(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】フェーズドアレーアンテナ、デジタル無線中継器、およびフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20220401BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B7/06 150
H04B7/15
(21)【出願番号】P 2017181852
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 大道
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-163622(JP,A)
【文献】特開2006-319412(JP,A)
【文献】特表2012-514407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194624(US,A1)
【文献】特開2001-358520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号であるCW信号を生成するCW生成部と、
前記基準信号を基準直交信号として複数の所望の接続先に分配する1つの交換処理部と、
前記交換処理部の
n個(nは2以上の整数)の出力の振幅と位相を
それぞれ制御して出力する
n個のデジタルビームフォーミング(DBF)回路と、
前記n個のDBF回路の出力をそれぞれ直交変調する
n個の直交変調器と、
前記n個の直交変調器の出力をそれぞれDA変換する
n個のDA変換器と、
前記
n個のDA変換器の出力をそれぞれ送信する
n個の送信手段と、
前記
n個の送信手段
のそれぞれに接続される
n個の送信アンテナ素子と、
1つの受信アンテナ素子と、
前記受信アンテナ素子で受信した
信号である、前記n個の送信アンテナ素子から送信された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段の出力をAD変換するAD変換器と、
前記AD変換器の出力を直交復調する直交復調器と、
前記交換処理部から出力された前記基準直交信号
を記憶するとともに、前記基準直交信号の記憶と同時刻における前記直交復調器の出力
を記憶する記憶手段と、
前記n個のDBF回路に対して、前記n個のDBF回路の1つ毎に
それぞれの出力を順次出力させるとともに、前記記憶手段に記憶する前記基準直交信号と、
前記同時刻に記憶された前記直交復調器の出力信号
との差に基づいて、
前記n個の送信アンテナ素子のうち異なる
送信アンテナ素子同士の振幅と位相の差分と補正係数を求めて、前記
n個のDBF回路
のそれぞれに前記補正係数に基づいた補正を行う制御部と、
を備えることを特徴とするフェーズドアレーアンテナ。
【請求項2】
1つのフィーダリンク受信アンテナと、
前記フィーダリンク受信アンテナで受信した
基準用信号を受信する第1の受信手段と、
前記第1の受信手段の出力を中間周波数に変換した第1の信号と第2の受信手段の出力を第1の信号とは異なる中間周波数に変換した第2の信号とを合成する合成器と、
前記合成器の出力をAD変換するAD変換器と、
前記AD変換器の出力を直交復調する直交復調器と、
前記直交復調器の出力する信号
をチャンネルに分波する分波処理部と、
前記分波処理部の
複数の出力を
複数の所望の接続先に分配する交換処理部と、
前記交換処理部の
複数の出力の振幅と位相を
それぞれ制御して出力する
n個のデジタルビームフォーミング(DBF)回路と、
前記
n個のDBF回路の
それぞれの出力を直交変調する
n個の直交変調器と、
前記
n個の直交変調器の
それぞれの出力をDA変換する
n個のDA変換器と、
前記
n個のDA変換器の
それぞれの出力を送信する
n個の送信手段と、
前記
n個の送信手段
のそれぞれに接続される
n個の送信アンテナ素子と、
1つの受信アンテナ素子と、
前記受信アンテナ素子で受信した
信号である、前記n個の送信アンテナ素子から送信された信号を受信する前記第2の受信手段と、
前記第1の信号が前記直交復調器で復調されて前記交換処理部で分配された
信号である第3の信号
を記憶するとともに、前記第3の信号の記憶と同時刻における、前記第2の信号が前記直交復調器で復調されて前記交換処理部で分配された
信号である第4の信号
を記憶する記憶手段と、
前記n個のDBF回路に対して、前記
n個のDBF回路の1つ毎に
それぞれの出力を順次
出力させるとともに、前記記憶手段に記憶する前記第3の信号と
、前記同時刻
に記憶された第4の信号
とに基づいて、異なる
前記n個の送信アンテナ素子同士の振幅と位相の差分と補正係数を求めて、前記
n個のDBF回路
のそれぞれに前記補正係数に基づいた補正を行う制御部と
、を備える
ことを特徴とするデジタル無線中継器。
【請求項3】
基準信号であるCW信号を生成し、
前記基準信号を基準直交信号として複数の所望の接続先に分配し、
前記分配された前記基準直交信号を記憶し、
前記分配された前記基準直交信号をそれぞれ直交変調してDA変換した信号を複数の送信アンテナ素子の1つ毎に順次送信し、
前記
複数の送信アンテナ素子から発信した信号を1つの受信アンテナ素子で受信し、
前記受信した信号をAD変換し
、
前記AD変換された信号を直交復調し、
前記直交復調した直交信号
を前記分配された前記基準直交信号の記憶と同時刻に記憶し、
前記記憶された前記基準直交信号と、前記同時刻に記憶された前記直交信号
とに基づいて
、異なる送信アンテナ素子同士の振幅と位相の差分と補正係数を求める
ことを特徴とするフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法。
【請求項4】
1つのフィーダリンク受信アンテナで受信して中間周波数に変換した第1の直交変調信号と第2の直交変調信号
とを合成した出力をAD変換した後に直交復調して
第1の基準直交信号を生成し、
前記第1の基準直交信号を分配してそれぞれ直交変調してDA変換した信号を複数の送信アンテナ素子の1つ毎に順次送信し、
前記分配された前記第1の基準直交信号を記憶し、
前記
複数の送信アンテナ素子
の1つから発信した信号を1つの受信アンテナ素子で受信して
前記第1の直交変調信号とは異なる中間周波数に変換して前記第2の直交変調信号として前記合成を行い、
前記合成した出力を前記AD変換した後に前記直交復調して
第2の基準直交信号を生成し、
前記第2の基準直交信号を記憶し、
前記
第2の基準直交信号
の記憶と同時刻に記憶された、前記分配された前記第1の基準直交信号と、前記記憶された前記第2の基準直交信号とに基づいて前記複数の送信アンテナ素子の間の振幅と位相の差分と補正係数を求めることを特徴とするデジタル無線中継器のフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレーアンテナ、デジタル無線中継器、およびフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレーアンテナ(Phased Array Antenna)で、高精度なアンテナ放射パターン(pattern)を形成するためには、アンテナ素子間の振幅・位相の補正が必要である。
【0003】
特許文献1では、送信アレーアンテナの素子間の振幅・位相を測定・補正するための方法が示されている。即ち、送信系から直交変調された信号を複数の送信アンテナ素子に識別可能に同時出力する。そして、受信系では1つの受信アンテナで受信した信号を送信アンテナの数だけ用意した受信機で直交復調して送信アンテナ毎の振幅と位相の偏差を求める。この様にして求めた偏差に基づいて、送信アンテナ毎の振幅と位相の補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1による方法では、受信系のデジタル信号処理部の内部回路が、送信アンテナの数だけ必要となり、素子が多い場合には特に受信系の回路規模が問題となる。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、単純な構成で複数の送信アンテナの素子間偏差を測定可能な、フェーズドアレーアンテナ、デジタル無線中継器、およびフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のフェーズドアレーアンテナは、基準直交信号を分配する分配回路と、前記分配回路の出力の振幅と位相を制御して出力するデジタルビームフォーミング(Digital Beam Forming;DBF)回路と、それぞれの前記DBF回路の出力を直交変調する直交変調器と、直交変調器の出力をDA変換するDA変換器と、前記DA変換器の出力を送信する送信手段と、前記送信手段に接続される送信アンテナ素子と、1つの受信アンテナ素子と、前記受信アンテナ素子で受信した信号を受信する受信手段と、前記受信手段の出力をAD変換するAD変換器と、前記AD変換器の出力を直交復調する直交復調器と、前記基準直交信号と前記直交復調器の出力を同時刻に記憶する記憶手段と、前記DBF回路の1つ毎に順次信号を出力して、前記記憶手段に記憶する前記基準直交信号と、同時刻の前記直交復調器の出力信号の差に基づいて、異なるアンテナ素子同士の振幅と位相の差分と補正係数を求めて、前記DBF回路に前記補正係数に基づいた補正を行う制御部とを備える。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のデジタル無線中継器は、1つのフィーダリンク受信アンテナと、前記フィーダリンク受信アンテナで受信した信号を受信する第1の受信手段と、前記第1の受信手段の中間周波出力と第2の受信手段の中間周波出力を合成する合成器と、前記合成器の出力をAD変換するAD変換器と、前記AD変換器の出力を直交復調する直交復調器と、前記直交復調器の出力から前記第1の受信手段の出力に基づく基準直交信号を生成する信号処理手段と、前記基準直交信号を分配する分配回路と、前記分配回路の出力の振幅と位相を制御して出力するデジタルビームフォーミング(DBF)回路と、それぞれの前記DBF回路の出力を直交変調する直交変調器と、前記直交変調器の出力をDA変換するDA変換器と、前記DA変換器の出力を送信する送信手段と、前記送信手段に接続される送信アンテナ素子と、1つの受信アンテナ素子と、前記受信アンテナ素子で受信した信号を受信する第2の受信手段と、前記基準直交信号と前記直交復調器の出力から前記第2の受信手段の出力に基づいて生成された測定直交信号とを同時刻に記憶する記憶手段と、前記DBF回路の1つ毎に順次信号を出力して、前記記憶手段に記憶する前記基準直交信号と、同時刻の前記直交復調器の出力信号の差に基づいて、異なるアンテナ素子同士の振幅と位相の差分と補正係数を求めて、前記DBF回路に前記補正係数に基づいた補正を行う制御部とを備える。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法は、基準直交信号を分配してそれぞれ直交変調してDA変換した信号を複数の送信アンテナ素子の1つ毎に順次送信し、前記送信アンテナ素子から発信した信号を1つの受信アンテナ素子で受信し、前記受信した信号をAD変換した後に直交復調した直交信号と同時刻の前記基準直交信号に基づいて前記複数の送信アンテナ素子の間の振幅と位相の差分と補正係数を求める。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フェーズドアレーアンテナ、デジタル無線中継器、およびフェーズドアレーアンテナの素子間偏差測定方法は、単純な構成で複数の送信アンテナの素子間偏差を測定可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本実施形態のフェーズドアレーアンテナ10は、基準直交信号を分配する分配回路11と、前記分配回路11の出力の振幅と位相を制御して出力するデジタルビームフォーミング(DBF)回路12とを備える。更に、フェーズドアレーアンテナ10は、それぞれの前記DBF回路12の出力を直交変調する直交変調器(IQ MOD)13と、直交変調器13の出力をDA変換するDA変換器(D/A)14とを備える。また、フェーズドアレーアンテナ10は、前記DA変換器14の出力を送信する送信手段(TX)15と、前記送信手段15に接続される送信アンテナ素子21乃至2nとを備える。そして、フェーズドアレーアンテナ10は、1つの受信アンテナ素子31と、前記受信アンテナ素子31で受信した信号を受信する受信手段(RX)16と、前記受信手段16の出力をAD変換するAD変換器(A/D)17とを備える。更に、フェーズドアレーアンテナ10は、前記AD変換器17の出力を直交復調する直交復調器(IQ DEM)18と、前記基準直交信号と前記直交復調器18の出力を同時刻に記憶する記憶手段19とを備える。また、フェーズドアレーアンテナ10は、制御手段20を備える。制御手段20は、前記DBF回路12の1つ毎に順次信号を出力する。そして、制御手段20は、前記記憶手段19に記憶する前記基準直交信号と、同時刻の前記直交復調器の出力信号の差に基づいて、異なる送信アンテナ素子21乃至2n同士の振幅と位相の差分と補正係数を求める。更に制御手段20は、前記DBF回路12に前記補正係数に基づいた補正を行う。
【0013】
この様にすることで、本実施形態のフェーズドアレーアンテナ10は、受信系が1つの単純な構成で、複数の送信アンテナの複数の送信アンテナの素子間偏差を測定可能にする。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について
図2乃至
図6を参照して説明する。
[構成の説明]
図2乃至
図5に第2の実施形態の構成例を示す。
【0014】
図2を参照すると、本実施形態のデジタル無線中継器50は、ユーザリンク処理装置100、制御部200、ユーザリンク送信部300、ユーザリンク送信アンテナ350、測定用受信部400、測定用受信アンテナ450を備える。デジタル無線中継器50は、更にフィーダリンク(Feeder link)受信部500、フィーダリンク受信アンテナ550を備える。
【0015】
ユーザリンク処理装置100と制御部200の詳細を
図3に示す。フィーダリンク受信部500とフィーダリンク受信アンテナ550の詳細を
図4に示す。ユーザリンク送信部300、ユーザリンク送信アンテナ350、測定用受信部400、および測定用受信アンテナ450の詳細を
図5に示す。
【0016】
フィーダリンク受信アンテナ550は、衛星からのフィーダリンク受信信号を受信するためのアンテナである。
【0017】
次に、
図4を参照して、フィーダリンク受信部500の構成を説明する。
【0018】
増幅器501は高周波信号の増幅器である。周波数変換器502は、高周波信号を中間周波(IF)信号に変換する周波数変換器である。バンドバスフィルタ(Band Pass Filter ;BPF)503は、不要周波数成分を除去する帯域通過フィルタである。
【0019】
次に、
図3を参照してユーザリンク処理装置100の構成を説明する。
【0020】
ユーザリンク処理装置100は、フィーダリンクから受信する各チャンネルを、所望のビームで所望の周波数帯域に配置する処理を行う。
【0021】
AD変換器101は、IF帯のアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器である。直交復調器(IQ Demodulator; IQ DEM)102は、直交復調を行う回路である。ローパスフィルタ(Low Pass Filter; LPF)103は余分な高周波成分を除去する回路である。分波処理部104は、デジタル信号に対し周波数分波を行う回路である。交換処理部105は、分波処理後の各チャンネルを、所望のビームの所望の周波数帯域に配置するためのルーティング設定を行う。
【0022】
デジタルビーム形成(Digital Beam Forming ;DBF)処理部121、122乃至12nは、分波処理後の信号に対して素子毎に重み付け係数を乗算して、最大n個の送信ビームを実現するデジタル信号を生成する。合波処理部131、132乃至13nは、各素子毎に周波数合波を行う。振幅・位相調整部141、142乃至14nは、デジタル無線中継器50が測定した振幅・位相の素子間偏差の情報に基づき、制御部200の設定部201が設定する素子毎の補正係数に従って振幅と位相を補正する。
【0023】
直交変調器(IQ Modulator; IQ MOD)151、152乃至15nは、直交信号の実部(I)と虚部(Q)それぞれに基づいて直交変調を行う。DA変換器161、162乃至16nは、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器である。DA変換器161、162乃至16nの出力は、ユーザリンク送信部300に接続される。
【0024】
AD変換器111は、測定用受信部400の出力するアナログ信号を入力し、デジタル信号に変換するAD変換器である。直交復調器(IQ DEM)112は、直交復調を行う回路である。ローパスフィルタ(LPF)113は余分な高周波成分を除去する回路である。抽出処理部114は、周波数分波を行って測定用に受信したCWのチャンネルを抽出する処理を行う。
【0025】
データ取得部107は、制御部200の指示に従って、交換処理部105で分波された信号のうち基準信号の振幅と位相を取得する。また、データ取得部115は、制御部200の指示に従って、抽出処理部114で抽出した信号の振幅と位相を取得する。
【0026】
CW生成部106は、後述の基準信号の発信器である。CW生成部106は、フィーダリンクで受信した信号を基準信号として用いない場合に必要な構成であり、フィーダリンクで受信した信号を基準信号として用いる場合には削除してよい。
【0027】
次に
図5を参照して、ユーザリンク送信部300の構成を説明する。
【0028】
周波数変換部311、312乃至31nは、ユーザリンク処理装置100が出力する中間周波信号(IF)を高周波信号(RF)に変換する周波数変換器である。送信系321、322乃至32nは、増幅器、励振器等からなる送信系回路である。
【0029】
次に、
図5を参照して、ユーザリンク送信アンテナ350の構成を説明する。
【0030】
送信アンテナ素子351、352乃至35nは、ユーザリンク送信信号を送信するためのn個のアンテナ素子であり、送信アンテナ素子351、352乃至35nは、アレーアンテナとして、ユーザリンク送信アンテナ350を構成する。
【0031】
次に、
図5を参照して、測定用受信部400の構成を説明する。
【0032】
増幅器401は、測定用受信アンテナ450で受信した電波を高周波のまま増幅する増幅器である。周波数変換部402は、高周波信号を中間周波信号に変換する周波数変換器である。バンドパスフィルタ403は、帯域通過フィルタである。
【0033】
次に、
図3を参照して、制御部200の構成の説明を行う。
【0034】
制御部200は、デジタル無線中継器50のハードウェアを制御する。制御部200はCPU(Central Processing Unit;中央処理装置)とメモリ(memory)を含み、ソフトウェア処理を行うことでもよい。
【0035】
制御部200は、次の機能を有する。
【0036】
設定部201は、デジタル無線中継器50の構成要素にパラメータを設定する。指示部202は、デジタル無線中継器50の構成要素に動作の指示をする。基準値格納部203は、データ取得部107のデータを格納する。測定値格納部204は、データ取得部115のデータを格納する。
[動作の説明]
次に、本実施形態の動作について、
図6を参照して説明する。
【0037】
はじめに、制御部200の設定部201は、変数kを1に設定する(S101)。
【0038】
設定部201は、デジタルビーム形成処理部121乃至12nに対して、送信アンテナ素子351乃至35nのうちの、k番目のアンテナだけから送信する様に設定する(S102)。
【0039】
k番目のアンテナから送信された電波は、測定用受信アンテナ450で受信された後、測定用受信部400を経て、ユーザリンク処理装置100のデータ取得部115に達する。
【0040】
そして、制御部200の指示部202は、データ取得部107とデータ取得部115に対して、同時刻に振幅と位相のデータを取得することを指示する。
【0041】
データ取得部107で取得したデータは基準値格納部203に格納され、データ取得部115で取得したデータは測定値格納部204に格納される(S103)。
【0042】
相対値算出部205は、基準値格納部203と測定値格納部204に格納されたデータに基づいて、相対値を算出する(S104)。
【0043】
相対値の求め方の例を示す。
【0044】
相対値は、振幅と位相について別々に求められるが、以下の説明はどちらの値についても共通である。
【0045】
例えば、送信アンテナ素子35nを基準アンテナと定め、送信アンテナ素子35nの測定値を相対値の基準としてゼロと定める。
【0046】
この、基準アンテナ、即ち送信アンテナ素子35nの測定値を測定値35n、送信アンテナ素子35nを測定した時の基準値を基準値35nとする。
【0047】
次に、送信アンテナ素子351の測定値を測定値351、送信アンテナ素子351を測定した時の基準値を基準値351とする。
【0048】
送信アンテナ素子351の基準アンテナ(送信アンテナ素子35n)に対する相対値は、次式で求めることが出来る。
【0049】
送信アンテナ素子351の送信アンテナ素子35nに対する相対値
= (測定値351 - 測定値35n) - (基準値351 -基準値35n)
ステップS104に続いて、制御部200は、ステップS104で相対値算出部205が算出した振幅と位相それぞれの相対値と、測定した送信アンテナの番号kを関連づけて相対値格納部206に格納する(S105)。
【0050】
設定部201は、変数kに1を加算する(S106)。
【0051】
設定部201は、kがnであるどうかを判断する。nは送信アンテナ素子351乃至35nの数である(S107)。
【0052】
ステップS107で、kがnであると判断されると(S107でY)、ステップS108にすすむ。
【0053】
ステップS107で、kがnでないと判断されると(S107でN)、ステップS102に戻る。
【0054】
ステップS108で、設定部201は振幅・位相調整部141乃至14nに対して、ステップS105で格納した送信アンテナ素子351乃至35nの振幅と位相の相対値に基づいて補正値を設定する(S109)。
【0055】
この様にして、送信アンテナ素子351乃至35nは、振幅と位相が均一に補正される。
【0056】
以上の補正を行ったうえで、設定部201は、デジタルビーム形成処理部121乃至12nに対して、所望の放射パターンを形成する様に、振幅と位相を設定する。
【0057】
尚、第1の実施形態では、デジタルビームフォーミング回路12が、本実施形態の振幅・位相調整部141乃至14nの機能を兼用している。
【0058】
以上説明した様に、本実施形態のデジタル無線中継器50は、受信系が1つの単純な構成で、複数の送信アンテナの複数の送信アンテナの素子間偏差を測定可能にする。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について
図7乃至
図9、および
図5を参照して説明する。
[構成の説明]
図7乃至
図9、および
図5に本実施形態の構成例を示す。
【0059】
図7を参照すると、本実施形態のデジタル無線中継器60は、ユーザリンク処理装置1000、制御部200、ユーザリンク送信部300、ユーザリンク送信アンテナ350、測定用受信部400、測定用受信アンテナ450を備える。デジタル無線中継器50は、更にフィーダリンク(Feeder link)受信部5000、フィーダリンク受信アンテナ550を備える。
【0060】
ユーザリンク処理装置1000と制御部200の詳細を
図8に示す。フィーダリンク受信部5000とフィーダリンク受信アンテナ550の詳細を
図9に示す。ユーザリンク送信部300、ユーザリンク送信アンテナ350、測定用受信部400、および測定用受信アンテナ450の詳細は第2の実施形態の
図5と同じである。
【0061】
フィーダリンク受信アンテナ550の構成は、第2の実施形態のフィーダリンク受信アンテナ550と同じであるため、説明を省略する。
【0062】
次に、フィーダリンク(Feeder link)受信部5000について、
図9を参照して説明する。
【0063】
フィーダリンク受信部5000は、第2の実施形態のフィーダリンク受信部500の構成要素に加えて、バンドパスフィルタ503の出力に中間周波(IF)合成器5004が加えられている。中間周波合成器5004は、中間周波数の信号を合成する電力合成器である。
【0064】
そして、中間周波合成器5004では、バンドパスフィルタ503からの信号と、
図5に示される測定用受信部400からの信号を合成する。
【0065】
次に、
図7を参照してユーザリンク処理装置1000の構成を説明する。
【0066】
ユーザリンク処理装置1000と第2の実施形態のユーザリンク処理装置100との構成の違いは、次の通りである。
【0067】
本実施形態のユーザリンク処理装置100では、第2の実施形態のユーザリンク処理装置100に備えていた以下の構成要素が、削除されている。
【0068】
即ち、AD変換器111、直交復調器112、ローパスフィルタ113、抽出処理部114、およびデータ取得部115が削除されている。
【0069】
また、デジタルビーム形成処理部121に入力する直交信号の信号線に対して、データ取得部108が接続されている。データ取得部108は、制御部200の指示に従って、信号の振幅と位相を取得する。
【0070】
ユーザリンク処理装置1000のその他の構成要素は、第2の実施形態のユーザリンク処理装置100の構成要素と同じである。
【0071】
次に、ユーザリンク送信部300の構成は、第2の実施形態のユーザリンク送信部300と同じであるため、説明を省略する。
【0072】
また、ユーザリンク送信アンテナ350の構成は、第2の実施形態のユーザリンク送信アンテナ350と同じであるため、説明を省略する。
【0073】
更に、測定用受信部400の構成は、第2の実施形態の測定用受信部400と同じであるため、説明を省略する。
【0074】
次に、制御部200の構成は、第2の実施形態の制御部200と同じである。ただし、測定値格納部204の接続先が、第2の実施形態ではデータ取得部115であったが、本実施形態の接続先はデータ取得部108であため、測定値格納部204が格納するデータは、データ取得部108で取得したデータとなる。
[動作の説明]
本実施形態のデジタル無線中継器60では、第2の実施形態のAD変換器111、直交復調器112、ローパスフィルタ113、および抽出処理部114の機能を、デジタル無線中継器1000の次の構成要素と共用している。即ち、AD変換器101、直交復調器102、ローパスフィルタ103、および分波処理部104と共用する。
【0075】
そして、周波数変換部502は、フィーダリンク受信アンテナ550で受信する基準用信号を、測定用信号とは異なる中間周波数に変換する。この信号を第1の信号ともいう。また、測定用受信部400から出力される信号を第2の信号ともいう。
【0076】
そして、第1の信号と第2の信号はそれぞれ直交復調器102で直交信号に復調される。直交復調された第1の信号を第3の信号ともいう。また、直交復調された第2の信号を第4の信号ともいう。
【0077】
分波処理部104は、周波数分波された測定用信号をデジタルビーム形成処理部121に送出する。また、分波処理部104は、周波数分波された基準信号をデジタルビーム形成処理部12nに送出する。
【0078】
そして、データ取得部107は測定値のデータを取得する。
【0079】
また、データ取得部108は基準値のデータを取得する。
【0080】
その他の動作は、第2の実施形態で説明した
図6と同様で、
図6のステップS103のデータ取得部115をデータ取得部108に読み替えることで、第2の実施形態と同様の動作が実現される。
【0081】
以上説明した様に、本実施形態のデジタル無線中継器60は、第2の実施形態のデジタル無線中継器50と比べて、さらに少ない構成要素で第2の実施形態と同様に、複数の送信アンテナの複数の送信アンテナの素子間偏差を測定可能にする。
【符号の説明】
【0082】
10 フェーズドアレーアンテナ
11 分配回路
12 デジタルビームフォーミング回路
13 直交変調器
14 DA変換器
15 送信手段
16 受信手段
17 AD変換器
18 直交復調器
19 記憶手段
20 制御手段
21、2n 送信アンテナ素子
31 受信アンテナ素子
351、352、35n 送信アンテナ素子
50 デジタル無線中継器
60 デジタル無線中継器
100 ユーザリンク処理装置
101 AD変換器
102 直交復調器
103 ローパスフィルタ
104 分波処理部
105 交換処理部
106 生成部
107 データ取得部
108 データ取得部
111 AD変換器
112 直交復調器
113 ローパスフィルタ
114 抽出処理部
115 データ取得部
121、122、12n デジタルビーム形成処理部
131、132、13n 合波処理部
141、142、14n 振幅・位相調整部
151、152、15n 直交変調器
161、162、16n DA変換器
200 制御部
201 設定部
202 指示部
203 基準値格納部
204 測定値格納部
205 相対値算出部
206 相対値格納部
300 ユーザリンク送信部
311 周波数変換部
312 周波数変換部
321 送信系
322 送信系
350 ユーザリンク送信アンテナ
351、352、35n 送信アンテナ素子
400 測定用受信部
401 増幅器
402 周波数変換部
403 バンドパスフィルタ
450 測定用受信アンテナ
500 フィーダリンク受信部
501 増幅器
502 周波数変換器
503 バンドパスフィルタ
550 フィーダリンク受信アンテナ
1000 ユーザリンク処理装置
1000 デジタル無線中継器
5000 フィーダリンク受信部
5004 中間周波合成器