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特許7050167弾性針を備える幾何学的構成が可変な計時器用表示機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】弾性針を備える幾何学的構成が可変な計時器用表示機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/04 20060101AFI20220331BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20220331BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G04B19/04 Z
G04B19/02 Z
G04B45/00 T
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020545689
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019069946
(87)【国際公開番号】W WO2020025423
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】18186552.8
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19185917.2
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ストランツル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ピテ,ジャン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078983(JP,A)
【文献】特開昭62-030986(JP,A)
【文献】特開昭62-239080(JP,A)
【文献】米国特許第04671670(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第01710637(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/02,19/04,19/23
G04B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾性針(1)を備える幾何学的構成が可変な計時器用表示機構(10)であって、
前記弾性針(1)は、フレキシブルな細長材(3)の第1の端と一体化された第1の駆動パイプ(2)と、及び前記フレキシブルな細長材(3)の第2の端と一体化された第2の駆動パイプ(4)とを備え、かつ、表示インデックス又は先端を備え、
前記表示インデックス又は先端は、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)がいずれも応力を受けておらず互いに離れているような前記弾性針(1)の応力を受けていない自由状態において、前記第1のパイプ(2)からも前記第2のパイプ(4)からも離れており、
前記弾性針(1)は、動作位置においては、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)が出力軸(D)を中心として互いに同軸であるような応力を受けている位置にあり、
前記表示機構(10)は、前記出力軸(D)のまわりに前記第1のパイプ(2)を駆動するための第1の駆動手段(11)と、及び前記出力軸(D)のまわりに前記第2のパイプ(4)を駆動するための第2の駆動手段(13)とを備え、
前記第1の駆動手段(11)と第2の駆動手段(13)は、前記出力軸(D)を中心とする前記第1のパイプ(2)の角位置に対して前記第2のパイプ(4)の角位置を変えることによって前記フレキシブルな細長材(3)を変形させ、かつ、前記出力軸(D)を中心とする前記表示インデックス又は先端の半径方向の位置を変えるように構成しており、
これによって、前記第1の駆動手段(11)及び/又は前記第2の駆動手段(13)は、角トラベルの少なくとも一部にわたって、少なくとも前記第1のパイプ(2)及び/又は前記第2のパイプ(4)の速度を加速させたり安定化させたり又は遅くしたりするように構成している加速又は減速デバイスを備え、
前記加速又は減速デバイスは、第1のシェープドギヤ列(111)及び/又は第2のシェープドギヤ列(131)を備え、
前記第1のシェープドギヤ列(111)と前記第2のシェープドギヤ列(131)は、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)を対称的に制御するように構成しており、これによって、前記フレキシブルな細長材(3)は、前記出力軸(D)を中心とする半径方向に対して対称的であり、この半径方向を、前記先端又はインデックスが、前記弾性針(1)の角トラベルの少なくとも一部にわたって通過し、
前記加速又は減速デバイスは、前記第1のパイプ(2)の駆動ギヤ列上の第1の差動ギヤ(912)及び/又は前記第2のパイプ(4)の駆動ギヤ列上の第2の差動ギヤ(914)を備えるデバイスと、及び前記差動ギヤ(912、914)の入力を形成する少なくとも1つのカム(902、904)とを備える
ことを特徴とする表示機構(10)。
【請求項2】
前記弾性針(1)は、少なくとも1つの先端にて端どうしがつながれる構成でつながれた複数のフレキシブルな区画(5、5A、5B)を備え、
その第1のフレキシブルな区画(5A)は、前記第1のパイプ(2)と、前記インデックスを形成する第1の先端(6)の間に延在しており、かつ、第のフレキシブルな区画(5B)は、前記第2のパイプ(4)と、前記インデックスを形成する第1の先端(6)の間に延在しており、
当該表示機構(10)は、ムーブメント(20)によって入力軸を中心に回転駆動されるように構成しており基準に対する入力角度を定める入力車セット(71)を備え、
前記入力車セット(71)は、前記第1のパイプ(2)を駆動する前記第1の駆動手段(11)と、及び少なくとも前記第1のフレキシブルな区画(5)に応力を与える第2の応力付与手段(12)とを備え、
前記第1の駆動手段(11)と前記第2の応力付与手段(12)は、前記出力軸(D)に対して少なくとも前記第1の先端(6)の位置を変えるように構成しており、
前記第1の先端(6)は、前記第2の応力付与手段(12)によって前記フレキシブルな細長材(3)に与えられる力に応じて変わる前記第1のパイプ(2)からの距離が可変であり、
前記第2の応力付与手段(12)は、前記第1のパイプ(2)が前記第1の駆動手段(11)によって駆動され、かつ、前記第2のパイプ(4)が前記第2の駆動手段(13)によって駆動されるような前記弾性針(1)の組み付けられた応力を受けている状態において、前記第2のパイプ(4)を駆動する前記第2の駆動手段(13)を備え、
前記第1のシェープドギヤ列(111)と前記第2のシェープドギヤ列(131)は、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)を対称的に制御するように構成しており、これによって、前記第1のフレキシブルな区画(5A)と前記第2のフレキシブルな区画(5B)は、前記出力軸(D)を中心とする半径方向に対して対称的であり、この半径方向を、前記第1のフレキシブルな区画(5A)と前記第2のフレキシブルな区画(5B)がつながれた前記先端(6)が、前記弾性針(1)の角トラベルの少なくとも一部にわたって通過する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示機構(10)。
【請求項3】
前記弾性針(1)は、非逆行性の全体経路を移動し、かつ、前記第1のパイプ(2)の平均速度が前記全体経路にわたって前記第2のパイプ(4)の平均速度と等しいように構成している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示機構(10)。
【請求項4】
前記第1の駆動手段(11)及び/又は前記第2の駆動手段(13)は、少なくとも1つの第1のギヤ列段(115、135)及び少なくとも1つの第2のギヤ列段(116、136)を備え、
これらのギヤ列段は、ギヤ列段ごとに分配して、前記弾性針(1)の角トラベルの一部にわたって前記弾性針(1)の形状変換の一部を各ギヤ列段が制御するように構成している
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項5】
前記第1の駆動手段(11)と前記第2の駆動手段(13)はそれぞれ、少なくとも1つの第1のシェープドギヤ列(111)及び/又は少なくとも1つの第2のシェープドギヤ列(131)を備え、
これらのシェープドギヤ列はそれぞれ、前記第1のパイプ(2)又は前記第2のパイプ(4)の角トラベルの少なくとも一部にわたって、前記第1のパイプ(2)又は前記第2のパイプ(4)の速度を加速したり安定化させたり又は遅くしたりするように構成している
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項6】
前記第1の駆動手段(11)と前記第2の応力付与手段(12)は、前記出力軸(D)を中心とする角トラベルの全体にわたって前記弾性針(1)を駆動し、かつ、表示平面P又は表盤上への射影において、前記弾性針(1)の異なる角位置において、前記フレキシブルな細長材(3)に含まれる前記フレキシブルな区画(5、5A、5B)が前記第1のパイプ(2)の外側の経路を交差しないような少なくとも1つの第1の形状と、及び前記フレキシブルな細長材(3)に含まれる前記フレキシブルな区画(5、5A、5B)が前記第1のパイプ(2)の外側の経路を交差するような少なくとも1つの第2の形状とを前記弾性針(1)に与えるように構成している
ことを特徴とする請求項2に記載の表示機構(10)。
【請求項7】
前記第1の形状はアーモンド形であり、前記第2の形状はハート形である
ことを特徴とする請求項6に記載の表示機構(10)。
【請求項8】
前記第1のフレキシブルな区画(5A)は、前記第1の端(52)にて前記第1のパイプ(2)を支持し、
前記第1のフレキシブルな区画(5A)につながれた第2のフレキシブルな区画(5B)は、前記第2の端(54)にて前記第2のパイプ(4)を支持し、
前記弾性針(1)の前記自由状態において、前記第1の端(52)と前記第2の端(54)は、互いに離れている、又は前記第1のフレキシブルな区画(5A)と前記第2のフレキシブルな区画(5B)がつながれる前記先端(6)から互いにゼロではない角度を形成する
ことを特徴とする請求項に記載の表示機構(10)。
【請求項9】
前記第2のパイプ(4)の前記第2の駆動手段(13)の出力は、前記第1のパイプ(2)の前記第1の駆動手段(11)の出力と同軸である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項10】
前記第1のシェープドギヤ列(111)と前記第2のシェープドギヤ列(131)はそれぞれ、前記弾性針(1)の角トラベルの一部のみにわたって、前記第1のパイプ(2)を加速又は制動し、かつ、前記第2のパイプ(4)を制動又は加速するように構成している
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項11】
前記第1のシェープドギヤ列(111)及び/又は前記第2のシェープドギヤ列(131)は、互いに噛み合うことによって係合するように構成している少なくとも1対の車を備え、この車の歯列の原始曲線は軸対称的ではない
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項12】
前記第1のギヤ列段(115、135)と前記第2のギヤ列段(116、136)はそれぞれ、前記第1のギヤ列(111)と前記第2のギヤ列(131)を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の表示機構(10)。
【請求項13】
前記弾性針(1)は、前記自由状態において、前記第1のパイプ(2)を含む第1の平面レベル上及び前記第2のパイプ(4)を含む第2の平面レベル上に延在し、前記第1の平面レベルと前記第2の平面レベルの間における、前記第1のパイプ(2)を支持する第1のフレキシブルな区画(5A)と、前記第1のフレキシブルな区画(5A)につながれており前記第2のパイプ(4)を支持する第2のフレキシブルな区画(5B)の間の1つの前記先端(6)において接続領域を備え、
前記弾性針(1)は、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれていない形態で取り付けられるように構成している
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項14】
前記弾性針(1)は、前記自由状態において、前記フレキシブルな区画(5)の数と同じ数の平行なレベルにわたって延在し、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれていない形態で取り付けられるように構成している
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項15】
前記弾性針(1)は、前記自由状態において、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)を含む単一の平面レベルにわたって延在し、
前記弾性針(1)は、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれた形態で取り付けられるように構成している
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項16】
前記弾性針(1)は、前記自由状態において、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)をつなぐ分割可能要素(24)を備え、これによって、前記第1のパイプ(2)又は前記第2のパイプ(4)の駆動車セットに対する前記弾性針(1)の組み付けを容易にし、
前記分割可能要素(24)は、壊れて、前記第1のパイプ(2)と前記第2のパイプ(4)が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置へと前記弾性針(1)を移行させることができるように構成している
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項17】
前記弾性針(1)には、当該表示機構(10)が備える、又は当該表示機構(10)が取り付けられるように構成している計時器用ムーブメント(20)が備える、表盤(61)上に現れる情報を読み取るための開口が形成される少なくとも1つのアイ部(60)がある
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の表示機構(10)。
【請求項18】
前記第1の駆動手段(11)と前記第2の応力付与手段(12)には、前記ムーブメント(20)の単一の出力(21)によって駆動されるように構成している入力車セット(71)がある
ことを特徴とする請求項2に記載の表示機構(10)。
【請求項19】
当該表示機構(10)は、前記ムーブメント(20)によって駆動されるように構成している入力車セット(71)と、前記第1のパイプ(2)及び/又は前記第2のパイプ(4)との間にて、差動ギヤ(912、914)を制御するように構成しているカム(902、904)を備え、
前記差動ギヤ(912、914)の第1の入力は、前記入力車セット(71)によって形成されており、
前記差動ギヤ(912、914)の第2の入力は、前記カム(902、904)によって制御される車セット又はラックであり、
前記差動ギヤ(912、914)の出力は、運動を前記第1のパイプ(2)又は前記第2のパイプ(4)にそれぞれ伝達するギヤ列と噛み合っている
ことを特徴とする請求項2に記載の表示機構(10)。
【請求項20】
当該表示機構(10)は、前記入力車セット(71)と前記第1のパイプ(2)の間にて、単一のカム(902)を備え、
このカム(902)は、第1の差動ギヤ(912)を制御するように構成しており、
前記第1の差動ギヤ(912)の第1の入力は、前記入力車セット(71)によって形成されており、
前記第1の差動ギヤ(912)の第2の入力は、前記カム(902)によって制御される第1のラックであり、
前記第1の差動ギヤ(912)の出力は、前記第1のパイプ(2)へ運動を伝達するようギヤ列と噛み合い及び前記入力車セット(71)と前記第2のパイプ(4)の間に前記単一のカム(902)と同じカムを配置して第2の差動ギヤ(914)を制御するように構成しており、
前記第2の差動ギヤ(914)の第1の入力は、前記入力車セット(71)によって形成されており、
前記第2の差動ギヤ(914)の第2の入力は、前記カム(902)によって制御される第2のラックであり、
前記第2の差動ギヤ(914)の出力は、前記第2のパイプ(4)へと運動を伝達するギヤ列と噛み合う
ことを特徴とする請求項19に記載の表示機構(10)。
【請求項21】
当該表示機構(10)は、前記入力車セット(71)と前記第1のパイプ(2)の間にて、第1の差動ギヤ(912)を制御するように構成している第1のカム(902)を備え、
前記第1の差動ギヤ(912)の第1の入力は、前記入力車セット(71)によって形成されており、
前記第1の差動ギヤ(912)の第2の入力は、前記第1のカム(902)によって制御される第1のラックであり、
前記第1の差動ギヤ(912)の出力は、前記第1のパイプ(2)へと運動を伝達するギヤ列と噛み合い、
当該表示機構(10)は、前記入力車セット(71)と前記第2のパイプ(4)の間にて、前記入力車セット(71)によって駆動され第2の差動ギヤ(914)を制御するように構成している第2のカム(904)を備え、
前記第2の差動ギヤ(914)の第1の入力は、前記入力車セット(71)によって形成され、
前記第2の差動ギヤ(914)の第2の入力は、前記第2のカムによって制御される第2のラックであり、
前記第2の差動ギヤ(914)の出力は、前記第2のパイプ(4)へと運動を伝達するギヤ列と噛み合う
ことを特徴とする請求項19に記載の表示機構(10)。
【請求項22】
前記ムーブメント(20)によって駆動されるように構成している入力車セット(71)と、前記第1のパイプ(2)及び/又は前記第2のパイプ(4)との間に配置されるギヤ列機構が備える少なくとも1つの車は、不完全な歯列を有し、その欠損歯はそれぞれ、その欠損歯に対応する空間の通過の際に、前記パイプ(2、4)のうちの一方のみが回転することによって、前記弾性針(1)が緩むことを可能にし、これによって、前記弾性針(1)の前記先端(6)のはね返りを制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の表示機構(10)。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の表示機構(10)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(20)。
【請求項24】
請求項23に記載の計時器用ムーブメント(20)を備える
ことを特徴とする計時器(30)。
【請求項25】
携行型時計である
ことを特徴とする請求項24に記載の計時器(30)。
【請求項26】
請求項23に記載の計時器用ムーブメント(20)を備える
ことを特徴とする科学的装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弾性針を備える幾何学的構成が可変な計時器用表示機構に関する。前記弾性針は、フレキシブルな細長材の第1の端と一体化された第1の駆動パイプと、及び前記フレキシブルな細長材の別の端と一体化された第2の駆動パイプとを備え、かつ、表示インデックス又は先端を備える。前記表示インデックス又は先端は、前記第1のパイプと前記第2のパイプがいずれも応力を受けておらず互いに離れているような前記弾性針の応力を受けていない自由状態において、前記第1のパイプからも前記第2のパイプからも離れている。前記弾性針は、動作位置においては、前記第1のパイプ及び前記第2のパイプが出力軸を中心として互いに同軸であるような応力を受けている位置にあり、前記表示機構は、前記出力軸のまわりに前記第1のパイプを駆動するための第1の駆動手段と、及び前記出力軸のまわりに前記第2のパイプを駆動するための第2の駆動手段とを備え、前記第1の駆動手段と第2の駆動手段は、前記出力軸を中心とする前記第1のパイプの角位置に対して前記第2のパイプの角位置を変えることによって前記フレキシブルな細長材を変形させ、かつ、前記出力軸を中心とする前記表示インデックス又は先端の半径方向の位置を変えるように構成している。
【0002】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該表示機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0003】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメントを備え、かつ/又は少なくとも1つの当該表示機構を備える計時器に関する。
【0004】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメント及び/又は少なくとも1つの当該表示機構を備える科学的装置に関する。
【0005】
本発明は、可動機械部品を用いる計時器又は科学的装置のためのアナログ表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0006】
MONTRES BREGUET SAによる欧州特許文献EP2863274及びEP3159751は、弾性針の異なる構成を開示している。これは、別々に駆動されるフレキシブルな区画を備える前記弾性針を制御することによって得られる半径方向の延びのおかげで、計時器上の表示をそのケース又は表盤の形状に適合させることを可能にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、位置及び制御に応じて可変な半径方向の延びを有するインジケーターを提供するという課題に対する信頼性が高く非常に堅牢性が高い解決策を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、請求項1に記載の、少なくとも1つのフレキシブルな細長材と一体化された第1の駆動パイプを備える、少なくとも1つの弾性針を備える計時器用表示機構に関する。
【0009】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該表示機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0010】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメントを備え、かつ/又は少なくとも1つの当該表示機構を備える計時器に関する。
【0011】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメント及び/又は少なくとも1つの当該表示機構を備える科学的装置に関する。
【0012】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、特に、楕円形の女性用の携行型時計、についての上から見た図であり、これは、可変長の弾性針を備える本発明に係る表示機構を備え、この弾性針の遠位端は、2つのフレキシブルな細長材の間の先端によって形成されており、非円形の軌道を追従するように構成している。この弾性針は、12時の位置にあるものを示しており、弾性針はアーモンド形であり、先端は出力軸から最も遠い位置にある。
図2図1と同様な形態の図であり、弾性針が6時の位置にあるような同じ携行型時計を示している。したがって、弾性針はハート形であり、先端は出力軸に最も近い位置にある。
図3図1と同様な形態の図であり、同じ位置にあり、アーモンド形の弾性針を備える同じ携行型時計を示している。この図は、出力軸を中心として、8時から12時の位置までの120°の角度において長くなっており、12時から4時の位置までの120°の別の角度において短くなっているような先端の軌跡を示している。この軌道は、8時から12時の位置まで及び12時から4時の位置までの約240°の角度において、偏心している円の軸を中心とする実質的に円形である。
図4図2と同様な形態の図であり、同じ携行型時計を示している。これにおいて、針の先端が4時の位置にあり、この4時の位置よりも前に発生した形の変化の後に、この弾性針はハート形になっている。
図5図4と同様な形態の図であり、同じ携行型時計を示している。これにおいて、針の先端が8時の位置にあり、まだハート形である。先端が円を描くように図4及び図5の間を移動した後にまだ新しく形が変わっていないものを示しており、この8時の位置の後に、図3に示しているアーモンド形が再現される。
図6】応力を受けている動作位置における図1~5の弾性針を上から見た図であり、この位置においては、弾性針の2つのフレキシブルな細長材の端において弾性針が備える2つの端パイプが互いに整列しており重なり合っており、各パイプは異なる車セットによって駆動される。
図7】先端に、表盤の特定の視認を可能にするように構成しているアイ部があるような図6に対する代替的実施形態を示している図である。
図8図1と同様な形態の図であり、同じ位置にある同じ携行型時計を示している。弾性針が剥き出しのアーモンドの形となっており、弾性針は、応力を受けていない状態にあり自由であり、その一方のパイプのみによって駆動車セットに固定される。
図9図8の携行型時計を左側から見た図である。
図10図1と同様な形態の図であり、同じ位置にある同じ携行型時計を示している。弾性針は、その2つのパイプを接続する分割可能要素を備え、この分割可能要素は、計時器用ムーブメント上における弾性針の組み付け、そして、第1のパイプの上に第2のパイプを配置するための第2のパイプの取り扱いを容易にし、この後に、時計技師が分割可能要素を2つのパイプに接続する脆弱な結合を壊す。
図11】本発明に係る表示機構の概略的な分解図であり、図の底部にある動力取り出し機構が、第1のパイプを駆動するための第1のギヤ列と、第2のパイプを駆動するための第2のギヤ列との2つのギヤ列を駆動するように構成している。矢印は、運動の伝達を示している。ギヤ列は、シェープドギヤ列を備え、これらは、一方のパイプの他方のパイプに対する回転を加速したり安定化させたり又は遅くしたりするように構成している。分割可能要素がない全体的に自由な状態である弾性針を示している。また、この図は、弾性針と同軸であり、他の情報、特に、時間情報、を表示するための伝統的な針を示している。
図12】本発明の1つの代替的実施形態に係る表示機構の斜視図である。前記入力車セットは、計時器用ムーブメントの出力車セットと係合するように構成しており、駆動シャフトとキャノンピニオンに対して同軸であり、このキャノンピニオン上にて第1のパイプが組み付けられた状態で示されている。第2のパイプが駆動シャフト上の第1のパイプと同軸に配置される前に、前記弾性針が自由状態となっている様子が示されている。各シェープド車には、シェープドギヤ列効果を正しく発揮させるような角度的マーキングがある。
図13図12と同様な図であり、図14の断面が形成される切断面の位置を示している。
図14】本発明に係る機構を駆動する計時器用ムーブメントについての図13に示している平面における部分断面図である。
図15】2段ギヤ列を上から見た図を示しており、これは、各段の角トラベルを分配しており、各段はシェープドギヤ列を備える。
図16】本発明の1つの代替的実施形態に係る表示機構を上から見た図である。前記入力車セットは、前記計時器用ムーブメントの出力車セットと係合するように構成しており、前記出力軸とは別個のものであり、各ギヤ列は、各段の角トラベルを分配するように2つの段を備え、各段は、シェープドギヤ列を備える。
図17図17~20は、シェープドギヤ列の構成を示している。図17は、針の半径方向の長さをその2つのパイプの間の偏差の角度に応じて変えるための空間ルールの選択を示している。この図は、入力角度に応じた出力角度を示している。
図18】選択された中心間距離に応じた歯列の原始プロファイルの計算を示しており、これによって、この距離を作る。
図19】所定の歯数に応じた駆動歯列の計算を示している。
図20】従動歯列の計算を示しており、これによって定めたプロファイルに2つの車を切断することができる。
図21】座標が反転している図17と同様な図であり、針の半径方向の伸長、針の長さの安定化、針の短縮化の3つの連続する領域を示している。
図22図3~5に示している3つの状態の重なり合いを上から見た図であり、矢印は、針の先端の12時と4時の位置の間の針の収縮段階CO、4時と8時の位置の間の延びが一定な安定段階ST、及び8時と12時の位置の間の緩和段階DEを強調している。
図23】移動角度に応じた弾性針のフレキシブルな区画の間のトルクの変化を縦軸に沿って示している図である。第1の領域において、トルク消費によって弾性針の長さが小さくなっており、第2の段階においては、実質的に一定のトルクで針の長さを維持し、第3の段階においては、トルク回復によって針が伸長している。
図24】パイプの回転角度に応じたパイプ上のトルクの変化を縦軸に沿って示している図である。
図25】パイプの回転角度に応じた針の半径方向の延びを縦軸に沿って示している図である。
図26】2つの非軸対称の車を備えるシェープドギヤ列を上から見た図を示しており、互いに対するこれらの車のインデクシングのためのマーキングを備える。
図27】インボリュート歯列を備えるこのような車の1つを示しており、この歯列は拡大している。
図28】正弦歯列を備えるこのような車の1つを示しており、この歯列は拡大している。
図29】図示していない弾性針のパイプに限定される本発明に係る表示機構の分解斜視図を示している。この機構は、差動ギヤ入力カムを支持する2つの固定フランジの間を移動することができる遊星キャリアフレームによって支持される2つの差動ギヤを備え、このように示されているアセンブリーは、既存のムーブメントに適合することができる付加的なユニットを形成する。弾性針の2つのパイプは、この場合、このようなムーブメントの出力を形成するように構成しているカノンピニオンを中心として同軸である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、計時器又は科学的装置のための表示インジケーターに関する。
【0015】
MONTRES BREGUET SAによる欧州特許文献EP2863274及びEP3159751は、弾性針を用いる計時器用表示を開示しており、本発明に係る表示機構を作るためにその特徴を直接用いることができる。
【0016】
回転式インジケーター、特に、弾性針、を用いる特定の場合に基づいて本発明を説明するが、これに限定されない。しかし、本原理は、空間における運動の軌道が円形ではないインジケーター、例えば、線形のカーソルを用いるもの、にも適用可能である。フレキシブルなインジケーターを針に適用することのために本発明を詳細に説明しているが、他の平面的又は三次元的インジケーターの形にも適用可能である。
【0017】
同様に、ギヤ列を備える駆動手段について以下に説明しているが、本発明は、電子的装置又は電気的装置、クオーツ式携行型時計又は他のデバイスのためのアナログ表示手段にも同様に適用可能である。
【0018】
本発明の原理は、少なくとも1つのインジケーター、特に、針、例えば、携行型時計用の分針、の長さが可変であり、又は半径方向の延びが可変であり、又は形が可変であるような表示機構を作ることである。
【0019】
本発明は、さらに、少なくとも1つの弾性針1を備える幾何学的構成が可変な計時器用表示機構10に関する。この弾性針1は、図示している特定の場合(これに限定されない)において、少なくとも1つのフレキシブルな細長材3と単一のフレキシブルな細長材3と一体化された第1の駆動パイプ2を備える。
【0020】
表示機構10は、入力車セット71を備え、これは、ムーブメント20によって入力軸のまわりを回転するように駆動されるように構成しており、基準方向に対する入力角度を定める。
【0021】
弾性針1は、フレキシブルな細長材3の第1の端と一体化された第1の駆動パイプ2と、及びこのフレキシブルな細長材3の別の端と一体化された第2の駆動パイプ4とを備え、弾性針1には、表示インデックス又は先端があり、これは、第1のパイプ2と第2のパイプ4の両方がいかなる応力も受けておらず互いに離れているようなこの弾性針1の無応力の自由状態において、第1のパイプ2からも第2のパイプ4からも離れている。この弾性針1の動作位置は、第1のパイプ2と第2のパイプ4が出力軸Dを中心に互いに同軸であるような応力を受けている位置である。
【0022】
表示機構10は、第1のパイプ2を出力軸Dのまわりに駆動するための第1の駆動手段11と、及び第2のパイプ4をこの出力軸Dのまわりに駆動するための第2の駆動手段13とを備える。
【0023】
これらの第1の駆動手段11と第2の駆動手段13は、出力軸Dを中心とする第1のパイプ2の角位置に対して第2のパイプ4の角位置を変えることによってフレキシブルな細長材3を変形させ、また、出力軸Dを中心とする表示インデックス又は先端の半径方向の位置を変えるように構成している。
【0024】
1つの具体的な実施形態において、弾性針1、具体的には、そのフレキシブルな細長材3は、少なくとも1つの先端6において端どうしがつながれる構成でつながれる複数のフレキシブルな区画5、5A、5Bを備え、この先端6は、前記のようなインデックスを形成するように構成しており、好ましくは、2つの連続するフレキシブルな区画は、このような先端によってつながれる。
【0025】
図示している場合において、フレキシブルな細長材3の第1のフレキシブルな区画5Aは、第1のパイプ2と第1の先端6の間に延在している。
【0026】
特に、本発明は、表示に用いられる単一の先端6によってつながれる2つのフレキシブルな区画5を針が備えるような最も一般的な場合について示している。
【0027】
表示機構10は、出力軸Dのまわりに第1のパイプ2を駆動するための第1の駆動手段11と、少なくとも第1のフレキシブルな区画5に応力を与えるための第2の応力付与手段12とを備え、この第2の応力付与手段12は、出力軸Dに対する少なくとも第1の先端6の位置を変えるように構成している。したがって、第1の先端6は、第2の応力付与手段12によってフレキシブルな細長材3に与えられる力に応じて第1のパイプ2から変わる可変距離にある。
【0028】
図1~5は、特定の場合におけるこのような機構を示しており、弾性針1は、単一の先端6を備え、これは、そのトラベルの上部によって、出力軸に対して偏心している円を追従し、そのトラベルの下部によって、出力軸を中心とした別の円を追従する。当然、これは特定の場合におけるものであり、機構10は、同じ楕円形の携行型時計の場合において、ケースの輪郭、又は製品を見せる他の任意の輪郭を追従するような寸法構成にすることができる。
【0029】
本発明によると、第1の駆動手段11、及び/又は第2の応力付与手段12、特に、これに備えられる第2の駆動手段13はそれぞれ、第1のギヤ列111及び/又は第2のギヤ列131を備え、これは、角トラベルの一部にわたって、少なくとも第1のパイプ2及び/又は第2のパイプ4の速度を加速したり、安定させたり、遅くしたりするように構成している。
【0030】
特に、第1の駆動手段11と、第2の応力付与手段12、特に、これが備える第2の駆動手段13はそれぞれ、少なくとも1つの第1のギヤ列111又は少なくとも1つの第2のギヤ列131を備え、これはそれぞれ、第1のパイプ2又は第2のパイプ4の角トラベルの少なくとも一部にわたって、第1のパイプ2又は第2のパイプ4の速度を加速したり安定化したり、遅くしたりするように構成している。
【0031】
図1~5に示している1つの特定の実施形態において、第1の駆動手段11と第2の応力付与手段12は、出力軸Dを中心とする角トラベルの全体にわたって弾性針1を駆動し、表示面P上又は表盤上への射影における弾性針1の異なる角位置における弾性針1の形を、フレキシブルな細長材3に含まれるフレキシブルな区画5:5A、5Bが第1のパイプ2の外側の経路を横断しないような少なくとも1つの第1の形状と、フレキシブルな細長材3に含まれるフレキシブルな区画5:5A、5Bが第1のパイプ2の外側の経路を交差するような少なくとも1つの第2の形状にするように構成している。 図面に示している特定の場合(これに限定されない)では、この第1の形状はアーモンド形であり、この第2の形状はハート形である。弾性針1が楕円によって形成される表面領域を移動する別の代替的実施形態において、この針は、その回転にわたって、第1の形状と第2の形状の交互構成となっていることができる。例えば、楕円の長軸の両端のそれぞれがアーモンド形となっており楕円の短軸の両端のそれぞれがハート形となっていることができる。
【0032】
特に、欧州特許文献EP2863274及びEP3159751に開示されているように、弾性針1は、第2の駆動パイプ4を備え、これもフレキシブルな細長材3と一体化される。したがって、第2の応力付与手段12は、弾性針1が組み付けられた応力を受けている状態にあるときに、第2のパイプ4の第2の駆動手段13を備える。この弾性針の組み付けられた状態において、第1のパイプ2は、必ずしも必要ではないが好ましいことに予応力が与えられた動作状態となっており、第1の駆動手段11によって駆動され、かつ、第2のパイプ4は、必ずしも必要ではないが好ましいことに予応力が与えられた動作状態となっており、第2の駆動手段13によって駆動される。また、先端6の少なくとも1つは、第1のパイプ2と第2のパイプ4がいずれも何ら応力も受けていない弾性針1の無応力の自由状態において、第1のパイプ2からも第2のパイプ4からも離れており、この第1のパイプ2と第2のパイプ4は、この弾性針1の自由状態において、互いに離れている。
【0033】
フレキシブルな細長材3が1つの第1のフレキシブルな区画5A及び1つの第2のフレキシブルな区画5Bのみを含むような図示している特定の場合において、これらをつなぐ1つのこのような先端6のみが存在する。したがって、特に、前記第1のフレキシブルな区画5Aは、第1の端52において第1のパイプ2を支持しており、第1のフレキシブルな区画5Aにつながれる前記第2のフレキシブルな区画5Bは、第2の端54において第2のパイプ4を支持する。また、弾性針1の自由状態において、第1の端52と第2の端54は、互いに離れている、ないし第1のフレキシブルな区画5Aと第2のフレキシブルな区画5Bがつながれる先端6から互いにゼロではない角度を形成する。
【0034】
特に、第2のパイプ4の第2の駆動手段13の出力は、弾性針1が組み付けられた状態にあるときに、第1のパイプ2の第1の駆動手段11の出力と同軸である。しかし、この構成は、特に逆行表示の場合には、必須ではなく、このような場合には、第1のパイプ2と第2のパイプ4の軸が異なるようにすることができる。
【0035】
本発明によれば、第1の駆動手段11と第2の駆動手段13は、加速又は減速デバイスを備え、これは、角トラベルの少なくとも一部にわたって、少なくとも第1のパイプ2及び/又は第2のパイプ4の速度を加速したり安定化したり、又は減速させたりするように構成している。
【0036】
1つの代替的実施形態において、第1のパイプ2は、入力角度の値に対して前進していたり又は遅れていたりする。これは、入力角度に対する第2のパイプ4の遅れ又は進みに対して対称的であり、これによって、第1の先端6は、出力軸Dと基準に対して、常に入力角度と等しい角度を表示する。
【0037】
別の代替的実施形態において、第1のパイプ2は、入力角度の値に対して進んでいたり又は遅れていたりする。これは、絶対値として、入力角度に対する第2のパイプ4の遅れ又は進みとは異なり、これによって、第1の先端6は、そのトラベルの長さ全体にわたって、出力軸Dと基準に対して、入力角度に対して変わる角度を表示する。この入力パイプに対する特定の進み及び/又は遅れがある構成によって、針が表盤上のみにおいて時間(又は別の表示)を指し示すことが可能になり、特に、通常ではない表示の場合、例えば、正方形の軌道上にて12個の等間隔の区画に時間が分割される正方形の軌道の場合、30°離れる12個のインデックスと同じように管理することができない。
【0038】
別の代替的実施形態において、針1は、全体的に非逆行性の経路を移動するように構成しており、この全体的な経路にわたって、第1のパイプ2の平均速度は、前記第2のパイプ4の平均速度と等しい。
【0039】
以下のような多くの構成を考えることができる。すなわち、
- 針のアームが対称的であれば、針が正しい時間を指すように対称的な進みと遅れが必要である。
- 針のアームが非対称的であれば、針が正しい時間を指すように特定の進みと遅れが必要である。
- これは、針が正しい時間を指すことを前提としている。また、目盛りを得ることができ、この目盛りは、上述のように30°ごとのように離れていない。
【0040】
以下において詳細に説明する1つの特定の実施形態において、加速又は減速デバイスは、第1の成形ギヤ列111及び/又は第2の成形ギヤ列131を備える。
【0041】
以下において詳細に説明する別の特定の実施形態において、加速又は減速デバイスは、第1のパイプ2の駆動ギヤ列上に第1の差動ギヤ912、及び/又は第2のパイプの駆動ギヤ列上に第2の差動ギヤ914を備えるデバイスと、及びこのような差動ギヤ912、914の入力を形成する少なくとも1つのカム902、904とを備える。
【0042】
別の実施形態において、加速又は減速デバイスは、必要な加減速を行うように適切に構成している単一のギヤ列を備える。
【0043】
特に、図11~20に示しているように、第1の駆動手段11と第2の駆動手段13はそれぞれ、少なくとも1つの第1のシェープドギヤ列111及び少なくとも1つの第2のシェープドギヤ列131を備え、これは、角トラベルの一部にわたって、第1のパイプ2又は第2のパイプ4の速度を加速したり安定させたり又は遅くしたりするように構成している。ここで、用語「シェープドギヤ列」は、ギヤ列の少なくとも1つの車が軸対称的ではないことを意味すると理解することができる。特に、このギヤ列の少なくとも2つの逆作用の車は、軸対称的ではなく、最小のクリアランス、かつ、一定の中心間距離であるように、互いに恒久的に噛み合うように構成している。
【0044】
特に、第1のシェープドギヤ列111と第2のシェープドギヤ列131は、弾性針1の角トラベルの少なくとも一部にわたって又は弾性針1の角トラベルの一部のみにわたって、第1のパイプ2をそれぞれ加速又は制動し、第2のパイプ4をそれぞれ制動又は加速するように構成している。言い換えると、一方のパイプには、入力角度に対して角度的な進みが発生し、他方のパイプには、入力角度に対して角度的な遅れが発生する。
【0045】
したがって、本発明の1つの特定の実施形態において、第1のパイプ2には、前記入力角度の値に対して進み又は遅れがあり、これは、同じ入力角度に対する第2のパイプ4の遅れ又は進みに対称的であり、これによって、第1の先端6は、常に、出力軸D及び基準方向に対して、入力角度と等しい角度を表示する。
【0046】
したがって、合計角トラベルCATが360°であるような図3~5の実施形態を考えると、針1の先端6が12時の位置にある図3に示している位置から、時計まわりに回転することによって図4に示している4時の位置に移動すると、第2のフレキシブルな区画5Bの第2のパイプ4は、60°分遅くなり、第1のフレキシブルな区画5Aの第1のパイプ2は60°分速くなっている。特に、針1のフレキシブルな区画5のいずれも単独で時間を示していない。針1の先端6によって示される時間情報を決めるのは、2つのパイプの回転の結果のみである。図4の位置と図5の8時の位置の間で、パイプどうしがオフセットしているようにしてパイプは互いに同期し続ける。図5の8時の位置から図3の12時の位置へと移動するために、逆のことが行われる。すなわち、第2のフレキシブルな区画5Bの第2のパイプ4は60°分速くなっており、第1のフレキシブルな区画5Aの第1のパイプ2は60°分遅くなっている。
【0047】
完全な1回転を示す連続的な計時器用表示の特定の場合に基づいて本発明を図示している。本発明を任意の表示、特に、逆行性表示、に適用することができることを理解することができる。
【0048】
本発明によると、第1のシェープドギヤ列111と第2のシェープドギヤ列131は、第1のパイプ2と第2のパイプ4を対称的に制御するように構成しており、これによって、第1のフレキシブルな区画5Aと第2のフレキシブルな区画5Bは、出力軸Dを中心とする半径方向に対して対称的であり、この半径方向を、第1のフレキシブルな区画5Aと第2のフレキシブルな区画5Bがつながれる先端6が、弾性針1の角トラベルの少なくとも一部にわたって通過する。この構成に限定されないが、この構成には、第1のフレキシブルな区画5Aと第2のフレキシブルな区画5Bに対称的な応力を与えるという利点がある。
【0049】
前記第1のシェープドギヤ列111及び/又は前記第2のシェープドギヤ列131はそれぞれ、互いに噛み合うことによって係合し歯列の幾何学的な支持体、すなわち、原始曲線、が軸対称的ではないように構成している少なくとも1対の車を備える。
【0050】
特に、第1の駆動手段11及び/又は第2の駆動手段13は、少なくとも1つの第1のギヤ列段115、135及び少なくとも1つの第2のギヤ列段116、136を備え、これらのギヤ列段は、ギヤ列段ごとに分配して、弾性針1の角トラベルの一部にわたって弾性針1の形状変換の一部を各ギヤ列段が制御するように構成している。この分配によって、変形の一部を各段にわたって分配することが可能になり、このことによって、各シェープドギヤ列において、幾何学的構成が円形に近い車を保持し、これによって、歯列の適切なギヤリングを可能にし、その摩耗を防ぐ。特に、シェープドギヤ列は、円形ではないが過度に変形していてはならない。すなわち、その形状は、アークを発生させることなく、中心間距離のばらつき及び製造誤差の影響を大きく受けないように、ギヤリングを可能にしなければならない。したがって、このことによって、歯列の原始曲線が円形から離れすぎている場合に切断された歯が発生することがある干渉欠陥を防ぐことができる。したがって、針を動作させるために形状を十分に非円形にすることと、形状を摩耗に耐えるようにすることとの間で、妥協点が見出す必要がある。複数の段にわたっての分配によって、これらの条件を満たすことが可能になる。すなわち、各段は針の変形に関与するが、その原始曲線は円形に近いままであり、このことは、段ごとの分配と呼ばれ、これによって、これらの段化されたギヤ列の全体的な累積が針の所望の変形をもたらす。
【0051】
図面には、2つのギヤ列段を備える1つの代替的実施形態(これに限定されない)を示している。この2つという数には限定されず、段の数は、ムーブメントの全体的な厚み及び摩擦による効率損失によってのみ制限される。
【0052】
特に、第1のギヤ列段115、135と第2のギヤ列段116、136の両方はそれぞれ、第1のシェープドギヤ列111と第2のシェープドギヤ列131を備える。
【0053】
図11~20は、このようなシェープドギヤ列の特定の具体的な構成を示している。
【0054】
図11は、このような機構10の機能を概略的に示しており、矢印は、計時器用ムーブメント20のレベルにおける動力取り出し機構21からパイプへの運動の伝達を表しており、この動力取り出し機構21は、図の底部に表されており、機械的又は電子的であることができ、同じ入力車セット71を介して以下の第1のギヤ列と第2のギヤ列の2つのギヤ列を駆動するように構成している。
- 第1のギヤ列は、第1の軸DAを中心とするアイドラー車79及び80と、及び第1のパイプ2を駆動するための主回転軸Dを中心とする車73、78及び81とを備える。
- 第2のギヤ列は、第2の軸DBを中心とするアイドラー車74、75と、及び第2のパイプ4を駆動するための主回転軸Dを中心とする車76とを備える。
【0055】
なお、予応力に起因する弾性針の遊び補償の結果としてギヤ列全体が張る。
【0056】
また、図11は、弾性針1と同軸であり、他の情報、特に、時間情報、を表示するための伝統的な針100を示している。
【0057】
図12~14は、弾性針1によって分を表示するための本発明の1つの代替的実施形態に係る表示機構10をより具体的に示している。この代替的実施形態において、入力車セット71は、入力軸D0にしたがって、計時器用ムーブメント20の出力車セット21と係合するように構成しており、固定された管70上にてガイドされる。この入力車セット71は、キャノンピニオンであり、時間をセットすることを可能にする摩擦によって、同軸である駆動キャノンピニオン72を直接又はインデンティングを介して駆動するように構成している。
【0058】
この駆動キャノンピニオン72は、軸対称的であり、第2の相補的シェープド車79と噛み合う第1のシェープド車78を駆動し、この第2の相補的シェープド車79は、(遊び補償付きで)第1の軸DAのまわりにアイドル回転するように取り付けられ、第3のシェープド車80と回転可能に一体化されており、この第3のシェープド車80は、第4の相補的シェープドアイドラー車81を備え、この第4の相補的シェープドアイドラー車81は、この場合、パイプの出力軸Dを中心に回転し、第1のパイプ2を取り付けるためのキャノンピニオン82を備える。
【0059】
この同じ駆動用キャノンピニオン72は、第6の相補的シェープド車74と噛み合う第5のシェープド車73を駆動し、この第6の相補的シェープド車74は、第2の軸DBのまわりにてアイドル回転するように取り付けられ、第8の相補的シェープドアイドラー車76と噛み合う第7のシェープド車75と回転可能に一体化されており、この第8の相補的シェープドアイドラー車76は、この場合、パイプの出力軸Dを中心に回転し、第2のパイプ4が取り付けられたシャフト77と一体化されている。
【0060】
各シェープド車は、図26に示しているように、シェープドギヤ列のインデクシングを正確に確実にするために角度的マーキングを備え、図26には、2つの非軸対称の車75及び76を備えるシェープドギヤ列を示しており、これには、互いに対するインデクシングのためのマーキング275、276があり、また、設置を容易にするオブロング構造175、176があり、このようにして、特に、互いに一体化し、ピン又は同様の要素によってインデクシングされることが可能になる。
【0061】
駆動キャノンピニオン72は、さらに、時軸DHを中心に回転する車セットに含まれる第9の車91を駆動し、この車セットは、時針100を受ける時キャノンピニオン94の車93を駆動するピニオン92を備える。
【0062】
図15及び16は、計時器用ムーブメントの出力車セットと係合するように構成している入力車セットが、この場合は出力軸Dから離れている、入力軸D0を中心として回転するような本発明の1つの代替的実施形態を示している。各ギヤ列は、各段の角トラベルを分配するように2つの段を備え、各段はシェープドギヤ列を備える。
- 第1のギヤ列は、第2の相補的シェープド車102と噛み合う入力軸D0を中心に回転する第1のシェープド車101を備える第1の段を備え、この第2の相補的シェープド車102は、第1のマイナー軸D1を中心にアイドル回転するように取り付けられている。この第2の相補的シェープド車202は、第4の相補的シェープド車204と噛み合う第3のシェープド車203と回転可能に一体化されており、この第4の相補的シェープド車204は、出力軸Dを中心に回転するように取り付けられ、他のパイプを取り付けるように設計されている。
図16に別個に示されている第2のギヤ列は、第2の相補的シェープド車202と噛み合う入力軸D0を中心に回転する第1のシェープド車201を備える第1の段を備え、この第2の相補的シェープド車202は、第2のマイナー軸D2を中心にアイドル回転するように取り付けられる。この第2の相補的シェープド車202は、第4の相補的シェープド車204と噛み合う第3のシェープド車203と回転可能に一体化されており、この第4の相補的シェープド車204は、出力軸Dを中心に回転するように取り付けられ、他のパイプを取り付けるように設計されている。
【0063】
同じ針1の2つのフレキシブルな区画の間の運動が半径方向の対称性を有するような構造の場合には、1つが右上がりに、もう1つが上下逆さまに取り付けられた、同じシェープドギヤ列の2つの類似したセットを用いる。
【0064】
図17~20は、シェープドギヤ列の構成を示しており、これは、2つのパイプの間の偏差角に応じた針の半径方向の長さを変えるための空間ルールの選択から始まる。図17は、針の2つのパイプのうちの1つのパイプに対する入力角度に応じた出力角度を示している。図18に示しているように、この空間ルールによって、歯列の原始プロファイルを、その歯列を作るために選択された中心間距離にしたがって、計算することが可能になる。そして、図19にしたがって、所定の歯数、そして、選択されたプロファイルのタイプ、特に、インボリュート又は正弦タイプの歯列、に応じた駆動歯列の計算が行われ、図20にしたがった駆動歯列の計算によって、2つの車を前記のように定められたプロファイルの形に切断することができる。
【0065】
図17及び20は、針が半径方向に伸長している領域、2つのパイプのうちの一方のパイプの出力角度と機構における入力角度の間の比率が実質的に一定であるような針の長さが安定化されている領域、及び針が短縮化されている領域の3つの連続する領域を伴う空間ルールを示している。
【0066】
図22は、図3~5に示している3つの状態の重なり合いを示しており、矢印は、針1の先端6の12時と4時の位置の間の針1の収縮段階CO、4時と8時の位置の間の延びが一定な安定段階ST、及び8時と12時の位置の間の緩和段階DEを示している。この分配は、シェープドギヤ列、特に、複数のシェープドギヤ列段を備える機構、を用いることによって可能になる。これは、形状の大きな変化を可能にするために、特に、ハート形の場合と同様にフレキシブルな区画が経路を横切ることを可能にするために、パイプに十分な角度的変位を与えることができる。これらのシェープドギヤ列によって、一方のパイプを他方に対して安全に減速させることが可能になる。
【0067】
図27の車は、図22の場合の最適化の一例である。図示しているような140°-80°-140°の角度のまわりの軌道を修正するために、よりバランスのとれている120°-120°-120°の代わりに、段ごとにいずれの特定の分配もないように車を設計しなければならない。すなわち、上段と下段がそれぞれ角度変換の半分を実行するのであれば、この車は、非常に大きく変形したものとなり、歯が非常に大きく傾斜し、このような歯は、脆く、機械加工が難しい。別の分配、例えば、底の段における変形が20%で上の段における変形が80%である分配、によって、丸い形に近い車を得ることができ、これは、機械加工が容易であり、標準に近い歯を備え、したがって、運動学的及びトライボロジー的なパラメーターが改善されており、摩耗が少ない。
【0068】
図23は、移動角度に応じた弾性針のフレキシブルな区画の間のトルクの変化を示しており、第1の領域において、弾性針の長さがトルク消費に伴って短くなっており、第2の段階において、針の長さを実質的に一定のトルクに維持しており、第3の段階において、トルク回復に伴って針が伸びている。図24は、パイプの回転角度に応じたパイプ上のトルクの変化を示している。図25は、パイプの回転角度に応じた針の半径方向の延びを示している。
【0069】
弾性針1は、様々な異なる方法で製造することができる。
【0070】
別の実施形態において、自由状態において、弾性針1は、第1のパイプ2と第2のパイプ4を備える単一の平面レベル上にて延在しており、弾性針1は、したがって、第1のパイプ2と第2のパイプ4が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれた形態で取り付けられるように構成している。
【0071】
1つの代替的実施形態において、自由状態において、弾性針1は、第1のパイプ2を備える第1の平面レベル上に延在しており、かつ、第2のパイプ4を備える第2の平面レベル上に延在しており、第1のパイプ2を支持する第1のフレキシブルな区画5Aと、第1のフレキシブルな区画5Aにつながれており第2のパイプ4を支持する第2のフレキシブルな区画5Bの間の先端6において、第1の平面レベルと第2の平面レベルの間の接続領域を備え、弾性針1は、第1のパイプ2と第2のパイプ4が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれていない形態で取り付けられるように構成している。別の特定の代替的実施形態において、弾性針1が2つ以上のフレキシブルな区画5を備える場合、自由状態において、弾性針1は、高々フレキシブルな区画5の数と同じ数までの数の平行なレベル上にて延在しており、第1のパイプ2と第2のパイプ4が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置において、ねじれていない形態で取り付けられるように構成している。
【0072】
図10に示しているように、組み付けを容易にするように意図された特定の代替的実施形態において、自由状態において、弾性針1は、第1のパイプ2と第2のパイプ4をつないでいる分割可能要素24を備え、これによって、第1のパイプ2又は第2のパイプ4の駆動車セットに対する弾性針1の組み付けを容易にし、この分割可能要素24は、壊れることができ、第1のパイプ2と第2のパイプ4が互いに重なり合っているような応力を受けている動作位置へと弾性針1を移行させることができるように構成している。
【0073】
図7は、弾性針1が少なくとも1つのアイ部60を備える1つの特定の代替的実施形態を示している。このアイ部60は、機構10又は機構10が取り付けられるように配置される計時器用ムーブメント20が備える表盤61上に現れる情報を読み取るための開口を形成するように構成している。例えば、このアイ部によって、GMTアプリケーションにおいて町や都市を見ること、又は表示機構が2回転にわたって駆動されているような特定のアプリケーション0時から12時までのAM時間を13から24時までのPM時間と区別することが可能となる。この第1の回転においては、AM時間を表示するために弾性針1に特定の延びがあり、第2の回転においては、PM時間を表示するために異なる延びがある。当然、この代替的実施形態は、針1の先端6による表示にも適合し、このようなアイ60の存在は、ユーザーの読み取りの快適性を向上させる。また、図7は、このアイ部60の両側にある2つの内側インデックス及び外側インデックスを示しており、このアイ部60によって、採用された表盤の構成に応じて特定の読み取りが可能になる。本発明の主な利点の1つは、表盤に関して高い設計自由度を可能にし、ツールビヨン又は他の複雑機構の存在などのおかげで、利用できない領域の外側に特定の表示領域を配置することができることである。
【0074】
好ましいことに、針1は、「LIGA」法にしたがって微細加工することができる材料によって作られ、特に、ニッケル-リンNiP’_12_’又は類似の材料によって作られる。このような針は、金めっきされているものであることができ、又はこのような材料に対する接着性が満足的であるような他の色を受けているものであることができる。針1は、PVD、CVD、ALD、電着、塗装、ラッカー塗装、又は他の被覆又はイオン化のような異なる方法を用いて着色することができる。
【0075】
針1は、宝飾品のセッティング又は類似のものを備えていること、及び/又はエンジンターニング、彫刻、角度付け、又はエナメル化による装飾が施されていることができ、この装飾は、パイプの周部、アイ部の周部、先端のような変形が低い領域に留まることができる。
【0076】
特に、機構10は、計時器用ムーブメント20に接続されるように構成している付加的なモジュールを形成し、第1の駆動手段11と第2の応力付与手段12は、ムーブメント20に含まれる単一の出力21、例えば、1時間で回転するキャノンピニオン又は分車セット、によって駆動されるように構成している共通の入力71を備える。
【0077】
1つの代替的実施形態において、シェープドギヤ列に加えて又はその代わりに、機構10は、ムーブメント20によって駆動されるように構成している入力車セット71と第1のパイプ2及び/又は第2のパイプ4との間に、少なくとも1つの段において、カム902、904を備える。このカムは、差動ギヤ912、914を制御するように構成しており、その第1の入力は、特に、入力車セット71又は車セットによって形成され、その第2の入力は、このカム902、904によって制御される、車セット、特にラック、であり、その出力は、第1のパイプ2又は第2のパイプ4にそれぞれ運動を伝達するためのギヤ列と噛み合う。
【0078】
この代替的実施形態の第1のアプリケーションにおいて、機構10は、少なくとも1つの段のレベルにおいて、入力車セット71と第1のパイプ2の間にて、第1の差動ギヤ912を制御するように構成している単一のカム902を備える。この第1の差動ギヤ912の第1の入力は、入力車セット71によって形成されており、その第2の入力は、カム902によって制御される第1の車セット又は第1のラックであり、その出力は、ギヤ列と噛み合って運動を第1のパイプ2に、また、入力車セット71と第2のパイプ4の間にて伝達する。同じ単一のカム902は、第2の差動ギヤ914を制御するように構成しており、その第1の入力は、入力車セット71によって形成され、その第2の入力は、カム902によって制御される第2の車セット又は第2のラックであり、その出力は、第2のパイプ4に運動を伝達するためのギヤ列と噛み合う。
【0079】
この代替的実施形態の第2のアプリケーションにおいて、機構10は、少なくとも1つの段のレベルにおいて、入力車セット71と第1のパイプ2の間にて、第1の差動ギヤ912を制御するように構成している第1のカム902を備える。この第1の差動ギヤ912の第1の入力は、入力車セット71によって形成されており、その第2の入力は、カム902によって制御される第1の車セット又は第1のラックであり、その出力は、ギヤ列と噛み合って運動を第1のパイプ2に伝達する。そして、入力車セット71と第2のパイプ4の間にて、入力車セット71と第2のパイプ4の間に、入力車セット914によって駆動され第2の差動ギヤ914を制御するように構成している第2のカム904を備え、この第2の差動ギヤ914の第1の入力は、入力車セット71によって形成され、その第2の入力は、第2のカム904によって制御される第2のラックであり、その出力は、ギヤ列と噛み合って運動を第2のパイプ4に伝達する。
【0080】
カムを用いることによって、高度に非円形の軌道が可能になり、針のジャンプによってさらに可能になる。両方の差動ギヤに対して単一のカムを用いることによって、2つのパイプの同時ジャンプを、例えば深夜に、行うことが可能になる。第1の差動ギヤは、第1のパイプのためのカムの情報を追加し、第2の差動ギヤは、第2のパイプのための情報を減らす。
【0081】
別の特定の代替的実施形態において、ムーブメント20によって駆動されるように構成している入力車セット71と、第1のパイプ2及び/又は第2のパイプ4との間に配置されるギヤ列機構が備える少なくとも1つの車には、少なくとも1つの段のレベルにおいて、不完全な歯列があり、その一又は複数の欠損歯それぞれは、欠損歯に対応する空間の通過の際にパイプ2、4のうちの一方のみが回転することによって、弾性針1が緩み、弾性針1の先端6のはね返りを制御することを可能にする。
【0082】
特に、一又は複数の円形車を備え、又はさらにはすべての円形車を備えるギヤ列であって、少なくとも1つの円形車の一又は複数の歯が欠けているものを用いることができ、これによって、針が緩み、針1の先端6によって行われるいわゆるスパイラル表示トラベルの端においてジャンプすることが可能になる。例えば、第1のパイプが第2のパイプよりも速く回転し、かつ、駆動キャノンピニオン72が歯を局所的に欠いている場合、例えば2回転にわたって、針は収縮する傾向があり、欠損歯が第1のパイプを解放すると、針はそれに応じて動くが第2のパイプは動かず、針の先端ははね返る。このような代替的実施形態の利点は、伝統的な車の機械加工が可能であることである。
【0083】
図24は、このようなLIGA針1の短縮の間にこの針1の変形のために消費されるトルクが非常に低いレベルであることを示しており、これによって、ムーブメントの稼働に対してわずかな影響しか与えない。それにもかかわらず、エスケープの近傍であることに起因して、この摂動を可能なかぎり低減することは有利である。これは、典型的にはLIGA構造の場合に幅が100μm未満であり高さが200μm未満であるような非常に薄いフレキシブルな区画5を用いて得ることができる。図24は、角度に応じたトルク曲線が非常に平坦な底部を備えるU字形であることを示しており、この図24において、誘起されるスプリアストルクを最小化して、携行型時計の動作に対する摂動を最小化するように、トルク曲線の最低のレベルに対応する角度的な変形範囲を設計時に選択することが有利であることを理解することができる。特定の分配が行われる段がある設計によって、最適な角度範囲を選択するために役立つ。また、この角度範囲を正しく選択することによって、針1の区画5の厚みを増加させて、摂動トルクを著しく増加させることなく、針1を見やすくすることができる。
【0084】
比較すると、動作に対する誘起摂動は、日付機構のために午前0時の日付変更が発生させるものよりも小さい。
【0085】
針の形が単純な形のものを図示して本発明を説明しているが、非常に異なる針の形であることができる。例えば、非対称的な針は、互いに連結し同じ方向を向いている2つのV字形によって構成しており、各V字形の各アームは、一方のパイプと一体化されており、他方のアームの極端な端は、他方のV字形の同様な端とつながれている。代わりに、針は、2つのアームを備える針であって、2つの区画が第1の先端とつながっており2つのパイプに取り付けられており、2つの他の区画が第2の先端とつながっており、この第2の先端が第1の先端から離れており同じ2つのパイプに取り付けられているものであることができる。代わりに、針は、針を見やすくするために、フレキシブルな区画の中央領域にわたって厚くなった領域を備える針であることができる。
【0086】
本発明は、さらに、少なくとも1つのこのような表示機構10を備える計時器用ムーブメント20に関する。
【0087】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメント20を備え、かつ/又は少なくとも1つの当該表示機構10を備える、計時器30に関する。特に、この計時器30は携行型時計である。
【0088】
本発明は、さらに、少なくとも1つの当該計時器用ムーブメント20を備え、かつ/又は少なくとも1つの当該表示機構10を備える、科学的装置に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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