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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】保温装置および保温装置キット
(51)【国際特許分類】
   A47G 19/00 20060101AFI20220401BHJP
   A47G 19/30 20060101ALI20220401BHJP
   A47J 36/24 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A47G19/00 C
A47G19/30 Z
A47J36/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021132175
(22)【出願日】2021-08-16
【審査請求日】2021-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521361420
【氏名又は名称】株式会社エゴン
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】杉森 秀則
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520497(JP,A)
【文献】実開昭50-118188(JP,U)
【文献】特開2006-102234(JP,A)
【文献】特開平08-083990(JP,A)
【文献】特表2014-504167(JP,A)
【文献】実開昭59-111132(JP,U)
【文献】特開2001-250633(JP,A)
【文献】特開2021-122713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/00
A47G 19/30
A47J 36/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器の底部に形成された高台の凹み部に前記食器の下方から着脱可能に取り付けられる保温装置であって、
円板状に形成され前記凹み部の底面に対向する面を少なくとも加熱する加熱ヒータと、
前記加熱ヒータを前記底面に対向させた状態に保持する吸着部と、
前記加熱ヒータを加熱する電源として使用され、充電可能な2次電池と、
前記加熱ヒータの温度を調整する通電制御装置と、
前記2次電池および前記通電制御装置を少なくとも収容する外ケースと、を備え、
前記吸着部は、前記加熱ヒータの外周に沿って環状に配置されて設けられ、
前記吸着部は、前記凹み部の前記底面に対向する面に形成された吸盤を有し、
前記外ケースは、前記凹み部の前記底面側にケース開口部が開口され、
前記加熱ヒータの前記凹み部の前記底面に対向する面、および前記吸盤の吸着面は、前記ケース開口部に対して前記凹み部の前記底面側に突出するように形成され、
前記吸着部は、前記加熱ヒータに対して前記凹み部の前記底面側に突出し、
前記加熱ヒータは、前記吸着部を前記凹み部の前記底面に吸着させる際に、前記吸着部の変形を可能にするように可撓性を備え、前記吸着部を前記凹み部の前記底面に吸着させる際に、前記吸着部の変形に対応して前記加熱ヒータが変形可能となっている、
ことを特徴とする保温装置。
【請求項2】
前記加熱ヒータは、
前記凹み部の前記底面に対向する面を加熱することにより、前記底面を加熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載の保温装置。
【請求項3】
前記外ケースに設けられて前記外ケースから前記加熱ヒータの反対側に突出する突起部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保温装置。
【請求項4】
前記外ケースは、
前記凹み部の開口部の側の部位に防水性を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の保温装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の前記保温装置と、
前記保温装置の前記2次電池を充電する充電器と、を備えた、
ことを特徴とする保温装置キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温装置および保温装置キットに関する。
【背景技術】
【0002】
食器によそったり、盛ったりした料理をおいしく食べるには、調理された直後の温度を保つことが重要である。特に、味噌汁やラーメンなどの汁物は、適正な温度が保たれることが望ましい。しかし、料理は、食している間に冷めてしまい、味や香りを損ねることが多い。
【0003】
このため、食器によそったり、盛ったりした料理の保温を目的とする保温食器として、例えば、食器の内側底部に収納凹部を形成し、収納凹部に保温板を離脱可能に収納するものが知られている。この保温食器によれば、例えば、食器内の飲食用液体であるつけ汁が、加熱された保温板から放出される熱によって保温されることにより温度低下が抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、保温食器として、例えば、高台を備える食器の底部に内側から伝導部材を設け、高台に収納室を設け、収納室に蓄熱材を収納するものが知られている。この保温食器によれば、伝導部材が蓄熱材の放熱により加熱され、食器によそったり、盛ったりした料理の保温が可能となる(例えば、特許文献2参照)。
さらに、料理保温装置として、例えば、食器を加熱する加熱プレートの裏面に電気ヒータを設けたものが知られている。この料理保温装置によれば、加熱プレートに食器が載せられることにより、食器内の料理の保温が可能となる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-23888号公報
【文献】実用新案登録第3181608号公報
【文献】特開2017-6190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および特許文献2に示された保温食器は、食器の形状が限定され利用者の嗜好と乖離してしまうという問題点があった。特に、レストランや料理店の店主や料理人は、食器の意匠へのこだわりがあり、食器も提供するサービスの一つとなっているため、食器の審美性が確保されずに意匠が限定されるものを採用しない。また、食器の形状が限定されるために、既に使用している大量の食器を活用できず全て交換するという無駄も生じる。
【0007】
また、特許文献3の料理保温装置は、使用する際に食器のサイズが料理保温装置より小さい必要がある。さらに、食器のサイズが小さすぎると料理を加熱プレートにこぼしたりすることが考えられ、衛生上の観点から好ましくない。加えて、テーブルの上に大きな加熱プレートを備えた料理保温装置を常設しなければならないという問題点があった。
すなわち、特許文献3の料理保温装置を、特にレストランや料理店で使用する場合、審美性が確保できないため料理を楽しむことができず、加えて衛生的にも問題があった。
【0008】
このため、利用者や料理人が既に使用している食器を利用して食器の審美性を確保し、かつ料理をしっかりと保温し、衛生的にも優れた保温装置の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、利用者や料理人が既に使用している任意の食器を利用することにより視覚的にこれまでと全く変わることなく料理を保温し、かつ衛生的に優れた保温装置および保温装置キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る保温装置は、食器の底部に形成された高台の凹み部に前記食器の下方から着脱可能に取り付けられる保温装置であって、前記凹み部の底面に対向する面を少なくとも加熱する加熱ヒータと、前記加熱ヒータを前記底面に対向させた状態に保持する吸着部と、前記加熱ヒータを加熱する電源として使用され、充電可能な2次電池と、前記加熱ヒータの温度を調整する通電制御装置と、前記2次電池および前記通電制御装置を少なくとも収容する外ケースと、を備えている。
【0011】
この構成によれば、食器の高台の凹み部に保温装置を吸着部により食器の下方から着脱可能に取り付けるようにした。よって、利用者や料理人が既に使用している任意の食器、すなわち、視覚的にこれまでと全く変わらない食器に保温装置を取り付けることができる。
また、保温装置を凹み部の底面に吸着部で保持することにより、加熱ヒータを底面に接触(密着を含む)させることができる。よって、加熱ヒータで凹み部の底面を加熱することにより、食器によそったり、盛ったりした料理を保温して温かい状態に保つことができる。
さらに、高台の凹み部に保温装置を取り付けるようにした。よって、例えば、食器内の料理を食器からこぼした場合に、こぼした料理が保温装置にかかるおそれがなく、衛生的に優れている。
これにより、利用者や料理人が既に使用している任意の食器を利用することにより視覚的にこれまでと全く変わることなく料理を保温し、かつ衛生的に優れた保温装置を提供することができる。
【0012】
(2)前記加熱ヒータは、前記凹み部の前記底面に対向する面を加熱することにより、前記底面を加熱してもよい。
【0013】
この構成によれば、加熱ヒータのうち、凹み部の底面に対向する面を加熱するようにした。よって、加熱ヒータにより凹み部の底面を好適に加熱することができる。これにより、食器によそったり、盛ったりした料理を加熱ヒータで保温して温かい状態に保つことができる。
【0014】
(3)前記加熱ヒータは、前記吸着部を前記凹み部の前記底面に吸着させる際に、前記吸着部の変形を可能にするように可撓性を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、加熱ヒータには可撓性が備えられている。よって、吸着部(吸盤を含む)を凹み部の底面に吸着させる際に、吸着部の変形に合わせて加熱ヒータを変形させることができる。これにより、吸着部を凹み部の底面に確実に吸着させて、凹み部の底面に保温装置を着脱可能に取り付けることができる。
【0016】
(4)前記吸着部は、前記凹み部の前記底面に対向する面に形成された吸盤を有してもよい。
【0017】
この構成によれば、吸着部のうち、凹み部の底面に対向する面に吸盤を形成した。よって、吸盤を凹み部の底面に吸着させることにより、凹み部の底面に保温装置を食器の下方から着脱可能に確実に取り付けることができる。
【0018】
(5)前記外ケースに設けられて前記外ケースから前記加熱ヒータの反対側に突出する突起部を備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、外ケースに突起部を設け、突起部を外ケースから加熱ヒータの反対側に突出させた。よって、突起部を凹み部の開口部側に配置できる。これにより、凹み部の開口部から突起部を指でつかんで引っ張ることにより、凹み部から保温装置を容易に取り外すことができる。
ここで、突起部の一例として、可撓性を有する舌片とすることにより、例えば、食器をテーブルに置いたときに、舌片(すなわち、突起部)を弾性変形させて凹み部の内部に収納できる。これにより、食器をテーブルに安定させた状態で置くことができる。
一方、食器をテーブルから持ち上げることにより、舌片を凹み部の開口部側に復元させることができる。これにより、凹み部の開口部から突起部を指で容易につかむことができる。
【0020】
(6)前記外ケースは、前記凹み部の前記開口部の側の部位に防水性を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、外ケースのうち、凹み部の開口部の側の部位に防水性を備えた。よって、例えば、水などが凹み部の開口部から外ケースに付着しても、水などが外ケースの内部に浸入することを防止できる。これにより、外ケースの内部に収容した保温装置の各部品を水などから保護できる。
【0022】
(7)本発明に係る保温装置キットは、(1)から(6)のいずれか1項に記載の前記保温装置と、前記保温装置の前記2次電池を充電する充電器と、を備えている。
【0023】
この構成によれば、保温装置の2次電池を充電する充電器を備えた。よって、食器によそったり、盛ったりした料理を食べた後、保温装置を凹み部から取り外して、保温装置の2次電池を充電器で充電できる。これにより、保温装置を繰り返して使用することが可能になり、保温装置の利便性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、利用者や料理人が既に使用している任意の食器を利用することにより視覚的にこれまでと全く変わることなく料理を保温し、かつ衛生的に優れた保温装置および保温装置キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る一実施形態の保温装置キットを示す斜視図である。
図2】一実施形態の保温装置と食器との関係を示す斜視図である。
図3図1のIII-III線に沿って破断した断面図である。
図4】一実施形態の保温装置を分解した斜視図である。
図5】一実施形態の保温装置をケース底部側からみた平面図である。
図6図5の保温装置を矢視VIの方向からみた側面図である。
図7図1のVII-VII線に沿って破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<保温装置キット>
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る保温装置および保温装置キットについて説明する。
図1に示すように、保温装置キット10は、食器1によそったり、盛ったりした料理を保温する保温装置12と、保温装置12の電源(後述する2次電池23)を充電する充電器14と、を備えている。
<保温装置>
図2図3に示すように、保温装置12は、食器1の底部2に形成された高台3の凹み部4に食器1の下方から着脱可能に取り付けられている。高台3は、周壁5と、底面部(底面)6と、を有する。
周壁5は、例えば、食器1の底部2に沿って円筒状(環状)に形成されている。底面部6は、食器1の底部2のうち、周壁5の内側(中心側)の面をいう。周壁5および底面部6により、高台3の凹み部4が形成されている。凹み部4は、周壁5の下端部5aが開口され、底面部6に向けて凹むように形成されている。以下、周壁5の下端部5aを「凹み部4の開口部5a」ということもある。
【0027】
図2から図4に示すように、保温装置12は、凹み部4の内部に収められる必要があるため、厚さT1が凹み部4の深さDより薄く形成されている。具体的には、保温装置12の厚さT1は10mm以下であることが好ましい。保温装置12は、加熱ヒータ21と、吸着部22と、2次電池23と、電源スイッチ24(図5参照)と、通電制御装置25と、充電用装置26と、外ケース27と、突起部28と、を備えている。
【0028】
加熱ヒータ21は、例えば、円板状に形成され、凹み部4の底面部6に対向する第1面21aを少なくとも加熱するように構成されている。すなわち、加熱ヒータ21は、凹み部4の底面部6に対向する第1面21aのみを加熱してもよい。あるいは、加熱ヒータ21は、凹み部4の底面部6に対向する第1面21aと、第1面21aの反対側の第2面21bとの両面を加熱してもよい。実施形態では、加熱ヒータ21の第1面21aのみを加熱する例について説明する。
【0029】
加熱ヒータ21は、例えば、シリコンラバーヒータなどの極薄のヒータで可撓性を備え、かつ、防水加工が施されているものが好ましい。シリコンラバーヒータは、一般に知られているヒータで、例えば、発熱体であるニクロム線(箔)をシリコンのシートで両側から挟み込んだ面状ヒータであり、例えば厚みが1.8mm程度と非常に薄く形成されている。
【0030】
この加熱ヒータ21は、ニクロム線に電流を流すことにより、ニクロム線から熱を発生させることにより加熱する。また、加熱ヒータ21は、ニクロム線をシリコンのシートで両側から挟み込んでいるため可撓性(フレキシブル性)を備えている。よって、例えば、凹み部4の底面部6が微妙な丸みをおびている場合でも、加熱ヒータ21を底面部6に沿わせた状態に配置できる。
【0031】
このように、加熱ヒータ21を底面部6に沿わせ、加熱ヒータ21のうち、凹み部4の底面 に対向する第1面21aを加熱するようにした。よって、加熱ヒータ21により凹み部4の底面部6を好適に加熱することができる。これにより、食器1によそったり、盛ったりした料理を加熱ヒータ21で保温して温かい状態に保つことができる。
【0032】
なお、実施形態では、加熱ヒータ21としてシリコンラバーヒータを使用する例について説明するが、その他の加熱ヒータ21を使用してもよい。また、実施形態では、加熱ヒータ21を円板状に形成する例について説明するが、加熱ヒータ21の形状は用途に応じて四角形などの他の形状に形成してもよい。
【0033】
吸着部22は、例えば、加熱ヒータ21の外周に沿って一体に設けられている。ここで、保温装置12は、凹み部4に着脱可能に取り付けられて繰り返し使用される。また、凹み部4には水などが浸入することが考えられる。よって、吸着部22は、耐水性を備え、かつ繰り返し使用できる耐久性が要求される。このため、吸着部22としては、耐水性のある吸着素材や、耐水性のある小型の吸盤などを使用することが好ましい。
【0034】
具体的には、吸着部22は、例えば、複数個形成された小さな吸盤31(図6参照)を有する。複数の吸盤31は、凹み部4の底面部6に吸着可能に形成されている。この吸着部22によれば、吸着したい底面部6に複数の小さな吸盤31を押し当てるだけで、複数の吸盤31が真空に近い状態となり底面部6に吸着する。
よって、複数の吸盤31を凹み部4の底面部6に吸着させることにより、凹み部4の底面部6に加熱ヒータ21(すなわち、保温装置12)を食器の下方から着脱可能に確実に取り付けることができる。
また、この吸着部22は、底面部6からの剥離後の再使用が可能である。特に、吸着部22は、例えばミクロ吸盤(登録商標)を使用することが好ましい。
【0035】
なお、実施形態では、吸着部22として複数の小さな吸盤31を例示するが、これに限らない。その他の吸着部22として、例えば、可撓性を備えたシート素材の表面にミクロンサイズの吸盤を複数有する吸着素材などを使用してもよい。
【0036】
ここで、加熱ヒータ21は、吸着部22を凹み部4の底面部6に吸着させる際に、吸着部22の変形を可能にするように可撓性を備えている。よって、吸着部22を凹み部4の底面部6に吸着させる際に、吸着部22の変形に合わせて加熱ヒータ21を変形させることができる。
加えて、吸着部22は、加熱ヒータ21に対して凹み部4の底面部6に突出していることが好ましい。これにより、吸着部22の変形量を十分に確保して、吸着部22を凹み部4の底面部6に一層確実に吸着させることができる。
【0037】
このように、吸着部22を凹み部4の底面部6に確実に吸着させることにより、加熱ヒータ21を底面部6に対向させ、かつ接触(密着を含む)させた状態に保持できる。すなわち、吸着部22により凹み部4の底面部6に保温装置12を着脱可能に取り付けることができる。吸着部22により底面部6に保温装置12を取り付けることにより、底面部6を加熱ヒータ21により好適に加熱できる。
なお、実施形態では、加熱ヒータ21を底面部6に接触(密着を含む)させた状態に保持する例について説明するが、加熱ヒータ21を底面部6に対向させ、かつ底面部6に近づけた状態で保持させてもよい。
【0038】
図3から図5に示すように、2次電池23は、加熱ヒータ21のうち底面部6の反対側の第2面21bに沿って設けられ、例えば四角形状に形成されている。2次電池23は、加熱ヒータ21にワイヤハーネス34により接続され、加熱ヒータ21を加熱する電源として使用される。ワイヤハーネス34の途中には電源スイッチ24が接続されている。なお、電源スイッチ24には、スイッチオンを確認するためのライト36が備えられている。
2次電池23によれば、電源スイッチ24をオンにすることにより、加熱ヒータ21に接続され、加熱ヒータ21を加熱することができる。
【0039】
この2次電池23は、充電可能な電池であり、充電と放電を繰り返して使用することができる。2次電池23は、レストランや料理店での使用に耐えるため、耐久性を持つとともに小型で薄型の形状が好ましい。2次電池23としては、例えば、リチウムイオンポリマー二次電池の使用が好ましい。
【0040】
通電制御装置25は、概ね半円弧状に形成され、2次電池23の一方の辺23aに沿って設けられている。通電制御装置25は、加熱ヒータ21の温度を調整する装置である。すなわち、食器1の素材や底部2(双方、図3参照)の厚みにより熱伝導が変わるため、通電制御装置25で温度を調整することが好ましい。温度は、例えば45~85℃の間で設定できることが好ましい。
具体的には、通電制御装置25は、例えば、温度調節スイッチ41と、温度センサと、制御部と、を備えている。
【0041】
温度調節スイッチ41は、複数(実施形態では3つ)の温度調節ボタン42を備えている。温度調節ボタン42は、後述する外ケース27のケース底部52に設けられている。温度調節ボタン42を押すことにより、例えば、弱(60℃)、中(70℃)、強(80℃)の3段階の温度からいずれかを選択できる。温度調節ボタン42で温度を選択することにより、選択された温度のランプ43が点灯する。
温度調節ボタン42で選択した温度情報は、後述する制御部に伝えられる。温度センサは、加熱ヒータ21の温度を検知し、検知した温度情報を制御部に伝える。
制御部は、温度調節ボタン42で選択した温度情報と、温度センサで検知した温度情報とに基づいて、2次電池23から加熱ヒータ21への通電を制御する。
【0042】
すなわち、温度調節ボタン42で所定温度を選択して加熱ヒータ21を加熱する状態において、加熱ヒータ21の温度が所定温度に到達すると、制御部が2次電池23から加熱ヒータ21への通電を停止する。一方、加熱ヒータ21の温度が所定温度より低くなると、制御部により2次電池23から加熱ヒータ21への通電を開始する。これにより、加熱ヒータ21を温度調節ボタン42で選択した所定温度に加熱できる。
【0043】
図3図4図6に示すように、充電用装置26は、概ね反円弧状に形成され、2次電池23の他方の辺23bに沿って設けられている。充電用装置26は、後述する充電器14の充電端子72(図7参照)に接続可能な充電用の端子46が備えられている。充電用の端子46としては、例えば、Micro-USB端子(Type C)に適用可能なものが好ましい。
充電用の端子46は、2次電池23に接続されている。充電用装置26の充電用の端子46を、後述する充電器14の充電端子72に接続することにより、2次電池23が充電器14により充電される。
【0044】
図3図4に示すように、外ケース27は、凹み部4に収容可能に形成されている。外ケース27は、ケース周壁51と、ケース底部52と、を有する。ケース周壁51は、例えば、凹み部4の周壁5に対して径方向内側に向けてある程度の間隔をあけた状態において、周壁5の内周面に沿って筒状(環状)に形成されている。ケース周壁51のうち凹み部4の開口部5a側の端部にケース底部52が設けられている。また、ケース周壁51のうち凹み部4の底面部6側の端部にケース開口部53が開口されている。
【0045】
外ケース27は、内部に加熱ヒータ21、吸着部22、2次電池23、通電制御装置25、および充電用装置26が収容されている。実施形態では、加熱ヒータ21、吸着部22、2次電池23、通電制御装置25、および充電用装置26を外ケース27の内部に収容する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、2次電池23、通電制御装置25、および充電用装置26が少なくとも外ケース27に収容されていればよい。
なお、外ケース27の内部には、例えば、加熱ヒータ21、吸着部22、2次電池23、通電制御装置25、および充電用装置26を安定させた状態に配置可能な素材が充填されている。
【0046】
ケース開口部53は、加熱ヒータ21の第1面21aおよび吸盤31の吸着面31a(吸着部22の吸着面)に対してケース底部52側に僅かに凹むように形成されている。換言すれば、加熱ヒータ21の第1面21aおよび吸盤31の吸着面31aは、ケース開口部53に対して凹み部4の底面部6側に僅かに突出するように形成されている。
これにより、吸着部22を底面部6に吸着させて加熱ヒータ21を底面部6に接触(密着を含む)させる際に、外ケース27(すなわち、ケース周壁51)が邪魔になることはない。
【0047】
また、外ケース27は、例えばシリコンなどの防水性の素材で形成されている。あるいは、外ケース27は、防水加工が施されている。なお、外ケース27は、少なくとも凹み部4の開口部5aの側の部位(例えば、ケース底部52およびケース周壁51のうちケース底部52側近傍)に防水加工が施されていてもよい。すなわち、外ケース27は、防水性を備えている。
よって、例えば、水などが凹み部4の開口部5aから外ケース27に付着しても、外ケース27の内部に水などが浸入することを防止できる。これにより、外ケース27の内部に収容した保温装置の各部品(すなわち、加熱ヒータ21、吸着部22、2次電池23、通電制御装置25、および充電用装置26)を水などから保護できる。
【0048】
さらに、外ケース27のケース底部52には、段差部55が形成されている。段差部55は、ケース底部52に対して凹むように形成され、段差面56が直線状に延びている。ケース底部52に段差部55(段差面56)を形成した理由については後で詳しく説明する。
【0049】
突起部28は、例えば、外ケース27に設けられて外ケース27から加熱ヒータ21の反対側に突出されている。よって、突起部28を凹み部4の開口部5a側に配置できる。これにより、凹み部4の開口部5aから突起部28を指でつかんで引っ張ることにより、凹み部4から保温装置12を容易に取り外すことができる。
【0050】
ここで、突起部28の一例として、可撓性を有する舌片が挙げられる。突起部28として可撓性を有する舌片を備えることにより、例えば、食器1をテーブルに置いたときに、突起部28を弾性変形させて凹み部4の内部に収納できる。これにより、食器1をテーブルに安定させた状態で置くことができる。
一方、食器1をテーブルから持ち上げることにより、突起部28を凹み部4の開口部5a側に復元させることができる。これにより、凹み部4の開口部5aから突起部28を指で容易につかむことができる。
【0051】
<充電器>
図1図7に示すように、充電器14は、保温装置12の2次電池23を充電する装置である。充電器14は、充電ケース71と、複数の充電端子(すなわち、充電ポート)72と、電源プラグ73と、を備えている。
充電ケース71は、厚さT2が比較的大きく形成され、上面に凹部75を有する。凹部75は、例えば、水平面76と、傾斜面77とによりV字状に形成されている。水平面76は、例えば、充電ケース71の一方の面71aから他方の面71bに向けて、一方の面71aと他方の面71bとの間において中央まで充電ケース71の底面71cに沿って形成されている。以下、一方の面71aを「前面71a」ということもある。また、他方の面71bを「後面71b」ということもある。
【0052】
傾斜面77は、前面71aと後面71bとの間まで延びた水平面76の端部76aから後面71bに向けて上り勾配で形成されている。傾斜面77および水平面76で形成された凹部75には複数の差込部78が形成されている。複数の差込部78は、充電ケース71の厚さT2方向に間隔をあけて形成されている。
【0053】
差込部78は、保温装置12が上方から矢印Aの如く挿入可能に空間が形成されている。差込部78の内部には、差込部78の底部78a側に段部81が形成されている。段部81は、張出面82が差込部78の内部(空間)に向けて張り出されている。張出面82は、充電ケース71の底面71cに沿って前面71a側から後面71b側に向けて直線状に延びている。
よって、差込部78に保温装置12が上方から矢印Aの如く挿入されることにより、保温装置12(具体的には、外ケース27)の段差面56が張出面82に接触する。これにより、保温装置12を差込部78の所定位置まで確実に挿入させることができる。
【0054】
また、差込部78の内部には、差込部78の後面71b側に充電端子72が設けられている。充電端子72は、保温装置12(具体的には、充電用装置26(図3図4参照))に備えられた充電用の端子46(図6参照)に接続可能な端子である。充電端子72としては、例えば、Micro-USB端子(TypeC)が好ましい。
充電端子72は、保温装置12の段差面56が張出面82に接触した状態において、段差面56を張出面82に沿って矢印Bの如く移動することにより、保温装置12の充電用の端子46が接続可能に配置されている。よって、保温装置12の充電用の端子46を、充電器14の充電端子72に容易に、かつ確実に接続させることができる。
【0055】
複数の差込部78の内部に設けられた複数の充電端子72は、電源プラグ73にコード74を介して接続されている。よって、電源プラグ73をコンセント(図示せず)に接続することにより、複数の充電端子72を商用電源に接続できる。
これにより、電源プラグ73をコンセントに接続した状態において、充電用の端子46を充電端子72に接続することにより、保温装置12の2次電池23を充電器14で充電できる。
【0056】
実施形態では、差込部78の内部へ張り出すように段部81を形成し、保温装置12の外ケース27に凹むように段差部55を形成する例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、差込部78に凹状の段部81を形成し、保温装置12の外ケース27に凸状の段差部55を形成してもよい。
【0057】
以上説明したように、図1に示す実施形態の保温装置キット10には、食器1によそったり、盛ったりした料理を保温する保温装置12を備えている。保温装置12は、食器1の高台3の凹み部4に食器1の下方から吸着部22により着脱可能に取り付けられる。よって、利用者や料理人が既に使用している任意の食器1、すなわち、これまでと視覚的に全く変わらない食器1の凹み部4に保温装置12を取り付けることができる。
【0058】
また、図3に示すように、保温装置12を凹み部4の底面部6に吸着部22で保持することにより、加熱ヒータ21を底面部6に接触(密着を含む)させることができる。よって、加熱ヒータ21で凹み部4の底面部6を加熱することにより、食器1によそったり、盛ったりした料理を保温して温かい状態に保つことができる。
【0059】
さらに、高台3の凹み部4に保温装置12を取り付けるようにした。よって、例えば、食器1内の料理を食器1からこぼした場合に、こぼした料理が保温装置12にかかるおそれがなく、衛生的に優れている。
これにより、利用者や料理人が既に使用している任意の食器1を利用することにより視覚的にこれまでと全く変わることなく料理を保温し、かつ衛生的に優れた保温装置12を提供することができる。
【0060】
加えて、図1に示すように、実施形態の保温装置キット10には、保温装置12の2次電池23を充電する充電器14を備えている。よって、食器1によそったり、盛ったりした料理を食べた後、保温装置12を食器1の凹み部4から取り外して、保温装置12の2次電池23を充電器14で充電できる。これにより、保温装置12を繰り返して使用することが可能になり、保温装置12の利便性を一層高めることができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、高台3の周壁5が円筒状に形成された食器1に合わせて、保温装置12を円形に形成した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、高台の周壁が四角形などに形成されている食器の場合、高台に合わせて保温装置を四角形などに形成してもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 食器
2 底部
4 凹み部
5 周壁
5a 開口部
6 底面部(底面)
10 保温装置キット
12 保温装置
14 充電器
21 加熱ヒータ
22 吸着部
23 2次電池
25 通電制御装置
27 外ケース
28 突起部
31 吸盤
【要約】
【課題】利用者や料理人が既に使用している任意の食器を利用することにより視覚的にこれまでと全く変わることなく料理を保温し、かつ衛生的に優れた保温装置および保温装置キットを提供する。
【解決手段】保温装置は、食器の高台に形成された凹み部に下方から着脱可能に取り付けられる。保温装置は、加熱ヒータと、吸着部と、2次電池と、通電制御装置と、外ケースと、を備える。加熱ヒータは、凹み部の底面部を加熱する。吸着部は、加熱ヒータを底面部に対向させた状態に保持する。2次電池は、加熱ヒータを加熱する電源として使用される。通電制御装置は、加熱ヒータの温度を調整する。外ケースは、少なくとも2次電池および通電制御装置を収容する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7