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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】回折環計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/205 20180101AFI20220401BHJP
【FI】
G01N23/205
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017159396
(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2019039681
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏彦
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145846(JP,A)
【文献】特開2017-015468(JP,A)
【文献】特開2015-099145(JP,A)
【文献】特開2015-078934(JP,A)
【文献】特開2002-228605(JP,A)
【文献】特開2017-211380(JP,A)
【文献】特開2005-121511(JP,A)
【文献】特開2005-241571(JP,A)
【文献】特開2008-275387(JP,A)
【文献】特開2017-116548(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0093090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象部に向けてX線のビームを照射する照射部と、
前記照射されたビームにて形成された回折環を撮像する固体撮像素子と、
前記固体撮像素子を位置制御可能に支持する支持部とを備え、
前記固体撮像素子は回折環をそれぞれ部分的に撮像する1つ又は複数の固体撮像素子からなるとともに当該固体撮像素子はSOIピクセル検出器であり、
前記照射部は照射角度の制御手段を有し、前記支持部は前記ビームに対して回転制御する位置制御手段を有することで、前記SOIピクセル検出器を前記回折環に沿って周廻りに回転させながら前記回折環の全周を計測できることを特徴とする回折環計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象物にX線等のビームを照射して形成された回折環を計測し、応力等の各種材料特性を計測、解析する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象物の表面にX線等のビームを照射すると、結晶格子により回折された回折環が現れる。
この回折環は、デバイ環,デバイリング,デバイ・シェラー環とも称され、材料に有する結晶格子から得られる情報であり、その格子間隔等から応力等の測定に応用されている。
近年、この回折環の撮像精度及び解析精度の向上により、塑性歪み,硬さ,転位密度,疲労強度等の物性計測や材料評価への応用も期待されている。
本発明者は、これまで回折環の撮像から解析までをリアルタイムに行う計測装置(特許文献1)、測定精度の向上を目的とした装置(特許文献2)等を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-78934号公報
【文献】特開2017-15468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、計測精度が高く、計測装置のコストダウンに有効な回折環計測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る回折環計測装置は、計測対象部に向けてX線等のビームを照射する照射部と、前記照射されたビームにて形成された回折環を部分的又は全部を撮像する固体撮像素子と、前記固体撮像素子を位置制御可能に支持する支持部とを備えたことを特徴とする。
固体撮像素子は、2つ以上の複数であってもよい。
照射部は、ビームの照射角度を制御する手段を有していてもよい。
ここで、固体撮像素子を位置制御可能に支持する支持部は、前記ビームの照射点に対して回転又は前記ビームに対して回転,直交,平行,斜めのいずれかに移動制御可能な位置制御手段を有しているのが好ましい。
例えば、固体撮像素子をビーム廻りに回転させることで回折環全周を撮像すると、cosα法やフーリエ解析法にて応力測定ができる。
ビームの照射角度(入射角)の回転制御手段を用いると、sinΨ法,三軸cosα法等を用いて解析することができる。
ビームと直交する方向に固体撮像素子を移動制御し、2θピーク位置等を計測すると、複数の回折面(例えば鋼の測定サンプルの場合には、αFe211,γFe311,αFe200)等を用いて、応力や残留オーステナイトの量が分かる。
また、測定サンプル面内における応力測定方向の回転制御手段を有すると、応力テンソルを計測する2D法等にて解析することができる。
さらには、集合組織解析(ODF解析)や、応力勾配を解析することができる。
また、斜め方向の位置制御手段を有すると、障害物等を避けながら測定できる。
【0006】
X線等のビームと表現したのは、X線及び回折の性質を有するビームが含まれる趣旨である。
部分的に撮像する固体撮像素子とは、その大きさが回折環よりも小さいことを意味する。
【0007】
本発明において、1つの固体撮像素子を用いて撮像してもよく、複数個の固体撮像素子を用いてもよい。
【0008】
本発明において、固体撮像素子はCCDセンサー、CMOSセンサー等、各種イメージセンサーを用いることができるが、ピクセルサイズが小さく、計測対象となる材料の解析精度が高いSOI撮像素子であるSOIピクセル検出器を用いるのが好ましい。
SOIとは、Silicon-On-Insulator技術を用いた素子であり、SOI CMOS等が例として挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、例えば固体撮像素子を回折環に沿ってX線の照射廻りに回転させることで、撮像された全周の回折環画像に基づいて材料の応力等を解析することができるので、小さなサイズの固体撮像素子を1つ又は2つ以上用いて行うことができ、従来の回折環全体を大きなイメージセンサーで撮像するのと比較して、装置の小型化やコストダウンを図るのに有効である。
また、ロボット等を用いて回転の他に、平行,直交,斜め,入射角の回転等の制御をすると、各種データ解析手法を用いて解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る計測装置の構造を模式的に示す。(a)は固体撮像素子が1つの場合を示し、(b)は固体撮像素子2つの場合を示す。
図2】X線の照射角(入射角)を可変しながら計測する例を示す。
図3】固体撮像素子を回転支持する例を示す。
図4】回転駆動部の例を示す。(a)は駆動部の構成を示し、(b)はその使用模式図を示す。
図5】本発明に係る計測装置の構成図を示す。
図6】本発明に係る計測装置の機能図を示す。
図7】検出器(固体撮像素子)をX線照射中心に回転させる例を示す。
図8】ロボットハンドにてX線管球と検出器を支持制御する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る計測装置の構造を図に基づいて以下説明する。
図1(a)は、計測対象物1の表面に垂直な垂直線に対して、入射角ψのX線を照射すると、回折X線によって回折環が形成される。
この回折環は、材料に有する歪み(ε)の影響を受ける。
この現象に基づいて応力を計測するのがcosα法である。
本発明は、この回折環を計測するのに図1(a)に示したように、SOI撮像素子からなる略長方形の固体撮像素子11を回折環2に沿って周廻りに回転させながら回折環2の全周を計測する。
ここで、固体撮像素子の形状に制限はない。
SOI撮像素子(SOIチップ)を固体撮像素子として用いると、比較的小さな二次元X線検出器でありながら、回折環の全周を撮像することができる。
なお、固体撮像素子は、SOI撮像素子に限定されない。
図1(b)は2つの固体撮像素子11,12を等間隔又は任意の間隔に配置し、回転させる例を示す。
このように、本発明においては固体撮像素子の数に制限はない。
【0012】
図2は、X線の入射角ψを変化(角度を回転させる)させて、回折環の一部を計測することで、従来のsinΨ法にて応力測定を可能にした例である。
このようにすると、cosα法とsinΨ法とで計測し、その比較をすることができる。
【0013】
本発明において、固体撮像素子を支持し、回折環に沿って周廻りに回転する回転支持部の構造に制限はない。
例えば、図3に示すようにX線を照射するコリメータ部の周囲に駆動部20を設けて、シャフト22を介して回転支持部21を回転制御した例を示す。
この回転支持部21に固体撮像素子11を取り付けることになる。
【0014】
図4に試作した回転機構を示す。
プレート状のベース部35に、X線を照射するためのX線管球34を支持させるとともに、検出器基板30を固定した従動ギヤ33とベアリング36を介して、このベース部に連結してある。
ベアリング36の中央には、X線照射孔30aを有し、X線が図4(b)に示すように計測対象物に向けて照射される。
検出器基板30には、SOIチップ等の固体撮像素子11が取り付けられている。
この検出器基板30は、モーター31で駆動制御された駆動ギヤ32の回転により、従動ギヤ33が回転することで回転支持されている。
【0015】
図4に示したような回転機構をロボットハンド等に組み込むことで、本発明に係る計測装置は、計測目的及び計測対象物に合せて多種類の機能を有するようになる。
図5に装置の構成図、図6に位置制御と解析手法の関係を示す。
また、図7に検出器(固体撮像素子)をX線照射中心に対して回転させる例を示し、図8にX線管球や検出器をロボットハンドにて支持制御させた例を示す。
1個又は複数のロボットハンド等により、SOI検出器(SOIチップ)等の固体撮像素子を入射X線ビーム廻りに回転制御、このビームに対して直交又は平行に移動制御、入射角を可変回転制御、X線照射点を中心とした回転制御等をすることで、デバイリングから得られた計測データを各種データ解析理論に基づいて、解析することができる。
図6では、SOI検出器の移動の制御機構と、それに対応する解析方法の例を右側に示した。
【符号の説明】
【0016】
2 回折環
11 固体撮像素子
12 固体撮像素子
20 駆動部
21 回転支持部
30 検出器基板
30a X線照射孔
31 モーター
32 駆動ギヤ
33 従動ギヤ
34 X線管球
35 ベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8