(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】接近検知システム
(51)【国際特許分類】
G01V 15/00 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
G01V15/00
(21)【出願番号】P 2018038905
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原野 信也
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-291717(JP,A)
【文献】特開2013-142675(JP,A)
【文献】特開2017-010483(JP,A)
【文献】特開2016-115038(JP,A)
【文献】特開2012-053515(JP,A)
【文献】特開昭62-206475(JP,A)
【文献】特開2016-057934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0018472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 -99/00 、
G08B19/00 -31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機器に取り付けられた接近検知制御装置と、前記移動機器以外の機器又は作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知する接近検知システムであって、
接近検知制御装置は、誘導磁界を送信する1番からn番(nは2以上の自然数である。以下同じ。)のn個の誘導磁界送信部と、電波受信部と、これらを制御する装置制御部とを備え、
かつ前記n個の誘導磁界送信部より送信される誘導磁界は、それぞれ到達範囲が異なる領域を含むように送信され、
磁界検知機能付きRFIDタグは、誘導磁界を検知する磁界センサ部と、磁界検知電波を送信する電波送信部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記装置制御部は、前記n個の誘導磁界送信部より、1番からn番の順でそれぞれ予め定めた特定のタイミングにて誘導磁界を送信させるとともに、この1番からn番の順でそれぞれ前記特定のタイミングで誘導磁界を送信させる送信サイクルを所定の時間間隔をもって繰り返し、
前記タグ制御部は、前記1番からn番の順という順番情報と、前記特定のタイミングについてのタイミング情報とを予め取得し、前記磁界センサ部が1番からn番のいずれかの誘導磁界を検知したら、その送信サイクルにおけるn番の誘導磁界が送信されるタイミングまで待ち、このタイミングまでに検知した誘導磁界についての情報(以下「誘導磁界情報」という。)を前記磁界検知電波として前記電波送信部より送信させる、接近検知システム。
【請求項2】
前記装置制御部は、前記送信サイクル間の時間間隔をランダムに変更する、請求項1に記載の接近検知システム。
【請求項3】
前記電波送信部は、複数のタイムスロットのうちいずれかのタイムスロットにて前記磁界検知電波を送信可能であり、かつ前記磁界検知電波を送信するタイムスロットをランダムに変更する、請求項1又は2に記載の接近検知システム。
【請求項4】
前記接近検知制御装置は警報出力部(以下「装置側警報出力部」という。)を更に備え、前記装置制御部は前記電波受信部が受信した前記誘導磁界情報に基づいて前記装置側警報出力部を制御し、当該装置側警報出力部より警報を出力する若しくは出力しない、又は当該装置側警報出力部より出力する警報の種類を変えるようにする、請求項1から3のいずれかに記載の接近検知システム。
【請求項5】
前記磁界検知機能付きRFIDタグは警報出力部(以下「タグ側警報出力部」という。)を更に備え、前記タグ制御部は前記誘導磁界情報に基づいて前記タグ側警報出力部を制御し、当該タグ側警報出力部より警報を出力する若しくは出力しない、又は当該タグ側警報出力部より出力する警報の種類を変えるようにする、請求項1から4のいずれかに記載の接近検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフトやブルドーザなどの移動機器が往来する作業現場において、当該移動機器と作業者、あるいは当該移動機器と他の機器とが接近したことを検知する接近検知システムに関する。
なお、本発明において「機器」とは、移動機器のほか、移動しない機器を総称するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる接近検知システムとして、誘導磁界(電磁誘導波)と電波を用いたものが知られており、本願出願人は特許文献1において、移動機器側に取り付けられた距離検知制御装置と作業者側に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの距離により警報のレベルを変えることを可能とし、更に警報を出力する距離を移動機器側で設定可能とした接近検知システムを開示した。
【0003】
この特許文献1の接近検知システムは、移動機器(距離検知制御装置)と作業者(磁界検知機能付きRFIDタグ)との距離により警報のレベルを変えることで、作業者が移動機器に対してどの程度の距離まで接近しているかを把握することができる点で特にメリットがあり、実用化の実績も複数ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-142675号公報(特許第583577号公報)
【文献】特開2016-57934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らは、実用化した特許文献1の接近検知システムのユーザより、移動機器に接近した作業者が当該移動機器に対してどの方向にいるのかを把握したいというニーズを得た。
しかし、このニーズに対しては特許文献1の接近検知システムでは対応できない。なぜなら、特許文献1の接近検知システムには誘導磁界送信部が1個しかないからである。
一方、特許文献2の
図12には誘導磁界送信部(発信アンテナ)を複数設けた例が開示されているが、その目的は誘導磁界(トリガー信号)の到達エリアを拡大することにあり(特許文献2[0105]参照)、前述のニーズに対応するものではない。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、移動機器に取り付けられた接近検知制御装置と、前記移動機器以外の機器又は作業者(以下「作業者等」という。)に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知する接近検知システムにおいて、移動機器に接近した磁界検知機能付きRFIDタグが当該移動機器に対してどの方向に位置するのかを把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次の接近検知システムが提供される。
移動機器に取り付けられた接近検知制御装置と、前記移動機器以外の機器又は作業者に取り付けられた磁界検知機能付きRFIDタグとの接近を検知する接近検知システムであって、
接近検知制御装置は、誘導磁界を送信する1番からn番(nは2以上の自然数である。以下同じ。)のn個の誘導磁界送信部と、電波受信部と、これらを制御する装置制御部とを備え、かつ前記n個の誘導磁界送信部より送信される誘導磁界は、それぞれ到達範囲が異なる領域を含むように送信され、
磁界検知機能付きRFIDタグは、誘導磁界を検知する磁界センサ部と、磁界検知電波を送信する電波送信部と、これらを制御するタグ制御部とを備え、
前記装置制御部は、前記n個の誘導磁界送信部より、1番からn番の順でそれぞれ予め定めた特定のタイミングにて誘導磁界を送信させるとともに、この1番からn番の順でそれぞれ前記特定のタイミングで誘導磁界を送信させる送信サイクルを所定の時間間隔をもって繰り返し、
前記タグ制御部は、前記1番からn番の順という順番情報と、前記特定のタイミングについてのタイミング情報とを予め取得し、前記磁界センサ部が1番からn番のいずれかの誘導磁界を検知したら、その送信サイクルにおけるn番の誘導磁界が送信されるタイミングまで待ち、このタイミングまでに検知した誘導磁界についての情報(以下「誘導磁界情報」という。)を前記磁界検知電波として前記電波送信部より送信させる、接近検知システム。
【0008】
このように本発明の接近検知システムでは、接近検知制御装置が複数(n個)の誘導磁界送信部を備えており、この複数(n個)の誘導磁界送信部から送信されるそれぞれの誘導磁界を、磁界検知機能付きRFIDタグ(以下、単に「RFIDタグ」という。)の磁界センサ部が受信し、その誘導磁界についての情報である誘導磁界情報(磁界検知電波)を電波送信部が接近検知制御装置へ送信する。そして、この誘導磁界情報(磁界検知電波)を接近検知制御装置の電波受信部が受信することで、この接近検知制御装置は、受信した誘導磁界情報に基づいて、自身が取り付けられている移動機器に接近したRFIDタグ(作業者等)がこの移動機器に対してどの方向に位置するのかを把握できる。
しかも、n個の誘導磁界送信部は、常に1番からn番の順でそれぞれ予め定めた特定のタイミングにて誘導磁界を送信し、タグ制御部は、この1番からn番の順という順番情報と、この特定のタイミングについてのタイミング情報とを予め取得しているので、磁界センサ部が1番からn番のいずれかの誘導磁界を検知した場合、タグ制御部はその送信サイクルにおける最後(n番)の誘導磁界が送信されるタイミングがわかるので、次の送信サイクルの開始まで待つことなく、その送信サイクルにおけるn番の誘導磁界が送信されるタイミングまで待つだけで、RFIDタグが1番からn番のそれぞれの誘導磁界を受信したか否かを把握できる。
例えば、後述のとおり誘導磁界送信部が2個のとき、磁界センサ部が2番の誘導磁界を検知した場合、前述の順番情報及びタイミング情報がわかっていると、既に1番の誘導磁界は送信されていたが受信できなかったということがわかるので、次の送信サイクルの開始を待つことなく、直ちにRFIDタグが2番の誘導磁界のみを受信できる位置にあることを把握できる。
このように本発明の接近検知システムによれば、RFIDタグ(作業者等)が移動機器に対してどの方向に位置するのかを迅速に把握できる。
【0009】
本発明の接近検知システムにおいて装置制御部は、送信サイクル間の時間間隔をランダムに変更することが好ましい。これにより、接近検知制御装置が複数存在していたとしても、各接近検知制御装置の送信サイクルが重なることを避けることができる。
【0010】
また、本発明の接近検知システムにおいて電波送信部は、複数のタイムスロットのうちいずれかのタイムスロットにて磁界検知電波を送信可能であり、かつ磁界検知電波を送信するタイムスロットをランダムに変更することが好ましい。これにより、RFIDタグが複数存在していたとしても、各RFIDタグから送信される磁界検知電波が重なることを避けることができる。
【0011】
更に、本発明の接近検知システムにおいて接近検知制御装置は警報出力部(装置側警報出力部)を備えることができる。そして装置制御部は電波受信部が受信した誘導磁界情報に基づいて装置側警報出力部を制御し、当該装置側警報出力部より警報を出力する若しくは出力しない、又は当該装置側警報出力部より出力する警報の種類を変えるようにすることができる。
【0012】
同様に、本発明の接近検知システムにおいてRFIDタグは警報出力部(タグ側警報出力部」)を備えることができる。そしてタグ制御部は、誘導磁界情報に基づいてタグ側警報出力部を制御し、当該タグ側警報出力部より警報を出力する若しくは出力しない、又は当該タグ側警報出力部より出力する警報の種類を変えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接近検知システムによれば、RFIDタグを有する作業者等が、接近検知制御装置を有する移動機器に対してどの方向に位置するのかを迅速に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態である接近検知システムの全体構成を示す概念図。
【
図2】
図1の接近検知システムにおける接近検知制御装置及びRFIDタグの構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の接近検知システムの動作を示すタイムチャート。
【
図4】
図1の接近検知システムにおけるRFIDタグの電波送信部が3つのタイムスロットにて磁界検知電波(誘導磁界情報)を送信可能な例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に本発明の一実施形態である接近検知システムの全体構成を概念的に示し、
図2にこの接近検知システムにおける接近検知制御装置及びRFIDタグの構成をブロック図として示している。
【0016】
この接近検知システムは、接近検知制御装置10とRFIDタグ20とを備えている。
接近検知制御装置10は移動機器である車両30に取り付けられ、RFIDタグ20は図示しない作業者等に取り付けられている。なお、車両30は
図1において左方向に進行する。すなわち、
図1において左方向が車両30の前方、右方向が車両30の後方ということである。
【0017】
接近検知制御装置10は
図2上段に示しているように、第1の誘導磁界送信部11、第2の誘導磁界送信部12、電波受信部13、装置側警報出力部14及びこれらを制御する装置制御部15を備え、RFIDタグ20は
図2下段に示しているように、磁界センサ部21、電波送信部22、タグ側警報出力部23及びこれらを制御するタグ制御部を備えている、また、接近検知制御装置10は外部電源をこの接近検知制御装置10の稼働に適した直流電圧(12V)に変換する電圧変換部16を備え、RFIDタグ20は直流電源としてバッテリを備えている。
【0018】
図1に示しているように、この実施形態において第1の誘導磁界送信部11は車両30の前方に取り付けられており、磁界AというIDが付された誘導磁界(以下「磁界A」という。)を送信する。一方、第2の誘導磁界送信部12は車両30の後方に取り付けられており、磁界BというIDが付された誘導磁界(以下「磁界B」という。)を送信する。これら磁界A及び磁界Bの到達範囲は
図1に概念的に示しているように車両30の進行方向に沿って長軸を有する楕円形状であり、磁界Aが車両30の前方をカバーし、磁界Bが車両30の後方をカバーする。そして車両30の両側方では磁界Aと磁界Bの到達範囲が重なるようになっている。
【0019】
なお、この実施形態において誘導磁界送信部の数は2個としたが、3個以上設けてもよい。例えば、この実施形態の2個に加えて、車両30の右側方と左側方にそれぞれ1個ずつ、合計4個の誘導磁界送信部を設けてもよい。このように車両30の両側方に誘導磁界送信部を設ける場合、その誘導磁界送信部からの誘導磁界の到達範囲は、車両30の両側方をカバーするために車両30の進行方向と直交する方向に沿って長軸を有する楕円形状とすることが好ましい。
また、
図1において接近検知制御装置10が取り付けられた車両30は1台のみ示しているが、接近検知制御装置10が取り付けられた車両30が複数台あることもある。
更に、
図1においてRFIDタグ20は1個のみ示している。すなわちRFIDタグ20が取り付けられた作業者等の数は1であるが、RFIDタグ20が取り付けられた作業者等は複数あることもある。
【0020】
図3に、この接近検知システムの動作をタイムチャートで示している。以下、
図1から
図3を参照しつつ、この接近検知システムの動作について説明する。
【0021】
装置制御部15は、2個の誘導磁界送信部11,12より、第1の誘導磁界送信部11(1番)、第2の誘導磁界送信部12(2番)の順で予め定めた特定のタイミングにて誘導磁界(磁界A,B)を送信させる。そして、この第1の誘導磁界送信部11(1番)、第2の誘導磁界送信部12(2番)の前記特定のタイミングで誘導磁界を送信させる送信サイクルを所定の時間間隔t0をもって繰り返す(
図3参照)。このように、各送信サイクルにおいて誘導磁界を送信する順番は毎回同じであり、そのタイミングも毎回同じである。ここで、タイミングとは、磁界Aの送信時間t1、磁界Aの送信と磁界Bの送信との時間間隔t2及び磁界Bの送信時間t3を総称する概念であり、予め定めた特定のサイクルとは、これらt1~t3が予め定めた特定の値であるサイクルのことであり、タイミングが毎回同じであるとは、各送信サイクルにおいてt1~t3はそれぞれ毎回同じであることをいう。すなわち、各送信サイクルの時間的長さは毎回同じである。
【0022】
なお、誘導磁界送信部が3個以上の場合も、誘導磁界を送信する順番、タイミングは毎回同じとする。例えば、誘導磁界送信部が3個の場合、タイミングとしては前述のt1~t3に加え、2番目の磁界Bの送信と3番目の磁界Cの送信との時間間隔t4及び磁界Cの送信時間t5が含まれることになるが、各送信サイクルにおいてt1~t5はそれぞれ毎回同じとする。一方、磁界Aの送信と磁界Bの送信との時間間隔t2と磁界Bの送信と磁界Cの送信との時間間隔t4とは異なる値であってもよい。すなわち、タイミングが毎回同じであるとは各送信サイクルにおいてt1~t5がそれぞれ毎回同じであるということであり、前述の時間間隔t2と時間間隔t4とが同じ値であるということまでは要しない。
【0023】
送信サイクル間の時間間隔t0については毎回同じであっても異なっていてもよいが、接近検知制御装置10が複数存在する場合に各接近検知制御装置の送信サイクルが重なることを避ける点からは、送信サイクル間の時間間隔t0は毎回ランダムに変更することが好ましい。なお、この送信サイクル間の時間間隔t0の変更は、装置制御部15の制御により行う。
【0024】
一方、タグ制御部24は、前述の磁界A、磁界Bの順という順番情報と、前述の特定のタイミング(t1~t3)についてのタイミング情報とを予め取得し記憶しておく。これによりタグ制御部24は、磁界Aの次に必ず特定のタイミングで磁界Bが送信されることを知ることになる。
【0025】
そしてタグ制御部24は、磁界センサ部21が磁界A(1番)、磁界B(2番)のいずれかの誘導磁界を検知したら、その送信サイクルにおける最後(この実施形態では2番)の誘導磁界(磁界B)が送信されるタイミングまで待ち、このタイミングまでに検知した誘導磁界についての情報である誘導磁界情報を磁界検知電波として電波送信部22より送信させる。なお、タグ制御部24は、前述の順番情報及びタイミング情報に基づいて、「その送信サイクルにおける最後(この実施形態では2番)の誘導磁界(磁界B)が送信されるタイミング」を知ることができるので、このタイミングまで待つことができる。
【0026】
例えば
図3の最も左側の1回目の送信サイクルでは、磁界センサ部21が磁界Aを受信(検知)しているから、タグ制御部24はこの送信サイクルにおいて磁界Bが送信されるタイミングまで待つ。この送信サイクルでは、磁界Bが送信されるタイミングで磁界Bを受信(検知)するので、このタイミングまでに受信(検知)した誘導磁界についての誘導磁界情報として磁界A+磁界Bを受信(検知)した旨の情報を磁界検知電波として電波送信部22より送信する。
この磁界検知電波(誘導磁界情報)は、接近検知制御装置10の電波受信部13で受信され、装置制御部15は、電波受信部13で受信した誘導磁界情報に基づいて、RFIDタグ20が車両30に対してどの方向に位置するのかを把握できる。この送信サイクルでは、磁界A+磁界Bを受信(検知)しているから、RFIDタグ20は磁界Aと磁界Bの両方を受信(検知)できる位置(磁界Aと磁界Bの到達範囲が重なる位置)、すなわち車両30の右側方又は左側方に位置することを把握できる。
【0027】
次に、
図3の2回目の送信サイクルでも、磁界センサ部21が磁界Aを受信(検知)しているから、タグ制御部24はこの送信サイクルにおいて磁界Bが送信されるタイミングまで待つ。この送信サイクルでは、磁界Bが送信されるタイミングで磁界Bを受信(検知)しないので、このタイミングまでに受信(検知)した誘導磁界についての誘導磁界情報として磁界Aのみを受信(検知)した旨の情報を磁界検知電波として電波送信部22より送信する。
この磁界検知電波(誘導磁界情報)は、接近検知制御装置10の電波受信部13で受信され、装置制御部15は、電波受信部13で受信した誘導磁界情報に基づいて、RFIDタグ20が車両30に対してどの方向に位置するのかを把握できる。この送信サイクルでは、磁界Aのみを受信(検知)しているから、RFIDタグ20は磁界Aのみを受信(検知)できる位置(磁界Aのみが到達する範囲の位置)、すなわち車両30の前方に位置することを把握できる。
【0028】
次に、
図3の3回目の送信サイクルでは、磁界センサ部21が磁界Bを受信(検知)しているから、タグ制御部24はこの送信サイクルにおいては、既に磁界Aは送信されていたが受信(検知)できなかったということがわかるので、この磁界Bを受信したタイミングをもって、この送信サイクルにおいて磁界Bが送信されるタイミングまで待ったことがわかる。そして、このタイミングまでに受信(検知)した誘導磁界についての誘導磁界情報として磁界Bのみを受信(検知)した旨の情報を磁界検知電波として電波送信部22より送信する。
この磁界検知電波(誘導磁界情報)は、接近検知制御装置10の電波受信部13で受信され、装置制御部15は、電波受信部13で受信した誘導磁界情報に基づいて、RFIDタグ20が車両30に対してどの方向に位置するのかを把握できる。この送信サイクルでは、磁界Bのみを受信(検知)しているから、RFIDタグ20は磁界Bのみを受信(検知)できる位置(磁界Bのみが到達する範囲の位置)、すなわち車両30の後方に位置することを把握できる。
【0029】
このようにこの接近検知システムでは、磁界A、磁界Bを受信(検知)したか否かを示す誘導磁界情報に基づいて、装置制御部15は、RFIDタグ20が車両30に対して前方、後方、側方のいずれの方向に位置するのかを把握できる。同様にタグ制御部24も、前述の誘導磁界情報に基づいて、RFIDタグ20が車両30に対して前方、後方、側方のいずれの方向に位置するのかを把握できる。
【0030】
しかもこの接近検知システムでは、タグ制御部24は、前述の順番情報及びタイミング情報を予め取得しているので、磁界センサ部が磁界A(1番)、磁界B(2番)のいずれかの誘導磁界を検知した場合、その送信サイクルにおける最後(2番)の誘導磁界(磁界B)が送信されるタイミングがわかるので、次の送信サイクルの開始まで待つことなく、その送信サイクルにおける2番の誘導磁界(磁界B)が送信されるタイミングまで待つだけで、RFIDタグ20が磁界A、磁界Bを受信したか否かを把握できる。
例えば、
図3の3回目の送信サイクルでは、磁界センサ部が最初に2番の磁界Bを受信した場合、既に1番の磁界Aは送信されていたが受信できなかったということがわかるので、次の送信サイクルの開始を待つことなく、直ちにRFIDタグが2番の磁界Bのみを受信できる位置にあることを把握できる。
これに対して、単に磁界A、磁界Bを受信して個別に磁界検知電波を送信する構成では、例えば磁界Bを先に受信した場合、所定時間待って磁界Aを受信するか否かを判断しなければならず、この所定時間待つ分、RFIDタグ(作業者等)が移動機器に対してどの方向に位置するのかを把握することに時間がかかる。
このようにこの実施形態の接近検知システムによれば、RFIDタグ(作業者等)が移動機器に対してどの方向に位置するのかを迅速に把握できる。
【0031】
この実施形態において電波送信部22は、複数のタイムスロット(送信スロット)にて磁界検知電波(誘導磁界情報)を送信可能なものとすることが好ましい。例えば
図4に、3つのタイムスロットにて磁界検知電波(誘導磁界情報)を送信可能な例を示している。
【0032】
磁界A又は磁界Bの到達範囲内に複数のRFIDタグ20が入った場合、それぞれのRFIDタグ20の電波送信部22は、磁界Aのみを受信、磁界Bのみを受信、磁界A+磁界Bを受信のいずれかの誘導磁界情報を磁界検知電波として送信するが、各RFIDタグ20のタイムスロットが単一であると、各RFIDタグから送信される磁界検知電波が重なることがある。これに対して、
図4の例では3つのタイムスロットを使い分けることで、各RFIDタグから送信される磁界検知電波が重なることを避けることができる。具体的には、各RFIDタグにおいて磁界検知電波を送信するタイムスロットをランダムに変更することで、各RFIDから送信される磁界検知電波が重なることを避けることができる。
【0033】
この実施形態において接近検知制御装置10は装置側警報出力部14を備えている。そこで、装置制御部15は、電波受信部13が受信した前述の誘導磁界情報に基づいて装置側警報出力部14を制御し、この装置側警報出力部14より警報を出力する若しくは出力しない、又はこの装置側警報出力部14より出力する警報の種類を変えるようにすることができる。
具体的には、誘導磁界情報は、(1)磁界Aのみを受信、(2)磁界Bのみを受信、(3)磁界A+磁界Bを受信のいずれかの情報を含むから、例えば、前記(1)の場合にのみ警報を出力するようにすることができるし、前記(1)、(2)、(3)で出力する警報の種類(警報音や警報表示等)を変えるようにすることができる。
【0034】
この実施形態においてRFIDタグ20はタグ側警報出力部23を備えている。そこで、タグ制御部24は前述の誘導磁界情報に基づいてタグ側警報出力部23を制御し、このタグ側警報出力部23より警報を出力する若しくは出力しない、又はこのタグ側警報出力部23より出力する警報の種類を変えるようにするすることができる。その具体例は、前述の装置側警報出力部14と同様である。
【0035】
ここで、
図2に示している送信サイクル間の時間間隔t0、磁界Aの送信と磁界Bの送信との時間間隔t2、更には磁界Bの送信と磁界検知電波(誘導磁界情報)の送信との時間間隔ttは、接近検知の迅速性の点からは短い方が好ましい。
例えば、t0は1秒以下であることが好ましく、0.5秒以下であることがより好ましく、0.1秒以下であることが更に好ましい。
t2は0.1秒以下であることが好ましく、0.01秒以下であることがより好ましく、 0.001秒以下であることが更に好ましい。
ttは0.1秒以下であることが好ましく、0.01秒以下であることがより好ましく、 0.001秒以下であることが更に好ましい。
【0036】
また、磁界Aの送信時間t1及び磁界Bの送信時間t3については、0.001~ 0.1秒であることが好ましく、0.001~0.05秒であることがより好ましく、0.001~0.01秒であることが更に好ましい。
【符号の説明】
【0037】
10 接近検知制御装置
11 第1の誘導磁界送信部
12 第2の誘導磁界送信部
13 電波受信部
14 装置側警報出力部
15 装置制御部
16 電圧変換部
20 RFIDタグ
21 磁界センサ部
22 電波送信部
23 タグ側警報出力部
24 タグ制御部
25 バッテリ