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特許7050364炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法
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  • 特許-炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/22 20060101AFI20220401BHJP
   E21F 5/06 20060101ALI20220401BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C09K3/22 E
E21F5/06
C08F8/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020564935
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 CN2018100451
(87)【国際公開番号】W WO2020006817
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】201810705644.9
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】周剛
(72)【発明者】
【氏名】張清濤
(72)【発明者】
【氏名】李帥龍
(72)【発明者】
【氏名】孫健
(72)【発明者】
【氏名】姜文静
(72)【発明者】
【氏名】劉冬
(72)【発明者】
【氏名】牛▲ちん▼茜
(72)【発明者】
【氏名】王凱麗
(72)【発明者】
【氏名】刑夢瑶
(72)【発明者】
【氏名】張欣遠
(72)【発明者】
【氏名】丁建飛
(72)【発明者】
【氏名】王▲ぎょく▼穎
(72)【発明者】
【氏名】潘紅衛
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-185956(JP,A)
【文献】特開昭63-022889(JP,A)
【文献】特表2015-508837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002085(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101735771(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105778867(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/22
E21F 5/06
C08F 8/00-8/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセンテージで、3%-5%のリグニンスルホン酸塩、3%-5%の酢酸ビニル、3%-5%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、0.05%-0.1%の開始剤、0.02%-0.04%の架橋剤、0.3%-0.6%の防凍剤及び0.2%-0.4%の腐食抑制剤という成分を含む炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤であって、残量が水である、
ことを特徴とする炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤。
【請求項2】
上記リグニンスルホン酸塩は、リグニンスルホン酸ナトリウムとリグニンスルホン酸カルシウムにおける1種又はその混合物であり、上記開始剤は、過酸化ナトリウムと過硫酸アンモニウムにおける1種であり、架橋剤は、N-Nメチレンビスアクリルアミドである、
ことを特徴とする請求項1に記載の増潤剤。
【請求項3】
増潤剤の調製方法であって、
リグニンスルホン酸塩を水に溶解して、酢酸ビニルを添加し、恒温攪拌装置の温度を60℃に設定して30分間攪拌し、全部溶解してよく混合した後に、上記溶液に開始剤を加え、60℃で2時間反応させ、第1の溶液を取得するステップ1と、
【化1】
再び第1の溶液に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び架橋剤を加えて1時間反応を続け、最終生成物を取得するステップ2と、
【化2】
最終生成物に防凍剤及び腐食抑制剤を加えてよく攪拌して、pH値を調整することによって、上記増潤剤を得ることができるステップ3と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の増潤剤の調製方法。
【請求項4】
調製された上記増潤剤は、再び水とよく攪拌して混合して必要に備え、増潤剤と水を質量比が1:50の割合でよく攪拌して混合する、
ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ3におけるpH値が7-8である、
ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項6】
上記リグニンスルホン酸塩は、リグニンスルホン酸ナトリウムとリグニンスルホン酸カルシウムにおける1種又はその混合物であり、上記開始剤は、過酸化ナトリウムと過硫酸アンモニウムにおける1種であり、架橋剤は、N-Nメチレンビスアクリルアミドである、
ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山の防塵、粉塵抑制の分野に関し、特に炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴い、炭鉱採掘の機械化、自動化の程度が徐々に高くなり、その過程で発生する粉塵も多くなっている。炭鉱粉塵は、坑内の生産安全及び人員の健康に深刻な危害を与える主な災害源の1つであり、煤塵の危害は、主に以下の方面がある。一番目は、一定の条件で自然発火乃至爆発が発生する可能性があり、ガス爆発事故を引き起こしやすいことであり、二番目は、吸入性粉塵の濃度の増大に伴い、坑内の作業員の心身健康を深刻に脅かし、肺塵症及び他の肺部疾病に罹患する確率を大幅に高めることであり、三番目は、炭鉱の坑内の粉塵は、坑内の設備の部品の摩耗を激化させ、機械の精度を低下させたり、故障させたりすることであり、また、大量の粉塵は、坑内の視界を低下させ、誤操作による人員死傷の事故が発生しやすい。実測によると、いかなる措置も取らない状況で、綜絖作業面での粉塵濃度が3000mg/m以上に達することができ、採掘作業面での粉塵濃度が6000mg/m以上に達した。
【0003】
炭鉱の坑内の採掘面は、粉塵を防止するために、一般的に噴霧による粉塵低減の方法を採用するが、石炭体自体の疎水性の特性により、水の煤塵に対する濡れ性が比較的悪く、理想な効果を達成することが困難である。煤塵自体が濡れにくいという特徴に対して、現在広く利用されている技術は、水に既成の工業レベルの界面活性剤を加えるか、又は界面活性剤を配合することである。しかしながら、この方法は、粉塵低減効果が悪く、コストが高く、毒性が高いなどの弊害があり、それに従来の界面活性剤は、分解し難く、大面積で応用されると二次環境汚染を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術の不足に鑑みて、本発明は、粉塵の拡散度合いを小さくし、粉塵抑制の効率を高めるための炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法の提供を目的とする。
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明の解決手段は、炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤を含み、
【0006】
炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤であって、質量パーセンテージで、以下の成分を含み、
【0007】
3%-5%のリグニンスルホン酸塩、3%-5%の酢酸ビニル、3%-5%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、0.05%-0.1%の開始剤、0.02%-0.04%の架橋剤、0.3%-0.6%の防凍剤及び0.2%-0.4%の腐食抑制剤、残量が水である。
【0008】
前記増潤剤は、上記リグニンスルホン酸塩がリグニンスルホン酸ナトリウムとリグニンスルホン酸カルシウムにおける1種又はその混合物であり、上記開始剤が過酸化ナトリウムと過硫酸アンモニウムにおける1種であり、架橋剤がN-Nメチレンビスアクリルアミドである。
【0009】
前記増潤剤は、上記防凍剤が塩化カルシウムであり、腐食抑制剤がリンカルボン酸である。
【0010】
上記増潤剤の調製方法であって、以下のステップを含む。
【0011】
ステップ1、リグニンスルホン酸塩を水に溶解して、酢酸ビニルを添加し、恒温攪拌装置の温度を60℃に設定して30分間攪拌し、全部溶解してよく混合した後に、上記溶液に開始剤を加え、60℃で2時間反応させ、第1の溶液を取得し、
【0012】
【化1】
【0013】
ステップ2、再び第1の溶液に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び架橋剤を加えて1時間反応を続け、最終生成物を取得し、
【0014】
【化2】
【0015】
最終生成物に防凍剤及び腐食抑制剤を加えてよく攪拌して、pH値を調整することによって、上記増潤剤を得ることができるステップ3と、を含む。
【0016】
前記調製方法は、調製された上記増潤剤は、再び水とよく攪拌して混合して必要に備え、増潤剤と水を質量比が1:50の割合でよく攪拌して混合する。
【0017】
前記調製方法は、ステップ3におけるpH値が7-8である、
【0018】
前記調製方法は、上記リグニンスルホン酸塩が、リグニンスルホン酸ナトリウムとリグニンスルホン酸カルシウムにおける1種又はその混合物であり、上記開始剤が、過酸化ナトリウムと過硫酸アンモニウムにおける1種であり、架橋剤が、N-Nメチレンビスアクリルアミドである。
【0019】
前記調製方法は、上記防凍剤が塩化カルシウムであり、腐食抑制剤がリンカルボン酸である。
【0020】
本発明により提供される炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法は、過硫酸の強酸化性によりリグニンにおける―OHの水素を奪って一次ラジカルを生成し、一次ラジカルは酢酸ビニル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-NメチレンビスアクリルアミドのC=Cを攻め、生成したラジカルを水溶液において重合反応させ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び酢酸ビニルをリグニンスルホン酸ナトリウムにグラフトさせる。リグニンスルホン酸ナトリウムの既存のスルホン酸基は、煤塵に対してよい吸着性能を有し、アミド基は、噴出された液滴が煤塵に対して一定の接着性を有し、エステル基は、生成した全体構造の煤塵に対する濡れ能力を高める。この増潤剤と界面活性剤とを配合して噴霧システムに応用することにより、水の表面張力を減少させるだけではなく、霧粒の粉塵に対する濡れ、接着効果を高めることができ、霧粒が粉塵を効果的にぬらし、接着し、包むようにし、粉塵抑制効率を大幅に高め、粉塵の拡散を減少させる。また、この増潤剤は、リグニンスルホン酸ナトリウムを基体として、自然に分解可能であり、粉塵低減後に二次汚染の引き起こしを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、発明における増潤剤の調製のフローの概略図である。
【発明を実施するための態様】
【0022】
本発明は、炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤及び調製方法を提供し、本発明の目的、技術案及び効果をより明瞭、かつ明確にするために、本発明について、以下により詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本発明を解釈するために用いられ、本発明を限定するするために用いられないことを理解すべきである。
【0023】
本発明は、質量パーセンテージで、3%-5%のリグニンスルホン酸塩、3%-5%の酢酸ビニル、3%-5%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、0.05%-0.1%の開始剤、0.02%-0.04%の架橋剤、0.3%-0.6%の防凍剤及び0.2%-0.4%の腐食抑制剤という成分を含み、残量が水である炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤を提供する。上記リグニンスルホン酸塩は、リグニンスルホン酸ナトリウムとリグニンスルホン酸カルシウムにおける1種又はその混合物であり、上記開始剤は、過酸化ナトリウムと過硫酸アンモニウムにおける1種であり、架橋剤は、N-Nメチレンビスアクリルアミドである。上記防凍剤は、塩化カルシウムであり、腐食抑制剤は、リンカルボン酸である。
【0024】
本発明は、図1に示されるように、上記増潤剤の調製方法をさらに提供し、以下のステップを含む。
【0025】
ステップ1、リグニンスルホン酸塩を水に溶解して、酢酸ビニルを添加し、恒温攪拌装置の温度を60℃に設定して30分間攪拌し、全部溶解してよく混合した後に、上記溶液に開始剤を加え、60℃で2時間反応させ、第1の溶液を取得し、
【0026】
【化3】
【0027】
ステップ2、再び第1の溶液に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び架橋剤を加えて1時間反応を続け、最終生成物を取得し、
【0028】
【化4】
【0029】
ステップ3、最終生成物に防凍剤及び腐食抑制剤を加えてよく攪拌して、pH値を調整することによって、上記増潤剤を得ることができる。
【0030】
本発明をさらに説明するために、以下により具体的な実施例を列挙して説明する。
【0031】
実施例1:
2gのリグニンスルホン酸ナトリウムと4mlの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を計って200mlの水に溶解させ、よく溶解して30min攪拌した後、溶液に0.5gの過硫酸アンモニウムを加え、60℃で2時間恒温攪拌して反応させる。再び溶液に2gの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と0.5gのN-Nメチレンビスアクリルアミドを加え、60℃を保持して2時間攪拌し続けて反応させる。反応が終了後、溶液に0.3gの塩化カルシウムと0.2mlのリンカルボン酸を加え、pH値を調整し、2ml取って0.2gのドデシルジメチルベタインと共に1?の水に加えて均一に混合し、関連性能をテストする。
【0032】
実施例2:
2gのリグニンスルホン酸ナトリウムと4mlの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を計って200mlの水に溶解させ、よく溶解して30min攪拌した後、溶液に0.5gの過硫酸アンモニウムを加え、60℃で2時間恒温攪拌して反応させる。再び溶液に4gの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と0.5gのN-Nメチレンビスアクリルアミドを加え、60℃を保持して2時間攪拌し続けて反応させる。反応が終了後、溶液に0.3gの塩化カルシウムと0.2mlのリンカルボン酸を加え、pH値を調整し、2ml取って0.2gのドデシルジメチルベタインと共に1?の水に加えて均一に混合し、関連性能をテストする。
【0033】
実施例3:
2gのリグニンスルホン酸ナトリウムと4mlの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を計って200mlの水に溶解させ、よく溶解して30min攪拌した後、溶液に0.5gの過硫酸アンモニウムを加え、60℃で2時間恒温攪拌して反応させる。再び溶液に6gの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と0.5gのN-Nメチレンビスアクリルアミドを加え、60℃を保持して2時間攪拌し続けて反応させる。反応が終了後、溶液に0.3gの塩化カルシウムと0.2mlのリンカルボン酸を加え、pH値を調整し、2ml取って0.2gのドデシルジメチルベタインと共に1?の水に加えて均一に混合し、関連性能をテストする。
【0034】
【表1】
【0035】
表から分かるように、清水噴霧だけを利用して粉塵低減効率が42~55%しか達成できなく、最高の粉塵低減効率が56.2%であり、効果が比較的悪く、増潤剤を添加した噴霧措置による除塵効率が90%以上に達することができ、最高は、93.5%となり、作業面の平均総粉塵濃度及び平均吸入性粉塵濃度が51.4mg/mと18.8mg/mに低下し、粉塵低減のニーズを満たした。これは、リグニンスルホン酸ナトリウムの既存のスルホン酸基は、煤塵に対してよい吸着性能を有し、アミド基は、噴出された液滴が煤塵に対して一定の接着性を有するようにし、エステル基は、生成された全体構造の煤塵に対する濡れ能力を高めるためである。この炭鉱の噴霧による粉塵低減用の増潤剤と界面活性剤とを配合して噴霧システムに応用することにより、粉塵抑制効率を大幅に向上させ、粉塵の拡散を減少させる。また、当該粉塵抑制剤は、主に天然産物から作られ、無害で無毒であり、自発的に分解することができる。
【0036】
もちろん、上記の説明は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願は、列挙された上記実施例に限定されておらず、当分野に詳しい技術員であれば、本明細書の教示で行ったすべての同等の代替、明らかな変形形態は、いずれも本明細書の実質的な範囲内に含まれ、本発明によって保護されるべきであることを説明すべきである。
図1