(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】炭酸化処理装置および炭酸化処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20220331BHJP
B01F 27/95 20220101ALI20220331BHJP
B01J 19/18 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
B01F7/30 Z
B01J19/18 ZAB
(21)【出願番号】P 2021173299
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2021-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(73)【特許権者】
【識別番号】521465304
【氏名又は名称】オー.シー.オー テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】O.C.O Technology Ltd.
【住所又は居所原語表記】Montague Place,Chatham Maritime,Chatham,Kent ME4 4QU(GB)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】皆川 公司
(72)【発明者】
【氏名】中原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 大
(72)【発明者】
【氏名】ビセット,トム
(72)【発明者】
【氏名】ガニング,ピーター
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267908(JP,A)
【文献】特開平11-218320(JP,A)
【文献】特開2001-062426(JP,A)
【文献】特表2020-534999(JP,A)
【文献】特開2017-015354(JP,A)
【文献】特開平08-323329(JP,A)
【文献】特開2000-111023(JP,A)
【文献】特表平11-505319(JP,A)
【文献】特開2006-122796(JP,A)
【文献】特開平04-004084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B01F 27/95
B01J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸化処理される固形物を含む被処理物を攪拌しつつ二酸化炭素と接触させて前記固形物に炭酸化処理を施すための炭酸化処理装置であって、
前記被処理物が収容される収容空間を有する反応容器と、
上下方向に延びる軸周りに回転して前記収容空間に収容された前記被処理物を攪拌する少なくとも1つの攪拌機とを備え、
該攪拌機が、前記被処理物の攪拌に際して前記収容空間において遊星運動するように備えられ
、
前記攪拌機が、複数備えられ、
該複数の前記攪拌機には、第1攪拌機と、第2攪拌機とが含まれており、
前記第2攪拌機が前記第1攪拌機よりも高速回転可能で、
前記反応容器が、円柱状の前記収容空間を有し、
該反応容器が、前記収容空間の底面を画定する底壁と、前記収容空間の側面を画定する周側壁と、前記収容空間の天面を画定する天井壁とを有し、
前記第1攪拌機は、回転した際に前記被処理物を前記反応容器の底部からすくい上げて攪拌し得るように前記底壁に沿って移動する攪拌羽根を備え、
前記第2攪拌機は、前記第1攪拌機ですくい上げられた前記被処理物に含まれている凝集塊を破砕し得るように前記第1攪拌機の前記攪拌羽根よりも上方で回転する攪拌羽根を有している炭酸化処理装置。
【請求項2】
前記反応容器には、前記二酸化炭素を含む気体を前記収容空間に取り入れる給気部と、前記気体を前記収容空間から排出する排気部とが備えられ、
前記排気部が、前記収容空間の上端部の前記気体を排気し得るように備えられている請求項1記載の炭酸化処理装置。
【請求項3】
前記被処理物に接する前記反応容器の内壁面を冷却する冷却装置が更に備えられている請求項1又は2記載の炭酸化処理装置。
【請求項4】
前記周側壁の内側を周回して該周側壁の内壁面に付着した前記被処理物を掻き落とすスクレーパーをさらに備えている請求項1乃至
3の何れか1項に記載の炭酸化処理装置。
【請求項5】
炭酸化処理装置を用い、二酸化炭素によって固形物に炭酸化処理を施す炭酸化処理方法であって、
前記炭酸化処理装置は、前記固形物を含む被処理物が収容される収容空間を有する反応容器と、
上下方向に延びる軸周りに回転して前記収容空間に収容された前記被処理物を攪拌する少なくとも1つの攪拌機とを備え、
該攪拌機が、前記収容空間において遊星運動するように備えられており、
該炭酸化処理装置には、前記攪拌機が、複数備えられ、
該複数の前記攪拌機には、第1攪拌機と、第2攪拌機とが含まれており、
前記第2攪拌機が前記第1攪拌機よりも高速回転可能で、
前記反応容器が、円柱状の前記収容空間を有し、
該反応容器が、前記収容空間の底面を画定する底壁と、前記収容空間の側面を画定する周側壁と、前記収容空間の天面を画定する天井壁とを有し、
前記第1攪拌機は、回転した際に前記被処理物を前記反応容器の底部からすくい上げて攪拌し得るように前記底壁に沿って移動する攪拌羽根を備え、
前記第2攪拌機は、前記第1攪拌機ですくい上げられた前記被処理物に含まれている凝集塊を破砕し得るように前記第1攪拌機の前記攪拌羽根よりも上方で回転する攪拌羽根を有しており、
前記
複数の攪拌機によって前記被処理物を攪拌して前記炭酸化処理を実施する炭酸化処理方法。
【請求項6】
前記被処理物での固形分100質量部に対する水の含有率が5質量部以上25質量部以下である請求項
5記載の炭酸化処理方法。
【請求項7】
前記反応容器には、前記二酸化炭素を含む気体を前記収容空間に取り入れる給気部と、前記気体を前記収容空間から排出する排気部とが備えられ、
前記排気部が、前記収容空間の上端部の前記気体を排気し得るように備えられており、
前記被処理物を収容した前記収容空間に前記気体を流通させつつ前記炭酸化処理を実施する請求項
5又は
6記載の炭酸化処理方法。
【請求項8】
前記炭酸化処理では、前記排気部により前記収容空間から排出される前記気体の流速を1m/s以上4m/s以下に調整する請求項
7記載の炭酸化処理方法。
【請求項9】
前記炭酸化処理では、前記給気部により前記収容空間に導入する前記気体の流速を10m/s以上40m/s以下に調整する請求項
7又は
8記載の炭酸化処理方法。
【請求項10】
前記炭酸化処理では、前記収容空間の圧力をゲージ圧で20kPa以下の正圧となるように調整する請求項
7乃至
9の何れか1項に記載の炭酸化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭酸化処理装置と炭酸化処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物の焼却設備から排出される飛灰に対しては、pHの低下や重金属の溶出防止などの目的で炭酸化処理が施されたりしている。このような炭酸化処理を行なうための炭酸化処理装置としては、下記特許文献1にも開示されている通り、両端部が閉塞された円筒体で、該円筒体の中心軸が水平方向となるように配された反応容器と、前記反応容器の中心軸に沿って配された回転軸を有する攪拌機とを備えたものが知られている。
【0003】
この種の炭酸化処理装置での炭酸化処理では、飛灰と水とを含むペースト状やスラリー状の被処理物を攪拌しながら装置内に二酸化炭素を含む気体を流通させて飛灰に含まれる酸化カルシウムや水酸化カルシウムを炭酸カルシウムへと変化させることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献に記載のように横置きにされた円筒状の反応容器の中心を通る回転軸に攪拌羽根を装着した攪拌機を用いる場合、前記回転軸を反応容器の全長に及ぶ長さとすることができ、しかも、その長さ方向の複数箇所に攪拌羽根を配置することができるため、装置内に攪拌され難い場所が生じることを抑制することができ、二酸化炭素が被処理物全体に行きわたり易くなる。
【0006】
しかしながら、この種の炭酸化処理装置では、攪拌羽根が縦回転する形になるため被処理物を跳ね上げ易くなる。炭酸化処理の後段においては被処理物における飛灰と水とが比較的均一に混合されることになるが処理前段では飛灰だけが固まっているような場合がある。そのため、縦回転する攪拌羽根を有する攪拌機を利用すると装置内で飛灰が舞い上がり易くなる。舞い上げられた飛灰は装置から排出される気体に同伴されて装置外に排出されるおそれがある。排気系統に飛灰が入り込むような状況では頻繁に清掃することが必要になり効率良く作業することが難しくなる。
【0007】
このことを防止すべく上下方向に延びる回転軸に攪拌羽根を装着した攪拌機を用い攪拌羽根を横回転させて炭酸化処理を行うことが考えられる。しかしながら単に攪拌羽根を横回転させるだけでは十分な攪拌が行われ難い。そのため従来の方法では効率良く炭酸化処理することが難しい。そこで、本発明は、効率良く炭酸化処理が可能な炭酸化処理装置と炭酸化処理方法とを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明者が鋭意検討したところ、攪拌羽根を縦回転でなく横回転させる場合でも特定の方法で回転をさせることで二酸化炭素が被処理物全体に行きわたり易くなり、しかも、反応容器からの固形物の排出も抑制可能になることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
炭酸化処理される固形物を含む被処理物を攪拌しつつ二酸化炭素と接触させて前記固形物に炭酸化処理を施すための炭酸化処理装置であって、
前記被処理物が収容される収容空間を有する反応容器と、
上下方向に延びる軸周りに回転して前記収容空間に収容された前記被処理物を攪拌する少なくとも1つの攪拌機とを備え、
該攪拌機が、前記被処理物の攪拌に際して前記収容空間において遊星運動するように備えられている炭酸化処理装置、を提供する。
【0010】
本発明は、また、
炭酸化処理装置を用い、二酸化炭素によって固形物に炭酸化処理を施す炭酸化処理方法であって、
前記炭酸化処理装置は、前記固形物を含む被処理物が収容される収容空間を有する反応容器と、
上下方向に延びる軸周りに回転して前記収容空間に収容された前記被処理物を攪拌する少なくとも1つの攪拌機とを備え、
該攪拌機が、前記収容空間において遊星運動するように備えられており、
前記攪拌機によって前記被処理物を攪拌して前記炭酸化処理を実施する炭酸化処理方法、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率良く炭酸化処理が可能な炭酸化処理装置と炭酸化処理方法とが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一焼却施設での装置構成を示した概略図である。
【
図2】
図2は、炭酸化処理装置の一例を示した概略図である。
【
図3】
図3は、
図2の炭酸化処理装置での攪拌機の様子を示した部分拡大図である。
【
図4】
図4は、炭酸化処理装置での攪拌領域を示した概略図(
図2のIV-IV線矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施の形態について焼却施設に設置された炭酸化処理装置で飛灰を炭酸化処理する方法を図を参照しつつ説明する。
本実施形態の炭酸化処理装置では、飛灰と水とを含む被処理物が二酸化炭素を含む気体と接触することで飛灰の炭酸化が行われる。飛灰は、比表面積の大きな粒子であり、それ自体は、炭酸化処理が効率良く行われ得る。その反面、飛灰は、凝集し易い。そのため従来のような方法では飛灰を十分に攪拌するのは難しい。また、飛灰は炭酸化処理に用いられた後の気体に同伴されて排出されてしまい易い。尚、本実施形態の炭酸化処理装置で炭酸化処理される対象は炭酸化処理が可能なものであればどのような物質でもよく、飛灰に限定されない。本実施形態の炭酸化処理装置で炭酸化処理される対象は、粒子にも限定されない。
【0014】
飛灰が装置外に排出されることを防ぐために目の細かなフィルターなどを設置することも考え得る。その場合は二酸化炭素を含む気体を装置に供給するためのブロアなどの負荷を増大させることになり、効率的な炭酸化処理が行われ難くなり得る。本実施形態では炭酸化処理するのが飛灰のような細かな粒子でも、該粒子が舞い上がるのを防ぎつつ良好な攪拌が行われ得る。そのため本実施形態では効率良く炭酸化処理が行われ得る。このような効果は、炭酸化処理する対象が飛灰である場合に限って得られるものではない。炭酸化処理する対象が固形物である場合、サイズを小さくして比表面積を大きくする方が炭酸化処理の処理効率は向上するものの固形物のサイズを小さくすると当該固形物が排気に同伴され易くなってしまう。また、固形物がサイズの大きな塊であっても攪拌時に塊どうしが衝突して細かな破砕物が生じ、当該破砕物が排気に同伴されるおそれも有する。
【0015】
本実施形態の炭酸化処理装置で炭酸化処理される対象は、固形物である。炭酸化処理する固形物は、熱処理によって生じた生成物であってもよい。熱処理としては、例えば、熱分解を伴わない単なる溶融や熱分解などが挙げられる。熱分解は、焼却、焼成、ガス化、焙焼を目的としたものであってもよい。熱分解される対象物としては、例えば、都市ごみ、バイオマス、製紙スラッジ、下水汚泥、セメント原料、鉄鋼原料などが挙げられる。炭酸化処理する固形物は、これらの熱分解される対象物に由来する生成物であってもよい。熱分解によって生じる生成物としては、焼却灰が挙げられる。焼却灰としては、主灰、飛灰などが挙げられる。炭酸化処理する焼却灰は、溶融スラグの状態になっていてもよい。熱分解によって生じる生成物としては、金属の精錬過程で生じるスラグであってもよい。
【0016】
図1は、炭酸化処理される材料が生成される施設を焼却炉10を有する焼却施設100の形態で示したものである。該焼却炉10は、廃棄物等の被焼却処理物を焼却して高温の排ガスを排出する。
【0017】
該焼却炉10から排出される排ガスは、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素など気体の他に固形物である飛灰を含む。飛灰は、通常、被焼却処理物に由来する成分とともに後述するアルカリ剤に由来する成分を含む。該飛灰には、通常、カリウム、カルシウム、及び、マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上を含む化合物が含まれる。前記炭酸化処理装置で炭酸化処理され、本実施形態の炭酸化処理方法で炭酸化処理される前記飛灰には、例えば、硫黄、リン、ケイ素からなる群より選ばれる1種以上を含む化合物が含まれてもよい。前記飛灰には、ナトリウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、銅、及び、それらの化合物からなる群より選ばれる1種以上が含まれてもよい。前記飛灰には、鉛や六価クロムなどの重金属やその化合物も含まれ得る。
【0018】
前記化合物としては、例えば、酸化物、水酸化物、炭化物、炭酸化物、炭酸水素化物、窒化物、硝酸化物、硫化物、硫酸化物、ハロゲン化物などが挙げられる。本実施形態における炭酸化処理装置50は、該飛灰を炭酸化処理するとともに炭酸化処理後の飛灰を地中に埋設するなどした際に前記重金属が溶出することを抑制すべく使用される。幾つかの例では、鉛の溶出量が0.3mg/L以上である飛灰が炭酸化処理に用いられる。幾つかの例では、六価クロムの溶出量が1.5mg/L以上である飛灰が炭酸化処理に用いられる。
【0019】
炭酸化処理方法は、どのような用途でも実施でき、利用する設備が限られるものではないが、例えば、前記焼却設備100で実施され得る。本実施形態の焼却施設100は、前記焼却炉10と、該焼却炉10から排出される排ガスを冷却する減温塔20と、該減温塔20で冷却された排ガスに含まれている酸性ガスを中和するために消石灰などのアルカリ剤を排ガスに添加するアルカリ処理装置30と、該アルカリ処理装置30でアルカリ剤の添加された排ガスから固形分である飛灰を取り除くバグフィルターを備えた飛灰除去装置40と、該飛灰除去装置40で除去された飛灰を炭酸化処理するための炭酸化処理装置50とを備えている。本実施形態の炭酸化処理装置50は、収容した飛灰に水を添加して粘土状の被処理物Xを調製し得るように構成されており、後述するように、該被処理物Xを攪拌しつつ炭酸化処理し得るよう構成されている。
【0020】
前記焼却施設100は、前記飛灰除去装置40を通過して飛灰の取り除かれた排ガスに含まれている二酸化炭素を前記炭酸化処理装置50での炭酸化処理に利用し得るように構成されている。より詳しくは、本実施形態の焼却施設100は、前記飛灰除去装置40を通過した排ガスの一部又は全部をスクラバーを備えた接水装置60で水に接触させて易溶解性のガスを当該接水装置60で取り除いた上で前記炭酸化処理装置50に供給し得るように構成されている。該接水装置60では、塩化水素、二酸化硫黄、二酸化窒素などの二酸化炭素よりも水との接触によって排ガスから除去され易い成分が除去され得る。本実施形態では、前記炭酸化処理装置50に二酸化炭素を含む気体として排ガスを供給しているが、該気体は、排ガスに限らず各種のものを利用でき、例えば、ボンベに封入されて市販されている純度99質量%以上の炭酸ガスを炭酸化処理装置50に供給してもよい。
【0021】
前記炭酸化処理装置50で炭酸化処理に用いられる二酸化炭素は、液体や固体の状態で前記炭酸化処理装置50に導入されてもよい。炭酸化処理には、液化二酸化炭素や炭酸水を用いてもよい。炭酸化処理には、ドライアイスを用いてもよい。また、熱分解や化学反応により二酸化炭素が発生する液体や固体(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)も炭酸化処理に用いることができる。炭酸化処理は、純度の高い炭酸ガスやドライアイスなどを用いることで、接水装置60や後述するブロア70、水分除去装置80、冷却装置90などを利用せずに実施できる。炭酸化処理は、排ガスを用いる場合でも、これらの装置を利用せずに実施できる。
【0022】
本実施形態の焼却施設100では、飛灰除去装置40から排ガスを排出する経路となる排ガスラインLEが、系外に排ガスを排出するための排ガス排出ラインLE1と、排ガスを炭酸化処理装置50に供給する排ガス供給ラインLE2とに分岐している。本実施形態の焼却施設100では、排ガスの流路を前記排ガス排出ラインLE1と前記排ガス供給ラインLE2とに切り替えたり、炭酸化処理装置50に供給する排ガス量を調整し得るように排ガスラインLEの分岐箇所にバルブV1が備えられている。
【0023】
本実施形態の焼却施設100は、排ガス供給ラインLE2に接水装置60、およびブロア70が備えられ、炭酸化処理装置50に供給される排ガスに背圧を加え得るように構成されている。本実施形態の焼却施設100は、排ガス供給ラインLE2にミストセパレーターなどの水分除去装置80を備え、炭酸化処理装置50に供給される排ガスに含まれる水分を低減し得るように構成されている。
【0024】
本発明の幾つかの例では、本実施形態の焼却施設100は、被処理物Xに接する前記炭酸化処理装置50の内壁面を冷却する冷却装置90が更に備えている。該冷却装置90は、前記炭酸化処理装置50との間で冷却液を循環させ、前記炭酸化処理装置50で温められた冷却液を冷却して温度低下させた後に再び前記炭酸化処理装置50に供給し得るように構成されている。
【0025】
前記炭酸化処理装置50は、前記飛灰と水とを含んだ前記被処理物Xが収容される収容空間51aを備えた反応容器51と、前記収容空間51aにおいて上下方向に延びる軸周りに回転して該収容空間51aに収容された前記被処理物Xを攪拌する少なくとも1つの攪拌機52と、前記反応容器51の内壁面に付着した被処理物Xを掻き落とすためのスクレーパー53とを備えている。本実施形態の炭酸化処理装置50は、前記攪拌機52が、前記被処理物Xの攪拌に際して前記収容空間51aにおいて遊星運動するように備えられている。
【0026】
前記攪拌機52が遊星運動できるということは、当該攪拌機52が上下方向に延びる中心軸に平行する回転軸を有し、且つ、前記中心軸を周回する軌道に沿って移動可能であることを意味する。
【0027】
前記反応容器51は、前記飛灰や水を前記収容空間51aに導入可能な材料供給部510を有している。前記材料供給部510は、反応容器51の壁を貫通して外部空間と収容空間51aとを連通する貫通孔(以下、材料供給孔510hともいう)と、該貫通孔(材料供給孔510h)を開閉する蓋体510pとを備えている。
【0028】
前記反応容器51は、前記攪拌機52によって前記被処理物Xを攪拌しつつ該被処理物Xに含まれている前記飛灰を炭酸化処理し得るように二酸化炭素を含んだ気体(接水装置60を通過した排ガス)を前記収容空間51aに取り入れるための給気部511と、該給気部511から前記収容空間51aに取り入れられて前記炭酸化処理に用いられた後の前記気体を前記収容空間51aから排出するための排気部512とを備えている。本実施形態の前記排気部512は、前記収容空間51aの上端部の前記気体を排出し得るように設けられている。
【0029】
炭酸化処理に純度の高い炭酸ガスやドライアイスなどを用いる場合、給気部511や排気部512の無い反応容器を用いることもできる。
【0030】
本実施形態での前記反応容器51は、上下方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きな扁平な中空円柱状である。即ち、本実施形態での前記反応容器51は、円柱状の前記収容空間51aを有している。該反応容器51は、前記収容空間51aの側面を画定する円筒状の周側壁51sと、前記収容空間51aの底面を画定する円板状の底壁51bと、前記収容空間51aの天面を画定する円板状の天井壁51cとを有している。
【0031】
前記反応容器51では、前記材料供給孔510hが、前記天井壁51cを貫通するように設けられている。前記給気部511は、前記材料供給部510と同様に前記天井壁51cを貫通する貫通孔(以下、給気孔511hともいう)を有している。前記排気部512も前記給気部511と同様に前記天井壁51cを貫通する貫通孔(以下、排気孔512hともいう)を有している。該排気部512は、前記排気孔512hが前記天井壁51cの内壁面51csにおいて開口していることで前記収容空間51aの上端部の前記気体を排出し得るようになっている。前記給気孔511hと前記排気孔512hとは円柱状の前記収容空間51aの中心軸を介して反対側となる位置にそれぞれ配されており、左右方向に遠く離れた位置関係となるように設けられている。
【0032】
前記反応容器51は、前記周側壁51sと前記底壁51bとが一体化されている一方で前記天井壁51cは別体となっている。前記天井壁51cは、前記周側壁51sに対して着脱自在となって備えられており、円筒状の前記周側壁51sの上端開口部に嵌着可能となっている。該反応容器51は、隙間を設けることなく前記天井壁51cを前記周側壁51sに取付けて前記収容空間51aを閉空間とできるように構成されており、前記給気孔511hからの気体取り入れ量や前記排気孔512hからの気体排出量を調整することにより前記収容空間51aを正圧状態(加圧状態)にしたり負圧状態(減圧状態)にしたりし得るように構成されている。
【0033】
前記周側壁51sは、内壁面51ssの内の少なくとも下部側を前記冷却装置90から供給される冷却液によって冷却し得るように構成されており、前記冷却液が流通される流路51rを有している。前記反応容器51は、前記周側壁51sの内壁面51ssだけでなく前記底壁51bの内壁面51bsも前記冷却装置90で冷却できるように構成されていてもよい。
【0034】
例示の前記炭酸化処理装置50は、当該反応容器51に収容された被処理物Xを攪拌する前記攪拌機52を複数備える。該複数の前記攪拌機52には、第1攪拌機521と、第2攪拌機522とが含まれている。本実施形態では、前記第2攪拌機522が前記第1攪拌機521よりも単位時間当たりの回転数(rpm)において高速回転可能となっている。本実施形態では、前記第2攪拌機522が前記第1攪拌機521よりも高速回転可能であるために攪拌時における前記被処理物Xの移動が乱され易く、前記被処理物Xをより素早く均質な状態に攪拌できるようになっている。
【0035】
前記第1攪拌機521としては、例えば、最大回転速度が500rpm以下の攪拌機を用いることができ、前記第2攪拌機522としては、最大回転速度が3000rpm以下の攪拌機を用いることができる。前記第1攪拌機521は、例えば、炭酸化処理に際して25rpm~250rpmの回転速度で運転させることができる。前記第2攪拌機522は、例えば、炭酸化処理に際して100rpm~1000rpmの回転速度で運転させることができる。
【0036】
本実施形態の第1攪拌機521と、第2攪拌機522とは、それぞれ前記天井壁51cから延びるように又は吊下げられるように設けられている。より詳しくは、第1攪拌機521と、第2攪拌機522とのそれぞれは、前記天井壁51cの下方に該天井壁51cと平行となるように設けられ、且つ、水平方向に回転可能な板状体52aを介して天井壁51cに吊下げられている。
【0037】
前記板状体52aは、本実施形態では前記天井壁51cよりも小さな円板状で、内部に攪拌機52の回転を制御するギアボックスとなっている。前記板状体52aは、前記反応容器51の中心部を通って上下方向に延在する軸(以下、公転軸C52ともいう)を中心として水平方向に回転可能である。前記第1攪拌機521と、第2攪拌機522とのそれぞれは、前記板状体52aにおいて前記軸(公転軸C52)からは水平方向に離れた位置に吊下げられており、前記公転軸C52を中心に遊星運動し得るように設けられている。
【0038】
前記第1攪拌機521は、前記板状体52aへの装着箇所を通って上下方向に延在する軸(以下、第1自転軸C521ともいう)を中心に回転して前記被処理物Xを攪拌し得るように構成されている。前記前記第2攪拌機522も同様に前記板状体52aへの装着箇所を通って上下方向に延在する軸(以下、第2自転軸C522ともいう)を中心に回転して前記被処理物Xを攪拌し得るように構成されている。即ち、前記第1攪拌機521と、第2攪拌機522とのそれぞれは、自転しつつ公転(遊星運動)して被処理物Xを攪拌し得るように構成されている。
【0039】
前記公転軸C52、前記第1自転軸C521、及び、前記第2自転軸C522は、それぞれ軸方向が必ずしも垂直方向となっていなくてもよく、垂直方向に対して僅かな角度(例えば10度以下)を有していてもよいが、これらが垂直方向に対して為す角度は5度以下であることが好ましい。本実施形態では、前記公転軸C52、前記第1自転軸C521、及び、前記第2自転軸C522は、軸方向が垂直方向となっている。
【0040】
前記第1攪拌機521と、第2攪拌機522とは、それぞれの自転軸(第1自転軸C521、第2自転軸C522)の周りに回転して前記被処理物Xを攪拌するための攪拌羽根を備えている。前記第1攪拌機521の攪拌羽根(以下、第1攪拌羽根521cともいう)と、前記第2攪拌機522の攪拌羽根(以下、第2攪拌羽根522cともいう)とは、
図3に示すように垂直方向での位置が異なっている。本実施形態では、前述のように前記第2攪拌機522が前記第1攪拌機521よりも高速回転可能であるために前記被処理物Xを素早く均質化することができるだけでなく、前記第2攪拌機522の攪拌羽根(第2攪拌羽根522c)と前記第1攪拌機521の攪拌羽根(第1攪拌羽根521c)とが垂直方向での位置を異ならせているために前記被処理物Xをより素早く均質化することができるようになっている。
【0041】
前記第1攪拌機521は、第1自転軸C521から径方向外向きに放射状になって延びる複数本のアーム部521aと、該複数のアーム部521aのそれぞれの先端部より下方に延びる脚部521bと、該脚部521bの下端部に設けられた前記第1攪拌羽根521cとを備えている。より詳しくは、前記第1攪拌機521は、回転(公転及び自転)した際に前記被処理物Xを前記反応容器51の底部からすくい上げて攪拌し得るように前記底壁51bの内壁面51bs(上面)に沿って移動する第1攪拌羽根521cを備えている。該第1攪拌羽根521cは脚部521bの下端部から該第1攪拌機521の回転軸(第1自転軸C521)に向かう方向と逆方向とにそれぞれ伸びるように備えられており、脚部521bと組み合せた形状が逆T字状となるように設けられている。この組み合わせた形状は、L字状であってもよい。
【0042】
前記第1攪拌機521は、前記脚部521bが第1自転軸C521から径方向に離れた位置で上下方向に延びるように設けられているために、自転時に前記脚部521bが第1自転軸C521の周りを周回するようになっている。即ち、前記第1攪拌機521は、前記第1攪拌羽根521cだけでなく当該脚部521bによっても前記被処理物Xが攪拌できるようになっている。
【0043】
前記第1攪拌機521は、
図4に示すように、上面視(公転軸C52の軸方向視)において、公転での第1自転軸C521の軌跡として描かれる円を公転円CV1とし、その半径を公転半径rv1とし、且つ、自転により第1攪拌羽根521cが描く軌跡の内の最も外側の軌跡となる円を自転円CR1とし、その半径を自転半径rr1とした場合、自転半径rr1が公転半径rv1よりも大きくてもよい。
【0044】
前記第1攪拌機521の自転半径rr1が公転半径rv1と等しい場合、前記第1攪拌機521を自転させつつ公転させると、
図5Aに示すように、自転円CR1の1点が常に公転軸C52と接するように自転円CR1が公転軸C52周りを周回する状態となる。そして、自転半径rr1が公転半径rv1よりも大きい場合は、
図5Bに示すように、自転円CR1が公転軸C52の周りを一周する間、常に、自転円CR1の内側に公転軸C52が位置することになる。一方で自転半径rr1が公転半径rv1よりも小さい場合、自転円CR1が公転軸C52よりも外側を周回することになり、
図5Cに示すように、自転円CR1の軌跡はドーナッツ状となり反応容器51の中心部に攪拌されない部分が形成されてしまうことになる。そのようなことから、前記第1攪拌機521の自転半径rr1は、公転半径rv1よりも短くてもよいが、公転半径rv1以上であることが好ましい。
【0045】
前記第1攪拌機521の自転半径rr1と公転半径rv1とは、例えば、下記の(1)~(3)の何れかの関係を満たすようにしてもよい。
(0.8×rv1)≦rr1≦(1.2×rv1) ・・・(1)
(0.9×rv1)≦rr1≦(1.2×rv1) ・・・(2)
rv1 ≦rr1≦(1.2×rv1) ・・・(3)
【0046】
前記第1攪拌機521は、被処理物Xの攪拌時に、前記第1攪拌羽根521cが前記周側壁51sの間近を通るように配されることが好ましい。前記公転軸C52に直交する平面による反応容器51の断面において公転軸C52の位置を原点Zとし、該原点Zから前記周側壁51sまでの距離(前記底壁51bの内壁面51bsの外周円の半径)を「r(m)」とした場合、自転半径rr1と公転半径rv1との合計長さは、0.8r以上1.0r未満であってもよく、0.9r以上1.0r未満であってもよい。この内、前記自転半径rr1の長さは、例えば、0.3r以上0.7r以下 とされ得る。
【0047】
前記第2攪拌機522は、前記第1攪拌機521ですくい上げられた前記被処理物Xに含まれている凝集塊を破砕し得るように前記第1攪拌羽根521cよりも上方で回転する第2攪拌羽根522cを有している。本実施形態での第2攪拌機522は、第1攪拌羽根521cの上端よりもさらに上方に配された第2攪拌羽根522cを備えている。前記第2攪拌羽根522cは、例えば、平板状であってもよい。前記第2攪拌羽根522cは、例えば、回転時における進行方向と板面とが略平行となるように配された平板状の攪拌羽根であってもよい。
【0048】
底壁51bの内壁面51bsから天井壁51cの内壁面51csまでの上下方向での距離を収容空間51aの高さ(h0)とした場合、底壁51bの内壁面51bsから第2攪拌羽根522cの上端縁の高さ(h1)の比率(h1/h0)は、0.8以下とすることができる。前記比率(h1/h0)は、0.7以下であってもよく、0.6以下であってもよい。該比率は(h1/h0)は、0.5以下であってもよい。該比率は(h1/h0)は、例えば、0.3以上とすることができる。該比率は(h1/h0)は、0.4以上であってもよい。
【0049】
第2攪拌羽根522cの下端縁から底壁51bの内壁面51bsまでの距離(d1)の収容空間51aの高さ(h0)に対する比率(d1/h0)は、0.1以上であってもよく、0.2以上であってもよい。第2攪拌機522での第2攪拌羽根522cの下端縁から上端縁までの上下方向での距離は、例えば、0.1h0以上0.4h0以下とすることができる。
【0050】
前記第2攪拌機522は、複数の第2攪拌羽根522cを有していてもよい。複数の第2攪拌羽根522cは、上下方向における取付位置が異なっていてもよい。第2攪拌機522に備えられる第2攪拌羽根522cの枚数は、例えば、2枚以上6枚以下とすることができる。この複数の第2攪拌羽根522cは、上下方向に所定の間隔を設けて配置することができる。複数の第2攪拌羽根522cの内の一つの第2攪拌羽根522cと他の第2攪拌羽根522cとは、平面視においてX字状に交差するように配されてもよい。一つの第2攪拌羽根522cと他の第2攪拌羽根522cとは、平面視における角度が約90°(例えば、80°~90°)となるように交差していてもよい。
【0051】
複数の第2攪拌羽根522cを設ける場合、第2攪拌羽根522cの上端縁の高さ(h1)とは、最も上方に配される第2攪拌羽根522cの上端縁の高さを意味する。また、第2攪拌羽根522cの下端縁から底壁51bの内壁面51bsまでの距離(d1)とは、最も下方に配される第2攪拌羽根522cの下端縁からの距離を意味する。
【0052】
最も上方に配される第2攪拌羽根522cは、例えば、0.3h0以上0.6h0以下の範囲内で回転するように配することができる。最も下方に配される第2攪拌羽根522cは、例えば、0.1h0以上0.3h0未満の範囲内で回転するように配することができる。
【0053】
本実施形態での前記第2攪拌羽根522cは、第2自転軸C522における軸方向視での形状が矩形板状である。本実施形態での前記第2攪拌羽根522cは、平行四辺形であってもよい。平行四辺形の第2攪拌羽根522cは、対角線の交点を中心に回転するように配されてもよい。第2攪拌羽根522cは、4つの角の内の回転方向前方側に位置する2つの角度が鈍角で、回転方向後方側に位置する2つの角度が鋭角となっていてもよい。
【0054】
前記第1攪拌機521では、第1自転軸C521から径方向に離れた位置に設けられた脚部521bに前記第1攪拌羽根521cが備えられていたが、該第2攪拌機522では、前記第2攪拌羽根522cが第2自転軸C522に沿って延びる回転軸に備えられている。従って、第2攪拌機522の自転半径rr2は、前記第2攪拌羽根522cの径方向での端縁から第2自転軸C522までの長さに等しくなっている。該第2攪拌機522の公転半径rv2は、前記第1攪拌機521の公転半径rv1よりも短くても、長くてもよく、前記第1攪拌機521の公転半径rv1と同じであってもよい。第2攪拌機522での公転半径rv2と自転半径rr2との合計長さは、例えば、0.2r以上0.8r以下とされ得る。この内、第2攪拌機522の自転半径rr2の長さは、例えば、0.1r以上、0.5r以下とされ得る。
【0055】
前記炭酸化処理装置50は、上記のような例示に限らず変更を加えることができる。炭酸化処理装置50は、例えば、2つの第1攪拌機521を有していてもよい。他の例では、炭酸化処理装置50は、1つの第1攪拌機521と2つの第2攪拌機522とを備えていてもよい。
【0056】
例示の実施形態では、前記スクレーパー53も前記板状体52aから吊下げられている。即ち、前記スクレーパー53は、攪拌機52の遊星運動に際して周側壁51sの内側を周回するように配されている。被処理物Xは炭酸化処理に際して反応容器の51の内壁面に固着しやすい。固着した被処理物Xは、攪拌されている被処理物Xに比べて炭酸化の反応が進行し難い。本実施形態では、底壁51bにおいては第1攪拌羽根521cによって固着が防止され、周側壁51sにおいてはスクレーパー53によって固着が防止される。
【0057】
本実施形態では、上記の通り、被処理物Xが内壁面に強固に固着する前にスクレーパー53によって掻き落とされるので攪拌が不均一になることを防止でき、未反応物が形成され難くなる。そのような機能は、被処理物Xの表層近くから反応容器の51の底部近くにまで及ぶようにすることが好ましい。また、スクレーパー53で掻き落とされた被処理物Xの塊を前記第2攪拌羽根522cによって破砕させるようにする上で、スクレーパー53の上端及び下端の位置を、前記第2攪拌羽根522cの配置に対応させてもよい。スクレーパー53の上端は、例えば、底壁51bの内壁面51bsから0.3h0以上0.6h0以下の範囲内に位置させることができ、スクレーパー53の下端は、底壁51bの内壁面51bsから0.3h0未満の範囲内に位置させることができる。スクレーパー53は、下端が底壁51bの内壁面51bsに接するように配されてもよい。
【0058】
上記のような炭酸化処理装置50を用いた炭酸化処理方法では、先述のように二酸化炭素を含む気体によって飛灰に炭酸化処理が施される。
【0059】
本実施形態の炭酸化処理方法では、飛灰と水と二酸化炭素を含む気体との他に、重金属固定化剤を併用してもよい。該重金属固定化剤としては、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム化合物;リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイトなどのリン酸化合物;硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの鉄化合物を含む無機系固定化剤や、ジチオカルバミン酸系化合物を含む有機系(キレート系)固定化剤が用いられ得る。
【0060】
本実施形態の炭酸化処理方法では、飛灰と水とを含んだ被処理物Xを調製することが行われる。被処理物Xを調製することでは、まず、処理する飛灰、処理に用いる水、重金属固定化剤をそれぞれ計量することが行われる。飛灰の計量は、反応容器51への収容前であっても反応容器51への収容後であってもよい。即ち、本実施形態では、予め計量した飛灰を反応容器51に収容しても、反応容器51に飛灰を加えつつ反応容器51ごと飛灰の質量を計量するようにしてもよい。
【0061】
前記水は、浄水であっても工業用水などであってもよく、河川水や湖水などであってもよい。炭酸化処理の開始時点における被処理物Xは、固形分100質量部に対して水を5質量部以上含んでいることが好ましい。水を5質量部以上含むことで炭酸化処理時に飛灰が舞い上がり難くなり、反応容器51から飛灰が排出されることが抑制され得る。水の割合は、10質量部以上であってもよく、12質量部以上であってもよい。被処理物Xの粘性が過度に上昇しないように水の量は一定以下であることが好ましい。炭酸化処理の開始時点における被処理物Xは、固形分100質量部に対して水を30質量部以下の割合で含んでいることが好ましい。水の割合は、25質量部以下であってもよく22質量部以下であってもよい。水の割合は、20質量部以下であってもよい。このため処理に用いる飛灰と水とは、飛灰100質量部に対して添加する水の割合が上記のような範囲(10質量部以上20質量部以下)となるように調整されることが好ましい。
【0062】
飛灰への水の添加は、例えば、反応容器51内で実施される。飛灰に水を加えると水和熱により水と飛灰との接触箇所が高温になり、一部の水が蒸発する可能性がある。本実施形態では、反応容器51が密閉可能であるために、該反応容器51内で飛灰に水を添加することで水が一旦蒸発しても再び飛灰に吸収させることができ、飛灰と水との量比が正確に整った被処理物を調製することができる。前記重金属固定化剤は、水とともに飛灰に加えてもよく、水を加える前や水を加え終えた後に添加してもよい。
【0063】
水の添加に際しては、冷却装置90を運転し、反応容器51の流路51rに冷却液を流して内壁面を通じて反応容器51に収容された被処理物Xを冷却するようにしてもよい。本実施形態では、攪拌機52の公転により周側壁51sに付着した被処理物Xを掻き落とすスクレーパー53を備えているため、周側壁51sで冷却された被処理物Xを素早く脱離させて被処理物Xを順次周側壁51sで冷却させることができ、優れた冷却効率が発揮され得る。
【0064】
本実施形態の第1攪拌機521は、底壁51bの内壁面51bsに付着している被処理物Xをすくい上げるようにして被処理物Xを攪拌するため、底壁51bに冷却液の流路を設けるようにすればさらに高い冷却効率が発揮され得る。即ち、本実施形態では、底壁51bの内壁面51bsと周側壁51sの内壁面51ssとの内の一方、又は、両方を冷却することによって被処理物Xを冷却するようにすれば高い冷却効率を得ることができる。
【0065】
このようにして本実施形態では水と飛灰との比率が正確に調整された被処理物Xが調製されることになる。
【0066】
被処理物Xが調製されたあとは、反応容器51の収容空間51aに前記排ガスを流通させて前記被処理物Xに含まれている飛灰を炭酸化処理することが行われる。このとき、前記排ガスは、接水装置60や水分除去装置80を通過した後に炭酸化処理装置50の給気部511より反応容器51の収容空間51aへと導入されてもよい。そのため、前記排ガスは、二酸化炭素を含むとともに余分な水分や腐食性ガスの含有量の低い気体となって炭酸化処理装置50に供給される。そのため、本実施形態では、配管系や炭酸化処理装置50の腐食が抑制される。また、本実施形態では、余分な水分によって炭酸化処理が阻害されたりするおそれが低減され、被処理物Xの水分比率が大きく変動してしまうおそれが低減される。
【0067】
該焼却炉10から排出される排ガスが塩化水素を含んだまま炭酸化処理装置50に供給されると飛灰に含まれるカルシウム化合物と反応して塩化カルシウムを形成し、水によって溶出され易い成分が炭酸化処理において形成されることにもなり得る。そのため、塩化水素が10ppm程度の低濃度で含まれているような排ガスでも接水装置60を通過させて塩化水素を取り除くことが好ましい。即ち、炭酸化処理装置50に供給される気体として塩化水素を10ppm以上含む排ガスを用いる場合、該排ガスから塩化水素を除去することを実施し、塩化水素濃度を10ppm未満に低減した上で炭酸化処理装置50に供給することが好ましい。炭酸化処理装置50に供給する気体での塩化水素濃度は、5ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。
【0068】
塩化水素は二酸化炭素に比べると水への溶解度が高いため接水装置60に利用するドラフターは、静止している水中を排ガスが通過するだけの簡便なものであってもよく、例えば、潜り関式のものであってもよい。
【0069】
収容空間51aに二酸化炭素を含む気体を流通させることは、飛灰への水の添加が完了する前に開始してもよく、飛灰への水の添加が完了してから開始してもよい。即ち、炭酸化処理の開始は、水の全量添加後であって全量添加前であってもよい。
【0070】
炭酸化処理では、前記排気部512により前記収容空間51aの上端部の気体を排出するとともに前記給気部511から新たな気体が前記収容空間51aに流入される。当該収容空間で51aは、攪拌機52によって被処理物Xが大きく攪拌されるので飛灰と二酸化炭素との接触が良好になり飛灰の炭酸化処理が速やかに進行する。
【0071】
炭酸化処理では、前記第1攪拌機521を、例えば、25rpm~250rpmの回転速度で回転(自転)させ、前記第2攪拌機522を、例えば、100rpm~1000rpmの回転速度で回転(自転)させることができる。これらの攪拌機52は、炭酸化処理に際して10~60rpmの回転速度で公転させ得る。
【0072】
本実施形態では、反応容器51内の上部に被処理物Xの収容されていない余剰空間を設けて被処理物Xを攪拌することができ上記のような攪拌機52によって被処理物Xが短期間に均質化され得る。本実施形態では、収容空間51aの上端部より気体を排出するようにしているため、例えば、被処理物Xに灰の凝集塊などが含まれていて、当該凝集塊の破砕によって灰が立ち上るようなことが反応容器51内で生じても前記排気部512から飛灰が排出されることが防止される。このような灰の立ち上りを防ぐ上で、前記第2攪拌機522は、全ての攪拌羽根522cを被処理物X内に埋没させて被処理物Xを攪拌するように配置してもよい。
【0073】
余剰空間は、反応容器51の容積の概ね30%~90%とすることができ、50%~70%とすることができる。言い換えると、炭酸化処理を開始する時点での被処理物Xの平均高さ(hx)は、0.1h0以上とすることができ、0.3h0以上とすることができる。平均高さ(hx)は、0.7h0以下とすることができ、0.5h0以下とすることができる。被処理物Xの平均高さ(hx)は、第2攪拌羽根522cの上端縁の高さ(h1)と下記のような関係となるように調整することができる。
h1 ≦ hx ≦ 1.2h1
【0074】
尚、被処理物Xの平均高さ(hx)は、底壁51bの内壁面51bsから均等な高さとなるように被処理物Xを反応容器51内に収容したと仮定した場合の高さを意味する。例えば、周側壁51sの径が上下方向で一定しているのであれば、収容空間51aの平均高さ(hx)は、被処理物Xの体積を底壁51bの内壁面51bsの面積で除して求めることができる。
【0075】
前記排気部512からの飛灰の排出を防止する上では、排気部512から排出される前記気体の流速を求められる速度に調整してもよく、例えば、1m/s以上5m/s以下に調整するようにしてもよい。該流速は、4m/s以下に調整するようにしてもよく、3m/s以下に調整するようにしてもよい。該流速は、排気孔の断面積(収容空間に面した開口面積:A(m2))と、単位時間当たりの排気量:V(Nm3/min)とによって求めることができる。即ち、前記流速は下記式より求めることができる。このように流速による規定を設けることで気体に含まれる飛灰の量が変動した場合でも飛灰の排出が抑制される。
流速(m/s)=(V/60)/A
【0076】
前記給気部511により前記収容空間51aに導入する前記気体は、収容空間51aに適度な気流を生じさせて炭酸化処理の促進を図る目的で、一定以上の流速を有していることが好ましい。該流速は、例えば、10m/s以上とすることができる。該流速は、12m/s以上であってもよい。一方で、過度な流速で気体を収容空間51aに導入すると飛灰などが内部で舞い上がり易くなる。そこで、前記流速は、40m/s以下にしてもよい。該流速は、30m/s以下であってもよく、20m/s以下であってもよい。該流速は、排気部512における流速と同様に求めることができる。
【0077】
収容空間51aに導入する気体の流速や収容空間51aから排出される気体の流速は、は給気孔や排気孔の大きさにより調整することができる。尚、給気孔から導入する気体の多くが被処理物に吸収されてしまうような場合は、排気孔を設けないことも可能である。また、分解により二酸化炭素が発生する固体などを被処理物とともに収容空間51aに予め導入しておいて炭酸化処理を実施するような場合は、給気孔を設けないことも可能である。
【0078】
排気や給気については、炭酸化処理の全期間において上記のような流速を維持させなくてもよく、例えば、炭酸化処理の全期間の内の80%以上や50%以上を上記のような流速にしてもよい。
【0079】
前記収容空間51aに前記気体を流通させる方法としては、前記排気部512より気体を吸引する方法と、前記給気部511より気流を吹き込む方法との両方が考えられるが後者の方が飛灰等の排出を抑制する上で有利となり得る。そのため、前記炭酸化処理に際しては、前記給気部511から気流を吹き込んで前記収容空間51aを正圧に保つようにしてもよい。該収容空間51aは、例えば、ゲージ圧で0kPaを超えるように調整され得る。収容空間51aの圧力は、1kPa以上であってもよい。収容空間51aの圧力は、10kPa以下とすることができ、5kPa以下とすることができる。収容空間51aの圧力は、3kPa以下であってもよい。
【0080】
排ガスを炭酸化処理に用いる場合、前記収容空間51aに導入される気体での二酸化炭素の濃度は、通常、5質量%以上30質量%以下である。二酸化炭素が90質量%以上含まれるような気体を炭酸化処理に用いる場合、収容空間51aに導入した気体の多くが被処理物Xに吸収される。そのため、二酸化炭素の濃度が高い気体を用いる場合、収容空間51aの圧力を上記よりも高くして炭酸化処理を促進させるようにしてもよい。
【0081】
二酸化炭素の濃度が高い気体を用いる場合、該収容空間51aは、例えば、ゲージ圧で3kPa以上であってもよい。収容空間51aの圧力は、5以上であってもよく、10kPa以上であってもよい。収容空間51aの圧力は、30kPa以下とすることができる。収容空間51aの圧力は、25kPa以下であってもよく、20kPa以下であってもよい。収容空間51aの圧力を上記のようにするために、排気部を有していない反応容器を用いることもできる。
【0082】
収容空間51aを正圧に保つことについても、炭酸化処理の全期間において上記のような圧力を維持しなくてもよく、例えば、炭酸化処理の全期間の内の50%以上や80%以上を上記のような圧力にしてもよい。
【0083】
上記のような炭酸化処理は、時間制御によって実施することができる。炭酸化処理に際しては、収容空間51aに流入する気体における二酸化炭素量と収容空間51aから排出される二酸化炭素量とを測定し、炭酸化処理の進行度合いをモニタリングし、該モニタリングによって炭酸化処理の終点を定めるようにしてもよい。
【0084】
本実施形態では、上記のような炭酸化処理装置を用いて上記のような炭酸化処理方法を実施することで、装置外への飛灰の排出を抑制しつつ効率良く炭酸化処理を実施することができる。尚、上記はあくまで限定的な例示に過ぎない。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではなく、本発明の効果が著しく阻害されない範囲において各種変更が加えられ得るものである。
【実施例】
【0085】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
(被処理物の調製)
約300kgの飛灰を
図2に示したような炭酸化処理装置に収容し、当該飛灰を攪拌しつつ水を少しずつ添加して炭酸化処理に供する被処理物を調製した。尚、水は合計約45kg添加した。また、飛灰は環告13号溶出試験での鉛溶出量が約4.0mg/Lで、六価クロム溶出量が約1.7mg/Lであった。
【0087】
(炭酸化処理)
上記のように調製された被処理物を攪拌しつつ炭酸化処理装置に約9%の二酸化炭素を含む模擬排ガスを約600~1000m3/hの流量で流通させて炭酸化処理を実施した。(排出時の流速は1.6~2.7m/s、余剰空間は50%。)
上記条件にて、10分程度の処理を42回実施した後の出口配管内部を目視確認した際、閉塞がなく、炭酸化処理での飛灰の排出が十分防止できたことが確認できた。
炭酸化処理装置に導入される二酸化炭素量と排出される二酸化炭素量との差を二酸化炭素量吸収量としてモニタリングしたところ、飛灰100質量部に対する二酸化炭素吸収量が炭酸化処理開始後、約5分間経過した時点で約0.7質量部となり、その時点で、鉛は溶出量が約0.02mg/Lとなり六価クロム溶出量が約0.1mg/Lとなっていた。
【0088】
以上のように本発明での炭酸化処理装置や炭酸化処理方法では効率良く炭酸化処理を行うことができた。
【符号の説明】
【0089】
10:焼却炉
20:減温塔
30:アルカリ処理装置
40:飛灰除去装置
50:炭酸化処理装置
51:反応容器
51a:収容空間
51b:底壁
51bs:内壁面
51c:天井壁
51cs:内壁面
51r:流路
51s:周側壁
51ss:内壁面
52:攪拌機
52a:板状体
53:スクレーパー
60:接水装置
70:ブロア
80:水分除去装置
90:冷却装置
100:焼却施設
510:材料供給部
510h:材料供給孔
510p:蓋体
511:給気部
511h:給気孔
512:排気部
512h:排気孔
521a:アーム部
521b:脚部
521c:第1攪拌羽根
522c:第2攪拌羽根
C52:公転軸
C521:第1自転軸
C522:第2自転軸
CR1:自転円
CV1:公転円
LE:排ガスライン
LE1:排ガス排出ライン
LE2:排ガス供給ライン
V1:バルブ
X:被処理物
Z:原点
rr1:自転半径
rr2:自転半径
rv1:公転半径
rv2:公転半径
【要約】
【課題】効率良く炭酸化処理が可能な炭酸化処理装置と炭酸化処理方法とを提供すること。
【解決手段】炭酸化処理される固形物を含む被処理物を攪拌しつつ二酸化炭素と接触させて前記固形物に炭酸化処理を施すための炭酸化処理装置であって、
前記被処理物が収容される収容空間を有する反応容器と、
上下方向に延びる軸周りに回転して前記収容空間に収容された前記被処理物を攪拌する少なくとも1つの攪拌機とを備え、
該攪拌機が、前記被処理物の攪拌に際して前記収容空間において遊星運動するように備えられている炭酸化処理装置、を提供する
【選択図】
図2