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  • 特許-減圧弁 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/20 20060101AFI20220401BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20220401BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F16K17/30 A
F16K1/32 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018009788
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019128771
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】両川 和也
(72)【発明者】
【氏名】金崎 桂介
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-207517(JP,A)
【文献】実開昭62-194972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00-16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側通路と、二次側通路と、一次側通路と二次側通路との境界部に配設された弁座と、一次圧を受けるピストンヘッドの一端から延びる第1弁軸に取り付けられると共に二次側通路内に配設されて弁座に対峙する弁体と、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸に取り付けられて二次圧を受けるダイヤフラムと、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸を介してピストンヘッドを弁体方向へ付勢するバネとを有し、弁体は、有底筒状のカバーと、カバーに内嵌合して一端面が弁座に対峙する環状のシール部材とを有し、シール部材に挿通された第1弁軸に螺合してカバー底壁に当接するナット又はねじと第1弁軸に形成されシール部材の前記一端面の内周縁部に当接する環状鍔部とに挟持されて弁体が第1弁軸に取り付けられており、シール部材の前記一端面内周縁部と環状鍔部との当接部の環状鍔部の外周縁部に環状突起が形成されていることを特徴とする減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水回り機器に使用される減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と、二次側通路と、一次側通路と二次側通路との境界部に配設された弁座と、一次圧を受けるピストンヘッドの一端から延びる第1弁軸に取り付けられると共に二次側通路内に配設されて弁座に対峙する弁体と、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸に取り付けられて二次圧を受けるダイヤフラムと、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸を介してピストンヘッドを弁体方向へ付勢するバネとを有し、弁体は、有底筒状のカバーと、カバーに内嵌合して一端面が弁座に対峙する環状のシール部材とを有し、シール部材に挿通された第1弁軸に螺合してカバー底壁に当接するナット又はねじと第1弁軸に形成されシール部材の前記一端面の内周縁部に当接する環状鍔部とに挟持されて弁体が第1弁軸に取り付けられた減圧弁が広く使用されている。
上記減圧弁には、閉弁時に一次側通路にウォーターハンマーが発生し、シール部材に高水圧が印加された時に、シール部材の外周縁部が捲れ上がり、カバーと弁座との間にかみ込んで、故障する場合があるという問題があった。
特許文献1は、シール部材をカバーに接着固定し、或いはシール部材をカバーにインサート成形し、或いはカバー周側壁をかしめることにより、シール部材の捲れ上がりを防止した減圧弁を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-207517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、シール部材の捲れ上がりは、シール部材一端面の内周縁部と弁軸の環状鍔部との当接部を通って、弁軸周側面とシール部材内周側面との当接部と、シール部材他端面とカバーとの当接部とに侵入した高圧水が、シール部材を捲れ方向に付勢した結果発生することを見出した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、一次側通路と、二次側通路と、一次側通路と二次側通路との境界部に配設された弁座と、一次圧を受けるピストンヘッドの一端から延びる第1弁軸に取り付けられると共に二次側通路内に配設されて弁座に対峙する弁体と、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸に取り付けられて二次圧を受けるダイヤフラムと、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸を介してピストンヘッドを弁体方向へ付勢するバネとを有し、弁体は、有底筒状のカバーと、カバーに内嵌合して一端面が弁座に対峙する環状のシール部材とを有し、シール部材に挿通された第1弁軸に螺合してカバー底壁に当接するナット又はねじと第1弁軸に形成されシール部材の前記一端面の内周縁部に当接する環状鍔部とに挟持されて弁体が第1弁軸に取り付けられた減圧弁であって、閉弁時に一次側通路に発生したウォーターハンマーによる弁体シール部材の捲れ上がりが、従来とは異なる手段で防止された減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、一次側通路と、二次側通路と、一次側通路と二次側通路との境界部に配設された弁座と、一次圧を受けるピストンヘッドの一端から延びる第1弁軸に取り付けられると共に二次側通路内に配設されて弁座に対峙する弁体と、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸に取り付けられて二次圧を受けるダイヤフラムと、前記ピストンヘッドの他端から延びる第2弁軸を介してピストンヘッドを弁体方向へ付勢するバネとを有し、弁体は、有底筒状のカバーと、カバーに内嵌合して一端面が弁座に対峙する環状のシール部材とを有し、シール部材に挿通された第1弁軸に螺合してカバー底壁に当接するナット又はねじと第1弁軸に形成されシール部材の前記一端面の内周縁部に当接する環状鍔部とに挟持されて弁体が第1弁軸に取り付けられており、シール部材の前記一端面内周縁部と環状鍔部との当接部の環状鍔部の外周縁部に環状突起が形成されていることを特徴とする減圧弁を提供する。
本発明に係る弁構造においては、弁体のシール部材の一端面内周縁部と第1弁軸の環状鍔部との当接部の、環状鍔部に環状突起が形成されているので、環状突起部でのシール部材と環状鍔部との当接部の面圧が上昇し、前記当接部に強い止水機能が生ずる。この結果、一次側通路のウォーターハンマーで発生した高圧水が、第1弁軸周側面とシール部材内周側面との当接部と、シール部材の他端面とカバーとの当接部とに侵入する事態の発生が防止され、ひいてはシール部材の捲れ上がりが防止される。環状鍔部に環状突起を形成するのはシール部材をカバーに接着固定し、或いはインサート成形し、或いはカバー周側壁をかしめるのに比べて安価である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施例に係る減圧弁の断面図である。(a)は全体構造を示す断面図であり、(b)は弁体の拡大断面図であり、(c)は弁軸の変形例の拡大部分断面図であり、(d)は弁体の変形例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る減圧弁を説明する。
図1(a)、(b)に示すように、減圧弁1はボディ10を備えている。ボディ10の一部がシリンダ11を形成している。減圧弁1は、シリンダ11内で往復摺動するピストンヘッド12と、ピスンヘッド12の一方の端面から延びてシリンダ11の一端からシリンダ11外へ突出する第1弁軸13と、シリンダ11の前記一端が形成する環状の弁座14と、第1弁軸13のシリンダ11外へ突出した一端に固定されて弁座14と対峙する弁体15と、シリンダ11周壁の第1弁軸13に対峙する部位に形成された開口16と、ピストンヘッド12の他方の端面から延びてシリンダ11の他端からシリンダ11外へ突出する第2弁軸17と、第2弁軸17のシリンダ11他端から突出した一端部に中心部が固定されたダイヤフラム18と、ボディ10の一部により形成され、ダイヤフラム18に対峙しダイヤフラム18とシリンダ11とピストンヘッド12と協働して感圧室19を形成するダイヤフラムケース20と、第2弁軸17のシリンダ11他端から突出した一端部に固定されると共に第2弁軸17に形成された鍔部と協働してダイヤフラム18の内周縁部を挟持するバネ押さえ21と、バネ押さえ21と第2弁軸17とを介してピストンヘッド12を弁体15方向へ付勢するバネ21aと、バネ21aを収容すると共にダイヤフラムケース20と協働してダイヤフラム18の外周縁部を挟持するバネケース22と、ピストンヘッド12の周溝に収容されてピストンヘッド12とシリンダ11内周面との摺接部をシールするOリング23とを備えている。
【0008】
ボディ10は、シリンダ11の周壁の開口16とシリンダ11の内部空間とを介して弁座14と弁体15との間に形成される環状隙間Sに連通する弁流入口24と、弁座14と弁体15との間に形成される環状隙間Sに連通する弁流出口25とを有している。
弁流入口24と環状隙間Sとの間の流路が一次側通路26を形成し、環状隙間Sと弁流出口25との間の流路が二次側通路27を形成している。
弁体15は二次側通路27内に配設されており、感圧室19は二次側通路27に連通している。
弁体15は、底壁に第1弁軸13の挿通穴が形成された有底筒状のカバー15aと、カバー15aに内嵌合して一方の端面15b1が弁座14に対峙する矩形断面の環状のシール部材15bとを有している。弁体15は、シール部材15bとカバー15aとに挿通された第1弁軸13に螺合してカバー15aの底壁に当接するナット28と、第1弁軸13に形成されシール部材15bの端面15b1の内周縁部に当接する環状鍔部13aとに挟持されて第1弁軸13に取り付けられている。シール部材15bの端面15b1内周縁部と環状鍔部13aとの当接部の環状鍔部13aの外周縁部に、半円断面の環状突起13bが形成されている。
【0009】
シリンダ11、ピストンヘッド12、第1弁軸13、弁座14、弁体15、第2弁軸17、ダイヤフラム18、バネ21aは、協働して、一次側通路26と二次側通路27との境界部Sの流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構を形成している。
減圧弁1の弁流入口24は、図示しないストレーナと逆止弁とを介して図示しない水道配管に接続し、減圧弁1の弁流出口25は、図示しない給湯器の貯湯タンクに接続している。給湯器の貯湯タンクはシャワーヘッドや浴槽吐水口等の図示しない吐水装置に接続している。
【0010】
減圧弁1の作動を説明する。
吐水装置が閉鎖され、減圧弁1より下流側の流路内の水と湯とが停止している時は、減圧弁1は閉弁している。
吐水装置が開放されると、減圧弁1の二次圧(二次側通路27内と感圧室19内の水圧)が低下する。この結果、ダイヤフラム18に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が減少し、バネ21aによる開弁方向の付勢力を受けて弁体15が弁座14から離れ、減圧弁1は開弁する。弁体15と弁座14との間に形成された環状隙間Sを水道水が流れる際に圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
二次側通路27と感圧室19とは連通しているので、二次側通路27内の水道水圧である減圧弁1の二次圧がダイヤフラム18に印加される。一次側通路26内の水道水圧である減圧弁1の一次圧は、ピストンヘッド12の周溝に収容されたOリング23がピストンヘッド12とシリンダ11の摺接部をシールすることにより、感圧室19には伝達されず、ダイヤフラム18には印加されない。
【0011】
何らかの原因で二次圧が上昇するとバネ21aの付勢力に抗してダイヤフラム18が弁座14から遠ざかる方向へ弾性変形し、ダイヤフラム18に固定された第2弁軸17が、ひいてはピストンヘッド12、第1弁軸13がダイヤフラム18に追随してダイヤフラム18側へ移動し、弁体15が弁座14に接近する。この結果、弁座14と弁体15との間の環状隙間Sが狭まり、前記環状隙間Sを水道水が通過する際の圧力損失が増加する。この結果、二次圧が下降する。従って、減圧弁1においては、二次圧は所定値以下に維持される。
【0012】
吐水装置が閉鎖されると、減圧弁1内の流速が零へ向けて急減する。前記流速の急減に伴って、一次圧(一次側通路26内の水圧)と二次圧(二次側通路27内と感圧室19内の水圧)との差圧が急減する。この結果、ダイヤフラム18に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が急増し、バネ21aの付勢力に逆らって弁体15が弁座14へ向けて移動し、弁座14に当接して環状隙間Sを閉鎖する。この結果、減圧弁1は閉弁する。
減圧弁1内の流速が零へ向けて急減している途中で減圧弁1が閉弁することにより、閉弁後二次圧は一次圧よりも低い値に維持される。この結果、閉弁後に給湯器に取り付けられた逃がし弁が開弁する等の不都合な事態の発生が防止される。
【0013】
減圧弁1の閉弁時に、上流側の水道配管に接続された水機器の止水動作によって一次通路26にウォーターハンマーが惹起される場合がある。この場合、ウォーターハンマーで発生した高圧水が第1弁軸13の周側面とシール部材15b内周側面との当接部と、シール部材の他方の端面15bとカバー15aとの当接部とに侵入すると、シール部材15bが径方向外方と弁座14方向とに押されて捲れ上がり、カバー15aと弁座14との間にかみ込んで、減圧弁機構が故障する。しかし減圧弁1においては、シール部材15bの端面15b内周縁部と弁軸13の環状鍔部13aとの当接部の、環状鍔部13a外周縁部に環状突起13bが形成されているので、環状突起部でのシール部材15bと環状鍔部13aとの当接部の面圧が上昇し、前記当接部に強い止水機能が生ずる。この結果、一次通路26に惹起されたウォーターハンマーで発生した高圧水が弁軸13周側面とシール部材15b内周側面との当接部と、シール部材15bの端面15bとカバー15aとの当接部とに侵入する事態の発生が防止され、ひいてはシール部材15bの捲れ上がりが防止され、減圧弁機構が故障する事態の発生が阻止される。環状鍔部13aに環状突起13bを形成するのはシール部材15bをカバー15aに接着固定し或いはインサート成形し或いはカバー15a周側壁をかしめるのに比べて安価である。
【0014】
環状鍔部13aに形成する環状突起13bの断面形状は半円形に限定されない。図1(c)に示すように三角形でも良い。シール性能の観点から、環状突起13bの径方向配設位置は外周縁部が最も良い。
図1(d)に示すように、弁体15を、シール部材15bとカバー15aとに挿通された第1弁軸13に螺合してカバー15aの底壁に当接するねじ29と、第1弁軸13に形成されシール部材15bの端面15b1の内周縁部に当接する環状鍔部13aとで挟持して、第1弁軸13に取り付けても良い。この場合、第1弁軸13の端部をカバー15aに挿通せずに、カバー15aの底壁に突き当ても良い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、減圧弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 減圧弁
10 ボディ
11 シリンダ
12 ピストンヘッド
13 第1弁軸
13a 環状鍔部
13b 環状突起
14 弁座
15 弁体
15a カバー
15b シール部材
15b、15b 端面
18 ダイヤフラム
19 感圧室
20 ダイヤフラムケース
21 ばね押さえ
21a バネ
22 バネケース
23 Oリング
24 弁流入口
25 弁流出口
26 一次側通路
27 二次側通路
28 ナット
29 ねじ
図1