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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 23/04 20060101AFI20220401BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20220401BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
F16C23/04 C
F16C23/04 E
F16C33/12 A
F16C33/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017200895
(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公開番号】P2019074152
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 司
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-155011(JP,A)
【文献】特開2009-185831(JP,A)
【文献】特開昭57-114027(JP,A)
【文献】国際公開第2007/015594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 23/04,33/12,33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪を外輪に圧入することを備え、前記外輪は、第1の内周面と、第1の外周面と、前記第1の内周面と前記第1の外周面とに接続される第1の端面と、前記第1の内周面と前記第1の外周面とに接続されかつ前記第1の端面とは反対側の第2の端面とを有し、前記内輪は第2の外周面を有し、前記第2の外周面は前記第1の内周面に接触しており、
前記第1の端面を仕上げ加工することと、
前記第1の端面を仕上げ加工した後に、仕上げ加工された前記第1の端面を台に押し付けながら、切削工具を用いて、前記第1の外周面の全てを仕上げ加工することとを備え、
前記切削工具の切刃を前記第1の外周面に接触させ続けながら、前記切刃を第1の端部及び第2の端部の一方から前記第1の端部及び前記第2の端部の他方まで移動させることにより、前記第1の外周面は仕上げ加工され、前記第1の端部は前記第1の端面側の前記第1の外周面の端部であり、前記第2の端部は前記第2の端面側の前記第1の外周面の端部である、軸受の製造方法。
【請求項2】
仕上げ加工された前記第1の端面を前記台に押し付けることは、前記外輪に圧入された前記内輪をクランプすることと、前記外輪に圧入された前記内輪を前記台に向けて押圧することとを含む、請求項1に記載の軸受の製造方法。
【請求項3】
クランプ部材を用いて前記内輪はクランプされ、
前記クランプ部材は、筒部材と、前記筒部材に挿入される棒状部材とを含み、
前記筒部材は前記筒部材の端面に接続された押圧部を含み、
前記棒状部材はテーパ部を含み、
前記押圧部は、外面と、前記棒状部材が延在する中心軸に対して傾斜された内面とを有し、
前記内輪は、第2の内周面を有し、
前記内面が前記テーパ部に押圧されることにより、前記外面が前記第2の内周面を押圧する、請求項2に記載の軸受の製造方法。
【請求項4】
前記内輪は、前記第2の内周面と前記第2の外周面とに接続される第3の端面をさらに有し、
前記内面が前記テーパ部に押圧されるときに、前記筒部材の前記端面は前記第3の端面を前記台に押圧する、請求項3に記載の軸受の製造方法。
【請求項5】
前記台は、第1部分と、前記第1部分から突出する第2部分とを含み、
前記内輪は、前記第2の内周面と前記第2の外周面とに接続されかつ前記第3の端面とは反対側の第4の端面をさらに有し、
仕上げ加工された前記第1の端面は前記第2部分に押し付けられ、
前記第4の端面は、前記第1部分から離間されている、請求項4に記載の軸受の製造方法。
【請求項6】
前記台は、前記筒部材の前記端面とは反対側の前記押圧部の端部を受け入れ得るように構成された凹部を含む、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の軸受の製造方法。
【請求項7】
前記切削工具を用いて、前記第2の端面の全てを仕上げ加工することをさらに備え、
仕上げ加工された前記第1の端面が前記台に押し付けられかつ前記台に対する前記外輪及び前記内輪の向きが維持されながら、前記第1の外周面と前記第2の端面とは仕上げ加工される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の軸受の製造方法。
【請求項8】
前記第2の端面と前記第1の外周面との間に面取り部を形成することをさらに備え、
仕上げ加工された前記第1の端面が前記台に押し付けられかつ前記台に対する前記外輪及び前記内輪の前記向きが維持されながら、前記第1の外周面と前記第2の端面とは仕上げ加工され、かつ、前記面取り部は形成される、請求項7に記載の軸受の製造方法。
【請求項9】
前記内輪及び前記外輪は、チタン合金で構成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001-193741号公報(特許文献1)は、滑り軸受の製造方法を開示している。特許文献1に開示された滑り軸受の製造方法は、内輪を外輪に嵌合させる工程と、絞り金型を用いて外輪を塑性変形させる工程と、外輪の外周面を仕上げ加工する工程とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-193741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、外輪の外周面の仕上げ加工精度を向上させることができる軸受の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の軸受の製造方法は、内輪を外輪に圧入することを備える。外輪は、第1の内周面と、第1の外周面と、第1の内周面と第1の外周面とに接続される第1の端面と、第1の内周面と第1の外周面とに接続されかつ第1の端面とは反対側の第2の端面とを有する。内輪は、第2の外周面を有する。第2の外周面は、第1の内周面に接触している。本発明の軸受の製造方法は、第1の端面を仕上げ加工することと、仕上げ加工された第1の端面を台に押し付けながら、切削工具を用いて、第1の外周面の全てを仕上げ加工することとを備える。切削工具の切刃を第1の外周面に接触させ続けながら、切刃を第1の端部及び第2の端部の一方から第1の端部及び第2の端部の他方まで移動させることにより、第1の外周面は仕上げ加工される。第1の端部は、第1の端面側の第1の外周面の端部である。第2の端部は、第2の端面側の第1の外周面の端部である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の軸受の製造方法では、第1の外周面は、台と機械的に干渉しない。そのため、切削工具を用いて、第1の外周面の全てを仕上げ加工する際に、切削工具の切刃を第1の外周面に接触させ続けながら、切刃を第1の端部及び第2の端部の一方から第1の端部及び第2の端部の他方まで移動させることにより、第1の外周面は仕上げ加工され得る。本発明の軸受の製造方法によれば、外輪の第1の外周面の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る軸受の概略断面図である。
図2】実施の形態に係る軸受の製造方法のフローチャートを示す図である。
図3】実施の形態に係る軸受の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図4】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図3に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図5】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図4に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図6】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図5に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図7】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図6に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図8】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図7に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図9】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図8に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図10】実施の形態に係る軸受の製造方法における、押圧部の概略平面図である。
図11】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図9に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図12】実施の形態に係る軸受の製造方法における、図11に示す工程の次工程を示す概略断面図である。
図13】比較例の軸受の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0009】
図1を参照して、本実施の形態の製造方法によって製造される軸受1を説明する。本実施の形態の軸受1は、外輪10と内輪20とを主に備える。外輪10及び内輪20は、特に限定されないが、鋼またはチタン合金で構成されてもよい。
【0010】
外輪10は、第1の内周面15と、第1の内周面15と、第1の外周面16と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続される第1の端面11と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続されかつ第1の端面11とは反対側の第2の端面13とを有する。外輪10の第1の内周面15は、球面に形成されている。外輪10は、第1の端面11と第1の外周面16との間に第1の面取り部12をさらに有してもよい。外輪10は、第2の端面13と第1の外周面16との間に第2の面取り部14をさらに有してもよい。
【0011】
内輪20は、球面に形成された第2の外周面26を有する。第2の外周面26は、第1の内周面15に接触している。内輪20は、第2の内周面25をさらに有してもよい。内輪20は、第2の内周面25と第2の外周面26とに接続される第3の端面23と、第2の内周面25と第2の外周面26とに接続されかつ第3の端面23とは反対側の第4の端面21とをさらに有してもよい。
【0012】
内輪20は、球面に形成された第1の内周面15と第2の外周面26とにより、外輪10に回転摺動自在に支持されてい得る。本実施の形態の軸受1は、特に限定されないが、球面滑り軸受である。第2の外周面26は球面の一部であってもよく、第1の内周面15は球面の一部であってもよい。
【0013】
図2から図12を参照して、本実施の形態に係る軸受1の製造方法を説明する。図2から図7に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、内輪20を外輪10に圧入すること(S1)を備える。以下、内輪20を外輪10に圧入する工程(S1)を説明する。
【0014】
図3に示されるように、本実施の形態に係る軸受1の製造方法は、外輪10を準備することを備えてもよい。外輪10は、第1の内周面15と、第1の外周面16と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続される第1の端面11と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続されかつ第1の端面11とは反対側の第2の端面13とを有する。
【0015】
図4に示されるように、本実施の形態に係る軸受1の製造方法は、第1の端面11側の第1の内周面15を拡げることを備えてもよい。具体的には、外輪10における残留応力及び歪を低減するために、外輪10に熱処理が施される。それから、第1の端面11側から第1の内周面15にボール30を押し込む。こうして、第1の端面11側の第1の内周面15が、第2の端面13側の第1の内周面15よりも拡げられる。それから、外輪10における残留応力及び歪を低減するために、外輪10に熱処理が再び施されてもよい。
【0016】
図5に示されるように、本実施の形態に係る軸受1の製造方法は、第1の端面11側から、内輪20を第1の内周面15によって規定される第1の開口内に挿入することを備えてもよい。図6に示されるように、本実施の形態に係る軸受1の製造方法は、内輪20が挿入された外輪10を、治具38を用いて、金型35に押し込むことを備えてもよい。内輪20が挿入された外輪10が金型35に押し込まれる際に、外輪10は塑性変形される。図6に示されるような工程を含む塑性変形工程(絞り工程)を経て、図7に示されるように、第1の内周面15及び第1の外周面16は、第2の外周面26に沿う形状に変形される。例えば、第1の内周面15及び第1の外周面16は、各々、球面の一部であってもよい。第3の端面23及び第4の端面21は、外輪10の第1の内周面15からはみ出している。
【0017】
図2及び図8から図12に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、外輪10を仕上げ加工すること(S2)を備える。以下、外輪10を仕上げ加工する工程(S2)を説明する。
【0018】
図8に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、第1の端面11を仕上げ加工することを備える。具体的には、内輪20が圧入された外輪10の第1の外周面16が、第1のクランプ部材40によって把持される。第1の外周面16の一部と第1の端面11の全てとは、第1のクランプ部材40から露出している。第1の外周面16の一部と第1の端面11の全てとは、第1のクランプ部材40と機械的に干渉していない。第1のクランプ部材40は、内輪20の第3の端面23をさらに支持してもよい。
【0019】
それから、切削工具45を用いて、第1の端面11が仕上げ加工される。切削工具45を用いて、第1の端面11に接続される第1の面取り部12がさらに形成されてもよい。特定的には、切削工具45の切刃46を外輪10に接触させ続けながら、第1の端面11が仕上げ加工されるともに第1の面取り部12が形成されてもよい。台80(図9参照)に対する外輪10及び内輪20の向きが維持されたまま、第1の端面11が仕上げ加工されるとともに第1の面取り部12が形成されてもよい。第1の端面11が仕上げ加工されるとともに第1の面取り部12が形成される間、切刃46は、第1のクランプ部材40と機械的に干渉していない第1の外周面16の一部または第1の端面11に接触し続けてもよい。切刃46を外輪10に対して回転させる、または、外輪10を切刃46に対して回転させることによって、第1の端面11が仕上げ加工されるともに第1の面取り部12が形成されてもよい。
【0020】
図9及び図11に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、仕上げ加工された第1の端面11を台80に押し付けながら、切削工具45を用いて、第1の外周面16の全てを仕上げ加工することを備える。仕上げ加工された第1の端面11を台80に押し付けることは、外輪10に圧入された内輪20をクランプすることと、外輪10に圧入された内輪20を台80に向けて押圧することとを含んでもよい。
【0021】
内輪20は、第2のクランプ部材50を用いてクランプされてもよい。第2のクランプ部材50は、筒部材60と、筒部材60に挿入される棒状部材51とを含む。棒状部材51は、駆動部57に接続される側とは反対側にテーパ部52を含む。テーパ部52は、駆動部57とは反対側の方向に向かうにつれて先細になる形状を有している。棒状部材51は、棒状部材51の中心軸53に沿って延在している。棒状部材51は、フランジ部54を含んでもよい。フランジ部54には貫通孔55が形成されてもよい。テーパ部52とは反対側の棒状部材51の端部は駆動部57に接続されている。
【0022】
筒部材60は、第5の端面61と、第5の端面61とは反対側の第6の端面62とを含む。筒部材60は、第5の端面61に接続され、かつ、第6の端面62とは反対側に延在する押圧部64を含む。押圧部64は、棒状部材51が延在する中心軸53に対して傾斜された内面66と、外面67とを有する。内面66によって規定される押圧部64の開口は、テーパ形状を有している。具体的には、内面66によって規定される押圧部64の開口は、第5の端面61とは反対側の押圧部64の端部68に向かうにつれて先細になる形状を有している。図10に示されるように、押圧部64は、スリット65によって分割されてもよい。本実施の形態では、押圧部64は、スリット65によって4つに分割されている。第6の端面62に、ねじ孔63が形成されている。
【0023】
棒状部材51は、ねじ70を介して、筒部材60に機械的に結合されている。ねじ70は、首部71と、第1の胴部72と、首部71と第1の胴部72との間の第2の胴部73とを含む。第1の胴部72には、雄ねじが形成されている。第1の胴部72の雄ねじが、ねじ孔63にねじ締結されている。第2の胴部73には、ねじ溝が形成されていない。首部71と第2の胴部73とは、第6の端面62から突出している。第2の胴部73の長さは、フランジ部54の厚さよりも大きい。第2の胴部73の直径は、フランジ部54の貫通孔55の直径よりも小さい。第2の胴部73は、フランジ部54に対してスライドし得るように構成されている。そのため、棒状部材51は、第2の胴部73の長さとフランジ部54の厚さとの差によって規定される長さの範囲内で、筒部材60に対して移動し得るように構成されている。
【0024】
駆動部57が、棒状部材51と筒部材60とを含む第2のクランプ部材50を、ローダ(図示せず)などに搭載された内輪20に向けて移動させる。押圧部64が、第2の内周面25によって規定される内輪20の第2の開口内に挿入される。筒部材60の第5の端面61が、内輪20の第3の端面23に接触する。テーパ部52が押圧部64の内面66に接触する。駆動部57が棒状部材51をさらに移動させると、押圧部64の内面66が、テーパ部52に押圧される。そのため、押圧部64の外面67が、中心軸53から離れる方向に変形して、内輪20の第2の内周面25を押圧する。こうして、内輪20は、第2のクランプ部材50にクランプされる。内輪20は外輪10に圧入されているため、外輪10もまた内輪20を介して第2のクランプ部材50にクランプされる。
【0025】
それから、第2のクランプ部材50を台80に向けて移動させて、仕上げ加工された第1の端面11を台80に接触させる。特定的には、台80は、第1部分81と、第1部分81から突出する第2部分82とを含む。例えば、第1部分81は台80の主面であってもよい。第2部分82は、台80の主面から突出する突出部であってもよい。仕上げ加工された第1の端面11は、第2部分82の頂部83に接触してもよい。特定的には、頂部83は頂面であってもよく、仕上げ加工された第1の端面11は、第2部分82の頂面に面接触してもよい。台80は、第5の端面61とは反対側の押圧部64の端部68を受け入れ得るように構成された凹部84をさらに含んでもよい。内輪20の第4の端面21は、第1部分81から離間されてもよい。第2部分82は、仕上げ加工された第1の端面11よりも、第1の外周面16側に突出しなくてもよい。第2部分82は、第1の面取り部12よりも、第1の外周面16側に突出しなくてもよい。
【0026】
続いて、第2のクランプ部材50を用いて、外輪10に圧入された内輪20が台80に向けて押圧される。特定的には、駆動部57が棒状部材51を内輪20に向けて押圧する。テーパ部52に接触する押圧部64が台80に向けて押圧される。筒部材60の第5の端面61は、押圧部64に接続されている。そのため、筒部材60の第5の端面61が内輪20の第3の端面23を台80に向けて押圧する。内輪20は外輪10に圧入されている。内輪20を介して、外輪10が台80に押し付けられる。内輪20及び外輪10は、筒部材60と台80とによって位置決めされ得る。
【0027】
図11に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、仕上げ加工された第1の端面11を台80に押し付けながら、切削工具45を用いて、第1の外周面16の全てを仕上げ加工することを備える。切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の外周面16の第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の外周面16の第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることにより、第1の外周面16は仕上げ加工されてもよい。第1の端部16aは、第1の端面11側の第1の外周面16の端部である。第2の端部16bは、第2の端面13側の第1の外周面16の端部である。切刃46を外輪10に対して回転させる、または、外輪10を切刃46に対して回転させることによって、第1の外周面16の全てが仕上げ加工されてもよい。
【0028】
第1の面取り部12が形成される場合、第1の端部16aは、第1の面取り部12と第1の外周面16とによって形成される稜線であってもよい。第1の面取り部12が形成されない場合、第1の端部16aは、第1の端面11と第1の外周面16とによって形成される稜線であってもよい。第2の面取り部14が形成される場合、第2の端部16bは、第2の面取り部14と第1の外周面16とによって形成される稜線であってもよい。第2の面取り部14が形成されない場合、第2の端部16bは、第2の端面13と第1の外周面16とによって形成される稜線であってもよい。
【0029】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、第2のクランプ部材50を用いて内輪20がクランプされている。そのため、外輪10の第1の外周面16は、第2のクランプ部材50と機械的に干渉しない。切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることができる。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0030】
本実施の形態の軸受1の製造方法は、切削工具45を用いて、第2の端面13の全てを仕上げ加工することをさらに備えてもよい。仕上げ加工された第1の端面11が台80に押し付けられかつ台80に対する外輪10及び内輪20の向きが維持されながら、第1の外周面16と第2の端面13とが仕上げ加工されてもよい。そのため、より少ない工程で、第1の外周面16と第2の端面13とが仕上げ加工され得る。さらに、本実施の形態の軸受1の製造方法では、第2のクランプ部材50を用いて内輪20がクランプされるため、外輪10の第1の外周面16及び第2の端面13は、第2のクランプ部材50と機械的に干渉しない。そのため、第1の外周面16と第2の端面13とが向上された加工精度で仕上げ加工され得る。
【0031】
本実施の形態の軸受1の製造方法は、第2の端面13と第1の外周面16との間に第2の面取り部14を形成することをさらに備えてもよい。仕上げ加工された第1の端面11が台80に押し付けられかつ台80に対する外輪10及び内輪20の向きが維持されながら、第1の外周面16と第2の端面13とが仕上げ加工され、かつ、第2の面取り部14が形成されてもよい。そのため、より少ない工程で、第1の外周面16と第2の端面13とが仕上げ加工され得るとともに、第2の面取り部14が形成され得る。さらに、本実施の形態の軸受1の製造方法では、第2のクランプ部材50を用いて内輪20がクランプされるため、外輪10の第1の外周面16及び第2の端面13は、第2のクランプ部材50と機械的に干渉しない。そのため、第1の外周面16と第2の端面13とが向上された加工精度で仕上げ加工され得る。第2の面取り部14が向上された加工精度で形成され得る。
【0032】
図12に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、内輪20と仕上げ加工された外輪10とを台80から離すことを備える。具体的には、駆動部57を用いて第2のクランプ部材50を台80から離すことにより、内輪20と仕上げ加工された外輪10とが台80から離されてもよい。図12に示されるように、本実施の形態の軸受1の製造方法は、第2のクランプ部材50を内輪20から取り外すことを備える。駆動部57が棒状部材51を内輪20から離れる方向に移動させると、テーパ部52は押圧部64を押圧しなくなるとともに、フランジ部54がねじ70の首部71に接触する。駆動部57が棒状部材51を内輪20から離れる方向にさらに移動させると、筒部材60は棒状部材51とともに、内輪20から離れる方向に移動する。こうして、第2のクランプ部材50は内輪20から取り外される。こうして、図1に示される軸受1が製造され得る。
【0033】
本実施の形態の軸受1の製造方法の効果を説明する。
本実施の形態の軸受1の製造方法は、内輪20を外輪10に圧入することを備える。外輪10は、第1の内周面15と、第1の外周面16と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続される第1の端面11と、第1の内周面15と第1の外周面16とに接続されかつ第1の端面11とは反対側の第2の端面13とを有する。内輪20は、第2の外周面26を有する。第2の外周面26は、第1の内周面15に接触している。本実施の形態の軸受1の製造方法は、第1の端面11を仕上げ加工することと、仕上げ加工された第1の端面11を台80に押し付けながら、切削工具45を用いて、第1の外周面16の全てを仕上げ加工することとを備える。切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることにより、第1の外周面16は仕上げ加工される。第1の端部16aは、第1の端面11側の第1の外周面16の端部である。第2の端部16bは、第2の端面13側の第1の外周面16の端部である。
【0034】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、第1の外周面16は、台80と機械的に干渉しない。そのため、切削工具45を用いて、第1の外周面16の全てを仕上げ加工する際に、切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることにより、第1の外周面16は仕上げ加工される。第1の外周面16を仕上げ加工する際に、第1の外周面16に段差16f(図13を参照)が形成されることが防止される。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0035】
また、本実施の形態の軸受1の製造方法では、第1の外周面16を仕上げ加工する間、第1の外周面16がクランプされることがない。第1の外周面16を仕上げ加工する間、第1の外周面16が傷つくことが防止され得る。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0036】
これに対し、比較例の軸受1b(図13を参照)の製造方法では、第2の端部16bと中間部分16cとの間の第1の外周面16の第2領域16eがクランプされる。第1の端部16aと中間部分16cとの間の第1の外周面16の第1領域16dに切刃46(図11を参照)を接触させて、第1領域16dが仕上げ加工される。切刃46が第1領域16dから離される。第2領域16eのクランプを解除して、第1領域16dがクランプされる。切刃46(図11を参照)を第2領域16eに接触させて、第2領域16eが仕上げ加工される。比較例の軸受1bの製造方法では、第2領域16eがクランプされた状態から第1領域16dがクランプされた状態に切り換える際に発生する機械的な誤差等に起因して、第1の外周面16を仕上げ加工する際に、第1の外周面16の中間部分16cに段差16f(図13を参照)が形成される。そのため、比較例の軸受1bの製造方法では、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度は悪い。
【0037】
また、比較例の軸受1bの製造方法では、第1の外周面16の第1領域16dを仕上げ加工した後に、第1領域16dがクランプされる。第1領域16dがクランプされるときに、第1領域16dに傷が発生することがある。比較例の軸受1bの製造方法では、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度は悪い。
【0038】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、仕上げ加工された第1の端面11を台80に押し付けることは、外輪10に圧入された内輪20をクランプすることと、外輪10に圧入された内輪20を台80に向けて押圧することとを含んでもよい。
【0039】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、内輪20がクランプされるため、第1の外周面16を仕上げ加工する間、外輪10の第1の外周面16は露出されている。そのため、切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることができる。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態の軸受1の製造方法では、第1の外周面16を仕上げ加工する間、内輪20がクランプされる。そのため、第1の外周面16を仕上げ加工する間、内輪20及び外輪10が振動することが防止される。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。これに対し、比較例の軸受1bの製造方法では、第1の外周面16を仕上げ加工する間、内輪20はクランプされていない。そのため、第1の外周面16を仕上げ加工する間、内輪20及び外輪10が振動する。比較例の軸受1bの製造方法では、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度は悪い。
【0041】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、内輪20は、クランプ部材(第2のクランプ部材50)を用いてクランプされてもよい。クランプ部材(第2のクランプ部材50)は、筒部材60と、筒部材60に挿入される棒状部材51とを含む。筒部材60は、筒部材60の端面(第5の端面61)に接続された押圧部64を含む。棒状部材51はテーパ部52を含む。押圧部64は、外面67と、棒状部材51が延在する中心軸53に対して傾斜された内面66とを有する。内輪20は、第2の内周面25を有する。内面66がテーパ部52に押圧されることにより、外面67が第2の内周面25を押圧する。
【0042】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、クランプ部材(第2のクランプ部材50)を用いて内輪20がクランプされるため、外輪10の第1の外周面16は、クランプ部材(第2のクランプ部材50)と機械的に干渉しない。そのため、切削工具45の切刃46を第1の外周面16に接触させ続けながら、切刃46を第1の端部16a及び第2の端部16bの一方から第1の端部16a及び第2の端部16bの他方まで移動させることができる。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0043】
さらに、押圧部64の内面66が棒状部材51テーパ部52に押圧されることにより、外面67が第2の内周面25を押圧する。そのため、外輪10の中心軸と内輪20の中心軸とが、棒状部材51の中心軸53にセルフアライメントされ得る。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0044】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、内輪20は、第2の内周面25と第2の外周面26とに接続される第3の端面23をさらに有してもよい。内面66がテーパ部52に押圧されるときに、筒部材60の端面(第5の端面61)は第3の端面23を台80に押圧してもよい。そのため、第1の外周面16を仕上げ加工する間、内輪20及び外輪10は、台80と筒部材60とによって位置決めされ得る。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0045】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、台80は、第1部分81と、第1部分81から突出する第2部分82とを含んでもよい。内輪20は、第2の内周面25と第2の外周面26とに接続されかつ第3の端面23とは反対側の第4の端面21をさらに有してもよい。仕上げ加工された第1の端面11は第2部分82に押し付けられてもよい。第4の端面21は、第1部分81から離間されてもよい。
【0046】
本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、第1の外周面16と内輪20とが台80と機械的に干渉することなく、内輪20及び外輪10は台80に対して位置決めされ得る。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、台80は、筒部材60の端面(第5の端面61)とは反対側の押圧部64の端部68を受け入れ得るように構成された凹部84を含んでもよい。そのため、クランプ部材(第2のクランプ部材50)は、台80と機械的に干渉することなく、内輪20をクランプすることができる。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、外輪10の第1の外周面16の仕上げ加工精度を向上させることができる。
【0048】
本実施の形態の軸受1の製造方法は、切削工具45を用いて、第2の端面13の全てを仕上げ加工することをさらに備えてもよい。仕上げ加工された第1の端面11が台80に押し付けられかつ台80に対する外輪10及び内輪20の向きが維持されながら、第1の外周面16と第2の端面13とは仕上げ加工されてもよい。
【0049】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、第1の外周面16を仕上げ加工する第1の期間と第2の端面13を仕上げ加工する第2の期間との間に、台80に対する外輪10及び内輪20の向きを変える必要がない。そのため、本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、より少ない工程で、第1の外周面16及び第2の端面13が仕上げ加工され得る。
【0050】
本実施の形態の軸受1の製造方法は、第2の端面13と第1の外周面16との間に面取り部(第2の面取り部14)を形成することをさらに備えてもよい。仕上げ加工された第1の端面11が台80に押し付けられかつ台80に対する外輪10及び内輪20の向きが維持されながら、第1の外周面16と第2の端面13とは仕上げ加工され、かつ、面取り部(第2の面取り部14)は形成されてもよい。
【0051】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、第1の外周面16を仕上げ加工する第1の期間と第2の端面13を仕上げ加工する第2の期間と面取り部(第2の面取り部14)を形成する第3の期間との間に、台80に対する外輪10及び内輪20の向きを変える必要がない。そのため、本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、より少ない工程で、第1の外周面16及び第2の端面13が仕上げ加工され得るとともに、面取り部(第2の面取り部14)が形成され得る。
【0052】
本実施の形態の軸受1の製造方法では、内輪20及び外輪10は、チタン合金で構成されてもよい。本実施の形態の軸受1の製造方法によれば、軽量化された軸受1が製造され得る。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0054】
1,1b 軸受、10 外輪、11 第1の端面、12 第1の面取り部、13 第2の端面、14 第2の面取り部、15 第1の内周面、16 第1の外周面、16a 第1の端部、16b 第2の端部、16c 中間部分、16d 第1領域、16e 第2領域、16f 段差、20 内輪、21 第4の端面、23 第3の端面、25 第2の内周面、26 第2の外周面、30 ボール、35 金型、38 治具、40 第1のクランプ部材、45 切削工具、46 切刃、50 第2のクランプ部材、51 棒状部材、52 テーパ部、53 中心軸、54 フランジ部、55 貫通孔、57 駆動部、60 筒部材、61 第5の端面、62 第6の端面、63 ねじ孔、64 押圧部、65 スリット、66 内面、67 外面、68 端部、70 ねじ、71 首部、72 第1の胴部、73 第2の胴部、80 台、81 第1部分、82 第2部分、83 頂部、84 凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13