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特許7050291背負いバッグ用背面サポートの製造方法および背面サポートを備えた背負いバック
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  • 特許-背負いバッグ用背面サポートの製造方法および背面サポートを備えた背負いバック 図1
  • 特許-背負いバッグ用背面サポートの製造方法および背面サポートを備えた背負いバック 図2
  • 特許-背負いバッグ用背面サポートの製造方法および背面サポートを備えた背負いバック 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】背負いバッグ用背面サポートの製造方法および背面サポートを備えた背負いバック
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
A45F3/04 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018062796
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019170714
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】515108749
【氏名又は名称】株式会社モンドデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】堀池 洋平
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160253(JP,A)
【文献】国際公開第2009/130757(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0051657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
G01B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負って用いられる背負いバッグに装着されて、前記背負いバッグの、使用者の背中に接触させられる部位を、前記使用者の背中の輪郭に馴染ませる背面サポートの製造方法であって、前記使用者の背中の輪郭を3次元的に測定し、この使用者の背中の輪郭を3次元データーとして数値化する測定工程と、予め設定されている平面状の基準背面サポートの2次元データーを、前記数値化された3次元データーに基づき3次元化する3次元データー化工程と、この3次元データーに基づき立体的な背面サポートを制作する制作工程とからなることを特徴とする背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項2】
前記使用者の背中の輪郭を、3Dスキャナーによって測定することを特徴とする請求項1に記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項3】
前記使用者の背中の輪郭を測定する際に、前記背中の特定位置に基準点を設定し、この基準点からの変位によって前記3次元データーを得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項4】
前記基準点の設定を、使用者の背中にマーカーを貼付することによって行なうことを特徴とする請求項3に記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項5】
前記基準点を、使用者の背骨の第2腰椎若しくは第3腰椎の部位に設定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項6】
前記背面サポートの制作を、3Dプリンターによって制作することを特徴とする請求項1に記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項7】
前記使用者の背中の輪郭を3次元的に測定する際に、前記使用者に、この使用者の上半身を締め付けることにより、この使用者の背面の輪郭を浮き立たせる胴着を装着することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかに記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法によって製造された背面サポートを、背負いバッグの、使用者の背中に対峙させられる部位に装着することを特徴とする背負いバッグの製造方法。
【請求項9】
使用者によって背負って用いられる背負いバッグであって、請求項1ないし請求項7の何れかに記載の背負いバッグ用背面サポートの製造方法によって製造された背面サポートが収納される収納部が、使用者の背中に対峙させられる部位に形成されていることを特徴とする背負いバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が背中に背負って用いる背負いバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なバッグの一つとして、バッグを背中に背負うことで、たとえば、両手の自由度を確保するようにした背負いバッグが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の背負いバッグは、バッグ本体の、使用者の背中に接触する側に肩紐を取り付けておき、使用者は、前記肩紐を肩にかけることで、背負いバッグの重量を背中と肩で支持して両手を自由にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-112448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の背負いバッグは、収納する物品を保護するためにバッグ本体を硬めの材料を用いて制作されている。
【0006】
ところで、使用者の背中は平面ではないために、この背中と背負われるバッグ本体との接触部位が部分的となる。
【0007】
そのために、背負いバッグの重量が使用者の背中の狭い部分に集中するばかりでなく、背負いバッグと使用者の背中との間に不規則な隙間が形成される。
【0008】
このような現象が生じると、前者の場合、背中の、背負いバッグが接触させられる部位に痛みが生じやすくなるといった不具合が想定され、また、後者の場合、背負いバッグと使用者の背中との接触面積が少ないことから、背負いバッグが使用者の背中の左右方向にずれるのを防止できず、安定感が得られないといった不具合が想定される。
【0009】
本発明は、背負いバッグの、使用者の背中との接触部位に、使用者の背中の輪郭に合わせた形状の背面サポートを装着することにより、前述した従来の不具合を解消せんとするもので、特に、この背面サポートを簡便に製造することのできる製造方法、および、背負い荷重を分散し、また、横ずれの少ない背負いバックを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の背負いバッグ用背面サポートの製造方法は、背負って用いられる背負いバッグに装着されて、前記背負いバッグの、使用者の背中に接触させられる部位を、前記使用者の背中の輪郭に馴染ませる背面サポートの製造方法であって、前記使用者の背中の輪郭を3次元的に測定し、この使用者の背中の輪郭を3次元データーとして数値化する測定工程と、予め設定されている平面状の基準背面サポートの2次元データーを、前記数値化された3次元データーに基づき3次元化する3次元データー化工程と、この3次元データーに基づき立体的な背面サポートを制作する制作工程とからなることを特徴とする。
【0011】
このような背負いバッグ用背面サポートの製造方法によれば、測定工程において、使用者の背中の輪郭を、3次元的に測定して3次元データーとして数値化する。
【0012】
ついで、3次元データー化工程において、予め設定されている平面状の基準背面サポートの2次元データーに、前記数値化された3次元データーに基づき、前記2次元データーと直交する次元のデーターを加えて3次元化する。
これによって、背面サポートの立体形状の数値情報が得られる。
【0013】
ついで、前記立体形状の数値情報に基づき背面サポートを制作することにより、立体的な背面サポートを得ることができる。
【0014】
このように、使用者の背中の輪郭を直接測定し、その測定結果に基づき背面サポートを立体的に制作することができるので、背面サポートの輪郭を使用者の背中に極めて近い輪郭とすることができる。
【0015】
前記使用者の背中の輪郭測定は、3Dスキャナーを用いて行なうことが好ましい。
これによって、前述した輪郭測定に際して、その測定を非接触で行なうことができ、輪郭測定時の使用者の負担を軽減することができる。
【0016】
前記使用者の背中の輪郭を測定する際に、好ましくは、前記背中の特定位置に基準点を設定し、この基準点からの変位によって前記3次元データーを得る。
【0017】
これによって、前記得られる3次元データーと使用者の背中の輪郭とのずれを防止することができる。
【0018】
前記基準点の設定は、使用者の背中にマーカーを貼付することによって簡便に行なうことができる。
【0019】
前記基準点は、使用者の背骨の第2腰椎若しくは第3腰椎の部位に設定することが好ましい。
これは、前記第2腰椎若しくは第3腰椎において使用者の背中が最も低く、使用者の背中の輪郭に高い高低差を持たせることができる。
【0020】
前記背面サポートの制作に3Dプリンターを用いることができる。
この3Dプリンターを用いることにより、前記3次元データー化された数値情報を利用した制作が可能となり、制作が容易となる。
【0021】
前記使用者の背中の輪郭を3次元的に測定する際に、前記使用者に、この使用者の上半身を締め付けることにより、この使用者の背面の輪郭を浮き立たせる胴着を装着することが好ましい。
【0022】
これによって、使用者の背中の輪郭を鮮明にするとともに、制作される背面サポートの寸法精度を高め、前記使用者の背中との馴染みを向上させることができる。
【0023】
このように制作された背負いバッグ用背面サポートを、背負いバッグの、使用者の背中に対峙させられる部位に装着することにより背負いバッグを得ることができる。
【0024】
この背負いバッグを使用者が背負うと、前記背面サポートが使用者の背中に接触させられる。
ここで、前記背面サポートが前記使用者の背中の輪郭に沿うように形成されていることから、これらの接触が面接触に近くなる。
【0025】
これによって、前記背負いバッグの荷重が、使用者の背中に広く分散されて支持され、荷重の特定部位への集中が防止されて使用者に痛みを与えてしまうことを防止することができる。
【0026】
また、前記背面サポートと使用者の背中との接触部分において、この背中の左右方向および上下方向に引っ掛かりが形成される。
【0027】
これによって、前記背負いバッグの使用者の背中に対するずれが抑制されて、使用感が向上する。
【0028】
前記背面サポートは、たとえば、前記背負いバッグの、使用者の背中に対峙させられる部位に収納部を設けて、この収納部に収納することによって前記背負いバッグに装着することが好ましい。
【0029】
ただし、この場合には、前記背負いバッグの、使用者の背中に対峙させられる部分に、可撓性を有する材料を用いる必要がある。
【0030】
これによって、前記背負いバッグを変形させて使用者の背中に馴染ませることができる。
また、前記背面サポートと背中との間に、可撓性の材料を介在させることにより、この可撓性材料を背中に対する緩衝材とすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、使用者が背負いバッグを背負った際に、この背負いバッグの使用者の背中との接触を極力面接触とする背面サポートを簡便に制作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態が適用された背負いバッグを示すもので、背負った状態の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態が適用された背負いバッグを示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態が適用された背負いバッグを示す背面図である。
図4】本発明の一実施形態が適用された背負いバッグを示すもので、背負いバッグの前面を解放した状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態が適用された背負いバッグを示すもので、背面サポートの装着手順の説明図である。
図6】本発明の一実施形態における基準の背面サポートを示す正面図である。
図7】本発明の一実施形態を示すもので、使用者の背中の輪郭の測定方法を示す図である。
図8】本発明の一実施形態によって制作された背面サポートの斜視図である。
図9】本発明の一実施形態を示す処理フローである。
図10】本発明の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の背負いバッグ用背面サポートの製造方法によって制作された背面サポートが装着される背負いバッグについて説明する。
【0034】
図1において符号1で示す背負いバッグは、バッグ本体2と、このバッグ本体2の、使用者Mの背中へ接触させられる面(以下、背面と称す)2a側に、このバッグ本体2の左右方向に間隔をおいて設けられ一対の肩紐3とを備え、これらの肩紐3を使用者Mの肩にそれぞれ掛けることにより、前記バッグ本体2の背面2aを、使用者Mの背中Bに接触させて用いられる。
【0035】
前記バッグ本体2は、図2に示すように、周方向に設けられたファスナー4によって開閉自在となされている。
【0036】
そして、図3に示すように、前記バッグ本体2の背面2a側の内側に本発明に係わる背面サポート5が内装されている。
【0037】
すなわち、前記バッグ本体2の背面2aの内側には、図4に示すように、仕切り布6が設けられて、前記背面2aの内面との間に前記背面サポート5を収納する収納部Aを形成している。
【0038】
前記仕切り布6は、その幅方向中央に沿った切り込みと、この切り込みの一端、図の下端から横方向両方に延びる切り込みとが形成され、中央の切り込みにファスナー7が取り付けられ、横方向に延びる切り込みの縁部に面ファスナー8が設けられて、図4および図5に示すように、前記仕切り布6が開閉可能な構成となっている。
【0039】
また、前記仕切り布6の、前記横方向に延びる切り込み部には当て布6aが装着されて、前記バッグ本体2の上方および中央部へ開口された収納部が形成されており、この収納部に、前記背面サポート5の下方の両角部が挿入されて支持されるようになっており、さらに、前記バッグ本体2の前記背面2a側は、可撓性を有する材料によって形成されている。
【0040】
図6は、本実施形態において制作される背面サポート5の基準形状を有する、所定厚みを持った平面状の基準背面サポート9を示す。
【0041】
そして、前記基準背面サポート9は、使用者Mの第2腰椎あるいは第3腰椎に対応した基準点を設定するためのマーカー10が貼付されている。
【0042】
ついで、本発明の背負いバッグ用背面サポートの製造方法の一実施形態について、図9の処理フロー図、図7、および、図8を参照して説明する。
【0043】
まず、図7に示すように、使用者Mの背中を取り囲むように胴着11を着せた後に(ステップS1)、椅子等に着座させた状態で上半身を正しい姿勢に整える(ステップS2)。
これによって、使用者Mの背中の輪郭が正しい姿勢で現われる。
【0044】
ついで、前記胴着11の所定位置に測定の基準点となるマーカー12を取り付ける(ステップS3)。
【0045】
ついで、図7に矢印で示すように、使用者Mの背中の輪郭を、3Dスキャナー13によって、前記マーカー12を含み、背骨の左右に所定幅の範囲でスキャンすることにより、使用者Mの背中の輪郭を3次元データーとして取り込む(ステップS4)。
【0046】
ついで、前記取り込まれた3次元データーから、前記基準背面サポート9の2次元データーと直交する方向の位置情報を取得して、制作すべき背面サポート5の各点の立体的な位置情報を作成する。
【0047】
この立体的な位置情報は、前記各マーカー10とマーカー12を基準とし、このマーカー10・12からの距離および方向によって作成される。
【0048】
これより、前述してようにして作成された、制作すべき背面サポート5の各点の立体的な位置情報を3Dプリンターに出力して前記背面サポート5を制作する(ステップS5)。
【0049】
このように制作された背面サポート5は、実際の使用者の背中の輪郭情報に基づいて制作されることなり、この結果、前記背面サポート5が使用者の背中にほぼ面接触するように馴染む。
【0050】
したがって、前記制作された背面サポート5を前記背負いバッグ1の背面2a側に装着しておくことにより、この背面2aを使用者Mの背中にぴったりと馴染ませることができる。
【0051】
ついで、前述したように制作された背面サポート5を前記背負いバッグ1に装着する手順について説明する。
【0052】
まず、図4に示すように、前記バッグ本体2を開放してその背面2a側の内面の仕切り布6を露出させる。
【0053】
ついで、図5に示すように、前記仕切り布6に装着されている前記各ファスナー7・8を開放して前記仕切り布6を開くことにより、前記収納部Aの下方を開放する。
【0054】
これより、前記背面サポート5を前記収納部A内にその下方から挿入するとともに、前記背面サポート5の下部の両角部を前記両収納部に挿入して支持させた状態で、前記各ファスナー7・8を閉じることにより、前記背面サポート5を前記バッグ本体2の背面2aの内側に装着することができる。
【0055】
このように前記背面サポート5が内装された背負いバッグ1を背負うと、前記背負いバッグ1の重量によって、前記背面サポート5が使用者Mの背中に押しつけられる。
【0056】
ここで、前記バッグ本体2の背面2aが可撓性を有することにより、この背面2aが前記背面サポート5によって使用者Mの背中に沿って変形させられ、この背中に馴染む。
【0057】
なお、前述した実施形態は一例であって、制作する機器の種類や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
たとえば、図10に示すように、前記背面サポート5をクッション材14等によって覆った状態で前記収納部A内に収納するようにしてもよい。
【0059】
また、前記背面サポート5を、たとえば、平面ファスナーを用いて前記背面2aの内面に係止することで、前記背面サポート5の位置ずれを防止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 背負いバッグ
2 バッグ本体
2a 背面
3 肩紐
4 ファスナー
5 背面サポート
6 仕切り布
7 ファスナー
8 面ファスナー
9 基準背面サポート
10 マーカー
11 胴着
12 マーカー
13 3Dスキャナー
14 クッション材
A 収納部
B 背中
M 使用者

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10