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  • 特許-合成樹脂管の製造方法 図1
  • 特許-合成樹脂管の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】合成樹脂管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/06 20060101AFI20220401BHJP
   C08J 7/00 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
B29C35/06
C08J7/00 301
C08J7/00 CES
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017234406
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019098675
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和紗
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321286(JP,A)
【文献】特開平05-138662(JP,A)
【文献】特開2006-035749(JP,A)
【文献】特開2012-247020(JP,A)
【文献】特開2013-053302(JP,A)
【文献】特開昭63-297034(JP,A)
【文献】特開2005-344820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/02、47/20、48/32
48/09
B29D 23/00
F16L 9/12、11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂管の製造方法であって、
合成樹脂材料により長尺の未架橋合成樹脂管を成形する成形工程と、
前記未架橋合成樹脂管を、直線状に延ばした状態で架橋して合成樹脂管を形成する架橋工程と、
前記合成樹脂管を切断する切断工程と、を有し、
前記架橋工程は、前記未架橋合成樹脂管の内部に水蒸気または熱水を通して行う
ことを特徴とする合成樹脂管の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程において、前記合成樹脂管を均等な長さに切断することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂管の製造方法。
【請求項3】
前記切断工程において、前記合成樹脂管を異なる長さに切断することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂管の製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂管を巻回して結束する巻回結束工程を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の合成樹脂管の製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂管を長尺の容器に収容する収容工程を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の合成樹脂管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給水給湯用または冷暖房用の配管に使用する合成樹脂管として架橋ポリエチレン管が用いられている。このような架橋ポリエチレン管は一般に架橋反応を経て製造されるが、巻回された状態で架橋処理を行うと巻き癖がついてしまい、その後の合成樹脂管としての取り扱いの利便性を欠くことが懸念される。
そこで、下記特許文献1に示すように、直方体形状をなす処理槽に未架橋のポリエチレン管を直線状に挿入して架橋処理をし、巻き癖を低減したポリエチレン管を製造する合成樹脂管の製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5992754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の合成樹脂管の製造方法では、処理槽の長手方向の大きさにより、最終製品として得られる合成樹脂管の長さが決まるため、様々な長さの合成樹脂管を製造するのが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、様々な長さの合成樹脂管を容易に製造することができる合成樹脂管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る合成樹脂管の製造方法は、合成樹脂管の製造方法であって、合成樹脂材料により長尺の未架橋合成樹脂管を成形する成形工程と、前記未架橋合成樹脂管を、直線状に延ばした状態で架橋して合成樹脂管を形成する架橋工程と、前記合成樹脂管を切断する切断工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この場合、合成樹脂管の製造方法において、最終製品長さに切断する切断工程を有しているので、直線状に延ばした状態で架橋された長尺の合成樹脂管を、任意の長さに切断することができる。これにより、様々な長さの合成樹脂管を容易に製造することができる。
【0008】
また、本実施形態では、前記架橋工程は、前記未架橋合成樹脂管の内部に水蒸気または熱水を通して行ってもよい。
【0009】
この場合、切断する前の長尺の状態で、内部に水蒸気または熱水を通して合成樹脂管を架橋する。このため、合成樹脂管の両端部のうち、水蒸気又は熱水を通すために取付ける接続継手の取付部分が占める割合を少なくすることができる。
これにより、最終製品として用いることができない接続継手の取付部分の廃棄量が大きくなるのを抑え、効率よく合成樹脂管を製造することができる。
【0010】
また、前記切断工程において、前記合成樹脂管を均等な長さに切断してもよい。
この場合、効率的に均等な長さの合成樹脂管を複数得ることができる。
【0011】
また、前記切断工程において、前記合成樹脂管を異なる長さに切断してもよい。
この場合、効率的に異なる長さの合成樹脂管を複数得ることができる。
【0012】
また、前記合成樹脂管を巻回して結束する巻回結束工程を有してもよい。
この場合、巻回結束工程を備えているので、切断された合成樹脂管を、巻回した状態に維持するとともに、かさ張らせることなく取り扱うことができる。
【0013】
また、前記合成樹脂管を長尺の容器に収容する収容工程を有してもよい。
この場合、切断された合成樹脂管の直線状態を維持することができ、合成樹脂管に巻き癖がつくのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々な長さの合成樹脂管を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の合成樹脂管の製造方法のうち、架橋工程に向けて合成樹脂管を処理槽の内部に挿入する状態を示す図である。
図2】本発明の合成樹脂管の製造方法のうち、切断工程として、処理槽から架橋後の合成樹脂管を取出す状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1および図2を参照し、本発明の第1実施形態に係る合成樹脂管の製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る合成樹脂管の製造方法は、合成樹脂材料により長尺の未架橋合成樹脂管10Aを成形する成形工程と、成形工程により成形された長尺の未架橋合成樹脂管10Aを、直線状に延ばした状態で架橋する架橋工程と、を備えている。未架橋合成樹脂管10Aはポリエチレン系樹脂により形成されている。
【0017】
成形工程の一例としては、ポリエチレン系樹脂を図示しない押出機に供給し、可塑化した樹脂を、ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフト反応させる。
そして、シラノール触媒の存在下でシラノール化を促進させ、管状に押出成形して未架橋ポリエチレンからなる未架橋合成樹脂管10Aを得る。
【0018】
架橋工程では、未架橋合成樹脂管10Aを熱により架橋反応させる。架橋反応により合成樹脂管10の耐熱性や耐クリープ性を向上させることができる。本実施形態では、架橋工程は、長尺の未架橋合成樹脂管10Aの内部に水蒸気または熱水を通して行う。以下にこの工程について詳述する。
図1に示すように、100m、200mなど第1の長さである未架橋合成樹脂管10Aはロール状に巻回された状態で結束されている。このロール状の未架橋合成樹脂管10Aを、処理槽20内に処理槽の進入口20Aから順次進入させ、処理槽20内に収まるように、50m、100mなど第2の所定長さ毎に切断する。第1の長さが処理槽20内に納まる長さであれば、ここで切断する必要はない。
【0019】
そして、処理槽20内に設けられた図示しない接続継手を、未架橋合成樹脂管10Aの一端部および他端部に各別に接続し、一方の接続継手から他方の接続継手に向けて熱水を流す。これにより、未架橋合成樹脂管10Aの内部を熱水が通過することで、均等に架橋反応を起こさせることができる。
ここで、合成樹脂管10のうち、接続継手が取付けられる取付部分、すなわち両端の2cmから10cm程度は、接続継手が取付けられることで変形等している可能性が懸念されるため、架橋工程の後に切り落とされて廃棄される。両端それぞれが2cmから10cm程度切断されることで合成樹脂管10は第3の長さとなる。
【0020】
そして本実施形態では、合成樹脂管の製造方法は、架橋工程により架橋された長尺の合成樹脂管10から、第4の長さである最終製品長さに切断する切断工程を有している。本実施形態では、切断工程において、最終製品長さとして異なる長さの合成樹脂管10を複数得る。
図2に示すように、処理槽20から合成樹脂管10を取出す際には、処理槽20の進入口20A、または進入口の逆側である他端口から、図示しない引取り器を用いて引き出してもよいし、作業者の手で引き出してもよい。また、巻き取り機を用いて、処理槽20の進入口20Aから合成樹脂管10をロール状に取出してもよい。
切断作業において、作業者がパイプカッター等で切断してもよいし、切断機21を用いて切断してもよい。切断機21を進入口20Aに設けておくことで、架橋前の切断と、架橋後の切断と、を同じ設備で効率よく行うことができる。
【0021】
ここで、切断した後の製品の状態としては、巻状(ロール状)であっても直管であってもよい。
すなわち、例えば接続ノズルの取付部分を除く寸法、すなわち第3の長さが40mの合成樹脂管10から、20mの巻状製品を2セット得てもよいし、20mの巻状製品1セットと、5mの直管製品を4本得てもよい。
また例えば、接続ノズルの取付け部分を除く寸法が40mの合成樹脂管10から、4mの直管製品を10本得てもよいし、20mの巻状製品1セットと、5mの直管製品1本と、3mの直管製品を5本得てもよい。
【0022】
さらに例えば、接続ノズルの取付け部分を除く寸法が60mの合成樹脂管10から、40mの巻状製品1セットと、4mの直管製品を5本得てもよい。
これらのいずれの場合においても、巻状製品と直管製品とのいずれもが、架橋反応時に処理槽20内で直線状に延ばされていたため、巻き癖が低減されていることとなる。
【0023】
すなわち、本実施形態では、切断工程により得られた合成樹脂管10を巻回して結束する巻回結束工程を有している。
巻回結束工程では、前述した切断工程により得られた合成樹脂管10のうち、巻状製品とされるものを、巻き取り機によりロール状に巻き取ることで行われる。巻取り機を進入口20Aに設けておくことで、未架橋合成樹脂管10Aを処理槽20への挿入に使用した巻送り装置と巻取り装置と、を同じ設備で効率よく行うことができる。巻状製品は巻き取りが完了した後に結束される。
【0024】
また、本実施形態では、切断工程により得られた合成樹脂管10を長尺の容器に収容する収容工程を有している。
収容工程では、前述した切断工程により得られた合成樹脂管10のうち、直管製品として取出された合成樹脂管10を、図示しない長尺の容器に収容する。長尺の容器の大きさは、直管製品の長さに合わせて任意に設定することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る合成樹脂管の製造方法によれば、最終製品長さに切断する切断工程を有しているので、直線状に延ばした状態で架橋された長尺の合成樹脂管10を、任意の長さに切断することができる。これにより、様々な長さの合成樹脂管10を容易に製造することができる。
【0026】
また、架橋工程において、切断する前の長尺の状態で、内部に水蒸気または熱水を通して合成樹脂管10を架橋することとなる。
このため、合成樹脂管10の両端部のうち、水蒸気又は熱水を接続するために取付ける接続継手の取付部分が占める割合を少なくすることができる。
これにより、最終製品として用いることができない接続継手の取付部分の廃棄量が大きくなるのを抑え、効率よく合成樹脂管10を製造することができる。
【0027】
また、切断工程において、最終製品長さとして異なる長さの合成樹脂管10を複数得るので、効率的に異なる長さの合成樹脂管10を複数得ることができる。
【0028】
また、切断工程により得られた合成樹脂管10を巻回して結束する巻回結束工程を備えているので、切断された合成樹脂管10を、巻回した状態に維持するとともに、かさ張らせることなく取り扱うことができる。
【0029】
また、切断工程により得られた合成樹脂管10を長尺の容器に収容する収容工程を有するので、切断された合成樹脂管10の直線状態を維持することができ、合成樹脂管10に巻き癖がつくのを確実に防止することができる。
【0030】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態においては、架橋工程として、長尺の合成樹脂管10の一端部から他端部に向けて水蒸気または熱水を通して行う構成を示したが、このような態様に限られない。架橋工程としては、例えば処理槽20内を熱水で満たし、この熱水内に未架橋合成樹脂管10Aを浸漬させてもよい。また、例えば処理槽20内を水蒸気で満たし、水蒸気内に未架橋合成樹脂管10Aを配置してもよい。
【0032】
また、上記実施形態においては、切断工程で最終製品長さとして異なる長さの合成樹脂管10を複数得る構成を示したが、このような態様に限られない。
切断工程で最終製品長さとして均等な長さの合成樹脂管10を複数得てもよい。これにより、効率的に均等な長さの合成樹脂管10を複数得ることができる。
【0033】
また、上記実施形態においては、巻回結束工程および収容工程をそれぞれ有している構成を示したが、このような態様に限られない。巻回結束工程および収容工程のうちのいずれか一方のみを有してもよいし、これらをともに有していなくてもよい。
【0034】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 合成樹脂管
10A 未架橋合成樹脂管
20 処理槽
図1
図2