(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】外壁パネル、外壁構造および外壁施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20220401BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
E04G21/14
E04F13/08 101Q
(21)【出願番号】P 2017129842
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-068523(JP,A)
【文献】特開2016-094787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14、21/16
E04F 13/08
E04C 2/30
E04B 1/348、2/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出隅コーナーに取り付けられる外壁パネルであって、複数の外壁面材が上下に並べられて縦胴縁で連結されて
吊り上げ可能とされており、上記外壁面材は直交する二面の外壁面を有し、各々の外壁面に上記縦胴縁が複数本取り付けられており、各外壁面の少なくとも最もコーナー寄りの縦胴縁は上記出隅コーナーの隅柱に対向して位置するように設けられていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁パネルにおいて、上記最もコーナー寄りの縦胴縁以外の縦胴縁のなかの一部の縦胴縁の丈が、上下のパネル連結に必要な丈よりも短くされていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の外壁パネルにおいて、上記丈が短くされた縦胴縁は、上記隅柱における上記出隅コーナー側の角の隣の角の近傍に位置することを特徴とする外壁パネル。
【請求項4】
請求項1に記載の外壁パネルを建物の出隅コーナーに上下に配置して取り付ける外壁構造であって、上下の外壁パネルにおける対応する縦胴縁同士が接続板によって接続されていることを特徴とする外壁構造。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の外壁パネルを建物の出隅コーナーに上下に配置して取り付ける外壁構造であって、上下の外壁パネルにおける上記最もコーナー寄りの縦胴縁に隣接する縦胴縁同士の間に、丈が短くされた分を補う補助胴縁が設けられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項6】
請求項5に記載の外壁構造を構築する外壁施工方法であって、上下の外壁パネルにおける上記最もコーナー寄りの縦胴縁に隣接する縦胴縁同士の間からの操作によって、上記最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続板によって接続する工程と、上下の外壁パネルにおける上記隣接する縦胴縁同士を、丈が短くされた分を補う補助胴縁を設けて接続する工程とを含むことを特徴とする外壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の外壁面材が上下に並べられて縦胴縁で連結された外壁パネル、この外壁パネルを用いた外壁構造およびこの外壁構造を構築する外壁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物躯体への取付状態で上下方向に並ぶ複数枚の外壁パネルを、上記建物躯体への取付け用の下地となり、上記外壁パネルの横幅方向に並んでそれぞれ上下方向に延びる複数本の胴縁に、上記建物躯体の外壁パネル取付け箇所とは別の場所で組み付けて下地一体型の外壁パネルユニットとする作業に用いる地組架台であって、自立する地組架台本体と、この地組架台本体にそれぞれ取付けられ、上記外壁パネルユニットのユニット化前の上記複数本の各胴縁を、ユニット化後の配置関係でかつ立ち姿勢として、その下端および上部で位置決め状態に保持する複数の下端固定治具および上側固定治具と、を備える、外壁パネルの地組架台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、平板の外壁パネルを作製しているが、このような平板の外壁パネルで建物の出隅コーナーの外壁を構築することは容易でない。一方、外壁パネルを出隅コーナーに合わせてL字状に構成することが考えられるが、当該外壁パネルが風圧を受けることを考慮する必要がある。また、上記L字の外壁パネルを建物の出隅コーナー部に取り付けることにおいて、足場を不要にすることが望まれる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、建物の出隅コーナー部で耐風に優れた外壁を構成することができ、また、足場を不要にし得る外壁パネル、および外壁構造および外壁施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の外壁パネルは、上記の課題を解決するために、建物の出隅コーナーに取り付けられる外壁パネルであって、複数の外壁面材が上下に並べられて縦胴縁で連結されており、上記外壁面材は直交する二面の外壁面を有し、各々の外壁面に上記縦胴縁が複数本取り付けられており、各外壁面の少なくとも最もコーナー寄りの縦胴縁は上記出隅コーナーの隅柱に対向して位置するように設けられていることを特徴とする(以下、この項において第1構成という。)。
【0007】
上記の構成であれば、外壁面の少なくとも最もコーナー寄りの縦胴縁は隅柱に対向して位置するので、各外壁面の複数本の縦胴縁の配置間隔を適切に設定して、建物の出隅コーナー部において耐風に優れた外壁を構成することができる。また、一つの外壁パネルを建物の出隅コーナーに取り付ける作業によって、建物の出隅コーナーには、直交する二面の外壁面が一度に形成されることになり、外壁パネルの建物への設置の作業時間を短縮できる。
【0008】
上記最もコーナー寄りの縦胴縁以外の縦胴縁のなかの一部の縦胴縁の丈が、上下のパネル連結に必要な丈よりも短くされていてもよい(以下、この項において第2構成という。)。これによれば、例えば、建物に設置する上下の外壁パネルにおける上記最もコーナー寄りの縦胴縁に隣接する縦胴縁同士の間を、上記の最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続するための作業用空間とすることができ、作業効率が向上する。また、作業者は、各階の床スラブ上で最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続する作業が行えるので、足場を不要にし得る。
【0009】
上記丈が短くされた縦胴縁は、上記隅柱における上記出隅コーナー側の角の隣の角の近傍に位置するのがよい(以下、この項において第3構成という。)。これによれば、上記の最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続するための作業用空間の位置の適切化が図れるとともに、各外壁面の複数本の縦胴縁の配置間隔の適切化が図れる。
【0010】
また、この発明の外壁構造は、上記第1構成の外壁パネルを建物の出隅コーナーに上下に配置して取り付ける外壁構造であって、上下の外壁パネルにおける対応する縦胴縁同士が接続板によって接続されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明の外壁構造は、上記第2構成または第3構成の外壁パネルを建物の出隅コーナーに上下に配置して取り付ける外壁構造であって、上下の外壁パネルにおける上記最もコーナー寄りの縦胴縁に隣接する縦胴縁同士の間に、丈が短くされた分を補う補助胴縁が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明の外壁施工方法は、上記第2構成または第3構成の外壁パネルを用いる外壁構造を構築する外壁施工方法であって、上下の外壁パネルにおける上記最もコーナー寄りの縦胴縁に隣接する縦胴縁同士の間からの操作によって、上記最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続板によって接続する工程と、上下の外壁パネルにおける上記隣接する縦胴縁同士を、丈が短くされた分を補う補助胴縁を設けて接続する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、建物の出隅コーナー部において耐風に優れた外壁を構成することができる。また、足場を不要にすることも可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る外壁パネルを示した斜視図である。
【
図2】同図(A)は
図1の外壁パネルにおける外壁面材の上部および下部を示した断面図であり、同図(B)は
図1の上下に並ぶ外壁面材の嵌め込み箇所の断面図である。
【
図3】
図1の外壁パネルを用いた外壁施工方法を示した概略の斜視図である。
【
図4】
図3の外壁施工方法による外壁構造の概略の横断面図である。
【
図5】
図3の続きとなる外壁施工方法の工程を示した概略の斜視図である。
【
図6】
図5の続きとなる外壁施工方法の工程を示した概略の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る外壁パネルを上下に位置させ、上下の縦胴縁の接合手順を示した説明図である。
【
図8】
図6の続きとなる外壁施工方法の工程を示した概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、外壁パネル5は、複数の横長の外壁面材51を上下に複数枚並べて下地材52で相互に連結された構造を有する。
図1に示す例では、上記下地材52として縦胴縁52aを備えている。上記縦胴縁52aは、例えば、リップ溝型鋼からなる。
【0016】
上記外壁面材51は、例えば、
図2(A)および
図2(B)に示すように、不燃断熱材51aを鋼板51b、51cで挟み込んだ金属サンドイッチパネルである。2枚の外壁面材51を上下に並べた場合、下段に位置する外壁面材51の上端面に形成された横幅方向に長い2か所の凹部51dに、上段に位置する外壁面材51の下端面に形成された横幅方向に長い2か所の凸部51eが嵌まり込むことにより、上下の外壁面材51が互いに面外方向に位置ずれしないように組み合わされる。なお、上記外壁パネル5を組み立てるための地組架台については、図示を省略する。
【0017】
上記外壁パネル5は、建設中の建物100(
図3等参照)の出隅コーナーに取り付けられる。そして、上記外壁パネル5は平面視で略L字状を有し、上記外壁面材51は直交する二面の外壁面を備えており、それぞれの外壁面には上記縦胴縁52aが複数本、この実施形態では3本取り付けられている。
【0018】
また、上記外壁パネル5において、各外壁面の3本の縦胴縁52aのうち、最もコーナー寄りの縦胴縁52a1は後述の隅柱101の側面に対向して位置する。また、上記最もコーナー寄りの縦胴縁52a1に隣接する縦胴縁52a2(中央側の縦胴縁)の丈は、上下のパネル連結に必要な丈よりも短くされている。一方、上記縦胴縁52aのうち、最もコーナー寄りの縦胴縁52a1および最もコーナーから遠い縦胴縁52a3の丈は、上下のパネル連結に必要な丈になっている。
【0019】
次に、この実施形態の外壁構造および外壁施工方法について説明していく。
図3および
図4に示すように、建物100の出隅コーナーには、隅柱101が設けられている。この隅柱101の下側には下階の床スラブ102が設けられており、上側には上階の床スラブ103が設けられている。上記外壁パネル5は、上記隅柱101を囲うように配置され、上側の一部分が上記下階の床スラブ102のフロア面から突き出して設けられる。また、上記外壁パネル5は、上記下階の床スラブ102に、図示しないファスナーによって固定される。また、上記外壁パネル5において、上記縦胴縁52a
2の水平方向位置は、後述の補助胴縁62の取り付け等を考慮し、上記隅柱101における上記出隅コーナー側の角の隣の角の近傍にくるように配置されている。上記隅柱101の上記角部の近傍の範囲は、当該角部から幾分ブラインド側に近づいて上記隅柱101の側面と対面する範囲でもよいし、上記角部から幾分部屋側に出て上記隅柱101の側面から外れる範囲でもよい。
【0020】
そして、
図5に示すように、上記外壁パネル5上に、地上の地組架台で作製しておいた別の外壁パネル5を、クレーン等で吊り上げ、既にファスナーで固定されている下側の外壁パネル5上に位置させる。このとき、下側の外壁パネル5の上記縦胴縁52a
2と上側の外壁パネル5の上記縦胴縁52a
2との間に、治具や腕が入るための、高さが略350mm程度の離間空間(作業用空間)が形成される。なお、上下の上記縦胴縁52a
1間および上記縦胴縁52a
3間には、例えば、30mm程度の隙間(クリアランス)が生じる。
【0021】
次に、
図6および
図7に示すように、上下の上記縦胴縁52a
1間および上記縦胴縁52a
3間には、平板状の接続板61を配置し、これらに形成されている挿通孔にボルト等の締結部材を設けて相互に固定する。なお、上記縦胴縁52a
1、52a
3の端部には孔を形成しナットを溶接しておく。もちろん、ボルトを溶接しておいて、このボルトを接続板61の挿通孔に通してナットを装着するようにしてもよい。上記接続板61の配置や締結部材による固定操作は、上記縦胴縁52a
1間の作業用空間を利用して行うことができる。
【0022】
上下の縦胴縁52a1間での上記接続板61の配置や締結部材による固定を行った後、上記縦胴縁52a2間の上記操作空間に、上記縦胴縁52a2における丈が短くされた分を補う、リップ溝形鋼等からなる補助胴縁62を配置する。さらに2枚の接続板61を用い、これらに形成されている挿通孔にボルト等の締結部材を設けて相互に固定する。
【0023】
そして、上下の上記縦胴縁52a
3間での上記接続板61の配置や締結部材による固定を行い、さらに、
図8に示すように、別の外壁パネル5を上側に取り付けていく。
【0024】
上記の構成であれば、各外壁面の最もコーナー寄りの縦胴縁52a1が隅柱101に対向して位置するので、各外壁面の複数本の縦胴縁52aの配置間隔を適切に設定して、建物100の出隅コーナー部において耐風に優れた外壁を構成することができる。また、一つの上記外壁パネル5を建物の出隅コーナーに取り付ける作業によって、建物の出隅コーナーには、直交する二面の外壁面が一度に形成されることになり、外壁パネルの建物への設置の作業時間を短縮できる。
【0025】
また、上記最もコーナー寄りの縦胴縁52a1に隣接する縦胴縁52a2の丈が、上下のパネル連結に必要な丈よりも短くされていると、建物100に設置する上下の外壁パネル5における上記最もコーナー寄りの縦胴縁52a1に隣接する縦胴縁52a2同士の間を、上記の最もコーナー寄りの縦胴縁52a1同士を接続するための作業用空間とすることができ、作業効率が向上する。また、作業者は、各階の床スラブ上で最もコーナー寄りの縦胴縁同士を接続する作業が行えるので、足場を不要にし得る。
【0026】
さらに、上記丈が短くされた縦胴縁52a2が、上記隅柱101における上記出隅コーナー側の角の隣の角の近傍に位置すると、上記の最もコーナー寄りの縦胴縁52a1同士を接続するための作業用空間の位置の適切化が図れるとともに、各外壁面の複数本の縦胴縁52aの配置間隔の適切化が図れる。
【0027】
なお、上記外壁パネル5において、上記縦胴縁52a2の丈を他の縦胴縁と同じ長さとすることも可能である、この場合、上記縦胴縁52a2の水平方向位置を、上記隅柱101における上記出隅コーナー側の角の隣の角から腕や治具が入る程度の距離だけ室内寄りに離間させるのがよい。これにより、上記最もコーナー寄りの縦胴縁52a1における上記接続板61の取り付けのための作業用空間を確保することができる。なお、この場合には、上記縦胴縁52a2は上記縦胴縁52a1から多少離れて位置することになる。また、上記の例では、最もコーナー寄りの縦胴縁52a1に隣接する1本の縦胴縁52a2の丈が短くされたが、これに限らず、上記縦胴縁52a1と縦胴縁52a2の間に他の縦胴縁が存在するような場合には、この他の縦胴縁においても丈が短くされる。すなわち、最もコーナー寄りの縦胴縁以外の縦胴縁のなかの一部(1本または複数本)の縦胴縁の丈が、上下のパネル連結に必要な丈よりも短くされていてもよい。
【0028】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
5 :外壁パネル
51 :外壁面材
51a :不燃断熱材
51b :鋼板
51c :鋼板
51d :凹部
51e :凸部
52 :下地材
52a :縦胴縁
52a1 :縦胴縁
52a2 :縦胴縁
52a3 :縦胴縁
61 :接続板
62 :補助胴縁
100 :建物
101 :隅柱
102 :床スラブ
103 :床スラブ