動を介する結合が考慮される。一般に、モルマー・ソレンセンゲート操作は、上側波帯遷移および下側波帯遷移の両方を一緒に駆動する波動ベクトルk
Aおよびk
Bを有するレーザビーム(AおよびB)の2つの非共伝搬方向または対向伝播方向を必要とする。方向Aに沿ったビームは、光学位相ψAの単一周波数成分ω
Aを有し、方向Bに沿ったビームは、光学位相ψ
Bの2つの周波数
【数2】
を有し、その結果生じるAとBとの間の2つのビートノートは、上側波帯遷移(+)および下側波帯遷移(-)の付近にある。式(3)および式(4)に示すように、ビームAの周波数に対してビームB上にこれらの二色性ビートノートを作るために、2つのスペクトル構成がある:
【数3】
すなわち、ビームB上の二色性ビートノートで可能な一つの構成は位相感応(式(3))であり、可能なもう一つの構成は位相不感応(式(4))である。
【0031】
式(3)と式(4)では、記載されているように、
【数4】
であると仮定する。
【数5】
の場合、式(3)と式(4)の右辺にマイナスの符号を追加する必要がある。
【0032】
重要な態様は、位相不感応構成が、逆の符号(ω
0>>ω
m±δ)の上側波帯ビートノートおよび下側波帯ビートノートを有することであり、したがって、両方のビートノートが関与する相互作用から蓄積された光学位相が相殺される。XXゲートの下での二キュービットの進化を以下の式(5)に示す:
【数6】
ここで、XXゲートの実効位相は、位相感応である場合χ=(ψ
A-ψ
B)であり、位相不感応である場合χ=0である。
【0033】
上述の説明に鑑み、また、キュービット位相の同期、安定性、および制御は、拡張量子操作の性能にとって重要であるため、本開示は、トラップされたイオンキュービットの位相制御に使用できる様々な技術を提供する。したがって、光場(例えば、レーザビーム)を操作するための様々な技法を以下で説明する。これは、光学位相のドリフトがデコヒーレンスにつながる可能性がある拡張量子操作のために、キュービット操作の位相制御を可能にするような方法である。キュービットにおける遷移を駆動するために必要なラマンビームの偏光は、キュービットレベルの原子構造と、励起状態へのそれらの結合に依存する。一例として、本開示では、エネルギー準位
図230に示される
171Yb
+システムを考察する。このシステムにおいて、コヒーレント誘導ラマン遷移は、│0>および│1>とラベル付けされ、周波数ω
qによって分離された2つのキュービット状態を結合し、2つのラマンビームのσ
+/σ
+偏向またはσ
-/σ
-偏光のいずれかで355nmのレーザ場によって駆動される(例えば、任意のラマンプロセスでは、σ
+またはσ
-に偏光された両方のビームで駆動される)。しかしながら、
171Yb
+システム以外のシステムは、おそらく異なったレベルと遷移選択ルールを有するが、本明細書に記載する特徴に関連して使用され得ることが理解されるべきである。
【0034】
上述したように、(例えば、レーザまたは他の光源によって生成される)光場またはビームが配向される方法の制御を有することが重要である。例えば、それらの幾何学形状、偏光、および/または周波数の制御を含む。
【0035】
一態様において、上述したように、ビームの周波数を2つの異なる方法で微調整され得ることである。一つのアプローチは、光学位相に感応なこと(「位相感応」構成)であり、もう一つは、光学位相に感応でないこと(「位相不感応」構成)である。光学位相は、小さな距離にわたって変化するため、何らかのノイズが存在し、システムが位相に感応な場合、操作中に問題を引き起こす可能性がある。位相の瞬時値が何であっても、それが量子システムに書き込まれ、付与され、またはインプリントされ、より多くの操作が追加される(例えば、拡張量子操作)につれて、位相が変化し、ノイズを導入し得る。しかしながら、そのようなノイズを相殺するために使用され得る技術が存在し得る。
【0036】
以前の努力は、位相感応構成に基づくシステムに焦点を当てていた。しかしながら、これらのシステムが単に短い操作を実装するだけの場合、この位相を適用して、非常に高速な干渉計によって直ちにそれを解消する(例えば、それを相殺する)ことが可能である。その理由は、同じレーザ(例えば、光源)を使用して両方を行うことが可能だからである。瞬間的な光学位相は、典型的には、長い期間にわたって変動するが、短い実験または簡易な操作の間には変動しない。過去のほとんどの実験または操作は短く、位相感応構成は容易に実装され、上述のように取り扱われてきた。例えば、較正のような短い、または迅速な実験または操作は、容易に制御することができるので、例えば、位相感応構成に基づくことができる。したがって、位相不感応構成を実装する必要はなかった。一方、現在の努力は、拡張量子操作を必要とすることがあり、位相不感応構成を実装する必要が生じることがある。つまり、長い量子計算または拡張量子計算では、時間の経過とともにドリフトし、システム全体の精度を制限する可能性があるため、位相を書き込むこと、またはシステムにインプリントすることが望ましくない場合がある。
【0037】
上述したのとは別で、本開示に関連する態様は、例えば、
図2A、
図2B、
図3A、および
図3Bに示す場またはビームの幾何学形状である。これらの図に関連して示されるように、
図2Bのダイアグラム230は、キュービットレベルがエネルギーにおいて分離され、キュービットレベルにおける遷移を可能にするための異なるアプローチが存在し得ることを示す。一つのアプローチは、キュービットレベルを変化させるために、原子状態が大量のエネルギーによって変化させ、その変化が直接光学遷移によって駆動されるというものである。このアプローチにおける問題は、光学位相感応なことである。遷移を可能にするために使用されるレーザまたは光放射は、最終的に、光学位相をシステムに書き込むことになる。
【0038】
異なるアプローチで、量子操作における位相制御のための原子キュービットの光制御を目的として、本明細書に記載される種々の技術に関連して使用され得るアプローチの一つは、光学遷移ではなく、マイクロ波を使用することである。例えば、上述のシステムの例では、3つのレベルが存在し得る。そして、ボトムレベルのキュービットにおいて、二光子(ラマン)遷移を実施することが可能であり、まず、エネルギーで上向きに、次いで、エネルギーで下向きに遷移する(例えば、
図1B参照)。遷移に使用される2つのレーザビーム間の周波数差は、関連する位相である。周波数差があるために、位相は、光学位相ではなく、マイクロ波位相である。さらに、両方のビームは、典型的には、変調器を用いて同じレーザまたは光源から導出されるので、マイクロ波位相は制御が容易であり、その波長は大きいので、ドリフトに関する懸念は少ない。
【0039】
古典論理と同様に、単一ビット操作および多重ビット操作があり、上述のような2つの光ビームを使用して、単一キュービット操作(例えば、回転またはキュービットフリッピング)を実施できるが、多重キュービット操作(例えば、拡張量子計算)を実施できる。単一ビット操作は、単にキュービット状態を変化させ、光ビームとは対照的にマイクロ波ビームで行うことが可能である。しかしながら、レーザは、個々のキュービットに当たるビームを生成するために使用され、ビームの少なくとも一部を集束させる必要があるため、マイクロ波ビームよりも集束しやすいので、光ビームを使用する方が容易である場合がある。したがって、ラマンまたは二光子プロセスを、2つの光ビームが共伝搬光ビームである状態で使用して、キュービットの回転またはフリップ(例えば、単一キュービット操作)を実行することができる。代わりに対向伝搬光ビームが使用される場合、キュービットをフリップするだけでなく、キュービットにキックを与えることも可能である(例えば、運動結合)。
【0040】
多重キュービット操作の場合、キュービット(例えば、原子イオン)をエンタングルさせるためには、力が必要であり(例えば、運動結合)、対向伝搬光ビームを使用してもよい。その理由は、同じ方向の放射と吸収があると、多重キュービット操作に必要な力が生成しないからである。
【0041】
上記の観点から、本開示は、位相不感応構成の使用を提案することで、長距離にわたる操作(例えば、拡張量子計算)を可能にするだけでなく、(例えば、デコヒーレンスを避けるために)共伝搬ビームを使用することで運動不感応である単一キュービット操作も、対向伝搬ビームを使用することで、多重キュービット操作も可能にする。したがって、本開示は、使用すべきは位相感応構成か、あるいは位相不感応構成か、実行すべきは単一キュービット操作か、あるいは多重キュービット操作か、操作が運動を結合すべきか(例えば、運動感応)、あるいは運動を結合しないべきか(例えば、運動不感応)を少なくとも考慮する技法を提供する。
【0042】
位相制御に関連する1つの特徴は、2つの非共伝搬または対向伝搬ラマンビームのうちの1つのみからトラップ原子イオンを個々にアドレス指定(例えば、個々に焦点合わせ)することが十分であり得ることである(例えば、
図2A、
図3Bを参照)。すなわち、ビームの一方に焦点を合わせ、他方に焦点を合わせないようにすれば十分なことがある。自然な幾何学形状は、N個のトラップイオンキュービット(例えば、ビーム210)に対してN個の個々のアドレッシングビームに対して対向伝搬する単一のグローバルビーム(例えば、ビーム220)を有することである。一例では、グローバルビームがオフにされる場合、個々のビームを位相不感応になるように配置することによって、キュービットをなおフリップすることが可能であり得る。両方のラマンビーム方向から個別にアドレス指定(または集束)することも可能であり、ビームの周波数制御により多くの柔軟性を提供することができる。しかしながら、この選択肢は、制御操作がより複雑になることもある。
【0043】
位相制御に関連する別の特徴は、光学構成要素(例えば、光制御操作における光学構成要素)の位置不安定性に起因するノイズ源の同相除去から利益を得るために、すべてのラマンビーム経路を可能な限り同一(例えば、同様の経路)にする必要があることである。すなわち、2つのビームが使用されているので、共通のノイズ源を相殺するために同じ経路を有することが有用である。単一ビット回転操作は共伝搬であり、ビーム間の必要な周波数シフトによるビームポインティングまたは位置との相関は最小化されるべきである。
【0044】
位相制御に関連する別の特徴は、ラマン遷移の位相不感応構成が位相安定性のために使用されることである。共伝播回転操作では、位相不感応幾何学形状または構成は、システムがエンタングルメント操作(例えば、多重キュービット)と回転操作(例えば、単一キュービット)との間に光学位相のメモリを有さないために必要とされる。すなわち、上述したように、位相不感応構成は、長い操作を実行し、単一キュービット操作のための共伝搬ビームと、多重キュービット操作のための対向伝搬ビームとの両方を有するのに有用である。
【0045】
位相制御に関連するさらなる特徴は、ビームの個々のアドレス指定が、様々な技法を用いて各ビームが独立に変調されるようにすることができることに関するものであり、位相不感応ラマンXXゲートの場合、これは個々にアドレス指定されたビームのそれぞれに二色性RF駆動の使用を必要とすることもある。すなわち、個別にアドレス指定するビームは、複数のトーンを有することができる。単一キュービット回転を、力(例えば、運動感応である)を付与する単一キュービット回転と区別するものは、エネルギー保存である。目標が単にキュービットをフリップさせることである場合、ビーム間のビートノートはキュービットエネルギーに一致する必要がある。そうでなければ、目標が運動を加算または減算することである場合、周波数を少し変更する必要がある。ビームを生成するレーザは変調されているため、力を駆動するために使用され得る側波帯(例えば、二色性)が生成される。説明したように、この効果によって位相不感応構成が可能になるので、個別にアドレス指定するビームに適用することができるが、グローバルビームにも適用することができる。
【0046】
位相制御に関連するもう1つの特徴は、ラマン遷移のためのσ+/σ+とσ-/σ-との不均衡な経路が比較的大きいACシュタルクシフトを伴うことである。したがって、任意のラマンプロセスの最適な偏光は、二色性レーザを使用することである。その2つの周波数成分は、互いに直交する偏光方向(例えば、lin⊥lin)で直線偏光しており、両方の偏光方向は、量子化磁場に対して直角である。しかしながら、共伝搬回転操作は、遷移選択ルールのために、任意の方向に沿った単一の直線偏光では動作しない可能性がある。したがって、回転ビームは、回転を可能にするが、過度に大きなACシュタルクシフトを与えないように最適化されたヘリシティ(例えば、σ+とσ-との不均衡)の構成要素を有する必要があり得る。すなわち、偏光は、レーザ相互作用の結果として2つのキュービットレベルの間を上下する代わりに、レーザ相互作用が、代わりに、同じキュービットレベルまで上下させるときに生じるACシュタルクシフトを相殺するために使用されてもよい。使用される分極は、静的または動的であり得る。
【0047】
単一の光周波数コムからラマンビームを発生させる場合、レーザに直接フィードバックする直接ロック技術を用いてコム歯間の位相安定性を維持する必要がある。これらの技術は、ビーム経路においてより複雑なRF変調を必要とする場合があるので、フィードフォワード技術は好ましくない。
【0048】
ここで
図4を参照すると、本開示の態様による例示的な計算機装置400が示されている。計算機装置400は、例えば、単一の計算装置、複数の計算装置、または分散計算システムを表すことができる。計算機装置400は、量子計算機(例えば、量子情報処理(QIP)システム)、古典的計算機、または量子および古典的計算機能の組合せとして構成されてもよい。例えば、計算機装置400は、トラップされたイオン技術に基づいた量子アルゴリズムを使用して情報を処理するために使用されてもよく、したがって、量子論理ゲートに適用されるように、およびキュービット間の一般化された相互作用に関連して、制御場によって媒介される原子量子ビット(キュービット)上の量子位相をコヒーレントに制御するための方法を実装してもよい。本明細書で説明する種々の位相制御を実施することができるQIPシステムとしての計算機装置400の一般的な例を、
図6Aおよび
図6Bに示す例に示す。
【0049】
一例では、計算機装置400は、本明細書に記載する1つまたは複数の特徴に関連する処理機能を実行するためのプロセッサ410を含んでもよい。プロセッサ410は、単一または複数のセットのプロセッサまたは多重コアプロセッサを含んでもよい。さらに、プロセッサ410は、統合処理システムおよび/または分散処理システムとして実現されてもよい。プロセッサ410は、CPU(中央処理ユニット)、QPU(量子処理ユニット)、GPU(グラフィック処理ユニット)、またはこれらのタイプのプロセッサの組合せを含んでもよい。一態様において、プロセッサ410は、計算機装置400の一般的なプロセッサを参照することができ、これは、位相制御のための機能などのより特定の機能を実行するための追加のプロセッサ410を含むこともできる。
【0050】
一例において、計算機装置400は、本明細書に記載する機能を実行するためにプロセッサ410によって実行可能な命令を記憶するためのメモリ420を含んでもよい。一実施形態において、例えば、メモリ420は、本明細書に記載する1つまたは複数の機能または操作を実行するためのコードまたは命令を記憶する計算機可読記憶媒体に対応することができる。一例において、メモリ420は、
図5に関連して以下で説明する方法500の態様を実行するための命令を含むことができる。プロセッサ410と同様に、メモリ420は、位相制御のための命令および/またはデータのようなより具体的な機能のための命令および/またはデータを記憶するための追加のメモリ420を含むこともできる、計算機装置400の一般的なメモリを参照することができる。
【0051】
さらに、計算機装置400は、本明細書で説明するように、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスを利用して、一人または複数の当事者との通信を確立し、維持することを提供する通信構成要素430を含むことができる。通信構成要素430は、計算機装置400上の構成要素間でも、計算機装置400と、通信ネットワークを介して配置された装置および/または計算機装置400にシリアル接続またはローカル接続された装置などの外部装置との間でも通信を実行することができる。例えば、通信構成要素430は、1つまたは複数のバスを含んでもよく、さらに、外部装置とインターフェースするために操作可能な、送信機および受信機にそれぞれ関連する送信チェーン構成要素および受信チェーン構成要素を含んでもよい。
【0052】
さらに、計算機装置400は、本明細書で説明する実施形態に関連して使用される情報、データベース、およびプログラムの大容量記憶を提供するハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の適切な組合せとすることができるデータストア440を含むことができる。例えば、データストア440は、オペレーティングシステム460(例えば、古典的OS、または量子OS)のためのデータリポジトリとすることができる。一実施形態では、データストア440は、メモリ420を含んでもよい。
【0053】
計算機装置400はまた、計算機装置400のユーザからの入力を受け取るように操作可能で、さらに、ユーザに提示するための出力を生成するか、または異なるシステムに(直接的または間接的に)提供するように操作可能なユーザインターフェース構成要素450を含んでもよい。ユーザインターフェース構成要素450は、キーボード、ナンバーパッド、マウス、タッチセンシティブディスプレイ、デジタイザ、ナビゲーションキー、ファンクションキー、マイクロフォン、音声認識構成要素、ユーザからの入力を受信可能な任意の他の機構、またはそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の入力装置を含むことができる。さらに、ユーザインターフェース構成要素450は、ディスプレイ、スピーカ、触覚フィードバック機構、プリンタ、出力をユーザに提示可能な任意の他の機構、またはそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の出力装置を含むことができる。
【0054】
一実施形態では、ユーザインターフェース構成要素450は、オペレーティングシステム460の操作に対応するメッセージを送信および/または受信することができる。さらに、プロセッサ410は、オペレーティングシステム460および/またはアプリケーションもしくはプログラムを実行することができ、メモリ420またはデータストア440は、それらを記憶することができる。
【0055】
計算機装置400がクラウドベースのインフラストラクチャ解決策の一部として実装される場合、ユーザインターフェース構成要素450は、クラウドベースのインフラストラクチャ解決策のユーザが計算機装置400と遠隔的に対話することを可能にするために使用されてもよい。
【0056】
図5は、本開示の態様による原子キュービットを光制御するための方法500の一例を示すフロー図である。方法500は、一態様において、上述の計算機システム400のような計算機システムで実行されてもよく、ここで、例えば、プロセッサ410、メモリ420、データストア440、および/またはオペレーティングシステム460を使用して、方法500の機能を実行してもよい。同様に、方法500の機能は、QIPシステム605のようなQIPシステムの1つまたは複数の構成要素と、その構成要素(例えば、光学コントローラ620およびそのサブ構成要素)によって実行され得る。
【0057】
方法500は、510において、キュービット操作を識別するステップを含む。例えば、考慮すべきキュービット操作が単一キュービット操作であるか、または多重キュービット操作であるかを決定することができる。
【0058】
方法500は、520において、キュービット操作を位相制御するために、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップを含み、光ビームは、位相不感応構成に構成され、光ビームは、キュービット操作が多重キュービット操作である場合、対向伝搬光ビームを含む。
【0059】
本方法500の一態様において、光ビームは、キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動不感応である場合、共伝搬光ビームを含む。
【0060】
方法500の一態様において、光ビームは、キュービット操作が単一キュービット操作であり、かつ運動感応である場合に、対向伝搬光ビームを含む。
【0061】
方法500の一態様において、原子キュービットは、イオントラップによって形成される結晶内の原子イオンに対応し、方法500は、2つの対向伝搬ラマンビームを含むように光ビームを構成するステップをさらに含んでもよく、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップは、原子イオンのうちの1つを個々にアドレス指定することを、2つの対向伝搬ラマンビームのうちの第一のラマンビームをその1つの原子イオン上に集束させることによって行うことを含み、2つの対向伝搬ラマンビームのうちの第二のラマンビームは、グローバルビームである。方法500は、一態様において、ビームを周波数変調して側波帯を生成することによって、1つの原子イオンを個々にアドレス指定する2つの対向伝搬ラマンビームのうちの第一のラマンビームをバイクロマティック駆動するステップを含む。方法500は、一態様において、2つの対向伝搬ラマンビームのうちの第一のラマンビームの第一の光路が、2つの対向伝搬ラマンビームのうちの第二のラマンビームの第二の光路と同じになるように構成するステップを含む。
【0062】
方法500の別の態様において、原子キュービットは、イオントラップによって形成される結晶内の原子イオンに対応し、方法500は、結晶内のN個の原子イオンに対して最大でN個の個別にアドレス指定するラマンビームであって、個別にアドレス指定するラマンビームのそれぞれに複数の光周波数を有する、ラマンビームと、最大でN個の個別にアドレス指定するラマンビームに対する単一のグローバル対向伝搬ラマンビームを含むように、光ビームを構成するステップをさらに含んでもよい。一実施形態では、個々にアドレス指定されるラマンビームの個数はN1とすることができ、原子イオンの個数はN2とすることができ、ここでN1≦N2である。
【0063】
方法500の別の態様において、原子キュービットは、イオントラップによって形成される結晶内の原子イオンに対応し、方法500は、光ビームが2つの対向伝播ラマンビームを含むように構成するステップをさらに含んでもよく、ここで、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビームの場を制御することは、原子イオンの1つを個別にアドレス指定することを、その1つの原子イオン上に2つの対向伝搬ラマンビームの第1のラマンビームを集束させることと、その1つの原子イオン上に2つの対向伝播ラマンビームの第二のラマンビームを収束させることによって行うことを含む。
【0064】
方法500の別の態様では、キュービット操作は、拡張量子計算における多重キュービット操作の1つであり、拡張量子計算の全体を通して、位相不感応構成が使用される。
【0065】
方法500の別の態様では、キュービット操作を位相制御するために、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップは、原子キュービットのうちのその少なくとも1つにおけるキュービットレベルのACシュタルクシフトを補償するために、光ビームの偏光を制御することを含む。ACシュタルクシフトを補償するための光ビームの偏光は、ACシュタルクシフトをバランスさせ、量子操作の実行に関連する異なる種類の量子ゲートを可能にするように構成される。さらに、光ビームの偏光は、動的偏光、静的偏光、またはこれらの組合せである。
【0066】
方法500の別の態様において、方法500は、光ビームがラマンビームであるように構成するステップをさらに含み、ここで、構成するステップは、単一の光周波数コムから、および/または光源を変調する結果として、または位相ロックされた複数の位相コヒーレント源から、ラマンビームを生成するステップを含み、単一の光周波数コムの複数のトーンまたは歯の間の位相安定性は、光源に直接フィードバックするロック技術を用いて維持される。
【0067】
方法500のさらに別の態様において、キュービット操作を位相制御するために、原子キュービットのうちの少なくとも1つに印加される光ビーム内の場を制御するステップは、光ビームの幾何学形状、スペクトル、または偏光のうちの1つ以上を付加的に制御することを含む。
【0068】
方法500の別の態様において、キュービット操作は回転操作であり、光ビームは、回転操作を可能にするように構成されたヘリシティを有する一方で、ACシュタルクシフトの少なくとも一部分を相殺する共伝搬光ビームを含む。例えば、ヘリシティには、σ+偏光とσ-偏光との間に不均衡を含む。
【0069】
図6Aは、本開示の態様によるQIPシステム605の一例を示すブロック
図600である。QIPシステム605は、量子計算システム、計算機装置と呼ばれることもある。一態様において、QIPシステム605は、
図4の計算装置400の量子計算機実装の部分に対応し得る。
【0070】
QIPシステム605は、原子種(例えば、中性原子のフラックス)を、光学コントローラ620(例えば、
図6B参照)によって一旦イオン化された(例えば、光イオン化された)原子種をトラップするイオントラップ670を有するチャンバ650に提供するソース660を含むことができる。チャンバ650は、
図1Aの真空チャンバ100の一例であってもよい。光学コントローラ620内の光源630は、原子種のイオン化、原子イオンの制御(例えば、位相制御)のために、光学コントローラ620内の撮像システム640内で操作する画像処理アルゴリズムによって監視および追跡できる原子イオンの蛍光のために、および/または本開示で説明する光制御機能を実行するために、使用することのできる1つまたは複数のレーザ源を含んでもよい。一態様では、光源530は、光学コントローラ620とは別個に実装されてもよい。
【0071】
撮像システム640は、イオントラップに提供されている間に、またはイオントラップ670に提供された後に、原子イオンを監視するための高分解能撮像装置(例えば、CCDカメラ)を含んでもよい。一態様では、撮像システム640は、光学コントローラ620とは別個に実装することができるが、画像処理アルゴリズムを使用して原子イオンを検出し、識別し、ラベル付けするための蛍光の使用は、光学コントローラ620との調整が必要な場合がある。
【0072】
また、QIPシステム605は、単一キュービット操作または多重キュービット操作、および拡張量子計算を含む量子アルゴリズムまたは量子操作を実行するために、QIPシステム605の他の部分(図示せず)と一緒に操作し得るアルゴリズム構成要素610を含んでもよい。そのように、アルゴリズム構成要素610は、量子アルゴリズムまたは量子操作の実装を可能にするために、QIPシステム605の様々な構成要素(例えば、光学コントローラ620)に命令を提供することができ、その結果、本明細書に記載される様々な位相制御技術を実装することができる。
【0073】
図6Bは、光学コントローラ620の少なくとも一部分を示す。この例では、光学コントローラ620は、ビームコントローラ621、光源630、および撮像システム640を含んでもよい。点線で示されるように、光源630および撮像システム640の一方または両方は、光学コントローラ620と別個で実装されてもよいが、通信していてもよい。撮像システム640は、CCD641(または同様な撮像装置またはカメラ)と、画像処理アルゴリズム構成要素642とを含む。光源630は、変調器625と、上述の機能(例えば、イオン化、蛍光、位相制御)のうちの1つまたは複数を行うために使用され得る複数のレーザ源635a、…、635bとを含む。
【0074】
ビームコントローラ621は、量子論理ゲートに適用されるように、および/またはキュービット間の一般化相互作用に関連して、制御場によって媒介される原子キュービット上の量子位相をコヒーレントに制御するために、本明細書に記載される種々の態様を実行するように構成される。例えば、ビームコントローラ621は、単一キュービット操作および/または多重キュービット操作が実行されるべきかどうかを識別または決定するように構成されたキュービット操作構成要素622を含んでもよく、それに応じて操作を構成してもよい。また、ビームコントローラ621は、本明細書で説明するように、異なる幾何学形状構成を決定し、可能にするように構成された幾何学形状構成要素623を含んでもよい。また、ビームコントローラ621は、本明細書で説明するように、異なる周波数を決定し、可能にするように構成された周波数構成要素624を含んでもよい。また、ビームコントローラ621は、本明細書で説明するように、異なる偏光を決定し、可能にするように構成された偏光構成要素625を含んでもよい。また、ビームコントローラ621は、本明細書で説明するように、異なる位相操作を決定し、可能にするように構成された位相構成要素626を含んでもよい。ビームコントローラ621の様々な構成要素は、個別に、または組み合わせて操作して、本開示で説明される各種機能、例えば、
図5の方法500を実行することができる。さらに、ビームコントローラ621(およびそのサブ構成要素のうちの1つまたは複数)は、位相不感応構成が長い操作を実行することを可能にし、単一キュービット操作のための共伝搬ビームと、多重キュービット操作のための対向伝搬ビームとの両方のビームを有するように構成され得る。
【0075】
本開示は、図示された実施形態に従って提供されたが、当業者には、実施形態にバリエーションがあり得、それらのバリエーションが本開示の範囲内にあることを容易に認識するであろう。したがって、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの修正を行うことができる。