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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】重水素化化合物及びその医薬的用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 455/03 20060101AFI20220401BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 27/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220401BHJP
   C07B 59/00 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
C07D455/03 CSP
A61K31/4375
A61P25/04
A61P25/18
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/36
A61P27/00
A61P35/00
C07B59/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019541837
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2017000607
(87)【国際公開番号】W WO2018068429
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】201610890151.8
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520308363
【氏名又は名称】泰州華元医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】仲伯華
(72)【発明者】
【氏名】王建明
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼雪峰
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0064512(KR,A)
【文献】特表2012-503010(JP,A)
【文献】GONG, X et al.,Levo-tetrahydropalmatine, a natural, mixed dopamine receptor antagonist, inhibits methamphetamine self-administration and methamphetamine-induced reinstatement,Pharmacology, Biochemistry and Behavior,2016年01月12日,Vol. 144,pp. 67-72
【文献】RICHTER, WJ et al.,Detection of 9-Methoxy SUbstitution in Tetrahydroprotoberberine Alkaloids by Mass Spectrometry,Helvetica Chimica Acta,1975年,Vol. 58,pp. 203-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造から選ばれる化合物およびその無毒性の薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物を活性成分として含み、及び一種または多種の医薬用担体または賦形剤を含む薬物組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物の、精神疾病治療薬の製造における使用
【請求項4】
疼痛が、炎症による疼痛、癌による疼痛、または抗腫瘍薬による疼痛から選ばれる、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物の、疼痛疾病治療薬の製造における使用
【請求項5】
依存性疾病が、コカインによる依存性、メタンフェタミン系麻薬による依存性、オピオイド系麻薬または薬物による依存性、アルコール性依存性、喫煙による依存性又はケタミンによる依存性から選ばれる、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩またはその溶媒和物の、依存性疾病治療薬の製造における使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいL-テトラヒドロパルマチンの重水素化誘導体またはその薬学的に許容される塩、これらの化合物を活性成分として含む薬物組成物、及び上記誘導体またはその薬学的に許容される塩の精神系薬物の製造における用途に関するものである。
【0002】
[技術背景]
L-テトラヒドロパルマチン(L-tetrahydropalmatine、THP)または別名ロタンジン(rotundine)は、パパベラ科植物であるコリーダリスの乾燥塊茎から抽出されたアルカロイドであり、鎮静、催眠、鎮痛などの多様な治療作用を有するため、臨床上では頭痛、生理痛および不眠症の治療に用いられる。
【0003】
【化1】
【0004】
最近の研究では、L-テトラヒドロパルマチンが、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、癌による疼痛、および抗腫瘍薬による疼痛に対して良好な鎮痛作用をもつことを発見した。L-テトラヒドロパルマチンは、長期投与しても依存性が生じないだけではなく、コカインによる依存性、メタンフェタミン系麻薬による依存性、オピオイド系麻薬または薬物による依存性、アルコール性依存性、喫煙による依存性及びケタミンによる依存性などの依存性疾病に対してよい治療作用を持つ。
【0005】
但し、L-テトラヒドロパルマチンは、血圧や心拍数などを下げる心臓への副作用がある;トランスアミナーゼの上昇などの肝毒性を引き起こすこともある;なお、L-テトラヒドロパルマチンは大きな個人差があるため、薬物の安全性及び有効性は不確実である。
【0006】
本発明は、新しいL-テトラヒドロパルマチンの重水素化誘導体に関するものであり、これらの重水素化誘導体は、薬理学的作用が著しく向上されただけではなく、心臓への副作用、及び肝毒性も著しく減少され、個人差も著しく低減されている。
【0007】
[発明の内容]
本発明は、構造式Iで表される化合物およびその無毒性の薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
【化2】
【0009】
R1、R2、R3、R4は、それぞれにメチル基(-CH3)またはトリ重水素化メチル基(-CD3)であり、そのうち、少なくとも一つは-CD3である。
【0010】
本発明では、以下の構造式から選ばれる、構造式Iで表される化合物及びその無毒性の薬学的に許容される塩を提供する:
【0011】
【化3】
【0012】
本発明はまた、式Iで表される化合物、または式I、I、I、I、I、IまたはIで示される化合物と、その無毒性の薬学的に許容される塩を活性成分として含み、そして適宜な賦形剤を含有する薬学的組成物を提供する。これらの薬学的組成物は、液剤、錠剤、カプセル剤または注射剤であって良い;これらの薬学的組成物は、注射ルートでの投与または経口ルートでの投与でもよい。
【0013】
本発明はまた、式Iで表される化合物、または式I、I、I、I、I、IまたはIで示される化合物及びその無毒性の薬学的に許容される塩の、精神疾病治療ための薬物の製造における用途を提供する。
【0014】
さらに、本発明はまた、式Iで表される化合物、または式I、I、I、I、I、IまたはIで示される化合物及びその無毒性の薬学的に許容される塩の、疼痛疾病治療ための薬物の製造における用途を提供するが、上記の疼痛は、炎症による疼痛、癌による疼痛、抗腫瘍薬による疼痛から選ばれる。
【0015】
さらに、本発明はまた、式Iで表される化合物、または式I、I、I、I、I、IまたはIで示される化合物及びその無毒性の薬学的に許容される塩の、依存性疾病治療ための薬物の製造における用途を提供するが、上記の依存性疾病は、コカインによる依存性、メタンフェタミン系麻薬による依存性、オピオイド系麻薬または薬物による依存性、アルコール性依存性、喫煙による依存性、ケタミンによる依存性から選ばれる。
【0016】
以下、実施例を持って本発明に対してさらなる説明をするが、本発明の範囲は、下記の実施例に限定されない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱しないことを前提に、本発明に対して様々な変化および修飾をすることができることを理解できる。
【実施例1】
【0017】
(13a S)-2,3,10-トリメトキシ-9-[(トリ重水素) - メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H -イソキノリノ[2,1-b]イソキノリン(I)の合成
【0018】
【化4】
【0019】
(13a S)-2,3,10-トリメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン-9-オル( i-1 ) 341mg ( 1mmol )を、5mlのジメチルホルムアミドに添加し、撹拌溶解させる;その後、280mg( 2mmol )の炭酸カリウムを添加し、攪拌しながら290mg (2mmol)のCD3Iを滴下する。反応混合物を50℃で15時間撹拌反応させる。固体を濾過除去し、濾液を減圧条件で蒸発乾燥させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うが、ジクロロメタン:メタノール(10:1)で溶出させ、必要な成分を集積し、減圧条件で蒸発乾燥することで、I1 を130mg得た。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR (400MHz、 CDCl3): 6.83 ( s、1H) 、 6.78 ( d、1H )、 6.71(d、 1H)、 6.65(s、1H)、4.32(d、 1H)、3.88(s、3H) 、3.85(s、3H)、 3.81(s、 1H)、3.59-3.50(m、2H)、3.24(dd、1H)、3.21-3.10(m、2H)、 2.83(dd、 1H)、2.70-2.65(m、2H)。
【実施例2】
【0020】
(13a S)-2,3, 9-トリメトキシ-10-[(トリ重水素) - メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H -イソキノリノ[2,1-b]イソキノリン(I)の合成
【0021】
【化5】
【0022】
実施例1を参考に、i-1を(13a S)-2,3,9-トリメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H -イソキノリノ[2,1-b]イソキノリン-10-オル ( i-2 )に変えて、炭酸カリウムの作用でCD 3 Iと反応させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うことで、I105mg製造しうる。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR(400MHz、 CDCl3): 6.81 ( s、 1H)、 6.79 ( d、 1H )、6.72(d、 1H)、 6.64(s、1H)、4.30(d、 1H)、3.85(s、 3H)、3.82(s、3H)、3.74(s、1H)、 3.60-3.50(m、2H)、3.25(dd、1H)、3.20-3.10(m、2H)、2.81(dd、1H)、2.71-2.65(m、2H)。
【実施例3】
【0023】
(13a S)-3,9,10-トリメトキシ-2-[(トリ重水素)-メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン(I3) の合成
【0024】
【化6】
【0025】
実施例1を参考に、i-1を(13a S)-3,9,10-トリメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン-2-オル( i-3)に変えて、炭酸カリウムの作用でCD 3 Iと反応させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うことで、I85mg製造しうる。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR(400MHz、CDCl3): 6.86 ( s、1H)、6.79 ( d、1H )、6.75(d、1H)、6.68(s、1H)、4.35(d、1H)、3.86(s、3H)、3.81(s、3H)、3.61(s、1H)、3.55-3.50(m、 2H)、3.22(dd、1H)、3.08-3.10(m、2H)、2.84(dd、1H)、2.70-2.65(m、2H)。
【実施例4】
【0026】
(13a S)-2,9,10-トリメトキシ-3-[(トリ重水素)-メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン(I4)の合成
【0027】
【化7】
【0028】
実施例1を参考にi-1を、(13a S)-2,9,10-トリメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン-3-アルコール( i-4)に変えて、炭酸カリウムの作用でCD 3Iと反応させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うことで、I92mg製造しうる。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR (400MHz、CDCl3): 6.90 ( s、 1H)、6.82 ( d、1H )、6.75(d、1H)、6.65(s、1H)、4.38(d、1H)、3.89(s、3H)、3.86(s、3H)、3.68(s、1H)、3.56-3.51(m、2H)、3.25(dd、1H)、3.22-3.13(m、2H)、2.82(dd、1H)、2.71-2.68(m、2H)。
【実施例5】
【0029】
(13a S)-3,10-ジメトキシ-2,9-ジ-[(トリ重水素)-メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン(I5)の合成
【0030】
【化8】
【0031】
(13a S)-3,10-ジメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン-2,9-ジオル( i-5 ) 327mg (1mmol)を、5mlのジメチルホルムアミドに添加し、撹拌溶解させる;その後、560mg( 4mmol )の炭酸カリウムを添加し、攪拌しながら435mg ( 3mmol )のCD3Iを滴下する。反応混合物を50℃で15時間撹拌反応させる。固体を濾過除去し、濾液を減圧下で蒸発乾燥する。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うが、ジクロロメタン:メタノール(10:1)で溶出し、必要な成分を集積し、減圧下で蒸発乾燥することで、I115mg得た。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR(400MHz、CDCl3): 6.88 ( s、1H)、 6.77 ( d、 1H )、6.73(d、 1H)、6.61(s、1H)、4.32(d、1H)、3.87(s、3H)、3.80(s、1H)、3.52-3.50(m、2H)、3.21(dd、1H)、3.17-3.10(m、2H)、2.80(dd、1H)、2.68-2.63(m、2H)。
【実施例6】
【0032】
(13a S)-3,9-ジメトキシ-2,10,-ジ-[(トリ重水素)-メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン(I6) の合成
【0033】
【化9】
【0034】
実施例5を参考に、i-1を(13a S)- 3,9-ジメトキシ-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン-2,10-ジオール( i-6)に替えて、炭酸カリウムの作用でCD 3Iと反応させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離を行うことで、Iを100mg製造しうる。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR (400MHz、 CDCl3): 6.83 ( s、 1H)、 6.78 ( d、 1H )、6.71(d、1H)、6.65(s、1H)、4.32(d、1H)、3.88(s、3H)、3.81(s、1H)、3.59-3.50(m、2H)、3.24(dd、1H)、3.21-3.10(m、2H)、2.83(dd、1H)、2.70-2.65(m、2H)。
【実施例7】
【0035】
(13a S)-2,3,9,10,-テトラ-[(トリ重水素)-メトキシ]-6,8,13,13a-テトラヒドロ-5H-イソキノリノ[2,1-b] イソキノリン(I7)の合成
【0036】
【化10】
【0037】
60gのジエチレングリコールを100mLの反応フラスコに添加し、撹拌し、窒素ガスを流し、7gの水酸化カリウムを添加し、80℃まで昇温してから、さらに7gの水酸化カリウムを添加する。水酸化カリウムが完全溶解した後に温度を210℃まで昇温し、水分を除去する。温度が安定した後に、3.55g (10mmol) のL-テトラヒドロパルマチンを添加し、205-210℃で1.5h加熱する。その後、反応混合物を氷塊中に注ぎこみ、固体塩化アンモニウムにてpHを8~9に中和し、固体が析出されると、その固体を濾過集積し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離するが、ジクロロメタン:メタノール(2:1)で溶出し、必要な成分を集積し、減圧下で蒸発乾燥させることでi-7を1.1 g得た。
【0038】
900mg ( 3mmol )のi-7 を10mlのジメチルホルムアミドに添加し、撹拌溶解させる;その後、2.0g( 15mmol )の 炭酸カリウムを添加し、撹拌しながら2.2g ( 15mmol )のCD3Iを滴下する。反応混合物を50℃で15時間撹拌反応させる。固体を濾過除去し、濾液を減圧下で蒸発乾燥させる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離するが、ジクロロメタン:メタノール(10:1)で溶出し、必要な成分を集積し、減圧下で蒸発乾燥させることで、I7 を120mg 得た。核磁気共鳴分光法: 1H-NMR(400MHz、CDCl3): 6.87 ( s、1H)、6.75 ( d、1H )、6.70(d、1H)、6.61(s、1H)、4.30(d、1H)、3.61-3.50(m、2H)、3.23(dd、1H)、3.17-3.05(m、2H)、2.81(dd、1H)、2.72-2.67(m、2H)。
【実施例8】
【0039】
ラットのホルマリンモデルにて胃内灌流投与の鎮痛作用を評価
SDラット(雄、体重160-180g)を無作為に群分けしたが、6匹1群とし、それぞれの投与量を各自胃内灌流投与してから、PVCの観察箱に入れた。30分後、ラットの左後足に20μLの2.7%ホルマリン溶液を皮下注射してから、素早くPVC観察箱に戻し観察した。ラットがホルマリンを注射した足底を舐める時間を、早期反応(0-5分、I相)および晩期反応(15-30分、II相)として各自記録した。観察時間内にラットが舐める時間の長さに基づき、受験化合物の鎮痛活性を評価した。実験データは、平均値±標準偏差の形で表示し、舐める時間が短いほど、化合物の鎮痛効果は優れていることを表している。 結果は表1で示す。
【0040】
【表1】
【実施例9】
【0041】
ラット慢性坐骨神経圧迫神経痛モデルにおける胃内灌流投与の鎮痛作用を評価
SDラット(雄、体重160-180g)をペントバルビタールナトリウム(40mg/kg)で麻酔し、右後大腿の中部の坐骨神経を分離した。坐骨神経の分岐手前のところで、無菌ガラスフックを使って坐骨神経を周囲の組織から分離させ、無菌クロミックグット(4号、直径0.15mm)で4個の緩い輪を結紮するが、輪ごとの間隔は1-2mmである。局部にペニシリン粉末を撒き、筋肉組織と皮膚を縫合してから、コルク屑を敷いだ檻に入れる。偽手術群では坐骨神経を露出させだけに、他の処置は上記と同じである。手術後のラットを金属檻に入れ、そして違う重さの繊維糸でラットの足底を刺激するが、毎回の刺激間隔は5秒とし、10回刺激してそのうち4回-6回ラットに足を挙げる反応を起こさせる繊維糸が見つかるまで続き、その重さを記録し、その重さを閾値と設定する(単位:g)。同時に、各重さの繊維糸で10回刺激した際に、動物の足あげ反応を起こした回数を記録し、最高閾値を26gと設定した。
【0042】
動物を一群5-6匹に組み分けし、胃内灌流投与し、投与後1時間の疼痛閾値を測定する。閾値統計は、ノンパラメトリックWilcoxon 2-Sample Test 及びKruskal- Wallis Test法を採用した;SASSデータ処理ソフトウェアにてデータ分析を行った。
【0043】
鎮痛率(%)=(薬物処置後の疼痛閾値 - 薬物処置前の疼痛閾値)/(最大鎮痛閾値 - 薬物処置前の疼痛閾値)×%。 実験結果は表2で示す。
【0044】
【表2】
【実施例10】
【0045】
オキシコドン(oxycodone)誘導ラットに対する場所嗜好の抑制作用
SDラット(雄、体重160-180g)を、仕切りドアを開けた条件づき場所嗜好性訓練箱内に入れ、ラットが15分以内に各箱で留まった時間を測定し、これを持ってラットの自然的傾向性を判断した。その後、白い箱で留った時間によりラットを無作為に群分けしたが、1群10匹ずつにした。白い箱は薬ありとし、黒い箱は薬無しとした。胃内灌流投与で受験化合物を投与した40分間後に、オキシコドン(2.5 mg/kg、 s.c.)または生理食塩水を皮下注射してから、すぐにラットを白い箱または黒い箱に入れて、45分間訓練するが、1日一回、9日間続けた。10日目に、ラットを仕切りドアを開けた訓練箱内に入れ、15分内にラットが白い箱で留まった時間を測定し、ラットの嗜好効果への評価をした。実験結果は表3で示す。
【0046】
【表3】
【実施例11】
【0047】
ラットの血圧及び心拍数への影響
SDラット(雄、体重160-180g)は、投与前に12時間禁食させるが、給水は自由にさせる。ラットを無作為に群分けし、ペントバルビタールナトリウムを50~60mg/kgの量で腹腔注射し麻酔させた。ラットを手術台に仰向きに寝かし、頚部の中央から皮膚を切開するが、切り口は2.5cm程度である。皮下組織と、正中筋肉と、を分離させ、気管を十分露出させ気管内挿管手術を行った。右側から後側に皮下組織を分離させ、右頚部の総動脈と、迷走神経および交感神経と、を露出させ、頚動脈挿管手術を行う。最後に、気管挿管および頚動脈挿管をそれぞれ呼吸トランスデューサーおよび血圧トランスデューサーに接続してから、さらに多機能生理データ記録装置に接続する。手術30分後に、胃内灌流投与する。 投与後、各時点で心拍数と、血圧と、を測定した。結果は、各自表4および表5で示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【実施例12】
【0050】
亜急性毒性への評価結果
雄のウィスターラットを無作為に10匹ずつ群分けし体重を測る。一定濃度の受験試料を粉砕し、0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁させる。40mg/kgの受験化合物を含むカルボキシメチルセルロースナトリウム懸濁液を胃内灌流投与し、ブランクのカルボキシメチルセルロースナトリウム懸濁液を投与した群を対照群とし、一日一回、14日間続けた。最終回の投与後に、12時間の禁食・給水を経て、麻酔させ、腹部大動脈から採血した。国立北京薬物安全評価研究センターSOPB093「血清製造標準操作手順」に従って、血清を製造し、血液生化学的指標および免疫学的指標の測定用に供給した。SOPB032「真空管EDTA抗凝血の製造」に従ってEDTA抗凝血を製造し、血液一般検査用に供給した。
【0051】
その結果、各薬物群の動物の体重増加および摂餌量は、同時進行した溶媒対照群より低いが、有意差はなかったことが表れた。14項目の血液学的指標及び15項目の血漿生化学的指標の測定結果からは、ロタンジン群、I2 及びI6群の動物血漿のALTとASTは、著しく上昇し、I7群の動物血漿のALTとASTは、対照群に対して著しい変化はないことが表れた。その他の各指標は全て正常範囲内である。組織病理学的検査では、ロタンジン群、I2 及びI6群の動物に、肝小葉の末梢部および中部に肝細胞の空胞変性が表れ、個別の動物には、小型焦げ斑点から大面積の肝細胞の凝固壊死が生じたことが表れた。
【0052】
【表6】