(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】防災時通信区画構成建築物及び防災時通信区画構成方法
(51)【国際特許分類】
H04M 11/04 20060101AFI20220331BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220331BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H04M11/04
G08B17/00 E
G08B25/10
(21)【出願番号】P 2021033577
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2017019080の分割
【原出願日】2017-02-03
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】江幡 弘道
(72)【発明者】
【氏名】万本 敦
(72)【発明者】
【氏名】岡安 克也
(72)【発明者】
【氏名】野竹 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170648(JP,A)
【文献】特開2013-068576(JP,A)
【文献】特開2012-123699(JP,A)
【文献】特開平08-287371(JP,A)
【文献】特開2014-063485(JP,A)
【文献】特開2016-015133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00-5/00
35/00-99/00
A62C2/00-99/00
G08B17/00
23/00-31/00
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災が発生した際に、防災要員が火災現場へ進入するために使用する進入経路上に、携帯端末と接続可能な有線端末が配置されて
おり、
前記有線端末が、防火扉が開状態から閉状態とする制御を行なう防災センターに有線で接続されている
ことを特徴とする防災時通信区画構成建築物。
【請求項2】
前記有線端末と前記携帯端末とが、当該携帯端末の端子を前記有線端末の端子の端子配列に変換する変換コネクタケーブルで接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の防災時通信区画構成建築物。
【請求項3】
前記有線端末が、前記進入経路に配置された火災報知設備に設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防災時通信区画構成建築物。
【請求項4】
火災が発生した際に、防災要員が火災現場へ進入するために使用する進入経路上に、携帯端末と接続可能な有線端末を配置
し、
前記有線端末が、防火扉が開状態から閉状態とする制御を行なう防災センターに有線で接続されている
ことを特徴とする防災時通信区画構成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災現場における延焼防止や避難誘導などの対応支援を行う、防災時における防災通信を実現する防災時通信区画構成建築物及び防災時通信区画構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より防災システムは、ビルディング等の建物において、例えば火災等が発生した場合に生じる人的、物的損害を最小限に抑えることができるようにするシステムとして用いられている。このような防災システムを建物に設置することにより、例えば火災が発生した場合に、消火、避難誘導、救助活動を安全かつ効果的に行うことができる。
【0003】
建物で火災が発生すると、管理者や警備員は、次の項目を順に行なって現場確認や避難誘導等を行う必要がある。つまり、火災発生→防災センターにて防災システムの表示より出火場所を確認→火災現場に持参する携行品を準備して装着→火災現場に移動(現場到着)→火災現場の確認→火災等の状況を防災センター等へ報告→消火器等による初期消火→スプリンクラー設備の作動状況の確認→逃げ遅れ等の確認→防火区画の形成・確認→排煙設備の起動・確認の順で対処を行う。このように、防災センターとの密な火災情報をやり取りする連絡によって、建物に常駐した防災要員(管理者や警備員など)は多くの項目を迅速に対処する必要があるが、建物の規模によっては多くの時間がかかる場合が想定される。そのため、従来は上記の活動時間を短縮させるために、建物に常駐する警備員の数を増加させることで補っていた。
【0004】
また、近年において、高層あるいは広大化した建物が建築されており、火災等の災害が発生した場合に、高層・広域であるがために今までの建物とは異なる問題が発生する。
このため、大規模化された建物に防災システムを設置する場合、その特殊性に応じた防災システムを構築している。例えば、地上11階以上の建物の場合、建物の用途にもよるが、通常、スプリンクラー設備、非常コンセント、非常放送設備、誘導灯の設置、カーテン等の防炎処置が義務づけられており、かつ避難設備、排煙設備等も安全に避難が可能なように工夫がされている。
例えば、建物内において、火災の発生した火災発生区域を特定し、消火活動、生存者の避難誘導及び生存者の救助活動を行う防災システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の防災システムは、火災が発生した火災発生区域から火災が延焼していない他の区域を防火扉を閉じて遮断して防火区画を形成する。このとき、防火扉を閉じたことにより、アクセスポイントが防火区画外となった場合、アクセスポイントからの電波強度が弱くなり、防災要員が防災センターとの通信、少なくとも防災センターからの火災状況の情報を受信することができなくなる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、防火扉を閉じることで、火災発生区域を他の領域と遮断することにより、防火区画を形成したとしても、防災要員が防災センターからの情報の受信を行なうことができる防災時通信区画構成建築物及び防災時通信区画構成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の防災時通信区画構成建築物は、火災が発生した際に、防災要員が火災現場へ進入するために使用する進入経路上に、携帯端末と接続可能な有線端末が配置されており、前記有線端末が、防火扉が開状態から閉状態とする制御を行なう防災センターに有線で接続されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の防災時通信区画構成建築物は、前記有線端末と前記携帯端末とが、当該携帯端末の端子を前記有線端末の端子の端子配列に変換する変換コネクタケーブルで接続されることを特徴とする。
【0010】
本発明の防災時通信区画構成建築物は、前記有線端末が、前記進入経路に配置された火災報知設備に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の防災時通信区画構成方法は、火災が発生した際に、防災要員が火災現場へ進入するために使用する進入経路上に、携帯端末と接続可能な有線端末を配置し、前記有線端末が、防火扉が開状態から閉状態とする制御を行なう防災センターに有線で接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、防火扉を閉じることで、火災発生区域を他の領域と遮断して 防火区画を形成したとしても、防災要員が防災センターからの情報の受信を行なうことができる防災時通信区画構成建築物及び防災時通信区画構成方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態による防災時通信区画構成建築物の構成例を示す概念図である。
【
図2】第1の実施形態における防災センターなどに設けられる防災時通信区画構成建築物における火災時制御装置を用いた防災通信システムの構成例を示す図である。
【
図3】データベース20に予め書き込まれて記憶されている異常時用アクセスポイントテーブルの構成例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態による火災時制御装置1の異常時用アクセスポイントの起動制御における処理の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態による防災時通信区画構成建築物の構成例を示す概念図である。
【
図6】防火区画602が形成される領域における、防火扉の開閉によるアクセスポイントからの電波強度の状態を説明する図である。
【
図7】第2の実施形態における防災センターなどに設けられる防災時通信区画構成建築物における火災時制御装置を用いた防災通信システムの構成例を示す図である。
【
図8】データベース20に予め書き込まれて記憶されているアクセスポイント無し防火区画テーブルの構成例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態による火災時制御装置1Aの異常時用アクセスポイントの起動制御における処理の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】防災要員が携帯する携帯端末に備えられたデータ端子を、火災報知設備の機器収容箱などに設けられているデータ端子の端子配列に変換する変換コネクタケーブルを説明する概念図である。
【
図11】非常口がある場合、アクセスポイントを非常口近傍に配置することを説明する概念図である。
【
図12】防災要員が火災の発生した階に侵入する際に用いる附室の電磁シールド構成について説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による防災時通信区画構成建築物の構成例を示す概念図である。本実施形態において、建築物として複数階のビルを例としており、
図1は複数階における所定の階のフロアを示している。中央領域101は、建築物におけるエレベータの縦動線の空間を示している。廊下102は、
図1に示す階のフロアにおける廊下である。部屋R1、R2、…、R7、…の各々は、廊下102に沿って配置されている。防火扉(あるいは防火シャッターD#1、D#2、D#3、D#4、…の各々は、廊下102において火災の発生した領域及び延焼した領域を、他の領域から隔離する防火区画を形成するために閉じる隔壁となる。本実施形態においては、防火区画を形成する構成を防火扉あるいは防火シャッターとして説明しているが、防火壁、防火戸、水膜シャッターなどを含め、建築物において火災となっている領域と延焼していない領域とを隔絶する防火区画を形成する装置及び機構であればどのような構成でもかまわない。
【0016】
すなわち、防火扉D#1、D#2、D#3、D#4、…の各々は、常時開放式防火扉であり、火災時のみに閉じられ、平常時には開放された状態となっている(空いている)防火扉である。火災の発生が火災感知器により感知されると、火災が発生している防火区画形成領域を防火扉により他の領域と遮断することにより防火区画とする。このため、防災センターの火災設備制御装置が火災感知器からの通知信号により、または火災感知器と防火扉との連動動作により、防火扉が開状態から閉状態とする制御を行なう。本実施形態においては、防火区画形成領域と防火区画とが同一の領域を示し、防火区画形成領域を防火扉で他の防火区画形成領域から遮断(遮蔽)することで防火区画が形成される。ここで、火災感知器としては、火災の熱を感知する熱感知器、火災の煙を感知する煙感知器、あるいは火災における炎の赤外線・紫外線を感知する炎感知器などが用いられる。
【0017】
開閉状態検出センサS#1は、防火扉D#1の開閉状態を検出するセンサである。開閉状態検出センサS#2は、防火扉D#2の開閉状態を検出するセンサである。開閉状態検出センサS#3は、防火扉D#3の開閉状態を検出するセンサである。開閉状態検出センサS#4は、防火扉D#4の開閉状態を検出するセンサである。開閉状態センサS#1~S#4の各々は、例えばマグネットセンサ、近接センサ、画像センサなど、防火扉が閉じた場合に感知情報として所定の電圧レベルの信号が出力され、防火扉の開閉検知が可能なものであれば何でも良い。階毎の開閉状態センサの出力を中継器(不図示)を介して、あるいは開閉状態センサから直接に、防災センターの後述する火災時制御装置1に送信するようにしても良い。開閉状態センサは、検出する感知情報と共に自身の開閉状態センサ識別情報を出力する。この開閉状態センサ識別情報は、開閉状態センサの各々を識別するための情報である。後述する火災時制御装置1における区画形成状況確認部11は、開閉状態センサ識別情報と防火区画識別情報との対応テーブルにより、供給された開閉状態センサ識別情報に対応する防火区画識別情報を検索し、いずれの防火扉が閉じられたのかを検出する(
図2)。
【0018】
平常時用アクセスポイントAP#1、AP#2、AP#3、…の各々は、平常時及び異常時の双方において、データの送受信を行なうために、所定の位置に配置されている。異常時用アクセスポイントEAP#1、EAP#2、…の各々は、異常時の際に、それぞれ自身が配置されている位置が防火区画に含まれている場合に起動される。すなわち、本実施形態において、異常時用アクセスポイントEAP#1、EAP#2、…の各々は、防火区画形成領域における防火扉が閉じられて防火区画が形成された際、その防火区画に対応した防火区画形成領域に平常時用アクセスポイントが配置されていない場合に、この防火区画の所定の位置に配置されている。附室301は、各階に配置されており、防災要員が対応する階における消火活動あるいは避難者の救出活動を行なう際の控え室である。非常階段302は、中央領域101におけるエレベータが使用不可となった場合に、防災要員あるいは避難者の階の移動を行なう動線となる階段である。非常用エレベータ303は、防災要員が火災の発生している階に、防災用具を携帯して移動する際の動線となるエレベータである。
【0019】
これにより、本実施形態においては、防火扉が閉じることにより防火区画が形成される防火区画形成領域の全てに、平常時用アクセスポイントあるいは異常時用アクセスポイントのいずれかが必ず配置されており、防火区画形成領域が防火扉で他の領域と遮断されて防火区画が形成されたとしても、防災要員の携帯端末と防災センターとの火災状況などのデータの送受信が可能となる。また、防災要員ではなく、防火区画に取り残された避難者が携帯端末(携帯電話あるいはスマートフォンなど)により電話やメールなどを送信することにより、この避難者の存在を防災センターは認識し、防災要員に対して救助を要請することができる。また、異常時用アクセスポイントは、平常時において停止しているため、アクセスポイントを単に多く配置する場合に比較して、低消費電力化を実現することができる。
【0020】
図2は、第1の実施形態における防災センターなどに設けられる防災時通信区画構成建築物における火災時制御装置を用いた防災通信システム10の構成例を示す図である。
防災通信システム10は、火災時制御装置1と、データベース20と、開閉状態検出センサ401~pと、平常時用アクセスポイントAP#1~AP#nと、異常時用アクセスポイントEAP#1~EAP#mとを備えている。
【0021】
火災時制御装置1は、区画形成状況確認部11、アクセスポイント起動制御部12及び火災情報送受信部13の各々を備えている。
区画形成状況確認部11は、開閉状態検出センサS#1~S#pの各々の開閉状態情報を読み込み、いずれの防火区画が形成されているか否かの判定を行なう。
アクセスポイント起動制御部12は、区画形成状況確認部11から供給される防火区画の情報に対応して、異常時用アクセスポイントの起動の制御を行なう。
火災情報送受信部13は、建築物における火災の状況を通知するため、起動しているアクセスポイント(平常時用アクセスポイントあるいは起動している異常時用アクセスポイントの各々)から、火災情報を送信、あるいは防災要員などが携帯する携帯端末500とのデータの送受信を行なう。
【0022】
携帯端末500は、建物に常駐する防災用員や消防隊員が使用する端末であり、例えば
図1のような平面図が画面上に表示可能な大きい画面のタブレット(あるいはタブレット端末)である。また、この携帯端末500は、火災時制御装置1など火災報知設備の機器状況(火災感知器の火災検出状況、防火扉の開閉状況、防火区画形成状態)が示された建物の平面図を、所定の周期あるいは機器状況が変化したタイミングにより更新して表示する。これにより、防災用員及び消防隊員等は、火災発生時に携帯端末500を携帯して火災現場に駆けつけ、この携帯端末500の表示内容を活用して、火災発生の有無、防火区画の形成、避難している人に対する避難誘導、消火作業などの防災活動を行なう。さらに携帯端末500に表示される上記平面図においてアクセスポイントの配置されている位置の各々を、携帯端末500がそれぞれのアクセスポイントの出力した信号を受信した際の電波強度を含めて表示してもよい。この場合、それぞれの位置に配置されているアクスポイントの各々から携帯端末500が受信した信号の電波受信強度を、平面図におけるアクセスポイント毎に表示画面上で観察可能となり、フロア全体におけるいずれのアクセスポイント近傍に位置しているかなどを、煙などで視界が不良な場合においても容易に確認できる。また、各アクスポイントが発信する無線信号の電波強度を携帯端末500から制御することも可能である。
【0023】
図3は、データベース20に予め書き込まれて記憶されている異常時用アクセスポイントテーブルの構成例を示す図である。異常時用アクセスポイントテーブルは、レコード単位に、防火区画識別情報、防火扉D#1開閉状態、防火扉D#2開閉状態、…、防火扉D#p、防火区画形成状態、異常時用アクセスポイント(AP)識別情報、異常時用アクセスポイント(AP)起動フラグの各々が対応した組合わせとして各データが記憶される。
防火区画識別情報は、防火扉が閉じられることで形成される防火区画において、異常時用アクセスポイントが配置されている防火区画を識別する識別情報である。防火扉D#1開閉状態から防火扉D#p開閉状態の各々には、防火区画識別情報の示す防火区画が形成される際における防火扉D#1、…、防火扉D#pそれぞれの開閉状態が書き込まれる。
【0024】
例えば、
図1の例においては、防火区画601は、防火扉D#1と防火扉D#2とが閉じられている場合に防火区画として形成される。したがって、防火扉D#1開閉状態~防火扉D#pにおいて、防火扉D#1開閉状態と防火扉D#2開閉状態とが「閉」であり、他の防火扉D#k(kは、1≦k≦pの整数)開閉状態が「開」となっている。
【0025】
防火区画形成状態は、防火区画が形成されているか否かを示している。上述したように、防火扉D#1開閉状態と防火扉D#2開閉状態とが「閉」である場合、防火区画601は形成されているため、「形成」が書き込まれる。一方、防火扉D#1開閉状態と防火扉D#2開閉状態との少なくともいずれか一方が「開」である場合、防火区画が形成されていないため、「非形成」が書き込まれる。異常時用アクセスポイント識別情報は、平常時用アクセスポイントが配置されていない、防火区画となる防火区画形成領域に配置されている異常時用アクセスポイントを識別する識別情報である。異常時用AP起動フラグは、異常時用アクセスポイントが配置されている位置が、形成された防火区画(に対応する防火区画形成領域)に含まれている場合、「オン」が書き込まれる。一方、異常時用AP起動フラグは、異常時用アクセスポイントが配置されている位置が、形成された防火区画に含まれていない場合、「オフ」が書き込まれる。
【0026】
図4は、第1の実施形態による火災時制御装置1の異常時用アクセスポイントの起動制御における処理の動作例を示すフローチャートである。
ステップS11: 区画形成状況確認部11は、防火扉D#1、…、防火扉D#pの各々に対応して設けられている開閉状態検出センサS#1、…、S#pそれぞれから、開閉状態情報を読み込む。
【0027】
ステップS12: 区画形成状況確認部11は、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報の有無の確認を行なう。このとき、区画形成状況確認部11は、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報がある場合、処理をステップS13へ進める。一方、区画形成状況確認部11は、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報がない場合、処理をステップS11へ進める。
【0028】
ステップS13: 区画形成状況確認部11は、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々の開閉状態情報から、「閉」状態となっている開閉状態検出センサを抽出する。
また、区画形成状況確認部11は、データベース20の異常時用アクセスポイントテーブルを参照して、防火区画識別情報毎に、防火扉D#1開閉状態から防火扉D#p開閉状態の各々において、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせの有無を検出する。すなわち、区画形成状況確認部11は、防火扉が閉じることにより形成された、異常時用アクセスポイントが配置された防火区画の検索及び抽出の処理を行う。
【0029】
そして、区画形成状況確認部11は、異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせを検出した場合、防火区画形成状態を「非形成」から「形成」に書き換える。この異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、初期状態では防火区画形成状態が「非形成」となっている。
一方、区画形成状況確認部11は、異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせを検出しない場合、そのままステップS14へ処理を進める。
【0030】
ステップS14: アクセスポイント起動制御部12は、データベース20の異常時用アクセスポイントテーブルを参照して、防火区画形成状態が「形成」となっている防火区画識別情報を検出する。
また、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画識別情報が「形成」となっている防火区画識別情報の異常時用AP起動フラグが「オフ」であるか否かの判定を行なう。
そして、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報を検出した場合、非常用アクセスポイントの必要があるとして処理をステップS15へ進める。
【0031】
一方、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画形成状態が「形成」となっている防火区画識別情報がない場合、あるいは防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報がない場合、非常用アクセスポイントの必要がないとして処理をステップS11へ進める。ここで、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オン」の防火区画の異常時用アクセスポイントはすでに起動されているため、ここでは処理されない。
すなわち、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報が抽出されるか否かにより、異常時用アクセスポイントの起動が必要か否かの判定を行なう。
【0032】
ステップS15: アクセスポイント起動制御部12は、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報に対応する防火区画の異常時用アクセスポイントを起動する。そして、アクセスポイント起動制御部12は、起動した異常時用アクセスポイントに対応する防火区画の防火区画識別情報に対応する異常時用AP起動フラグを「オフ」から「オン」に書き換え、処理をステップS11へ進める。
【0033】
上述したように、本実施形態においては、防火区画が形成された際、この防火区画内に平常時用アクセスポイントが配置されない場合、異常時用アクセスポイントを予め設けておく。これにより、本実施形態によれば、火災時に防火扉が閉じることで、平常時用アクセスポイントが配置されていない防火区画が形成され、平常時用アクセスポイントが使用できない状態となっても、平常時用アクセスポイントが配置されていない防火区画に予め配置されている異常時用アクセスポイントが起動するため、全ての防火区画においてアクセスポイントが使用可能となり、防災要員が防災センターと円滑に火災情報のデータの送受信を行なうことが可能となる。
【0034】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態による防災時通信区画構成建築物の構成例を示す概念図である。本実施形態において、第1の実施形態と同様に、建築物として複数階のビルを例としており、
図5は複数階における所定の階のフロアを示している。
図1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。以下、第1の実施形態と異なる構成のみを説明する。
図5においては、
図1の防災時通信区画構成建築物の構成に対して、防火扉D#5及び開閉状態検出センサS#5が設けられている。本実施形態においては、防火扉D#3及び防火扉D#5の各々が閉じられることにより、防火区画602(AP無し防火区画)が形成される。この防火区画602は、例えば、建築物の設計上あるいは構造上などの理由により、平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントのいずれも設置も行えない防火区画形成領域(無配置防火区画)に対応している。
【0035】
図6は、防火区画602が形成される領域における、防火扉の開閉によるアクセスポイントからの電波強度の状態を説明する図である。
図6(a)及び
図6(b)の各々は、縦軸がアクセスポイントの電波強度を示し、横軸が平常時と異常時(火災時)との状態変化を示している。
図6(a)は、異常時においても、防火扉D#3及び防火扉D#5の双方、または防火扉D#3及び防火扉D#5のいずれかが開いている状態の場合を示しており、平常時用アクセスポイントAP#2または異常時用アクセスポイントEAP#2を介して、防災センターとのデータの送受信を行なうことができる。
【0036】
一方、
図6(b)の場合、異常時において、防火扉D#3及び防火扉D#5の双方が閉じられ、防火区画602は、平常時用アクセスポイントAP#2または異常時用アクセスポイントEAP#2のある防火区画形成領域から隔離され、アクセスポイントの存在しない防火区画(無配置防火区画)として形成される。平常時用アクセスポイントAP#2から送信される電波の強度は、
図6(b)に示すように、電波が防火扉D#3を透過することにより強度が低下する。同様に、平常時用アクセスポイントEAP#2から送信される電波の強度は、
図6(b)に示すように、電波が防火扉D#5を透過することにより強度が低下する。
【0037】
したがって、本実施形態においては、防火区画602の形成される防火区画形成領域のように、防火区画が形成される際、形成された防火区画内にアクセスポイントが存在しない場合、この防火区画に最も近いアクセスポイントの電波強度を上げる処理を行なう。ここで、防火区画に最も近いアクセスポイントとは、防火区画を形成する際の閉じられる防火扉との距離が最も近いアクセスポイント(隣接する防火区画形成領域に配置されたアクセスポイントのいずれか)を示している。例えば、防火区画602に最も近いアクセスポイントは、平常時用アクセスポイントAP#2または異常時用アクセスポイントEAP#2いずれかである。ここで、平常時用アクセスポイントAP#2及び防火扉D#3間の距離と、異常時用アクセスポイントEAP#2及び防火扉D#5間の距離とを比較し、短い方の距離に対応するアクセスポイントが、防火区画602に最も近いアクセスポイントと設定される。
【0038】
図7は、第2の実施形態における防災センターなどに設けられる防災時通信区画構成建築物における火災時制御装置を用いた防災通信システムの構成例を示す図である。
防災通信システム10Aは、火災時制御装置1Aと、データベース20Aと、開閉状態検出センサ401~pと、平常時用アクセスポイントAP#1~AP3nと、異常時用アクセスポイントEAP#1~EAP#mとを備えている。
図2の第1の実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してある。以下、第1の実施形態と異なる構成の説明を行なう。
【0039】
火災時制御装置1Aは、区画形成状況確認部11A、アクセスポイント起動制御部12A、火災情報送受信部13、電波強度調整部14及びデータベース20Aを備えている。
区画形成状況確認部11Aは、第1の実施形態における区画形成状況確認部11の動作に加えて、開閉状態検出センサS#1~S#pの各々の開閉状態情報を読み込み、アクセスポイントが存在しない防火区画が形成されているか否かの判定を行なう。
アクセスポイント起動制御部12Aは、第1の実施形態におけるアクセスポイント起動制御部12の動作に加えて、アクセスポイントが存在しない防火区画に最も近いアクセスポイントの軌道制御を行なう。
データベース20Aは、第1の実施形態における異常時用アクセスポイントテーブルとともに、アクセスポイント無し防火区画テーブルが記憶されている。
【0040】
図8は、データベース20に予め書き込まれて記憶されているアクセスポイント無し防火区画テーブルの構成例を示す図である。アクセスポイント無し防火区画テーブルは、レコード単位に、AP(アクセスポイント)無し防火区画識別情報、防火扉D#1開閉状態、防火扉D#2開閉状態、…、防火扉D#p、防火区画形成状態、対応AP(アクセスポイント)、対応AP(アクセスポイント)電波強度の各々が対応した組合わせとして各データが記憶される。AP無し防火区画識別情報は、防火区画形成領域に対応する防火扉が閉じられることで形成される防火区画において、平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントのいずれもが配置されない防火区画を識別する識別情報である。
【0041】
防火扉D#1開閉状態から防火扉D#p開閉状態の各々には、防火区画識別情報の示す防火区画が形成される際における防火扉D#1、…、防火扉D#pそれぞれの開閉状態が書き込まれる。例えば、
図5の例においては、防火区画602は、防火扉D#3と防火扉D#5とが閉じられている場合に、所定の防火区画形成領域が防火区画として形成される。したがって、防火扉D#1開閉状態~防火扉D#p開閉状態において、防火扉D#3開閉状態と防火扉D#5開閉状態とが「閉」であり、他の防火扉D#k開閉状態が「開」となっている。
【0042】
防火区画形成状態は、所定の防火区画形成領域から防火区画が形成されているか否かを示している。上述したように、防火扉D#3開閉状態と防火扉D#5開閉状態とが「閉」である場合、防火区画602は形成されているため、「形成」が書き込まれる。一方、防火扉D#3開閉状態と防火扉D#5開閉状態との少なくともいずれか一方が「開」である場合、防火区画が形成されていないため、「非形成」が書き込まれる。対応APは、アクセスポイントが設けられていない防火区画に最も近いアクセスポイント(平常時用アクセスポイント識別情報あるいは異常時用アクセスポイント識別情報)が示されている。防火区画602の場合には、平常時用アクセスポイントAP#2あるいは異常時用アクセスポイントEAP#2のいずれかが記載されている。対応AP電波強度は、選択された対応アクセスポイントからの電波が防火扉を透過しても、アクセスポイントが配置されていない防火区画においても、携帯端末500が防災センターからの防災情報を受信できる程度の電波強度に調整される。
【0043】
図9は、第2の実施形態による火災時制御装置1Aの異常時用アクセスポイントの起動制御における処理の動作例を示すフローチャートである。
ステップS21: 区画形成状況確認部11Aは、防火扉D#1、…、防火扉D#pの小野鬼対応して設けられている開閉状態検出センサS#1、…、S#pそれぞれから、開閉状態情報を読み込む。
【0044】
ステップS22: 区画形成状況確認部11Aは、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報の有無の確認を行なう。このとき、区画形成状況確認部11Aは、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報がある場合、処理をステップS23へ進める。一方、区画形成状況確認部11Aは、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々から読み込んだ開閉状態情報において、「閉」を示す開閉状態情報がない場合、処理をステップS21へ進める。
【0045】
ステップS23: 区画形成状況確認部11Aは、開閉状態検出センサS#1、…、S#pの各々の開閉状態情報から、「閉」状態となっている開閉状態検出センサを抽出する。
また、区画形成状況確認部11Aは、データベース20Aの異常時用アクセスポイントテーブルを参照して、防火区画識別情報毎に、防火扉D#1開閉状態から防火扉D#p開閉状態の各々において、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせの有無を検出する。すなわち、区画形成状況確認部11Aは、防火扉が閉じることにより形成された、異常時用アクセスポイントが配置されている防火区画の検索及び抽出の処理を行う。
【0046】
そして、区画形成状況確認部11Aは、異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせを検出した場合、防火区画形成状態を「非形成」から「形成」に書き換える。この異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、初期状態では防火区画形成状態が「非形成」となっている。一方、区画形成状況確認部11Aは、異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#kの組合わせを検出しない場合、そのままステップS24へ処理を進める。
【0047】
ステップS24: アクセスポイント起動制御部12Aは、データベース20Aの異常時用アクセスポイントテーブルを参照して、防火区画形成状態が「形成」となっている防火区画識別情報を検出する。
また、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画識別情報が「形成」となっている防火区画識別情報の異常時用AP起動フラグが「オフ」であるか否かの判定を行なう。
そして、アクセスポイント起動制御部12は、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報を検出した場合、非常用アクセスポイントの必要があるとして処理をステップS25へ進める。
【0048】
一方、アクセスポイント起動制御部12Aは、防火区画形成状態が「形成」となっている防火区画識別情報がない場合、あるいは防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報がない場合、非常用アクセスポイントの必要がないとして処理をステップS26へ進める。ここで、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オン」の防火区画の異常時用アクセスポイントはすでに起動されているため、ここでは処理されない。
すなわち、アクセスポイント起動制御部12Aは、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報が抽出されるか否かにより、異常時用アクセスポイントの起動が必要か否かの判定を行なう。
【0049】
ステップS25: アクセスポイント起動制御部12Aは、防火区画形成状態が「形成」であり、かつ異常時用AP起動フラグが「オフ」である防火区画識別情報に対応する防火区画の異常時用アクセスポイントを起動する。そして、アクセスポイント起動制御部12Aは、起動した異常時用アクセスポイントに対応する防火区画の防火区画識別情報に対応する異常時用AP起動フラグを「オフ」から「オン」に書き換え、処理をステップS26へ進める。
【0050】
ステップS26: 区画形成状況確認部11Aは、データベース20Aのアクセスポイント無し防火区画テーブルを参照して、AP無し防火区画識別情報毎に、防火扉D#1開閉状態から防火扉D#p開閉状態の各々において、「閉」状態となっている開閉状態検出センサに対応する防火扉D#k(1≦k≦p)の組合わせの有無を検出する。すなわち、区画形成状況確認部11Aは、防火区画形成領域の対応する防火扉を閉じることにより形成されたAP無し防火区画の検索及び抽出の処理を行う。
【0051】
ステップS27: 区画形成状況確認部11Aは、防火扉が閉じることにより形成された、AP無し防火区画が有るか否かの判定を行う。
このとき、区画形成状況確認部11Aは、防火扉が閉じることにより形成された、AP無し防火区画が有る場合、抽出されたAP無し防火区画識別情報をアクセスポイント起動制御部12Aに出力して、処理をステップS28へ進める。一方、区画形成状況確認部11Aは、防火扉が閉じることにより形成された、AP無し防火区画がない場合、処理をステップS21へ進める。
【0052】
ステップS28: アクセスポイント起動制御部12Aは、区画形成状況確認部11Aから供給されたAP無し防火区画識別情報に対応する対応アクセスポイント(AP)、すなわち平常時用アクセスポイント識別情報あるいは異常時用アクセスポイント識別情報により、データベース20Aのアクセスポイント無し防火区画テーブルから検索して抽出する。このとき、平常時用アクセスポイントは、アクセスポイント無し防火区画テーブルから検索されない。このため、対応アクセスポイントが異常時用アクセスポイントであるか否かは容易に判定できる。
【0053】
ステップS29: アクセスポイント起動制御部12Aは、抽出された対応アクセスポイントが平常時用アクセスポイントまたは異常時用アクセスポイントかのいずれであるかの判定を行う。ここで、アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントが異常時用アクセスポイントである場合、データベース20Aの異常時用アクセスポイントテーブルにおける異常時用AP起動フラグを参照し、この異常時用アクセスポイントが起動しているか否かを判定する。
【0054】
そして、アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントが平常時用アクセスポイントである場合、あるいは対応アクセスポイントが異常時用アクセスポイントであるがすでに起動されている場合、処理をステップS31へ進める。一方、アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントが異常時用アクセスポイントであり、かつこの異常時用アクセスポイントが起動されていない場合、処理をステップS31へ進める。ここで、アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントが平常時用アクセスポイントである場合、平常時用アクセスポイント識別情報を電波強度調整部14に対して出力する。
【0055】
ステップS30: アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントと判定され、データベース20Aの異常時用アクセスポイントテーブルにおいて、起動されていない異常時用アクセスポイントの起動を起動する。
そして、アクセスポイント起動制御部12Aは、起動した異常時用アクセスポイントに対応する防火区画の防火区画識別情報に対応する異常時用AP起動フラグを「オフ」から「オン」に書き換え、処理をステップS30へ進める。ここで、アクセスポイント起動制御部12Aは、対応アクセスポイントが異常時用アクセスポイントであるあるため、異常時用アクセスポイント識別情報を電波強度調整部14に対して出力する。
【0056】
ステップS31: 電波強度調整部14は、平常時用アクセスポイント識別情報あるいは異常時用アクセスポイント識別情報のいずれかが供給された場合、データベース20Aのアクセスポイント無し防火区画テーブルにおける対応APの欄を検索し、供給されたアクセスポイント識別情報に対応した対応AP電波強度を抽出する。
そして、電波強度調整部14は、読み出した対応AP電波強度の値に、対応AP(平常時用アクセスポイント識別情報あるいは異常時用アクセスポイント識別情報)が示すアクセスポイントが出力する電波の電波強度を調整する。
【0057】
ここで、対応AP電波強度は、例えば、以下のような実測を行なうことにより設定される。すなわち、作業者は、形成されるAP無し防火区画に対し、最も近いアクセスポイント(平常時用アクセスポイントあるいは異常時用アクセスポイント)を、対応アクセスポイント(AP)として選択する。作業者は、予め設定された測定位置(AP無し防火区画内における上記選択された対応アクセスポイントから最も遠い位置)において、対応アクセスポイントから送信される、平常時における電波の電波強度を測定する。そして、作業者は、平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントを設置した際、実際に防火扉を閉じることによりAP無し防火区画を形成する。
【0058】
次に、作業者は、平常時における対応アクセスポイントから送信される電波の電波強度を測定しつつ、徐々に対応アクセスポイントが送信する電波の電波強度を上げていく。そして、作業者は、AP無し防火区画を形成した時点で測定される対応アクセスポイントの電波強度が、AP無し防火区画を形成しない状態で測定した際の電波強度となる、対応アクセスポイントが送信する電波の電波強度を求める。作業者は、この求めた電波強度を対応AP電波強度として設定する。上述した対応AP電波強度の設定処理を、AP無し防火区画の全てに対して順次行なって、作業者は、データベース20Aのアクセスポイント無し防火区画テーブルにおける対応AP電波強度の欄に、火災時制御装置1Aの入力手段(不図示、例えば、キーボードなど)により書き込んで記憶させる。
【0059】
上述したように、本実施形態においては、防火区画が形成された際、この防火区画内に平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントのいずれもが、設計上の理由などにより配置されていない防火区画としてAP無し防火区画が形成されても、このAP無し防火区画に隣接する領域における平常時用アクセスポイントあるいは異常時用アクセスポイントの電波強度を調整することにより、AP無し防火区画においても防災要員の携帯する携帯機器により防災センターからの火災情報を受信することが可能となり、防災要員の火災に対する防災活動(火災の消火活動、避難者に対する適切な避難経路の指示など)を安全に行なわせることが可能となる。
また、本実施形態においては、AP無し防火区画においても、避難者の携帯端末による送信動作により存在を防災センターが避難者の存在を認識することが可能となり、防災センターから防災要員に対して、AP無し防火区画に位置する避難者の救助を要請することができる。
【0060】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。
第3の実施形態による防災時通信区画構成建築物の構成は、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と同様である。
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態及び第2の実施形態の各々と異なる構成及び動作についてのみ説明する。
図10は、防災要員が携帯する携帯端末に備えられたデータ端子を、火災報知設備の機器収容箱などに設けられた防災センターに有線で接続されているデータ端子の端子配列に変換する変換コネクタケーブルを説明する概念図である。
【0061】
上述した火災報知設備は、
図1及び
図5における附室301、非常階段302の踊り場あるいは非常用エレベータ303の各々などに設けられている。すなわち、この火災報知設備は、防災要員が各階の廊下に出て防災活動を行なう際、すなわち火災現場に駆けつける際の進入経路に設けられている。火災報知設備のデータ端子がLAN接続端子である場合、変換コネクタケーブル801は、携帯端末500のデータ端子からLAN接続端子への変換を行なう構成となっている。火災報知設備のデータ端子が連絡用電話(保安通信用電話)接続端子である場合、変換コネクタケーブル802は、携帯端末500のデータ端子から連絡用電話接続端子への変換を行なう。また、火災報知設備のデータ端子がLAN・連絡用電話共用接続端子である場合、変換コネクタケーブル803は、携帯端末500のデータ端子からLAN・連絡用電話共用接続端子への変換を行なう。この構成により、本実施形態によれば、防災要員が容易に防災活動の進入経路に配置された火災報知設備のデータ端子を用いて防災センターとのデータの送受信を行なうことができる。
【0062】
図11は、非常口がある場合、アクセスポイント(平常時用アクセスポイントあるいは異常時用アクセスポイント)を非常口近傍に配置することを説明する概念図である。防災要員がなるべくアクセスポイントに近い位置で、アクセスポイントとの送受信を防災要員900が携帯する携帯端末500により行なうことが混信を防いで正確な情報伝達が行える。
このため、防火区画となる領域に非常口が存在する場合、この非常口の近傍、すなわち非常口の位置を示す誘導灯、誘導標識、ステッカー(蓄光誘導ステッカー)などに隣接して設けることにより、その防火区画のどこにアクセスポイントが設置されているかを、防災要員900が容易に検出することができる。
【0063】
また、
図11に示すように、異常時に点灯することで、非常口を示す誘導灯950の内部あるいは外部(特に、誘導灯950の下部)に、アクセスポイント800を設けるようにしても良い。
また、本実施形態において、火災が発生して防火区画が形成された際、非常口の位置を示す誘導灯、誘導標識、ステッカーの各々の近傍に配置されたアクセスポイントが、下部方向に対して電波の送受信の指向性を有するように制御してもよい。これにより、非常口の位置を示す誘導灯、誘導標識、ステッカーの各々の直下に位置すれば、必ず携帯端末500により、防災センターとデータの送受信が行える。廊下の電灯が切れ、煙が充満することで、防災要員900が自身の位置が判らなくなる環境においても、非常口の位置を示す誘導灯、誘導標識、ステッカーの位置は確認できるため、防災要員900あるいは避難者が容易に携帯端末500により、防災センターとのデータの送受信を的確に行なうことができる。
【0064】
図12は、防災要員が火災の発生した階に侵入する際に用いる附室の電磁シールド構成について説明する概念図である。
図1及び
図5における附室301に対して、床、壁、天井の全てに電磁シールド板や膜などのシールド材980を設けて、アクセスポイント800が備えられた附室301をシールドルーム(電磁波を遮断した部屋)とする。
これにより、外部からの電波(防災情報の受信を妨げる妨害電波)の侵入を防ぐことができ、附室301における携帯端末500(防災要員が携帯する携帯端末)と防災センターとの間のデータの送受信の信頼性を向上させることができる。例えば、廊下102にあるアクセスポイントからの電波の影響、あるいは廊下102にいる避難者たちの携帯端末からの電波の影響を、附室301内部で受けることが無くなり、防災センターとの通信の室を高めることができる。
【0065】
また、上記の実施形態においては、平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントの各々の種別の双方を配置する例で説明したが、これに限らずに、異常時用アクスポイントを備えずに平常時用アクスポイントを防火区画形成領域毎に設ける構成であってもよい。さらに、第1の実施形態で建物の環境によって、アクセスポイント(平常時用アクセスポイント及び異常時用アクセスポイントの双方)を設置することができない防火区画が存在した場合、第2の実施形態に示すように、このアクセスポイントを設置できない近隣(近傍)の防火区画に対し、アクセスポイント(平常時アクセスポイント及び/又は異常時用アクセスポイント)が設置されている防火区画におけるこのアクセスポイントの電波強度を制御して、アクセスポイントが設置されていない防火区画においても防災要員の携帯する携帯端末500と確実に通信を行えるよう構成としてもよい。
また、上述した火災時制御装置1及び火災時制御装置1Aの各々は、それぞれ
図1、
図7に記載した構成以外に、上述した火災時制御を行なう機能を有する火災受信機、機器制御盤、制御盤及びサーバなどを用いても良い。ここで、火災受信機は、例えば、火災報知器や各種センサなどから火災に関する火災信号などの情報を受信する装置である。機器制御盤は、例えば、上記防火区画を形成する装置及び機構を制御する装置である。制御盤及びサーバは、例えば、各種建築物の防火設備を監視制御する装置である。
【0066】
なお、本発明における他の構成例を以下に示す。
例えば、本発明の防災時通信区画構成建築物は、火災が発生した火災発生領域あるいは延焼した領域を、防火扉を閉じて他の領域から遮断した際に防火区画が形成される防火区画形成領域毎に、防災要員が携帯端末を用いて防災センターとの通信に用いることが可能なアクセスポイントを配置したことを特徴とする。
【0067】
また、本発明の防災時通信区画構成建築物は、前記防火区画形成領域毎に配置される前記アクセスポイントが、平常時の使用を目的とした平常時用アクセスポイントと、火災発生時に前記防火扉により前記平常時用アクセスポイントから電波が遮断される前記防火区画となる防火区画形成領域に配置される異常時用アクセスポイントとを含み、異常時用アクセスポイントが配置されている前記防火区画形成領域が防火区画とされた際に、当該異常時用アクセスポイントが前記防災センターに設置されている制御装置により起動されることを特徴とする。
【0068】
本発明の防災時通信区画構成建築物は、前記防火区画形成領域毎にアクセスポイントが配置できない無配置防火区画が存在する場合、前記制御装置が、火災時に形成された前記無配置防火区画に隣接する防火区画外の領域において最も近い前記アクセスポイントの送信電波の強度を、前記防火扉を透過する強度に調整することを特徴とする。
【0069】
本発明の防災時通信区画構成建築物は、火災が発生した際に、前記防災要員が火災現場へ進入するために使用する進入経路上に、前記携帯端末と接続可能な有線端末が配置されていることを特徴とする。
本発明の防災時通信区画構成建築物は、前記異常時用アクセスポイントが異常時に点灯する誘導灯内部あるいは近傍に設けられていることを特徴とする。
【0070】
本発明の防災時通信区画構成方法は、火災が発生した火災発生領域を、防火扉を閉じて他の領域から遮断した際に形成される防火区画毎に、防災要員が携帯端末を用いて防災センターとの通信に用いることが可能なアクセスポイントを配置することを特徴とする。
【0071】
なお、本発明における
図2における火災時制御装置1及び
図7の火災時制御装置1Aの各々の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより作業者の会話音声の抑制を行う制御を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0072】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0073】
1,1A…火災時制御装置
10,10A…防災通信システム
11,11A…区画形成状況確認部
12,12A…アクセスポイント起動制御部
13…火災情報送受信部
20,20A…データベース
101…中央領域
102…廊下
301…附室
302…非常階段
303…非常用エレベータ
500…携帯端末
601,602…防火区画
801,802,803…変換コネクタケーブル
800…アクセスポイント
900…防災要員
950…非常灯
980…シールド材
AP#1,AP#2,AP#3,AP#n…平常時用アクセスポイント
D#1,D#2,D#3,D#4…防火扉
EAP#1,EAP#2,EAP#m…異常時用アクセスポイント
S#1,S#2,S#3,S#4,S#p…開閉状態検出センサ
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7…部屋