(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
F24C 15/16 20060101AFI20220401BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
F24C15/16 Y
A47J37/06 366
F24C15/16 F
(21)【出願番号】P 2018031723
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕之
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080708(JP,A)
【文献】特開平08-191769(JP,A)
【文献】特開2011-007429(JP,A)
【文献】特開2011-254997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/16
A47J 37/06
A47B 88/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に開口部が配設され、内部でグリル調理が行われるグリル庫と、
前記グリル庫の前記開口部を閉じるグリル扉と、
前記グリル庫に固定された固定レールと、
前記固定レールに対して、前記開口部が配設された前方側およびその逆方向側である後方側にスライド可能に構成され、前端側に前記グリル扉が支持された可動レールと、
前記グリル扉が前記開口部を閉じた状態である前記グリル扉の閉状態を維持するための閉状態維持機構と、を備えたグリルであって、
(a)前記閉状態維持機構は、
前記固定レールに設けられた、板ばねからなる第1突起と、
前記可動レールに設けられた第2突起と、を備えるとともに、
前記グリル扉の閉状態においては、前記第2突起が前記第1突起の後方側に位置することにより、前記第2突起の前方側への移動が前記第1突起により規制されるように構成されて
おり、かつ、
(b)前記可動レールが最も前方に位置する前記グリル扉の全開状態において前記第1突起の前方側に位置する第3突起が前記可動レールに設けられており、前記第3突起が前記第1突起の前方側に位置することにより、前記第3突起の後方側への移動が前記第1突起により規制されるように構成されているとともに、
(c)前記可動レールの、前記第2突起と前記第3突起との間の位置に、凹部を具備する第4突起が設けられており、前記グリル扉の開度が、前記グリル扉が全開した状態と前記グリル扉が全閉した状態との間の所定の開度である中間開度の状態にある場合において、前記第1突起が前記第4突起の前記凹部に嵌入して、前記第4突起の前方向および後方側への移動が規制されるように構成されていること
を特徴とするグリル。
【請求項2】
前記第1突起における後方側の位置に、後方側に向かって下り坂となる傾斜部が形成されており、
前記グリル扉の閉状態において、前記第2突起と前記第1突起の前記傾斜部とが当接することにより、前記第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載のグリル。
【請求項3】
前記第2突起における前方側に、前方側に向かって
上方に傾斜する傾斜部が形成されており、
前記グリル扉の閉状態において、前記第1突起と前記第2突起の前記傾斜部とが当接することにより、前記第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されていること
を特徴とする請求項1または2記載のグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル調理に用いられるグリルに関し、詳しくは、グリル扉を操作してグリル庫の開閉を行うように構成されたグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
肉や魚などの被調理物を焼いたりする調理に用いられるグリルは、従来より広く用いられている。
【0003】
そのようなグリルとして、特許文献1には、グリル扉を閉状態で維持するためにグリル扉を閉じる方向に付勢する手段を備えたグリルが開示されている。
【0004】
そして、特許文献1には、グリル扉を閉じる方向に付勢する手段として、磁気の吸引力を利用してグリル扉を閉状態に維持する機構、および、グリル扉が所定距離よりも閉状態位置に近づくとばね力を利用してグリル扉を自動的に閉状態に至るように作動させ、グリル扉を閉じる方向に付勢するアシスト機構が示されている。
【0005】
なお、アシスト機構としては、上述の特許文献1の他にも、特許文献2に、例えば固定体から引き出された移動体を所定位置からばね力で自動的に固定体に引き込む自動引き込み装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5785412号公報
【文献】特開2009-079831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のグリルのように、グリル扉を閉じる方向に付勢する手段として磁気的吸引力を利用してグリル扉を閉状態で維持する機構を採用した場合、グリルの使用に伴う温度上昇によって磁石による磁気的吸引力の低下が生じたときにも支障がないように配慮する必要があり、使用する磁石のコストが上昇するという問題点がある。
【0008】
また、グリル扉を閉じる方向に付勢する手段として、特許文献2のように、グリル扉が所定距離よりも閉状態位置に近づくと、ばね力を利用してグリル扉を自動的に閉状態に至るように作動させ、グリル扉を閉じる方向に付勢するアシスト機構を採用した場合、アシスト機構の構造が複雑であることから、製造コストの上昇を招くという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、グリル扉がグリル庫の開口部を閉じた状態である「グリル扉の閉状態」を維持するための閉状態維持機構を備えたグリルを、コストの増大を招くことなく実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のグリルは、
前方側に開口部が配設され、内部でグリル調理が行われるグリル庫と、
前記グリル庫の前記開口部を閉じるグリル扉と、
前記グリル庫に固定された固定レールと、
前記固定レールに対して、前記開口部が配設された前方側およびその逆方向側である後方側にスライド可能に構成され、前端側に前記グリル扉が支持された可動レールと、
前記グリル扉が前記開口部を閉じた状態である前記グリル扉の閉状態を維持するための閉状態維持機構と、を備えたグリルであって、
(a)前記閉状態維持機構は、
前記固定レールに設けられた、板ばねからなる第1突起と、
前記可動レールに設けられた第2突起と、を備えるとともに、
前記グリル扉の閉状態においては、前記第2突起が前記第1突起の後方側に位置することにより、前記第2突起の前方側への移動が前記第1突起により規制されるように構成されており、かつ、
(b)前記可動レールが最も前方に位置する前記グリル扉の全開状態において前記第1突起の前方側に位置する第3突起が前記可動レールに設けられており、前記第3突起が前記第1突起の前方側に位置することにより、前記第3突起の後方側への移動が前記第1突起により規制されるように構成されているとともに、
(c)前記可動レールの、前記第2突起と前記第3突起との間の位置に、凹部を具備する第4突起が設けられており、前記グリル扉の開度が、前記グリル扉が全開した状態と前記グリル扉が全閉した状態との間の所定の開度である中間開度の状態にある場合において、前記第1突起が前記第4突起の前記凹部に嵌入して、前記第4突起の前方向および後方側への移動が規制されるように構成されていること
を特徴としている。
【0011】
本発明のグリルにおいては、
前記第1突起における後方側の位置に、後方側に向かって下り坂となる傾斜部が形成されており、
前記グリル扉の閉状態において、前記第2突起と前記第1突起の前記傾斜部とが当接することにより、前記第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されていること
が好ましい。
【0012】
また、前記第2突起における前方側に、前方側に向かって上方に傾斜する傾斜部が形成されており、
前記グリル扉の閉状態において、前記第1突起と前記第2突起の前記傾斜部とが当接することにより、前記第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されていること
が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグリルは、上述のように、閉状態維持機構が、固定レールに設けられた、板ばねからなる第1突起と、可動レールに設けられた第2突起と、を備えるとともに、グリル扉の閉状態においては、第2突起が第1突起の後方側に位置することにより、第2突起の前方側への移動が第1突起により規制されるように構成されているので、固定レールに第1突起を設け、可動レールに第2突起を設けるだけで、複雑な構造を必要とせずに、コストの増大を抑えつつ、グリル扉が閉じられた場合においてグリル扉の閉状態を維持する閉状態維持手段を備えたグリルを実現することができる。
【0014】
また、第1突起が板ばねで形成されており、弾性変形性に優れているので、グリル扉を開閉する場合に、第2突起の第1突起の前方側から後方側への移動、あるいは、第2突起の第1突起の後方側から前方側への移動を円滑に行うことができる。
【0015】
また、可動レールが最も前方に位置するグリル扉の全開状態において第1突起の前方側に位置する第3突起が可動レールに設けられ、第3突起が第1突起の前方側に位置することにより、第3突起の後方側への移動が第1突起により規制されるように構成されている、すなわち、可動レールに上述の第3突起を設けるようにしているので、複雑な構造を必要とせずに、コストの増大を抑えつつ、グリル扉が全開となる、グリル扉の全開状態を維持することが可能で、被調理物の出し入れを容易に行うことが可能なグリルを提供することができる。
【0016】
また、可動レールの、第2突起と第3突起との間の位置に、凹部を具備する第4突起が設けられ、グリル扉の開度が、グリル扉が全開した状態とグリル扉が全閉した状態との間の所定の開度である中間開度の状態にある場合において、第1突起が第4突起の凹部に嵌入して、第4突起の前方向および後方側への移動が規制されるように構成されているので、複雑な構造を必要とせずに、コストの増大を抑えつつ、グリル扉の中間開度状態を維持することが可能で、使い勝手のよいグリルを実現することができる。
【0017】
また、第1突起における後方側の位置に、後方側に向かって下り坂となる傾斜部が形成され、グリル扉の閉状態において、第2突起と第1突起の傾斜部とが当接することにより、第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されている場合、グリル扉の閉状態において、グリル扉を閉じ方向に付勢する付勢力が生じるため、グリル庫の前方側に形成された開口部がグリル扉によって閉じられた状態が確実に維持されることになり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0018】
また、第2突起における前方側に、前方側に向かって上方に傾斜する傾斜部が形成され、グリル扉の閉状態において、第1突起と第2突起の傾斜部とが当接することにより、第2突起の前方側への移動が規制されるように構成されている場合、グリル扉の閉状態において、グリル扉を閉じ方向に付勢する付勢力が生じるので、グリル庫の前方側に形成された開口部がグリル扉によって閉じられた状態が確実に維持されることになり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0019】
また、グリル扉が、その中間開度から不用意に開方向に移動することが抑制されるので、調理途中の調味料の追加や具材の移動を行う際に、グリル庫内の熱気が必要以上に放出されることが抑制され、エネルギ消費効率がいたずらに低下することを抑制することが可能なグリルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロの全体構成を示す斜視図で、グリル扉によってグリル庫前方の開口部を閉じた状態を示す図である。
【
図1B】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロの全体構成を示す斜視図で、グリル扉を引き出し、グリル庫前方の開口部が開いた状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロが備えるグリルの可動レールを引き出した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロが備えるグリルの可動レールの収納状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロが備えるグリルの可動レールを引き出した状態における閉状態維持機構を示す側面図である。
ただし、図4には本発明における第3突起および第4突起は示されていない。
【
図5】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロが備えるグリルの可動レールの収納状態における閉状態維持機構を示す側面図である。
ただし、図5には本発明における第3突起および第4突起は示されていない。
【
図6】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロの閉状態維持機構の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロの閉状態維持機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0022】
[実施形態]
本実施形態では、グリルが組み込まれたグリル付きガスコンロを例にとって説明する。
【0023】
<グリル付きガスコンロの基本構造>
以下、本発明の一実施形態にかかるグリル付きガスコンロについて、添付図面を参照しつつ説明を行う。なお、この実施形態にかかるグリル付きガスコンロは、コンロ部とグリル部を備えたビルトイン型のガスコンロである。
【0024】
この実施形態にかかるグリル付きガスコンロAは、
図1A、
図1B、
図2に示すように、コンロ本体Hの上面部に、左右一対の高火力用コンロバーナ101a、101bを備え、奥側に小火力用コンロバーナ101cを備えている。
【0025】
各コンロバーナ101a、101b、101cは、それぞれ五徳102を備えている。
また、グリル付きガスコンロAは、コンロ本体Hの内部にグリルG(
図2参照)を備えている。
【0026】
そして、このグリル付きガスコンロAは、前方側に開口部1a(
図1B)を有するグリル庫1と、前方側の開口部1aを閉じるグリル扉2と、グリル庫1に固定された固定レール11と、固定レール11に対し前後方向にスライドすることができるように構成された可動レール12とを備える(
図1A、
図1B、
図2、
図4、
図5)。
ただし図4、図5には、本発明における第3突起および第4突起は示されていない。この第3突起および第4突起については後述する。
【0027】
なお、本実施形態にかかるグリル付きガスコンロAは、固定レール11に対し前後方向にスライド可能な中間レール13を備えている。
【0028】
なお、可動レール12は中間レール13に対しても前後方向にスライド可能に構成されており、可動レール12が、中間レール13を介して固定レール11に対し、前後方向にスライド可能に構成されている(
図1B、
図2、
図4、
図5)。
【0029】
また、グリル扉2は、可動レール12の前端側に支持されており、グリル扉2は、可動レール12と一体となって前後方向に移動するように構成されている(
図1B)。
【0030】
また、グリル庫1の左右の可動レール12には、調理容器50を載置するための調理容器固定具14が架設されており、調理容器50は調理容器固定具14上に載置された状態で、グリル扉2、可動レール12とともに、前後方向に移動するように構成されている(
図1B、
図2)。なお、
図2においては、グリル扉が省略されている。
【0031】
そして、グリル庫1から、グリル扉2とともに可動レール12を引き出すことにより、調理容器50が、可動レール12、調理容器固定具14とともに、グリル庫1から引き出される(
図1B、
図2)。
【0032】
また、グリル扉2とともに可動レール12を押し込むことにより、調理容器50は、可動レール12、調理容器固定具14とともに、グリル庫1内に収容されることになる(
図1A、
図3)。
【0033】
<特徴的構成>
本実施形態のグリル付きガスコンロAが備えるグリルGは、グリル扉2が開口部1aを閉じた状態である、グリル扉2の閉状態を維持するための閉状態維持機構30を備えている。以下、閉状態維持機構30の詳細な構成について説明する。
【0034】
固定レール11には、固定レール11から上方に突出し、板ばね110からなる第1突起10が設けられ、可動レール12には、可動レール12から下方に突出する第2突起20が設けられている(
図4、
図5)。
なお、第1突起10を構成する板ばね110は、その一方側端部(前方側端部)110aを固定レール11から浮き上がらせた状態で、他方側端部(後方側端部)110bが固定レール11に止着されている。
【0035】
そして、可動レール12がグリル庫1内に収納されて、グリル扉2がグリル庫1の前方側の開口部1aを閉止したグリル扉2の閉状態において、第2突起20が第1突起10の後方(
図5における矢印Rで示される側)に位置し、第2突起20の前方(
図5における矢印Fで示される側)への移動が規制されるように構成されている。
【0036】
なお、この実施形態においては、グリル庫1からみて、可動レール12が引き出される側の方向(
図2、
図4などに示すFの方向)を前方側とし、可動レール12がグリル庫1内に収納される側の方向(
図2、
図4などに示すRの方向)を後方側とする。
【0037】
この実施形態にかかるグリル付きガスコンロAを構成するグリルGは、グリル扉2の閉状態において、第2突起20を備える可動レール12の前方(
図5における矢印Fで示される側)への移動が規制されることで、可動レール12の前端側に取り付けられたグリル扉2が前方(
図5における矢印Fで示される側)に移動することが規制されるので、グリル扉2によりグリル庫1の開口部1aが閉止した状態に確実に保たれることになる(
図5)。
【0038】
このように、第2突起20が第1突起10の後方に位置し、第2突起20の前方への移動が規制されることで、グリル扉2の開口部1aが閉じられた、グリル扉2の閉状態が維持される。つまり、第1突起10と第2突起20とによって、グリル扉2を閉状態に維持する閉状態維持機構30が構成されている。
【0039】
また、第1突起10が板ばね110から形成されているので、グリル扉2を開閉する場合、第2突起20の第1突起10の前方側から後方側への移動、あるいは、第2突起20の第1突起10の後方側から前方側への移動を円滑に行うことができる。
【0040】
さらに、この実施形態においては、第1突起10を構成する板ばね110の一方側端部(前方側端部)110aが固定レール11から浮き上がった状態で、他方側端部(後方側端部)110bが固定レール11に止着されており、第1突起を構成する板ばね110がより弾性変形しやすいため、グリル扉2を開閉する場合、第2突起20の第1突起10の前方側から後方側への移動、あるいは、第2突起20の第1突起10の後方側から前方側への移動をさらに円滑なものとすることが可能になる。
【0041】
ただし、第1突起10を構成する板ばね110の一方側端部(前方側端部)110aが固定レール11に当接した態様で、板ばね110が固定レールに止着されていてもよい。その場合にも、板ばね110は弾性変形可能な範囲において良好な変形性を備えているので、第2突起20の第1突起10の前方側から後方側への移動、あるいは、後方側から前方側への移動を円滑に行うことができる。
【0042】
すなわち、板ばね110の一方側端部(前方側端部)110aが固定レール11から浮き上がった状態で、他方側端部(後方側端部)110bが固定レール11に止着されている場合、弾性変形範囲を大きくとることが可能になるためより好ましいが、板ばね110の一方側端部(前方側端部)110aが固定レール11に当接している場合にも、板ばね110は弾性変形可能な範囲で、第2突起20の第1突起10の前方側から後方側への移動、あるいは後方側から前方側への移動を円滑に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態にかかるグリル付きガスコンロAを構成するグリルGにおいては、第1突起10における後方側に、後方側に向かって下り坂となる傾斜部10aが形成されており、また、第2突起20における前方側に、前方側に向かって上方に傾斜する傾斜部20aが形成されている。
【0044】
すなわち、固定レール11から上方に突出する第1突起10における後方側には、後方側に向かうほど、第1突起10の高さ(上方への突出距離)が減少する態様で傾斜部10aが形成されており、可動レール12から下方に突出する第2突起20における前方側には、前方側に向かうほど、第2突起20の高さ(下方への突出距離)が減少する態様で傾斜部20aが形成されている。
【0045】
本実施形態のグリル付きガスコンロAは上述のような構成を備えており、固定レール11に第1突起10を設け、可動レール12に第2突起20を設けるだけの簡潔な構成で、コストの増大を招くことなく、グリル扉2を閉状態に維持する閉状態維持機構30を備えたグリルG(グリル付きガスコンロA)を実現することができる。
【0046】
また、上述のように、第1突起10における後方側に、後方側に向かうほど、第1突起10の高さ(上方への突出距離)が減少する傾斜部10aが形成され、第2突起20における前方側に、前方側に向かうほど、第2突起20の高さ(下方への突出距離)が減少する傾斜部20aが形成されているので、グリル扉2の閉状態において、第2突起20における前方側に設けた傾斜部20aと、第1突起10における後方側に設けた傾斜部10aとが当接することになる。
【0047】
そして、第1突起10の傾斜部10aと、第2突起20の傾斜部20aとが当接することによって、可動レール12の前方側に取り付けられたグリル扉2を閉じる方向に付勢する付勢力が生じることになり、グリル扉2が開口部1aを閉止した状態が確実に保持されることになる。
【0048】
なお、この実施形態では、第1突起10における前方側にも、前方側に向かうほど、第1突起10の高さ(上方への突出距離)が減少する傾斜部10bが形成されているとともに、第2突起20における後方側にも、後方側に向かうほど、第2突起20の高さ(上方への突出距離)が減少する傾斜部20bが形成されている。
【0049】
上述の傾斜部10bおよび傾斜部20bを設けることにより、グリル扉2が押し込まれ、可動レール12が後方側に移動して、第2突起20が第1突起10を乗り越える場合における動作が円滑になり、使用感を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態にかかるグリル付きガスコンロAは、可動レール12が最も前方に位置するグリル扉2の全開状態において第1突起10の前方側に位置する第3突起22(図7参照)を可動レール12に設け、第3突起22が第1突起10の前方側に位置することにより、第3突起22の後方側への移動が第1突起10により規制されるように構成されている。
【0051】
このように、可動レール12に第3突起22を設けた構成とすることで、簡単で低コストに、グリル扉2が全開となるグリル扉2の全開状態を維持することが可能で、被調理物の出し入れを容易に行うことが可能なグリル(グリル付きガスコンロ)を実現することができる。
【0052】
また、本実施形態にかかるグリル付きガスコンロAは、可動レール12の、上記第2突起20と第3突起22との間の位置に、凹部21a(図7参照)を具備する第4突起21(図7参照)が設けられ、グリル扉2の開度がグリル扉2の全開状態とグリル扉2の閉状態との間の所定の中間開度となるグリル扉2の所定中間開度において、第1突起10が凹部21aに嵌入して、第4突起21の前方向および後方側への移動が規制されるように構成されている。
【0053】
このように、凹部21aを具備する第4突起21を可動レール12に設けることで、簡単で低コストに、グリル扉2の中間開度状態を維持することが可能なグリル(グリル付きガスコンロ)を実現することができる。
【0054】
また、グリル扉2が、その中間開度から不用意に開方向に移動することが抑制されるので、調理途中の調味料の追加や具材の移動を行う際に、グリル庫1内の熱気が必要以上に放出されることが抑制され、エネルギ消費効率が無駄に低下することが抑制される。
【0055】
<変形例1>
なお、この実施形態では、第1突起10における後方側に上述のような傾斜部10aが形成されているとともに、第2突起20にける前方側に上述のような傾斜部20aが形成されている場合を例にとって説明したが、
図6に示すように、第1突起10における後方側には、後方側に向かって下り坂となる傾斜部10aが形成されており、第2突起20には、その前方側および後方側に特に傾斜部が設けられていない構成とすることも可能である。
【0056】
この変形例1のように構成した場合にも、簡潔な構成で、コストの増大を招くことなく、グリル扉2を閉状態に維持する閉状態維持機構30を備えたグリル(グリル付きガスコンロ)を実現することができる。
【0057】
なお、この変形例1の構成の場合、可動レール12の動作を円滑にする見地から、第1突起10における前方側にも傾斜部10bを設ける(
図6参照)ことが好ましい。
【0058】
<変形例2>
また、特に図示しないが、第1突起10には、その後方側に特に傾斜部が設けられておらず、第2突起20における前方側に傾斜部20a(
図5参照)が設けられている構成とすることも可能である。
【0059】
この変形例2のように構成した場合にも、簡潔な構成で、コストの増大を招くことなく、グリル扉2を閉状態に維持する閉状態維持機構30を備えたグリル(グリル付きガスコンロ)を実現することができる。
【0060】
また、この変形例2の場合、可動レール12の動作を円滑にする見地から、第2突起20における後方側にも傾斜部20b(
図5参照)を設けることが好ましい。
【0061】
上記実施形態においては、ガスコンロに組み込まれたグリルを例にとって説明したが、本発明は、グリルがガスコンロ以外の機器に組み込まれた複合機や、グリルが単独で用いられるように構成されたグリル単能機にも適用することが可能である。
【0062】
本発明は、上記実施形態、変形例の構成に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 グリル庫
1a 開口部
2 グリル扉
10 第1突起
10a 第1突起の後方側の傾斜部
10b 第1突起の前方側の傾斜部
11 固定レール
12 可動レール
13 中間レール
14 調理容器固定具
20 第2突起
20a 第2突起の前方側の傾斜部
20b 第2突起の後方側の傾斜部
21 第4突起
21a 第4突起の凹部
22 第3突起
30 閉状態維持機構
50 調理容器
101a、101b 高火力用コンロバーナ
101c 小火力用コンロバーナ
102 五徳
110 板ばね
110a 板ばねの前方側端部(一方側端部)
110b 板ばねの後方側端部(他方側端部)
A グリル付きガスコンロ
G グリル
H コンロ本体