(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/15 20140101AFI20220401BHJP
【FI】
H02S50/15
(21)【出願番号】P 2020547340
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 CN2018111207
(87)【国際公開番号】W WO2020000793
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】201810683547.4
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】張 憲民
(72)【発明者】
【氏名】蔡 林林
(72)【発明者】
【氏名】白 生輝
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/129585(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162716(US,A1)
【文献】登録実用新案第3203433(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107464858(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0159469(US,A1)
【文献】国際公開第2010/064720(WO,A1)
【文献】特開2016-042569(JP,A)
【文献】MCHEDLIDZE, Teimuraz et al.,Monitoring of Si-solar cell degradation with electroluminescence,Solar Energy Materials & Solar Cells,2016年,Vol. 155,pp.38-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S10/00-99/00
H01L31/04-31/078
H01L31/18-31/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
温度制御装置をオンにして太陽電池セルを一定温度Tに保持するステップと、
太陽電池セルを試料試験台に載置し、電気回路を接続し、太陽電池セルに電流Iを注入し、太陽電池セルの初期のエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
温度T及び電流Iを一定に保持し、エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域が一定になるまで、一定期間ごとにエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域の経時的な変化を分析することによって減衰時間t
deg及び再生時間t
reを推定し、対応する減衰率R
deg及び再生率R
reが得られるステップと、
温度又は電流を変化させて上記のステップを繰り返し、異なる電気注入アニール条件での結晶シリコン太陽電池の長時間のエレクトロルミネッセンス画像を得て、異なる電気注入アニール条件での減衰率R
deg及び再生率R
reを分析により得るステップと、
減衰率R
deg及び再生率R
reに対する温度、電流の影響を、異なる電気注入アニール条件での減衰率R
deg及び再生率R
reに基づいて分析するステップとを含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
温度Tの範囲は、30~100℃であり、電流Iの範囲は、0.1A~15Aであり、撮影間隔の範囲は、1~10分であることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
電気注入アニール試験方法により求めた減衰率R
deg及び再生率R
reに対する温度の影響は、lnR
deg=lnA-(E
a/(k
BT))とlnR
re=lnA-(E
a/(k
BT))(T:温度、E
a:反応活性化エネルギー、k
B=1.38×10
-23J/K、A:周波数因子)でフィッティングすることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
電気注入アニール試験方法により求めた減衰率R
deg及び再生率R
reに対する電流の影響は、1/R
deg=a×I+bと1/R
re=a×I+b(I:電流、a及びb:影響因子)でフィッティングすることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル製造分野に関し、特に、結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーは、クリーンで再生可能なエネルギーとして、その利用が注目されている。結晶シリコン太陽電池は、現在の光起電力市場において主要な製品であるが、光減衰LID(light-induced degradation)の問題は、その規模的な量産及び適用を大きく制限する。市販の光起電力素子の初期光減衰は、電池の初期光減衰に起因するため、電池セルの光減衰耐性処理が必要である。対応する欠陥及び不純物に対する不活性化は、光減衰を抑制する有効な手段であり、そのメカニズムとして、光照射又は電気注入がキャリア濃度を変化させて再結合中心の形成を誘発すると同時に、電子の擬フェルミ準位を変化させ、対応する元素による再結合中心の不活性化を促進する。この注入方式を実現するために、現行の結晶シリコン太陽電池のLID耐性技術は、主に光熱炉及び電気注入アニール炉によって実現されている。
【0003】
従来技術で用いられる光注入アニール装置は、主にトンネル構造であり、トンネル内に光源(ハロゲンランプ/LED/レーザー)を設置し、電池セルがトンネルを通過する際に光源の光熱技術を利用して電池セルを一定温度に加熱し、電池セルに対するLID耐性処理を実現し、単結晶パッシブエミッター及びPERC(Passivated Emitter Rear Contact)の光減衰を効果的に抑制し、変換効率減衰結果を従来の3%~5%から1.5%以内に低減することができる。しかし、実際の試験では、光劣化処理後の電池セルの出力は、あまり安定せず、大きな減衰が見られるとともに、消費電力が大きく、コストが高い。そこで、低コスト化と電池の安定性確保のために、電気注入アニール法による光減衰耐性処理が提案されている。
【0004】
結晶シリコン太陽電池は、欠陥や不純物が複雑であるため、各再結合中心に必要な温度や印加外部電圧は、異なる。活性が失われた再結合中心は、対応する温度を超えるか又は外部電圧が印加されると活性化され、単一の注入方式では、全ての再結合中心を効果的に不活性化することが困難である。多結晶処理方式は、様々な減衰メカニズムに対し、複数のサブステージが存在し、より長い処理時間を必要とする。従って、より効率的に欠陥を不活性化するために、太陽電池セルの主な欠陥の種類とその処理条件を知ること、欠陥の不活性化と活性化の過程における温度と電流の影響を知ることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の欠陥や不備を克服して、結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置を提供することである。この装置は、安定した温度及び電流を提供し、太陽電池セルのエレクトロルミネッセンス画像を異なる温度及び電流条件で取得することができ、電池セル励起欠陥及びパッシベーション欠陥の全過程を容易に確認することができ、構造が簡単で試験が容易である。
【0006】
本発明の他の目的は、結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法を提供する。この方法は、異なる温度及び電流の条件で、太陽電池セルの減衰率及び再生率をそれぞれ取得し、太陽電池セルの減衰率及び再生率に対する温度及び電流の影響をデータ分析により得られる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、以下の技術的解決策によって達成される。
結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、暗箱と、試料試験台と、温度制御装置と、電源装置と、画像取得装置とを含む。太陽電池セルを載置するための前記試料試験台と、太陽電池セルの温度を制御するための前記温度制御装置と、太陽電池セルに電流を供給するための前記電源装置と、異なる温度及び電流条件における太陽電池セルのエレクトロルミネッセンス画像を取得するための前記画像取得装置は、暗箱に位置する。
【0008】
好適な技術的解決策として、前記暗箱は、窒素ガス注入口と排気口とを含む。窒素ガス注入口からは、電気注入アニール試験中に太陽電池セルが酸化することを防止する窒素ガスを注入することができる。
【0009】
好適な技術的解決策として、前記試料試験台は、上部プローブ列と、前記上部プローブ列を固定するための上部プローブ固定枠と、下部プローブ列と、前記下部プローブ列を固定するための下部プローブ固定枠とを含む。
【0010】
好適な技術的解決策として、前記温度制御装置は、前記試料試験台の下方に配置された恒温加熱台と、太陽電池セルに接続された温度センサと、暗箱の排気口に取り付けられたファンと、ファンの通電のオンオフを制御するための温度制御スイッチとを含む。
【0011】
好適な技術的解決策として、前記電源装置は、定電流源である。定電流源は、太陽電池セルに対し、安定した電流を供給することができる。
【0012】
好適な技術的解決策として、前記画像取得装置は、カメラと、カメラスタンドと、カメラ固定ブロックと、スライダとを含み、前記カメラは、カメラ固定ブロックを介してカメラスタンドに固定され、前記カメラは、スライダによってカメラスタンド上をスライド可能である。
【0013】
本発明の他の目的は、以下の技術的解決策によって達成される。
結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
温度制御装置をオンにして太陽電池セルを一定温度Tに保持するステップと、
太陽電池セルを試料試験台に載置し、電気回路を接続し、太陽電池セルに電流Iを注入し、太陽電池セルの初期のエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
温度T及び電流Iを一定に保持し、エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域が一定になるまで、一定期間ごとにエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域の経時的な変化を分析することによって減衰時間tdeg及び再生時間treを推定し、対応する減衰率Rdeg及び再生率Rreが得られるステップと、
温度又は電流を変化させて上記のステップを繰り返し、異なる電気注入アニール条件での結晶シリコン太陽電池の長時間のエレクトロルミネッセンス画像を得て、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreを分析により得るステップと、
減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度、電流の影響を、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreに基づいて分析するステップとを含む。
【0014】
好適な技術的解決策として、温度Tの範囲は、30~100℃であり、電流Iの範囲は、0.1A~15Aであり、撮影間隔の範囲は、1~10分である。
【0015】
好適な技術的解決策として、電気注入アニール試験方法により求めた減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度の影響は、lnRdeg=lnA-(Ea/(kBT))とlnRre=lnA-(Ea/(kBT))(T:温度、Ea:反応活性化エネルギー、kB=1.38×10-23J/K、A:周波数因子)でフィッティングする。
【0016】
好適な技術的解決策として、電気注入アニール試験方法により求めた減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する電流の影響は、1/Rdeg=a×I+bと1/Rre=a×I+b(I:電流、a及びb:影響因子)でフィッティングする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来技術と比較して、以下の利点及び効果を有する。
1.本発明の試験装置は、太陽電池セルのエレクトロルミネッセンス検査と電気注入アニールとを一体化した試験装置であり、電気注入アニール試験中にエレクトロルミネッセンス検査を行うことができ、検査時間を短縮し、試験エネルギーを削減することができる。
2.本発明に用いられる温度制御装置は、検出した太陽電池セルの温度に基づいてファンのオン/オフを制御することにより、太陽電池セルの温度を調整し、降温速度を上げ、試験環境を恒温状態に維持し、異なる電気注入アニール条件での太陽電池セルの減衰及び再生の安定性を確保するのに有効である。
3.本発明は、異なる時間帯における異なる温度及び電流条件でのエレクトロルミネッセンス画像を取得し、化学動力学分析を行い、太陽電池セルの減衰段階及び再生段階に対する温度、電流の影響を研究し、多段階アニール処理の根拠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例における暗箱の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例における暗箱に設置された試料試験台、温度制御装置、電源装置及び画像取得装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例における結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施例及び図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明の実施形態は、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1、2に示すように、本発明の実施例において、結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置を提供する。この装置は、暗箱17と、試料試験台と、温度制御装置と、電源装置と、画像取得装置とを含む。試料試験台と、温度制御装置と、電源装置と、画像取得装置は、暗箱17に位置する。暗箱17は、直方体構造をなし、その一側面に窒素ガス注入口16が開口し、対称な他側面に排気口18が開口している。窒素ガス注入口16から窒素ガスを注入することにより、電気注入アニール試験中に太陽電池セルが酸化されることを防止することができる。暗箱17は、不透光性であり、写し出されるエレクトロルミネッセンス画像の鮮明さがより良好となり、より正確性が高くなる。
【0021】
試料試験台は、上部プローブ固定枠11と、上部プローブ列10と、下部プローブ固定枠2と、下部プローブ列3を含む。上部プローブ固定枠11は、上部プローブ列10を固定し、下部プローブ固定枠2は、下部プローブ列3を固定する。太陽電池セル4は、上部プローブ列10、下部プローブ列3の各プローブが太陽電池セル4の主格子に正確に接触して太陽電池セル4を確実に通電できるように、試料試験台上に載置される。
【0022】
温度制御装置は、恒温加熱台14と、温度センサ12と、温度制御スイッチ13と、ファン19を含む。試料試験台の下方には、最高450℃に制御可能に恒温加熱台14が配置されている。温度センサ12は、熱電対温度センサであり、太陽電池セル4に接続されている。ファン19は、暗箱17の排気口18に取り付けられている。温度制御スイッチ13は、ファン19のオン/オフを制御するためのものである。温度センサ12は、太陽電池セルの温度を温度制御スイッチ13に伝え、温度制御スイッチ13によりファン19のオンオフを制御して、太陽電池セルを恒温に保持する。
【0023】
電源装置は、定電流源15である。定電流源15は、高温耐性ケーブルを介して上部プローブ列10と下部プローブ列3とに接続されている。上部プローブ列10及び下部プローブ列3は、太陽電池セル4の主格子に正確に接触し、太陽電池セル4を確実に通電することができる。
【0024】
画像取得装置は、カメラ9と、カメラスタンド7と、カメラ固定ブロック8と、スライダ6とを含む。カメラ9は、近赤外線カメラであり、カメラ固定ブロック8を介してカメラスタンド7に固定され、スライダ6を介してカメラスタンド7上をスライド可能となっている。カメラ9は、エレクトロルミネッセンス画像を取得するために使用される。減衰率及び再生率に対する電流及び温度の影響は、エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域の変化の規則性によって分析される。画像取得装置及び試料試験台は、アルミニウム合金製のキャリアラック5に取り付けられている。
【0025】
本発明の実施例において、結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法が更に提供され、この方法は、以下のステップを含む。
温度制御装置をオンにして太陽電池セルを50℃の一定温度Tに保持する。
太陽電池セルの主格子を、上部プローブ列10と下部プローブ列3に良好に接触させ、電気回路を接続し、太陽電池セルに10Aの電流Iを注入し、太陽電池セルの初期のエレクトロルミネッセンス画像を取得する。
温度T及び電流Iを一定に保持し、エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域が一定になるまで、一定時間(5分)ごとにエレクトロルミネッセンス画像を取得する。
【0026】
エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域の経時的な変化を分析することにより、減衰時間tdegと再生時間treを推定し、対応する減衰率Rdeg=1/tdegと再生率Rre=1/treを得ることができる。例えば、実験によっては、0h、4h、10h、27h、45h、66h、90h、140hの時点に対応するエレクトロルミネッセンス画像を選択し、暗い領域の変化の様子を分析する。(A)0h~10hから、比較により、エレクトロルミネッセンス画像全体が暗く、均一であること、少数領域において明らかに暗く、減衰が安定し、減衰率が小さいことが分かる。(B)10hから27hの期間中に、画像内の暗い領域は、より均一化され、明らかに際立つ領域はほとんどなく、減衰率に大きな変動は現れない。(C)しかし、45h後には、画像に顕著な局所的な暗い塊が多数現れ、鮮明なコントラストを形成し、減衰に突変が起こり、減衰率が急激に増加する。(D)66hから90hの期間中に、暗い塊がなくなり、徐々に中心領域に移動し、減衰と再生の動的平衡にあり、全体的に減衰が減少し、再生率が増加する。(E)最後の90hから140hまでは、減衰が徐々になくなり、再生が主体となり再生率が安定しており、最終画像は、初期画像に比べて暗い色の痕が僅かに残ったままであるが、無視できる。
【0027】
温度又は電流を変化させて、上記のステップを繰り返し、異なる電気注入アニール条件での結晶シリコン光電池の長時間のエレクトロルミネッセンス画像を得て、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreを分析により得る。
減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度、電流の影響を、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreに基づいて分析する。
【0028】
太陽電池セル4は、Bドープ、Gaドープ、Geドープの単結晶シリコン電池セル、多結晶シリコン電池セルのいずれでもよく、同一メーカの同一仕様の太陽電池セルを選択して試験結果の安定性を確保することが好ましい。温度Tの範囲は、30~100℃であり、電流Iの範囲は、0.1A~15Aであり、撮影間隔の範囲は、1~10分である。
【0029】
複数回の試験を通して、減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度の影響を求め、以下の式でフィッティングすることができる。
lnRdeg=lnA-(Ea/(kBT))とlnRre=lnA-(Ea/(kBT))
ここで、Tは、温度であり、Eaは、反応活性化エネルギーであり、Ea=0.5921、kB=1.38×10-23J/K、Aは、周波数因子であり、A=1.42×10-8。
【0030】
複数回の試験を通して、減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する電流の影響を求め、以下の式でフィッティングすることができる。
1/Rdeg=a×I+bと1/Rre=a×I+b
ここで、Iは、電流であり、a及びbは、影響因子であり、a=-3.11、b=67。
【0031】
上記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示しているにすぎず、その説明は、より具体的かつ詳細であるが、本発明の特許範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の要旨を逸脱しない範囲でいくつかの変形や改良を更に行うことができ、それはすべての本発明の保護範囲に属するものである。従って、本発明特許の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。
【0032】
(付記)
(付記1)
結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
暗箱と、試料試験台と、温度制御装置と、電源装置と、画像取得装置とを含み、
太陽電池セルを載置するための前記試料試験台と、太陽電池セルの温度を制御するための前記温度制御装置と、太陽電池セルに電流を供給するための前記電源装置と、異なる温度及び電流条件における太陽電池セルのエレクトロルミネッセンス画像を取得するための前記画像取得装置は、暗箱に位置することを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0033】
(付記2)
付記1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
前記暗箱は、窒素ガス注入口と排気口とを含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0034】
(付記3)
付記1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
前記試料試験台は、上部プローブ列と、前記上部プローブ列を固定するための上部プローブ固定枠と、下部プローブ列と、前記下部プローブ列を固定するための下部プローブ固定枠とを含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0035】
(付記4)
付記1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
前記温度制御装置は、前記試料試験台の下方に配置された恒温加熱台と、太陽電池セルに接続された温度センサと、暗箱の排気口に取り付けられたファンと、ファンの通電のオンオフを制御するための温度制御スイッチとを含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0036】
(付記5)
付記1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
前記電源装置は、定電流源であることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0037】
(付記6)
付記1に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置であって、
前記画像取得装置は、カメラと、カメラスタンドと、カメラ固定ブロックと、スライダとを含み、前記カメラは、カメラ固定ブロックを介してカメラスタンドに固定され、前記カメラは、スライダによってカメラスタンド上をスライド可能であることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験装置。
【0038】
(付記7)
結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
温度制御装置をオンにして太陽電池セルを一定温度Tに保持するステップと、
太陽電池セルを試料試験台に載置し、電気回路を接続し、太陽電池セルに電流Iを注入し、太陽電池セルの初期のエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
温度T及び電流Iを一定に保持し、エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域が一定になるまで、一定期間ごとにエレクトロルミネッセンス画像を取得するステップと、
エレクトロルミネッセンス画像内の暗い領域の経時的な変化を分析することによって減衰時間tdeg及び再生時間treを推定し、対応する減衰率Rdeg及び再生率Rreが得られるステップと、
温度又は電流を変化させて上記のステップを繰り返し、異なる電気注入アニール条件での結晶シリコン太陽電池の長時間のエレクトロルミネッセンス画像を得て、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreを分析により得るステップと、
減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度、電流の影響を、異なる電気注入アニール条件での減衰率Rdeg及び再生率Rreに基づいて分析するステップとを含むことを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【0039】
(付記8)
付記7に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
温度Tの範囲は、30~100℃であり、電流Iの範囲は、0.1A~15Aであり、撮影間隔の範囲は、1~10分であることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【0040】
(付記9)
付記7に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
電気注入アニール試験方法により求めた減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する温度の影響は、lnRdeg=lnA-(Ea/(kBT))とlnRre=lnA-(Ea/(kBT))(T:温度、Ea:反応活性化エネルギー、kB=1.38×10-23J/K、A:周波数因子)でフィッティングすることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【0041】
(付記10)
付記7に記載の結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法において、
電気注入アニール試験方法により求めた減衰率Rdeg及び再生率Rreに対する電流の影響は、1/Rdeg=a×I+bと1/Rre=a×I+b(I:電流、a及びb:影響因子)でフィッティングすることを特徴とする結晶シリコン太陽電池の電気注入アニール試験方法。
【符号の説明】
【0042】
1 コンピュータ、2 下部プローブ固定枠、3 下部プローブ列、4 太陽電池セル、5 キャリアラック、6 スライダ、7 カメラスタンド、8 カメラ固定ブロック、9 カメラ、10 上部プローブ列、11 上部プローブ固定枠、12 温度センサ、13 温度制御スイッチ、14 恒温加熱台、15 定電流源、16 窒素ガス注入口、17 暗箱、18 排気口、19 ファン。