(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/36 20060101AFI20220401BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
F24C15/36 A
A47J37/06 361
(21)【出願番号】P 2017240624
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】作田 寛和
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204180(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201116(JP,U)
【文献】特開昭63-101633(JP,A)
【文献】米国特許第05664554(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/36
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口を備え、被加熱物を前記開口から内部に収納するグリル庫と、前記グリル庫の前方に配置され、前記開口を開閉するグリル扉とを備えた加熱調理器であって、
前記グリル扉を覆うように配設されるガード部材本体と、前記ガード部材本体を前記グリル扉に係止するためのガード部材側係合部とを備えた、金属材料からなるガード部材と、
前記グリル扉に形成され、前記ガード部材側係合部が係止されるグリル扉側係合部と
を備えており、
前記ガード部材のうち、(a)前記ガード部材側係合部を除く領域は、ゴム系材料または樹脂系材料からなる被覆材により被覆され、(b)前記ガード部材側係合部は、前記被覆材により被覆され
ず、かつ、
前記ガード部材側係合部は、平面視で、少なくとも主要部が前記グリル扉の主面と略平行に左右方向に延びる左右方向辺と、前記左右方向辺の両端部から前方に延びる一対の前後方向辺とを備え、
前記グリル扉側係合部は、前記グリル扉の上部に、上方に向かって突出するように形成されているとともに、前記グリル扉側係合部が、平面視で、前記ガード部材側係合部を構成する前記左右方向辺と、前記一対の前後方向辺と、前記ガード部材本体とに囲まれた領域に挿入されることにより、前記ガード部材が前記グリル扉に係止されるように構成されていること
を特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記グリル扉側係合部は、
(a)前記ガード部材側係合部の前記一対の前後方向辺の間に挿入される途中の挿入途中状態においては、前記一対の前後方向辺を、互いに離間するように弾性変形させる干渉部を備えるとともに、
(b)前記グリル扉側係合部が前記一対の前後方向辺の間に挿入された後の挿入完了状態においては、弾性により形状復帰した状態の前記一対の前後方向辺を収容保持する収容保持部を備えていること
を特徴とする請求項
1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記グリル扉の上部に、前記左右方向辺が嵌入する左右方向辺嵌入部を備えていることを特徴とする請求項
1または2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ガード部材本体と、前記ガード部材側係合部とが、金属線材により一体に形成されていることを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記ガード部材と前記グリル扉の前面との離間距離の減少を牽制するスペーサを備えていることを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関し、詳しくは、グリルを備え、前面にグリル庫の開閉を行うためのグリル扉を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器の中には、肉や魚などの被調理物を焼いたりする調理に用いられるグリルを備えた加熱調理器がある。そして、グリルを備えたガスコンロなどの加熱調理器においては、前面にグリルを構成するグリル庫の開閉を行うためのグリル扉を備えたものが一般的である。
【0003】
このような加熱調理器の場合、グリル調理が行われると、グリル庫内の加熱手段によりグリル扉が加熱されて高温になるため、使用者らがグリル扉に触れると熱さに驚ろかされる場合があるばかりでなく、火傷をするおそれもある。
【0004】
そのため、グリル扉や、グリル庫内ののぞき窓の前に、ガード部材や保護部材を配設するようにした加熱調理器が提案されている。
【0005】
そして、特許文献1には、線材または棒材から構成され、のぞき窓の前方を覆うガード体を備えるグリル(加熱調理器)が開示されている。そして、この特許文献1の加熱調理器において、ガード体はグリル扉の取っ手に取り付けられるように構成されている。
【0006】
そして、上記特許文献1に記載された加熱調理器は、グリル扉の前面がガード体によって覆われていることから、高温になるグリル扉やのぞき窓への、使用者の手や指の接触が抑制、防止され、調理の際の安全性や信頼性、快適性などを向上させることができる点で有意義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された加熱調理器においては、ガード体が、熱の伝わりやすい金属の線材または棒材から構成されているので、ガード体によって使用者がグリル扉の前面に触れて火傷をすることは防止できても、使用者がガード体に触れたときに熱さを感じやすく、不快感を与えることが考えられ、改善の余地があるのが実情である。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、グリル扉の前面を覆うガード体を備え、使用時に高温になるグリル扉やのぞき窓に使用者の手や指が触れることをガード体によって抑制、防止することが可能で、かつ、使用者がガード体に触れたときにも熱く感じることを抑制することができる、安全で使用感に優れた加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の加熱調理器は、
前方に開口を備え、被加熱物を前記開口から内部に収納するグリル庫と、前記グリル庫の前方に配置され、前記開口を開閉するグリル扉とを備えた加熱調理器であって、
前記グリル扉を覆うように配設されるガード部材本体と、前記ガード部材本体を前記グリル扉に係止するためのガード部材側係合部とを備えた、金属材料からなるガード部材と、
前記グリル扉に形成され、前記ガード部材側係合部が係止されるグリル扉側係合部と
を備えており、
前記ガード部材のうち、(a)前記ガード部材側係合部を除く領域は、ゴム系材料または樹脂系材料からなる被覆材により被覆され、(b)前記ガード部材側係合部は、前記被覆材により被覆されず、かつ、
前記ガード部材側係合部は、平面視で、少なくとも主要部が前記グリル扉の主面と略平行に左右方向に延びる左右方向辺と、前記左右方向辺の両端部から前方に延びる一対の前後方向辺とを備え、
前記グリル扉側係合部は、前記グリル扉の上部に、上方に向かって突出するように形成されているとともに、前記グリル扉側係合部が、平面視で、前記ガード部材側係合部を構成する前記左右方向辺と、前記一対の前後方向辺と、前記ガード部材本体とに囲まれた領域に挿入されることにより、前記ガード部材が前記グリル扉に係止されるように構成されていること
を特徴としている。
【0011】
また、前記グリル扉側係合部は、
(a)前記ガード部材側係合部の前記一対の前後方向辺の間に挿入される途中の挿入途中状態においては、前記一対の前後方向辺を、互いに離間するように弾性変形させる干渉部を備えるとともに、
(b)前記グリル扉側係合部が前記一対の前後方向辺の間に挿入された後の挿入完了状態においては、弾性により形状復帰した状態の前記一対の前後方向辺を収容保持する収容保持部を備えていること
が好ましい。
【0012】
また、前記グリル扉の上部に、前記左右方向辺が嵌入する左右方向辺嵌入部を備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記ガード部材本体と、前記ガード部材側係合部とが、金属線材により一体に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記ガード部材と前記グリル扉の前面との離間距離の減少を牽制するスペーサを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱調理器は、上述のように構成されており、ガード部材を備えているので、使用時に高温になるグリル扉に手や指が接触することを抑制、防止することが可能になる。
【0016】
また、ガード部材のうち、ガード部材側係合部を除く領域、すなわち、ガード部材本体は、熱の伝わりにくいゴム系材料または樹脂系材料からなる被覆材により被覆されているので、使用者らの手や指が、グリル扉の前方に位置するガード部材(詳しくはガード部材本体)に触れた場合にも、使用者らが熱く感じることを抑制することができる。
【0017】
さらに、ガード部材側係合部は、被覆材により被覆されておらず、高い形状精度、寸法精度を維持することができるので、ガード部材をグリル扉に取り付けるにあたって、ガード部材側係合部と、グリル扉側係合部とを確実に係合させることが可能になり、ガード部材とグリル扉との相対的な位置関係を適正に維持することが可能になる。
【0018】
また、本発明においては、ガード部材側係合部が、平面視で、主要部がグリル扉の主面と略平行に左右方向に延びる左右方向辺と、左右方向辺の両端部から前方に延びる一対の前後方向辺とを備え、グリル扉側係合部が、グリル扉の上部に、上方に向かって突出するように形成されているとともに、平面視で、ガード部材側係合部を構成する左右方向辺と、一対の前後方向辺と、ガード部材本体とに囲まれた領域に挿入されることにより、ガード部材がグリル扉に係止されるように構成されているので、複雑な構造を必要とせずに、ガード部材を確実にグリル扉に確実に係止することができる。
【0019】
したがって、本発明によれば、使用者らがガード部材に触れた場合にも熱く感じることを抑制することが可能であるとともに、ガード部材とグリル扉とを確実に係合させ、かつ、両者の相対的な位置関係を適正に維持することが可能な、信頼性の高い加熱調理器を提供することができる。
【0020】
また、グリル扉側係合部が、(a)ガード部材側係合部の一対の前後方向辺の間に挿入される途中の挿入途中状態においては、一対の前後方向辺を、互いに離間するように弾性変形させる干渉部を備えるとともに、(b)一対の前後方向辺の間に挿入された後の挿入完了状態においては、弾性により形状復帰した状態の前記一対の前後方向辺を収容保持する収容保持部を備えた構成とした場合、ガード部材側係合部の弾性を利用して、ガード部材の取り付けを容易に行うことができ、取り付が完了したガード部材が、グリル扉から不用意に外れることを抑制することができる。
【0021】
また、グリル扉の上部に、ガード部材側係合部の左右方向辺が嵌入する左右方向辺嵌入部を備えた構成とした場合、ガード部側係合部とクリル扉側係合部が係合した状態において、左右方向辺がグリル扉上部の左右方向辺嵌入部に嵌入することで、ガード部材側係合部の前後方向の位置が適正に維持されることになり、カバー部材の取り付け信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、ガード部材本体と、ガード部材側係合部とを、金属線材により一体に形成するようにした場合、製造コストの低減を図ることが可能になる。
【0023】
ガード部材とグリル扉の前面との離間距離の減少を牽制するスペーサを備えるようにした場合、ガード部材を後方に移動させようとする力、すなわち、ガード部材をグリル扉に近付けようとする力がガード部材に作用した場合にも、ガード部材とグリル扉との離間距離が適正に維持されることになり、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態にかかる加熱調理器の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態にかかる加熱調理器が備えるグリル扉にガード部材を装着した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる加熱調理器が備えるグリル扉にガード部材を装着した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】
図3(a)におけるIV-IV線断面図であり、(a)はガード部材の挿入途中状態、(b)はガード部材の挿入完了状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる加熱調理器が備えるガード部材における、被覆部材の配設位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0026】
[実施形態]
本実施形態では、加熱調理器として、グリルが組み込まれたグリル付きガスコンロを例にとって説明する。
【0027】
<グリル付きガスコンロの基本構造>
本発明の一実施形態にかかる加熱調理器Aは、グリル付きガスコンロであって、コンロ部101とグリル部104を備えたビルトイン型のガスコンロである。以下説明を行う。
【0028】
この実施形態にかかる加熱調理器(グリル付きガスコンロ)Aは、
図1に示すように、高火力バーナ1(1a)、1(1b)、および小バーナ1(1c)の3つのバーナ(コンロバーナ)を備えている。
【0029】
また、トッププレート12上には、各バーナ(コンロバーナ)1の上部に載置される鍋などの被加熱物(調理容器)(図示せず)を受け止め、支持するための五徳51が載置されている。
【0030】
また、グリル付きガスコンロAは、前方に開口41aを備え、被加熱物を開口41aから内部に収納する箱状に構成されたグリル庫41と、グリル庫41の前方に配置され、開口41aを開閉するグリル扉42とを備えている。
【0031】
また、グリル扉42には、グリル庫41内を透視するための、強化ガラスがはめ込まれたのぞき窓43(
図2)が形成されている。
【0032】
さらに、各コンロバーナ1(1a、1b、1c)には、例えば、鍋やフライパンなどの調理容器(図示せず)の底に接触してその温度を検出するためのサーミスタからなる温度検出体(鍋底温度センサ)9が、コンロバーナ1(1a、1b、1c)の中央を貫通するように配設されている。
【0033】
そして、この温度検出体(鍋底温度センサ)9を備えたコンロバーナ1(1a、1b、1c)により、炊飯、湯沸かし、揚げものなどの温調調理を行うことができるように構成されている。
【0034】
また、加熱調理器Aの前側面の操作盤には、上述のコンロバーナ1(1a、1b、1c)とグリルバーナ(図示せず)の点火および消火、火力調節と各種の設定とを指令する手動操作部34(
図1参照)が設けられている。
【0035】
なお、グリル部104は、箱状のグリル庫41(ただし、内部は図示せず)内に、魚などの被調理物を載置するための載置部として機能する焼き網(図示せず)を設けた構成とされている。また、グリル庫41内には、1つの上側バーナ(図示せず)と2つの下側バーナ(図示せず)が配設されている。
【0036】
上記手動操作部34は、コンロバーナ1(高火力バーナ1a、1b、小バーナ1c)のそれぞれに対して各別に点火・消火や火力調節を指令するための3つのバーナ操作部21(21a、21b、21c)、コンロバーナ1(1a、1b、1c)の温調機能(湯沸かし、揚げ物、炊飯)とタイマ機能についての操作および表示を行うコンロバーナ用の付加機能操作・表示部32、グリルバーナ(上側バーナと2つの下側バーナ)の火力調節などを行うグリルバーナ操作部22、グリルバーナの作動状態の切り換えを指令するグリル用の付加機能操作・表示部33などを備えている。
【0037】
なお、器具本体10の前面右上に配置された電源スイッチ24をONにした後に、上記高火力バーナ操作部21a、高火力バーナ操作部21b、および小バーナ操作部21cを押し込み操作することにより、高火力バーナ1a、高火力バーナ1b、および小バーナ1cが点火するとともに、各バーナ操作部21(21a、21b、21c)が内部から飛び出して、火力調節を行うことができるように構成されている。
【0038】
また、各バーナ操作部21(21a、21b、21c)を再度押し込むことにより、高火力バーナ1a、高火力バーナ1b、小バーナ1cの消火動作が実行されるとともに、各バーナ操作部21(21a、21b、21c)が器具本体10の内部に収納されるように構成されている。
【0039】
なお、このような操作部の構成は周知であるので詳細な説明は省略する。
【0040】
<調理容器の特徴的構成>
本実施形態にかかる加熱調理器(グリル付きガスコンロ)Aは、グリル扉42の前方を覆い、使用者らがグリル扉42に触れることを抑制、防止するガード部材60を備えている。
本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいて、ガード部材60は、金属材料(金属線材)を用いて形成されている。
【0041】
また、ガード部材60は、グリル扉42の前方に、グリル扉42を覆うように配設され、使用者らがグリル扉42に触れることを抑制、防止するガード部材本体61と、ガード部材本体61の上部に形成され、ガード部材本体61をグリル扉42に係止するためのガード部材側係合部62とを有している(
図2、
図3参照)。
【0042】
なお、
図2、
図3に示すように、ガード部材側係合部62は、グリル扉42の前方に位置してグリル扉42を覆うように配設されたガード部材本体61の上部に配設されている。
【0043】
また、グリル扉42の上部(上端)には、上方に向かって突出するように形成されたグリル扉側係合部44が設けられている。
【0044】
そして、ガード部材側係合部62に、グリル扉側係合部44が嵌入して係合することにより、ガード部材60がグリル扉42に係止されるように構成されている。
【0045】
また、本発明の実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、ガード部材60のうち、ガード部材側係合部62を除く領域は、例えば、シリコーンゴムなどのゴム系材料、あるいは、樹脂系材料からなる被覆材80により被覆されている(
図5参照)。
本実施形態では、被覆材80として、ポリプロピレン系材料(樹脂系材料)が用いられており、ガード部材側係合部62を除く領域、すなわち、ガード部材本体61がポリプロピレン系材料(樹脂系材料)からなる被覆材80により被覆されている。
なお、ガード部材側係合部62を含むガード部材60の構成の詳細については後述する。
【0046】
本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、上述のように、ガード部材本体61の上部に形成されたガード部材側係合部62と、グリル扉42の上部に形成されたグリル扉側係合部44とを係合させることにより、ガード部材60がグリル扉42に直接に取り付けられるように構成されているため、使用者がグリル扉42の取っ手を把持する際、調理容器を用いてトッププレート12上で調理を行う際、バーナ1の点火、消火、火力調節、各種の設定などの操作(操作盤の操作)を行う際などに、ガード部材が邪魔になることのない、使い勝手の良好な加熱調理器を提供することが可能になる。
【0047】
次に、ガード部材側係合部62を含むガード部材60の構成について具体的に説明する。
【0048】
本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいて、ガード部材60の主体であるガード部材本体61は、
図3に示すように、金属材料(本実施形態では金属線材)からなる複数の横辺(横棒)67と、上下方向に延びる一対の縦辺(縦棒)68(68a、68b)とを備えており、各横辺67の左右端が一対の縦辺68(68a、68b)に接続されている。
【0049】
すなわち、複数の横辺67は、水平、かつ、グリル扉42の前面と略平行に、上下方向に所定の間隔をおいて配設されているとともに、横辺67の左右端が、上下方向に延びる一対の縦辺68(68a、68b)により一体に結合されている。つまり最も上方に位置する横辺67aと最も下方に位置する横辺67bと、一対の縦辺68(68a、68b)が枠体となるように構成されている。
【0050】
なお、複数の横辺(横棒)67と縦辺(縦棒)68とはプロジェクション溶接によって接合されており、これによって、縦辺(縦棒)68間に複数の横辺(横棒)67が懸架された構造体である、ガード部材60の主体となるガード部材本体61が形成されている。
【0051】
また、上述のガード部材側係合部62は、弾性を有する金属線材により形成さており、上述のガード部材本体61と一体に構成されている(
図2、
図3参照)。
【0052】
このガード部材側係合部62は、平面視で、少なくとも主要部がグリル扉42の主面と略平行に左右方向に延びる左右方向辺65と、左右方向辺65の両端部から前方に延びる一対の前後方向辺66(66a、66b)とを備えている。この左右方向辺65も被覆材によって被覆されておらず、金属線材の表面が露出した状態とされている。
【0053】
なお、左右方向辺65と、一対の前後方向辺66(66a、66b)とは、ガード部材本体61を構成する一対の縦辺(縦棒)68(68a、68b)から延設されたものであり、ガード部材本体61とガード部材側係合部62とは同一の金属線材により一体に形成されている。
【0054】
そして、グリル扉側係合部44が、平面視で、ガード部材側係合部62を構成する前記左右方向辺65と、一対の前後方向辺66(66a、66b)と、ガード部材本体61とに囲まれた領域に挿入される、言い換えると、ガード部材側係合部62がグリル扉側係合部44に外嵌されることにより、ガード部材60がグリル扉42に係止されるように構成されている。
【0055】
なお、本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、上述のように、ガード部材60を構成するガード部材側係合部62を除く領域、すなわち、ガード部材本体61は、樹脂系材料(ポリプロピレン系材料)からなる被覆材80(
図5参照)により被覆されており、ガード部材側係合部62は、ガード部材60を構成する金属線材(金属材料)が露出した状態とされている。
【0056】
さらに説明すると、ガード部材側係合部62を構成する左右方向辺65(
図3(a))、一対の前後方向辺66(66a、66b)、一対の縦辺(縦棒)68(68a、68b)の上端部168(
図5)は被覆材によって被覆されておらず、金属線材の表面が露出しており、ガード部材60を構成する他の部分(ガード部材側係合部62)が被覆材80(
図5参照)により被覆されている。
【0057】
本発明の実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、上述のように、グリル扉側係合部44が、左右方向辺65と、一対の前後方向辺66(66a、66b)と、ガード部材本体61とに囲まれた領域に挿入されることで、ガード部材60がグリル扉42に係止されるように構成することにより、複雑な構造を必要とせずに。ガード部材60を、容易かつ確実にグリル扉42に係止することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0058】
すなわち、ガード部材側係合部62は、被覆材により被覆されていないので、ガード部材60をグリル扉42に取り付けるにあたって、ガード部材側係合部62と、グリル扉側係合部44とを所定の位置で確実に係合させることができ、ガード部材60とグリル扉42との相対的な位置関係を適正に維持することが可能になる。
【0059】
また、本発明の実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、上述のように、ガード部材60のうち、ガード部材側係合部62を除く領域が、樹脂系材料(ポリプロピレン系材料)からなる被覆材80(
図5参照)により被覆されているので、使用者らの手や指がグリル扉の前方に位置するガード部材本体61に触れた場合にも、使用者らが熱く感じることを抑制することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、上述のように、ガード部材本体61とガード部材側係合部62とを、同一の金属線材により一体に形成するようにしているので、製造コストを低減することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の加熱調理器Aにおいて、グリル扉側係合部44は、
(a)
図4(a)に示すように、ガード部材側係合部62の一対の前後方向辺66(66a、66b)の間に挿入される際の状態である挿入途中状態において、一対の前後方向辺66(66a、66b)と当接し、両者が互いに離間するように弾性変形させる干渉部46を備えているとともに、
(b)
図4(b)に示すように、グリル扉側係合部44が一対の前後方向辺66(66a、66b)の間に挿入された後の挿入完了状態においては、弾性により形状復帰した状態の一対の前後方向辺66(66a、66b)を収容保持する収容保持部47を備えている。
なお、
図4(a)、(b)は、右側の干渉部46を示している。
【0062】
左側の干渉部46(
図2)は、左方向に突出した突出部であり、右側の干渉部46(
図2、
図4)は、右方向に突出した突出部である。
このように互いに逆方向に突出した突出部である一対の干渉部46の作用により、上記の挿入途中状態においては、一対の前後方向辺66(66a、66b)が、互いに離間するように弾性変形することになる。
【0063】
そして、一対の収容保持部47は、一対の前後方向辺66(66a、66b)が収容、保持される凹部として構成されており、収容保持部47は、それぞれ、干渉部としての突起を備えていないので、一対の前後方向辺66(66a、66b)が、干渉部46を超えて、収容保持部47に至ると、弾性変形状態から元の状態に形状復帰し、その状態で収容保持部47に収容保持されることになる(
図4(b))。
【0064】
上述の構成とした場合、ガード部材側係合部62の弾性を利用して、ガード部材60の取り付けを容易に行うことが可能になり、取り付けが完了したガード部材60が、グリル扉42から不用意に外れることを抑制して、信頼性を向上させることができる。
【0065】
また、ガード部材60の、上記干渉部46と当接するガード部材側係合部62は被覆材によって覆われておらず、金属線材の表面が露出しているので、干渉部46と、被覆材によって被覆されていないガード部材側係合部62とが、互いに当接、摺動し、確実に弾性変形および形状復帰することになるため、ガード部材60をグリル扉42に、円滑かつ確実に係合させることが可能になる。
【0066】
さらに、本実施形態にかかる加熱調理器Aは、グリル扉42の上部に、挿入完了状態においてガード部材60の左右方向辺65が嵌入する左右方向辺嵌入部48を備えている。なお、左右方向辺嵌入部48は、ガード部材60の左右方向辺65に対応する平面形状を有しており、ガード部材60の左右方向辺65が左右方向辺嵌入部48に嵌入した後は、左右方向辺65が平面視で、前方側に位置ずれすることなく、所定の位置に確実に保持される。なお、左右方向辺65は被覆材により被覆されていないので、左右方向辺嵌入部48に確実に嵌入し、所定の位置に確実に保持されることになる。
【0067】
そして、左右方向辺65が所定の位置に確実に保持されることにより、ガード部材側係合部62の前後方向の位置、ひいては、ガード部材60の前後方向の位置が適正に維持されることになる。
【0068】
また、本実施形態にかかる加熱調理器Aは、ガード部材60とグリル扉42の前面42aとの離間距離の減少を牽制するスペーサ70を備えている。
なお、本実施形態では、グリル扉42の前面42aには、強化ガラスからなるのぞき窓43が設けられているとともに、グリル扉42の前面42aにおけるのぞき窓43より下側の領域、すなわち
図2および
図3(b)において、符号42aで示している領域は樹脂により形成されている。
【0069】
本実施形態において、スペーサ70は、例えば金属の線材を口の字状に形成して、その上端70aと下端70bとを後方、すなわち、グリル扉42に近づく方向に屈曲させた構造を備えている。
【0070】
そして、グリル扉42に近づく方向に屈曲させた上端側の横片70cと下端側の横片70dが、グリル扉42の前面42aと当接することにより、ガード部材本体61とグリル扉42との間に所定の間隙が確保されるように構成されている。
本実施形態では、スペーサ70の下端側の横片70dは、グリル扉42の前面42aにおけるのぞき窓43より下側の樹脂により形成された領域に当接するように構成されている。
【0071】
なお、スペーサ70は、プロジェクション溶接によって横辺(横棒)に止着されている(
図3参照)。
そして、本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいては、スペーサ70も樹脂系材料(ポリプロピレン系材料)からなる被覆材80(
図5参照)によって被覆されている。
【0072】
また、本実施形態にかかる加熱調理器Aにおいて、グリル扉42の前方の左右において上下方向に延びる一対の縦辺(縦棒)68(68a、68b)の下端は、後方に屈曲しており、後方に屈曲した縦辺68(68a、68b)の下端に懸架された最下段の横辺67(67b)は、グリル扉42の前面42aと当接するように構成されている。
【0073】
なお、本実施形態では、最下段の横辺67(67b)も樹脂系材料(ポリプロピレン系材料)からなる被覆材80(
図5参照)によって被覆されており、この最下段の横辺67(67b)が、グリル扉42の前面42aにおけるのぞき窓43より下側の樹脂により形成された領域に当接するように構成されている。
【0074】
したがって、この最下段の横辺67(67b)も、ガード部材とグリル扉の前面との離間距離の減少を牽制するスペーサとして機能することになり、ガード部材本体61とグリル扉42との間に、より確実に所定の間隙が確保されることになる。
【0075】
このように、本実施形態の加熱調理器Aでは、ガード部材本体61とグリル扉42の前面との離間距離の減少を牽制するスペーサ70を備えているので、ガード部材60を後方に移動させようとする力がガード部材60に対して作用した場合にも、ガード部材60(ガード部材本体61)とグリル扉42との離間距離が適正に維持され、信頼性が向上する。
また、スペーサ70も樹脂系材料(ポリプロピレン系材料)からなる被覆材80(
図5参照)によって被覆されているので、使用者らの手や指がスペーサ70に触れた場合に、使用者らが熱く感じることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態にかかる加熱調理器Aでは、ガード部材側係合部62を構成する左右方向辺65と、一対の前後方向辺66(66a、66b)との間に、
図3(a)に示すように、左右方向辺65の両端から後方に屈曲した後、湾曲して一対の前後方向辺66(66a、66b)に続く部分である屈曲部69が設けられている。屈曲部69も被覆材によって被覆されておらず金属線材が露出した状態とされている。
【0077】
この屈曲部69を備えることにより、グリル扉側係合部44が一対の前後方向辺66(66a、66b)の間に挿入される際の挿入途中状態において、一対の前後方向辺66(66a、66b)が離間するように変形したときに、左右方向辺65あるいは一対の前後方向辺66(66a、66b)が弾性限界を超えて変形してしまうことが抑制され、グリル扉側係合部44が一対の前後方向辺66(66a、66b)の間に挿入された後の挿入完了状態において一対の前後方向辺66(66a、66b)がより確実、かつ適正に弾性復帰することを可能にすることができる。
【0078】
なお、本実施形態にかかる加熱調理器Aでは、ガード部材本体61とガード部材側係合部62とが、同一の金属線材により一体に形成されている場合を例に挙げて説明したが、ガード部材本体61を、樹脂の射出成型品、あるいは、金属板をプレスにより打ち抜き加工したもので形成し、ガード部材側係合部62は金属線材で形成するようにしてもよい。
【0079】
また、ガード部材60の、ガード部材側係合部62を除いた領域を被覆材80(
図5参照)により被覆するにあたっては、例えば、流動性のある状態の被覆材(例えばポリプロピレン系樹脂材料など)にガード部材60の、ガード部材側係合部62を除いた領域を浸漬し、引き上げた後、被覆材を固化させる方法など、周知の方法を用いることができる。ただし、その方法に特別の制約はなく、他の方法を用いることも可能である。
【0080】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
A 加熱調理器(グリル付きガスコンロ)
1(1a、1b) 高火力バーナ
1(1c) 小バーナ1
9 温度検出体(鍋底温度センサ)
10 器具本体
12 トッププレート
21 バーナ操作部
21a、21b 高火力バーナ操作部
21c 小バーナ操作部
22 グリルバーナ操作部
24 電源スイッチ
32 コンロバーナ用の付加機能操作・表示部
33 グリル用の付加機能操作・表示部
34 手動操作部
41 グリル庫
41a 開口
42 グリル扉
42a グリル扉の前面
43 のぞき窓
44 グリル扉側係合部
46 干渉部
47 収容保持部
48 左右方向辺嵌入部
51 五徳
60 ガード部材
61 ガード部材本体
62 ガード部材側係合部
65 左右方向辺
66(66a、66b) 一対の前後方向辺
67 複数の横辺(横棒)
67a 屈曲した縦辺(縦棒)の上端に懸架された最上段の横辺(横棒)
67b 屈曲した縦辺(縦棒)の下端に懸架された最下段の横辺(横棒)
68(68a、68b) 一対の縦辺(縦棒)
69 屈曲部
70 スペーサ
70a スペーサの上端
70b スペーサの下端
70c スペーサの上端側の横片
70d スペーサの下端側の横片
80 被覆材
101 コンロ部
104 グリル部
168 一対の縦辺(縦棒)の上端部