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特許7050383乗合自動車の配車方法及び乗合自動車の配車システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】乗合自動車の配車方法及び乗合自動車の配車システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20220401BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017138030
(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公開番号】P2019020973
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-05-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517249521
【氏名又は名称】順風路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】吉富 広三
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-342873(JP,A)
【文献】特開平03-176770(JP,A)
【文献】特開2004-295576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者から少なくとも乗車場所、降車場所及び乗車人数を含む利用申込情報を受信する利用申込受信工程と、受信端末に備えられたプログラムが現在運行中の既存の運行を抽出する運行抽出工程と、前記受信端末に備えられたプログラムが該運行抽出工程で抽出した現在運行中の既存の運行の中から、利用者の乗車場所及び降車場所を運行中の経路に挿入できる既存の運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択工程と、運行選択工程で選択された既存の運行をしている車両を利用者に配車する配車工程とで構成され、
運行選択工程では、既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能な運行で、かつ、運行時間に最も余裕がある既存の運行を優先して選択する乗合自動車の配車方法。
【請求項2】
利用者端末と、該利用者端末と電気通信回線を介して接続可能で、利用者の乗車場所、降車場所及び乗車人数を指定した利用申込情報を受信可能な受信端末と、現在運行中の既存の運行を抽出できると共に、抽出した運行の中から前記受信端末で受信した利用者の乗車場所及び降車場所を経路に挿入できる現在運行中の既存の運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択手段と、該運行選択手段で選択された運行を行う車両に配車指示を行う配車指示手段と、車両に搭載され、配車指示手段からの配車指示を受信できる車両端末とで構成され、
運行選択手段は、既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能な運行で、かつ、運行時間に最も余裕がある既存の運行を優先して選択する乗合自動車の配車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はいわゆるオンデマンド交通に用いられる乗合自動車の配車方法及び乗合自動車の配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗合自動車の配車システムとしては、例えば、「サーバとして機能する予約システムと、タクシー営業者が所有するタクシーに備えられるタクシー端末と、利用者が前記タクシーの相乗りを予約するに当り希望する希望予約情報、および相乗りをするのに都合の良い他の利用者からの希望予約情報の有無についての連絡をもらうための連絡先情報を前記予約システムへ送信するユーザー端末とを通信ネットワークで接続し、前記予約システムは、前記希望予約情報を受信すると当該ユーザー端末へ利用料金を提示し、前記連絡先情報の受信を該利用料金の了承と見なして、前記相乗りをするのに都合の良い他の利用者からの希望予約情報とのマッチング処理を行い、マッチングが成立した場合には利用者識別情報を生成して、該当する全ユーザー端末にマッチング成立の旨と利用者識別情報を送信し、また配車するタクシーのタクシー端末へは前記利用者識別情報および前記希望予約情報を送信し、前記利用者識別情報および前記希望予約情報を受信したタクシー端末は、該情報を保持しておき、当該タクシーは利用者から提示される利用者識別情報との一致を条件に前記希望予約情報に基づいて運行することを特徴とする乗合タクシー予約・運行システム」(特許文献1)や「少なくとも各客の希望乗車地点および希望降車地点が指定された利用要求を受付ける利用要求受付手段と、前記利用要求を含む客情報を保持する客情報保持手段と、乗合車両の車両情報を含む運用情報を保持する運用情報保持手段と、道路ネットワーク情報を取得して保持する道路ネットワーク情報取得手段と、少なくとも前記客情報保持手段が保持する客情報、前記運用情報保持手段が保持する運用情報、および前記道路ネットワーク情報取得手段が保持する道路ネットワーク情報を所定の評価関数に入力し、該評価関数を最適にするよう前記利用要求に指定された希望乗車地点と希望降車地点を巡回する前記乗合車両の巡回経路および巡回時刻を特定する乗合車両運行スケジュールを作成する乗合車両運行スケジュール作成手段と、作成された前記乗合車両運行スケジュールを出力するスケジュール出力手段と、を具備することを特徴とする乗合車両運行スケジューリングシステム」(特許文献2)等が知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の乗合自動車の配車システムでは、予め指定した時間の予約を受付、マッチングした場合にはタクシーを運行し、各利用者に配車を行っていた。
【0004】
そのため、乗りたい時にリアルタイムで乗り合いタクシーの配車依頼をできるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-308596号公報
【文献】特開2002-342873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、リアルタイムで乗合自動車の配車依頼をできる乗合自動車の配車方法及び乗合自動車の配車システムを提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の乗合自動車の配車方法は、利用者から少なくとも乗車場所、降車場所及び乗車人数を含む利用申込情報を受信する利用申込受信工程と、現在運行中の既存の運行を抽出する運行抽出工程と、該運行抽出工程で抽出した現在運行中の既存の運行の中から、利用者の乗車場所及び降車場所を運行中の経路に挿入できる既存の運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択工程と、運行選択工程で選択された既存の運行をしている車両を利用者に配車する配車工程とで構成され、運行選択工程では、既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能な運行で、かつ、運行時間に最も余裕がある既存の運行を優先して選択することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の乗合自動車の配車システムは、利用者端末と、該利用者端末と電気通信回線を介して接続可能で、利用者の乗車場所、降車場所及び乗車人数を指定した利用申込情報を受信可能な受信端末と、現在運行中の既存の運行を抽出できると共に、抽出した運行の中から前記受信端末で受信した利用者の乗車場所及び降車場所を経路に挿入できる現在運行中の既存の運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択手段と、該運行選択手段で選択された運行を行う車両に配車指示を行う配車指示手段と、車両に搭載され、配車指示手段からの配車指示を受信できる車両端末とで構成され、運行選択手段は、既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能な運行で、かつ、運行時間に最も余裕がある既存の運行を優先して選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項2に記載の各発明においては、逐次挿入法を用いて既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能な運行を選択するので、確実に運行全体の到着時間等を維持しながら、新たな経路を挿入することができる。
(2)また、最も余裕時間のある既存の運行を優先して選択することにより、確実に運行の終了時刻を遵守して新規な経路を挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図3は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図4及び図5は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
図6及び図7は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
図1】第1の実施形態の乗合自動車の配車方法の工程図。
図2】第1の実施形態の乗合自動車の配車システムのブロック図。
図3】フローチャート。
図4】第2の実施形態の乗合自動車の配車方法の工程図。
図5】フローチャート。
図6】第3の実施形態の乗合自動車の配車方法の工程図。
図7】フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図3に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は乗合自動車の配車方法である。
【0013】
この乗合自動車の配車方法1は、図1に示すように、利用者から少なくとも乗車場所、降車場所及び乗車人数を含む利用申込情報を受信する利用申込受信工程2と、既存の運行を抽出する運行抽出工程3と、該運行抽出工程3で抽出した運行の中から、利用者の乗車場所及び降車場所を運行中の経路に挿入できる運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択工程4と、運行選択工程4で選択された運行を実施する車両5を利用者に配車する配車工程6とで構成されている。
【0014】
この乗合自動車の配車方法1では、乗合自動車の配車システム7を用いて行われる。この乗合自動車の配車システム7は、図2に示すように、利用申込情報を送信可能な利用者端末8と、該利用者端末8と電気通信回線を介して接続可能で、利用者の少なくとも乗車場所、降車場所及び乗車人数を指定した利用申込情報を受信可能な受信端末9と、運行を抽出できると共に、抽出した運行の中から前記受信端末9で受信した利用者の乗車場所及び降車場所を経路に挿入できる運行を逐次挿入法を用いて選択する運行選択手段10と、該運行選択手段10で選択された運行を行う車両5に配車指示を行う配車指示手段11と、車両5に搭載され、配車指示手段11からの配車指示を受信できる車両端末12とで構成されている。
【0015】
本実施形態では、運行選択手段10、配車指示手段11は受信端末9に備えられたプログラム等を想定しており、既存の運行(現在運行中の運行)やその経路は受信端末9の記憶装置13に記憶されている。
【0016】
なお、運行選択手段10、配車指示手段11は受信端末9とは別個の端末等に備えるものや、独立した装置で、有線又は無線で接続されるものでもよく、運行計画は受信端末9以外の端末に記憶されていてもよいし、インターネット上のサーバー等に記憶されていてもよい。
【0017】
乗合自動車の配車方法1について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。まず、利用者が利用者端末8から乗車場所、降車場所、乗車時間、降車時間、乗車人数等を指定した利用申込情報を入力して、インターネット回線を介して送信する。利用者から利用申込情報が送信されると、受信端末9はその利用申込情報を受信する利用申込受信工程2が行われる。
【0018】
なお、図示等しないが、利用者の個人情報等は、利用者データベース等に保存されてお
り、この利用者データベースは受信端末9等の記憶装置に記憶されている。
【0019】
利用者が入力した乗降時間や降車時間は、あくまでも乗車希望時間、降車希望時間であり、後述する運行選択工程4で選択された運行によっては、多少乗降時間が前後する。また、この乗降時間は、いずれか一方のみを指定することもでき、いずれも指定しないことも可能である。
【0020】
運行抽出工程3では、受信端末9と接続された運行選択手段10により、利用申込内容、すなわち、乗降場所や乗降時間等を取得するとともに、既存の運行を抽出する。
既存の運行は、記憶装置13に記憶されており、運行選択手段10は、この記憶装置13にアクセスし、既存の運行を抽出する。
【0021】
次に、運行選択手段10は、既存の運行を抽出した後、この既存の運行の経路に新たな乗降場所(経路)が挿入可能かどうか逐次挿入法を用いて判断する運行選択工程4を行う。
【0022】
この既存の運行においては、既に予約が入っているなどで運行に制約が掛かっており、休憩時間などの指定もあり、新たな経路を挿入しても運行可能の車両かどうか判断する。
運行選択手段10は、逐次挿入法を用いて既存の運行の余裕時間内に新たな利用申込情報の経路を挿入可能なものを選択する。
【0023】
例えば、既存の運行の経路(地点A-地点B)の間に、新たに利用者から利用申込があった経路(乗車地点C-降車地点B)を挿入する場合には、以下のような基準で新たな経路が挿入可能であるか否かを判定する。
RTA-B:A-Bの運行直行時間
SLA-B:A-Bの余裕時間
RTA-C:A-Cの運行直行時間
RTC-B:C-Bの運行直行時間
RTA-B+SLA-B≧ RTA-C+ RTC-Bであれば、挿入可と判定するRTA-B+SLA-B< RTA-C+ RTC-Bであれば、挿入不可と判定するところで、A-Bの運行直行時間とは、地点Aから地点Bへ直行した場合に必要となる時間である。
【0024】
A-Bの余裕時間とは、既存の運行が有する時間的な余裕であり、例えばA-Bの運行直行時間が30分であり、既存の運行ではA-B間の運行時間として45分と設定されていた場合、A-Bの余裕時間は15分となる。
A-Cの運行直行時間とは地点Aから地点Cへ直行した場合に必要となる時間である。
C-Bの運行直行時間とは地点Cから地点Bへ直行した場合に必要となる時間である。
運行選択手段10は、このような判定を行い、新たな利用申込内容の経路をリアルタイムで挿入できる既存の運行を選択する。
【0025】
このとき、本実施形態では、新規利用申込の内容が経路に挿入可能と判断された既存の運行の中で、挿入により消費された余裕時間の量により優先度を判断する。具体的には、余裕時間の消費量の少ないほど優先度が高いと判断し、優先度の高い既存の運行を選択する。最も余裕時間のある既存の運行を優先して選択することにより、確実に運行の終了時刻を遵守して新規な経路を挿入することができる。
【0026】
利用者が乗降時間のいずれも指定しない場合には、経路が挿入可能な車両のうち、例えば最も早く乗車できる車両を優先して選択する等の予め設定された条件にしたがって既存の運行が選択される。
【0027】
なお、既存の運行がない場合や、新たな利用申込の経路を挿入可能な既存の運行がない場合には、フローチャートにあるように新たな車両を運行し、利用者に配車することもできる。
【0028】
運行選択手段10が利用者の利用申込情報の経路が挿入可能な既存の運行を選択したら、配車指示手段11は、選択された運行を行っている車両5の車両端末12に配車指示をインターネット回線を介して送信するとともに、利用者の利用申込内容にそって車両を配車する配車工程6を行う。
【0029】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図4乃至図7に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
図4及び図5に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、挿入可能と判断された既存の運行の中で、利用者が入力した乗降時間との差が少ないほど優先度が高いと判断し、優先度の高い既存の運行を選択する運行選択工程4Aを行う乗合自動車の配車方法1Aにするとともに、このような選択を行う運行選択手段10を用いた乗合自動車の配車システム7にしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、降車時間を指定している場合、降車時間よりも早く到着する運行の中で、最も希望降車時間と近いものを選択し、希望降車時間よりも遅く到着する運行は選択しないことが望ましい。
【0032】
図6及び図7に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、挿入可能と判断された既存の運行の中で、運行全体の時間の伸びが少ないほど優先度が高いと判断し、優先度の高い既存の運行を選択する運行選択工程4Bを行う乗合自動車の配車方法1Bにするとともに、このような選択を行う運行選択手段10を用いた乗合自動車の配車システム7にしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
すなわち、新たな利用申込情報の経路を挿入することにより、運行に要する時間が30分から45分に伸びる運行Aと、運行に要する時間が40分から45分に伸びる運行Bがあった場合、新たな利用申込情報の経路を挿入した後の運行全体として要する時間は同じであるが、運行Bの方が時間の伸びが少ないため、運行Bを優先して選択する。
このような運行選択工程4Bを行うことで、運行の効率化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は乗合自動車を配車する産業で利用される。
【符号の説明】
【0035】
1、1A、1B:乗合自動車の配車方法、
2:利用申込受信工程、 3:運行抽出工程、
4、4A、4B:運行選択工程、 5:車両、
6:配車工程、 7:乗合自動車の配車システム、
8:利用者端末、 9:受信端末、
10:運行選択手段、 11:配車指示手段、
12:車両端末、 13:記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7