(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】視覚補正装置、視覚補正装置を制御する方法、及び検眼用双眼鏡装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20220331BHJP
G02B 23/00 20060101ALI20220331BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20220331BHJP
【FI】
A61B3/028
G02B23/00
G02B7/04 Z
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2021079833
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2018502181の分割
【原出願日】2016-07-15
【審査請求日】2021-05-10
(32)【優先日】2015-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ ブティノン
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-277072(JP,A)
【文献】特開2007-125125(JP,A)
【文献】国際公開第2007/026368(WO,A2)
【文献】特開昭52-138394(JP,A)
【文献】特表2010-539520(JP,A)
【文献】特表2006-508730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B3/00-3/18
G02B1/00-1/08、3/00-3/14、6/35、7/02-7/16、23/00-23/22、26/00-26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変度数の光学的補正によって観測光軸(X)に沿った観測を可能にする視覚補正装置であって、
- 第1の設定(Sv)に依存する可変球面度数を前記観測光軸(X)に沿って有するレンズと、
- 光学アセンブリ(2、4)であって、前記光学アセンブリ(2、4)に適用される少なくとも1つの第2の設定(α
1、α
2)に依存する可変円柱補正を前記観測光軸(X)に沿って生成する光学アセンブリ(2、4)と
を含み、
- 前記光学的補正の少なくとも1つの設定点(S、C、α)を受信するモジュール(60)と、
- 前記レンズと前記光学アセンブリ(2、4)とを分離する距離(e
2)を考慮するモデルにより、前記設定点(S、C、α)に依存して前記第1の設定(Sv)と前記第2の設定(α
1、α
2)とを判断するモジュール(68)と
を更に含
み、
モータ(46)が、前記レンズの前記可変球面度数を制御するためのリングを駆動して回転させるように構成され、前記レンズは、変形可能膜を有し、前記リングはケース(26)に取り付けられ、前記リングの回転が前記レンズの一部を平行移動させて前記変形可能膜の変形を引き起こすことを特徴とする視覚補正装置。
【請求項2】
前記第1の設定(Sv)と前記第2の設定(α
1、α
2)とを判断する前記モジュール(68)は、
- 前記設定点(S、C、α)に依存して、近似の第1の設定値
【数1】
と、近似の第2の設定値
【数2】
とを判断するモジュール(80)と、
- 前記近似の第1の設定値
【数3】
を前記レンズへ、且つ前記近似の第2の設定値
【数4】
を前記光学アセンブリ(2、4)へ適用することによって得られる少なくとも1つの補正値(S’、C’、α’)を前記モデルに基づいて評価するモジュール(82)と、
- 第1の補正された設定値(α
1、α
2)と第2の補正された設定値(Sv)とを、前記設定点(S、C、α)と前記評価された補正値(S’、C’、α’)との比較(ΔS、ΔC、Δα)に基づいて判断するモジュール(84、86、88)と
を含む、請求項1に記載の視覚補正装置。
【請求項3】
前記第1の設定と前記第2の設定とを判断する前記モジュール(68)は、前記第1の設定と前記第2の設定による前記第1の補正された設定値(α
1、α
2)と前記第2の補正された設定値(Sv)とをそれぞれ使用するように設計される、請求項2に記載の視覚補正装置。
【請求項4】
前記第1の設定と前記第2の設定とを判断する前記モジュール(68)は、前記モデルに基づいて構築される参照テーブルから前記第1の設定を読み出すように設計される、請求項1に記載の視覚補正装置。
【請求項5】
前記光学アセンブリは、第2のレンズ(2)と第3のレンズ(4)とを含み、前記モデルは、前記第2のレンズ(2)と前記第3のレンズ(4)とを分離する距離(e
1)を考慮する、請求項1~4のいずれか一項に記載の視覚補正装置。
【請求項6】
可変度数の光学的補正によって観測光軸(X)に沿った観測を可能にする視覚補正装置(10)を制御する方法であって、前記視覚補正装置(10)は、
- 第1の設定(Sv)に依存する可変球面度数を前記観測光軸(X)に沿って有するレンズと、
- 光学アセンブリ(2、4)であって、前記光学アセンブリ(2、4)に適用される少なくとも1つの第2の設定(α
1、α
2)に依存する可変円柱補正を前記観測光軸(X)に沿って生成する光学アセンブリ(2、4)と、を含み、
前記方法は、
- 前記光学的補正の少なくとも1つの設定点(S、C、α)を受信する工程と、
- 前記レンズと前記光学アセンブリ(2、4)とを分離する距離(e
2)を考慮するモデルにより、前記設定点(S、C、α)に依存して前記第1の設定(Sv)と前記第2の設定(α
1、α
2)とを判断する工程と、
- 前記第1の設定(Sv)に依存して、前記観測光軸(X)に沿った前記レンズの球面度数を修正する工程と、
- 前記第2の設定(α
1、α
2)に依存して、前記光学アセンブリ(2、4)によって前記観測光軸(X)に沿って生成された円柱補正を修正する工程と
を含
み、
モータ(46)が、前記レンズの前記可変球面度数を制御するためのリングを駆動して回転させるように構成され、前記レンズは、変形可能膜を有し、前記リングはケース(26)に取り付けられ、前記リングの回転が前記レンズの一部を平行移動させて前記変形可能膜の変形を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第1の設定(Sv)と前記第2の設定(α
1、α
2)とを判断する前記工程は、
- 前記設定点(S、C、α)に依存して、近似の第1の設定値
【数5】
と、近似の第2の設定値
【数6】
とを判断する副工程と、
- 前記近似の第1の設定値
【数7】
を前記レンズへ、且つ前記近似の第2の設定値
【数8】
を前記光学アセンブリ(2、4)へ適用することによって得られる少なくとも1つの補正値(S’、C’、α’)を前記モデルに基づいて評価する副工程と、
- 補正された第1の設定値(Sv)と補正された第2の設定値(α
1、α
2)とを、前記設定点(S、C、α)と前記評価された補正値(S’、C’、α’)との比較(ΔS、ΔC、Δα)に基づいて判断する副工程と
を含む、請求項
6に記載の制御方法。
【請求項8】
- 前記補正された第1の設定値を前記レンズへ、且つ前記補正された第2の設定値を前記光学アセンブリへ適用することによって得られる少なくとも1つの新しい補正値を前記モデルに基づいて評価する副工程と、
- 新しい補正された第1の設定値と新しい補正された第2の設定値とを、前記設定点と前記評価された新しい補正値との比較に基づいて判断する副工程と
を含む、請求項
7に記載の制御方法。
【請求項9】
少なくとも1つの新しい補正値を評価する前記副工程と、新しい補正された第1の設定値と新しい補正された第2の設定値とを判断する前記副工程とは、前記設定点と前記評価された新しい補正値との間の距離が事前設定閾値より大きいことを条件として反復される、請求項
8に記載の制御方法。
【請求項10】
2つの光学装置を含む検眼用双眼鏡装置であって、前記2つの光学装置の少なくとも1つは、請求項1~
5のいずれか一項に記載の視覚補正装置である、検眼用双眼鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に主観的視力試験に向けられる検眼装置に関する。
【0002】
本発明は、具体的には、視覚補正装置、視覚補正装置を制御する方法、及び検眼用双眼鏡装置に関する。
【背景技術】
【0003】
主観的視力試験に関連して、視覚補正装置は、通常、可変度数の光学的補正によって観測光軸に沿った観測を可能にするために使用される。
【0004】
例えば、このような装置は米国特許出願公開第2004/032568号明細書から知られている。この装置は、第1の設定に依存する可変球面度数を光軸に沿って有するレンズと、光学アセンブリであって、前記光学アセンブリに適用される少なくとも1つの第2の設定に依存する可変円柱補正を光軸に沿って生成する光学アセンブリとを含む。
【0005】
このような系では、例えば現在の設定を適用することによって得られる光学的補正値を画面上に表示して、医師が他の光学的補正値を得るために設定を修正できるようにすることが提案される。
【0006】
しかし、この解決策は、主観的視力試験中に試験することを望む視覚的補正値を試行錯誤により見出すことを医師に強いるために非実用的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
これに関連して、本発明は、可変度数の光学的補正によって観測光軸に沿った観測を可能にする視覚補正装置を提供する。本視覚補正装置は、第1の設定に依存する可変球面度数を光軸に沿って有するレンズと、光学アセンブリであって、前記光学アセンブリに適用される少なくとも1つの第2の設定に依存する可変円柱補正を光軸に沿って生成する光学アセンブリとを含み、前記光学的補正の少なくとも1つの設定点を受信するモジュールと、前記レンズと前記光学アセンブリとを分離する距離を考慮するモデルにより、前記設定点に依存して第1の設定と第2の設定とを判断するモジュールとを特徴とする。
【0008】
前述の距離(すなわち、レンズと光学アセンブリとの間の間隔)が考慮されるため、この間隔により生成される結合効果が考慮され、第1の設定及び第2の設定がレンズ及び光学系にそれぞれ適用された後、設定点(すなわち、医師が望む補正)に正確に対応する補正が得られる。
【0009】
第1の設定と第2の設定とを判断するモジュールは、前記設定点に依存して、近似の第1の設定値と、近似の第2の設定値とを判断するモジュールと、近似の第1の設定値をレンズへ、且つ近似の第2の設定値を光学アセンブリへ適用することによって得られる少なくとも1つの補正値を前記モデルに基づいて評価するモジュールと、補正された第1の設定値と補正された第2の設定値とを、設定点と評価された補正値との比較に基づいて判断するモジュールとをさらに含む。
【0010】
次に、第1の設定と第2の設定とを判断するモジュールは、第1の設定と第2の設定による第1の補正された設定値と第2の補正された設定値とをそれぞれ使用し得る。
【0011】
したがって、実時間で所望の設定点値が得られるようにする設定値が得られる。
【0012】
別の想定可能な実施形態によると、第1の設定と第2の設定とを判断するモジュールは、前記モデルに基づいて構築される参照テーブルから第1の設定(及び任意選択的に第2の設定)を読み出すように設計され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、光学アセンブリは、第2のレンズと第3のレンズを含み得、この場合、モデルはまた、第2のレンズと第3のレンズとを分離する距離を考慮する。
【0014】
本発明はまた、可変度数の光学的補正によって観測光軸に沿った観測を可能にし、且つレンズと光学アセンブリとを含む視覚補正装置を制御する方法において、
- 前記光学的補正の少なくとも1つの設定点を受信する工程と、
- 前記レンズと前記光学アセンブリとを分離する距離を考慮するモデルにより、前記設定点に依存して第1の設定と第2の設定とを判断する工程と、
- 第1の設定に依存して、光軸に沿ったレンズの球面度数を修正する工程と、
- 第2の設定に依存して、光学アセンブリによって光軸に沿って生成された円柱補正を修正する工程と
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0015】
第1の設定と第2の設定とを判断する工程は、
- 前記設定点に依存して、近似の第1の設定値と、近似の第2の設定値とを判断する副工程と、
- 近似の第1の設定値をレンズへ、且つ近似の第2の設定値を光学アセンブリへ適用することによって得られる少なくとも1つの補正値を前記モデルに基づいて評価する副工程と、
- 補正された第1の設定値と補正された第2の設定値とを、設定点と評価された補正値との比較に基づいて判断する副工程と
を含み得る。
【0016】
次に、制御方法は、任意選択的に、
- 補正された第1の設定値をレンズへ、且つ補正された第2の設定値を光学アセンブリへ適用することによって得られる少なくとも1つの新しい補正値を前記モデルに基づいて評価する副工程と、
- 新しい補正された第1の設定値と新しい補正された第2の設定値とを、設定点と評価された新しい補正値との比較に基づいて判断する副工程と
を含み得る。
【0017】
この場合、少なくとも1つの新しい補正値を評価する副工程と、新しい補正された第1の設定値と新しい補正された第2の設定値とを判断する副工程とは、設定点と評価された新しい補正値との間の距離が事前設定閾値より大きいことを条件として反復され得る。
【0018】
前述の変形形態によると、第1の設定と第2の設定とを判断する工程は、前記モデルに基づいて構築される参照テーブルから第1の設定(及び任意選択的に第2の設定)を読み出す副工程を含み得る。
【0019】
本発明はまた、例えば共通の保持器に搭載される2つの光学装置を含む検眼用双眼鏡装置を提供し、2つの光学装置の1つ(又は2つの光学装置のそれぞれも)は、上に提示された視覚補正装置である。
【0020】
非限定的例として与えられる添付図面を参照する以下の説明は、本発明を構成するもの及び本発明がどのように実現され得るかの理解を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一例示的実装形態において使用される光学素子を概略的に示す。
【
図2】本発明の教示による例示的視覚補正装置の断面図を示す。
【
図3】
図2の視覚補正装置の円柱レンズの側面からの切欠図を示す。
【
図4】
図2の視覚補正装置の可変球状レンズの側面からの切欠図を示す。
【
図5】
図2の視覚補正装置を制御する要素を概略的に示す。
【
図6】
図5の制御要素が計算されることを可能にするモジュールを構築し得る可能な方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の教示による例示的視覚補正装置の主要光学素子を概略的に示す。
【0023】
これらの光学素子は、円柱度数C1(ここではC0に等しい)の凸状平坦-円柱レンズ2と、円柱度数C2(ここでは負であり-C0に等しい)の凹状平坦-円柱レンズ4と、可変球面度数Svのレンズ6とを含む。
【0024】
したがって、凹状平坦-円柱レンズ4の円柱度数(ここでは-C0)の絶対値(又は係数)(ここではC0)は、凸状平坦-円柱レンズ2の円柱度数(C0)の絶対値(C0)(又は率)に等しい。
【0025】
これらの3つのレンズ2、4、6は同じ光軸X上に配置される。正確には、3つのレンズ2、4、6のそれぞれは光軸Xを中心とするほぼ円柱状の外形を有する。本明細書で説明する例では、レンズ2、4、6は25mm、25mm、20mmの直径(それらの嵩を定量化する)をそれぞれ有する。
【0026】
直径の大きい円柱度数レンズ2、4が可変球面度数レンズ6(それ自体は患者の眼に対するその近接性により大きいと感じられる)により画定される視野を制限しないように、可変球面度数レンズ6側に位置する患者の眼によりこの視覚補正装置10を使用することが好ましいことに注意されたい。
【0027】
3つのレンズ2、4、6のそれぞれは、光軸Xに垂直な第1の平坦面と、第1の面に対向するとともに光学活性された第2の面とを含み、
- レンズ2の光学活性面は形状が円柱状凸であり(この面を画定する円柱の軸Y
1は光軸Xに垂直である)、
- レンズ4の光学活性面は形状が円柱凹状であり(この面を画定する円柱の軸Y
2は光軸Xに垂直である)、及び
- 可変球面度数S
Vのレンズ6の光学活性面は変形可能であり、したがって凸状球形状(
図1の破線により示す)、平坦形状(実線により示す)又は凹状球形状(一点破線により示す)が与えられ得る。
【0028】
可変球面度数SVのレンズ6は、例えば欧州特許第2,034,338号明細書に記載されたタイプのレンズである。このようなレンズは、透明な変形可能膜と平坦な可動透明壁とにより閉ざされた空洞を含み、空洞は、したがって球状凹面、平坦面、又は球状凸面のいずれかである膜を変形するために、程度の差はあっても可動面により制約された一定量の透明液体を含む。使用されるレンズでは、ナット/ボルト系で実現される運動の変換は、回転及び直線運動の変換を保証することを可能にする。したがって、例えば前述の欧州特許第2,034,338号明細書で説明したように、ケース26に取り付けられたリングを回転することでレンズ6の一部を平行移動させ、これにより透明膜の前述の変形を引き起こす。したがって、レンズ6に対する機械的作用を介して球面度数SVを連続的に変更することが可能である。本明細書で説明する例では、レンズ6は-40mm~40mmの可変焦点長、すなわち-25D~25Dの可変球面度数SVを有する(Dは、両眼転導(vergence)を測定する単位ジオプタであり、焦点長の逆数でありメートルで表される)。
【0029】
さらに、平坦-円柱レンズ2、4は、それぞれ、既に示したように-C0及びC0の円柱度数を有する(ここではC0=5D)。
【0030】
以下により詳細に説明するように、凹状平坦-円柱レンズ4と凸状平坦-円柱レンズ2とは、軸Xを中心として回転可能(軸Xを中心とする回転)に取り付けられる。
【0031】
したがって、凸状平坦-円柱レンズ2の光学活性面上に形成される凸状円柱の軸Y1は基準軸Y0(固定され、且つ光軸Xに垂直である)と可変角度α1をなし得る。
【0032】
同様に、凹状平坦-円柱レンズ4の光学活性面上に形成される凹状円柱の軸Y2は基準軸Y0と可変角度α2をなし得る。
【0033】
凸状平坦円柱レンズ2と凹状平坦円柱レンズ4とは、光軸に沿って距離e
1だけ離間され、凹状平坦円柱レンズ4と可変球面度数Svのレンズ6とは、光軸に沿って距離e
2だけ離間される。
図2を参照して以下に説明される実施形態では、e
1は、例えば(約)1mmであり(通常、e
1は0.5mm~2mmに含まれ得る)、e
2は、例えば(約)5mmである(通常、e
2は2mm~10mmに含まれ得る)。
【0034】
ここで簡単に説明した系の光学的挙動を説明するために、3つの光学素子2、4、6で形成される系の球面度数S、円柱度数C、非点収差αの角度の式が以下に与えられる。これらの式は、様々なレンズ間の間隔e
1、e
2による結合効果が無視されるモデルにおける様々な経線上の両眼転導を計算することにより得られる。
【数1】
【0035】
式3の項(-C/2)は円柱度数を提供する2つのレンズの合成により生成される球面度数に対応することに注意されたい。
【0036】
以下に説明するように、凸状平坦-円柱レンズ2の回転位置と凹状平坦-円柱レンズ4の回転位置とを互いに独立に設定することにより、角度α1及びα2のそれぞれを0°~360°で独立に変更し、したがって、2つのレンズを同時に制御することにより得られる0°~360°で調整可能な非点収差の任意の角度について、-2C0~2C0(すなわち、ここでは-10D~10D)で調整可能な円柱度数Cを得ることが可能である。式3が示すように、2つの円柱レンズの配向の合成から生じる球面度数は、可変度数の球面レンズを使用することにより補正される。
【0037】
さらに、球状レンズ6の球面度数SVを変更することにより、3つのレンズ2、4、6で形成される系の球面度数Sを調整することが可能である。
【0038】
1つの想定可能な変形形態によると、設定された円柱度数を提供するレンズは、同じ(正又は負の)円柱度数C0を有し得、2つの任意選択的に同一の凸状平坦-円柱レンズ、又は代替として2つの任意選択的に同一の凹状平坦-円柱レンズの問題であり得る。
【0039】
具体的には、この場合、これら2つのレンズと可変球面度数を提供するレンズとで形成される系の球面度数S、円柱度数C、及び非点収差αの角度は下記式により与えられる。
【数2】
【0040】
項C0-C/2は、円柱度数を提供する2つのレンズの合成により導出される球面度数に対応する。
【0041】
したがって、この場合も、円柱度数を提供するレンズを回転する(互いに独立して)ことにより、及び可変球面度数を提供するレンズの球面度数を変更することにより、円柱度数Cが零となるように、球面度数S、円柱度数C、及び非点収差αの角度を調整することが可能である。
【0042】
これまでに説明した光学素子を使用する例示的視覚補正装置10を
図2に示す。
【0043】
以下の説明では、説明を明確にするために、
図2、3、及び4の配向を規定する「上側」又は「下側」などの用語が使用される場合がある。この配向は、説明した装置からなり得る用途であって、唯一の基準方向が光軸Xである用途には必ずしも適用可能ではないことが理解される。
【0044】
視覚補正装置10は、光軸Xに沿って連続に配置されるとともに光軸Xに垂直な面内に対で組み立てられる第1の部分14、第2の部分16及び第3の部分18で形成されるケース12を含む。
【0045】
第1の歯車22は、ケース12の第1の部分14における光軸Xを中心とする回転運動により回転することができるように取り付けられ、この目的のために設けられる開口内の第1の歯車22の中心に凸状平坦-円柱レンズ2を担持する。第1の歯車22と凸状平坦-円柱レンズ2とは同軸であり、換言すれば、光軸Xに垂直な面内の断面では、第1の歯車22の外周と凸状平坦-円柱レンズ2の外周とは光軸Xを中心とする同心円を形成する。
【0046】
同様に、第2の歯車24は、ケース12の第2の部分16における光軸Xを中心とする回転運動により回転することができるように取り付けられ、この目的のために設けられる開口内の第2の歯車24の中心に凹状平坦-円柱レンズ4を担持する。第2の歯車24と凹状平坦-円柱レンズ4とは同軸であり、換言すれば、光軸Xに垂直な面内の断面では、第2の歯車24の外周と凹状平坦-円柱レンズ4の外周とは光軸Xを中心とする同心円を形成する。
【0047】
ケース12の第3の部分18内の光軸Xを中心とする回転運動により回転することができるように第3の歯車27が取り付けられる。第3の歯車27は、可変球面度数のレンズ6を担持するケース26の外周上に設けられるリングに確実に固着され、球面度数SVが制御され得るようにする。可変球面度数のレンズ6のケース26はケース12の第3の部分18に取り付けられる。
【0048】
図3に明確に見られるように、第1の歯車22は、その駆動軸が第1のウォームスクリュー32(第1の歯車22と係合する)を担持する第1のモータ42により(光軸Xを中心として)回転される。第1のモータ42は、例えばケース12の第1の部分14に取り付けられる。
【0049】
第1の歯車22の現在位置は第1の光学セル52により監視される。
【0050】
同様に、第2の歯車24は、その駆動軸が第2のウォームスクリュー34(第2の歯車24と係合する)を担持する第2のモータ44により光軸Xを中心として回転される。第2のモータ44は、例えばケース12の第2の部分16に取り付けられる。
【0051】
第2の歯車24の現在位置は第2の光学セル54により監視される。
【0052】
図4に示すように、第3の歯車27のその一部は、第3の歯車27と係合する第3のウォームスクリュー36が取り付けられ駆動軸を有する第3のモータ46により(光軸Xを中心として)回転される。第3のモータ46は、例えばケース12の第3の部分18に取り付けられる。
【0053】
第3の歯車27の現在位置は第3の光学セル56により監視される。
【0054】
光学セル52、54、56のそれぞれは、例えば少なくとも1つの光センサを含む素子の対で形成され、その対の他の素子は、例えば発光器(又は、変形形態として反射素子、この場合、発光器は光センサを伴う)である。
【0055】
第1、第2、及び第3のモータ42、44、46は、例えば20ステップ/回転の分解能を有するステッピングモータであり、ここでは1ステップの8分の1単位で設定される(以下ではマイクロステップと呼ばれる)。変形形態として、これらのモータは1ステップの16分の1単位で設定され得る。
【0056】
ケース12の内容積(及び、同様に第1の部分、第2の部分及び第3の部分14、16、18のそれぞれの内容積)は、モータ42、44、46を収容するための空間(
図2、3、及び4のケース12の上側領域)と光学素子2、4、6を収容するための空間(
図2、3、及び4のケース12の下側領域)とに再分割され得る。
【0057】
モータ42、44、46を収容するための空間は、光学素子2、4、6を収容するための空間の方向に(同図の最下部に向かって)開き、ケース12の上面19により反対端において(同図の最上部に向かって)閉じたほぼ平行六面体の形状を有する(ケース12の上面19は、ケース12の第1、第2及び第3の部分14、16、18のそれぞれを組み立てて形成される)。
【0058】
モータ42、44、及び46の配置は、有利にはレンズの有用な半径に可能な限り近い光軸を中心とする円状幾何学形状を180°にわたって使用できるようにするようにされる。
【0059】
光学素子2、4、6を収容するための空間は、モータを収容するための空間とは対照的に、ケース12の外周の半分にわたって第3の歯車27の形状と一致する円柱形状(ケース12の壁に囲まれた)を有する。
【0060】
換言すれば、ケース12(及びしたがってケース12の第1、第2、及び第3の部分14、16、18のそれぞれ)は光学素子2、4、6を収容するための空間内に、第3の歯車27の直径(光軸Xに垂直である)とほぼ同じであり、且つ若干大きい直径を有する筒形状を有する。
【0061】
歯車22、24、27のそれぞれの直径は、光学系の厚さにもかかわらず視野の維持を促進するように選択される。
【0062】
第1のモータ42及び第1のウォームスクリュー32は、モータを収容するための空間内に第1のモータ42が収容され、一方で光学素子を収容するための空間内に第1のウォームスクリュー32が存在するように、ケース12内でケース12の上面に垂直(及びしたがって特に光軸Xに垂直)な方向Zに延びる。
【0063】
第2のモータ44及び第2のウォームスクリュー34は、ケース12内において、同じ方向であるが、円柱度数レンズ2、4に対して第1のモータ42及び第1のウォームスクリュー34と対向して延びる。第2のモータ44はモータを収容するための空間内に収容され、一方で第2のウォームスクリュー34は光学素子を収容するための空間内に存在する。
【0064】
したがって、第1のウォームスクリュー32及び第2のウォームスクリュー34は、第1の歯車22と第2の歯車24とで形成されたアセンブリの両側に配置されることと、これらの様々な部品(第1のウォームスクリュー32、第2のウォームスクリュー34、第1又は第2の歯車22、24)の横方向の嵩(前述の軸X及びZに垂直な軸Yに沿った)は、第1及び第2のウォームスクリュー32、34がそれらを収容するのに必要な余分な空間無しに光学素子を収容するための空間内に含まれるように、第3の歯車27の直径より小さいこととに注意されたい。
【0065】
さらに、第1及び第2のモータ42、44はそれぞれ、第1及び第2の歯車22、24のそれぞれより大きく、且つケース12の第1及び第2の部分14、16のそれぞれよりさらに大きい、光軸Xに沿った嵩を有する。しかし、これら第1及び第2のモータ42、44は、上に示すようにケース12のそれぞれの側に配置されるため(軸Zに対して)、それぞれ、ケース12の第1の部分14及び第2の部分16に沿って光軸Xに沿って延びる空間を占め得る。
【0066】
例えば、第1及び第2モータ42、44のそれぞれは6~12mm(例えば、10mm)の横方向の嵩(モータの外径)を有し、第1及び第2の歯車22、24はそれぞれ1~4mm(例えば、2.5mm)の厚さ(軸Xに沿った嵩)を有する。
【0067】
第3のモータ46及び第3のウォームスクリュー36は、対称的に、ケース12の第3の部分18に沿って軸Xに沿って延びる領域内のモータを収容するための空間内に配置される。したがって、第3のウォームスクリュー36は第3の歯車27とその上側部分で係合し、これにより、上に示すようにケース12が第3の歯車27の下側部分におけるケース12の形状に密に従うようにする。
【0068】
説明した例では、
図4に示すように、第3のモータ46及び第3のウォームスクリュー36の軸はケース12の上面に対して(特に前述の軸Yに対して)若干傾斜される。
【0069】
第3の歯車27の厚さは、例えば0.3mm~2mmに含まれるようにされる。
【0070】
様々な要素のこの配置により、通常は15~20mmの厚さを有する比較的薄いケースが得られるようにする。
【0071】
ケース12はまた、例えばモータを収容するための空間の上側領域内に、ここでは共通プリント回路基板により担持される複数の集積回路から形成される制御要素50を含む。
【0072】
さらに、電力貯蔵装置ここでは電池58(変形形態として、スーパーキャパシタであり得る)が装置をスタンドアロンにするために設けられる。例えば、電力貯蔵装置58を再充電するための無接触素子も設けられる。電池58は特に、モータ42、44、46と制御要素50とに電力が供給され得るようにする。
【0073】
このような制御要素50の主要素子と、前述のモータ42、44、46及び前述の光学セル52、54、56へのそれらの接続とが
図5に概略的に示される。
【0074】
制御要素50は、設定点情報(すなわち、光学素子2、4、6で形成された光学系により生成される補正を規定する球面度数S、円柱度数C、及び非点収差αの角度のユーザにより要求される値を示す情報)をここでは無線リンクを介し受信するように設計された受信モジュール60を含む。
【0075】
受信モジュール60は、例えばユーザにより制御される赤外線発射遠隔制御装置からこの設定点情報を受信する赤外線受信モジュールである。変形形態として、この設定点情報が無線リンク(例えば、ローカル無線通信ネットワーク)を介してパーソナルコンピュータから受信されるようにし得、この場合、ユーザはコンピュータ上で会話型選択により視覚補正装置の球面度数S、円柱度数C及び非点収差αの角度の値を選択し得る。
【0076】
受信モジュール60は、受信された設定点情報S、C、αを、計算機66(例えば、以下に述べるように計算機の機能を行うようにコンピュータプログラムを実行するプロセッサからなる)へ、特にこの計算機66により実装される変換モジュール68へ送信する。
【0077】
変換モジュール68は、入力として受信される設定点値S、C、αを得るために必要な角度α
1、α
2の値と球面度数Svの値とを、
図6を参照して以下に説明するものに従って判断する。
【0078】
計算機66はまた、他のものと無関係にモータ42、44、46のそれぞれを制御して、所望の値が得られるようにする歯車22、24、27のそれぞれの位置を得るために、変換モジュール68により計算された角度α1、α2及び球面度数SVの値を入力として受信するとともに、制御信号をモータ42、44、46へ発する制御モジュール70を実装する。
- 制御モジュール70は、凸状平坦-円柱レンズ2(第1の歯車22により担持される)の光学活性円柱表面の軸Y1が基準方向Y0と角度α1をなす位置まで、第1の歯車22を、光軸Xを中心として回転させるように第1のモータ42を制御し、
- 制御モジュール70は、凹状平坦-円柱レンズ4(第2の歯車24により担持される)の光学活性円柱表面の軸Y2が基準方向Y0と角度α2をなす位置まで、第2の歯車24を、光軸Xを中心として回転させるように第2のモータ44を制御し、及び
- 制御モジュール70は、可変球面度数を制御するリングが球面度数SVを変換モジュール68により計算された度数へ設定する位置まで、第3の歯車27を、光軸Xを中心として回転させるように第3のモータ46を制御する。
【0079】
各歯車22、24、27の位置は、それぞれが関連付けられた歯上のホイールの外周上の基準点(例えば、歯車の無い点)に対して光学セルを通過した歯の数を測定する光学セル52、54、56により、それぞれ各時点で知られる。
【0080】
本明細書で説明する例では、第1のモータ42/第1のウォームスクリュー32/第1の歯車22のアセンブリは、第2のモータ44/第2のウォームスクリュー34/第2の歯車24のアセンブリと全く同様に、歯車22、24の1つの回転が関連モータ42、44の15040マイクロステップに対応するような歯車比を有する。したがって、分解能(1マイクロステップの歯車22、24の回転角)は角度α1、α2に対して0.024°である。
【0081】
第3のモータ46/第3のウォームスクリュー36/第3の歯車46のアセンブリの一部は1回転当たり16640マイクロステップの歯車比を有する。可変球面度数を制御するためのリングは、-25D~25D(すなわち、50Dの変化のスパン)の球面度数の変化を得るように120°の(したがって、5547マイクロステップに対応する)角度スパンにわたって調整可能である。したがって、分解能(1マイクロステップに対する球面度数SVの変化)は、0.009Dである。
【0082】
1つの想定可能な実施形態によると、視覚補正装置の度数設定点を任意選択的に補正するために、球状レンズ6の入口面と視覚補正装置を通して観測する眼の角膜の頂点との間の距離を制御要素50に考慮させるようにさせ得る。この距離(「レンズ-眼距離」(lens-eye distance)を略したLEDで表される場合もある)は、そのようにするための公知の手段により得ることができる。
【0083】
等価焦点距離Fの球面度数Sの例を挙げると、位置決め誤差εは、球面度数S’と等価な焦点長F’の補正が必要とされるであろうことを意味するであろう。ここで、
【数3】
であり、これは第一近似では次式となる。
S’=S・(1+ε・S)
【0084】
したがって、制御要素50は、入力として受信された設定点値S、C、αだけでなく眼-装置(ここでは角膜-レンズ6の入口面)距離にも応じて角度α1、α2の値と球面度数SVの値(及び、上に示すようにモータへそれぞれ印加される制御信号)とを、この実施形態に従って判断する。レンズ-眼距離は、本明細書では、元のままの設定点を受信する制御要素50により考慮される(すなわち、レンズ-眼距離が考慮されない)ことに注意されたい。
【0085】
さらに、初期設定点値α1、α2、SVから新しい設定点値α’1、α’2、S’Vへの移行中、第1、第2及び第3のモータ42、44、46のそれぞれが、設定点変化のうちの1つの設定点変化の振幅(例えば、球面度数の変化(絶対値)|S’V-SV|)に任意選択的に依存し得る所定長の時間T(秒)の間、作動され得るようにすることができる。ここで、|x|はxの絶対値である。
【0086】
これを行うために、計算機66は、例えば、角度α1から角度α’1への移行を可能にするモータ42のマイクロステップの数p1、角度α2から角度α’2への移行を可能にするモータ44のマイクロステップの数p2、球面度数SVから球面度数S’Vへの移行を可能にするモータ46のマイクロステップの数p3を判断する。次に、計算機66は、モータ42に1秒当たりp1/Tマイクロステップの速度で回転するように、モータ44に1秒当たりp2/Tマイクロステップの速度で回転するように、及びモータ46に1秒当たりp3/Tマイクロステップの速度で回転するように命令する。
【0087】
制御要素50はまた、測定された周囲温度に関する情報を提供する温度センサ62と、例えば視覚補正装置10の配向(例えば、垂直に対する)に関する情報を提供する加速度計の形式を取る傾斜計64とを含む。
【0088】
計算機66は、温度センサ62により生成された温度情報の項目と傾斜計64により生成された配向情報の項目とを受信し、これらの情報項目をモータ42、44、46へ送信すべき命令の判断に関連して使用する。
【0089】
説明した例では、制御モジュール70は、温度に起因するレンズ6の球面度数の変化(記載の例では約0.06D/℃)を補正するために温度情報の項目を使用し、視覚補正装置10の配向の変化に起因する駆動系(モータ、ウォームスクリュー、歯車)の潜在的擾乱を補正するために配向情報の項目を使用する。
【0090】
次に、変換モジュール68が構築され得る方法の一例を、
図6を参照して説明する。
【0091】
既に示したように、変換モジュール68は、入力として受信される設定点値S、C、αを得るために必要な角度α1、α2の値と球面度数Svの値とを、ここでは様々なレンズを分離する距離e1、e2を考慮するモデルを使用して計算する。
【0092】
計算機66について既に示したように、変換モジュール68は機能ブロックの形式で
図6に示されるが、実際にはコンピュータプログラム命令のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)による実行を介して実施され得る。
【0093】
変換モジュール68は、入力として設定点値S、C、αを受信する第1のブロック80を含み、これを基礎に角度α
1、α
2及び球面度数Svの近似値
【数4】
を例えば次のように判断する。
【数5】
【0094】
これらの式は上記事項に基づいており、様々なレンズを分離する間隔e1、e2を考慮しないことに注意されたい(したがって、得られた結果は「近似値」として示される)。
【0095】
近似値
【数6】
は、第2のブロック82及び加算器ブロック88へ送信される。
【0096】
第2のブロック82は、入力として近似値を受信し、受信された近似値
【数7】
が装置内で使用される場合、(2つの円柱レンズ2、4と可変球面度数のレンズ6とで形成される光学系により)得られるであろう球面度数S’の値、円柱度数C’の値及び非点収差α’の角度の値を推定する。この推定は、様々なレンズを分離する距離e
1、e
2を考慮するモデルに基づく。
【0097】
ここで、例えば、Gullstrandの式を使用して、経線(角度φによる示される)毎の屈折力は、(2つの円柱レンズ2、4と可変球面度数のレンズ6とで形成される光学系により):
P(φ)=S
V+A
1(S
V).P
1(φ)+A
2(S
V).P
2(φ)+A
3(S
V).P
1(φ).P
2(φ)
であり、ここで、
【数8】
であり、ここで、w
0はレンズ6の湾曲、hはレンズ6の厚さ、n
LVはレンズ6を満たす液体の指標、Kは膜の休止位置と可変レンズの主対物面との距離である。
【0098】
したがって、パラメータA1、A2、A3はSvの可変関数であり、一方、他のパラメータは系の定数(校正され得る)である。
【0099】
光学系の球面度数、円柱度数、及び非点収差の角度の定義により、この屈折力Pも経線毎に次のように記述され得る。
P(φ)=S’+C’sin2(α’-φ)
【0100】
したがって、例えば関数P(φ)の微係数dP/dφを計算することにより、且つ2つの特定値(例えば、φ=0及びφ=π/4)を採ることによってC’及びα’を得ることができ、これによりtan2α’及びC’2が得られるようにする。
【0101】
さらに、P(φ)の定数部は、上記式に従ってS’に接近する。
【0102】
第2のブロック82から出力として生成される球面度数S’の値、円柱度数C’の値、非点収差α’の角度の値は減算器ブロック84へ送られ、減算器ブロック84は、これらの値のそれぞれと対応設定点値S、C、αとの差異を計算する。したがって、減算器ブロック84は、以下の値(近似値の使用に起因する誤差をパラメータ毎に表す)を出力する。
ΔS=S-S’;ΔC=C-C’;Δα=α-α’
【0103】
減算器ブロック84から出力される誤差値ΔS、ΔC、Δαは、これらの誤差値ΔS、ΔC、Δαに関連する設定α
1、α
2、Svにおけるそれぞれの変動Δα
1、Δα
2、ΔSvを判断するように設計される第3のブロック86へ入力される(例えば、次の等式:
S’+C’sin
2(α’-φ)=S
V+A
1(S
V).P
1(φ)+A
2(S
V).P
2(φ)+A
3(S
V).P
1(φ).P
2(φ)
の、値S’、C’、α’及び
【数9】
を中心とする線形化による)。ΔSの値は、例えば、
【数10】
に対し、微係数
【数11】
をそれぞれ採ることにより得られる。その処理は、ΔCとΔαとについて同一である。次に、得られた連立方程式が特定値を使用して従来の方法で解かれる。
【0104】
次に、設定変動Δα
1、Δα
2、ΔSvは、既に示したように第1のブロック80により生成される近似値
【数12】
を入力として受信する加算器ブロック88に入力される。
【0105】
したがって、この加算器ブロック88は出力として次の設定値を生成する。
【数13】
【0106】
上で行った計算により、これらの設定値α1、α2、Svは、第3のブロック86内で使用される線形化中になされる近似に関係する最小誤差で、レンズの間隔に関係する結合効果を考慮する一方で設定点値S、C、αが得られるようにする。
【0107】
1つの想定可能な変形形態によると、
図6に破線により示すように、誤差値ΔS、ΔC、Δαのそれぞれを0に向かって収束させるために、上に説明した処理の1つ又は複数の新しい反復を適用することが可能である(反復処理は、例えば誤差値のそれぞれが事前設定閾値未満になると停止する)。これらのその後の反復では、前の反復から出力される設定値α
1、α
2、Svが現在の反復において近似値
【数14】
として使用される。
【0108】
ここで説明した処理は、設定点値S、C、αに依存して、設定値α1、α2、Svが様々なレンズ2、4、6を分離する距離e1、e2を考慮するモデルにより実時間で判断されるようにすることが理解される。
【0109】
別の想定可能な実施形態によると、変換モジュール68は、設定値の多くの三重項(α1、α2、Sv)を三重項(α1、α2、Sv)毎にメモリ(参照テーブル又はLUT)に格納し得、三重項値(S、C、α)は対象の設定値α1、α2、Svを用いて得られる。
【0110】
設定値の三重項(α1、α2、Sv)に関連する三重項値(S、C、α)は、レンズ2、4、6を分離する距離を考慮するモジュールを使用して予め計算され(例えば、上記式により)、且つ既に示したように変換モジュール68内のメモリ内に格納される。
【0111】
実際には、想定可能値範囲にわたり規則的に分散されるS及びCの可能値に関連する三重項がメモリ内に格納される。例えば、範囲[-20D、20D]内のSの160の値(これは0.25Dの間隔に対応する)と範囲[0、8D]内のSの32の値(これも0.25Dの間隔に対応する)とが使用され、パラメータαは簡単な回転により処理され、これにより、それぞれが対(S、C)に関連する5120の三重項設定値(α1、α2、Sv)のみがメモリ内に格納されるようにする。
【0112】
動作中、変換モジュール68は、格納された三重項(S、C、α)から、その値が、入力として受信される設定点値S、C、αに最も近い三重項を選択し、次に、変換モジュール68は、選択された三重項に関連付けられた(参照テーブル内で)設定値の三重項(α1、α2、Sv)を読み出し、読み出された値を出力する。
【0113】
ここで述べた実施例では、三重項(α1、α2、Sv)は、それぞれ対(S、C)に関連付けられてメモリ内に格納され、変換モジュール68は、角度αを考慮するために、その値が設定点値S、Cに最も近い対に関連付けられた値(α1、α2、Sv)を読み出し、回転補正する。
【0114】
1つの想定可能な変形形態によると、(上に示したように、温度に起因するレンズ6の球面度数の変動を補正するために)温度をさらに考慮することが可能である。変換モジュール68は、例えば、この場合、それぞれが所定温度に関連付けられた複数の参照テーブルをメモリ内に格納する。使用中、変換モジュール68は、温度センサ62により提供される温度情報の項目に関連付けられた参照テーブルを選択し、選択された参照テーブルを使用して、上に説明された処理を行う。
【0115】
別の想定可能な実施形態によると、変換モジュール68は、光線追跡シミュレーションにより入力として受信される設定点値S、C、αを得るために必要とされる角度α1、α2の値と球面度数Svの値とを判断し得る。光線追跡は、レンズ2、4、6がそれぞれの位置においてモデル化され、したがってこれらのレンズ2、4、6を分離する距離を考慮する環境内で行われる。
【0116】
視覚補正装置10は、ジャクソンクロスシリンダ関数、フリップクロスシリンダとも呼ばれるジャクソンクロスシリンダを提供するために使用され得る。
【0117】
第1の例によると、この関数は、必要な円柱補正(cylindrical correction)(「円柱軸」と称する場合もあるパラメータ)の角度α0を検証する(又はさらには発見する)ために使用され得る。ここでは、球面度数補正値S0及び円柱度数補正値C0も事前に判断されていると仮定する。
【0118】
ジャクソンクロスシリンダ関数は、したがって、例えば以下の2組の設定点、すなわち、角度α0により定義された軸から45°における円柱度数Cvar(例えば、0.5D)の加算に対応する第1の組の設定点、
- 非点収差設定点の角度α1=α0-0.5atan(Cvar/C0)、
- 円柱度数設定点C1=Root(C0
2+Cvar
2)(ここで、Rootは平方根関数である)、及び
- 球面度数設定点S1=S0+C0/2-C1/2、
並びに角度α0により定義された軸から45°における円柱度数-Cvarの加算に対応する第2の組の設定点、
- 非点収差設定点の角度α2=α0-0.5atan(Cvar/C0)、
- 円柱度数設定点C2=Root(C0
2+Cvar
2)、及び
- 球面度数設定点S2=S0+C0/2-C2/2
を交互に高速に適用することにより提供される。
【0119】
第2の例によると、この関数は必要な円柱度数補正値C0の値を検証する(又はさらに発見する)ために使用され得る。ここでは、球面度数補正値S0及び非点収差値α0の角度も事前に判断されていると仮定する。
【0120】
ジャクソンクロスシリンダ関数は、したがって、例えば以下の2組の設定点、すなわち、角度α0により定義された軸上の円柱度数Cvar(例えば、0.5D)の加算に対応する第1の組の設定点、
- 非点収差設定点の角度α1=α0、
- 円柱度数設定点C1=C0+Cvar、及び
- 球面度数設定点S1=S0-Cvar/2、
並びに角度α0により定義された軸上の円柱度数-Cvarの加算に対応する第2の組の設定点、
- 非点収差設定点の角度α2=α0、
- 円柱度数設定点C2=C0-Cvar、及び
- 球面度数設定点S2=S0+Cvar/2
を交互に高速に適用することにより提供される。