(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】超音波メス用ビット、超音波振動伝播アセンブリおよび超音波止血切断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
A61B17/32 510
(21)【出願番号】P 2019559100
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 CN2017115037
(87)【国際公開番号】W WO2019109308
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2019-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】519264070
【氏名又は名称】ベイジン エスエムティーピー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,チュイン
(72)【発明者】
【氏名】フー,シヤオミーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ソーンタオ
(72)【発明者】
【氏名】フオン,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チュンユエン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/027853(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168514(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0253387(US,A1)
【文献】国際公開第2016/009702(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0011176(US,A1)
【文献】特開2006-340837(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105310746(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波メスのチップ(11)と、
接続部(13)と、
複数の振動ノードボス(14)と、
導波管(15)と、
を備えた超音波メス用ビット(101)において、
前記超音波メスのチップ(11)が、前記導波管(15)の前方に配置され、
前記接続部(13)が、前記導波管(15)の後方に配置され、
前記複数の振動ノードボス(14)が、前記導波管(15)上に配置され、
前記超音波メスのチップ(11)が、その尖った端部において横方向に屈曲され、かつ、
前記超音波メス用ビット(101)上には、超音波振動を案内するための振動案内溝(12)がさらに設けられる
と共に、
前記振動案内溝が前記導波管(15)上に設けられ、かつ2つの振動ノードボス(14)の間に配置される、
超音波メス用ビット(101)。
【請求項2】
前記振動案内溝(12)が面取り溝として構成され、前記面取り溝が超音波軸に沿って螺旋状に進行し、かつ、そのピッチは均一または不均一である、請求項1に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項3】
超音波振動の波長に対する前記振動案内溝(12)のピッチの比が0.2ないし2である、請求項2に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項4】
前記面取り溝が台形、半円形または三角形の形状である、請求項2または3に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記面取り溝を備える請求項2ないし4のいずれか一項に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項6】
複数の面取り溝が前記超音波メス用ビット上に前記超音波メス用ビット(101)の断面から見たときの周方向に等間隔で配置される、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項7】
前記超音波メスのチップ(11)が、その尖った端部において横方向に屈曲されることに加えて、徐々に変化する幅を備える、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項8】
前記徐々に変化する幅が台形状の徐々に変化する幅である、請求項7に記載の超音波メス用ビット(101)。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の超音波メス用ビットを備えた超音波振動伝播アセンブリ(202)。
【請求項10】
支持構造とクランプアーム(102)とをさらに備え、
前記クランプアーム(102)が前記支持構造の前端部に配置され、かつ、
前記支持構造が、外側スリーブ(106)と、内側スリーブ(107)と、潤滑シリンダー(108)とを備えており、前記超音波メス用ビット(101)が前記潤滑シリンダー(108)の内部に配置される、
請求項9に記載の超音波振動伝播アセンブリ(202)。
【請求項11】
前記潤滑シリンダー(108)がポリテトラフルオロエチレンケーシングである、請求項10に記載の超音波振動伝播アセンブリ。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか一項に記載の超音波振動伝播アセンブリを備えた超音波止血切断システム。
【請求項13】
ホスト(201)と、ハンドル(203)と、超音波トランスデューサ(204)と、足踏みスイッチまたはボタンとをさらに備え、
前記ハンドル(203)がクランプスイッチ(105)を備え、
前記超音波振動伝播アセンブリの前記超音波メス用ビット(101)が、前記超音波メス用ビットの後端部において接続部(13)を介して前記超音波トランスデューサ(204)に取り外し可能に接続され、かつ、
前記ホスト(201)が、ケーブルを介して前記超音波トランスデューサ(204)に電気的に接続される、
請求項12に記載の超音波止血切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器の技術分野に関し、特に、超音波メス用ビット、超音波振動伝播アセンブリおよび超音波止血切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のメスやその他のエネルギー手術器具と比較して、超音波止血切断システムには、簡易な操作、小さな手術外傷領域、無煙、出血量の減少、高い手術の精度および術後の迅速な回復といった利点があり、外科手術において広く利用されている。
【0003】
凝固または切断の際、超音波止血切断システムの微視的な温度均一性は、主として組織内部の温度拡散速度と超音波振動による摩擦発熱の均一性とによって決まる。既存の超音波止血切断システムの超音波メスのチップは直線的なカッターであって、超音波メス用ビットは縦振動のみを生成する。超音波メスのチップがバランスの取れた位置にあるとき、
図7(a)に示すように、超音波メスのチップとクランプアームとの間の間隙は最小となり、生体組織上の超音波メスのチップとクランプアームとの締め付け圧は最大となる。
【発明の概要】
【0004】
縦超音波振動の原理によれば、縦方向振幅は超音波メスのチップから離隔するほど小さくなる。超音波メスを用いて生体組織を切断する場合、組織に対するメスのチップとメス端部との締め付け圧は、締め付けられた組織の厚さ、組織が超音波メス用ビットによって締め付けられる位置の変化ならびに加熱および変性後の組織の弾性の変化によっても変動する。その結果、超音波振動によって生成される熱は大きく相違し、切断または凝固されつつある組織の内部の温度は均一ではないため、異なる位置における超音波メス用ビットの凝固および切断効果には比較的大きな差異がある。例えば、大径血管などの生体組織に対して止血または切断を行う場合、メスのチップによって切断されつつある位置においては止血または切断が行われたものの、残りの位置においては止血がまだなされていないような状況がある。この場合、切断作業がそのまま続行されると、メスのチップによって切断されつつある当該位置における組織が加熱されすぎて高温炭化などの悪影響の原因となり、これが患者の安全を危殆化する可能性がある。
【0005】
本開示は、従来技術における大径血管などの生体組織に対する貧弱な切断・止血効果という問題を解決するために、超音波メス用ビット、超音波振動伝播アセンブリおよび超音波止血切断システムを提供するものである。
【0006】
第1の態様においては、本開示は、超音波メスのチップと、接続部と、複数の振動ノードボスと、導波管とを備えた超音波メス用ビットを提供し、この超音波メス用ビットにおいて、上記超音波メスのチップが、上記導波管の前方に配置され、上記接続部が、上記導波管の後方に配置され、上記複数の振動ノードボスが、上記導波管上に配置され、上記超音波メスのチップが、その尖った端部において横方向に屈曲され、かつ、上記超音波メス用ビット上には、振動案内溝がさらに設けられる。
【0007】
さらに、上記振動案内溝が、上記超音波メスのチップの後端において、上記超音波メスのチップ上に配置される。
さらに、上記振動案内溝が上記導波管上に設けられ、かつ2つの振動ノードボスの間に配置される。
【0008】
さらに、上記振動案内溝が面取り溝として構成され、上記面取り溝が超音波軸に沿って螺旋状に進行し、かつ、そのピッチは均一または不均一である。
さらに、超音波振動の波長に対する上記振動案内溝のピッチの比は0.2ないし2である。
【0009】
さらに、上記面取り溝が台形、半円形または三角形の形状である。
さらに、少なくとも1つの上記面取り溝が設けられる。
さらに、上記複数の面取り溝が上記超音波メス用ビット上に等間隔で配置される。
【0010】
さらに、上記超音波メスのチップが、その尖った端部において横方向に屈曲されることに加えて、徐々に変化する幅を備える。
さらに、上記徐々に変化する幅が台形状の徐々に変化する幅である。
【0011】
第2の態様においては、本開示は、さらに、前述した超音波メス用ビットを備えた超音波振動伝播アセンブリを提供する。
さらに、上記超音波振動伝播アセンブリが、支持構造とクランプアームとをさらに備え、上記クランプアームが上記支持構造の前端部に配置され、かつ、上記支持構造が、外側スリーブと、内側スリーブと、潤滑シリンダーとを備えており、上記超音波メス用ビットが潤滑シリンダーの内部に配置される。
【0012】
さらに、上記潤滑シリンダーがポリテトラフルオロエチレンケーシングである。
第3の態様においては、本開示は、さらに、前述した超音波振動伝播アセンブリを備えた超音波止血切断システムを提供する。
【0013】
さらに、上記超音波止血切断システムが、ホストと、ハンドルと、超音波トランスデューサと、足踏みスイッチまたはボタンとをさらに備え、上記ハンドルがクランプスイッチを備え、上記超音波振動伝播アセンブリの上記超音波メス用ビットが、上記超音波メス用ビットの後端部において接続部を介して上記超音波トランスデューサに取り外し可能に接続され、かつ、上記ホストが、ケーブルを介して上記超音波トランスデューサに電気的に接続される。
【0014】
本開示においては、一方においては、超音波止血切断システムのビットを屈曲形状に設計して縦超音波振動を縦-ねじり複合振動に変換することにより、組織の内部における温度均一性の振動方向への依存が低減され、振動摩擦の有効長が増大され、そして、他方においては、屈曲形状の超音波メス用ビットにねじり振動が加えられると、クランプアームの締め付け圧がメスのチップからの距離の相違に応じて位置ごとに相違する。メスのチップ近傍の領域においては締め付け圧が大きく低減されるのに対し、メスのチップから離隔された領域においては圧力の低減はより小さいものとなる。したがって、切断または凝固されつつある組織の内部の温度均一性は向上され、これにより、切断および止血の効率性および安全性を改善させる。
【0015】
本開示においては、振動案内溝を超音波メスのチップの後端部に設けることで、振動案内溝と潤滑シリンダーとの間の摩擦熱生成効果がさらに低減される。加えて、超音波振動伝播アセンブリの支持構造においてポリテトラフルオロエチレンケーシングを設計することにより、組立てプロセスが簡素化され、これにより、組立て時間を短縮させる。
【0016】
本開示においては、振動軸に沿った超音波メスのチップの質量分布法則は、振動軸に沿った超音波メスのチップの振幅および圧力分布特性が改善さるように超音波メス用ビットに徐々に変化する幅をもたせることによって変化させられ、生体組織の凝固または切断の際の超音波メスのチップの温度均一性をさらに向上させ、これにより、止血効果を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本開示の実施例1に係る超音波メス用ビットの概略構造図である。
図1(b)は、本開示の実施例1に係る超音波メス用ビットの概略構造図である。
図1(c)は、本開示の実施例1に係る超音波メス用ビットの概略構造図である。
図1(d)は、本開示の実施例1に係る超音波メス用ビットの概略構造図である。
【
図2】
図2(a)は、本開示の実施例1に係る超音波振動案内溝の形状の概略図である。
図2(b)は、本開示の実施例1に係る超音波振動案内溝の形状の概略図である。
図2(c)は、本開示の実施例1に係る超音波振動案内溝の形状の概略図である。
図2(d)は、本開示の実施例1に係る超音波振動案内溝の形状の概略図である。
【
図3】本開示の実施例1に係る超音波振動伝播アセンブリの概略構造図である。
【
図4】本開示の実施例1に係る超音波止血切断システムの概略図である。
【
図5】本開示の実施例1に係る超音波止血切断システムによって締め付けられる生体組織の概略図である。
【
図6】本開示の実施例1に係る超音波メス用ビットの縦振動とねじり振動とから形成された複合振動の概略図である。
【
図7】
図7(a)は、クランプアームと既存の超音波メスのチップとの間の間隙の概略図である。
図7(b)は、クランプアームと本開示の実施例1に係る超音波メスのチップとの間の間隙の概略図である。
【
図8】本開示の実施例2に係る超音波メス用ビットの概略構造図である。
【
図9】
図9(a)は、本開示の実施例3に係る台形状の徐々に変化する幅を有する超音波メスのチップの上面図である。
図9(b)は、本開示の実施例3に係る台形状の徐々に変化する幅を有する超音波メスのチップの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態においては、詳細な説明および図面は全体として、開示された実施形態がどのように実装されるかを説明するものである。他の実施形態も実行可能であって、実施形態は、本開示において開示される範囲から逸脱することなく構造的または論理的に変更されうることが理解されるべきである。
(実施例1)
本実施形態は超音波メス用ビット101を開示するものであって、その構造は
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)、
図6および
図8に示すとおりであるところ、超音波メス用ビット101は、超音波メスのチップ11と、導波管15と、接続部13と、複数の振動ノードボス14とを備えており、超音波メスのチップ11は導波管15の前方に配置され、接続部13は導波管15の後方に配置され、複数の振動ノードボス14は、導波管15上に配置され、超音波メスのチップ11は、その尖った端部において横方向に屈曲され、かつ、導波管15上には、振動案内溝12が設けられる。上記構成部品のうち、超音波メスのチップ11は生体組織401に対して切断手術および止血手術を行うために用いられ、振動案内溝12は超音波トランスデューサの縦振動を縦-ねじり複合振動に変換するために用いられ、接続部13は超音波メス用ビットを超音波トランスデューサに接続して超音波振動の連続的伝播を実現するために用いられ(これは外科医が洗浄作業および消毒作業を行ううえで便利である)、接続部13は接続ねじであってもよく、複数の振動ノードボス14は超音波メス用ビット101を支持して振動中の超音波メス用ビット101と支持構造との間の摩擦を低減するために用いられ(振動ノードボスの数は限定されない)、そして、導波管15は、超音波振動を伝播させるために用いられる。振動案内溝12は、導波管15の2つの振動ノードボス14の間に設けられていてもよく、あるいは、導波管15上の別の位置に設けられていてもよい。
【0019】
さらに、
図1(d)に示すように、超音波振動案内溝12は、超音波軸に沿って螺旋状に進行する面取り溝として構成されており、面取り溝の形状は
図2(a)ないし
図2(d)に示すごとく台形、半円形または三角形であってもよい。ピッチは均一であってもよく不均一であってもよい。好ましくは、超音波振動の波長に対する案内溝のピッチの比は0.2ないし2である。案内溝の数は少なくとも1つである。好ましくは、複数の案内溝が超音波メス用ビットの周方向に等間隔で配置される。
【0020】
さらに、
図3および
図5に示すように、本実施形態においては超音波振動伝播アセンブリがさらに開示され、この超音波振動伝播アセンブリは、超音波メス用ビット101と、支持構造と、クランプアーム102とを備える。クランプアーム102は支持構造の前端部に配置される。支持構造は、外側スリーブ106と、内側スリーブ107と、潤滑シリンダー108とを備える。超音波メス用ビット101の後端部は、潤滑シリンダー108の内部に配置される。内側スリーブ107および外側スリーブ106は、潤滑シリンダー108の外部において被覆をなしている。複数の振動ノードボス14は、潤滑シリンダー108、内側スリーブ107および外側スリーブ106とともに超音波メス用ビットに対する支持部を形成することができ、そして、また、振動の際の超音波メス用ビットと支持部材との間の摩擦に起因する熱生成を低減させることができる。加えて、潤滑シリンダー108はまた、摩擦をさらに低減するために、ポリテトラフルオロエチレンケーシングなどの低摩擦係数の材料で形成されることもできる。同時に、ポリテトラフルオロエチレンケーシングの利用は、各振動ノードボス14に環状部が設けられる従来技術と比較して、組立てプロセスを簡素化し、組立てに要する時間を短縮することができる。
【0021】
加えて、
図4に示すように、本実施形態は、ホスト201と、超音波振動伝播アセンブリ202と、ハンドル203と、超音波トランスデューサ204と、足踏みスイッチまたはボタン205とを備えた超音波止血切断システムをさらに含み、ハンドル203はクランプスイッチ105を備えており、ホスト201はケーブル301を介して超音波トランスデューサ204に接続され、超音波振動伝播アセンブリ202の超音波メス用ビット101は、超音波メス用ビットの後端部において、接続部13を介して超音波トランスデューサ204に取り外し可能に接続される。超音波トランスデューサ204は、高電圧信号を超音波振動に変換して超音波メス用ビットを駆動して動作させるために用いられる。ホスト201は、超音波ハンドルの接近を検出し、超音波システムが最適な共振周波数で動作することができるように超音波駆動信号を制御および調節するために用いられ、また、超音波駆動信号の電流、電圧および位相パラメータを特定する、駆動信号が過電流、開回路または短絡のいずれであるかを検出するなど、ハンドルの振動状態を特定および検出するために用いられる。ホスト201は、超音波の出力および停止を制御するために、足踏みスイッチまたはボタン205によって開始、停止およびその他の動作をユーザが行うことを可能にするとともに、また、ユーザの操作インタフェースによって超音波止血メスの出力パワーの設定、故障診断および警告といった機能を実現することができる。外科医は、クランプスイッチ105を操作し、超音波振動伝播アセンブリ202のクランプアーム102を駆動して、外側スリーブ106および内側スリーブ107を介して回転させる。クランプアーム102と超音波メスのチップ11とがともに、
図5に示すように生体組織401に対する締め付け作業を行う。
【0022】
本実施形態においては、振動案内溝12を超音波メス用ビット101上に設けることによって、超音波トランスデューサの縦振動は縦-ねじり複合振動に変換されることができるので、超音波メス用ビットは同時に長手方向に振動するとともにねじれ、
図6に示すように複合振動を形成する。同時に、超音波メスのチップ11は、その尖った端部において横方向に屈曲されるので、超音波メスのチップ11とクランプアーム102との間の間隙のサイズは、本実施形態における屈曲された超音波メスのチップが用いられて縦-ねじり複合振動と協同する際に振動およびねじれの変化とともに周期的に変動する。ねじれ振動が最大変位に達すると、
図7(b)に示すように超音波メスのチップ11とクランプアーム102との間の間隙が最大となり、この時、超音波メスのチップ11およびクランプアーム102の生体組織に対する締め付け圧が最小となり、メスのチップ部分とビットの他の部分との間の締め付け力の差異が、直線状のビットを用いていてねじれ振動を生成しない従来技術に係る超音波メスと比較して縮小される。この結果、生成される熱の量の差異が縮小され、切断または凝固されつつある組織の内部の温度がより一層均一となり、これが大径血管などの生体組織を閉じるのに貢献する。
【0023】
(実施例2)
図8に示すように、導波路15に振動案内溝を設けた実施形態1とは異なり、本実施形態においては、超音波メス用ビット101の超音波案内溝12は超音波メスのチップ11上に設けられ、超音波メスのチップ11の後端部に配置される。振動案内溝12と潤滑シリンダー108との間の摩擦熱発生効果は、上記の配置によりさらに低減されることができる。
【0024】
(実施例3)
本実施形態は、実施例1または実施例2に基づいて、超音波メス用ビット101の超音波メスのチップ11の形状をさらに規定する。すなわち、超音波メスのチップ11は、その尖った端部において横方向に屈曲されることに加えて、徐々に変化する幅を備える。例えば、徐々に変化する幅は、台形形状の徐々に変化する幅であってもよく、その上面図は
図9(a)に示すとおりであり、ここでは超音波メスのチップ11の前端部はその後端部のそれよりも広い幅を有し、その側面図は
図9(b)に示すとおりである。上記設計により、振動軸に沿った超音波メスのチップ部11の質量分布法則は変更されることができ、振動軸に沿った超音波メスのチップ11の振幅および圧力分布特性が改善され、生体組織401の凝固または切断の際の超音波メスのチップ11の温度均一性をさらに改善し、これにより、止血効果を向上させる。
【0025】
様々な実施形態が以上のとおり詳細に説明されたが、当業者は、本開示が開示するところから逸脱することなく、上述の実施形態の特定の開示に代えて様々な代替的および/または等価的実施形態が用いられてもよいことを理解するであろう。本出願は、議論された様々な実施形態の変更および変形を網羅することを意図する。