(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】冷凍食品及び冷凍食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20220401BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20220401BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A23L17/00 Z
A23B4/06 501C
A23B4/06 501D
A23B4/06 501E
A23L3/36 A
(21)【出願番号】P 2018083880
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2020-05-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505256250
【氏名又は名称】有限会社三角屋水産
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中 島 繁
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116094(JP,A)
【文献】特開2003-009762(JP,A)
【文献】特開昭62-205734(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173714(JP,U)
【文献】登録実用新案第3172326(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/00-17/60
A23B 4/00-4/32
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平状の魚の干物の周囲を包装体で密着して覆うと共に密閉され、密閉後、凍結した
冷凍食品であって、
前記密着は、前記包装体内の前記魚の干物の移動が阻止する程度であり、
前記包装体内には、窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガ
スが充填され、酸素が無い
ことを特徴とする冷凍食品。
【請求項2】
魚の干物を包装体に入れ、前記包装体を真空にした後、前記包装体内に窒素ガス又は
炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスを充填し、
充填後、前記包装体を密閉し、密閉後、前記包装体を介して前記魚の干物を凍結する
ものであり、
前記包装体内のガスの充填量は、前記魚の干物に前記包装体に密着させ、前記包装体
内の前記魚の干物の移動を阻止する程度であり、
前記窒素ガス又は前記炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスを充填し
た前記包装体内に酸素が無い
ことを特徴とする冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品及び冷凍食品の製造方法に係り、特に、魚の干物の食感等の改善を図った冷凍食品及び冷凍食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍食品の製造方法は、魚の干物を包装袋に入れ、魚の干物の形状に沿って包装袋が強力に密着するように、前記包装袋内の真空度を高くした後、前記包装袋を密閉し、密閉後前記包装袋を介して前記食材を凍結し、凍結後、冷凍保管するようにしている。
上記魚の干物は、例えば、アジの腹側に包丁を入れ、内臓を取り出し、頭を割り、水洗いして乾燥させたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の冷凍食品の製造方法にあっては、包装袋が魚の干物の形状に沿って強力に密着する(締め付ける)ようにしているため、包装袋内の魚の干物は、締め付けが強い分、解凍して包装袋を開封したとき、魚の干物の細胞内の水分等が多く放出され、魚の干物の食感等が良好でないという問題点が生じた。
【0004】
本発明は、上記問題点を考慮してなされた冷凍食品及び冷凍食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の冷凍食品は、扁平状の魚の干物の周囲を包装体で密着して覆うと共に
密閉され、密閉後、凍結した冷凍食品であって、前記密着は、前記包装体内の前記魚の干
物の移動が阻止する程度であり、前記包装体内には、窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素
ガスと前記炭酸ガスの混合ガスが充填され、酸素が無いものである。
【0007】
また、請求項2記載の冷凍食品の製造方法は、魚の干物を包装体に入れ、前記包装体
を真空にした後、前記包装体内に窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガス
の混合ガスを充填し、充填後、前記包装体を密閉し、密閉後、前記包装体を介して前記魚
の干物を凍結するものであり、前記包装体内のガスの充填量は、前記魚の干物に前記包装
体に密着させ、前記包装体内の前記魚の干物の移動を阻止する程度であり、前記窒素ガス
又は前記炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスを充填した前記包装体内に
酸素が無いものである。
【発明の効果】
【0011】
包装袋が魚の干物の形状に沿って強力に密着する(締め付ける)ようにした従来のものにあっては、包装袋内の魚の干物は、締め付けが強い分、解凍して包装袋を開封したとき、魚の干物の細胞内の水分等が多く放出され、魚の干物の食感等が良好でないが、
請求項1記載の冷凍食品によれば、扁平状の魚の干物の周囲を包装体で密着して覆うと共に、密閉された冷凍食品であって、前記密着は、前記包装体内の前記魚の干物の移動が阻止する程度であり、前記包装体内には、窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスが充填されているため、魚の干物の形状に沿って包装袋が強力に密着(締め付ける)するようにした従来のものに比べ、包装体内の圧力を高くでき、つまり、締め付けを弱くしている分、解凍して包装袋を開封したとき、魚の干物の細胞内の水分等の流出を軽減でき(解凍後、魚の干物からの水分等の放出が少なく、食感等の良好な魚の干物を得ることができる。)、しかも、包装体内の気体を窒素ガス又は炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで置き換え、包装体内の水分を除去できるため、臭みの原因となる霜の発生を抑え、冷凍焼けを防ぐことができる。加えて、扁平状の魚の干物の周囲を包装体で密着しているため、移送中、包装体内の魚の干物の移動を阻止でき、魚の干物の棘による包装体の損傷をも防ぐことができる。
【0013】
包装袋が魚の干物の形状に沿って強力に密着する(締め付ける)ようにした従来の冷
凍食品の製造方法にあっては、包装袋内の魚の干物は、締め付けが強い分、解凍して包装
袋を開封したとき、魚の干物の細胞内の水分等が多く放出され、魚の干物の食感等が良好
でないが、
請求項2記載の冷凍食品の製造方法によれば、魚の干物を包装体に入れ、前記包装体
を真空にした後、前記包装体内に窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガス
の混合ガスを充填し、充填後、前記包装体を密閉し、密閉後、前記包装体を介して前記魚
の干物を凍結するものであり、前記包装体内のガスの充填量は、前記魚の干物に前記包装
体に密着させ、前記包装体内の前記魚の干物の移動を阻止する程度であるため、魚の干物
の形状に沿って包装袋が強力に密着(締め付ける)するようにした従来のものに比べ、包
装体内の圧力を高くでき、つまり、締め付けを弱くしている分、解凍して包装袋を開封し
たとき、魚の干物の細胞内の水分等の流出を軽減でき(解凍後、魚の干物からの水分等の
放出が少なく、食感等の良好な魚の干物を得ることができる。)、しかも、包装体内の気
体を窒素ガス又は炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで置き換え、包装体内の水
分を除去できるため、臭みの原因となる霜の発生を抑え、冷凍焼けを防ぐことができる。
加えて、扁平状の魚の干物の周囲を包装体で密着しているため、移送中、包装体内の魚の
干物の移動を阻止でき、魚の干物の棘による包装体の損傷をも防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の冷凍食品の製造方法によって製造された冷凍食品の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例の冷凍食品の製造方法を図面(
図1乃至
図4)を参照して説明する。
冷凍食品の製造方法の対象は、魚の干物で、例えば、アジ、金目鯛、秋刀魚、鯖、鰯等の干物で、例えば、魚の干物を製造するには、魚を開いて、水洗いした後、塩水、たれに漬け込み等して、その後、乾燥室に入れて乾燥(又は自然乾燥)させている。
乾燥は、例えば、乾燥機の場合、水洗いし、水切り後の重量の80~20重量%となるまで乾燥、自然乾燥の場合、一時間ほど天日干してから日陰で長時間かけて水切り後の重量の80~20重量%となるまで乾燥させる。
【0016】
乾燥後、魚の干物1(例えば、30g~170gのアジの開き)を包装体2(例えば、ガスバリア性の包装体、縦13.5cm、横26.5cmの三方袋)に入れ、包装体2を真空(例えば、真空圧力-0.1MPa)にした後、包装体2内に窒素ガスを、例えば、6cc~35cc(窒素ガスの代わりに、炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスでも良い。)を充填する。
これは、包装体2内の酸素を窒素ガス又は炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスに置き換えることにより、包装体2内の酸素を無くし、臭みなどの原因となる霜の発生を抑えるためである。また、包装体2を真空(例えば、真空圧力-0.1MPa)にした後、包装体2内に窒素ガスを、例えば、6cc~35cc(窒素ガスの代わりに、炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスでも良い。)を充填するのは、締め付けを弱くし、解凍して包装袋2を開封したとき、魚の干物1の細胞内の水分等の流出を軽減する、つまり、魚の干物1の水分を保ったまま解凍するためである。
【0017】
充填後、包装体2を密閉(例えば、三方袋の開口部を熱シールで密閉して4方シールとなる。)し、密閉後、包装体2を介して魚の干物1を凍結する。
窒素ガス(窒素ガスの代わりに、炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスでも良い。)の充填量は、魚の干物1に包装体2を密着させ、包装体2内の魚の干物1の移動を阻止する程度で、その状態は、
図2に示すように、包装体2が略扁平状態となっている。
包装体2内の魚の干物1の移動を阻止するようにしたのは、魚の干物1の棘による包装体2の損傷を防ぐためである。
なお、ガスバリア性の包装体、縦13.5cm、横26.5cmの三方袋に入れたアジの開きの内容物30gに対して窒素ガス6cc、アジの開きの内容物40gに対して窒素ガス8cc、アジの開きの内容物50gに対して窒素ガス10cc、アジの開きの内容物60gに対して窒素ガス12cc、アジの開きの内容物70gに対して窒素ガス14cc、アジの開きの内容物80gに対して窒素ガス16cc、アジの開きの内容物90gに対して窒素ガス18cc、アジの開きの内容物100gに対して窒素ガス20cc、アジの開きの内容物110gに対して窒素ガス22cc、アジの開きの内容物120gに対して窒素ガス24cc、アジの開きの内容物130gに対して窒素ガス26cc、アジの開きの内容物140gに対して窒素ガス28cc、アジの開きの内容物150gに対して窒素ガス30cc、アジの開きの内容物160gに対して窒素ガス32cc、アジの開きの内容物170gに対して窒素ガス34ccを封入し密閉し、密閉後、包装体2を介して魚の干物1を凍結し、1週間後、焼いて食したが、良好であった。
【0018】
即ち、本実施例の冷凍食品は、扁平状の魚の干物1の周囲を包装体2で密着して覆うと共に密閉され、密閉後、凍結したものであって、前記密着は、包装体2内の魚の干物1の移動が阻止する程度であり、包装体2内には、窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスが充填されているものである。
【0019】
包装袋が魚の干物の形状に沿って強力に密着する(締め付ける)ようにした従来のものにあっては、包装袋内の魚の干物は、締め付けが強い分、解凍して包装袋を開封したとき、魚の干物の細胞内の水分等が多く放出され、魚の干物の食感等が良好でないが、
本実施例の冷凍食品によれば、扁平状の魚の干物1の周囲を包装体2で密着して覆うと共に、密閉された冷凍食品であって、前記密着は、包装体2内の魚の干物1の移動が阻止する程度であり、包装体2内には、窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスが充填されているため、魚の干物1の形状に沿って包装袋2が強力に密着(締め付ける)するようにした従来のものに比べ、包装体2内の圧力を高くでき、つまり、締め付けを弱くしている分、解凍して包装袋2を開封したとき、魚の干物1の細胞内の水分等の流出を軽減でき(解凍後、魚の干物1からの水分等の放出が少なく、食感等の良好な魚の干物1を得ることができる。)、しかも、包装体2内の気体を窒素ガス又は炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで置き換え、包装体2内の水分を除去できるため、臭みの原因となる霜の発生を抑え、冷凍焼けを防ぐことができる。加えて、扁平状の魚の干物1の周囲を包装体2で密着しているため、移送中、包装体2内の魚の干物1の移動を阻止でき、魚の干物1の棘による包装体2の損傷をも防ぐことができる。
【0020】
なお、魚の干物1には、前記魚の頭部の凹所である第1の凹所部位1A、前記魚の内臓を除去した第2の凹所部位1Bを有しているため、魚の干物1の凹所を利用して充填させた窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスは、第1の凹所部位1A及び/又は第2の凹所部位1Bと包装体2の間の空間に位置することなる。
また、包装体1は、上述した包装袋に限らず、凹状のトレーをフィルム状の包装資材で覆ったものでも良い。
【0021】
また、凍結(急速凍結)させる手段は、ブライン凍結で、例えば、?10℃~?50℃のアルコール溶液に浸漬させる方法による。
なお、凍結(急速凍結)させる手段は、ブライン凍結以外に、キャス冷凍、プロトン凍結でも良い。
このように急速凍結のは、魚肉の細胞壁を壊さずに冷凍することで解凍時のドリップを防いで冷凍焼けを抑えるためである。
上述の冷凍食品の製造方法は、臭みなどの原因となる霜の発生を抑え、魚肉の細胞壁を壊さずに冷凍することで解凍時のドリップを防いで冷凍焼けを抑え、魚の干物1の水分を保ったまま解凍を可能とすることにより、魚の干物1の鮮度を維持しながら長期冷凍保管を可能とすることができる。
【0022】
即ち、本実施例の冷凍食品の製造方法においては、魚の干物1を包装体2に入れ、包装体2を真空(例えば、真空圧力-0.1MPa)にした後、包装体2内に窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスを充填し、充填後、包装体2を密閉し、密閉後、包装体2を介して魚の干物1を凍結するものであり、包装体2内のガスの充填量は、魚の干物1に包装体2に密着させ、包装体2内の魚の干物1の移動を阻止する程度である。
上述の冷凍食品の製造方法によれば、魚の干物1を包装体2に入れ、包装体2を真空にした後、包装体2内に窒素ガス又は炭酸ガス又は前記窒素ガスと前記炭酸ガスの混合ガスを充填し、充填後、包装体2を密閉し、密閉後、包装体2を介して魚の干物1を凍結するものであり、包装体2内のガスの充填量は、魚の干物1に包装体2に密着させ、包装体2内の魚の干物1の移動を阻止する程度であるため、魚の干物1の形状に沿って包装袋2が強力に密着(締め付ける)するようにした従来のものに比べ、包装体2内の圧力を高くでき、つまり、締め付けを弱くしている分、解凍して包装袋2を開封したとき、魚の干物1の細胞内の水分等の流出を軽減でき(解凍後、魚の干物1からの水分等の放出が少なく、食感等の良好な魚の干物1を得ることができる。)、しかも、包装体2内の気体を窒素ガス又は炭酸ガス又は窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスで置き換え、包装体内の水分を除去できるため、臭みの原因となる霜の発生を抑え、冷凍焼けを防ぐことができる。加えて、扁平状の魚の干物1の周囲を包装体で密着しているため、移送中、包装体2内の魚の干物1の移動を阻止でき、魚の干物1の棘による包装体2の損傷をも防ぐことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 魚の干物
2 包装体