(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】積層型電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220401BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220401BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20220401BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20220401BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20220401BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220401BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220401BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/586
H01M50/533
H01M50/54
H01M50/595
H01M10/052
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2018106299
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】寺西 利絵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
(72)【発明者】
【氏名】谷 雅樹
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038044(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0081491(US,A1)
【文献】特開2012-124146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/50
H01M 10/052
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極板と、
前記第1電極板と積層方向に交互に積層された複数の第2電極板と、
前記第1電極板と電気的に接続した第1タブと、
前記第2電極板と電気的に接続した第2タブと、を備え、
前記第1電極板は、第1有効領域と前記第1有効領域に隣接する第1接続領域とを含む第1電極集電体と、前記第1電極板の少なくとも一方の面の前記第1有効領域に積層された第1電極活物質層と、を有し、
前記複数の第1電極板の前記第1接続領域は、前記第1タブ上に重ねられて、互いに電気的に接続し、
前記複数の第1電極板の間で、前記積層方向と平行で且つ前記第1有効領域および前記第1接続領域の配列方向と直交する断面での前記第1電極集電体の長さは一定ではなく、
前記積層方向において前記第1タブから最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長く、
前記第1電極板は、前記第1電極集電体の前記第1接続領域と前記第1電極活物質層とに跨がって積層された絶縁テープを更に有し、
前記複数の第1電極板に含まれる最も長い第1電極集電体と最も短い第1電極集電体との長さの差は、最も長い第1電極集電体の前記第1有効領域および最も短い第1電極集電体の前記第1有効領域の前記積層方向に沿った離間間隔と、前記第1有効領域および前記第1接続領域の配列方向に沿った前記絶縁テープの幅と、の和よりも大きい、積層型電池。
【請求項2】
前記第1電極集電体の前記長さは、前記積層方向において前記第1タブに最も離間する第1電極板で最も長くなり、前記積層方向において前記第1タブに最も近接する第1電極板で最も短くなる、請求項1に記載の積層型電池。
【請求項3】
任意選択される一つの第1電極板の前記第1電極集電体の前記長さは、当該一つの第1電極板よりも前記積層方向において前記第1タブに近接する他の第1電極板の前記第1電極集電体の長さ以上となっている、請求項1又は2に記載の積層型電池。
【請求項4】
前記複数の第1電極板は、前記第1電極集電体の前記第1接続領域が前記第1タブの一方の面上に重ねられて互いに電気的に接続する第1群の第1電極板と、前記第1電極集電体の前記第1接続領域が前記第1タブの他方の面上に重ねられて互いに電気的に接続する第2群の第1電極板と、を含み、
前記第1群の第1電極板のうちの、前記積層方向において前記第1タブの前記一方の面から最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、前記第1群の第1電極板のうちの、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長く、
前記第2群の第1電極板のうちの、前記積層方向において前記第1タブの前記他方の面から最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、前記第2群の第1電極板のうちの、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長い、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項5】
前記第2電極板は、第2有効領域と前記第2有効領域に隣接する第2接続領域とを含む第2電極集電体と、前記第2電極板の少なくとも一方の面の前記第2有効領域に積層された第2電極活物質層と、を有し、
前記複数の第2電極板の前記第2接続領域は、前記第2タブ上に重ねられて、互いに電気的に接続し、
前記複数の第2電極板の間で、前記積層方向と平行で且つ前記第2有効領域および前記第2接続領域の配列方向と直交する断面での前記第2電極集電体の長さは一定ではなく、
前記積層方向において前記第2タブから最も離間する第2電極板の前記第2電極集電体の長さは、少なくとも他の一つの第2電極板の前記第2電極集電体の長さよりも、長い、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項6】
前記積層方向に交互に積層された前記第1電極板及び前記第2電極板の厚みは、4mm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項7】
前記第1電極板及び前記第2電極板を、それぞれ、10以上含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1で提案されているように、正極板と負極板とを交互に積層してなる積層型電池が広く普及している。積層型電池の一例として、リチウムイオン二次電池が例示され得る。リチウムイオン二次電池は、他の形式の積層型電池と比較して大容量であることを特徴の一つとしている。このような特徴を有するリチウムイオン二次電池は、今般、車載用途や定置住宅用途等の種々の用途での更なる普及を期待されている。
【0003】
図10は、従来の積層型電池1cを示す概略断面図である。
図10に示すように、積層型電池1cは、交互に積層される正極板10X及び負極板20Yと、正極板10X及び負極板20Yの間に設けられる絶縁体30と、を含む積層体5cに加え、この積層体5cを収容する外装体3と、を有している。一般に、正極板10X及び負極板20Yは、活物質が塗布される有効領域である電極領域b1、b2とこの電極領域b1、b2に隣接する接続領域(端部領域)a1、a2とを含む。そして、正極板10X及び負極板20Yのそれぞれの接続領域a1、a2が電極板10X、20Yごとに設けられた別個のタブ4上にて重ねられて、正極板10X及び負極板20Yと対応するタブ4X、4Yとが電気的に接続される。
【0004】
通常、複数の正極板10Xが積層方向dLに順次積層され、その後、当該複数の正極板10Xのそれぞれの接続領域a1が第1層目の正極板10Xを含む平面上に位置付けられるタブ4X上に重ねられる(束ねられる)。各正極板10Xの接続領域a1は互いに同一の長さを有しているため、積層方向と直交し且つ電極領域b1及び接続領域a1の配列方向に沿った断面において、タブ4X上に重ねられた各接続領域a1の端部位置は、積層するにつれて電極領域b1の側(
図10における左方)にずれることになる。
【0005】
一般に、正極板10Xの端部領域a1、a2は、超音波溶接によって接合される。この場合、正極板10においては、積層方向dLから見て全ての正極集電体11Xの端部領域a1が重なっている領域Zのみが溶着される。この領域Zの寸法は、最後に積層される(
図10における最上層の)正極板10Xの端部領域a1の端部位置に依存する。このため、正極板10Xの積層数が増大するほど、正極板10Xの端部領域a1の溶着部の面積が減少し、電気抵抗が上昇するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、電極板とタブとが信頼性をもって溶着された積層型電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による積層型電池は、複数の第1電極板と、
前記第1電極板と積層方向に交互に積層された複数の第2電極板と、
前記第1電極板と電気的に接続した第1タブと、
前記第2電極板と電気的に接続した第2タブと、を備え、
前記第1電極板は、第1有効領域と前記第1有効領域に隣接する第1接続領域とを含む第1電極集電体と、前記第1電極板の少なくとも一方の面の前記第1有効領域に積層された第1電極活物質層と、を有し、
前記複数の第1電極板の前記第1接続領域は、前記第1タブ上に重ねられて、互いに電気的に接続し、
前記複数の第1電極板の間で、前記積層方向と平行で且つ前記第1有効領域および前記第1接続領域の配列方向と直交する断面での前記第1電極集電体の長さは一定ではなく、
前記積層方向において前記第1タブから最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長く、
前記第1電極板は、前記第1電極集電体の前記第1接続領域と前記第1電極活物質層とに跨がって積層された絶縁テープを更に有し、
前記複数の第1電極板に含まれる最も長い第1電極集電体と最も短い第1電極集電体との長さの差は、最も長い第1電極集電体の前記第1有効領域および最も短い第1電極集電体の前記第1有効領域の前記積層方向に沿った離間間隔と、前記第1有効領域および前記第1接続領域の配列方向に沿った前記絶縁テープの幅と、の和よりも大きい。
【0009】
前記第1電極集電体の前記長さは、前記積層方向において前記第1タブに最も離間する第1電極板で最も長くなり、前記積層方向において前記第1タブに最も近接する第1電極板で最も短くなっていて良い。
【0010】
任意選択される一つの第1電極板の前記第1電極集電体の前記長さは、当該一つの第1電極板よりも前記積層方向において前記第1タブに近接する他の第1電極板の前記第1電極集電体の長さ以上となっていて良い。
【0011】
前記複数の第1電極板は、前記第1電極集電体の前記第1接続領域が前記第1タブの一方の面上に重ねられて互いに電気的に接続する第1群の第1電極板と、前記第1電極集電体の前記第1接続領域が前記第1タブの他方の面上に重ねられて互いに電気的に接続する第2群の第1電極板と、を含み、
前記第1群の第1電極板のうちの、前記積層方向において前記第1タブの前記一方の面から最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、前記第1群の第1電極板のうちの、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長く、
前記第2群の第1電極板のうちの、前記積層方向において前記第1タブの前記他方の面から最も離間する第1電極板の前記第1電極集電体の長さは、前記第2群の第1電極板のうちの、少なくとも他の一つの第1電極板の前記第1電極集電体の長さよりも、長くて良い。
【0012】
前記第2電極板は、第2有効領域と前記第2有効領域に隣接する第2接続領域とを含む第2電極集電体と、前記第2電極板の少なくとも一方の面の前記第2有効領域に積層された第2電極活物質層と、を有し、
前記複数の第2電極板の前記第2接続領域は、前記第2タブ上に重ねられて、互いに電気的に接続し、
前記複数の第2電極板の間で、前記積層方向と平行で且つ前記第2有効領域および前記第2接続領域の配列方向と直交する断面での前記第2電極集電体の長さは一定ではなく、
前記積層方向において前記第2タブから最も離間する第2電極板の前記第2電極集電体の長さは、少なくとも他の一つの第2電極板の前記第2電極集電体の長さよりも、長くて良い。
【0013】
前記積層方向に交互に積層された前記第1電極板及び前記第2電極板の厚みは、4mm以上であって良い。
【0014】
また、以上の積層型電池は、前記第1電極板及び前記第2電極板を、それぞれ、10以上含んでいて良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電極板とタブとが信頼性をもって溶着された積層型電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態による積層型電池を示す概略斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4A】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図4B】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図5】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図6】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図7】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図8】積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図9】積層型電池の変形例を説明するための図である。
【
図10】従来の積層型電池を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態による積層型電池1を示す概略斜視図である。また、
図2は、
図1の概略平面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0019】
以下に説明する一実施の形態において、積層型電池1は、外装体3と、外装体3内に収容された膜電極接合体5と、膜電極接合体5に接続されて外装体3の内部から外部へと延び出したタブ4と、を有している。このうち膜電極接合体5は、交互に積層された第1電極板10及び第2電極板20を有している。このような積層型電池1は、電極板10,20とタブ4との電気的接続が確保されないと、予定した機能を発揮することができない。本実施の形態に係る積層型電池1は、以下に説明するように、積層型電池1に含まれる複数の電極板10、20とタブ4との接合を安定させるための工夫がなされており、性能及び信頼性の両面において優れている。また、本実施の形態に係る積層型電池の製造方法は、以下に説明するように、性能及び信頼性に優れた積層型電池を高い歩留まりを維持しながら短時間で製造するための工夫がなされており、これにより、積層型電池1の生産性が向上される。
【0020】
以下において、積層型電池1がリチウムイオン二次電池を構成する例について説明する。この例において、第1電極板10は正極板10Xを構成し、第2電極板20は負極板20Yを構成するものとする。ただし、以下に説明する作用効果の記載からも理解され得るように、ここで説明する一実施の形態は、リチウムイオン二次電池に限定されることなく、第1電極板10及び第2電極板20を交互に積層してなる積層型電池1に広く適用され得る。
【0021】
外装体3は、膜電極接合体5を封止するための包装材である。外装体3は、一例として、支持基材と、この支持基材に積層された接着層と、を有する。支持基材は、高ガスバリア性と成形加工性を有することが好ましい。このような支持基材として、アルミニウム箔やステンレス箔を用いることができる。一方、接着層は、支持基材を接合するためのシール層として機能する。接着層は、接着性に加え、絶縁性、耐薬品性、熱可塑性等を有していることが好ましい。このような接着層として、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニルを用いることができる。
【0022】
タブ4は、積層型電池1における端子として機能する。膜電極接合体5の正極板10X(第1電極板10)に第1タブ4Xが電気的に接続し、膜電極接合体5の負極板20Y(第2電極板20)に他方の第2タブ4Yが電気的に接続している。タブ4は、アルミニウム、ニッケル、ニッケルメッキ銅等を用いて形成され得る。一対のタブ4は、外装体3の内部から、外装体3の外部へと延び出している。なお、外装体3とタブ4との間は、タブ4が延び出す領域において、封止されている。
【0023】
次に、膜電極接合体5について、
図1~
図3に示された具体例を主として参照しながら、説明する。
図1~
図3に示すように、膜電極接合体5は、複数の正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)を有している。正極板10X及び負極板20Yは、積層方向dL(
図3参照)に沿って交互に積層されている。膜電極接合体5及び積層型電池1は、全体的に偏平形状を有し、積層方向dLへの厚さが薄く、積層方向dLに直交する方向d1,d2に広がっている。
【0024】
図示された非限定的な例において、正極板10X及び負極板20Yは、長方形形状の外輪郭を有している。正極板10X及び負極板20Yは、積層方向dLに直交する第1方向d1に長手方向を有し、積層方向dL及び第1方向d1の両方に直交する第2方向d2に短手方向を有する。正極板10X及び負極板20Yは、第1方向d1にずらして配置されている。より具体的には、複数の正極板10Xは、第1方向d1における一側(
図2の右側)に寄って配置され、複数の負極板20Yは、第1方向d1における他側(
図2の左側)に寄って配置されている。正極板10X及び負極板20Yは、第1方向d1における中央において、積層方向dLに重なり合っている。
【0025】
正極板10X(第1電極板10)は、図示するように、シート状の外形状を有している。正極板10X(第1電極板10)は、正極集電体11X(第1電極集電体11)と、正極集電体11X上に設けられた正極活物質層12X(第1電極活物質層12)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、正極板10Xは、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを吸蔵する。
【0026】
正極集電体11Xは、互いに対向する第1面11a及び第2面11bを主面として有している。正極活物質層12Xは、正極集電体11Xの第1面11a及び第2面11bの少なくとも一方の面上に積層される。具体的には、正極集電体11Xの第1面11a又は第2面11bが、膜電極接合体5のうちの積層方向dLにおける最外面を形成する場合、正極集電体11Xの当該面には正極活物質層12Xが設けられない。この正極集電体11Xの配置に関連した構成を除き、積層型電池1に含まれる複数の正極板10Xは、正極集電体11Xの両側に正極活物質層12Xを有し、互いに同一に構成され得る。
【0027】
正極集電体11X及び正極活物質層12Xは、積層型電池1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、正極集電体11Xは、アルミニウム箔によって形成され得る。正極活物質層12Xは、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーとなる結着剤を含んでいる。正極活物質層12Xは、正極活物質、導電助剤及び結着剤を溶媒に分散させてなる正極用スラリーを、正極集電体11Xをなす材料上に塗工して固化させることで、作製され得る。正極活物質として、例えば、一般式LiMxOy(ただし、Mは金属であり、x及びyは金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられる。金属酸リチウム化合物の具体例として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が例示され得る。導電助剤としては、アセチレンブラック等が用いられ得る。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が用いられ得る。
【0028】
図2に示すように、正極集電体11X(第1電極集電体11)は、第1端部領域a1(接続領域)及び第1電極領域b1(有効領域)を有している。正極活物質層12X(第1電極活物質層12)は、正極集電体11Xの第1電極領域b1のみに配置されている。第1端部領域a1及び第1電極領域b1は、第1方向d1に沿って互いに隣接するように配列されている。第1端部領域a1は、第1電極領域b1よりも第1方向d1における外側(
図2における右側)に位置している。複数の正極集電体11Xは、第1端部領域a1において、超音波溶接によって一つのタブ4に接合されている。図示された例では、複数の正極板10Xの第1端部領域a1が、第1タブ4Xの第1面4Xa上に重ねられて、互いに電気的に接続している。一方、第1電極領域b1は、負極板20Yの後述する負極活物質層22Yに対面する領域内に広がっている。このような第1電極領域b1の配置により、正極活物質層12Xからのリチウムの析出を防止することができる。
【0029】
図3に示すように、正極板10Xは、正極集電体11Xの第1端部領域a1と正極活物質層12Xとに跨がって積層された長さLの絶縁テープ6Xを更に有している。この絶縁テープ6Xは、正極板10Xが積層方向dLにおいて隣接する負極板20Yと不所望に接触し短絡してしまうことを確実に防止するためのものである。
図3に示す例では、絶縁テープ6Xは、各正極集電体11Xに同一の長さLで設けられている。但し、他の例では、絶縁の機能を十分に発揮し得るかぎり、絶縁テープ6Xが互いに異なる長さを有していても良い。また、図示されていないが、他の例では、絶縁テープ6Xが各正極集電体11Xの第1面(上面)及び2面(下面)のいずれか一方にのみ設けられていても良い。
【0030】
図3に示すように、本実施の形態の正極板10Xは、積層方向dLと平行で且つ第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向と直交する断面(すなわち
図3に示す断面)において、複数の正極板10Xの正極集電体11Xの端部位置は、第1タブ4X上で一致している。換言すれば、正極集電体11Xの長さは、積層方向dLにおいて第1タブ4Xから最も離間する正極板10Xで最も長くなり、積層方向dLにおいて第1タブ4Xに最も近接する正極板10Xで最も短くなっている。より具体的には、任意選択される一つの正極板10Xの正極集電体11Xの長さは、当該一つの正極板10Xよりも積層方向dLにおいて第1タブ4Xに近接する(
図3において下方に位置する)他の正極板10Xの正極集電体11Xの長さ以上となっている。
【0031】
以上のような構成を実現するため、複数の正極板10Xに含まれる最も長い正極集電体11X及び最も短い正極集電体11Xは、それらの長さの差が、最も長い正極集電体11Xの第1電極領域b1及び最も短い正極集電体11Xの第1電極領域b1の積層方向dLに沿った離間間隔Dと、第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向(第1方向d1)に沿った絶縁テープ6Xの幅Lと、の和よりも大きく構成されている。
【0032】
次に、負極板20Y(第2電極板20)について説明する。負極板20Yも、正極板10Xと同様に、シート状の外形状を有している。負極板20Y(第2電極板20)は、負極集電体21Y(第2電極集電体21)と、負極集電体21Y上に設けられた負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、負極板20Yは、放電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時にリチウムイオンを放出する。
【0033】
負極集電体21Yの第2電極領域b2は、互い対向する第1面21a及び第2面21bを主面として有している。負極活物質層22Yは、負極集電体21Yの第1面21a及び第2面21bの少なくとも一方の面上に積層される。積層型電池1に含まれる複数の負極板20Yは、負極集電体21Yの両側に設けられた一対の負極活物質層22Yを有するものとして、互いに同一に構成され得る。
【0034】
負極集電体21Y及び負極活物質層22Yは、積層型電池1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、負極集電体21Yは、例えば銅箔によって形成される。負極活物質層22Yは、例えば、炭素材料からなる負極活物質、及び、バインダーとして機能する結着剤を含んでいる。負極活物質層22Yは、例えば、炭素粉末や黒鉛粉末等からなる負極活物質とポリフッ化ビニリデンのような結着剤とを溶媒に分散させてなる負極用スラリーを、負極集電体21Yをなす材料上に塗工して固化することで、作製され得る。
【0035】
図2に示すように、負極集電体21Y(第2電極集電体21)は、第2端部領域a2(接続領域)及び第2電極領域b2(有効領域)を有している。負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)は、負極集電体21Yの第2電極領域b2のみに配置されている。第2端部領域a2及び第2電極領域b2は、第1方向d1に沿って互いに隣接するように配列されている。第2端部領域a2は、第2電極領域b2よりも第1方向d1における外側(
図2における左側)に位置している。複数の負極集電体21Yは、第2端部領域a2において、超音波溶接によって一つのタブ4に接合されている。図示された例では、複数の負極板10Yの第2端部領域a2が、第2タブ4Yの第1面4Ya上に重ねられて、互いに電気的に接続している。一方、第2電極領域b2は、正極板10Xの正極活物質層12Xに対面する領域に広がっている。
【0036】
図3に示すように、負極板20Yは、負極集電体21Yの第2端部領域a2と負極活物質層22Yとに跨がって積層された長さLの絶縁テープ6Yを有している。この絶縁テープ6Yは、負極板20Yが積層方向dLにおいて隣接する正極板10Xと不所望に接触し短絡してしまうことを確実に防止するためのものである。
図3に示す例では、絶縁テープ6Yは、正極板10Xに設けられた絶縁テープ6Xと同様に、各負極集電体21Yに同一の長さLで設けられている。但し、他の例では、絶縁の機能を十分に発揮し得るかぎり、絶縁テープ6Yが互いに異なる長さを有していても良い。また、図示されていないが、他の例では、絶縁テープ6Yが各負極集電体21Yの第1面(上面)及び2面(下面)のいずれか一方にのみ設けられていても良い。
【0037】
図3に示すように、本実施の形態の負極板20Yは、積層方向dLと平行で且つ第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向(第1方向d1)と直交する断面(すなわち
図3に示す断面)において、複数の負極板20Yの負極集電体21Yの端部位置は、第2タブ4Y上で一致している。換言すれば、負極集電体2Yの長さは、積層方向dLにおいて第2タブ4Yに最も離間する負極板20Yで最も長くなり、積層方向dLにおいて第2タブ4Yに最も近接する負極板20Yで最も短くなっている。より具体的には、任意選択される一つの負極板20Yの負極集電体21Yの長さは、当該一つの負極板20Yよりも積層方向dLにおいて第2タブ4Yに近接する(
図3において下方に位置する)他の負極板20Yの負極集電体21Yの長さ以上となっている。
【0038】
以上のような構成を実現するため、複数の負極板20Yに含まれる最も長い負極集電体21Y及び最も短い負極集電体21Yは、それらの長さの差が、最も長い負極集電体21Yの第2有効領域及び最も短い負極集電体21Yの第2有効領域の積層方向に沿った離間間隔Dと、第2電極領域b2及び第2端部領域a2の配列方向(第1方向d1)に沿った絶縁テープ6Yの幅Lと、の和よりも大きく構成されている。
【0039】
ところで、
図3に示すように、正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)の少なくとも一方が、絶縁体(絶縁層)30を有するようにしてもよい。絶縁体30は、正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)の短絡を防止する機能を担っている。図示された例では、負極板20Yが絶縁体30を有している。具体的には、絶縁体30は、各負極板20Yに含まれる一対の負極活物質層22Yを覆っている。そして、負極板20Yは、正極板10Xの正極活物質層12Xと積層方向dLに対面する面が、絶縁体30によって覆われている。上述した絶縁テープ6X、6Yとこれらの絶縁体30とが設けられていることにより、正極板10Xと負極板20Yとが不所望に短絡することが確実に回避される。なお、図示された絶縁体30に代えて、或いはこれに加えて、各正極板10Xに含まれる一対の正極活物質層12Xを覆う絶縁体を設置することも可能である。
【0040】
図示された例において、絶縁体30は、電解質層30Aとしても機能する。電解質層30Aは、活物質層22Y,12X上に塗工した電解液を活物質層22Y,12X上で固化又はゲル化させてなる層である。電解液として、例えば、高分子マトリックス及び非水電解質液(すなわち、非水溶媒及び電解質塩)からなり、ゲル化されて表面に粘着性を生じるもの、或いは、高分子マトリックス及び非水溶媒からなり、固体電解質となるものを用いることができる。絶縁体30及び電解質層30Aを作製するための具体的な材料は、特に制限はなく、これらを構成するために用いられている種々の材料(例えば、特開2012-190567号公報に開示された材料)を用いることができる。
【0041】
また、上述した膜電極接合体5は、正極板10X及び負極板20Yを、それぞれ、10以上含んでいてもよい。例えば、膜電極接合体5は、正極板10X及び負極板20Yを、それぞれ、10枚以上70枚以下含んでいてもよい。また、この場合、積層方向dLに交互に積層された正極板10X及び負極板20Yの合計厚みは、4mm以上であってもよい。このように正極板10X及び負極板20Yの積層数を多くすることにより、大容量型の積層型電池が構成され得る。
【0042】
次に、
図4A~
図9を参照して、リチウムイオン二次電池として構成された本実施の形態に係る積層型電池1の製造方法について説明する。各図は、積層型電池の製造方法の一例を説明するための図である。
【0043】
まず、正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)をそれぞれ作製する。この際、正極板10X及び負極板20Yは、別々の工程により別々のタイミングで作製されてもよい。また、正極板10X及び負極板20Yは、並行して同時に作製され、作製された正極板10X及び負極板20Yが、順次、正極板10X及び負極板20Yを交互に積層する工程に供給されるようにしてもよい。
【0044】
正極板10Xは、例えば、正極集電体11Xを構成するようになる長尺のアルミニウム箔上に、正極活物質層12Xを構成するようになる組成物(スラリー)を塗工して固化し、次に、所望の大きさに断裁していくことで作製され得る。同様に、負極板20Yは、例えば、負極集電体21Yを構成するようになる長尺の銅箔上に、負極活物質層22Yを構成するようになる組成物(スラリー)を塗工して固化し、次に、所望の大きさに断裁していくことで作製され得る。なお、正極板10X及び負極板20Yの少なくとも一方に電解質層30Aとして機能する絶縁体30を付与する場合には、電極板10X,20Yをなすようになる断裁前の長尺材上又は断裁後の枚葉材上に電解液を塗布して固化又はゲル化させることで絶縁体30を作製することができる。
【0045】
次いで、複数の正極板10X(第1電極板10)の正極集電体11X(第1電極集電体11)の第1端部領域a1(接続領域)を第1タブ4X上に重ねて配置する。また、この際、複数の負極板20Y(第2電極板20)の負極集電体21Y(第2電極集電体21)の第2端部領域a2(接続領域)を第2タブ4Y上に重ねて配置する。この場合、まず、
図4Aに示すように、最初の電極板を準備する。図示された例では、まず、負極板20Yを準備する。
【0046】
次に、
図4Bに示すように、正極板10Xが負極板20Y上に配置される。この際、正極板10Xの正極活物質層12Xと負極板20Yの負極活物質層22Yとが正対するようにして正極板10Xを負極板20Y上に配置する。
【0047】
次いで、
図5に示すように、負極板20Y及び正極板10Xを交互に積層していく。この場合においても、正極板10Xの正極活物質層12Xと負極板20Yの負極活物質層22Yとが正対するようにして、正極板10X及び負極板20Yを積層していく。このようにして、複数の正極板10X及び複数の負極板20Yが交互に積層された膜電極接合体5が得られる。
【0048】
ところで、各正極板10Xの第1端部領域a1は、互いに同一の長さを有している。このため、n番目(nは2以上の自然数)に積層した正極板10Xの第1端部領域a1の端部位置P(n)は、n-1番目に積層した正極板10Xの第1端部領域a1の端部位置P(n-1)よりも、第1電極領域b1の側(
図5における左側)にずれている。要するに、前述したように、複数の正極板10Xの第1端部領域a1の端部は、第1層目の正極板10Xから積層順序が進むにつれて第1電極領域b1の側にずれるため、階段状に積層される。
図5に示すように、このような階段状の積層態様は、負極板20Yの端部領域a2においても同様である。
【0049】
次に、
図6に示すように、階段状に積層された正極板10Xの第1端部領域a1が互いに接合される。この接合は、例えば、超音波溶接機Hによって行われる。第1方向d1において、超音波接合によって接合される第1端部領域a1の長さは、すべての第1端部領域a1が積層方向dLにおいて重なっている長さである。したがって、第1端部領域a1が階段状に積層されていることを考慮すると、当該長さは、最後に積層された(
図6における最上層の)正極板10Xの第1端部領域a1の端部位置Pxによって決定される。位置Pxよりも第1電極領域b1とは反対側(
図6における右側)に位置する第1端部領域a1は、超音波溶接機によって接合されない。
【0050】
同様に、
図6に示すように、階段状に積層された負極板20Yの第2端部領域a2が互いに接合される。この接合も、超音波溶接機Hによって行われ得る。この場合も、正極板10Xの第1端部領域a1の接合と同様に、第1方向d1において、超音波接合によって接合される第2端部領域a2の長さは、すべての第2端部領域a2が積層方向dLにおいて重なっている長さである。この長さは、最後に積層された(
図6における最上層の)負極板20Yの第2端部領域a2の端部位置Pyによって決定される。位置Pyよりも第2電極領域b2とは反対側(
図6における左側)に位置する第2端部領域a2は、接合されない。
【0051】
次に、
図7に示すように、正極板10Xの第1端部領域a1が位置Pxにて切断される。これにより、正極板10Xの第1端部領域a1が上述した位置Pxにて切り揃えられる。前述した接合の工程から理解されるように、この切り揃えられた端部では、全ての正極集電体11Xが接合された第1接合部C1が構成されている。更に、負極板20Yの第2端部領域a2が上述した位置Pyにて切断される。これにより、負極板20Yの第2端部領域a2が位置Pyにて切り揃えられる。この切り揃えられた端部では、全ての負極集電体21Yが接合された第2接合部C2が構成されている。
【0052】
そして、
図7に示すように、得られた膜電極接合体5をタブ4上に載置する。この状態で、再び第1端部領域a1及び第2端部領域a2に向けて超音波溶接機Hから超音波が発せられ、各端部領域a1、a2の各接合部C1、C2と対応するタブ4X、4Yとがそれぞれ接合される。
【0053】
以上のようにして、正極板10X及び負極板20Yが交互に積層され、端部領域a1、a2が切り揃えられた後、複数の正極板10Xが、正極集電体11Xの第1端部領域a1において互いに接合され且つ導通するようになる。そして、正極集電体11Xの第1端部領域a1に第1タブ4Xが電気的に接続される。同様に、複数の負極板20Yが、負極集電体21Yの第2端部領域a2において互いに接合され且つ導通するようになる。そして、負極集電体21Yの第2端部領域a2に第2タブ4Yが電気的に接続される。その後、各タブ4X、4Yが外装体3から延び出るようにして、膜電極接合体5が外装体3内に密封されることで、積層型電池1が得られる。
【0054】
以上のような本実施の形態によれば、正極板10Xの積層方向と平行で且つ第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向(第1方向d1)と直交する断面において、複数の正極板10Xの正極集電体11Xの端部位置Pxが、第1タブ4X上で一致している。このことにより、積層型電池1において、正極板10Xと第1タブ4Xとを信頼性をもって接合でき、且つ、外装体と正極板10Xとの短絡を確実に防止することができる。更には、同様の構成が負極板20Yにおいても採用されているため、負極板20Yと第2タブ4Yとを信頼性をもって接合でき、且つ、外装体と負極板20Yとの短絡をも、確実に防止することができる。
【0055】
また、前述したように、正極板10Xは、正極集電体11Xの第1端部領域a1と正極活物質層12Xとに跨がって積層された絶縁テープ6Xを有している。そして、複数の正極板10Xに含まれる最も長い(
図3において最も上側に位置する)正極集電体11Xと最も短い(
図3において最も下側に位置する)正極集電体11Xとの長さの差は、最も長い正極集電体11Xの第1電極領域b1及び最も短い正極集電体11Xの第1電極領域b1の積層方向dLに沿った離間間隔Dと、第11電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向d1に沿った絶縁テープ6Xの幅Lと、の和よりも大きい。このため、積層型電池1において、正極集電体11Xの端部領域a1の端部位置を揃えつつ、正極板10Xと第1タブ4Xとを信頼性をもって接合することができる。同様に、負極板20Yにおいても同様の構成が採用されているため、負極集電体21Yの端部領域a2の端部位置を揃えつつ、負極板20Yと第2タブ4Yとを信頼性をもって接合することができる。
【0056】
更に、以上の積層型電池1は、作製される際に、正極板10Xの正極集電体11Xを、接合部C1の第1電極領域b1の側とは反対側となる位置において、切断して、正極板10Xの正極集電体11Xの端部位置を揃える工程を備えている。このことにより、正極集電体11Xの端部位置が確実に揃えられ、正極板10Xと第1タブ4Xとが信頼性をもって接合され得る。同様に、以上の工程は、負極板20Yの負極集電体21Xの端部位置を揃える際にも採用される。このため、負極集電体21Yの端部位置も確実に揃えられ、負極板20Yと第2タブ4Yとが信頼性をもって接合され得る。
【0057】
とりわけ、本発明による積層型電池1を作製する際、正極板10Xの第1端部領域a1を接合する工程の後で、上述した切断工程(第1端部領域a1を切り揃える工程)が行われ、その後、第1端部領域a1が第1タブ4Xに接合される。本発明によれば、このような順序で正極板10Xにタブ4Xが電気的に接続されるため、各第1端部領域a1の接合と、正極板10X及びタブ4Xの接合とを、高い信頼性をもって提供することができる。
【0058】
次に、本発明による積層型電池1の変形例について説明する。
【0059】
図9は、本発明の変形例による積層型電池1Aを示す概略断面図である。
図9に示すように、積層型電池1Aは、複数の正極板10X(第1電極板10)として、正極集電体11X(第1電極集電体11)の第1端部領域a1(接続領域)が第1タブ4Xの第1面4Xa上に重ねられて互いに電気的に接続する第1群の正極板10Xa(第1電極板10a)と、正極集電体11Xの第1端部領域a1が第1タブ4Xの第2面4Xb上に重ねられて互いに電気的に接続する第2群の正極板10Xb(第1電極板10b)と、を含むものが用いられている。
図9に示すように、第1群の正極板10Xaの正極集電体11Xは、第1タブ4Xの第1面4Xa上で端部の位置が揃えられており、且つ、第2群の正極板10Xbの正極集電体11Xは、第1タブ4Xの第2面4Xb上で端部の位置が揃えられている。
【0060】
また、正極板10Xと同様に、負極板20Y(第2電極板20)として、負極集電体21Y(第2電極集電体21)の第2端部領域a2(接続領域)が第2タブ4Yの第1面4Ya上に重ねられて互いに電気的に接続する第1群の負極板20Ya(第2電極板20a)と、負極集電体21Yの第2端部領域a2が第2タブ4Yの第2面4Yb上に重ねられて互いに電気的に接続する第2群の負極板20Yb(第2電極板20b)と、を含むものが用いられている。
図9に示すように、第1群の負極板20Yaの負極集電体21Yは、第2タブ4Yの第1面4Ya上で端部の位置が揃えられており、且つ、第2群の負極板20Ybの負極集電体21Yは、第2タブ4Yの第2面4Yb上で端部の位置が揃えられている。
【0061】
要するに、本変形例による積層型電池1Aは、上述した積層型電池1の正極板10X及び負極板20Yがタブ4の他方の面(
図9における下面)にも設けられている。とりわけ、図示される例では、タブ4の一方の面(
図9における上面)に設けられている正極板10X及び負極板20Yの構成と、タブ4の他方の面に設けられている正極板10X及び負極板20Yの構成とは、タブ4に関して対称的である。
【0062】
図9に示す積層型電池1を製造する際には、まず、
図4A及び
図4Bを参照して説明したように、正極板10X及び負極板20Yが交互に積層される。そして、正極板10Xの正極集電体11Xの第1端部領域a1が、互いに積層され(束ねられ)、例えば超音波溶接機Hにより接合される。その後、各第1端部領域a1が互いに同一の端部位置となるように切り揃えられる。同様に、負極板20Yの負極集電体21Yの第2端部領域a2が、互いに積層され(束ねられ)、例えば超音波溶接機Hにより接合される。その後、各第2端部領域a2が互いに同一の端部位置となるように切り揃えられる。これらの工程により、膜電極接合体5が作製される。
【0063】
本変形例においては、以上の膜電極接合体5が2組作製される。一方の膜電極接合体5は、タブ4の一方の面に配置されるものであり、他方の膜電極接合体5は、タブ4の他方の面に配置されるものである。ここでは、説明の便宜上、一方の膜電極接合体5の正極板10X及び負極板20Yをそれぞれ、第1群の正極板10Xa及び第1群の負極板20Yaと呼び、他方の膜電極接合体5の正極板10X及び負極板20Yをそれぞれ、第2群の正極板10Xb及び第2群の負極板20Ybと呼ぶ。2組の膜電極接合体5の作製方法は、上述した積層型電池1における膜電極接合体5の作製方法と同一であるため、ここではその詳細な説明は省略する(
図5~
図7参照)。
【0064】
そして、第1群の正極板10Xaの第1端部領域a1及び第1群の負極板20Yaの第2端部領域a2がタブ4の一方の側において当該タブ4に対して位置決めされ、各端部領域a1、a2が対応するタブ4a、4bに超音波溶接機Hによって接合される。この接合工程は、
図8を用いて説明した接合工程と同一である。更に、本変形例では、第2群の正極板10Xbの第1端部領域a1及び第2群の負極板20Ybの第2端部領域a2がタブ4の他方の側において当該タブ4に対して位置決めされ、各端部領域a1、a2が対応するタブ4a、4bに超音波溶接機Hによって接合される。
【0065】
以上のようにして、第1群の正極板10Xaと第2群の正極板10Xbとが、各正極集電体11Xの第1端部領域a1において互いに接合され且つ導通するようになる。更に、正極集電体11Xの第1端部領域a2に第1タブ4Xが電気的に接続される。同様に、第1群の負極板20Yaと第2群の負極板20Ybとが、各負極集電体21Yの第2端部領域a2において互いに接合され且つ導通するようになる。更に、負極集電体21Yの第2端部領域a2に第2タブ4Yが電気的に接続される。その後、各タブ4X、4Yが外装体3から延び出るようにして、膜電極接合体5が外装体3内に密封されることで、
図9に示す積層型電池1Aが得られる。
【0066】
以上のような変形例による積層型電池1Aによっても、上述した積層型電池1と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
以上の実施の形態及び変形例では、互いに同一の長さを有する複数の正極板10X及び負極板20Yを用意し、これら複数の正極板10X及び負極板20Yを交互に積層させ、各端部領域a1、a2をそれぞれ溶着させた後で、当該端部領域a1、a2を切り揃えるという工程を採用している。しかしながら、正極板10X及び負極板20Yの各集電体11X、21Yの端部位置を揃える方法は、そのような例には限定されない。例えば、他の実施の形態においては、複数の正極板10X及び/又は複数の負極板20Yの長さを異ならせることによって、正極集電体11X及び/又は負極集電体21Yの端部位置が揃えられた積層型電池を作製することもできる。
【0068】
すなわち、複数の正極板10Xの間で、積層方向dLと平行で且つ第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向d1と直交する断面での正極集電体11Xの長さが一定ではなく、積層方向dLにおいて第1タブ4Xから最も離間する正極板10Xの正極集電体11Xの長さが、少なくとも他の一つの正極板10Xの正極集電体11Xの長さよりも、長くなっていて良い。具体的には、正極集電体11Xの長さは、積層方向dLにおいて第1タブ4Xに最も離間する正極板10Xで最も長くなり、積層方向dLにおいて第1タブ4Xに最も近接する正極板10Xで最も短くなっていて良い。より具体的には、任意選択される一つの正極板10Xの正極集電体11Xの長さは、当該一つの正極板10Xよりも積層方向dLにおいて第1タブ4Xに近接する他の正極板10Xの正極集電体11Xの長さ以上となっていて良い。
【0069】
この場合、各正極板10Xの正極集電体11Xの長さを適正に設定することにより、複数の正極板10Xの正極集電体11Xの端部領域a1を第1タブ4X上に積層させることのみにより、すなわち正極集電体11Xの端部領域a1を切断する工程無しで、各正極集電体11Xの端部位置を揃えることができる。もちろん、複数の負極板20Yに対して同様の手法を採用すれば、負極集電体21Yの端部領域b1を切断する工程無しで、各負極集電体21Yの端部位置を揃えることができる。
【0070】
あるいは、以上の実施の形態及び変形例において、正極集電体11X及び負極集電体21Yの少なくとも一方の端部位置に多少のバラツキがあっても良い。具体的には、積層方向dLと平行で且つ第1電極領域b1及び第1端部領域a1の配列方向d1と直交する断面において、複数の正極板10Xの正極集電体11Xの端部位置、及び/又は、複数の負極板20Yの負極集電体21Yの端部位置が、それぞれの接合部Cの長さの例えば30%以下の長さを有した第1タブ4X及び/又は第2タブ4Y上の領域内に位置していても良い。このようにして作成された積層型電池も、上述した実施の形態による積層型電池1と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 積層型電池
4X 第1タブ
4Xa 第1面
4Xb 第2面
4Y 第2タブ
5 膜電極接合体
6X 絶縁テープ
6Y 絶縁テープ
10 第1電極板
10a 第1電極板
10X 正極板
10Xa 正極板
11 第1電極集電体
11X 正極集電体
11a 第1面
11b 第2面
11c 端面
11d 端面
12 第1電極活物質層
12X 正極活物質層
20 第2電極板
20Y 負極板
21 第2電極集電体
21Y 負極集電体
21a 第1面
21b 第2面
22 第2電極活物質層
22Y 負極活物質層
a1 第1端部領域
a2 第2端部領域
b1 第1電極領域
b2 第2電極領域