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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】測量システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 11/06 20060101AFI20220401BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220401BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01C11/06
G01C15/00 103A
G06T1/00 285
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017091452
(22)【出願日】2017-05-01
(65)【公開番号】P2018189470
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-087307(JP,A)
【文献】特開2016-138826(JP,A)
【文献】特開2014-167413(JP,A)
【文献】特開2013-108927(JP,A)
【文献】特表2014-513792(JP,A)
【文献】特開2015-212621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 11/06
G01C 15/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられ、隣り合う画像が一部重なるようにして写真測量用の画像を複数撮影する撮影部と、
既知の位置に設けられ既知点座標を有し、前記撮影部を追尾して前記撮影部の位置を測量する測量部と、
前記複数の写真測量用の画像を撮影する中で、少なくとも1枚は前記測量部を含む画像を撮影させるよう前記移動体及び前記撮影部を制御する撮影制御部と、
前記撮影部により撮影した各画像の相対的な撮影位置を示す相対撮影位置の点群を算出する相対撮影位置算出部と、
前記測量部により測量した測量結果から前記移動体の移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、
前記相対撮影位置算出部により算出された前記相対撮影位置の点群と前記移動軌跡算出部により算出された前記移動軌跡とを対応付けることで、前記測量部により測量した測量結果を、前記撮影部により撮影した各画像の撮影位置に対応付けし、さらに前記測量部を含む画像から前記測量部を認識して、前記測量部の既知点座標に基づき前記測量結果と対応付けした撮影位置の補正を行うことで、写真測量用のデータを生成する写真測量解析部と、
を備える測量システム。
【請求項2】
前記写真測量解析部は、前記測量部を含む画像から、予め設定した前記測量部が示す特徴を抽出することで、前記測量部を認識する請求項1に記載の測量システム。
【請求項3】
前記写真測量解析部は、前記撮影部を測距するために前記測量部から前記撮影部に向けて照射される測距光を、前記測量部が示す特徴として設定する請求項記載の測量システム。
【請求項4】
前記写真測量解析部は、前記測量部の視準方向を示すガイドライトを、前記測量部が示す特徴として設定する請求項記載の測量システム。
【請求項5】
前記写真測量解析部は、前記測量部の一部又は全部の外形及び色彩の少なくともいずれかを、前記測量部が示す特徴として設定する請求項記載の測量システム。
【請求項6】
前記測量部は、標識部材が設けられており、
前記写真測量解析部は、前記標識部材を、前記測量部が示す特徴として設定する請求項記載の測量システム。
【請求項7】
前記標識部材は、前記測量部において、前記既知点座標に対応する器械点を通る鉛直線上を中心とする円状又は円弧状の部材である請求項記載の測量システム。
【請求項8】
前記標識部材は、前記円状又は円弧状の部分が、前記器械点と同じ高さに位置している請求項記載の測量システム。
【請求項9】
前記標識部材は、前記測量部において、前記既知点座標に対応する器械点を特定可能な複数箇所に設けられている請求項記載の測量システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真測量のための画像を撮影する移動撮影装置と、当該移動撮影装置の位置を測量する測量装置とを含む写真測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動体にカメラを搭載し、当該カメラにより2以上の異なる位置から撮影した画像(静止画像及び動画像を含む)を用いて測量を行ういわゆるステレオ写真測量が知られている。
【0003】
特に近年では、移動体としてUAV(Unmanned aerial vehicle:小型無人飛行体)を用い、UAVにカメラを搭載して、上空から撮影した画像に基づく写真測量が行われている。
【0004】
このような写真測量では、撮影した各画像の空間的な位置関係を合わせることにより対象地域のステレオモデルを生成している。
【0005】
例えば、特許文献1では、飛行体が測定対象範囲の上空を葛折状に飛行しつつ画像を撮影する。この撮影は、各画像が進行方向にて隣接する画像、及び隣接するコースにて隣接する画像がそれぞれ所定量オーバーラップするよう、周期的に撮影される。そして、全ての撮影を終えた後、進行方向にて隣接する3画像について、1組の隣接する画像を相互標定して1つのステレオ画像を作成し、もう1組の隣接する画像も相互標定して他のステレオ画像を作成し、この2組のステレオ画像の共通した画像で且つ3画像が重複する部分から抽出した特徴点を用いて2組のステレオ画像を接続する。さらに隣接するコースで隣接する画像から共通のタイポイントを選択し、コースで隣接するステレオ画像を接続していくことで、全測定対象範囲をカバーし、共通の3次元座標系で表される統一ステレオ画像(ステレオモデル)を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-108927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように撮影した画像を合成して生成されるステレオモデルからは、相対的な位置関係は解析できるが、絶対的なスケール(距離)、位置、回転等の要素は特定できず、最終的な絶対座標を決定することはできない。
【0008】
特許文献1では、撮影時の飛行体の絶対座標をGPS(Global Positioning System)により測量しているが、GPSによる測量は、トータルステーション(測量装置)により飛行体の位置を測量するよりも撮影位置を特定する精度が低いという問題がある。
【0009】
一方、トータルステーションによりUAVの位置を測量する場合、撮影時にはトータルステーションとUAVのカメラとが離れているため、カメラでの撮影位置と測量結果との対応付けが必要となる。
【0010】
この他にも、絶対座標を求めるべく全ての画像内に座標が既知である標定点を写り込ませることで撮影した画像と地上点とを対応付けることができるが、この場合少なくとも4つ以上の標定点を写り込ませる必要があり、撮影に制限がかかる。また、この標定点を設定するために事前に測量対象地域にて標定点の絶対座標を測定する必要がある上、撮影した画像内に標定点が明瞭に写り込むように、標定点を示す対空標識を設置する必要があり、労力がかかるという問題もある。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、移動体に搭載のカメラにより撮影した撮影位置と測量装置によりカメラを追尾測量した測量結果との対応付けを行う写真測量解析において、対空標識の設置等を必要とすることなく解析精度を向上させることのできる測量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明に係る測量システムは、移動体に設けられ、隣り合う画像が一部重なるようにして写真測量用の画像を複数撮影する撮影部と、既知の位置に設けられ既知点座標を有し、前記撮影部を追尾して前記撮影部の位置を測量する測量部と、前記複数の写真測量用の画像を撮影する中で、少なくとも1枚は前記測量部を含む画像を撮影させるよう前記移動体及び前記撮影部を制御する撮影制御部と、前記撮影部により撮影した各画像の相対的な撮影位置を示す相対撮影位置の点群を算出する相対撮影位置算出部と、前記測量部により測量した測量結果から前記移動体の移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、前記相対撮影位置算出部により算出された前記相対撮影位置の点群と前記移動軌跡算出部により算出された前記移動軌跡とを対応付けることで、前記測量部により測量した測量結果を、前記撮影部により撮影した各画像の撮影位置に対応付けし、さらに前記測量部を含む画像から前記測量部を認識して、前記測量部の既知点座標に基づき前記測量結果と対応付けした撮影位置の補正を行うことで、写真測量用のデータを生成する写真測量解析部と、を備える
【0013】
また、上述の測量システムとして、前記写真測量解析部は、前記測量部を含む画像から、予め設定した前記測量部が示す特徴を抽出することで、前記測量部を認識してもよい。
【0014】
また、上述の測量システムとして、前記写真測量解析部は、前記撮影部を測距するために前記測量部から前記撮影部に向けて照射される測距光を、前記測量部が示す特徴として設定してもよい。
【0015】
また、上述の測量システムとして、前記写真測量解析部は、前記測量部の視準方向を示すガイドライトを、前記測量部が示す特徴として設定してもよい。
【0016】
また、上述の測量システムとして、前記写真測量解析部は、前記測量部の一部又は全部の外形及び色彩の少なくともいずれかを、前記測量部が示す特徴として設定してもよい。
【0017】
また、上述の測量システムとして、前記測量部は、標識部材が設けられており、前記写真測量解析部は、前記標識部材を、前記測量部が示す特徴として設定してもよい。
【0018】
また、上述の測量システムとして、前記標識部材は、前記測量部において、前記既知点座標に対応する器械点を通る鉛直線上を中心とする円状又は円弧状の部材としてもよい。
【0019】
また、上述の測量システムとして、前記標識部材は、前記円状又は円弧状の部分が、前記器械点と同じ高さに位置してもよい。
【0020】
また、上述の測量システムとして、前記標識部材は、前記測量部において、前記既知点座標に対応する器械点を特定可能な複数箇所に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記手段を用いる本発明によれば、移動体に搭載のカメラにより撮影した撮影位置と測量装置によりカメラを追尾測量した測量結果との対応付けを行う写真測量解析において、対空標識の設置等を必要とすることなく解析精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る測量システムの全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る測量システムの制御ブロック図である。
図3】測量装置の一例を示す外観斜視図である。
図4】相対撮影位置の点群の一例(a)及び飛行軌跡の一例(b)を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る測量システムの写真測量用データ生成ルーチンを示すフローチャートである。
図6】相対撮影位置の点群と飛行軌跡との対応付け手順の一例(a)~(d)を示す説明図である。
図7】測量装置に基づく既知点座標による補正手順の一例を示す説明図である。
図8】画像から測量装置を認識するための外観上の特徴に関する第1変形例から第4変形例(a)~(d)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0024】
図1には本発明の一実施形態に係る測量システムの全体構成図が示されており、図2には当該測量システム1の制御ブロック図、図3には測量装置の一例を示す外観斜視図、図4には相対撮影位置の点群の一例(a)及び飛行軌跡の一例(b)の説明図が示されている。本発明の実施形態に係る測量システム1の全体構成と制御系をこれらの図1図4を用いて説明する。
【0025】
測量システム1は、写真測量を行う測量システムであり、移動しつつ写真測量用の画像を複数撮影する移動撮影装置2と、当該移動撮影装置2の位置を測量する測量装置3(測量部)と、撮影結果と測量結果を解析して写真測量のためのデータを生成し、当該データを用いて写真測量解析を行う解析装置4を有している。
【0026】
移動撮影装置2は、移動体であるUAV10に、写真測量用の画像を撮影するカメラ11(撮影部)が搭載されて構成されている。なお、カメラ11が撮影する画像は静止画像及び動画像でもよい。
【0027】
詳しくは、UAV10は、予め定められた飛行経路を飛行したり、遠隔操作により自由に飛行したりすることが可能な飛行移動体である。当該UAV10には飛行を行うための飛行機構10aの下部にジンバル機構10bが設けられている。
【0028】
カメラ11はUAV10のジンバル機構10bより支持されており、当該ジンバル機構10bによって撮影方向を自由に変更可能であるとともに、所定の方向を撮影するよう姿勢を安定化させることが可能である。
【0029】
また、カメラ11は、本体下面にレンズ部12が形成されており、当該レンズ部12の先端横にプリズム13が設けられている。
【0030】
測量装置3は、既知である位置座標上に設けられているトータルステーションであり、測量対象を自動追尾可能である。測量装置3は水平方向に回転駆動可能な水平回転駆動部30上に、鉛直方向に回転可能な鉛直回転駆動部31を介して望遠鏡部32が設けられている。また望遠鏡部32には、ターゲットまでの斜距離を測定する、例えば光波距離計等の測距部33が設けられている。
【0031】
詳しくは、測量装置3は、プリズム13を測量対象としたプリズム測量により、測量装置3からプリズム13までの距離測定(測距)が可能であると共に水平角、鉛直角が測定可能である。したがって、測量装置3を既知の位置に設置して、姿勢を整準させてプリズム13の測量を行うことで、測量結果(斜距離、水平角、鉛直角)からプリズム13の絶対座標を算出可能である。より詳しくは、測量装置3は、測量の基準となる器械点を有しており、設置された既知の位置に対して器械高を考慮した器械点の既知点座標を基準に絶対座標を算出する。なお、測量装置3を既知の位置に設置できない場合等は、後方交会法により既知の基準点から器械点の座標を算出してもよい。このように測量装置3は、カメラ11のレンズ部12の先端横に設けられているプリズム13の位置を測量しているが、測量時又は測量後にレンズ部12の中心位置とプリズム13の位置関係に基づき測量結果を補正してカメラ11のレンズ中心位置の測量結果を算出する。以下の説明では、測量結果とはこの補正した測量結果のことをいう。
【0032】
解析装置4は、写真測量用のソフトウェアを有するパーソナルコンピュータ等の情報処理端末である。詳しくは、解析装置4は、移動撮影装置2の飛行経路の設定や写真の撮影方法の設定、及びデータ解析等を行う。データ解析については、例えば、測量装置3により測量した測量結果を、移動撮影装置2により撮影した各画像の撮影位置に対応付けて写真測量用のデータを生成し、当該データに基づき写真測量解析を行ってステレオモデルを生成可能である。
【0033】
測量システム1は、図1に示すように、移動撮影装置2により予め定められた所定の飛行経路を移動しながら所定の撮影周期で写真測量用の画像P1、P2、…Pnを複数撮影する。これらの画像P1、P2、…Pnは、隣り合う画像が一部重なるように撮影される。この撮影とともに、測量装置3によりカメラ11を追尾して連続的に測量が行われる。そして、解析装置4により、移動撮影装置2により撮影した画像P1、P2、…Pnの撮影位置と測量装置3により測量した測量結果R1、R2、…Rmとを対応付けることで写真測量用のデータを生成する。
【0034】
次に図2を参照しつつ、測量システム1の移動撮影装置2、測量装置3、及び解析装置4が搭載するコンピュータに基づく制御系の構成を説明する。
【0035】
図2に示すように、移動撮影装置2は、撮影制御部14を有しており、当該撮影制御部14には操作部15、撮像部16、撮影記憶部17、及び通信部18が電気的に接続されている。なお、図示しないが、撮影制御部14にはこの他にも表示部等が接続されていたり、センサ等が接続されていたりしてもよい。
【0036】
操作部15は撮影制御部14に対する各種の動作指示や設定を入力するための操作手段である。例えば、動作指示としては、電源のオン、オフの切替、撮影開始とするトリガ、撮影モードの切替、撮影周期の設定、画質の設定、測量装置3との接続オン、オフの切替等がある。また操作部15は、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてもよい。
【0037】
撮像部16は、撮影動作を行う部分であり、光学像を電気信号に変換するCCDやCMOS素子等の撮像素子やシャッターを有する。
【0038】
撮影記憶部17は、移動撮影装置2の飛行経路及び撮像部16による撮影動作のタイミングや、ジンバル機構10bによるカメラ11の撮影方向等を含む撮影計画に関するプログラム(以下、撮影計画プログラムという)や、当該撮影計画に基づき撮影された画像データ等を記憶する部分である。これらのデータ及びプログラムはメモリカード等の記憶媒体や通信部18を介した通信により、出入力が可能である。
【0039】
通信部18は、外部機器と通信可能な部分であり、例えば無線通信手段である。
【0040】
撮影制御部14は、カメラ11による撮影に関する制御及びUAV10による移動に関する制御を行う部分である。例えば、撮影制御部14は撮影記憶部17に記憶されている撮影計画プログラムに基づき、飛行経路に沿うようUAV10を飛行させる。また、撮影制御部14は、ジンバル機構10bを制御してカメラ11の撮影方向を調整したり、所定の周期で撮影を行うよう撮像部16を制御したりすることが可能である。
【0041】
例えば本実施形態の撮影制御部14は、1~3s(秒)の予め設定した撮影周期で撮影を行うよう撮像部16を制御し、撮影された画像データを撮影記憶部17に記憶させる。また、本実施形態の撮影計画プログラムでは、測量装置3の上空を通過する飛行経路が設定されており、撮影される複数の画像のうちの少なくとも1枚には測量装置3が写り込むように計画されている。
【0042】
測量装置3については、図3に示す測量装置3の一例も参照しつつ説明する。測量装置3は、測量制御部34に上述の水平回転駆動部30、鉛直回転駆動部31、測距部33の他に、水平角検出部35、鉛直角検出部36、表示部37、操作部38、追尾光送光部39、追尾光受光部40、通信部41、及び測量記憶部42が接続されている。
【0043】
水平角検出部35は、水平回転駆動部30による水平方向の回転角を検出することで、望遠鏡部32で視準している水平角を検出可能である。鉛直角検出部36は、鉛直回転駆動部31による鉛直方向の回転角を検出することで、望遠鏡部32で視準している鉛直角を検出可能である。これら水平角検出部35及び鉛直角検出部36により、測量結果としての水平角及び鉛直角を検出する。また、図3に示すように、水平角の基準となる鉛直軸Va及び鉛直角の基準となる水平軸Haの交点が器械点Sとなり、この器械点Sの位置が既知点座標となる。
【0044】
表示部37は、例えば液晶モニタであり、測量結果(斜距離、水平角、鉛直角)等の各種情報を表示可能である。
【0045】
操作部38は、測量制御部34に各種の動作指示や設定を入力するための操作手段である。例えば、動作指示としては、電源のオン、オフの切替、測量開始とするトリガ、測量モードの切替、測量周期の設定等がある。また当該操作部38はカメラ11の操作部と同様、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0046】
追尾光送光部39は追尾光を照射し、追尾光受光部40はプリズム13により反射された追尾光を受光する部分である。測量制御部34が、この追尾光送光部39からの追尾光を追尾光受光部40が受光し続けるよう水平回転駆動部30及及び鉛直回転駆動部31を制御することでターゲットの追尾機能を実現している。
【0047】
図3に示すように、測距部33及び追尾光送光部39は望遠鏡部32内に設けられており、測距光L及び追尾光は望遠鏡部32の視準方向に向けて照射される。この測距光L及び追尾光は測量装置3の器械点Sを含む直線上を通ることとなる。
【0048】
通信部41は、外部機器と通信可能な部分であり、例えば無線通信手段である。
【0049】
測量記憶部42は、上述の追尾機能のプログラムや、所定の測量周期で測量を行うプログラム等の測量に関する各種プログラムや、測量データを記憶する部分であり、記憶された測量データはメモリカード等の記憶媒体や通信部41等の通信部41を介して外部へ伝達可能である。
【0050】
ガイドライト照射部43は、測距部33の視準方向を作業者に案内するためのガイドライトを照射する部分である。当該ガイドライトは測距光と同方向に照射される可視光である。ガイドライト照射部43は、ガイドライトを連続点灯させたり、点滅させたり等、照射状態を変更可能であるとともに、光の色や光量の調整も可能である。
【0051】
測量制御部34は、プリズム13の追尾が成立すると、例えば1~100msの所定の測量周期で連続的に移動撮影装置2のカメラ11の位置の測量を行う。そして、測量結果としての測量データを測量記憶部42に記憶させる。
【0052】
解析装置4は、相対撮影位置算出部50、飛行軌跡算出部51、写真測量解析部52、及び通信部53を有している。
【0053】
詳しくは、相対撮影位置算出部50は、移動撮影装置2の撮影記憶部17に記憶されている画像データを取得して、各画像の標定解析を行い各画像の相対的な撮影位置を示す相対撮影位置を算出する。つまり、相対撮影位置は、絶対的なスケール(距離)、位置、回転は定まっていない各画像間の相対的な位置情報となり、例えば図4(a)に示すように当該位置情報を点に表すと、各相対撮影位置は点群Pとして表すことが可能である。なお同図では、各相対撮影位置に対応した画像の撮影範囲を矩形枠として表している。ここでは、説明の簡略化のため、各撮影範囲を離して示しているが、実際には隣り合う画像はそれぞれ一部重なり合っている。
【0054】
飛行軌跡算出部51は、測量装置3の測量記憶部42に記憶されている測量データを取得して、当該測量データから移動撮影装置2の飛行軌跡(移動軌跡)を算出する。測量装置3は短い周期で連続的にカメラ11を追尾測量していることから、これらの測量結果に基づく位置情報を表示すると、例えば図4(b)に示すように移動撮影装置2の飛行軌跡Tとして表すことが可能である。
【0055】
通信部53は、外部機器と通信可能な部分であり、例えば無線通信手段である。解析装置4の通信部53、カメラ11の通信部18、測量装置3の通信部41は相互に通信可能である。従って、例えば、カメラ11により撮影した画像データ及び測量装置3により測量した測量結果を、全ての撮影及び測量後、又は1回の撮影ごと及び1回の測量ごとに各通信部18、41、53を介して解析装置4に送信することも可能である。
【0056】
写真測量解析部52は、相対撮影位置算出部50により算出された相対撮影位置の点群Pと、飛行軌跡算出部51により算出された飛行軌跡Tとを対応付けることで、測量結果を各画像の撮影位置に対応付けする。さらに、写真測量解析部52は、測量装置3を含む画像から測量装置3を認識して、当該測量装置3の既知点座標に基づき、測量結果に対応付けされた撮影位置の補正を行った上で、写真測量用のデータを生成する。
【0057】
具体的には、写真測量解析部52は、相対撮影位置の点群Pと飛行軌跡Tとのずれが最小となるように相対的撮影位置の点群を飛行軌跡に調整することで対応付けを行い、各画像の絶対的な撮影位置、即ち撮影位置の絶対座標を設定する。そして、写真測量解析部52は、さらに、移動撮影装置2が撮影した複数の画像データの中で測量装置3が写り込んでいる画像から測量装置3を認識し、当該測量装置3が有する既知点座標に基づいて、撮影位置の絶対座標の補正を行うことで写真測量用のデータを生成する。そして、写真測量解析部52は、この写真測量用のデータに基づき写真測量解析を行い、ステレオモデルを生成する。
【0058】
ここで、図5には本実施形態の測量システムにおける写真測量ルーチンを示すフローチャートが、図6には相対撮影位置の点群と飛行軌跡との対応付け手順の一例(a)~(d)が、図7には既知点座標に基づく補正手順の一例が、それぞれ示されている。以下、途中図6図7を参照しつつ、図5のフローチャートに沿って本実施形態の測量システムの写真測量用データの生成手法について説明する。
【0059】
まず、図5に示す写真測量ルーチンを開始する前提として、移動撮影装置2は写真測量の対象となる範囲の上空を、撮影計画プログラムに沿って、図4(b)で示したように葛折状の経路で飛行し且つ所定の撮影周期でカメラ11による撮影を行うよう設定される。
【0060】
そして、写真測量ルーチンのステップS1として、測量装置3は、飛行している移動撮影装置2の追尾測量を開始する。
【0061】
続くステップS2として、移動撮影装置2はカメラ11による撮影を開始する。
【0062】
ステップS3では、移動撮影装置2は撮影計画プログラムに基づく撮影の中で、少なくとも1枚は測量装置3が写り込む画像を撮影する。
【0063】
そして、ステップS4で、移動撮影装置2が設定された飛行経路の飛行を完了し、全ての撮影を終える。ここで、カメラ11の撮影記憶部17に記憶された画像データ及び測量装置3の測量記憶部42に記憶された測量データを解析装置4に入力する。
【0064】
すると、ステップS5にて、解析装置4の相対撮影位置算出部50は、画像データに基づき、図4(a)で示したような相対撮影位置の点群Pを算出する。
【0065】
また、ステップS6にて、解析装置4の飛行軌跡算出部51は、測量データに基づき、図4(b)で示したような移動撮影装置2の飛行軌跡Tを算出する。
【0066】
そして、ステップS7において、写真測量解析部52は、ステップS5にて算出された相対撮影位置の点群と、ステップS6にて算出された飛行軌跡との対応付けを行う。
【0067】
この対応付け手順について、詳しくは、まず写真測量解析部52は、図6(a)に示すように飛行軌跡T上に相対撮影位置の点群Pを重ね合わせ、各々の中心位置を合わせるように、点群Pを移動させる。
【0068】
中心位置が略一致した後、写真測量解析部52は、図6(b)に示すように、相対撮影位置の点群Pと飛行軌跡Tとの方向が合うよう、例えば略直線部分の延在方向が合うように、点群Pを回転させる。
【0069】
点群Pと飛行軌跡Tとの方向が略一致した後、写真測量解析部52は、図6(c)に示すように、相対撮影位置の点群Pが飛行軌跡T上に重なるように、点群Pを拡大させる。なお、ここで点群Pの方が飛行軌跡Tよりも範囲が広がっている場合は点群Pを縮小させる。
【0070】
さらに、写真測量解析部52は、点群Pの移動、回転、拡大又は縮小の微調整を行って図6(d)に示すように、相対撮影位置の点群Pが飛行軌跡T上に略一致させる。
【0071】
このように写真測量解析部52は、相対撮影位置の点群Pと飛行軌跡Tとのずれが最小となるように相対的撮影位置の点群Pを飛行軌跡Tに調整し、各相対撮影位置に一致する測量結果を当該相対撮影位置の絶対座標として対応付ける。なお、相対撮影位置の各点全てが飛行軌跡上に一致するとは限らず、飛行軌跡中に相対撮影位置と一致する測量結果が存在しない場合には、当該相対撮影位置に最も近い測量結果を当該相対撮影位置とする。
【0072】
さらに、ステップS8において、写真測量解析部52はカメラ11が撮影した複数の画像データのうち、測量装置3が写り込んでいる画像から測量装置3を認識する。詳細には写真測量解析部52は、予め設定した測量装置3が示す特徴を抽出することで、測量装置3を認識する。例えば本実施形態では、写真測量解析部52は、測量装置3より照射される測距光Lを、測量装置3が示す特徴として設定し、これを目印に測量装置3を認識する。つまり、画像上に写り込んだ測距光Lを示す光点(例えば赤い点)を抽出して、当該光点の位置を測量装置3の位置として認識する。
【0073】
その後、ステップS9において、写真測量解析部52は、ステップS8で認識した測量装置3の位置、即ち器械点Pにおける既知点座標に基づいて、上記ステップS7にて測量結果と対応付けした撮影位置を補正する。
【0074】
詳細には図7に示すように、写真測量解析部52はステップS7での対応付け後の撮影位置に基づく測量装置3の座標A1と、測量装置3の既知点座標A2との差異値を求める。そして、ステップS7にて対応付けした各撮影位置に対して、既知点座標A2側に差異値分移動させた位置を最終的な撮影位置の絶対座標として設定する。このように絶対座標の付与された画像を写真測量用のデータとする。
【0075】
なお、図6図7では説明を簡略化するため2次元的な調整についてのみ示しているが、実際には3次元的な調整を行う必要がある。また、図6図7は、簡易に説明するための概念図であって、ここでの各調整は一例であり、その他一般的な調整(マッチング)を適用可能である。また、図6図7の調整作業及び微調整は写真測量解析部52による自動調整の他、作業者が手動で行うことも可能である。また、図7では、理解しやすいように対応付け後と補正後との撮影位置の差異を実際よりも大きく示している。
【0076】
そして、図4のステップS10にて、写真測量解析部52は、ステップS9にて生成された写真測量用のデータに基づき写真測量解析を行って、絶対的なスケール(距離)、位置、回転も定まったステレオモデルを生成し、当該ルーチンを終了する。
【0077】
以上のように、本実施形態の測量システム1では、まず、移動撮影装置2のカメラ11で撮影した画像から相対的撮影位置の点群Pを算出するとともに、測量装置3による測量結果から飛行軌跡Tを算出し、この点群Pと飛行軌跡Tとを対応付けることで、測量結果を各画像の撮影位置に対応付けている。
【0078】
そして、写真測量解析部52は、さらに測量装置3が写り込んだ画像から測量装置3を認識し、測量装置3が有する既知点座標に基づいて撮影位置の補正を行っている。つまり、測量装置3を標定点として用いている。
【0079】
このように、測量装置3による測量結果を対応付けた撮影位置に対し、さらに既知点座標に基づく補正を行うことで、各画像の撮影位置としてより高精度な絶対座標を得ることができる。また、この補正は、測量装置3を既知の位置に設置し、撮影する画像内に測量装置3を含めるだけでよいことから、別途対空標識等を設置するなどの追加の作業等を必要とすることなく、容易に写真測量の解析精度を向上させることができる。
【0080】
また、写真測量解析部52は、画像内に写り込んだ測量装置3の認識を、予め定めた測量装置3が示す特徴を抽出することで行っている。このように、予め測量装置3を認識するための特徴を定めておくことで、容易に測量装置3を認識することができる。
【0081】
特に、本実施形態によれば、写真測量解析部52は、測量装置3がカメラ11の位置を測距するために測量装置3からカメラ11に向けて照射する測距光Lを、測量装置3が示す特徴として定め、これを目印に測量装置3を抽出している。測量装置3はカメラ11を追尾測量していることから測距光Lは常にカメラ11に向けて照射されており、測量装置3が示す特徴として認識しやすい。したがって、このような測距光Lを目印とすることで画像内から測量装置3を容易に認識することができる。
【0082】
以上で本発明の一実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0083】
上記実施形態では、写真測量解析部52は、画像に写り込んだ測量装置3を認識するための特徴として、測距光Lを用いているが、測量装置3が示す特徴はこれに限られるものではない。
【0084】
例えば、測量装置3が示す特徴として、測距光の他にも追尾光を用いてもよいし、測量装置3の視準方向を示すガイドライトを用いてもよい。ガイドライトは、測距光と同じく追尾測量中にはカメラ11を指向する上、照射状態や光の色や光量の調整も可能であり自由度が高く、より測量装置3を認識しやすくすることができる。なお、ガイドライトは器械点Sを通らないため、既知点座標を得るためにはガイドライト照射部43と器械点Sとのずれを修正する補正が必要となる。上記実施形態ではガイドライト照射部43は測量装置3に一つのみ設けられているが、複数設けてもよい。複数設けることで各ガイドライト照射部と器械点とのずれの補正の精度を向上させることができる。
【0085】
測量装置を認識するための測量装置が示す特徴はこれに限られず、図7に測量装置が示す特徴についての第1変形例から第4変形例(a)~(d)が示されており、以下これらの図に基づき説明する。
【0086】
図7(a)は測量装置の望遠鏡部を正面視した概略図であり、同図に示す第1変形例では、写真測量解析部52は望遠鏡部32の外形(太線)及び色彩(斜線範囲)等の外観上の特徴を測量装置3が示す特徴として設定している。これにより、測距光等の光がカメラ11に照射されていない状態で撮影された画像からも測量装置3を抽出することができる。なお、外観上の特徴はこれに限られず、測量装置3の他の部分の一部又は全部の外形及び色彩を設定してもよい。
【0087】
また、測量装置3に標識部材を設け、この標識部材を測量装置3が示す特徴として設定してよく、これによってより確実に測量装置3を抽出することができる。
【0088】
例えば図7(b)に示す第2変形例のように、測量装置3の器械点と同じ高さ位置にて、当該器械点を中心とした円環状の標識部材60を、測量装置3を囲むように設けてもよい。このように、測量装置3よりも画像内に大きく写り込む標識部材60を設けることで、写真測量解析部52は測量装置3をより認識しやすくなる。特に、当該第2変形例の場合、円環状の標識部材60が測量装置3の器械点と同じ高さにあり、且つ中心が器械点と同一位置にあることから、写真測量解析部52は、特に補正演算することなく測量装置3の器械点の位置、即ち既知点座標を取得することができる。なお、標識部材は、円環状に限られず、例えば半円環状のように円環状の一部を切り欠いた円弧状としてもよい。
【0089】
図7(c)に示す第3変形例では、測量装置3の本体と、測量装置3を支持する三脚3aとの間に円盤状の標識部材61を設けている。当該標識部材61の周縁部61aには周縁を認識しやすいように中央側と異なる色彩をなしている。そして当該円盤状の標識部材61の中心は、測量装置3の器械点を含む鉛直線上に位置している。これにより、第2変形例と同様に、写真測量解析部52は測量装置3を認識しやすくなり、器械点を含む鉛直線上を中心としていることで高さ方向の修正のみで器械点の位置を算出することができる。なお、この高さ方向の修正は、測量装置3の器械的な寸法を使用して補正してもよいし、測量装置3自ら標識部材61の位置を測量してもよい。
【0090】
また、図7(d)に示す第4変形例のように、測量装置3に複数の標識部材62a、62bを設けてもよい。図7(d)に示す測量装置3では望遠鏡部32を支持する左右支持部材の上端に一対の円盤状の標識部材62a、62bを設けている。これら一対の標識部材62a、62bは、それぞれの標識部材の取付箇所を結ぶ直線の中間位置に器械点を通る鉛直線が位置するよう設けられている。これにより、上記第3変形例と同様な効果を奏することができる。なお、第4変形例では一対の標識部材62a、62bを測量装置3に設けているが、標識部材の数は2つに限られず器械点を特定可能な位置であれば、さらに多くの標識部材を設けてもよい。
【0091】
また、上記実施形態及び上記各変形例を組み合わせて、測量装置3が示す特徴を設定してもよい。
【0092】
この他にも、上記実施形態では、移動撮影装置2はUAV10を移動体として用いているが、移動体はこれに限られない。例えば、ヘリコプターや飛行機等の有人の飛行体や、車や人間等、地上を移動する移動体であってもよく、この移動軌跡を相対撮影位置の点群と対応付けて写真測量用のデータを生成してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、相対撮影位置算出部50及び飛行軌跡算出部51は解析装置4に設けられているが、例えば相対撮影位置算出部を移動撮影装置に、飛行軌跡算出部を測量装置に備えていてもよい。また、解析装置の機能を全て測量装置に備えてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、測量装置3を画像内に写り込ませるよう、移動撮影装置2が測量装置の上方を通る飛行経路としているが、飛行経路はこれに限られない。例えば、飛行中にカメラの向きを変えて測量装置を含む画像を撮影してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、写真測量解析部52は、測量結果を各画像の撮影位置に対応付ける方法として、相対撮影位置の点群Pと飛行軌跡Tとを対応付けているが、測量結果を各画像の撮影位置に対応付ける方法はこれに限られるものではない。
【0096】
例えば、移動撮影装置2におけるカメラ11による撮影ごとの撮影時間を記憶するとともに、測量装置3による測量ごとの測量時間も記憶して、この撮影時間と測量時間に基づいて測量結果を各画像の撮影位置に対応付けてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 測量システム
2 移動撮影装置
3 測量装置(測量部)
4 解析装置
10 UAV(移動体)
11 カメラ(撮影部)
14 撮影制御部
17 撮影記憶部
33 測距部
34 測量制御部
35 水平角検出部
36 鉛直角検出部
42 測量記憶部
43 ガイドライト照射部
50 相対撮影位置算出部
51 飛行軌跡算出部(移動軌跡算出部)
52 写真測量解析部
60、61、62a、62b 標識部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8