(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】排水管継手
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
E03C1/12 E
(21)【出願番号】P 2017248445
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213853(JP,A)
【文献】特開2004-169538(JP,A)
【文献】特開2006-037371(JP,A)
【文献】特開2012-97551(JP,A)
【文献】特開平10-114983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延び、樹脂で形成された
上部本管と、該
上部本管に連通して、該
上部本管の側面から径方向の外側に延び、樹脂で形成された分岐管と、
有する継手本体と、
前記上部本管の上端に配置され、上端に排水縦管が接続可能とされた本体部と、前記上部本管の内周面に沿って設けられた上部旋回羽根と、を有する上側管体と、
上下方向に延び樹脂で形成されるとともに前記上部本管に連通し、下端に排水縦管が接続可能とされたテーパー筒部と、前記テーパー筒部の内部に、前記テーパー筒部の内周面に沿って設けられた下部旋回羽根と、を有するテーパー管と、を備えた排水管継手であって、
前記上部旋回羽根と前記下部旋回羽根とは、上下方向に離間し
た2枚の旋回羽根
として設けられ、
前記2枚の旋回羽根を
水平面へそれぞれ投影した投影図は、互いに重なり、
前記2枚の旋回羽根の前記投影図の重なり部分の面積は、それぞれの前記旋回羽根の前記投影図の面積の40%以上であることを特徴とする排水管継手。
【請求項2】
前記上部旋回羽根の前記投影図の面積、および、前記下部旋回羽根の前記投影図の面積は、前記上部本管を水平面に投影した投影図における前記上部本管の内周の面積の5~25%である、請求項1に記載の排水管継手。
【請求項3】
前記継手本体と前記テーパー管との間に配置され、熱膨張性黒鉛を含む直管を更に備えている、請求項1または2に記載の排水管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅等の多層建築物では、各階に設置された衛生機器等からの排水は、各衛生機器に接続された横枝管を介して、パイプシャフト内に設けられた立管に集められてから下水路に排水されている。
【0003】
また、横枝管と立管との合流部分には、内部に旋回羽根(整流板)が設けられた排水管継手が設置されていることがある(下記の特許文献1参照)。これにより、上階からの排水を旋回羽根で受けて立管の内壁面に沿う旋回流とし、旋回流の径方向の内側に通気芯を形成して、立管内が排水によって閉塞されることによる圧力変動を抑制して、圧力変動による各階の衛生機器の封水の破封を抑制する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の排水管継手では、旋回羽根の投影面積(水平面に対する投影面積)が大き過ぎると、旋回羽根が空気芯を遮り、排水性能(単位時間当たりの排水量等)が低下する虞がある。また、旋回羽根の投影面積が大き過ぎると、排水中の異物が旋回羽根に付着したり、点検や洗浄中に工具が旋回羽根に引っかかってしたりする等の問題が懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、旋回羽根を適切な位置に配置することで、旋回流及び通気芯を形成して、排水性能を維持することができる排水管継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る排水管継手は、軸線方向に延び、樹脂で形成された本管と、該本管に連通して、該本管の側面から径方向の外側に延び、樹脂で形成された分岐管と、を備えた排水管継手であって、前記本管の内周面に沿って、前記軸線方向に離間して複数枚の旋回羽根が設けられ、前記複数枚の旋回羽根のうち少なくとも2枚の旋回羽根を前記軸線方向と直交する面へそれぞれ投影した投影図は、互いに重なり、前記2枚の羽根の前記投影図の重なり部分の面積は、それぞれの前記旋回羽根の前記投影図の面積の40%以上であることを特徴とする。
【0008】
このように構成された排水管継手では、2枚の旋回羽根を軸線方向と直交する面へ投影した投影図の重なり部分の面積は、各投影図の面積の40%以上である。このようにして、2枚の旋回羽根を軸線方向から見て重ねて配置して、旋回羽根の直交する面への投影面積を抑えることができる。よって、旋回羽根を適切な位置に配置することで、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができる。
【0009】
また、本発明に係る排水管継手は、前記2枚の旋回羽根のうち、一方の旋回羽根の前記投影図の周方向の両端部間の前記本管の内周面に沿う中心と、前記本管の軸心と前記直交する面との交差する交差点とを結ぶ線を前記投影図に投影した線を第1仮想線とし、前記2枚の旋回羽根のうち、他方の前記旋回羽根の前記投影図の周方向の両端部間の前記本管の内周面に沿う中心と、前記本管の軸心と前記直交する面との交差する交差点とを結ぶ線を前記投影図に投影した線を第2仮想線として、前記第1仮想線と前記第2仮想線とのなす角度は、45°以下であることが好ましい。
【0010】
このように構成された排水管継手では、第1仮想線(一方の旋回羽根の投影図の周方向の両端部間の本管の内周面に沿う中心と、本管の軸心と直交する面との交差する交差点とを結ぶ線を投影図に投影した線)と第2仮想線(他方の旋回羽根の投影図の周方向の両端部間の本管の内周面に沿う中心と、本管の軸心と直交する面との交差する交差点とを結ぶ線を投影図に投影した線)とのなす角度は、45°以下である。このようにして、2枚の旋回羽根を軸線方向から見て重ねて配置して、旋回羽根の直交する面への投影面積を抑えることができる。よって、旋回羽根を適切な位置に配置することで、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができる。
【0011】
また、本発明に係る排水管継手は、前記2枚の旋回羽根は、前記複数枚の旋回羽根のうち前記軸線方向の最も一端側及び最も他端側に配置されていてもよい。
【0012】
このように構成された排水管継手では、本管への投影面積を一定に抑えながら、旋回流を生み出すための効果を十分に発揮することができ、空気芯の確保と安定的な旋回流の両立を果たすことができる。
【0013】
また、本発明に係る排水管継手は、前記2枚の旋回羽根のうち下側に配置された前記旋回羽根の上端部は、前記2枚の旋回羽根のうち上側に配置された前記旋回羽根の下端部よりも下方に位置し、且つ下側の前記旋回羽根の上端部と上側の前記旋回羽根の下端部との軸線方向の距離が200mm以下であるか、または、前記下側の旋回羽根の前記上端部が、前記上側の旋回羽根の前記下端部よりも上方に位置していてもよい。
【0014】
このように構成された排水管継手では、2枚の旋回羽根は、下側の旋回羽根の上端部と上側の旋回羽根の下端部との軸線方向の距離が200mm以下になるように近接配置されるか、下側の旋回羽根の上端部が上側の旋回羽根の下端部よりも上方に位置するように軸線方向に重なって配置されている。よって、2枚の旋回羽根を近接配置することで、2枚の旋回羽根の下方それぞれ形成された通気層を連通させて、通気性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る排水管継手によれば、旋回羽根を適切な位置に配置することで、旋回流及び通気芯を形成して、排水性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水管継手を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図であり、投影面積について説明する模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図であり、第1仮想線と第2仮想線とのなす角度について説明する模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態の実施例に係る排水管継手を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の実施例に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図(
図2に対応する図であり、(a)実施例1を示し、(b)実施例2を示し、(c)実施例3を示し、(d)比較例1を示し、(e)比較例2を示している。
【
図6】本発明の一実施形態の変形例に係る排水管継手を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の変形例に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図であり、投影面積について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る排水管継手について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排水管継手を示す縦断面図である。
図1に示すように、排水管継手100は、継手本体1と、継手本体1の下端部に着脱可能に連結された直管(本管)60と、直管60の下端部に着脱可能に連結されたテーパー管(本管)70と、を備えている。排水管継手100は、合成樹脂で成型されている。
【0018】
図2は、排水管継手100の旋回羽根の構成を示す図であり、投影面積について説明する模式図である。
図2に示すように、継手本体1は、上部本管(本管)10と、3本の分岐管20A,20B,20Cと、を有している。
図1に示すように、上部本管10は、管状に形成され、軸線方向を上下方向に向けて配置されている。上部本管10の側面には、管状に形成され、軸線方向を上部本管10の径方向に向けて配置された3本の連結用筒部11が設けられている。上部本管10の側面には、連結用筒部11において、管厚方向に貫通する連通孔11hが形成されている。これにより、上部本管10と連結用筒部11とは連通している。
なお、継手本体1は、透明であってもよく、非熱膨張黒鉛や水酸化マグネシウム等の難燃剤を配合して構成されていてもよい。
【0019】
上部本管10の内壁面には、縦リブ12が一体に設けられている。縦リブ12は、旋回流となって上方から流れてくる排水が後述する分岐管20A,20B,20C内に入り込んだり、分岐管20A,20B,20Cが閉塞されたりすることを防止する機能を有している。縦リブ12は、各分岐管20A,20B,20Cの開口端部近傍で、排水の旋回流の上流側に設けられている。
【0020】
図2に示すように、3本の連結用筒部11は、上部本管10の周方向に90°ずれて配置されている。
【0021】
図1に示すように、3本の分岐管20A,20B,20C(
図1では、分岐管20A,20Bのみ示している)は、それぞれ連結用筒部11に嵌合されている。各分岐管20A,20B,20Cは、管状に形成されている。
【0022】
分岐管20Aの端部(上部本管10の径方向内側の端部)20aの外径は、連結用筒部11の内径よりも僅かに小さい。分岐管20Aの端部20aは、連結用筒部11に内嵌されている。分岐管20Aの端部(上部本管10の径方向外側の端部)20bは、端部20aよりも拡径に形成されている。分岐管20Aの端部20bの内周には、パッキン21が装着されている。分岐管20Aの端部20bには、端部材22が外嵌されている。
【0023】
分岐管20Bの端部(上部本管10の径方向内側の端部)20cの外径は、連結用筒部11の内径よりも僅かに小さい。分岐管20Bの端部20cは、連結用筒部11に内嵌されている。分岐管20Bの端部(上部本管10の径方向外側の端部)20d側の外径は、端部20c側の外径よりも拡径に形成されている。
【0024】
分岐管20Bの管孔の径(内径)は、分岐管20Aの管孔の径(内径)よりも小さい。分岐管20Bの管孔の中心軸は、分岐管20Aの管孔の中心軸よりも下方に偏心している。
【0025】
分岐管20Bの端部20dの内周には、パッキン23が装着されている。分岐管20Bの端部20dには、端部材24が外嵌されている。なお、分岐管20Cは、分岐管20Aまたは分岐管20Bと同様の構成であり、説明を省略する。分岐管20A,20B,20Cには、不図示の横枝管が接続可能とされている。
【0026】
上部本管10の上端部には、上側管体30が設けられている。上側管体30は、本体部31と、上部旋回羽根形成部36と、を有している。
【0027】
本体部31は、管状に形成され、軸線方向を上下方向に向けて配置されている。本体部31の下端部の外径は、上部本管10の上端部の内径よりも僅かに小さい。本体部31の下端部は、上部本管10の上端部に内嵌されている。本体部31の上端部側の外径は、本体部31の下端部側の外径よりも拡径に形成されている。本体部31の上端部の内周には、パッキン32が装着されている。本体部31の上端部には、端部材33が外嵌されている。本体部31には、不図示の排水立管が接続可能とされている。
【0028】
上部旋回羽根形成部36は、上部羽根支持脚部37と、上部旋回羽根38と、を有している。上部羽根支持脚部37は、本体部31の下端部から下方に延出している。上部羽根支持脚部37は、水平断面視円弧状に形成されている。上部旋回羽根38は、上部羽根支持脚部37の内周面に沿うように設けられている。上部旋回羽根38の傾斜角度は、上部本管10の軸線方向に対して15~50°傾斜するように形成されている。
【0029】
直管60は、管状に形成され、軸線方向を上下方向に向けて配置されている。直管60の外径は、上部本管10の内径よりも僅かに小さい。直管60の上端部は、上部本管10の下端部に内嵌されている。
なお、直管60は、内部に熱膨張性黒鉛を配合した管としても良い。例えば、直管60は、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張開始温度が240℃以上である熱膨張性黒鉛とを含む樹脂組成物(以下、樹脂組成物Xと称する)を含有していてもよい。すなわち、直管60は、樹脂組成物Xを成形することによって作製される。通常、直管60は、樹脂組成物Xを押出成形することによって作製される。
直管60は、直管60の全体が樹脂組成物Xからなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物Xから形成されていればよい。例えば、直管60が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物Xから形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は吸熱剤を含有していてもよい。
【0030】
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層および内層の厚みとしては、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下が好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、直管60は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
【0031】
樹脂組成物Xにおける熱膨張性黒鉛の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して10質量部以上28質量部以下であることが好ましく、15質量部以上26質量部以下であることがより好ましく、18質量部以上24質量部以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物Xにおける熱膨張性黒鉛の含有量が前記下限値以上であれば、火災発生の際に直管60を充分に膨張させることができ、耐火性をより向上させることができる。一方、樹脂組成物Xにおける熱膨張性黒鉛の含有量が前記上限値以下であれば、直管60が過度に膨張することによって直管60が壊れて耐火性が低下することを防止できる。
【0032】
表層または内層の吸熱剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはハイドロタルサイトの少なくとも2種を併用してもよい。
【0033】
テーパー管70は、管状に形成され、軸線方向を上下方向に向けて配置されている。テーパー管70は、上部受口71と、テーパー筒部72と、下部受口73と、を有している。
なお、テーパー管70は、透明であってもよく、非熱膨張黒鉛や水酸化マグネシウム等の難燃剤を配合して構成されていてもよい。
【0034】
上部受口71の内径は、直管60の外径よりも僅かに大きい。上部受口71は、直管60の下端部に外嵌されている。
【0035】
テーパー筒部72は、上部受口71の下端部に接続されている。テーパー筒部72は、上方から下方に向かうにしたがって次第に縮径するように形成されている。テーパー筒部72の上端部の内径は、直管60の内径と略同一である。テーパー筒部72の下端部の内径は、下部受口73に接続される不図示の排水立管の内径と略同一である。
【0036】
下部受口73は、テーパー筒部72の下端部に接続されている。テーパー筒部72の下端部には、不図示の排水立管が連結可能とされている。
【0037】
テーパー筒部72の内部には、内周面に沿って下部旋回羽根58が設けられている。
【0038】
図2は、排水管継手100の旋回羽根38,58の配置を示す図(上方から見た図)であり、投影面積について説明する図である。
図2に示すように、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58とは、上方(上下方向)から見て重なって配置されている。換言すると、上部旋回羽根38を水平面(直交する面)へ投影した投影
図Aと、下部旋回羽根58を水平面に投影した投影
図Bとは、重なっている。
【0039】
投影
図Aと投影
図Bとの重なり部分C(
図2でドットで示す部分)の面積は、投影
図Aの面積の40%以上且つ投影
図Bの面積の40%以上である。
なお、旋回羽根の投影
図A,Bの面積は、上部本管10(
図1参照)の投影面積(上部本管10を水平面に投影した投影図における上部本管10の内周の面積)の5~25%であることが好ましい。
【0040】
図3は、排水管継手100の旋回羽根38,58の配置を示す図(上方から見た図)であり、第1仮想線Lと第2仮想線Mとのなす角度Nについて説明する模式図である。
図3に示すように、上部旋回羽根38の投影
図Aの周方向の両端部38a,38bの上部本管10の内周面上の中心38cと、軸心と水平面との交差する交差点Oとを結ぶ線を投影
図Aに投影した線を第1仮想線Lとする。また、下部旋回羽根58の投影
図Bの周方向の両端部58a,58bの上部本管10の内周面上の中心58cと、軸心と水平面との交差する交差点Oとを結ぶ線を投影
図Bに投影した線を第2仮想線Mとする。第1仮想線Lと第2仮想線Mとのなす角度Nは、45°以下であり、15~40°であることが好ましい。
【0041】
また、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58との上下方向の離間距離(上部旋回羽根38の下端部と下部旋回羽根58の上端部との軸線方向に沿う距離)は、10mm以上且つ200mm以下であることが好ましい。さらに、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58との上下方向の離間距離は、20mm以上且つ100mm以下であることがより好ましく、30mm以上且つ80mm以下であることが更に好ましい。
【0042】
このように構成された排水管継手100では、上部旋回羽根38の投影
図Aと下部旋回羽根58の投影
図Bとの重なり部分Cの面積は、各投影
図A,Bの面積の40%以上である。このようにして、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58とを軸線方向から見て重ねて配置して、旋回羽根38,58の投影
図A,Bの面積を抑えることができる。よって、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができる。また、旋回流を形成することで、樹脂製であっても、排水音を抑制することができる。
【0043】
また、第1仮想線Lと第2仮想線Mとのなす角度Nは、45°以下である。このようにして、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58とを軸線方向から見て重ねて配置して、旋回羽根の投影
図A,Bの面積を抑えることができる。よって、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができる。
【0044】
また、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58との上下方向の離間距離は、200mm以下である。このように、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58とを近接配置して、通気性を確保することができる。
【0045】
また、上部本管10、直管60及びテーパー管70への投影面積を一定に抑えながら、旋回流を生み出すための効果を十分に発揮することができ、空気芯の確保と安定的な旋回流の両立を果たすことができる。
【0046】
(実施例、比較例)
以下、上記に示す実施形態の実施例について、比較例と比較しつつ説明する。
図4は、本発明の一実施形態の実施例に係る排水管継手を示す縦断面図である。
図5は、本発明の一実施形態の実施例に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図(
図2に対応する図であり、(a)実施例1を示し、(b)実施例2を示し、(c)実施例3を示し、(d)比較例1を示し、(e)比較例2を示している。
図4及び
図5に示すように、実施例1~3及び比較例1,2で、上部旋回羽根38と下部旋回羽根59との上方から見て、重なる割合を変更している。重なっている部分をドットで示している。
【0047】
【0048】
実施例1~3及び比較例1,2の条件を以下のように定めた。
上部旋回羽根38の投影
図Aに対する、上部旋回羽根38の投影
図Aと下部旋回羽根59の投影
図Bとの重なり部分Cの面積の割合(以下、単に「羽根の重なり」と称する)は、上表の羽根の重なり(%)の欄に示す通りである。また、下部旋回羽根59の投影
図Bに対する、重なり部分Cの面積の割合も、上表の羽根の重なり(%)の欄に示す通りである。また、第1仮想線Lと第2仮想線Mとのなす角度N(以下、単に「羽根の交差角度N」と称する)は、上表の羽根の交差角度(°)の欄に示す通りである。また、テーパー管70の下端部の管内の水平断面積に対する、上部旋回羽根38及び下部旋回羽根59の全体の投影
図A,Bの面積(上部旋回羽根38の投影
図Aの面積と下部旋回羽根59の投影
図Bの面積との合計から重なり部分Cの面積を除去した面積)は、上表の羽根の投影面積(%)の欄に示す通りである。
また、10階建て規模の建築物を想定して、排水立管に排水管継手100を設置した。排水管継手100に接続される立管の外周には、遮音カバーを設置した。排水立管及び排水管継手100に、4L/sの水(排水)流した。
【0049】
実施例1~3及び比較例1,2における排水性能(L/s)、排水音(dB)は、上表に示す通りである。排水性能が最も優れているのは、実施例3である。排水音が最も小さいのも、実施例3である。また、羽根の重なりが45%の実施例1、羽根の重なりが60%の実施例2及び羽根の重なりが75%の実施例3は、羽根の重なりが25%の比較例1及び羽根の重なりが0%の比較例2よりも、排水性能が良い。また、実施例1~3は、比較例1,2よりも遮音性能が良い。
【0050】
このように、実施例1~3で、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができることが示された。
【0051】
次に、上記に示す実施形態の変形例について説明する。
以下の変形例において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
(変形例)
上記に示す実施形態の変形例について、主に
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態の変形例に係る排水管継手を示す縦断面図である。
図7は、本発明の一実施形態の変形例に係る排水管継手の旋回羽根の配置を示す図であり、投影面積について説明する模式図である。
図6及び
図7に示すように、本変形例では、排水管継手に3枚の旋回羽根が設けられている。
【0053】
図6に示すように、上部本管10の内部には、内周面に沿って上部旋回羽根38が設けられている。直管60の内部には、内周面に沿って中間旋回羽根68が設けられている。テーパー管70の内部には、内周面に沿って下部旋回羽根59が設けられている。
【0054】
図7に示すように、上部旋回羽根38と中間旋回羽根68と下部旋回羽根59とは、上方(上下方向)から見て、重なって配置されている。上部旋回羽根38を水平面へ投影した投影
図A1と、中間旋回羽根68を水平面へ投影した投影図をD1と、下部旋回羽根59を水平面に投影した投影
図B1とは、重なっている。投影
図A1,B1,D1の重なり部分C1(
図7でドットで示す部分)の面積は、各投影
図A1,B1,D1の面積の40%以上である。
【0055】
このように構成された排水管継手100Xでは、旋回羽根38,59,68の投影
図A1,B1,D1の重なり部分C1の面積は、各投影
図A1,B1,D1の面積の40%以上である。このようにして、各旋回羽根38,59,68を軸線方向から見て重ねて配置して、旋回羽根38,59,68の投影
図A1,B1,D1の面積を抑えることができる。よって、排水時に、空気芯を形成して、空気芯の周りに旋回流を形成して、排水性能を維持することができる。また、旋回流を形成することで、樹脂製であっても、排水音を抑制することができる。
【0056】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0057】
上記に示す実施形態では、下部旋回羽根58は、テーパー管70に設けられている。これにより、上部本管10、直管60及びテーパー管70のうち、下側の排水立管に近いテーパー管70に下部旋回羽根58を設けることで、下部旋回羽根58で形成した旋回流を排水立管に確実に導入することができる。しかし、本発明はこれに限られず、最も下側に配置される旋回羽根は、上部本管10や直管60に設けられていてもよい。
【0058】
また、上記に示す実施形態では、上部旋回羽根38と下部旋回羽根58との上下方向の離間距離は、200mm以下であるが、本発明はこれに限られない。上部旋回羽根38と下部旋回羽根58とは上下方向に重なっていて(下部旋回羽根58の上端部が上部旋回羽根38の下端部よりも上方に位置して)もよい。
【0059】
また、上下方向に配置された複数枚の旋回羽根のうち、最も下方に位置する旋回羽根の投影図の面積を最も大きくすることで、旋回効果が高くなり、排水性を良好とすることができる。
【0060】
また、上記に示す実施形態では、旋回羽根が2,3枚設けられた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限られず、4枚以上設けられていてもよい。この場合には、各旋回羽根の投影図の重なり部分の面積が、それぞれの旋回羽根の投影図の面積の40%以上であればよい。
【符号の説明】
【0061】
1…継手本体
10…上部本管(本管)
11…連結用筒部
12…縦リブ
20A,20B,20C…分岐管
36…上部旋回羽根形成部
37…上部羽根支持脚部
38…上部旋回羽根
58…下部旋回羽根
60…直管(本管)
70…テーパー管(本管)
100…排水管継手
A,B…投影図
C…重なり部分
L…第1仮想線
M…第2仮想線
N…角度