(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】温度分布可視化装置および方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/523 20180101AFI20220401BHJP
【FI】
F24F11/523
(21)【出願番号】P 2018113351
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】斎数 由香子
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】近田 智洋
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/523
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、解析対象の空間の温熱環境に関する環境データを計測する計測時間を決定するように構成された時間決定部と、
この時間決定部によって決定された計測時間の間、センサによって計測された前記環境データを収集するように構成されたデータ収集部と、
前記空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデルと前記環境データにより、CFD解析を行い、前記空間の3次元温度分布を計算するように構成されたCFD解析部と、
このCFD解析部の解析結果を表示するように構成された情報表示部とを備え、
前記CFD解析部は、前記シミュレーション時間と等しい周期でCFD解析を行い、
前記情報表示部は、表示する解析結果を前記解析結果の入手間隔と等しい周期毎に更新することを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項2】
請求項1記載の温度分布可視化装置において、
前記時間決定部は、前記シミュレーション時間が前記解析結果の入手間隔と等しくなるように、前記計測時間を前記解析結果の入手間隔のn(nは1以上の整数で、前記シミュレーション時間は前記計測時間のn倍の時間)分の1の値になるように定め、
前記データ収集部は、前記解析結果の入手間隔と等しい周期で前記環境データを収集することを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項3】
請求項2記載の温度分布可視化装置において、
前記時間決定部は、過去のCFD解析に要したシミュレーション時間とこのときに前記環境データを計測した計測時間とに基づいて、前記nの値を求めることを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項4】
請求項1記載の温度分布可視化装置において、
それぞれ前記CFD解析部として機能するコンピュータをn台(nは2以上の整数で、前記解析結果の入手間隔より長い前記シミュレーション時間が前記計測時間のn倍)備え、
前記データ収集部によって収集された環境データを、前記n台のコンピュータで実現されるn個のCFD解析部に順番に供給するように構成されたデータ供給部をさらに備え、
前記時間決定部は、前記計測時間を前記解析結果の入手間隔と等しくなるように定め、
前記データ収集部は、前計測時間と等しい周期で前記環境データを収集し、
前記n個のCFD解析部により、前記計測時間と等しい周期で連続的にCFD解析を実施することを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記時間決定部は、過去の前記環境データおよび過去の前記解析結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記解析結果の入手間隔を決定することを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記解析結果の入手間隔は、前記オペレータによって設定されることを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記環境データは、前記空間の温熱環境を調整する空調機に関する空調データを含むことを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記環境データは、前記空間内の特定の壁面の表面温度データを含むことを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記環境データは、前記空間内の人数のデータを含むことを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の温度分布可視化装置において、
前記環境データは、前記空間内の熱負荷データを含むことを特徴とする温度分布可視化装置。
【請求項11】
オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、解析対象の空間の温熱環境に関する環境データを計測する計測時間を決定する第1のステップと、
この第1のステップによって決定された計測時間の間、センサによって計測された前記環境データを収集する第2のステップと、
前記空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデルと前記環境データにより、CFD解析を行い、前記空間の3次元温度分布を計算する第3のステップと、
この第3のステップの解析結果を表示する第4のステップとを含み、
前記第3のステップは、前記シミュレーション時間と等しい周期でCFD解析を行い、
前記第4のステップは、表示する解析結果を前記解析結果の入手間隔と等しい周期毎に更新することを特徴とする温度分布可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CFD解析(シミュレーション)による室内温度分布の3次元可視化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスにおいて、快適性と省エネルギー性を両立するため、室内に意図的に温度分布を作り、人の居住域を快適にし、それ以外の場所では省エネルギーを優先するような空調制御方式が提案されている。このような空調制御を実現するためには、室内の詳細な温度分布を把握する必要があり、室内温度分布の3次元表示など高度な可視化の要求が高まっている。
【0003】
CFD(Computational Fluid Dynamics)解析により、室内温度分布の3次元可視化は可能であるが、解析結果を得るまでに時間がかかるため、CFD解析の活用方法としては設備の設計や運用計画に留まっており、空調制御に活用するためには計算時間の短縮が必要である。スーパーコンピュータなどを用いることにより計算時間の短縮は可能であるが、一般的なオフィスで空調制御に用いるためには、経済的に合理的な方法で、ユーザが所望するタイミングで必要な温度分布状況を確認できる必要がある。
【0004】
シミュレーションを空調制御に用いる例は、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。また、実測データを入力データとして環境シミュレーションを実施して、3次元空間分布をモニタリングする例は、例えば特許文献3に開示されている。
【0005】
CFD非定常解析を、設備の設計や運用計画だけでなく、熱だまりの解消や居住者からのクレーム対応など、オペレータによる日々の運用段階でも活用したいという要求がある。しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示された例では、解析結果が得られる時間間隔が一定にならない可能性があるという課題があった。したがって、オペレータが希望するタイミングで解析結果を入手できない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-171071号公報
【文献】特開2010-139119号公報
【文献】特開2012-63055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、オペレータが希望する時間間隔でCFD解析の結果を提供することを可能にする温度分布可視化装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の温度分布可視化装置は、オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、解析対象の空間の温熱環境に関する環境データを計測する計測時間を決定するように構成された時間決定部と、この時間決定部によって決定された計測時間の間、センサによって計測された前記環境データを収集するように構成されたデータ収集部と、前記空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデルと前記環境データにより、CFD解析を行い、前記空間の3次元温度分布を計算するように構成されたCFD解析部と、このCFD解析部の解析結果を表示するように構成された情報表示部とを備え、前記CFD解析部は、前記シミュレーション時間と等しい周期でCFD解析を行い、前記情報表示部は、表示する解析結果を前記解析結果の入手間隔と等しい周期毎に更新することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記時間決定部は、前記シミュレーション時間が前記解析結果の入手間隔と等しくなるように、前記計測時間を前記解析結果の入手間隔のn(nは1以上の整数で、前記シミュレーション時間は前記計測時間のn倍の時間)分の1の値になるように定め、前記データ収集部は、前記解析結果の入手間隔と等しい周期で前記環境データを収集することを特徴とするものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記時間決定部は、過去のCFD解析に要したシミュレーション時間とこのときに前記環境データを計測した計測時間とに基づいて、前記nの値を求めることを特徴とするものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例は、それぞれ前記CFD解析部として機能するコンピュータをn台(nは2以上の整数で、前記解析結果の入手間隔より長い前記シミュレーション時間が前記計測時間のn倍)備え、前記データ収集部によって収集された環境データを、前記n台のコンピュータで実現されるn個のCFD解析部に順番に供給するように構成されたデータ供給部をさらに備え、前記時間決定部は、前記計測時間を前記解析結果の入手間隔と等しくなるように定め、前記データ収集部は、前計測時間と等しい周期で前記環境データを収集し、前記n個のCFD解析部により、前記計測時間と等しい周期で連続的にCFD解析を実施することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記時間決定部は、過去の前記環境データおよび過去の前記解析結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記解析結果の入手間隔を決定することを特徴とするものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記解析結果の入手間隔は、前記オペレータによって設定される。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記環境データは、前記空間の温熱環境を調整する空調機に関する空調データを含むものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記環境データは、前記空間内の特定の壁面の表面温度データを含むものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記環境データは、前記空間内の人数のデータを含むものである。
また、本発明の温度分布可視化装置の1構成例において、前記環境データは、前記空間内の熱負荷データを含むものである。
【0011】
また、本発明の温度分布可視化方法は、オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、解析対象の空間の温熱環境に関する環境データを計測する計測時間を決定する第1のステップと、この第1のステップによって決定された計測時間の間、センサによって計測された前記環境データを収集する第2のステップと、前記空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデルと前記環境データにより、CFD解析を行い、前記空間の3次元温度分布を計算する第3のステップと、この第3のステップの解析結果を表示する第4のステップとを含み、前記第3のステップは、前記シミュレーション時間と等しい周期でCFD解析を行い、前記第4のステップは、表示する解析結果を前記解析結果の入手間隔と等しい周期毎に更新することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とを考慮して計測時間を決定することにより、シミュレーション時間を一定にすることができ、オペレータが希望する時間間隔でCFD解析の結果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る温度分布可視化装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る温度分布可視化装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例における計測時間の決定方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例に係る温度分布可視化装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施例に係る温度分布可視化装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施例に係る温度分布可視化装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施例におけるデータの計測とCFD解析のタイミングを説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施例に係る温度分布可視化装置の環境データ計測時間決定部の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施例に係る温度分布可視化装置の環境データ計測時間決定部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の原理]
室内の温熱環境は時定数が大きく、その変化は緩やかである。オフィスのような大空間では、特に、通常の運用の中で急激な外乱が入り、温熱環境が急激に変化することは稀である。そこで、発明者は、空調制御が行われている全ての時間についてシミュレーション情報を提供しなくても、オペレータが許容する時間間隔で、定期的に一部の時間のCFD解析を行い、シミュレーション情報を提供することで、オペレータは室内の温熱環境を把握することができ、実質的にリアルタイムの情報提供を実現することができるということに想到した。本発明では、複数の計算機に処理を分配することで、CFD解析の実行間隔の空きを埋めて、情報量を増やすことも可能である。
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係る温度分布可視化装置の構成を示すブロック図である。温度分布可視化装置は、オペレータが許容する、解析結果の入手間隔と、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、解析対象の空間の温熱環境に関する環境データを計測する計測時間を決定する環境データ計測時間決定部1と、環境データ計測時間決定部1によって決定された計測時間の間、センサによって計測された環境データを収集する環境計測データ収集部2aと、解析対象の空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデル3と、CFDモデル3と環境データにより、CFD解析を行い、空間の3次元温度分布を計算するCFD解析部4と、CFD解析部4の解析結果を表示するシミュレーション情報表示部5とを備えている。
【0016】
以下、本実施例の温度分布可視化装置の動作を
図2を参照して説明する。最初に、環境データ計測時間決定部1は、温度分布可視化装置を使用するオペレータが許容する、解析結果の入手間隔Tと、CFD解析に要するシミュレーション時間とから、CFD解析に必要な環境データを計測する計測時間Tmを決定する(
図2ステップS1)。
【0017】
図3は本実施例の計測時間Tmの決定方法を説明する図である。本実施例では、CFD解析に要するシミュレーション時間Tsは、計測時間Tmのn倍の時間n×Tmになるものとする(nは1以上の整数)。
図3の例では、n=3としている。
図3のt1,t2は解析終了(室内温度分布表示)のタイミングを示している。
【0018】
最初の計測開始から次のCFD解析開始までの時間は、Tm+n×Tmとなる。最初の計測開始から次の計測開始までの時間はTm+n×Tm-Tmである。したがって、オペレータが許容できる、室内解析結果の入手間隔Tは、次式のように表すことができる。
T=Tm+n×Tm-Tm=n×Tm ・・・(1)
【0019】
本実施例では、シミュレーション時間Tsを解析結果の入手間隔Tと等しくなるようにする場合について説明する。この場合、計測時間Tmは次式のようになる。
Tm=T/n ・・・(2)
【0020】
こうして、環境データ計測時間決定部1は、式(2)により計測時間Tmを決定する。ここで、CFD解析に要するシミュレーション時間Tsについて説明すると、シミュレーション時間Tsは、CFDモデル3の規模や複雑さ、メッシュサイズ(メッシュ数)、CFD解析を行うコンピュータの性能によって、計測時間Tmに対してどれぐらいの値になるかが決まる。したがって、CFDモデル3を用いて一度CFD解析を実行すれば、nの値の大凡の目安が分かる。1台のコンピュータで、連続的にCFD解析を行う場合、CFDモデル3、メッシュ、コンピュータの性能は同じであるから、シミュレーション時間Tsは一定である。また、同じCFDモデル3でメッシュ数が異なる場合は、そのメッシュ数の割合からシミュレーション時間Tsの見当をつけることが可能である(例えばメッシュ数が半分であればシミュレーション時間Tsも半分程度になる等)。nの値については、手動で設定してもよいし、後述のように自動的に決定するようにしてもよい。
【0021】
次に、環境計測データ収集部2は、環境データ計測時間決定部1によって決定された計測時間Tmの間、図示しないセンサおよびセンサシステムによって計測された環境データを収集する(
図2ステップS2)。
【0022】
センサおよびセンサシステムの種類としては、解析対象の空間の温熱環境を調整する空調機から対象の空間に供給される吹き出し空気の風量を計測する吹き出し風量センサ、吹き出し空気の温度を計測する吹き出し温度センサ、空間内の特定の壁面の表面温度を計測する表面温度センサ、空間内の人数を計測する在人数センサまたはセンサシステム、空間内の熱負荷データを計測する熱負荷センサまたはセンサシステムがある。
【0023】
在人数センサの例としては、例えば人からの放射温度を検出して人数を計測するセンサがある。また、在人数センサシステムの例としては、対象の空間への人の入退室を管理する入退室管理システムがある。
空間内の熱負荷データを計測する熱負荷センサまたはセンサシステムとしては、例えば空間内の照明等の設備が消費する電力から発生熱量を計算するシステムがある。
【0024】
こうして、環境計測データ収集部2は、環境データとして、空調データ(吹き出し風量データ、吹き出し温度データ)、表面温度データ、在人数データ、熱負荷データを収集する。
なお、環境計測データ収集部2は、解析結果の入手間隔T(=Ts)と等しい周期で環境データを収集する。したがって、
図3から明らかなとおり、環境計測データ収集部2は、今回収集した環境データに基づくCFD解析の終了予定時刻よりもTm時間前から次の環境データ収集を開始することになる。
【0025】
次に、温度分布可視化装置には、対象の空間内の空気の流れと熱伝達とをモデル化したCFDモデル3が予め構築されている。CFD解析部4は、このCFDモデル3と環境計測データ収集部2によって収集された環境データのうち少なくとも1つのデータにより、CFD解析を行い、対象の空間の3次元温度分布を計算する(
図2ステップS3)。なお、CFD解析による室内温度分布の計算手法は、例えば「原山和也他,“分布系シミュレーションを用いた室内任意空間の温熱環境制御技術の開発”,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2010年9月1日~3日」、「斎数由香子他,“局所空調制御運用時における省エネ性および快適性に関する研究(第1報)空調設備と空調空間の非定常連成シミュレータの開発”,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2011年9月14日~16日」、「斎数由香子他,“セントラル空調を利用した局所空調システムの可能性検証”,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2012年9月5日~7日」などに開示されているように周知の計算手法である。
【0026】
シミュレーション情報表示部5は、CFD解析部4の解析結果を表示する(
図2ステップS4)。このときの表示方法としては、例えば対象の空間の投影図上に空間の温度分布を色分けで表示する方法、対象の空間内の特定の点の温度を時系列で表示する方法などがある。
【0027】
温度分布可視化装置は、オペレータからシミュレーション終了の指示があるまで(
図2ステップS5においてYes)、ステップS2~S4の処理を解析結果の入手間隔T(=Ts)と等しい周期毎に行う。したがって、シミュレーション情報表示部5が表示する解析結果は、解析結果の入手間隔T(=Ts)と等しい周期毎に更新される。
こうして、本実施例では、オペレータが希望する時間間隔Tで解析結果を提供することができる。
【0028】
本実施例で説明した温度分布可視化装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図4に示す。コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、オペレータが操作する入力装置、オペレータに対して解析結果を表示する表示装置、センサおよびセンサシステム等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の室内温度分布可視化方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【0029】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図4は本発明の第2の実施例に係る温度分布可視化装置の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例の温度分布可視化装置は、環境データ計測時間決定部1aと、環境計測データ収集部2aと、CFDモデル3と、n個(本実施例ではnは2以上の整数)のCFD解析部4a-1~4a-nと、シミュレーション情報表示部5aと、環境計測データ収集部2aによって収集された環境データを、n台のコンピュータで実現されるn個のCFD解析部4a-1~4a-nに順番に供給するデータ供給部6とを備えている。
【0030】
第1の実施例では、シミュレーション時間Tsを解析結果の入手間隔Tと等しくなるようにする場合で、入手間隔Tと計測時間Tmとが一致しない(T≠Tm)場合について説明している。これに対して、本実施例は、シミュレーション時間Tsが入手間隔Tより長く、T=Tm、すなわち環境データの計測が第1の実施例のような断続的ではなく、連続的に行われる例について説明する。
【0031】
以下、本実施例の温度分布可視化装置の動作を
図6、
図7を参照して説明する。
図6は温度分布可視化装置の動作を説明するフローチャート、
図7は本実施例における環境データの計測とCFD解析のタイミングを説明する図である。
図7では、
図3と同様に、n=3としている。また、
図7のt1,t2,t3はそれぞれCFD解析部4a-1,4a-2,4a-3の解析終了(室内温度分布表示)のタイミングを示している。
【0032】
本実施例の環境データ計測時間決定部1aは、計測時間Tmを解析結果の入手間隔Tと等しくなるように定める(
図6ステップS10)。
本実施例では、
図7に示すように、CFD解析部4a-1用の環境データの計測→CFD解析部4a-2用の環境データの計測→CFD解析部4a-3用の環境データの計測→CFD解析部4a-1用の環境データの計測→・・・・というように、環境データを連続的に収集する必要がある。すなわち、本実施例の環境計測データ収集部2aは、計測時間Tm(=T)と等しい周期で環境データを収集する(
図6ステップS11)。収集する環境データの種類は第1の実施例と同じである。
【0033】
次に、データ供給部6は、環境計測データ収集部2aによって収集された環境データをn個のCFD解析部4a-1~4a-nのうち、現時点でCFD解析を実施すべきCFD解析部に供給する(
図6ステップS12)。
【0034】
例えば
図7のtaの時点では、CFD解析部4a-1が解析を実施するタイミングなので、データ供給部6はCFD解析部4a-1に環境データを供給する。
図7のtbの時点では、CFD解析部4a-2が解析を実施するタイミングなので、データ供給部6はCFD解析部4a-2に環境データを供給する。
図7のtcの時点では、CFD解析部4a-3が解析を実施するタイミングなので、データ供給部6はCFD解析部4a-3に環境データを供給する。そして、
図7のtdの時点では、データ供給部6は再びCFD解析部4a-1に環境データを供給する。データ供給部6は、以下同様に、環境データの供給を行う。
【0035】
各CFD解析部4a-1~4a-nは、CFD解析を実施すべきタイミングとなり、環境計測データ収集部2aから環境データを供給されたときに、第1の実施例と同様にCFD解析を行い、対象の空間の3次元温度分布を計算する(
図6ステップS13)。
【0036】
第1の実施例で説明したとおり、1台のコンピュータでは、最初の計測開始から次の計測開始までの時間がTm+n×Tm-Tmとなるため、シミュレーション時間Ts(=n×Tm)よりも短い入手間隔Tを満たすことができない。そこで、本実施例では、計測時間Tmの既知の倍数nと同数のCFD解析部4a-1~4a-n(n台のコンピュータ)を用意し、
図7の例に示すように、CFD解析部4a-1によるCFD解析→CFD解析部4a-2によるCFD解析→CFD解析部4a-3によるCFD解析→CFD解析部4a-1によるCFD解析→・・・・というように、CFD解析部4a-1~4a-nに順番にCFD解析を実施させることで、周期T=Tmで連続的にCFD解析を実施できるようにする。本実施例では、最初の計測開始から次のCFD解析開始までの時間は、Tm+Tmとなる。最初の計測開始から次の計測開始までの時間はTmである。
【0037】
シミュレーション情報表示部5aは、各CFD解析部4a-1~4a-nの解析結果を第1の実施例と同様に表示する(
図6ステップS14)。
温度分布可視化装置は、オペレータからシミュレーション終了の指示があるまで(
図6ステップS15においてYes)、ステップS11~S14の処理を周期T=Tm毎に行う。したがって、シミュレーション情報表示部5aが表示する解析結果は、周期T毎に更新される。
【0038】
こうして、本実施例では、オペレータが希望する時間間隔Tで解析結果を提供することができる。
本実施例では、1台のコンピュータで環境データ計測時間決定部1aと環境計測データ収集部2aとCFDモデル3とCFD解析部4a-1とシミュレーション情報表示部5aとデータ供給部6とを実現し、他の(n-1)台のコンピュータでCFD解析部4a-2~4a-nを1個ずつ実現し、各コンピュータをネットワークで互いに接続するようにすればよい。各コンピュータの構成は
図4に示したとおりである。
【0039】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第1、第2の実施例において、オペレータが許容する、解析結果の入手間隔Tは、オペレータが手動で設定してもよいが、本実施例は、入手間隔Tを自動的に決定するものである。
図8は本実施例に係る環境データ計測時間決定部1bの構成を示すブロック図である。環境データ計測時間決定部1bは、計測時間決定部10と、入手間隔決定部11とから構成される。
【0040】
本実施例を第1の実施例に適用する場合、計測時間決定部10は、式(2)により計測時間Tmを決定すればよい。また、本実施例を第2の実施例に適用する場合、計測時間決定部10は、計測時間Tmを解析結果の入手間隔Tと等しくなるように定めるようにすればよい。
【0041】
一方、入手間隔決定部11は、このような計測時間決定部10の動作に先立って解析結果の入手間隔Tを自動的に決定する。具体的には、過去の環境計測データ(吹き出し空気の温度または空間内の壁面の表面温度)から、解析対象の空間の温熱環境変化が小さい時間帯を特定する。例えば吹き出し空気の温度の単位時間毎の変化量または表面温度の単位時間毎の変化量が所定の範囲内の時間帯を温熱環境変化が小さい時間帯とする。あるいは、過去のCFD解析結果が示す空間の温度分布のうち特定の1点の温度の単位時間毎の変化量が所定の範囲内の時間帯を温熱環境変化が小さい時間帯とする。そして、入手間隔決定部11は、特定した時間帯の長さを解析結果の入手間隔Tとすればよい。
【0042】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。本実施例は、第1の実施例において、上記のnの値を自動的に決定するものである。
図9は本実施例に係る環境データ計測時間決定部1cの構成を示すブロック図である。環境データ計測時間決定部1cは、計測時間決定部10と、倍数決定部12とから構成される。
【0043】
計測時間決定部10は、上記のとおり式(2)により計測時間Tmを決定すればよい。倍数決定部12は、このような計測時間決定部10の動作に先立って、過去のCFD解析に要したシミュレーション時間Tsとこのときに環境データを計測した計測時間Tmとに基づいて、式(3)によりnの値を自動的に決定する。
Ts=n×Tm ・・・(3)
【0044】
なお、CFDモデル3の規模、メッシュ数、コンピュータの性能からオペレータがシミュレーション所要時間Tsを推定し、nの値を算出して設定してもよい。
また、第3の実施例と第4の実施例を組み合わせるようにしてもよい。すなわち、環境データ計測時間決定部を、計測時間決定部10と入手間隔決定部11と倍数決定部12とから構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、CFD解析により空間の温度分布を求める技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1a,1b,1c…環境データ計測時間決定部、2…環境計測データ収集部、3…CFDモデル、4,4a-1~4a-n…CFD解析部、5,5a…シミュレーション情報表示部、6…データ供給部、10…計測時間決定部、11…入手間隔決定部、12…倍数決定部。