IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トクリップ バイオファーム カンパニーの特許一覧

特許7050360弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物
<図1>
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図1
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図2
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図3
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図4
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図5
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図6
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図7
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図8
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図9
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図10
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図11
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図12
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図13
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図14
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図15
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図16
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図17
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図18
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図19
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図20
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図21
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図22
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図23
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図24
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図25
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図26
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図27
  • 特許-弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物 図28
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20220401BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220401BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61K35/74 A ZNA
A61P11/06
A61P11/00
A61P1/00
A61P31/04
A61P31/16
A61K45/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020507974
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2018004800
(87)【国際公開番号】W WO2018199628
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-10-23
(31)【優先権主張番号】10-2017-0053512
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0029765
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519379628
【氏名又は名称】トクリップ バイオファーム カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DOKNIP BIOPHARM CO.
【住所又は居所原語表記】#1005,(Sangnam-dong,Seoul Medical Center)73,Sangnam-ro,Seongsan-gu,Changwonsi,Gyeongsangnam-do 51504,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドン グォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スン ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ボ ギョン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0010906(KR,A)
【文献】Infect. Immun., (2007), 75, [5], p.2469-2475
【文献】Eur. Respir. J., (2011), 37, [1], p.53-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/74
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化した肺炎球菌菌株を含む、炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染疾患、肺炎球菌を除いた細菌感染性疾患またはアレルギー性疾患の予防または治療用薬剤学的組成物であり、
前記弱毒化した肺炎球菌菌株は、配列番号1で表示されるpep27遺伝子核酸配列の1番~53番が欠失されたものであり、
前記炎症性疾患は、喘息、気管支炎、肺炎、炎症性腸疾患および大腸炎から選択されるものであり、
前記呼吸器ウイルスは、インフルエンザウイルスであり、
前記細菌感染性疾患は、グラム陽性菌感染性疾患およびグラム陰性菌感染性疾患から選択されるものであり、
前記グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌であり、
前記グラム陰性菌は、肺炎桿菌であり、
前記アレルギー性疾患は喘息であることを特徴とする薬剤学的組成物。
【請求項2】
血清型-非依存的に免疫化させるものである、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記弱毒化した肺炎球菌菌株は、Th1サイトカインまたはTh2サイトカインの生成を抑制する、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記Th1サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)およびインターロイキン-12(IL-12)から選択されるものであり、前記Th2サイトカインは、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)およびインターロイキン-13(IL-13)から選択されるものである、請求項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
肺、脾臓、血液または脳に非侵襲性である、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項6】
腹腔内または粘膜内に投与するための、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項7】
咽喉粘膜内に投与するための、請求項に記載の薬剤学的組成物。
【請求項8】
薬剤学的に許容可能な担体または免疫補助剤をさらに含む、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物、およびその炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染または細菌感染性疾患の予防または治療のための用途に関する。
【0002】
また、本願は、弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物、およびそのアレルギー性疾患の予防または治療のための用途に関する。
【背景技術】
【0003】
抗原を経鼻(nasal)または経口(oral)投与すると、調節T(regulatory T;Treg)細胞が誘導され、これによって、標的臓器で粘膜免疫寛容が誘導されるという事実が知られている(Faria and Weiner,2005)。マウスで粘膜免疫寛容が誘導されると、粥状動脈硬化症(Maron et al,2002)を含む多様な自己免疫疾患が抑制されると報告された(Faria and Weiner,2005)。したがって、粘膜免疫寛容原理は、動物およびヒトに適用され得る。抗原を複数回投与して粘膜を刺激すると、T細胞がIL-10やTGF-β1のような抗炎症性サイトカイン分泌を誘導して組織を防御して粘膜免疫寛容を誘導する(Faria and Weiner,2005;Weiner,2001)。粘膜表面の免疫寛容を維持するために、特定類型のTreg細胞が優先的に誘導されるが、誘導機序は、まだ明確に知られていない。
【0004】
ただし、現在の粘膜ワクチンは、免疫増加剤なしには十分な粘膜免疫反応を誘導するほど効能が強くないのが現状である。粘膜免疫増加剤(Mucosal adjuvants)は、抗原投与だけでは免疫寛容誘導効率が低い場合に使用され、例えばコレラ毒素Bサブユニット(cholera toxin B subunit;CTB)がその例である(Faria and Weiner,2005)。しかしながら、咽喉接種後に現れるコレラ毒素の免疫増加効果は、細菌を認識して媒介され(Kim et al,2016)、微生物系が必須の役割をすることを示すので、必要に応じて弱毒化した細菌を免疫増加剤として使用することが好ましいことを示す。すなわち、免疫増加剤のない粘膜ワクチンの概念は、まだ立証されていない。
【0005】
また、粘膜ワクチンがワクチンの製造に使用された抗原と直接的に関連した病気外の多様な病気にも効果を示すことができるかについても、まだ報告されたことがなく、現在使用される免疫療法は、予防接種に使用される抗原のみに対して防御される。特に、肺炎球菌病気の予防のためには、23価多糖類ワクチンや13価接合ワクチンが使用されるが、23価多糖類ワクチンは記憶反応がなく、13価接合ワクチンは、90種類以上の血清型のうち13種類の血清型だけを防御することができる(Kalin,1998)。
【0006】
喘息は、全世界的に子供と大人のいずれらにおいて最もありふれた慢性疾患の一つであり(Anandanなど、2010)、全世界喘息患者の数は、概略3億人であって、これによって、莫大な医療費用が支出されている(WHO,2007)。全世界的に喘息患者の数は、毎年増加して、2025年まで1億人以上がさらに増加すると予測される。米国病気管理本部の統計によれば、米国喘息患者の比率は、1980年3.1%から2010年8.4%まで増加し、継続して増加する傾向にある(https://www.cdc.gov/asthma)。また、70%の喘息患者がアレルギーを持っている[GINA guidelines,2016]。2015年韓国での喘息患者は、166万人(健康保険審査評価院2015年統計)であり、韓国人の10大慢性疾患のうち病気負担順位6位に該当する。
【0007】
喘息およびその他アレルギー性疾患の発病は、西欧生活様式から始まった環境変化および都市化の増加と密接な関連がある(GINA guidelines,2016)。喘息は、発病原因が多様な異質な病気であるが、主に炎症により引き起こされる。喘息患者は、類似した症状を示すが、その作用機序はそれぞれ異なる(GINA guidelines,2016;National Asthma Education and Prevention Program,2007)。また、気道の炎症様相は、喘息種類によって異なる(GINA guidelines,2016)。喘息の典型的な病因機序は、免疫グロブリンE(IgE)が媒介されて現れる好酸球気道炎症であり、病理学および喘息研究の多くの研究結果がTh2関連後天的免疫反応に焦点を合わせてきた(GINA guidelines,2016)。しかしながら、最近の研究は、先天免疫とマイクロバイオーム、および体内の微生物などに集中している(Bjorkstenなど、2001;Kalliomakiなど、2001;Pendersなど、2007;Hiltyなど、2010;Greenなど、2014;Ozturkなど、2017)。
【0008】
米国喘息およびアレルギー財団(Asthma and Allergy Foundation of America,http://www.aafa.org/)によれば、現在使用される喘息関連薬物は、症状を軽減させて管理することができるだけであり、喘息を完治させることはできない。喘息の特徴は、アレルギー性過敏反応(airway hyper-responsiveness;AHR)で過度な気管支収縮反応が起こることである。たとえ吸入グルココルチコイドステロイドを規則的に使用して死亡率が去る数年の間顕著に減少したが、まだ毎年約250,000人が喘息で死亡していて、世界的に喘息による負担が非常に大きい(Suissaなど、2000)。喘息は、発病回数によって軽症(一ヶ月に1~2回発生)、重軽症(毎週1~2回発生)、および重症(毎日喘息発生)に分類され、重症の場合、3~4個の薬を毎日服用しなければならず、軽症の場合にも、定期的な薬の服用が要求される。喘息は、呼吸器炎症で気管支が収縮して、呼吸が困るときには、気道拡張用吸入剤を直ちに噴霧しなければならない。また、喘息患者および重症喘息患者の一部は、副腎皮質ホルモンに対して全く反応がなくて、臨床的効果を経験せずに、疾患で苦労したり死亡することもある(Durhamなど、2011)。最近発売された抗IL-5製剤は、4週に一回注射して喘息症状を緩和させることができる。しかしながら、喘息を完治させることができるかまたは予防することができる薬物は、まだ開発されたり報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腸疾患、感染、粥状動脈硬化症および上皮病変のような炎症性因子を含む炎症性疾患に対する予防および治療方法が開発されたことがあるが、これは、依然として炎症を起こしたり病気を誘発する特定のマーカーを利用することに限定されてきた。これと関連して、粘膜免疫は、粘膜関連疾患および炎症性疾患を抑制すると予想されたので、本願では、肺炎球菌全菌ワクチンの粘膜免疫を利用した多様な病気に対する抗炎症療法およびその他疾患に対する防御方法を新しく提示しようとした。また、粘膜免疫の免疫寛容特性を利用した粘膜投与ワクチンが、腸炎症および感染疾患などを予防または治療する新しい方法になり得るを立証しようとした。
【0010】
また、本願では、粘膜に肺炎球菌全菌ワクチンを接種することによって、広範囲な炎症性疾患、例えば腸の炎症、呼吸器感染および炎症で誘発される病変はもちろん、呼吸器ウイルスおよび細菌感染性疾患に対しても保護できる新しい方法を開発しようとした。
【0011】
また、現在使用される喘息薬は、狭くなった気管支を拡張させる症状緩和剤(気管支拡張剤)と気管支炎症を抑制して喘息発作を予防する病気調節剤(抗炎症剤)に区分されるが、これらは、喘息を完治したり予防することはできない。したがって、本願では、喘息を含むアレルギー性疾患を予防または治療できる新規の手段として肺炎球菌を含む薬剤学的組成物を提供しようとした。特に、肺炎球菌をワクチンなどの薬剤学的組成物に使用時に毒性が強くて不活性化した菌を使用したり、菌の特定成分だけを分離精製して使用した短所を改善するために、十分に弱毒化して、咽喉感染、腹腔内注入および血液内注入時にも安全性を確保することができる弱毒化肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物を提供しようとした。
【0012】
しかしながら、本願が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願は、弱毒化した肺炎球菌菌株を含む、炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染疾患、または肺炎球菌を除いた細菌感染性疾患の予防または治療用薬剤学的組成物を提供しようとする。
【0014】
また、本願では、pep27遺伝子の変異で弱毒化した肺炎球菌菌株の、アレルギー性呼吸器疾患を含む多様なアレルギー性疾患の予防または治療のための用途、およびそのために薬剤学的組成物を提供しようとする。
【0015】
上述した課題解決手段は、単に例示的なものであって、本発明を制限しようとする意図と解すべきものではない。上述した例示的な具現例の他にも、図面および発明の詳細な説明に記載された追加的な具現例および実施例が存在することができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、肺炎球菌全菌ワクチンを粘膜に接種することによって、肺および脾臓で免疫化により誘導される遺伝子によって炎症関連疾患を予防および/または治療することができる。
【0017】
特に、既存のワクチンは、特定の抗原成分に対する防御だけを提供することができるが、本願発明によって肺炎球菌粘膜ワクチンを使用する場合、ウイルスおよび細菌感染性疾患だけでなく、他の臓器の炎症疾患の防御能を含む広範囲な病気の予防および/または治療効果を期待することができる。また、本願発明による肺炎球菌全菌ワクチンは、粘膜に投与時に既存の粘膜ワクチンとは異なって、免疫補助剤(adjuvant)を使わずとも、多様な疾患に対して防御効果を提供することができる。
【0018】
本願発明は、肺炎球菌pep27変異株を利用して喘息をはじめとするアレルギー疾患の予防ないし治療方法を提供することができる。特に、肺炎球菌pep27変異株の接種によって喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、および慢性閉塞性肺疾患などを含むアレルギー性呼吸器疾患の他にも、じんましん、結膜炎、花粉症およびアトピーなどのような他のアレルギー性疾患を予防したり治療することができる。
【0019】
さらに、本願発明による肺炎球菌pep27変異株は、十分に弱毒化していて、咽喉感染、腹腔内注入および血液内注入時にも安全性が確保されるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の一実施例による肺(図1)および脾臓(図2)でのシステム生物学分析による肺炎球菌ワクチン機能分析結果の概略図である。マウスをTHpep27突然変異体(Δpep27)で2週間隔で3回免疫化し、最終免疫化2週後、肺および脾臓を収穫した後、トータルRNAを抽出して高速大量シーケンシングを実施し、次に、遺伝子発現をIngenuity Pathway Analysisで分析した。図1で、免疫化した肺組織の遺伝子は、胃腸炎および大腸の異常を抑制することを提示し、図2で、脾臓の遺伝子は、インフルエンザウイルス感染に対する保護効果を示す。
図2】本願の一実施例による肺(図1)および脾臓(図2)でのシステム生物学分析による肺炎球菌ワクチン機能分析結果の概略図である。マウスをTHpep27突然変異体(Δpep27)で2週間隔で3回免疫化し、最終免疫化2週後、肺および脾臓を収穫した後、トータルRNAを抽出して高速大量シーケンシングを実施し、次に、遺伝子発現をIngenuity Pathway Analysisで分析した。図1で、免疫化した肺組織の遺伝子は、胃腸炎および大腸の異常を抑制することを提示し、図2で、脾臓の遺伝子は、インフルエンザウイルス感染に対する保護効果を示す。
図3】本願の一実施例による肺でのシステム生物学分析結果の概略図である。マウスに2週間隔でΔpep27変異株を咽喉で3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に、mRNAを肺から分離し、高速大量シーケンシングを実施した。肺の配列データに対するIPAネットワーク分析を示したものであり、IL-6、IL-23R、MUC2、IFN type 1、TGF betaなどが誘導されるが、CCR3は抑制されることを意味する。
図4】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種してTreg細胞が誘導されるかを確認した実験結果である。図4は、マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉で3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に脾臓細胞を分離し、Th1(CD4,Tbet)、Th2(CD4,GATA3)、Th17(CD4,RORγt)およびTreg(CD4,Foxp3)に対する蛍光細胞マーカーで標識したものである。その後、マーカーを流動細胞計測法で検出した。図5および図6は、最後のワクチン接種後7日目に、脾臓細胞(図5)または血清(図6)のサイトカインをELISAで測定した結果である。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05、**、P<0.01。
図5】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種してTreg細胞が誘導されるかを確認した実験結果である。図4は、マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉で3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に脾臓細胞を分離し、Th1(CD4,Tbet)、Th2(CD4,GATA3)、Th17(CD4,RORγt)およびTreg(CD4,Foxp3)に対する蛍光細胞マーカーで標識したものである。その後、マーカーを流動細胞計測法で検出した。図5および図6は、最後のワクチン接種後7日目に、脾臓細胞(図5)または血清(図6)のサイトカインをELISAで測定した結果である。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05、**、P<0.01。
図6】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種してTreg細胞が誘導されるかを確認した実験結果である。図4は、マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉で3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に脾臓細胞を分離し、Th1(CD4,Tbet)、Th2(CD4,GATA3)、Th17(CD4,RORγt)およびTreg(CD4,Foxp3)に対する蛍光細胞マーカーで標識したものである。その後、マーカーを流動細胞計測法で検出した。図5および図6は、最後のワクチン接種後7日目に、脾臓細胞(図5)または血清(図6)のサイトカインをELISAで測定した結果である。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05、**、P<0.01。
図7】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種してIL-10およびIL-17を誘導した実験結果である。マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉に3回ワクチン接種し、最後のワクチン接種後7日目にmRNAを肺から分離してqPCRを利用してIL-17(図7)とIL-10(図8)遺伝子水準発現の測定に使用した。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05。
図8】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種してIL-10およびIL-17を誘導した実験結果である。マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉に3回ワクチン接種し、最後のワクチン接種後7日目にmRNAを肺から分離してqPCRを利用してIL-17(図7)とIL-10(図8)遺伝子水準発現の測定に使用した。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05。
図9】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種して脾臓で中央記憶T細胞とメモリTfh細胞を活性化した実験結果である。マウス(n=3)に2週間隔でΔpep27を咽喉に3回接種し、最後の予防接種7日後脾臓細胞を分離して中心記憶T細胞(CD4、CCR7、CD62L)および記憶Tfh細胞(CD4、CXCR5、CCR7)に対する蛍光細胞マーカーで標識した。以後、蛍光マーカーを流動細胞計測法で検出した。統計的有意性は、ANOVAで分析した;、P<0.05。
図10】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種して多様な免疫グロブリンと亜型を誘導した実験結果である。マウス(n=6)に2週間隔でΔpep27を咽喉に3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に血清(図10)と気管支肺胞洗浄液BAL(図11)で三つの類型の肺炎球菌全体細胞に対する抗体力価を測定した。統計的有意性は、ANOVAで分析した;P<0.05、**、P<0.01。
図11】本願の一実施例によってマウスにΔpep27を接種して多様な免疫グロブリンと亜型を誘導した実験結果である。マウス(n=6)に2週間隔でΔpep27を咽喉に3回接種し、最後のワクチン接種後7日目に血清(図10)と気管支肺胞洗浄液BAL(図11)で三つの類型の肺炎球菌全体細胞に対する抗体力価を測定した。統計的有意性は、ANOVAで分析した;P<0.05、**、P<0.01。
図12】本願の一実施例によってΔpep27接種がインフルエンザ感染後の2次肺炎球菌感染を防御することができるかを確認した実験結果である。マウス(9~10/グループ)を1週間隔でΔpep27で3回咽喉接種し、最終免疫化1週間後、マウスの咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、眼窩採血してサイトカインを分析したり(図12)、最終免疫化1週後にマウスから血清を回収して特定抗原(図13)に対するIgG水準をELISAで測定した。二つの群間の有意な差異は、unpaired t-testで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染10日後、肺炎球菌D39を鼻腔内経路を介して感染させた後、生存を14日間モニタリングした(図14)。統計的有意性は、Mentel-cox testで分析した;**p<0.005。肺炎球菌D39感染24時間後、肺均質物を血清で培養して細菌数(図15)を測定した。統計的有意性は、One way ANOVAで分析した。
図13】本願の一実施例によってΔpep27接種がインフルエンザ感染後の2次肺炎球菌感染を防御することができるかを確認した実験結果である。マウス(9~10/グループ)を1週間隔でΔpep27で3回咽喉接種し、最終免疫化1週間後、マウスの咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、眼窩採血してサイトカインを分析したり(図12)、最終免疫化1週後にマウスから血清を回収して特定抗原(図13)に対するIgG水準をELISAで測定した。二つの群間の有意な差異は、unpaired t-testで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染10日後、肺炎球菌D39を鼻腔内経路を介して感染させた後、生存を14日間モニタリングした(図14)。統計的有意性は、Mentel-cox testで分析した;**p<0.005。肺炎球菌D39感染24時間後、肺均質物を血清で培養して細菌数(図15)を測定した。統計的有意性は、One way ANOVAで分析した。
図14】本願の一実施例によってΔpep27接種がインフルエンザ感染後の2次肺炎球菌感染を防御することができるかを確認した実験結果である。マウス(9~10/グループ)を1週間隔でΔpep27で3回咽喉接種し、最終免疫化1週間後、マウスの咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、眼窩採血してサイトカインを分析したり(図12)、最終免疫化1週後にマウスから血清を回収して特定抗原(図13)に対するIgG水準をELISAで測定した。二つの群間の有意な差異は、unpaired t-testで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染10日後、肺炎球菌D39を鼻腔内経路を介して感染させた後、生存を14日間モニタリングした(図14)。統計的有意性は、Mentel-cox testで分析した;**p<0.005。肺炎球菌D39感染24時間後、肺均質物を血清で培養して細菌数(図15)を測定した。統計的有意性は、One way ANOVAで分析した。
図15】本願の一実施例によってΔpep27接種がインフルエンザ感染後の2次肺炎球菌感染を防御することができるかを確認した実験結果である。マウス(9~10/グループ)を1週間隔でΔpep27で3回咽喉接種し、最終免疫化1週間後、マウスの咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、眼窩採血してサイトカインを分析したり(図12)、最終免疫化1週後にマウスから血清を回収して特定抗原(図13)に対するIgG水準をELISAで測定した。二つの群間の有意な差異は、unpaired t-testで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染10日後、肺炎球菌D39を鼻腔内経路を介して感染させた後、生存を14日間モニタリングした(図14)。統計的有意性は、Mentel-cox testで分析した;**p<0.005。肺炎球菌D39感染24時間後、肺均質物を血清で培養して細菌数(図15)を測定した。統計的有意性は、One way ANOVAで分析した。
図16】本願の一実施例によってΔpep27ワクチンのインフルエンザウイルス複製抑制による防御効果を実験したものである。マウス(10匹/群)咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、マウスの体重を11日間観察した(図16)。統計的有意性はone-way ANOVAで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染5日後、肺均質物の上澄み液を収穫した後、各群のウイルス力価をTCID50/mlで測定した(図17)。有意性は、one-way ANOVAで分析した;***p<0.001。
図17】本願の一実施例によってΔpep27ワクチンのインフルエンザウイルス複製抑制による防御効果を実験したものである。マウス(10匹/群)咽喉にインフルエンザウイルスを感染させた後、マウスの体重を11日間観察した(図16)。統計的有意性はone-way ANOVAで分析した;***p<0.001。インフルエンザ感染5日後、肺均質物の上澄み液を収穫した後、各群のウイルス力価をTCID50/mlで測定した(図17)。有意性は、one-way ANOVAで分析した;***p<0.001。
図18】本願の一実施例によってΔpep27接種がグラム陰性細菌感染を予防することができるかを実験した結果である。マウス(3匹/群)鼻腔経路を通じてΔpep27を3回接種し、最終免疫化10日後、マウスに肺炎桿菌(K.pneumoniae)を感染させた。肺炎桿菌感染24時間後、各臓器の菌数は、血液寒天に塗抹培養して決定した;**P<0.01。
図19】本願の一実施例によってΔpep27接種がグラム陽性細菌感染を予防することができるかを実験した結果である。マウス(3匹/群)鼻腔でΔpep27を3回免疫化させ、最終免疫化10日後、マウスに黄色葡萄状球菌を感染させた。黄色葡萄状球菌感染24時間後、各臓器の菌数を血液寒天に塗抹、培養して測定した;P<0.05。
図20】本願の一実施例によってΔpep27接種がデキストランサルフェートナトリウム(DSS)で誘導される炎症性腸疾患で体重減少を抑制するかを実験した結果である。Δpep27変異体をマウス(n=5匹/群)鼻腔に3回接種した後、経口経路を通じて飲用水に5%DSSを投与して誘導される大腸炎(炎症性腸疾患)で体重減少が緩和された(図20)。基礎体重減少百分率の時間経過をDSSで処理して9日間観察した。統計的有意性は、one way ANOVA分析後、Bonferroni’s testを行った。臨床病気活動指数は、9日目に治療が中断されるまで毎日評価した(図21)。大腸炎の進行は、体重減少、便の一貫性、直腸出血および/または便での血液量を測定して評価した。マウスの病的状態(立毛[piloerection]、昏睡状態)に対しても毎日観察した。
図21】本願の一実施例によってΔpep27接種がデキストランサルフェートナトリウム(DSS)で誘導される炎症性腸疾患で体重減少を抑制するかを実験した結果である。Δpep27変異体をマウス(n=5匹/群)鼻腔に3回接種した後、経口経路を通じて飲用水に5%DSSを投与して誘導される大腸炎(炎症性腸疾患)で体重減少が緩和された(図20)。基礎体重減少百分率の時間経過をDSSで処理して9日間観察した。統計的有意性は、one way ANOVA分析後、Bonferroni’s testを行った。臨床病気活動指数は、9日目に治療が中断されるまで毎日評価した(図21)。大腸炎の進行は、体重減少、便の一貫性、直腸出血および/または便での血液量を測定して評価した。マウスの病的状態(立毛[piloerection]、昏睡状態)に対しても毎日観察した。
図22】本願の一実施例によってΔpep27接種がデキストランサルフェートナトリウム(DSS)で誘導される結腸炎症を予防することができるかを実験した結果である。Δpep27変異体をマウス(n=5匹/群)鼻腔で3回接種した後、経口経路を介して飲用水に5%DSSを添加して投与することによって誘導される大腸炎(炎症性腸疾患)で体重減少が緩和された(図20)。DSS処理9日目に結腸を検査した。DSS処理9日目には、結腸の長さ(図22)および重さ(図23)を測定した。
図23】本願の一実施例によってΔpep27接種がデキストランサルフェートナトリウム(DSS)で誘導される結腸炎症を予防することができるかを実験した結果である。Δpep27変異体をマウス(n=5匹/群)鼻腔で3回接種した後、経口経路を介して飲用水に5%DSSを添加して投与することによって誘導される大腸炎(炎症性腸疾患)で体重減少が緩和された(図20)。DSS処理9日目に結腸を検査した。DSS処理9日目には、結腸の長さ(図22)および重さ(図23)を測定した。
図24】本願の一実施例によってΔpep27接種が大腸で炎症性サイトカイン遺伝子発現を抑制するかを実験した結果である。Balb cマウスに14日間飲用水に5%DSSを添加して炎症性腸疾患を誘導した。PBS+水は、陰性対照群に使用した。IL-1β、IL-6、IL-17AおよびTNF-αのmRNA発現をリアルタイム定量的PCRを使用して測定した。実験値は、平均±SEMで表示され、P<0.05は、有意性があるものと見なした。
図25】本願の一実施例によるΔpep27変異株のアレルギー疾患予防効果実験のフローチャート(A)および多様なアレルギー誘発サイトカイン分泌抑制効果を示す実験結果(B)である。
図26】本願の一実施例によるΔpep27変異株のアレルギー疾患予防効果を見せる組織化学的染色結果である。
図27】本願の一実施例によるΔpep27変異株のアレルギー疾患治療効果実験のフローチャート(A)および多様なアレルギー誘発サイトカイン分泌抑制効果を示す実験結果(B)である。
図28】本願の一実施例によるΔpep27変異株のアレルギー疾患治療効果を示す組織化学的染色結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、添付の図面を参照して本願の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本願の実施例を詳細に説明する。しかしながら、本願は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。そして、図面において本願を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略した。
【0022】
本願明細書の全体のおいて、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
本願明細書の全体で使用される程度の用語「約」、「実質的に」等は、言及された意味に固有な製造および物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使用され、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用するのを防止するために使用される。本願明細書の全体で使用される程度の用語「~(する)段階」または「~の段階」は、「~のための段階」を意味しない。
【0024】
本願明細書の全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合せ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素よりなる群から選択される一つ以上の混合または組合せを意味するものであって、前記構成要素よりなる群から選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0025】
本願明細書の全体において、「Aおよび/またはB」の記載は、「A、B、またはAおよびB」を意味する。
【0026】
本願明細書の全体において、「肺炎球菌」は、肺球菌または肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)とも命名されるグラム陽性(Gram-positive)細菌であって、時間が過ぎて分裂するにつれて菌が継続して連なって鎖状になることが観察されて、連鎖球菌科に分類され、肺炎の主な原因と知られている。
【0027】
本願明細書の全体において、「pep27」は、27個のポリペプチドから構成されており、vex伝達体(transporter)により分泌されて、生長抑制および細胞死滅(apoptosis)を誘導するが、具体的には、膜-結合ヒスチジンタンパク質キナーゼ(membrane-bound histidine protein kinase)であるvncSおよび細胞質エフェクター(cytoplasmic effector)である反応調節子(response regulator)vncRにより発現が調節されて、細胞死滅を誘導するものと知られている(Novak et al.,1999)。pep27遺伝子またはそれからコーディングされるタンパク質は、肺炎球菌の血清型ごとに異なる名前と命名され、pep27の遺伝子配列またはそのペプチド配列の微差が存在することができるが、前記記述したように、本発明のpep27遺伝子は、実質的にpep27と同じ機能を行う遺伝子であれば、血清型に制限されず、これを損傷させることによって、本発明の弱毒化した肺炎球菌菌株を製造することができる。好ましくは、前記pep27遺伝子と実質的に同じ機能を行う肺炎球菌の遺伝子を全部含む。より好ましくは、本発明のpep27遺伝子は、配列番号1で表示されるpep27ペプチドのアミノ酸をコーディングする遺伝子が突然変異されることによって損傷することがある。
【0028】
本願明細書の全体において、「弱毒化」とは、毒性のある菌株が変形前より少なく毒性のある菌株であるか、弱い病原菌になる方式で変形することを意味し、このような菌株は、宿主内で依然として複製分裂することができる間、臨床的病気を誘発することができる能力が顕著に減少したことをいう。好ましくは、本発明の弱毒化した菌株は、毒性または病原性がワクチン用に投与を許容できるほど減少した菌株であり、より好ましくは、菌株が宿主内で依然として複製することができながらも、臨床的病気を誘発することができない程度まで弱毒化させることを意味する。また、弱毒化突然変異は、本発明の弱毒化突然変異を製造するための多様な方法、例えば点突然変異、関連したウイルス間の配列交換、またはヌクレオチド欠失により達成され得る。
【0029】
本願明細書の全体において、「突然変異」は、遺伝子の遺伝的機能を変化させるすべての行為を意味し、具体的には、遺伝子の突然変異は、生物の様々な変異のうち遺伝子の量的または質的な変化によりできた変異をいう。
【0030】
本願明細書の全体において、「アレルギー」は、人体の或る物質に対する過敏症、すなわち外部から入ってきた物質に対する身体免疫系の過度な反応により誘発される多様な疾患、病気または異常事態を意味する。本願の組成物に適用されるアレルギー疾患としては、好ましくは、第I型即時型過敏反応および第IV型遅延型過敏反応である。第I型即時型過敏反応は、気管支喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎、結膜炎、中耳炎、じんましんおよびアナフィラキシーショック(anaphylactic shock)を含むことができ、第IV型遅延型過敏反応は、接触性過敏症、接触性皮膚炎、細菌アレルギー、真菌アレルギー、ウイルスアレルギー、薬物アレルギー、甲状腺炎およびアレルギー性脳炎を含むことができる。第I型即時型過敏反応は、2段階に分けられ、第1段階は、アレルゲンの体内侵入によってIgEおよびIgG1の分泌を抑制し、IgG2aの分泌を増加させるIL-12およびIFN-γを生産するTh1細胞反応とIL-4、IL-5およびIL-13等を生産するTh2細胞反応の均衡がTh2側に偏ると、Th2の過度な免疫反応によりIL-4およびIL-13等が分泌され、その影響によってB細胞が生産したIgE特異抗体が肥満細胞(mast cell)および好塩基球(basophil)の表面に付着することによって、アレルギー発症が準備された段階である。これをアレルゲンに減作(sensitization)されたという。アレルギー発症の第2段階は、初期反応と後期反応に分けられ、初期反応は、アレルゲンが体内に再侵入して肥満細胞を刺激し、脱顆粒反応を誘発し、この際、放出された、ヒスタミン、脂質代謝物、サイトカインなどによる血管拡張などが起こるものであり、後期反応は、当該組織に好中球、好酸球、大食細胞、Th2細胞、好塩基球などが浸潤して活性化することによって、炎症が誘発されて、アトピー皮膚炎、鼻炎、喘息などを起こすものである。
【0031】
本願明細書の全体において、「予防」とは、組成物の投与によって疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0032】
本願明細書の全体において、「治療」とは、組成物の投与によってすでに誘発された疾患の症状が好転されるか、有利になるすべての行為を意味する。
【0033】
本願明細書の全体において、「ワクチン」とは、感染疾患を予防するための免疫のために使用される抗原であって、弱毒化させた微生物またはウイルスとして製造され、特定の感染症に対して人工的に免疫原性を収穫するために弱化させたり死滅させた病原微生物を個体内に投与することを意味する。ワクチンによって刺激を受ければ、個体内の免疫システムが作動して抗体を生成することになり、その感受性を維持する間、再感染が起こる場合、はやい時間内に抗体を効果的に生成することによって疾患を克服できることになる。ただし、本願発明による弱毒化した肺炎球菌を含むワクチンは、免疫寛容原理によって既存のワクチンとは異なって、特定抗原成分に対する防御だけでなく、ウイルスおよび細菌感染性疾患を含む広範囲な病気の予防および治療効果を有することができる。
【0034】
本願明細書の全体において、「ermB」は、マクロライド(macrolide)に耐性を有することができるようにする遺伝子を意味し、マクロライドは、肺炎球菌の治療においてペニシリンの代替薬剤として使用されてきたものであって、エリスロマイシン(erythromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、アジスロマイシン(azithromycin)等がこれに属する。
【0035】
以下、本願の弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物、およびその炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染または細菌感染性疾患の予防または治療のための用途に対して具現例および実施例と図面を参照して具体的に説明することとする。しかしながら、本願がこのような具現例および実施例と図面に制限されるものではない。
【0036】
本願の第1態様は、弱毒化した肺炎球菌菌株を含む、炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染疾患、または肺炎球菌を除いた細菌感染性疾患の予防または治療用薬剤学的組成物を提供することができる。例えば、前記薬剤学的組成物はワクチン組成物を含むことができる。
【0037】
本願の一具現例によれば、前記弱毒化した肺炎球菌菌株は、pep27遺伝子の一部または全部が欠失されたものであってもよく、例えば、配列番号1で表示されるpep27遺伝子核酸配列の1番~53番が欠失されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
本願の一具現例によれば、前記弱毒化した肺炎球菌菌株は、配列番号1で表示されるpep27遺伝子核酸配列の1番~53番の欠失およびermBカセットで置換した突然変異を含む弱毒化した肺炎球菌菌株であってもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記弱毒化した肺炎球菌菌株は、韓国特許登録第10-1252911号に開示されたpep27突然変異を含む弱毒化した肺炎球菌菌株であってもよい。
【0039】
本願の一具現例によれば、前記炎症性疾患は、喘息、気管支炎、鼻炎、炎症性腸疾患、胃腸炎、大腸炎、クローン病、すい臓炎、粥状動脈硬化症および関節炎から選択されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。例えば、炎症性疾患の予防または治療は、大腸炎症遺伝子のような炎症関連遺伝子の発現抑制による効果であってもよい。例えば、前記炎症性疾患は、腸および呼吸器感染疾患に関連したものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
例えば、前記呼吸器ウイルスは、メタニューモウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、呼吸器細胞融合ウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスから選択されるものであってもよい。前記呼吸器ウイルス感染疾患の予防または治療は、ウイルスの複製抑制による効果であってもよい。
【0041】
例えば、前記インフルエンザウイルスは、インフルエンザA型、B型またはC型であってもよく、具体的な亜型の種類に制限されない。
【0042】
また、本願の薬剤学的組成物は、ウイルス非特異的防御機能も提供することができるが、この場合、インフルエンザだけでなく、他のウイルス、例えば、これに制限されないが、呼吸器細胞融合ウイルス(Respiratory syncytial virus)および鼻風邪ウイルス(Rhinovirus)を含むウイルスに対する防御機能も提供することができる。
【0043】
本願の一具現例によれば、前記細菌感染性疾患は、グラム陽性菌感染性疾患、グラム陰性菌感染性疾患およびその他感染性細菌疾患から選択されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。例えば、細菌感染性疾患の予防または治療は、グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌の感染抑制による効果であってもよい。
【0044】
本願の一具現例によれば、前記グラム陽性菌は、ブドウ球菌、連鎖球菌、破傷風菌および炭疽菌から選択され、前記グラム陰性菌は、サルモネラ菌、疫痢菌、肺炎桿菌、大腸菌およびコレラ菌から選択されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
例えば、前記グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌であってもよい。
【0045】
本願の一具現例によれば、前記薬剤学的組成物は、血清型-非依存的に免疫化させるものであってもよいが、これに制限されるものではない。前記血清型-非依存的に免疫化させる薬剤学的組成物は、抗原に特異的に抗体を生産するものではなく、抗原に関係なく抗体を生産して免疫反応を起こす薬剤学的組成物を意味する。
【0046】
本願の一具現例によれば、前記アレルギー性疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、および慢性閉塞性肺疾患から選択されるアレルギー性呼吸器疾患であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
本願の一具現例によれば、前記アレルギー性疾患は、じんましん、結膜炎、花粉症およびアトピーから選択されるアレルギー性疾患の他にも、食品アレルギー、アレルギー性中耳炎、アナフィラキシーショック、接触性過敏症、アレルギー性接触性皮膚炎、細菌アレルギー、真菌アレルギー、ウイルスアレルギー、薬物アレルギーおよびアレルギー性脳炎なども含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0048】
本願の薬剤学的組成物は、免疫過敏反応と関連したTh1サイトカインおよび/またはTh2サイトカインの生成を抑制することができる。ここで、前記Th1サイトカインは、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)およびインターロイキン-12(IL-12)から選択され得、前記Th2サイトカインは、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)およびインターロイキン-13(IL-13)から選択され得るが、これに制限されるものではない。
【0049】
前記Th1サイトカインおよび/またはTh2サイトカインの水準は、肺気管支洗浄液(肺胞液)または血清のような体液から測定され得るが、これに制限されるものではない。
【0050】
本願の一具現例によれば、前記薬剤学的組成物は、肺、脾臓、血液または脳に非侵襲性であってもよいが、これに制限されるものではない。前記「非侵襲性」とは、直接的に薬剤学的組成物が投与される器官、組織、および細胞以外に全身の他の領域に薬剤学的組成物が浸透しないか、あるいは浸透しても早く除去されることを意味し、これは、薬剤学的組成物が投与される器官、組織、および細胞以外に全身の他のの領域に浸透して、人体に損傷を及ぼす浸透性と反対になる意味である。
【0051】
用語「投与」とは、任意の適切な方法で対象に本願発明の組成物を導入することを意味し、本願発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、いかなる一般的な経路を介して投与され得る。経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、腔内投与、硬膜内、粘膜内投与が行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0052】
本願の一具現例によれば、前記薬剤学的組成物は、腹腔内または粘膜内に投与するためのものであってもよいが、これに制限されるものではない。前記粘膜の位置は、特に制限されず、当業界で粘膜投与のために使用される身体位置のうち当業者が適切に選択して投与することができる。
【0053】
本願の一具現例によれば、前記薬剤学的組成物は、咽喉粘膜内に投与するためのものであってもよいが、これに制限されるものではない。咽喉粘膜を通したワクチン化は、例えばエアロゾールまたは点滴伝達システム形態を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0054】
本願発明による薬剤学的組成物を利用する場合、粘膜で投与することでも個体内で有効な免疫原性を示すので、従来に注射剤として皮下に投与しなければならなかった不便をなくすことができると共に、注射剤を介した投入に特に苦痛を味わっている幼児に投与するのに有利になり得るが、これに制限されるものではない。本願発明による薬剤学的組成物を投与できる個体は、制限がなく、ラット、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物を含むことができるが、これに制限されるものではない。本願発明による組成物の有効投与量の範囲は、性別、体表面積、疾患の種類および重症度、年齢、薬物に対する敏感度、投与経路および排出比率、投与時間、治療期間、標的細胞、発現水準などその他医学分野によく知られた多様な要因によって変わることができ、当該分野の専門家により容易に決定され得る。
【0055】
本願の一具現例によれば、前記薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体または免疫補助剤をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0056】
本願発明の薬剤学的組成物に含まれ得る担体としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0057】
本願発明で使用され得る免疫補助剤としては、当業界で通常的に使用される免疫補助剤が制限なしに使用され得、前記免疫補助剤は、cholera toxin binding unit,aluminum salts,lipid emulsion(MF-59)、synthetic detergent(Tween)、microspheres,liposomes,mucoadhesive polymersなどが挙げが、これに制限されるものではなく、この分野の新しい剤形が開発されているところ、これらも使用され得る。
【0058】
本願発明による薬剤学的組成物は、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾールなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用され得るが、これに制限されるものではない。詳細には、剤形化する場合、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製され得るが、これに制限されるものではない。
【0059】
例えば、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製され得る。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用され得、液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0060】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤および坐剤が含まれ得、非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得るが、これに制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明しようとするが、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本願の範囲を限定しようとするものではない。
【0062】
[実施例1]弱毒化した肺炎球菌菌株THpep27の炎症性疾患、呼吸器ウイルス感染疾患、または肺炎球菌を除いた細菌感染性疾患の抑制能分析
【0063】
1.材料および方法
弱毒化した肺炎球菌菌株THpep27の製造
本願の実施例で使用された肺炎球菌菌株であるTHpep27変異株は、Choi SYなど(Inactivated pep27 mutant as an effective mucosal vaccine against a secondary lethal pneumococcal challenge in mice.
Clin Exp Vaccine Res.2013)の文献で報告された菌株であり、韓国特許登録第10-1252911号に開示されたpep27突然変異肺炎球菌菌株で選別のためのエリスロマイシン耐性マーカー(ermAM)を有しないことを除いては同じ菌株である。
【0064】
選択のための一時的マーカーとして使用できるエリスロマイシン耐性マーカー(ermAM)を有するCheshireカセット(Genbank accession No.FJ981645)をDonald Morrison博士(University of Illinois of Chicago)から得られたプライマー(5’-TGG CTT ACC GTT CGT ATA G-3’(配列番号2)と5’-TCG ATA CCG TTC GTA TAA TGT-3’(配列番号3))を利用して、上流および下流配列を増幅するプライマー(5’-TCT CTA TCG GCC TCA AGC AG-3’(配列番号4)と5’-CTA TAC GAA CGG TAA GCC A GAT TTT CAC CAC TGC TTT CG-3’(配列番号5)および5’-ACA TTA TAC GAA CGG TAT CGA AAG GCC AGC AAG AGA CTA-3’(配列番号6)と5’-CTG CGA GGC TTG CAC TGT AG-3’(配列番号7)でD39ゲノムDNAを鋳型として利用してPCRによる重合酵素連鎖反応(PCR)で連結した。次に、連結された生成物をD39で形質転換させてpep27突然変異体を生成させた。
【0065】
チェシャー(Cheshire)カセット切断は、1%L-フコース(fucose)(Sigma,St.Louis,MO,USA)を添加して誘導した。フコース-処理された培養物をTHY血液寒天培地に塗抹して単一コロニーを得た。各コロニーにおいてチェシャーカセットの存在は、次のプライマーを使用してPCRで確認した:5’-TCT CTA TCG GCC TCA AGC AG-3’(配列番号8)と5’-CTG CGA GGC TTG CAC TGT AG-3’(配列番号9)。突然変異体(THpep27)配列は、Pep27抗体で免疫ブロット分析だけでなく、ヌクレオチドシーケンシング(Cosmo,Seoul,Korea)で確認した(不図示)。
【0066】
RNA水準でTHpep27突然変異体を確認するために、初期対数期にある細菌からRNAを以前に記述された熱いフェノール方法を使用して分離した。DNAをDNase I(Takara,Tokyo,Japan)で除去した後、無作為プライマー(Takara)を使用して1マイクログラムの細菌RNAをcDNAで逆転写させた。逆転写PCRは、推奨プライマーを使用して製造者の指針(Super Bio,American Building Restoration Products Inc.,Franklin,WI,USA)によって行った。
【0067】
その他細菌菌株の準備
本願で試験された肺炎球菌菌株は、下記の表1に提示されている。
【0068】
【表1】
【0069】
肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型2番(D39)野生型菌株、血清型3番(A66.1)、血清型6B(BG7322)およびTHpep27変異株(D39Δpep27)を実験室で使用した方法で培養して使用した(Kim et al,2012)。肺炎球菌は、37℃で血液寒天平板で一晩中培養した後、0.5%酵母抽出物(THY;Difco Laboratories)を添加したTodd-Hewittブロスで37℃で3時間の間培養した。各細菌培養液を適切に希釈し、CD1マウスに10μlの肺炎球菌菌株を咽喉(i.n.)感染させた。
【0070】
黄色ブドウ球菌(S.aureus ATCC 25923)と肺炎桿菌(K.pneumoniae,ATCC 9997)は、韓国微生物保存センター(KCCM、ソウル)で購入してヒツジの脱線維素血液を添加した脳心臓抽出(brain heart infusion;BHI)培地で37℃で一晩中培養した後、BHI培養液に接種してOD550=0.5になるまで37℃で培養した。
【0071】
インフルエンザウイルスA/California/04/2009(H1N1)菌株は、以前に使用された方法で卵で培養した(Shim et al,2013)。
【0072】
生体内感染研究
4週齢の雄性CD1、BALB/cマウス(オリエント、韓国)を感染実験に使用した。本実施例で動物使用は、韓国成均館大学校動物倫理委員会で韓国動物保護法の指針によって承認された。
【0073】
ワクチン有効性の評価において生存日数測定実験には、マウスに1×10~1×10個のΔpep27菌株を2週または1週ごとに咽喉(i.n.)に3回接種した。最終免疫化1~2週後に、マウス咽喉に1×10~1×10個の毒性菌株D39または6Bで感染させた。このように感染したマウスの生存は、初めて5日間は毎日4回、その後5日間は1日2回、その後には毎日観察して感染後14日までモニタリングした。
【0074】
集落形成抑制能を評価するために、マウスに約1×10~1×10個のΔpep27を2週ごとに3回咽喉接種し、最終接種1~2週後に、マウスに約5×10~1×10個の肺炎球菌を感染させた。マウスを指示された時間に犠牲にさせて、咽喉部を無菌的に除去した後、ホモジナイザー(PRO Scientific Inc.,Oxford,CT,USA,Model 200 Double insulated)を使用して1mlのPBS(血液を除いて)で氷の上で最大速度で均質化させ、滅菌PBSで連続希釈して5~10μg/mlのゲンタマイシン(gentamycin)を含有する血液寒天培地に接種して肺炎球菌を選別した。次に、プレートを37℃、95%空気-5%COを含有する状態で約18時間の間培養して集落数を数える実験を2回繰り返して平均値を使用した。
【0075】
Δpep27ワクチンによって黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌(K.pneumoniae)感染を防御することができるかを調査するために、マウスにΔpep27を3回咽喉接種し、最終Δpep27接種10日後、黄色ブドウ球菌または肺炎桿菌をそれぞれ1×10個または2×10個をPBS 50μlに懸濁して咽喉で感染させた。次に、感染24時間および48時間後に肺および鼻腔洗浄物を収集し均質化して適切に連続希釈した後、BHI血液寒天培地に塗抹して37℃で一晩中培養して菌数を数えた。
【0076】
ウイルスおよび肺炎球菌感染実験
マウス(BALB/c雌性、6~8週齢、Koatech,Korea)に約1×10個のΔpep27を50μl PBSに懸濁して1週間隔で3回接種し、最後の接種10日後で、50μl PBSに0.02致死量(LD)になるようにH1N1インフルエンザウイルスを準備して、咽喉で感染させて、毎日体重をモニタリングした。インフルエンザ感染後、10~12日後に、1×10個のD39を50μl PBSに懸濁してマウス咽喉に感染させた後、生存率を測定した。
【0077】
脾臓細胞分離
マウス咽喉にΔpep27(THpep27変異株)を1×10~1×10個で2週ごとに3回接種した。最終接種1週間後に脾臓を取り出し、Tリンパ球を刺激するために分離した脾臓細胞に抗-CD3e(5μl/ml;eBioscience)および抗-CD28(3μl/ml;eBioscience)抗体処理した(Bashourなど、2014)。24時間培養後に収穫して、培養培地のサイトカイン水準を測定した。
【0078】
サイトカイン測定
気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage;BAL)、血清および脾臓細胞でインターロイキン(Interleukin:IL)-17、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターフェロン(IFN)-γ、IL-4およびIL-10の濃度は、市販中の酵素結合免疫吸着分析(enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)キット(BD Biosciences,San Diego,CA,USA)を使用して製造社の指示に基づいて測定した。
【0079】
IgG抗体力価およびIgサブタイプ決定
マウス咽喉に1×10~1×10個のΔpep27を2週ごとに3回接種した。最終接種7日後、眼窩採血で血清を得て、-80℃でELISAするまで保管した。以前に記述されたように、抗体を滴定し(Roche et al.,2007;Kim et al.,2012;Cohen et al.2013)Ig亜型は、マウスIgイソタイピングELISAキット(eBioscience,USA)を利用して測定した。
【0080】
同時感染研究において血清でのIgG力価は、肺炎球菌の菌溶解物(D39,A66.1,BG7322)、または血清型2番カプセルでコーティングされた96ウェル免疫プレートまたはPBS溶液のうち精製されたPspAタンパク質(1μg/ml)を使用してELISA方法で測定した(Kim et al.,2012;Cohen et al.,2013)。
【0081】
肺でウイルスおよび菌数測定
マウス(BALB/c 4匹/グループ)をΔpep27で咽喉接種し、上記したように、H1N1またはH3N2インフルエンザウイルスで感染させた後、肺サンプルを収集し、すでに報告された方法に基づいて分析した(Shim et al,2013)。
【0082】
インフルエンザウイルス感染5日後、マウス肺を70μmストレーナー(strainer)に通過させ、遠心分離して。上澄み液を力価測定時まで-80℃で保管した。ウイルス力価(titer)測定のために、MDCK細胞(2×10細胞/ウェル)をMEM(1%IgGがないBSA、1Xペニシリン-ストレプトマイシン)培地で96ウェルプレートに播種した後、プレートを37℃で4時間の間培養した。次に、培養された細胞に連続的に2倍希釈された肺均質化物上澄み液で感染させ、一晩中培養した。次に、上澄み液を捨てて、抗インフルエンザA抗体を利用してTCID50/mlを利用して測定した(Wu et al,2015)。
【0083】
Real-time PCR
腹腔大食細胞を分離して培養した後、RNAiso plus(TAKARA,Japan)を使用してトータルRNAを抽出した。RT-PCRは、ワン-ステップRT qPCRキット(Enzynomics,Korea)を使用して行った。遺伝子特異プライマー配列は、次のとおりである:IL-10遺伝子(Forward [F]:5’-AGC CAC CTC ATG CTA GAG C(配列番号10)、Reverse [R]:5’-GCC TGG TCT GGC ATC ACT AC(配列番号11));IL-1βの遺伝子(F:5’-CTG GTG TGT GAC GTT CCC AT(配列番号12);R:5’-TGT CGT TGC TTG GTT CTC CT(配列番号13));TNF-a遺伝子(F:5’-CAC AAG ATG CTG GGA CAG TGA(配列番号14);R:5’-TCC TTG ATG GTG GTG CAT GA(配列番号15))。GAPDH遺伝子(プライマーF:5’-TGC ATC CTG CAC CAC CAA(配列番号16);R:5’-TCC ACG ATG CCA AAG TTG TC(配列番号17))を対照群とした。
【0084】
PCRプログラムは、次のように行った:維持(Holding;95℃10分);40サイクルの間毎サイクル(95℃15秒、55℃30秒、72℃30秒);メルトカーブ(95℃15秒、60℃1分、95℃15秒)。
【0085】
High Throughput Sequencing
Δpep27接種後、肺および脾臓で誘導される遺伝子発現を測定するために、マウス(Balb/c 4週齢)に1×10~1×10個の肺炎球菌Δpep27(THpep27:Choi et al.,2013)を麻酔せず、2週間隔で3回咽喉に接種した(i.n.)。肺および脾臓でTrizol試薬(Invitrogen)を使用してRNAを抽出し、500ngのトータルRNAを利用してシーケンシングライブラリーを構築した。以後、シーケンシングのためにLEXOGEN Quant-Seqライブラリー準備キット(Cat#001.24)を利用して標準プロトコルによってRNAライブラリーを構築した。遺伝子発現は、Illumina NextSeq 500を使用した高速大量(high-throughput)シーケンシングで測定した。
【0086】
DNA処理段階
ベース呼び出しにIllumina Casava1.8ソフトウェアを使用した。配列読み取りは、アダプタ配列のために整頓され、fastx_trimmerを使用して低複雑性または低品質配列に対してはこれ以上処理しないようにした後、Bowtie2を使用してmm10全体ゲノムにマッピングされた。読み取り回数の抽出および正規化は、edgeRを使用して行われた。Ingenuity Pathway Analysisを利用した実験およびシステム生物学分析は、e-biogen(Seoul,Korea)で行った。
【0087】
遺伝子発現分析データは、NCBI[GEO accession number GSE93718](http://www.ncbi.nlm.nih.gov.proxy.konkuk.ac.kr:8080/geo/)に寄託された。
【0088】
腸炎症性疾患からの防御能測定
マウス(C57BL/6雄性、4週齢)にケタミン100μlを腹腔内注入して麻酔した後、1×10~1×10個の△pep27を1週間間隔で3回咽喉接種した。マウスの体重を測定し、無作為で実験群当たり2匹を使用して4つの実験群に分けた。それぞれの一連の実験で使用されたマウス実験群は、次のとおりである:デキストランサルフェートナトリウム(DSS)処理をしない対照群、5%DSSだけを投与した実験対照群、Pep27接種だけをした実験群、およびPep27+5%DSSを投与したグループ。マウスに平均分子量5000(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri,USA)のDSS(5%、w/v)を連続14日間飲むようにして大腸炎を誘導した(Wirtz et al,2007)。DSS溶液は、毎日新しく準備した。対照群マウスは、水道水だけを飲むようにした。
【0089】
すべての対照群および実験対照群は、研究期間の間DSS投与群と同じ方式で投与された等量のビヒクル(vehicle;食塩水)を投与した。
【0090】
【0091】
<△Pep27ワクチン接種によるマウスでのDSS誘導腸炎抑制実験>
腸疾患(IBD)試料採取
5%DSS投与14日後、実験動物をCO窒息で犠牲にさせ、事後開腹術を施行した。盲腸から肛門まで全体大腸を除去し、近位部、中間部および末端部に分け、選択された組織を分離してリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で洗浄した後、分析するまで-80℃に保管した。
【0092】
結腸切片の定量組織学(病気活性指数Disease activity index:DAI)
大腸炎の進行は、飲用量と体重減少、便の一貫性、直腸出血および便での総血液の存在を測定して毎日評価し、臨床症状も評価した。マウスの病的状態(退屈さ、無気力)も毎日モニタリングした。
【0093】
この媒介変数は、以下に提示された基準によって点数を付け、これは、すでに報告された論文で提示されたように、各動物の平均一日病気活性指数(DAI)を計算した(Wirtz et al,2007;Jawhara and Poulain、2007)。
【0094】
また、大腸炎症は、本来状態の引かない回転型接合部から肛門境界まで結腸の長さを目視で測定して評価した。病理学的所見を各グループ別に詳細に記録し、最も炎症が激しい臓器で変化が現れた時期とその程度を評価するために、組織を視覚的に0から5点まで点数を付ける体系を使用した。
【0095】
以前に検証された病理学的点数等級システム(Jawhara and Poulain,2007;Xu et al,2007)を変形して大腸炎の程度を評価する方法を使用した。すべての実験を少なくとも二回繰り返してすべてのグループにおいて次のように算出した。
【0096】
1)体重減少、変化なし、0;<5%、1;6~10%、2;11~20%、3;>20%、4;
2)便の一貫性(Stool consistency)、正常または良好に形成されたペレット=0;肛門にくっつかない練り粉形の絆創膏=1;肛門についた状態として残っている液体便2;若干の血で粘りつく、3;完全な液体であるか、血があったり、または10分後にも排泄されないこと;4;
3)直腸出血、血液なし、0;肛門に血液が見える、1;毛に血液が見える、2;直腸で激しい出血、4点。
4)一般的な外観、正常、0;粘液質、1;無気力であり、立毛(piloerect)、2;無気力であり、曲げた。3;動かず、痛い、4。
【0097】
統計分析
すべてのデータは、二回の独立的な実験値の平均±標準偏差で示した。統計学的比較は、一元分散分析法を使用してBonferroni’s testを使用して行われた。0.05未満のP値は、統計的に有意であると見なされた。
【0098】
2.結果
2-1.事例#1:HTSとシステム生物学分析は、主な病変からの防御機能を提示した。
2-1-1.Δpep27接種は、多様な病変からマウスを防御した
肺でのシステム生物学分析は、Δpep27咽喉接種が胃腸炎および大腸が非正常に変化することを防御することを提示する(図1)。また、脾臓でのシステム生物学分析は、Δpep27接種によりインフルエンザウイルス感染から防御されることを示す(図2)。
【0099】
2-1-2.Δpep27接種は、Treg細胞を誘導した
肺でのシステム生物学分析は、また、Δpep27の接種により肺でTGF-βが誘導されることを示す(図3)。図3で緑色は、遺伝子発現が抑制されたことを示し、赤色は、遺伝子が誘導されたことを意味する。Δpep27接種によりTregが誘導されることを確認するために、接種したマウスの脾臓細胞をFACS分析した。その結果、Δpep27接種をする場合、Th2、Th17およびTreg細胞集団が増加したが、Th1細胞は増加せず(図4)、このように誘導されたTreg細胞は、免疫寛容で任意の役割をすることができることを示唆する。Tregが誘導されることを裏付けるために、脾臓細胞および血清のサイトカイン水準を測定した。 一貫して脾臓でインターフェロン(IFN)-γ、IL-4,IL-17およびIL-10が有意に誘導された(図5)。また、血清でもIFN-γ、IL-17およびIL-10が有意に誘導されたが、IL-4水準は、有意に変化しなかった(図6)。このような結果は、Treg細胞誘導により抗炎症性サイトカインIL-10の生産が誘導されて、免疫寛容を強化させることを提示する。
【0100】
2-1-3.Δpep27接種によるIL-10誘導
免疫寛容反応を裏付けるために、肺および気管支肺胞洗浄液(BAL)でIL-10およびIL-17 mRNA水準を測定した。一貫して、Δpep27接種によって肺でIL-10とIL-17 mRNA水準がいずれも有意に増加した(図7および図8)。
【0101】
2-1-4.Δpep27接種による記憶反応誘導
咽喉接種が記憶反応を起こすことができるかを確認するために、接種したマウスからの脾臓細胞を収穫し、記憶反応を測定した。実験結果、Δpep27接種によって脾臓で中央記憶T細胞(CD4,CCR7,CD62L)と記憶Tfh細胞(CD4,CXCR5,CCR7)が増加した(図9)。
【0102】
記憶反応を再び確認するために、多様な血清免疫グロブリンと亜型の抗体力価を測定した。予想通り、Δpep27ワクチン接種は、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3のような多様な免疫グロブリン亜型を誘導した(図10)。また、三つの類型の肺炎球菌全体細胞に対するIgG抗体水準も、ワクチン接種で有意に増加した(図11)。したがって、咽喉ワクチン接種は、記憶反応を誘導することを確認した。
【0103】
2-2.事例2:インフルエンザウイルスの同時感染防御
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)とインフルエンザAウイルス(IAV)は、呼吸器感染の主な原因菌である(Bosch et al,2013,Shak et al,2013)。肺炎球菌またはIAV自体が呼吸器疾患を起こすが、インフルエンザウイルス感染後、二次感染が起こって死亡率が増加する(Mina and Klugman,2013)。しかしながら、現在利用可能な肺炎球菌多糖類接合ワクチンPCV13は、2次肺炎球菌感染を効果的に防御しなかった(Metzger et al,2015)。
【0104】
2-2-1.Δpep27接種による2次肺炎球菌感染を防御
以前の研究で、マウスにΔpep27を咽喉接種すると、IgGが誘導され、異種肺炎球菌感染から防御されることを確認した(Kim et al,2012)。本願では、Δpep27接種が全菌(whole bacterial cells)だけでなく、特定の抗原に対する抗体力価を増加させることができるかを確認した。実験結果、Δpep27咽喉接種で血清型2番(D39)全菌だけでなく、血清型3番および6Bに対してもIgG力価を増加させて、同種および異種型肺炎球菌がすべて非免疫化対照群より有意に高い体液免疫が誘導されたことを示した(図11)。また、インフルエンザ感染後のサイトカイン水準を測定したとき、免疫化された実験群は、INF-γ、TNF-α、IL-1β水準がすべて非免疫化対照群より顕著に低くて、免疫寛容現象があることを提示した(図12)。また、免疫化で特定の抗原、PspAタンパク質および血清型2番多糖類莢膜に対するIgG力価を測定したとき、Δpep27接種はPspA力価を増加させたが、多糖類莢膜に対する力価は増加させなかった(図13)。
【0105】
Δpep27咽喉接種で2次肺炎球菌感染から防御されるかを調査するために、マウスにH1N1インフルエンザウイルスを0.02致死量(lethal dose,LD)で感染させた。インフルエンザウイルス感染10日後、毒性肺炎球菌D39菌株をマウスに感染させ、生存率を測定した。D39感染後、ワクチンを接種しないマウス(PBS/H1N1)は、肺炎にかかった反面、咽喉接種した大部分のマウス(THpep27/H1N1)は成功裏に生存し(図14)、このような結果は、マウスにΔpep27を咽喉接種すると、インフルエンザウイルス感染から防御されると共に、2次肺炎球菌感染からも防御され得ることを提示する。
【0106】
また、咽喉接種後、肺炎球菌を感染させた後、菌数を測定した結果、ワクチン接種を受けたすべてのマウス肺では、接種しない対照群よりも極めて少ない数の菌が検出され(図15)、これは、Δpep27咽喉接種によってマウスがインフルエンザ感染後に2次肺炎球菌感染からも成功裏に防御されたことを示す。
【0107】
2-2-2.Δpep27接種による肺のウイルスおよび細菌数の減少
Δpep27接種でインフルエンザウイルス数が減少するかを調査するために、インフルエンザウイルス感染後、体重が減少するかを測定した。興味深く、Δpep27ワクチンを接種したすべてのマウスは、インフルエンザ感染後にも体重が減少しなかったが、ワクチンを接種しないマウスは、体重が顕著に減少した(図16)。Δpep27ワクチン接種によってインフルエンザウイルス感染による体重減少が抑制されるので、追加にΔpep27ワクチン接種によって肺でインフルエンザウイルス複製がどんな影響を受けるかを確認するために、インフルエンザ感染したマウス肺でのウイルス数をTCID50で測定した。驚くべきことに、ワクチンを接種したマウスは、ワクチンを接種しない対照群より有意に低いウイルス数を示した(図17)。この結果は、Δpep27咽喉ワクチン接種によって肺炎球菌感染だけでなく、インフルエンザウイルス感染も顕著に減少することを意味する。
【0108】
2-3.事例3:Δpep27接種による他の細菌感染防御
2-3-1.Δpep27接種によるグラム陰性細菌感染防御
Δpep27ワクチン接種で他の細菌感染の定着を防げることができるかを確認するために、マウスにΔpep27ワクチンを接種した後、グラム陰性菌である肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)を感染させて組織内菌数を測定した。ワクチン接種群は、感染24時間後、肺および血液内肺炎桿菌の数が、ワクチンを接種しない対照群より有意に減少したので(図18)、Δpep27ワクチン接種によってグラム陰性細菌感染を予防することができることが立証された。
【0109】
2-3-2.Δpep27接種によるグラム陽性細菌感染防御
Δpep27ワクチン接種が他の細菌感染の定着を防げることができるかを再確認するために、マウスにΔpep27ワクチンを接種した後、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を感染させて組織内生存細菌数を測定した。興味深く、Δpep27ワクチン接種群は、マウスの肺および鼻洗浄液で細菌集落数が、ワクチンを接種しない対照群に比べて顕著に減少した(図19)。この結果は、Δpep27ワクチン接種がグラム陽性細菌のような他の細菌感染を予防することができることを立証したものである。
【0110】
2-4.事例4:場炎症性疾患防御
経口免疫寛容現象は、ヒトで関節リウマチ(RA)、アレルギー性疾患、糖尿病、動脈硬化症、大腸炎疾患などで研究されてきた(Faria and Weiner、2005)。サルモネラ由来分泌タンパク質(SseB)を咽喉接種して、内臓および全身IgA、Th1およびTh17反応が誘導され、経口で致命的な感染をさせても、腸組織および脾臓での細菌数が減少した(Pigny et al.,2016)。しかしながら、腸内炎症性疾患を防御する咽喉ワクチンは報告されたことがない。
【0111】
2-4-1.Δpep27ワクチン接種による腸炎症性疾患防御
Δpep27ワクチン接種が腸炎症性疾患を抑制できるかを確認するために、マウスの咽喉にワクチンを接種し、DSSで大腸炎を誘導した。実験結果、5%DSSを飲用水に添加した後、9日目から病気指数が悪化し、体重も顕著に減少した。5%DSSだけを単独で処理したマウスでは、体重が顕著に減少したが、Δpep27を接種し、5%DSS処理した実験群は、DSS単独処理群より有意に体重が少し減少した(図20)。
【0112】
全般的な臨床疾患活動指数点数(p<0.05、一元分散分析後、Bonferroni検査、DSS処理6~9日)を比較したとき、5%DSS単独処理群は、Δpep27+5%DSS実験群より便の一貫性の点数が有意に高かった(図21)。すなわち、DSSで誘導された大腸炎症が悪化して、DSS単独処理群は、臨床活動指数が高いが、ワクチン投与群は、大腸炎症が正常群と類似に低かったことを提示する。
【0113】
結腸の長さが短くなることは、DSS誘発大腸炎モデルで炎症マーカーとして使用されるが、実際にDSS投与群で結腸の長さが有意に短くなった(図22)。したがって、DSSグループは、結腸の重さ/結腸の長さの比率が有意に増加したが、Δpep27ワクチン接種グループは、DSSグループに比べてほぼ正常に近い比率を示した(図23)。
【0114】
2-4-2.Δpep27ワクチン接種による炎症性サイトカイン水準抑制
Δpep27ワクチン接種が腸炎症を減少させることを確証するために、大腸でのサイトカインmRNA水準を測定した。実験結果、Δpep27ワクチン接種群は、炎症誘発性IL-1βmRNA水準が非免疫化された対照群に比べて有意に減少した(図24)。また、咽喉ワクチン接種によってIL-17A、TNF-αおよびIL-6のmRNA水準も、非免疫化された対照群より抑制されたので(図24)、咽喉粘膜ワクチン接種がサイトカイン発現を抑制するという事実が立証された。
【0115】
[実施例2]弱毒化した肺炎球菌菌株THpep27のアレルギー性疾患の抑制能分析
1.材料および方法
1.1.弱毒化した肺炎球菌菌株THpep27
Δpep27肺炎球菌菌株(THpep27,D39Δpep27::Cheshire)は、Choi SYなど(Inactivated pep27 mutant as an effective mucosal vaccine against a secondary lethal pneumococcal challenge in mice.Clin Exp Vaccine Res.2013)の文献で報告された菌株であり、韓国特許登録第10-1252911号に開示されたpep27突然変異肺炎球菌菌株で選別のためのエリスロマイシン耐性マーカーを有しないことを除いては、同じ菌株である。
【0116】
選択のための一時的マーカーとして使用できるエリスロマイシン耐性マーカー(ermAM)を有するCheshireカセット(Genbank accession No.FJ981645)をDonald Morrison博士(University of Illinois of Chicago)から得られたプライマー(5’-TGG CTT ACC GTT CGT ATA G-3’(配列番号2)と5’-TCG ATA CCG TTC GTA TAA TGT-3’(配列番号3))を利用して、上流および下流配列を増幅するプライマー(5’-TCT CTA TCG GCC TCA AGC AG-3’(配列番号4)と5’-CTA TAC GAA CGG TAA GCC A GAT TTT CAC CAC TGC TTT CG-3’(配列番号5)および5’-ACA TTA TAC GAA CGG TAT CGA AAG GCC AGC AAG AGA CTA-3’(配列番号6)と5’-CTG CGA GGC TTG CAC TGT AG-3’(配列番号7))でD39ゲノムDNAを鋳型として利用してPCRによる重合酵素連鎖反応(PCR)に連結した。次に、連結された生成物をD39で形質転換させてpep27突然変異体を生成させた。
【0117】
チェシャー(Cheshire)カセット切断は、1%L-フコース(fucose)(Sigma,St.Louis,MO,USA)を添加して誘導した。フコース-処理された培養物をTHY血液寒天培地に塗抹して単一コロニーを得た。各コロニーにおいてチェシャーカセットの存在は、次のプライマーを使用してPCRで確認した:5’-TCT CTA TCG GCC TCA AGC AG-3’(配列番号8)と5’-CTG CGA GGC TTG CAC TGT AG-3’(配列番号9)。突然変異体(THpep27)配列は、Pep27抗体で免疫ブロット分析だけでなく、ヌクレオチドシーケンシング(Cosmo,Seoul,Korea)で確認した(不図示)。
【0118】
RNA水準でTHpep27突然変異体を確認するために、初期対数期にある細菌からRNAを以前に記述された熱いフェノール方法を使用して分離した。DNAをDNase I(Takara,Tokyo,Japan)で除去した後、無作為プライマー(Takara)を使用して1マイクログラムの細菌RNAをcDNAで逆転写させた。逆転写PCRは、推奨プライマーを使用して製造者の指針(Super Bio,American Building Restoration Products Inc.,Franklin,WI,USA)により行った。
【0119】
製造されたTHpep27突然変異肺炎球菌菌株は、37℃のTHYブロス(0.5%酵母抽出物を含有するTodd-Hewittブロス;Difco Laboratories)でOD550値が0.3(1×10 CFU/ml)になるまで培養した。培養された菌をPBSで洗浄した後、濾過されたPBSを利用して最終濃度1×10 CFU/50μlで希釈して免疫化に使用した。
【0120】
1.2.実験動物
BALB/c雌性マウス(5週齢、オリエント、韓国)を購入後、7日間動物室で純化させて安定させた後に使用した。ケタミン(ケタミン注射、柳韓洋行、韓国)とシラジン(ロムプン、Bayer Korea Ltd、韓国)を4:1で混合した後、PBSで二倍希釈した溶液100μlをマウスに腹腔注射して麻酔させた。チャレンジ(challenge)およびワクチン投与前に麻酔し、実験動物を利用した実験は、韓国成均館大学校動物倫理委員会のガイドラインに基づいて進行された。
【0121】
1.3.Δpep27突然変異体の喘息予防効果測定
(1)マウスを3群(n=7/群)に分けて、滅菌水(PBS)を提供した正常群、OVA(Ovalbumin)で喘息を誘導した後、滅菌水を提供した喘息誘導群、およびpep27変異株(Δpep27)ワクチン投与後、喘息誘導群に区分した。
【0122】
(2)実験開始0日、7日、14日目にマウスを麻酔させ、1×10 CFU/50μlのΔpep27を咽喉(I.N)接種して免疫化した。実験開始38日と49日目に50μg OVA(Albumin from chicken egg white,Sigma Chemical Co.,USA)と2mg Alum(Aluminum hydroxide hydrate,Thermo Co.,USA)を100μl(0.9%食塩水、pH4.0、ダインバイオ、韓国)に添加し、4時間の間4℃でボルテックスして溶解させて製造した減作液100μlを腹腔内に注入して減作させた。以後、59日から64日目まで6日間毎日生理食塩水にOVAを0.4mg/mlになるように溶かして、25μlを咽喉の両側にそれぞれ12.5μlずつ点滴してチャレンジして(最終注入量OVA 10μg/マリ)喘息を誘導した。最後のOVAチャレンジ24時間後、実験動物を犠牲にして、肺気管支洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid,BALF)を採取してサイトカインを測定し、肺組織は、分離して固定させた後、ヘマトキシリン-エオシン(Hematoxylin-eosin,H&E)染色を行った(図25および図26)。
【0123】
1.4.喘息治療効果測定
(1)マウスを3群(n=7/群)に区分して滅菌水(PBS)を提供した正常群、OVAを投与した喘息群(喘息誘導群)、およびOVA投与後、Δpep27変異株ワクチン投与群(喘息治療実験群)に区分した。
【0124】
(2)喘息誘導群:具体的に、実験開始0日および10日目に正常群を除いたすべてのグンに50μg OVA(Albumin from chicken egg white,Sigma Chemical Co.,USA)と2mg Alum(Aluminum hydroxide hydrate,Thermo Co.,USA)を100μlの0.9%食塩水)pH4.0、ダインバイオ、韓国)に添加し、4時間の間4℃でボルテックスして製造した減作液を腹腔で100μl注射して減作させた。以後、10日が経過した20日から25日まで6日間、生理食塩水にOVAを0.4mg/mlになるように溶かした溶液25μl(最終注入量10μg/匹)を両側の咽喉(Intranasal;I.N)に12.5μlずつチャレンジした。正常群の場合、生理食塩水だけを投与した(図27A)。
【0125】
(3)喘息治療実験群:前記2)のようなOVAチャレンジ一週間後、毎週1回ずつ1×10 CFU/50μlのΔpep27を3回咽喉接種してマウスを免疫化した。3週の治療期間の間ワクチン投与前3日からOVA 10μg/25μlを1週間に3回(合計9回)I.N.チャレンジして喘息を誘導した。最後のワクチン投与1週間後に最後のOVAチャレンジをし、24時間後にマウスを犠牲にした(図27B)。
【0126】
1.5.組織化学的検査
肺および気管支組織を分離して10%(v/v)ホルムアルデヒド溶液で固定した後、パラフィン固定(paraffin block)を行った。前記パラフィン固定された組織を4μmの厚さで切った後、H&E染色を実施した。H&E染色された組織は、光学顕微鏡を利用して写真を撮影した。組織化学的検査は、KNOTUS Co.,Ltd.(Korea)に依頼して実施した(図28)。
【0127】
1.6.サイトカイン分析
肺気管支洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid,BALF)を採取してサイトカイン水準を測定した。具体的に、マウスの気道を開いて肺気管支洗浄用PBS緩衝液が入っているカテーテルを連結した後、PBS緩衝液1.0mlを廃棄関知にゆっくり押込んで、0.9ml程度を抽出した後、そのまま再び押込んで抽出する過程を二回さらに繰り返して、総0.8mlの肺気管支洗浄液を獲得した。前記採取した肺気管支洗浄液を4℃、3,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液をサイトカイン測定用肺気管支洗浄液に分離して使用するまで-70℃で冷凍保管した。肺気管支洗浄液のサイトカイン水準は、ELISAキット(ELISA Ready-SET-Go!,eBioscience,San Diego)を利用して測定した。
【0128】
1.7.統計
実験データは、平均±標準偏差で示した。サイトカイン測定に対する統計処理は、One-Way ANOVAを通じて実行された。各群の比較は、ボンフェローニ検定(Bonferroni test)を利用して行われた(,P≦0.05;**,P≦0.01;***,P≦0.001)。P<0.05であれば、有意な差異があると判断した。
【0129】
2.結果
2.1.Δpep27突然変異体の喘息予防効能
2.1.1.Δpep27ワクチン接種による喘息で誘導されるサイトカイン分泌抑制
肺胞でのサイトカイン水準をELISAキットを利用して測定したとき、Δpep27ワクチン接種群は、喘息群よりアレルギー誘発サイトカイン(Th2 cytokine;Choなど、2002)IL-4、IL-5、IL-13の水準がそれぞれ顕著に減少して正常対照群と類似した水準に減少した(図25)。
【0130】
2.1.2.Δpep27ワクチン接種による喘息での気道浮腫抑制
気道アレルギー疾患は、アレルギー誘発物質の投与時に炎症により気道が顕著に厚くなる(図26、喘息群)。炎症(Hematoxylin-eosin,HE)および杯細胞(goblet cells)(Periodic acid Schiff,PAS)を組織学的免疫化学的染色して400倍で観察したとき、Δpep27ワクチン投与群は、喘息群に比べて顕著に炎症が抑制されて対照群と類似した水準を示した(図26、ワクチン投与群)。
【0131】
2.2.Δpep27突然変異体の喘息治療効能
2.2.1.Δpep27ワクチンの喘息関連サイトカイン抑制による治療効能
Δpep27ワクチンを1週間間隔で3回接種し、最終免疫化1週間後にマウスの肺胞液でのサイトカイン水準を定量したとき(図27A)、喘息群では、Th2サイトカイン(IL-4,IL-5,IL-13)水準が顕著に増加したが、ワクチン投与群では、正常群と類似した水準を示した(図27B)。
【0132】
2.2.2.Δpep27ワクチン投与時に肺の炎症抑制による治療効能
実験したマウスの肺をHematoxylin-eosin(HE)染色して観察したとき、Δpep27ワクチン投与群(C)は、喘息誘発群(B)に比べて顕著に炎症が顕著に抑制された。特にワクチン投与群は、気管支と血管周辺の炎症細胞の浸潤および粘液分泌が抑制されて、正常対照群(A)とほぼ類似した様相を示した(図28)。
【0133】
3.討論
現在まで微生物を利用した喘息予防/治療に対する論文は、不活性化Mycobacterium phlei吸入時に中等程度の子供喘息患者で気管支過敏反応が抑制され(Mingなど、2013)、不活性化されたMycobacterium phlei吸入でIL-23R発現が抑制されて、IL-17生成γδT細胞媒介気道炎症が抑制されることによって、喘息治療に役に立ったことに関するだけであった(Mingなど、2017)。また、弱毒化百日咳菌株BPZE1をマウス咽喉に接種して、アレルギー性気道炎症と接触性皮膚過敏反応を減少させて、これらの疾患の予防および治療に使用され得ることが報告されたことがあり(Liなど、2012)、マウスモデルでジフテリアと破傷風弱毒化毒素単独または百日咳全菌ワクチンと共に接種する場合、アレルギーによって誘導されるTh2免疫反応を抑制して、気道炎症や過敏反応の抑制に利用され得ることが報告されたことがある(Grber など、2006)。
【0134】
また、肺炎球菌を感染させると、調節T-細胞を誘導してアレルギー性気道疾患を抑制した(Prestonなど、2011)。それだけでなく、現在市販されている肺炎球菌接合ワクチンを咽喉接種すると、気道アレルギー疾患に進行されることを抑制したが、筋肉注射時には効果がなかった(Thorburnなど、2010)。したがって、肺炎球菌成分である多糖類と弱毒化毒素を気道に注入したとき、アレルギー性気道疾患を抑制し、アレルギー性気道疾患の発生を抑制する調節T細胞を誘導して、アレルギー誘発物質に対する免疫反応を回避し、抑制することを明らかにした(Thorburnなど、2013)。しかしながら、細菌を利用した喘息の予防および治療方法は、弱毒化した百日咳菌を除いては、大部分毒性が強くて、全部不活性化された菌を使用したり、特定の成分を使用しなければならなかった。また、咽喉接種方法が、皮下接種方法より気道アレルギー反応の抑制においてさらに効果が高いと報告されたことがある(Takabayashiなど、2003)。
【0135】
百日咳菌感染は、マウスアレルギー気道疾患モデルでTh1反応を誘導して(IFN-γ水準増加)炎症を悪化させることもできた(Ennisなど、2004;Choなど、2002;Kumarなど、2004)。したがって、IFN-γ水準が誘導されず、アレルギー反応を抑制することが必要である。肺炎球菌死菌を気道に注入して喘息予防効果を測定したとき、IL-5、IL-13水準が有意的に抑制されず、Th1反応を誘導してIFN-γ水準が有意的に増加した(Prestonなど、2007;Gibsonなど、2012;米国特許8,226,959)。すなわちTh1反応を誘導してTh2反応が抑制されても、炎症が悪化する可能性を排除することができなかった。したがって、Gibsonなど(2012;米国特許8,226,959)は、肺炎球菌成分を分離してアレルギー性気道疾患の抑制効能に焦点を合わせた。
【0136】
しかしながら、本願発明の弱毒化したΔpep27変異株を使用する場合、Th2サイトカイン(IL-13およびIL-4)だけでなく、Th1サイトカイン(IFN-γ)の水準も有意的に抑制して正常水準を示し、組織学的な所見でも正常群と類似していた。したがって、本願発明による弱毒化した肺炎球菌菌株を含む薬剤学的組成物は、従来のワクチンまたは医薬に比べてさらに安全なアレルギー疾患の予防ないし治療剤になり得るものと期待される。
【0137】
前述した本願の説明は、例示のためのものであり、本願の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本願の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されてもよく、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態で実施されてもよい。
【0138】
本願の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲により示され、特許請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれるものと解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
0007050360000001.app