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  • 特許-蒸発装置および蒸発方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】蒸発装置および蒸発方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/04 20060101AFI20220401BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B01D1/04
B01D5/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019009270
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020116511
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】田口 竜也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義浩
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-144501(JP,U)
【文献】特開2007-275821(JP,A)
【文献】特開2015-205240(JP,A)
【文献】特開昭59-130592(JP,A)
【文献】中国実用新案第206635065(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/04
B01D 1/00
B01D 5/00
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を加熱して蒸気を生成する加熱器、および、生成された蒸気を圧縮して前記加熱器に熱源として導入する圧縮器を備える蒸発器と、
前記蒸発器の内部を抽気する抽気装置とを備える蒸発装置であって、
前記被処理液は、前記蒸発器内を抽気した抽気ガスに炭酸ガスが含まれるものであり、
前記加熱器は、一対のヘッダの間を複数の伝熱管により連結して構成されており、
前記抽気装置は、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水を、前記蒸発器の一方の前記ヘッダから抽気ラインにより抽気した炭酸ガスを含む抽気ガスに直接接触させて熱交換し、抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる直接接触式凝縮器を備える蒸発装置。
【請求項2】
前記蒸発器に供給する被処理液を予熱する予熱器を更に備え、
前記予熱器は、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水と、前記蒸発器に供給する被処理液とを熱交換するように構成されており、
前記直接接触式凝縮器は、前記予熱器を通過後の凝縮水を、前記蒸発器から抽気した抽気ガスに直接接触させる請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
前記直接接触式凝縮器は、内部に貯留された凝縮水を、一方の前記ヘッダに貯留されて前記予熱器に供給される凝縮水に合流させるための戻しラインを備える請求項2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
被処理液を蒸発器に供給して加熱器により加熱する加熱ステップと、
前記蒸発器の内部を抽気する抽気ステップとを備える蒸発方法であって、
前記被処理液は、前記蒸発器内を抽気した抽気ガスに炭酸ガスが含まれるものであり、
前記加熱器は、一対のヘッダの間を複数の伝熱管により連結して構成されており、
前記加熱ステップは、前記蒸発器で生成された蒸気を圧縮して前記加熱器に熱源として導入し、
前記抽気ステップは、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水を前記蒸発器の一方の前記ヘッダから抽気ラインにより抽気した炭酸ガスを含む抽気ガスに直接接触させて抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる蒸発方法。
【請求項5】
前記蒸発器に供給する被処理液を予熱する予熱ステップを更に備え、
前記予熱ステップは、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水と前記蒸発器に供給する被処理液とを熱交換し、
前記抽気ステップは、前記予熱ステップにおける熱交換後の凝縮水を前記蒸発器から抽気した抽気ガスに直接接触させる請求項4に記載の蒸発方法。
【請求項6】
抽気ガスは、非凝縮性ガスを含む請求項4または5に記載の蒸発方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発装置および蒸発方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蒸発装置として、特許文献1に開示された構成が知られている。この蒸発装置は、被処理液を蒸発濃縮する水平管式の蒸発器を備えている。蒸発器は、凝縮器等を介して真空ポンプに接続されており、真空ポンプの作動により蒸発器の内部が抽気される。凝縮器は、外部から供給される冷却水との熱交換により蒸気を凝縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-90168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の蒸発装置のように、伝熱面を介した間接冷却により蒸気の凝縮を行う構成は、伝熱効率を高めることが困難であった。このため、外部から大量の冷却水が必要になると共に、凝縮器が大型化し易いという問題があり、この点において改良の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、被処理液の蒸発を安価に効率良く行うことができる蒸発装置および蒸発方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被処理液を加熱して蒸気を生成する加熱器、および、生成された蒸気を圧縮して前記加熱器に熱源として導入する圧縮器を備える蒸発器と、前記蒸発器の内部を抽気する抽気装置とを備える蒸発装置であって、前記被処理液は、前記蒸発器内を抽気した抽気ガスに炭酸ガスが含まれるものであり、前記加熱器は、一対のヘッダの間を複数の伝熱管により連結して構成されており、前記抽気装置は、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水を、前記蒸発器の一方の前記ヘッダから抽気ラインにより抽気した炭酸ガスを含む抽気ガスに直接接触させて熱交換し、抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる直接接触式凝縮器を備える蒸発装置により達成される。
【0007】
この蒸発装置は、前記蒸発器に供給する被処理液を予熱する予熱器を更に備えることが好ましい。前記予熱器は、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水と、前記蒸発器に供給する被処理液とを熱交換するように構成することができ、前記直接接触式凝縮器は、前記予熱器を通過後の凝縮水を、前記蒸発器から抽気した抽気ガスに直接接触させることができる。
【0008】
前記直接接触式凝縮器は、内部に貯留された凝縮水を、一方の前記ヘッダに貯留されて前記予熱器に供給される凝縮水に合流させるための戻しラインを備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、被処理液を蒸発器に供給して加熱器により加熱する加熱ステップと、前記蒸発器の内部を抽気する抽気ステップとを備える蒸発方法であって、前記被処理液は、前記蒸発器内を抽気した抽気ガスに炭酸ガスが含まれるものであり、前記加熱器は、一対のヘッダの間を複数の伝熱管により連結して構成されており、前記加熱ステップは、前記蒸発器で生成された蒸気を圧縮して前記加熱器に熱源として導入し、前記抽気ステップは、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水を前記蒸発器の一方の前記ヘッダから抽気ラインにより抽気した炭酸ガスを含む抽気ガスに直接接触させて抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる蒸発方法により達成される。
【0010】
この蒸発方法は、前記蒸発器に供給する被処理液を予熱する予熱ステップを更に備えることが好ましい。前記予熱ステップは、前記加熱器の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水と前記蒸発器に供給する被処理液とを熱交換することができ、前記抽気ステップは、前記予熱ステップにおける熱交換後の凝縮水を前記蒸発器から抽気した抽気ガスに直接接触させることができる。
【0011】
抽気ガスは、非凝縮性ガスを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理液の蒸発を安価に効率良く行うことができる蒸発装置および蒸発方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る蒸発装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る蒸発装置の概略構成図である。図1に示すように、蒸発装置1は、被処理液を蒸発させる蒸発器10と、蒸発器10に供給される被処理液を予熱する予熱器20と、蒸発器10内で発生した蒸気を抽気する抽気装置30とを備えている。
【0015】
蒸発器10は、密閉型の蒸発缶11の内部に加熱器12を備えており、循環ライン13の循環ポンプ13aの作動により被処理液を循環させて、ノズル14から加熱器12に散布する。加熱器12は、左右一対のヘッダ12a,12bの間を複数の伝熱管12cにより連結して構成されている。伝熱管12cの表面に散布された被処理液は、伝熱管12cの内部を通過する加熱流体との熱交換により加熱されて、蒸発濃縮される。循環ライン13には分岐ライン13bが接続されており、被処理液が濃縮された濃縮液の一部を、濃縮液ポンプ13cの作動により分岐ライン13bから外部に排出することができる。
【0016】
蒸発缶11の内部で発生した被処理液の蒸気は、ヒートポンプからなる圧縮器15により圧縮されて一方のヘッダ12aに導入され、加熱流体として伝熱管12cを通過する。圧縮機15は、ルーツブロワや蒸気エジェクタ等を使用してもよい。他方のヘッダ12bは予熱器20に接続されており、加熱流体が凝縮して生成された凝縮水が、凝縮水ポンプ21の作動により予熱器20に熱源として供給される。
【0017】
予熱器20は、蒸発器10に供給される被処理液を、ヘッダ12bから供給された凝縮水と熱交換させる熱交換器22を備えており、被処理液を蒸発器10への供給前に予熱する。
【0018】
抽気装置30は、吸引装置31および直接接触式凝縮器32を備えている。吸引装置31は、真空ポンプやエジェクタ等からなり、抽気ライン33により直接接触式凝縮器32を介してヘッダ12bの上部に接続されて、蒸発缶11の内部を抽気する。
【0019】
直接接触式凝縮器32は、予熱器20の凝縮水出口に冷却ライン34を介して接続されており、予熱器20で被処理液と熱交換した後の凝縮水の一部が、冷却ライン34を通過してノズル32bから容器32a内に散布される。散布された凝縮水は、容器32a内を通過する抽気ガスと直接接触して、抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる。容器32aは、散布された凝縮水を表面に付着させて抽気ガスとの直接接触を促すように、ワイヤメッシュ、フィルタ、パンチングメタル等からなる凝縮水保持体32cが設けられている。直接接触式凝縮器32は、容器32aの底部に戻しライン35を備えており、戻しライン35を介してヘッダ12bに接続されている。
【0020】
上記の構成を備える蒸発装置1は、被処理液を蒸発器10に供給して加熱する加熱ステップと、蒸発器10に供給する被処理液を予熱器20で予熱する予熱ステップと、蒸発器10の内部を抽気装置30により抽気する抽気ステップとが行われる。
【0021】
加熱ステップは、蒸発器10に供給した被処理液を、循環ポンプ13aの作動によりノズル14から加熱器12に散布して行う。加熱器12は、起動時においては外部から加熱蒸気が熱源として導入され、加熱器12に散布された被処理液を加熱して蒸発させる。蒸発器10で生成された被処理液の蒸気は、圧縮器15で圧縮されて加熱器12に熱源として導入され、加熱器12に散布された被処理液を蒸発させる。
【0022】
予熱ステップは、加熱器12の熱源として利用された蒸気が凝縮して生成された凝縮水を、ヘッダ12bから予熱器20に導入し、蒸発器10に供給する被処理液と熱交換させることにより、被処理液を予熱する。
【0023】
抽気ステップは、予熱器20で熱交換した後の凝縮水の一部を直接接触式凝縮器32に導いてノズル32bから散布し、吸引装置31の作動により蒸発器10から抽気した抽気ガスに直接接触させる。これにより、抽気ガスが冷却されて抽気ガスに含まれる水蒸気が凝縮水となり、抽気ガスと熱交換した凝縮水と共に直接接触式凝縮器32内に貯留される。貯留された凝縮水は、戻しライン35を介してヘッダ12bに戻されて、予熱器20に供給される凝縮水と合流される。
【0024】
このように、本実施形態の蒸発装置1は、直接接触式凝縮器32において、蒸発器10から抽気した抽気ガスに凝縮水を直接接触させて、抽気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させるので、凝縮水と抽気ガスとの熱交換を効率良く行うことができる。したがって、伝熱面積を過大にする必要がなくコンパクトな構成により、同伴水蒸気が抽気ガスから除去されるので、安定した抽気が可能になり、被処理液の蒸発を安価に高効率で行うことができる。
【0025】
また、抽気ガスとの熱交換を行う凝縮水として、予熱器20において熱回収された後の凝縮水を利用するため、凝縮水を更に冷却するための冷却器の設置や、系外からの冷却水の補充は不要である。したがって、コンタミネーションを防止しつつ、熱エネルギー効率の向上を図ることができ、被処理液の蒸発を安価に効率良く行うことができる。直接接触式凝縮器32において抽気ガスから熱回収した凝縮水は、戻しライン35によりヘッダ12bに戻されてヘッダ12b内の凝縮水と合流され、再び予熱器20の熱源として利用されるため、この点からも熱エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0026】
本実施形態においては、予熱器20を通過した後の凝縮水を、直接接触式凝縮器32において抽気ガスと熱交換させるように構成しているが、予熱器20および予熱ステップは本発明において必須のものではなく、これらを備えない構成であってもよい。例えば、蒸発器10から排出された凝縮水を、自然冷却または系外の他の流体との熱交換により冷却して、直接接触式凝縮器32に供給することも可能である。
【0027】
被処理液の成分は必ずしも限定されないが、蒸発器10内を抽気した抽気ガスに非凝縮性ガスが含まれる被処理液の場合には、非凝縮性ガスの発生によって抽気不良が生じ易くなるため、本発明の蒸発装置1を使用することが好適である。非凝縮性ガスは、蒸発器10からの抽気中に凝縮しないガスであり、例えば、炭酸ガス、酸素、窒素、水素などを挙げることができる。特に、抽気ガスに炭酸ガスが含まれる場合には、炭酸ガスが水に吸収され難いため、本発明の蒸発装置1によって蒸発能力を大きく向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 蒸発装置
10 蒸発器
12 加熱器
15 圧縮器
20 予熱器
30 抽気装置
32 直接接触式凝縮器
35 戻しライン
図1