(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】歯科用切削器具の滅菌ユニット及び滅菌ホルダ
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20220401BHJP
A61G 15/16 20060101ALI20220401BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61C19/00 J
A61G15/16
A61C1/08 S
(21)【出願番号】P 2020136823
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520307562
【氏名又は名称】宮澤 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100177747
【氏名又は名称】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 和男
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-154299(JP,A)
【文献】特開昭63-252155(JP,A)
【文献】特開2005-211649(JP,A)
【文献】特表2019-528141(JP,A)
【文献】米国特許第04772795(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0334974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が切削用バーを装着するヘッドであり、末端側が把持部となるハンドピースと、前記ハンドピースの末端に接続され、前記切削用バーを駆動するための動力装置を内蔵する駆動部と、前記駆動部の末端に接続されるホースとを連結してなる歯科用の切削器具を格納しつつ滅菌処理することが可能な滅菌ユニットであって、
この滅菌ユニットは、本体部、発光体、拡散体、遮光体、センサ及び取付手段を有し、
前記本体部の内部には、
前記駆動部、
前記ハンドピースの
前記把持部と前記駆動部との接続部及びその近傍を主たる滅菌対象範囲とし、前記切削器具の最大直径に対応する部位より奥側において内径が漸次小さくなり、前記
ハンドピースの前記把持部と前記駆動部の外形状に適合した内形状の格納部が設けられ、前記格納部の前端は開放されて前記切削器具の出入口となり、前記格納部の後端は開放されて前記
駆動部に連結される
前記ホースの出入口となり、前記格納部の側面の一部は開放されて、
前記ハンドピースの前記把持部及び前記駆動部は通過不可能だが、前記ホースは通過可能なスリットとなり、
前記発光体は、前記格納部の前記滅菌対象範囲に滅菌光を放射可能なように複数かつ均等に配置され、
前記拡散体は、前記発光体から放射された前記滅菌光を前記滅菌対象範囲に向けて拡散反射するように、前記格納部の内側面に配置され、
前記遮光体は、前記滅菌光の前記格納部からの漏洩を防止するため、前記格納部の前記切削器具の前記出入口及び前記ホースの前記出入口、前記格納部の前記スリットに設けられ、
前記センサは、前記切削器具の前記格納部への格納を感知して前記発光体による前記滅菌光の放射を開始させ、前記切削器具の前記格納部からの抜出を感知して前記発光体による前記滅菌光の放射を停止させ、
前記取付手段により、台座に設置されて、前記切削器具の滅菌ホルダとして機能することを特徴とする滅菌ユニット。
【請求項2】
前記発光体が、前記滅菌光を透過可能な前記拡散体の内部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の滅菌ユニット。
【請求項3】
前記本体部と、前記発光体、前記拡散体、前記遮光体及び前記センサを有する前記格納部とが別体とされ、前記本体部に前記格納部が着脱可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の滅菌ユニット。
【請求項4】
先端が切削用バーを装着するヘッドであり、末端側が把持部となるハンドピースと、前記ハンドピースの末端に接続され、前記切削用バーを駆動するための動力装置を内蔵する駆動部と、前記駆動部の末端に接続されるホースとを連結してなる歯科用の切削器具を格納しつつ滅菌処理することが可能な滅菌ホルダであって、
この滅菌ホルダは、本体部、発光体、拡散体、遮光体及びセンサを有し、
前記本体部の内部には、
前記駆動部、
前記ハンドピースの
前記把持部と前記駆動部との接続部及びその近傍を主たる滅菌対象範囲とし、前記切削器具の最大直径に対応する部位より奥側において内径が漸次小さくなり、前記
ハンドピースの前記把持部と前記駆動部の外形状に適合した内形状の格納部が設けられ、前記格納部の前端は開放されて前記切削器具の出入口となり、前記格納部の後端は開放されて前記
駆動部に連結される
前記ホースの出入口となり、前記格納部の側面の一部は開放されて、
前記ハンドピースの前記把持部及び前記駆動部は通過不可能だが、前記ホースは通過可能なスリットとなり、
前記発光体は、前記格納部の前記滅菌対象範囲に滅菌光を放射可能なように複数かつ均等に配置され、
前記拡散体は、前記発光体から放射された前記滅菌光を前記滅菌対象範囲に向けて拡散反射するように、前記格納部の内側面に配置され、
前記遮光体は、前記滅菌光の前記格納部からの漏洩を防止するため、前記格納部の前記切削器具の前記出入口及び前記ホースの前記出入口、前記格納部の前記スリットに設けられ、
前記センサは、前記切削器具の前記格納部への格納を感知して前記発光体による前記滅菌光の放射を開始させ、前記切削器具の前記格納部からの抜出を感知して前記発光体による前記滅菌光の放射を停止させることを特徴とする滅菌ホルダ。
【請求項5】
前記発光体が、前記滅菌光を透過可能な前記拡散体の内部に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の滅菌ホルダ。
【請求項6】
前記本体部と、前記発光体、前記拡散体、前記遮光体及び前記センサを有する前記格納部とが別体とされ、前記本体部に前記格納部が着脱可能であることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の滅菌ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、歯科治療用の切削器具等の滅菌ユニット及び滅菌ホルダであり、歯科医療分野における衛生管理に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
歯科医師は、患者に対する治療行為を行うにあたり、ハンドピース等の切削器具や超音波スケーラー、LED照射器、電気メスなどの歯科用器具を使用する。そして、歯科医師が切削器具を使用して患者の治療にあたる場合には、歯質の切除等に最も好適な切削用バーを適宜に選択してハンドピースに装着し、切削用バーを駆動するマイクロモーターやエアモーター等の動力装置が内蔵された駆動部にそのハンドピースを接続し、ハンドピース先端で高速回転する切削用バーにより歯質を切削するなどして、う歯の治療が行われる。
当然ながら、この歯科治療に関しては、患者の口腔内に挿入される切削器具の先端部となる切削用バーやハンドピース等の消毒や滅菌の衛生処理が不可欠で極めて重要である。しかし過去には、一部の歯科医療機関における衛生管理の不十分さが大きな社会問題となった経緯もあり、そして最近では、新型コロナウイルスのような新たな感染症の発生と拡大が危惧される状況でもあり、これまで以上に徹底した衛生管理が必要とされる事情が生じている。
そのようなことから、多くの歯科医療機関においては、衛生管理の徹底とそれに関する患者への広報活動が積極的に行われており、医療用除菌シートによる消毒、オイルライザーでの高熱オイル浸漬処理、オートクレーブによる高圧蒸気滅菌処理などが日常的に実施されているところでもある。
また、切削器具の衛生管理に関しては、紫外線照射による滅菌処理も採用されており、現に紫外線殺菌機の製造販売も行われている。それらは、口腔内に挿入されるハンドピースや切削用バーなど切削器具の先端側を挿入して滅菌するもの、又は、切削器具全体を格納して不使用時の器具の保管と併せて滅菌処理を施すものの他、特許文献1のようなハンドピースホルダーを被覆して用いられる防塵カバー型の滅菌器具なども発案されている。更に、特許文献2や特許文献3では、歯科用チェアユニットのワークテーブルに設置されるハンドピースホルダーの内部に設けられた紫外線管と、前面に開閉可能に取り付けられたカバーとを有して、適時にハンドピースを滅菌処理しようとする装置などの提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-280832号公報
【文献】公開実用昭64-56219号公報
【文献】特開平2-206456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献を含めた滅菌処理用の機器は、切削用バー等の交換部品や、それが装着されるハンドピースのように、患者の口腔内に挿入される切削器具の先端側部位を滅菌処理の主たる対象範囲として設計や開発がなされたものが多い。
しかし、歯科医療の現場においては、切削器具の持ち手側、特にハンドピースと接続されて切削用バーを高速回転させるための動力装置が内蔵された駆動部、そしてそれに連結されるハンドピースの把持部側等の衛生管理に関しては、従前から現在に至るまで、衛生管理上での盲点となってきた現状が見受けられるところである。
また、前記の特許文献に記載の先行技術に関しては、それぞれの切削器具の個別の外形状に適合した機器とはなされておらず、歯科医師等がこれを把持する前記の部位側に関して、遍く滅菌処理を施すような設計や仕様とはなっていない。
切削器具の持ち手側に触れる者は、歯科医療サービスの提供側である歯科医師や歯科衛生士等であるが、昨今の新型コロナウイルス感染症の問題を含め、医療サービスの提供者側をより積極的に防護することが、院内感染の予防対策においては極めて重要な課題であり、ひいては、これが医療サービスの享受者である患者の保護にも直結することは、現代社会で共有された共通認識となっている。
そのため、これまで盲点となってきた切削器具の把持部と駆動部の近傍を特に重点的な滅菌対象範囲とする歯科用の滅菌ユニット、その滅菌ユニットからなる滅菌ホルダを実現することが、本件発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
歯科治療で使用中の切削器具を格納しつつ滅菌処理を行うことが可能な滅菌ユニットとしたが、この滅菌ユニットは、本体部、発光体、拡散体、遮光体、センサ及び取付手段を有するものとした。なお、このような滅菌ユニットが予め組み込まれたタイプの滅菌ホルダに関しては、取付手段は必須の要素とはされないものである。
特に、本体部の内部には、切削器具の把持部と駆動部の接続部の近傍、特に駆動部について重点滅菌対象範囲とし、切削器具の最大直径に対応する部位より奥側において、その内径が漸次小さくなり、ハンドピースの把持部と駆動部の外形状に沿って適合する内形状とされた格納部が設けられる。一方、格納部の前端は開放されて、本体部の前面が切削器具の出入口となり、格納部の後端は開放されて、切削器具に接続されるホースのための出入口となる。また、格納部の側面の一部は開放されて、把持部や駆動部は通過不可能だが、ホースのみが通過可能なスリットとなる。なお、本件発明に係る滅菌ユニット等は、主として切削器具を対象とするものであるが、同様の歯科用治療器具にも使用することが考えられる。その場合、格納部の内形状については、切削器具や超音波スケーラー等の外形状に応じて各々に最適のものとすべきであって、適宜に変更されるものである。そして、滅菌ユニット及び滅菌ホルダの仕様によっては、異なる内形状を有する格納部をカートリッジ式で本体部から着脱して交換可能なものとすることも考えられる。
発光体は、格納部の内部にある切削器具に対して滅菌光を放射可能であって、前述の重点滅菌対象範囲に近距離から滅菌光が照射されるように、複数かつ均等に配置される。拡散体は、発光体から放射された滅菌光を重点滅菌対象範囲に隈無く拡散反射させるように、格納部の内側面に配置される。遮光体は、滅菌光の格納部からの漏洩を防止するため、格納部の切削器具とホースの各出入口、そしてスリットに設けられる。また、センサは、切削器具の格納部への格納を感知して、発光体による滅菌光の放射を開始させ、併せて、切削器具の格納部からの抜出を感知して、発光体による滅菌光の放射を停止させる。そして、取付手段によって台座に設置されて、切削器具等の滅菌ホルダとして機能する滅菌ユニットとした。
また、本体部、発光体、拡散体、遮光体、センサからなり、前記のような滅菌ユニットが予め内蔵された滅菌ホルダとした。
【発明の効果】
【0006】
歯科用の切削器具の衛生管理において、従来から盲点となっていた部位、特に駆動部及びこれと把持部との接続部の近傍、すなわち、歯科医師等がこれを把持する範囲に関して重点的な滅菌対象範囲とし、かつ、切削器具の使用の合間においても、歯科医師等が特段の意識をせずとも、滅菌処理が自動的に実行されるものとなる。
また、滅菌ユニットの格納部の内形状を、個別の切削器具の外形状に適合したものとするため、滅菌処理のむらが少なく、滅菌対象範囲に対する滅菌効率が非常に高いものとなる。
そして、様々な外形状の切削器具等に適合した異なる滅菌ユニット又は格納部を適宜に交換して組み合わせて使用することが可能となり、歯科医師の需要に応じて様々にアレンジできる滅菌ホルダ、そして、それに用いられる滅菌ユニットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】滅菌ユニットを組み込んだ滅菌ホルダである。
【
図4】拡散体の内部に配置される発光体を示す断面図である。
【
図7】切削器具を保持する吊下式の滅菌ユニットである。
【
図8】切削器具を保持する載置式の滅菌ホルダである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本件発明を実施するための形態について、図を用いて説明する。なお、以下の説明及び各図とも、本件発明の一例である。
滅菌ユニット1の外観及び構成は、
図1のようなものである。
本体部2、格納部内の発光体3、格納部内側面の拡散体4、前後及びスリットの遮光体5、センサ6、取付手段7によって構成されている。なお、
図1において、遮光体5は本体部2から取り外された状態であり、センサ6は本体部2の内部に配置されているため直接的には図示されていない。
また、本体部2の外形状は、
図1と異なるものでも良く、滅菌ユニット1の機能を満たし得る限りにおいては、自由に設計することが可能である。一方、その内形状に関しては、歯科用切削器具の外形状に適合して細長く延びる空洞状になっており、歯科医師が患者の治療等に用いる切削器具の把持部11と駆動部14の外形状に適合する形状とされたその空洞部に切削器具を格納して、これを不用意に落下しないように確実に保持させることができる格納部が形成されている。そのため、1基の滅菌ユニット1に切削器具を1本ずつ格納する仕様とした
図1のような滅菌ユニット1の場合においては、その基本的な全体形状は中空で筒型のやや細長い外観となることが多い。
【0009】
そして
図1に描かれている本体部2の格納部の両端側は閉塞されずに、その面の一部から格納部が外部に開かれている。そのため、その開放面よりも断面積が小さなホース16等に関しては、格納部に沿って本体部2の内部を通り抜けることが可能な状態となっている。なお、
図1の左下方となり、切削器具が挿入される側を滅菌ユニット1の前面又は前端、
図1の右上方であり、前面又は前端の反対となる側を後面又は後端としている。
そして、本体部2の格納部の内径に関しては一律に等しいものではなく、切削器具の形状に沿い適合するように形成・加工がなされている。すなわち、切削器具の把持部11と駆動部14の外形状に適合する形状であり、切削器具の最大直径に対応する部位より奥側においては、その内径が漸次小さくなり、切削器具の外面と格納部の内面との距離が多くの地点で略等しくなるような形状とされている。そのため、本体部2の前端側から後端側に向けて、格納部が次第に狭まるようになっており、切削器具を滅菌ユニット1の前面から挿入して、再びこれを前面から抜出することは可能であるが、後端側の内径が切削器具の太さより小さいために、切削器具が後面側からは抜け落ちない構造となっている。例えば、
図1の前面では、格納部の入口は概ね3cm程の内径であり、右側の図示されていない後面では概ね2cm程の内径である。
但し、格納される器具の長さや太さなどとも関連して、格納部の長さや内径については適宜に調整されるものである。そのため、格納される切削器具等に応じて格納部の形状を相異なるものとした滅菌ユニット1が存在し、更には、様々に異なる形状を持つ格納部を交換可能な部品として、カートリッジ式で格納部のみを本体部2から入れ替えできる滅菌ユニット1とすることも可能である。
【0010】
また、本体部2の側面の一部には、格納部の切削器具挿入方向に平行して延びる細長いスリットが設けられている。そのため、本体部2の格納部は、前後両端の開放面と、そのスリットとを介して、外部に開放された状態となっている。なお、
図2のような(吊下式)滅菌ホルダ9とするため、複数の滅菌ユニット1が並置されることも多く、スリット同士が相互に干渉し合わないように、
図1及び
図2の滅菌ユニット1では、本体部2の下方にスリット位置が設けられている。そして、このスリットの幅は、
図3に示す切削器具の把持部11や駆動部14は通過不可能だが、ホース16は通過可能なものとされている。
この本体部2の素材としては、硬質のプラスチックやアルミニウム等の軽金属を用いるなど、加工が容易で軽量堅牢な素材を選択することで、滅菌ユニット1の製造効率や歯科医師等による取り扱いも容易なものとなる。また、格納部のみを交換可能なカートリッジ式とした滅菌ユニット1など、複数の部品を組み合わせて本体部2を製造することも、又は、本体部2を一体的に成形することも、いずれも可能であるが、本体部2の内部には電気配線等が組み込まれることから、その一部には組み込み用の窪みや貫通穴が適宜に設けられる。
【0011】
また、これまで説明した本体部2以外の滅菌ユニット1の構成要素としては、発光体3、拡散体4、遮光体5、センサ6及び取付手段7がある。これらが本体部2に各々に組み込まれて、
図1及び
図2のように一体となって、滅菌ユニット1としての機能を実現するものとなる。
発光体3は、本体部2の格納部の内部に設置され、滅菌作用を有する光線、例えば、細菌の不活化効果が期待できる254nm乃至280nmの波長を持つ紫外線光などの放射源となるものである。これには、一般に普及している超小型の紫外線灯や超薄型の紫外線LEDテープ等を用いることが可能である。
そして、そのような発光体3を、格納部の内側面に埋め込んだり、貼り込むことにより、これが本体部2の内部に組み込まれる。
この発光体3は、同じく本体部2に組み込まれる給電線から供給される電気によって発光するが、格納部の中央方向に向けて、本体部2の内側面の多方向から満遍なく光が放射されるように、格納部の内側面に複数かつ効率良く配置される。また、無色透明とした拡散体4の内部に発光体3を格納して、滅菌光の照射効率を向上させることもある。なお、この発光体3の配置の一例に関しては、後ほど再度の説明を行う考えである。
そして、本体部2に格納された切削器具の重点的な滅菌処理の対象範囲となる
図3の切削器具の把持部11と駆動部14の接続部の前後付近、特にこれまでの盲点となっていた駆動部14が、これらの発光体3から発せられる滅菌光線によって略全周方向から近接照射されることにより、滅菌処理が施されるものとなっている。
【0012】
この時、発光体3から広角に放射される光線が、滅菌ユニット1の格納部内、特に中心方向に効率良く拡散されつつ伝わるように、外方向や横方向に放射される滅菌光の方向を反射して拡散させるための拡散体4が設けられることが多い。本体部2を、滅菌光が透過しない不透明のもの、例えば、有色のプラスチック素材で製造する場合には、格納部の内側面に光の反射膜を設けて、発光体3から周囲に放射される光線を反射拡散させ、格納された切削器具側を照射させるための拡散体4として機能させることが考えられる。また、本体部2の格納部をアルミニウムのような軽金属製とするような場合には、その表面側に反射面を設けるなどして、これを拡散体4とすることも考えられる。
ここで、滅菌ユニット1による重点的な滅菌対象範囲とされる切削器具の部位、すなわち、特に駆動部14と、これと把持部11との接続部近傍とに相対する本体部2の格納部の所定の範囲に関しては、滅菌光を自在に透過させて減衰効果も少ない無色透明の素材、例えばガラス層やプラスチック層などとして、層状の拡散体4を設けることも可能である。すなわち、本体部2の格納部の内面に、その前端から挿入された切削器具の把持部11及び駆動部14に至る範囲まで、
図4のようにして、透明素材による拡散体4を層状に設けるものである。そして、切削器具への滅菌光の照射効率が高まるように、拡散体4となる透明層内に、複数の発光体3を適宜に配置する。この時、この透明層と本体部2との接面には、透明層を被覆するように鏡面の反射層を配することがあり、この反射層も拡散体4の一部を構成するものとなる。そのため、透明層内の複数の発光体3から様々な方向に放射される滅菌光は、滅菌ユニット1の格納部中央方向に直進するもののほか、この拡散体4を拡散透過しつつ反射層で反射拡散されて切削器具に放射される。また、一般的には滅菌光が届き難い切削器具の下方からも確実な照射がなされる。このようにして、滅菌ユニット1の本体部2に格納された切削器具の重点滅菌対象範囲には、発光体3からの滅菌光が遍く放射されて、隈無く滅菌処理が施されることとなる。
【0013】
また、発光体3から放射される滅菌光が、本体部2の前後両端の開放面や側面のスリットから外部に漏れて、医師や患者等がこれに無用に曝されることを防ぐため、必要に応じて滅菌光を遮断するための遮光体5が設けられる。
この遮光体5は、遮光性と弾力性を併せ持つゴムやプラスチック等の素材からなる部品や、密で隙間の少ないブラシ状の部品などとし、これを本体部2の両端部の開放面やスリットの縁部などに組み込むなどして設置することが考えられる。
この時、この遮光体5に関しては、遮光性の他に、本体部2に格納される切削器具の出し入れに支障がない構造とすることが必要である。そのためには、例えば、本体部2の下方からスリットを通過させて切削器具のホース16を格納部に挿入、又は、格納部から抜出しようとする場合には、そのスリットの左右両縁にゴム膜状やブラシ状の遮光体5を設け、ホース16の移動に従って遮光体5が上下に靡くように動いて、その後には、元の中立的な位置に自ら復元する構造とすることが考えられる。また、この時、本体部2の前後両端に設けられる遮光体5については、その中心部が開口する略円形のゴム膜状やブラシ状のものとし、切削器具の保管中でも使用中でも、すなわち、格納中でも抜出後であっても、自らの弾力により遮光体5が切削器具を包み込むように閉塞されるなどして、発光体3から発せられる滅菌光が容易に外部に漏洩し難い仕組みとすることが考えられる。
図1においては、対向する2つの細長いゴム状の遮光体5が、本体部2の下方にあるスリットの両端に沿って設けられている。また、本体部2の前端側には、取り外して交換することが可能であり、下方にスリットに対応した切れ込みが設けられ、その中心部から放射状に切れ込みを入れた円形でゴム膜状の遮光体5が、本体部2から取り外された状態で図示されている。これにより、この遮光体5が本体部2に取り付けられた状態で、本体部2及び遮光体5の下方からホース16を潜らせて格納部内に導くことができるようになっている。なお、
図1には図示されていないが、後端側も同様の遮光体5が設けられている。そして、これらの遮光体5の格納部内側の表面にも、滅菌光を反射拡散する拡散体4が設けられる。これについては、反射性塗料の塗布等による簡略されたものとしても良い。
【0014】
また、発光体3への通電を制御し、滅菌光の照射を開始又は停止するためのセンサ6を、本体部2に設置することも有用である。すなわち、歯科医師による切削器具の抜出を、このセンサ6が感知することにより、発光体3への通電を遮断して、滅菌光の放射を停止する。そして、滅菌ユニット1に切削器具が挿入されて格納された時には、再び通電が開始されて、滅菌ユニット1に保管中の切削器具の滅菌処理が自動的に行われる仕組みとする。滅菌ユニット1の省エネ・節電効果を高めるとともに、歯科医師等が滅菌光線に無用に曝されるリスクを予め低減するためのものである。
このセンサ6の取り付けの方法やその位置に関しては、様々なものが考え得る。
図1の滅菌ユニット1では、センサ6は直接的には図示されてはいないが、本体部2の内部に配されて、切削器具が押し込まれたことを感知できるように、格納部の奥側に設置されるものとした。
図4が切削器具を格納した本体部2の断面図であり、切削器具のジョイント15を取り巻くように配置されたセンサ6が図示されている。
【0015】
そして、この滅菌ユニット1は、本体部2に設けられた取付手段7によって、患者が治療を受けるために横たわる歯科治療用チェアユニットに付属するワークテーブル等の台座8に接続されて、切削器具用の(吊下式)滅菌ホルダ9として使用される。
図2に、滅菌ユニット1の台座8への取付状態を示している。この図では、同じ仕様の滅菌ユニット1を5つ接続しているが、異なる種類の歯科用器具を保持させるため、格納部等の仕様が異なる滅菌ユニット1を並置しても良い。
図1の取付手段7は、本体部2から鉛直上方に向かって延びる金属製や硬質プラスチック製等の2本のプラグとなっている。これが台座8の下方に設置されるジャックと嵌合する。そのため、滅菌ユニット1は、台座8に下方から接続されて固定される構造である。なお、この取付手段7については、プラグ・ジャックの嵌合からなるものの他、スライド式やネジやボルト・ナットによるものなど、様々な接続方式が採用され得る。
また、この例では、台座8から滅菌ユニット1に電気を供給して発光体3を発光させるために、滅菌ユニット1に配置される配線と台座8の配線との接点に関しては、このプラグ状の取付手段7と台座8のジャックとが互いに嵌合して接続されることで、給電が可能となる仕組みとしている。
【0016】
図2では、台座8に5組の滅菌ユニット1が接続されており、その(吊下式)滅菌ホルダ9を前端の右下側から俯瞰した斜視図となっている。この
図2のような(吊下式)滅菌ホルダ9とするため、台座8に接続される滅菌ユニット1の数は、通常は1つのみではなく、複数の滅菌ユニット1が並置して接続されることが多い。
また、滅菌ユニット1に関しても、
図1のように、1つの本体部2に対して1つの格納部のみを設けるものではなく、1つの本体部2に対して複数の格納部を設ける仕様とすることも可能である。すなわち、
図1のような滅菌ユニット1が、予め2つ以上連なったものなどである。
【0017】
このようにして、切削器具用の(吊下式)滅菌ホルダ9においては、台座8に滅菌ユニット1が接続されて複数の格納部が並ぶこととなり、患者の治療前には、必要とされる切削器具がこれらの格納部内に並べられて保管され、歯科医師は、治療に最も適した切削器具を即時に取り出して、患者の治療を行うことができる。そして、使用後の切削器具については、滅菌ユニット1に戻されて、格納部内で重点滅菌対象範囲の滅菌処理が行われながら保管されることとなる。
前述したように、
図2は、5組の滅菌ユニット1が台座8に各々接続された状態を示すものだが、これは、滅菌ユニット1が取付手段7を介して台座8に接続された(吊下式)滅菌ホルダ9であった。言葉を代えると、交換やメンテナンス等の必要に応じて、台座8から滅菌ユニット1を随時に容易に取り外すことができる、着脱式の(吊下式)滅菌ホルダ9である。
一方、このような着脱式ではなく、滅菌ユニット1が台座8に予め組み込まれて一体となった内蔵式ホルダとすることも可能である。この場合には、取付手段7が必須の構成要素ではなくなることが多い。
【0018】
ところで、切削器具用のホルダに関しては、
図2のように、切削器具を格納する部位がワークテーブル等の下方にあり、切削器具を吊り下げるようにして保持するもののほか、
図3のように、切削器具を上方に載置して保管する方式としたホルダも存在している。
これら2種類の異なるホルダと、滅菌ユニット1との関係に関しては、後ほど再度言及したい。
【0019】
次に、歯科医師により治療のために用いられ、この滅菌ユニット1によって滅菌処理がなされる切削器具、特に回転切削器具は、
図5のような構成を有することが多い。そのため、以下においては、
図5の切削器具を事例としての説明を行う。但し、切削器具に関しても、様々な用途に使用される異なる種類のものが複数存在するため、
図5は、説明に必要な限りにおいて、その代表的な回転切削器具を簡略化して図示したものである。
【0020】
図5の切削器具は複数の構成要素からなるが、治療や衛生管理のために容易に取り外し可能な先端側の部品があり、これはハンドピース10と言われる。更に、このハンドピース10を大きく2つに分けると、歯科医師が治療行為を行う際に握るグリップとなる部位、すなわち把持部11と、治療行為の際に患者の口腔内に挿入されるヘッド12とに区分けできる。なお、把持部11やヘッド12という称呼に関しては、本件発明の説明に関し、ハンドピース10の大凡の部位を区分して特定しようとするものであり、それらの境界について厳然と線的に峻別しようとするものではなく、把持部11側又はヘッド12側との意味合いを含むものである。
そして、ハンドピース10の把持部11は、歯科医師がこれを握りやすく操作もしやすいように、表面は概ね滑らかな曲面によって形成されている。ヘッド12には、交換式で硬度等が異なる切削用バー13が適宜に装着され、この高速回転する切削用バー13によって、う歯の切除や研磨などの治療行為のほか、義歯等の装具の調整などが行われることもある。そのため、ハンドピース10の外形状には、患者の口腔内での使用に適するように先端側、すなわちヘッド12の方向に傾斜を設けたコントラタイプのハンドピース10と、装具の調整等に適して口腔外で使用されるため、把持部11からヘッド12まで真っ直ぐに延びるストレートタイプのハンドピース10とが存在する。なお、
図3乃至
図8に図示したハンドピース10は、コントラタイプのものである。
また、切削用バー13を高速回転させるための駆動力に関しては、電気を用いたマイクロモーターによるものと、圧縮空気を用いたエアモーターによるものとがある。そして、ハンドピース10の内部、すなわち把持部11やヘッド12の内側には、切削用バー13を高速回転させるための超小型のギアやローター、そして、患部の洗浄・乾燥・冷却等のために用いられる水や空気の導管であるウォーター回路やエア回路等が内蔵されている。
【0021】
ところで、切削器具の全体構成は、
図5のように、ハンドピース10及び切削用バー13のほか、駆動部14、ジョイント15、ホース16の組み合わせからなるものが多い。
駆動部14は、接続機構を有するジョイント15を介して、ホース16と接続される。そして、そのホース16を経て、駆動部14に内蔵されるマイクロモーターに電気が供給される。併せて、治療で必要とされる水や圧縮空気もホース16から駆動部14を経由してハンドピース10へと送られる。
そして、把持部11に連結された駆動部14は、マイクロモーターの稼働による回転力や圧縮空気を、ヘッド12の切削用バー13を高速回転させる駆動力として、ハンドピース10に対して供給する機能を持つ。
また、ハンドピース10で過剰となった水や空気の一部については、ハンドピース10から放出されたり、ホース16側へと回収されることがある。
【0022】
このようにして、
図5のハンドピース10、切削用バー13、駆動部14、ジョイント15、ホース16が連結されて一体となったものが、
図6の切削器具である。
歯科医師は、ハンドピース10の把持部11及び駆動部14の接続部付近を握り、切削用バー13が装着されたヘッド12を患者の口腔内に挿入して、電気や圧縮空気によって高速回転させた切削用バー13を患者のう歯や義歯等に当てて、その切除や研磨などの様々な治療行為を行うことになる。また、ヘッド12に装着される切削用バー13は、治療等の内容に応じて最も適したものに適宜交換される。
【0023】
治療等の時、歯科医師は、ハンドピース10の把持部11と駆動部14とに跨がるようにして切削器具を握ることが多い。
歯科治療においては、過去に、一部の歯科医療機関における、ハンドピース10の消毒や滅菌等の衛生処理に関し、その管理の不徹底さが社会的な問題となったことがある。現在では、徹底した衛生管理の実行が、歯科医療機関の社会的な信用をも左右し、その存続や他との差別化のための重要な要素として非常に大きな意味を持つようになっている。
【0024】
そして、そのような切削器具に係る衛生管理方法の一例としては、一般に、次のような流れで行われることも多い。
患者の治療の後、ハンドピース10は、駆動部14から取り外されて、切削用バー13もヘッド12から取り外される。ハンドピース10は、予備的に水洗いがなされるなどして、滅菌パックに封入される。そして、その状態でオートクレーブの高圧蒸気による滅菌処理等が施されて、ハンドピース10に付着した細菌等は完全に死滅する。そのため、次回の使用時には、滅菌パック内で完全無菌の清潔な状態で保管されているハンドピース10を取り出して、新たな患者の治療行為にあたることとなる。また、切削用バー13も同じようにして滅菌処理がなされることが多い。
【0025】
このように、患者の口腔内に挿入されるハンドピース10と切削用バー13とに関しては、その都度に非常に綿密な滅菌処理が施されることが多い一方で、ハンドピース10が接続される駆動部14に関しては、衛生管理上においての盲点となってきた現状がある。
駆動部14の内部には、マイクロモーターやエアモーターを始めとする精密部品や電気部品等も多数内蔵されることなどから、頻繁な水洗作業やオートクレーブ等による滅菌処理が行われることもなく、アルコール除菌シートを用いた手作業での消毒処理などに限られている場合も多い。そのため、多くの歯科医療機関においては、必ずしも、必要かつ十分な衛生管理がなされているとは言い難い状況が未だに残存している現状が予想される。これは、現下の新型コロナウイルス感染症の問題なども考慮すると、非常に憂慮される状況であると出願人は考えてきた。
言うまでもなく、感染症に係る院内感染の予防に関しては、患者はもとより、医療サービス提供者側の徹底的な衛生管理が重要であることは、従来からも広く共有されてきた共通認識である。しかし、出願人は、そのような切削器具に係る衛生管理の実情を垣間見てきた過程で、そして、自ら歯科医療の現場に居る中において、更なる衛生管理の向上に関して様々な試行と実証を行いながら、患者の治療行為に当たってきた。そして、ハンドピース10と駆動部14との接続部を重点的な滅菌対象範囲とする滅菌処理の方法に着目し、本件発明に係る滅菌ユニット1及び(吊下式)滅菌ホルダ9の実現に想到したものである。
【0026】
通常、治療を受ける患者が横臥するチェアユニットには、歯科医師が治療を行うためのワークテーブルが付随している。そして、このワークテーブルのホルダに切削器具を複数準備して、それらの中から治療に適したものを適宜に選択して、歯科医師は患者の治療を行うものである。
このホルダに関しては、下方にホース16のみが通り抜け可能な幅のスリットを設けた複数の格納部を有し、切削器具のホース16のみをスリットの下から上方の格納部に通過させ、その後、切削器具のハンドピース10や駆動部14を格納部の下端で支持させて、その内部に切削器具を吊り下げるようにして保持するタイプのものがある。
また、これとは異なり、切削器具を安定して載置することが可能な窪みが上面に複数設けられた
図3のようなホルダとし、そのホルダから少し離れた後方に、各々の切削器具に接続されたホース16を支持するための機構を有し、切削器具の不用意な落下を防止するタイプもある。
ここでの説明においては、前者のホルダによる切削器具の保管方式を吊下式、後者の保管方式を載置式と呼んで区別している。
【0027】
図1や
図2を用いて説明してきた滅菌ユニット1は、(吊下式)滅菌ホルダ9に用いるものである。なお、前述したように、取付手段7によって台座8に脱着可能に装着され、交換やメンテナンス等の必要時には、これを取り外し可能とした
図1の着脱式の滅菌ユニット1及びこれを用いた
図2の(吊下式)滅菌ホルダ9のほか、この滅菌ユニット1を台座8に予め組み込んだ内蔵式ホルダとすることも考えられる。これは、通常のハンドピースホルダと言われるものに、発光体3、拡散体4、遮光体5及びセンサ6をこれまで説明してきたようにして組み込んだものとなる。
【0028】
以下、着脱式の滅菌ユニット1を用いた(吊下式)滅菌ホルダ9に関して、実際の使用例について説明する。
図7は、
図1の滅菌ユニット1によって、
図6の切削器具が保持されている状態を斜め下方から見たものである。これは同時に、
図2の滅菌ユニット1に、
図6の切削器具を挿入して吊り下げるようにして保管している状況の拡大図でもある。
図1の滅菌ユニット1、そして、
図2の各々の滅菌ユニット1、いずれもその本体部2には、切削器具を格納して滅菌処理を行うことができる格納部が設けられている。その格納部の下方であり、本体部2の下面の一部には、
図7のように、切削器具のホース16のみが通り抜け可能で、ハンドピース10の把持部11や駆動部14の太さでは、これを通り抜けることができず、そのために切削器具がスリットをすり抜けて不用意に落下することがない幅に調整されたスリットが設けられている。
また、本体部2の前後両端は一部が開放された状態であり、その前面側の開放面は、切削器具のハンドピース10、駆動部14、ジョイント15及びホース16が通り抜け可能な入口となっており、その後面は、ホース16のみが通過可能となっている。
そのようなことから、滅菌ユニット1の内部、切削器具の格納部は、本体部2の前後両端の開放面及び下方のスリットを介して、外部に繋がり解放された状態となっていた。しかし、それらの箇所には、発光体3から格納部に向けて放射される滅菌光が漏れて、歯科医師等が無用にこれに曝されることがないように、滅菌光を遮るための遮光体5が設けられている。前面の開放部に設けられた丸型の遮光体5と、スリット両側に対向して配された2つの細長い帯状の遮光体5である。なお、図示されていない後面の開放部も同様である。
なお、この滅菌ユニット1は台座8から着脱可能であるので、治療に必要となる歯科用器具の種類に応じて格納部の形状が最適化された滅菌ユニット1を適宜に選択・交換して使用することができる。
【0029】
歯科医師の治療前準備の例として、
図5の切削器具においては、ホース16にジョイント15を介して駆動部14を接続し、更に、駆動部14にハンドピース10を接続する。そして、切削用バー13を取り付ける。これにより、
図6の切削器具が使用可能となる。その後、歯科医師等は、切削器具のホース16のみを、スリットから格納部側に導くようにして、本体部2の格納部に通過させる。そして、そのホース16に繋がった切削器具を格納部の後端側に押し込むように移動させ、把持部11と駆動部14の下側が、滅菌ユニット1の格納部下方の内側面によって支持されるようにして、切削器具を保持させる。
歯科医師は、患者の治療にあたって、必要となる都度に、滅菌ユニット1から切削器具を取り出して、う歯の切除等の治療行為を行う。そして、使用の終了後には、不要となった切削器具を滅菌ユニット1に戻して保持させる。
滅菌ユニット1に切削器具が戻された時には、
図4や
図7のように、滅菌ユニット1によって、ハンドピース10の把持部11と駆動部14との接続部付近、特に駆動部14が重点的な滅菌対象範囲として格納部内に保持される。従来からの滅菌処理方法において盲点となってきた部位である。
【0030】
本体部2には、台座8から滅菌ユニット1に電気を供給するための配線が組み込まれ、発光体3からは、切削器具を滅菌するための光が放射される。この時、格納部の内形状は、切削器具の外形状と適合したものであるため、滅菌光は切削器具に近接した位置から隈無く照射される。
また、滅菌ユニット1からの切削器具の抜出と、滅菌ユニット1への切削器具の格納を感知するセンサ6により、発光体3への電気の供給が制御され、滅菌光の放射も制御される。このセンサ6は、切削器具の格納を無線等で非接触的に感知するものとするほか、これを物理的に感知する接触式のものとしても良い。そのようにして、切削器具が滅菌ユニット1から取り出されて治療に使用されている際には、滅菌ユニット1の発光体3には通電されず、無用な滅菌光の照射がなされることはない。その後、切削器具が滅菌ユニット1に戻されたことにより、ハンドピース10の把持部11と駆動部14とが、発光体3からの滅菌光によって照射されることにより、切削器具の不使用時には、重点範囲に対する滅菌処理が自動的に実施されることとなる。
また、滅菌ユニット1のメンテナンス時には、これを台座8から取り外して点検作業や修理等を容易に行うことができる。
【0031】
次に、
図3のように、ホルダの上方に切削器具が保持される載置式のホルダに関する説明を行う。なお、これにも、
図1の滅菌ユニット1と同様のものが予め組み込まれた内蔵式と、これを取り外し可能な着脱式とが考えられる。
図8には、着脱式の(載置式)滅菌ホルダ17を図示している。内蔵式の(載置式)滅菌ホルダ17の場合は、取付手段7は不要となり、滅菌ユニット1と台座8とが一体化されたものとなる。
前後両端の出入口と上方のスリットによって、滅菌ユニット1の格納部は上方に開放されたものとなっている。そして、この(載置式)滅菌ホルダ17には、切削器具を載置することが可能な5つの格納部が、
図8のように横一列に並ぶことになる。なお、上方に並ぶスリットの幅、そして、そのスリットを閉塞するように対向して設置される2つの遮光体5の大きさは
図8よりも大きいものでも良い。このスリット幅等の拡大によって、歯科医師等による切削器具の出し入れが容易になり、より使い易い(載置式)滅菌ホルダ17とすることができる。
【0032】
図8では、左端の滅菌ユニット1のみに切削器具が格納されている状態を示している。
治療前、歯科医師は、切削器具のホース16を上方のスリットから潜らせて滅菌ユニット1の内部に入れ込む。そして、切削器具の把持部11まで格納部の奥に押し込むようにして、滅菌ユニット1の上方に切削器具を載置する。その状態を表したものが
図8である。この状態において、図示されていないセンサ6が切削器具の格納を検知し、切削器具の近距離で発光体3から滅菌光が照射されて、切削器具の駆動部14と、これと把持部11との接続部近傍を中心とした滅菌処理が自動的に行われる。治療のために切削器具を取り出した場合、センサ6がこれを感知し、発光体3による滅菌光の照射が停止される。そして、切削器具の使用後には、切削器具の格納がセンサ6によって確認されると、発光体3からの滅菌光の照射が再開される。
このようにして、歯科医師が特別に意識をせずとも切削器具の滅菌処理が自動的かつ継続的に実行されることとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 滅菌ユニット
2 本体部
3 発光体
4 拡散体
5 遮光体
6 センサ
7 取付手段
8 台座
9 (吊下式)滅菌ホルダ
10 ハンドピース
11 把持部
12 ヘッド
13 切削用バー
14 駆動部
15 ジョイント
16 ホース
17 (栽置式)滅菌ホルダ