(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】安全文化醸成支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220401BHJP
【FI】
G06Q10/06 300
(21)【出願番号】P 2018126160
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514307822
【氏名又は名称】株式会社ゼロナイズ
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大木 恵史
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-218892(JP,A)
【文献】特開2001-250023(JP,A)
【文献】特開2005-202769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0073171(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1370775(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場で作業者の行動を評価するための複数の期待事項を表示し、該期待事項毎に入力された評価情報を記憶する端末装置と、該端末装置から前記評価情報を収集するサーバー装置と、を有する安全文化醸成支援システムであって、
前記端末装置が表示する前記期待事項は、対象者情報及び重要度情報と関連付けられており、
前記端末装置で入力される前記評価情報は、対応する期待事項で求められる行動が達成されていない未達評価と、対応する期待事項で求められる行動が最低限達成されている良評価と、対応する期待事項で求められる行動がより高い水準で達成されている優評価と、のいずれかであり、
前記サーバー装置は、前記期待事項毎、前記対象者情報毎、前記重要度情報毎に、それぞれ前記評価情報の数に対する前記優評価の割合であるエクセレンス率と、前記評価情報の数に対する前記優評価と良評価の合計数の割合であるコンプライアンス率とを算出し、該算出した前記エクセレンス率とコンプライアンス率に基づく分析結果を出力することを特徴とする安全文化醸成支援システム。
【請求項2】
前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の一定期間における平均値をそれぞれ算出し、パターン分析結果として出力することを特徴とする請求項1に記載の安全文化醸成支援システム。
【請求項3】
前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の平均値の所定期間ごとの推移をそれぞれ算出し、トレンド分析結果として出力することを特徴とする請求項1または2に記載の安全文化醸成支援システム。
【請求項4】
前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の平均値である全実施率を算出して出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の安全文化醸成支援システム。
【請求項5】
前記サーバー装置は、前記エクセレンス率または前記コンプライアンス率が一定値より低い前記期待事項につき、抽出して出力することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の安全文化醸成支援システム。
【請求項6】
前記サーバー装置は、前記期待事項の入替手段を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の安全文化醸成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場作業における行動の評価を通じて安全文化の醸成を支援する安全文化醸成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現場作業を伴う職場において、作業員や作業班長などの従業員が安全文化を本質的に理解することは一般的には難しい。例えば、「安全第一」の標語が用いられることがあるが、自分自身が具体的にどのような行動をすればよいのかは、この標語からは導き出すことは困難であり、単なる掛け声だけに留まりがちとなる。
【0003】
このため、安全につながるより具体的な情報を分析した結果を作業者に伝えるシステムが考えられている。例えば、特許文献1には、現場における作業内容の情報と、それに対応する安全情報とをそれぞれ収集し、これらの情報から事故発生可能性を分析して作業者に伝えるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各々が安全のためにどのように行動すればよいのかは、例えば作業員と作業補助者、作業班長のように立場が異なれば、それぞれ異なってくる。また、安全のための行動は、一度指導しただけで身に付くものではなく、職場全体の安全文化が醸成されることにより、次第に向上していく。安全文化醸成に向けては、絶え間ない行動の改善を進めていくことが欠かせない。このため、このような安全文化醸成に向けてそれを支援するシステムが求められている。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、職場における安全文化の醸成を支援することのできる安全文化醸成支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る安全文化醸成支援システムは、現場で作業者の行動を評価するための複数の期待事項を表示し、該期待事項毎に入力された評価情報を記憶する端末装置と、該端末装置から前記評価情報を収集するサーバー装置と、を有する安全文化醸成支援システムであって、
前記端末装置が表示する前記期待事項は、対象者情報及び重要度情報と関連付けられており、
前記端末装置で入力される前記評価情報は、対応する期待事項で求められる行動が達成されていない未達評価と、対応する期待事項で求められる行動が最低限達成されている良評価と、対応する期待事項で求められる行動がより高い水準で達成されている優評価と、のいずれかであり、
前記サーバー装置は、前記期待事項毎、前記対象者情報毎、前記重要度情報毎に、それぞれ前記評価情報の数に対する前記優評価の割合であるエクセレンス率と、前記評価情報の数に対する前記優評価と良評価の合計数の割合であるコンプライアンス率とを算出し、該算出した前記エクセレンス率とコンプライアンス率に基づく分析結果を出力することを特徴として構成されている。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、期待事項を単に達成しているかに留まらず、より高い水準の安全行動(エクセレンス)を評価することができる。
【0009】
また、請求項2の発明に係る安全文化醸成支援システムは、前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の一定期間における平均値をそれぞれ算出し、パターン分析結果として出力することを特徴として構成されている。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、パターン分析により期待事項ごと、対象者ごと、重要度ごとにそれぞれ弱点を抽出することができる。
【0011】
さらに、請求項3の発明に係る安全文化醸成支援システムは、前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の平均値の所定期間ごとの推移をそれぞれ算出し、トレンド分析結果として出力することを特徴として構成されている。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、トレンド分析により時間推移に伴う行動の変化を検出し、継続的な安全文化醸成の把握を行うことができる。
【0013】
さらにまた、請求項4の発明に係る安全文化醸成支援システムは、前記サーバー装置は、前記エクセレンス率と前記コンプライアンス率の平均値である全実施率を算出して出力することを特徴として構成されている。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、エクセレンス率とコンプライアンス率に加えて全実施率を用いた分析が可能となる。
【0015】
そして、請求項5の発明に係る安全文化醸成支援システムは、前記サーバー装置は、前記エクセレンス率または前記コンプライアンス率が一定値より低い前記期待事項につき、抽出して出力することを特徴として構成されている。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、期待事項が達成されていないあるいは最低限しか達成されていない事項を、その現場における弱点として認識することができる。
【0017】
また、請求項6の発明に係る安全文化醸成支援システムは、前記サーバー装置は、前記期待事項の入替手段を有することを特徴として構成されている。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、分析結果に基づき検討された新たな期待事項を既存の期待事項と入れ替えることで、期待事項にPDCAのサイクルが適用され、これを繰り返していくことにより、安全文化の醸成を促進することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る安全文化醸成支援システムによれば、より高い水準の安全行動(エクセレンス)を評価することで、安全文化の醸成を継続的に促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】現場作業を伴う職場において安全文化を醸成するためのマネジメントオブザベーションのフローチャートである。
【
図2】本実施形態の安全文化醸成支援システムの全体構成図である。
【
図4】記憶部に記憶されている期待事項の一覧表である。
【
図6】コンプライアンス率とエクセレンス率の四半期ごとの推移を表す表及びグラフである。
【
図7】コンプライアンス率の四半期ごとの推移を重要度別にまとめた表及びグラフである。
【
図8】エクセレンス率の四半期ごとの推移を対象者別にまとめた表及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。
図1には、現場作業を伴う職場において安全文化を醸成するためのマネジメントオブザベーションのフローチャートを示している。マネジメントオブザベーションは、現場ごとに絞り込まれた正しい行動である期待事項を繰り返し観察し、期待事項通りの正しい行動を徹底していくことにより、常に一定レベル以上の現場力があることを確認、もしくは是正していくことを言う。
【0022】
図1に示すように、マネジメントオブザベーションにおいては、まず、期待事項の設定が行われる(S1)。期待事項は、対象となる現場についての正しい行動が、対象者別に設定される。対象者としては、例えば現場に関わる作業班長、主作業者、補助者が挙げられる。現場によっては、より細かく対象者が分かれている場合もある。また、期待事項は、全ての対象者に共通の事項も設定される。
【0023】
期待事項は、作業準備から実際の作業、片付けまでの一連の作業が対象となる。各作業における現場のパフォーマンスの牽引を左右する卓越した行動(ビヘイビアマーカー)を期待事項として抽出する。その上で、各対象者に求められる正しい行動としての期待事項が設定される。
【0024】
期待事項として設定され得る事項は、常に変化するため、
図1のフローを通じて見直しが行われる。ここで、期待事項の数については、見直し前後で一定となるようにする。
【0025】
期待事項が設定されたら、実際にオブザベーションが実行される(S2)。オブザベーションでは、作業の現場を観察し、設定された各期待事項について、達成されていない場合は未達の評価を、最低限の達成が観察された場合は良の評価を、最低限の達成を超える卓越した行動が観察された場合には優の評価が付される。最低限の達成とは、法令やルールに規定された基準を少なくとも形式的に遵守していること(コンプライアンス)を示している。最低限の達成を超える卓越した行動とは、コンプライアンスの水準に留まらず、より高いレベルで安全に対する意識が表れた行動(エクセレンス)を指す。例えば、指差し確認の際に声を出すことが期待事項として設定されている場合に、小さな声でも出していれば、基準を形式的には遵守しているので、コンプライアンスの水準、すなわち良の評価となる。一方、指差し確認の際に大きな声を出していれば、基準を超える行動として、エクセレンスの水準、すなわち優の評価となる。
【0026】
オブザベーションの実行後、未達の評価に該当する期待事項については、コーチングによりその場で対話を行い、徹底を図っていく(S3)。その後、オブザベーションの結果について、データ分析が行われ(S4)、その結果を基に、改善事項の抽出が行われる(S5)。ここで抽出された改善事項を期待事項に反映し(S6)、新たな期待事項の設定がなされる。
【0027】
本実施形態の安全文化醸成支援システムは、
図1のフローにおけるS2のオブザベーションの実施と、S4のデータ分析の段階について、その支援を行うためのものである。
【0028】
図2には、本実施形態の安全文化醸成支援システムの全体構成図を示している。この図に示すように、安全文化醸成支援システムは、オブザベーションにおいて用いられる端末装置2と、オブザベーションで得られたデータを集計等するサーバー装置1とを有している。本実施形態で端末装置2は複数設けられるが、1つであってもよい。サーバー装置1には端末5が接続されており、サーバー装置1に対する操作や表示等を行うことができる。
【0029】
図3には、サーバー装置1と端末装置2の構成図を示している。サーバー装置1は、端末装置2と通信するための送受信部10と、端末装置2で取得された情報を集計処理する集計処理部11と、集計した情報の分析を行う分析処理部12と、期待事項の入替処理を行う入替処理部13と、期待事項や取得された情報などを記憶する記憶部14とを有している。端末装置2は、操作及び表示を行うタッチパネル等の操作表示部30と、サーバー装置1と通信するための送受信部31と、端末装置2の制御を行う制御部32と、情報を記憶する記憶部33とを有している。
【0030】
サーバー装置1の記憶部14には、期待事項が他の情報と関連付けて記憶されている。
図4には、記憶部に記憶されている期待事項の一覧表を示している。この図に示す期待事項は、ポンプの分解点検の作業を行う現場について設定されたものである。前述のように、期待事項は現場ごとにそれぞれ設定される。
図4に示すように、期待事項には、対象者情報と重要度情報とが関連付けられている。
【0031】
対象者別に見ると、全対象者を対象とする「共通」には、4つの期待事項が関連付けられている。「作業班長」には7つ、主作業者には5つ、補助者には4つの期待事項がそれぞれ関連付けられている。
【0032】
また、各期待事項には、重要度情報として「A」、「B」、「C」のいずれかが関連付けられている。重要度Aは重要度が最も高く、次いで重要度B、重要度Cは最も重要度が低い。重要度Aは、安全上重要であり、作業を止めて直ちに是正させるものである。重要度Bは、安全・品質上の重点項目であり、指導可能なタイミングで指導を行うものである。重要度Cは、その場で指導しないが、事後指導が必要なものである。重要度A、重要度B、重要度Cは、概ね同数となるように設定される。
【0033】
期待事項とこれに関連付けられた対象者情報及び重要者情報は、サーバー装置1の記憶部14に記憶されており、送受信部10を介して現場で使用される端末装置2に対して送信される。端末装置2は、記憶部33に受信した情報を記憶しておく。
【0034】
オブザベーション時には、端末装置2の操作表示部30に期待事項を表示し、各期待事項に対応して評価を入力する領域を併せて表示する。入力領域には、「優」、「良」、「未達」の各評価に対応してラジオボタン等を配置するのが好ましい。
【0035】
観察者は、端末装置2の操作表示部30を操作して、各期待事項に対する評価を入力する。入力された評価の情報は、端末装置2の記憶部33に記憶される。全ての期待事項について評価が入力されたら、その後、端末装置2は送受信部31からサーバー装置1に対して評価の情報を送信する。
【0036】
評価の情報を受信したサーバー装置1は、その情報を記憶部14に記憶すると共に、結果について集計を行う。
図5には、評価及び集計の結果の一覧表を示している。本図において左端の番号は、
図4の番号と対応している。
図5の結果は、オブザベーションを40回繰り返した後の評価の積算値を示している。例えば、5番の期待事項については、「優」の評価が3回観察され、「良」の評価が31回観察され、「未達」の評価が6回観察されている。
【0037】
サーバー装置1の集計処理部11は、端末装置2からの評価の情報を、記憶部14に記憶されている情報に積算し、さらに積算した情報からコンプライアンス率とエクセレンス率を算出する。コンプライアンス率は、各期待事項について、「優」の評価の数+「良」の評価の数を実施回数で割ることにより算出される。また、エクセレンス率は、各期待事項について、「優」の評価の数を実施回数で割ることにより算出される。
図5には、算出されたコンプライアンス率とエクセレンス率について示している。これらに加えて、集計処理部11は、各期待事項について、コンプライアンス率とエクセレンス率の平均値である全実施率を算出する。
【0038】
サーバー装置1の分析処理部12は、算出されたコンプライアンス率とエクセレンス率をパターン分析結果として出力する。コンプライアンス率やエクセレンス率は、期待事項ごとに出力することができる。また、対象者ごとや重要度ごとの平均値として出力することもできる。さらに、直近のオブザベーションにおけるコンプライアンス率やエクセレンス率を出力することもできるし、一定期間における評価の積算値におけるコンプライアンス率やエクセレンス率を出力することもできる。出力したパターン分析結果は、サーバー装置1に接続された端末5で表示することができる。
【0039】
分析処理部12は、コンプライアンス率とエクセレンス率について、所定期間ごと、本実施形態では四半期ごとの平均値を算出し、トレンド分析結果として出力する。
図6には、コンプライアンス率とエクセレンス率の四半期ごとの推移を表す表及びグラフを示している。コンプライアンス率は、全体の平均値と、重要度Aの期待事項についての平均値とを示している。重要度Aの期待事項は、少なくともコンプライアンス率において100%を達成することが求められるため、その時間推移を確認することが重要である。
図6に示す表やグラフは、サーバー装置1の端末5において表示させることができる。また、端末5に情報を送信し、表示させるようにすることもできる。
【0040】
このように、所定期間ごとのトレンド分析により、安全文化醸成の程度について、継続的に把握することができる。
【0041】
また、分析処理部12は、重要度ごと、対象者ごとにそれぞれコンプライアンス率とエクセレンス率を算出しており、任意の組み合わせで表及びグラフを表示させることができる。
図7には、コンプライアンス率の四半期ごとの推移を重要度別にまとめた表及びグラフを示している。このように、重要度ごとの時間推移を表すこともできる。
【0042】
図8には、エクセレンス率の四半期ごとの推移を対象者別にまとめた表及びグラフを示している。このように、対象者ごとの時間推移を表すこともできる。また、図には表していないが、集計処理部11で算出した全実施率を用いて分析を行うこともできる。
【0043】
このように、コンプライアンス率とエクセレンス率を期待事項ごと、重要度ごと、対象者ごとに算出していることで、これらを任意に組み合わせて評価を行うことができる。また、分析処理部12は、期待事項ごと、重要度ごと、対象者ごとのコンプライアンス率とエクセレンス率のうち、予め設定した一定値より低いコンプライアンス率またはエクセレンス率に対応する項目について、抽出して出力することもできる。抽出した項目は、端末5や端末装置2で表示することができる。
【0044】
このような分析から、現場における弱点や安全文化の劣化を発見し、
図1のS4で示す改善事項の抽出を行う。発見された弱点については、ルールがあったのか、なかったのか、あったならなぜ守れなかったのかに即して分析(簡易なぜなぜ分析)を行う。これをストーリーボードにまとめ、アクションプランを期待事項に反映する。これにより、期待事項にPDCAのサイクルが適用され、これを繰り返していくことにより、安全文化の醸成を促進することができる。
【0045】
改善事項から新たな期待事項が抽出されたら、サーバー装置1の入替処理部13により、記憶部14に記憶された期待事項の入替を行う。入替処理部13は、端末5から操作することができる。期待事項は、一定数、本実施形態では20個を維持し、新たな期待事項を追加した分、既存の期待事項は削除される。また、期待事項の設定時には、対象者の情報及び重要度の情報も併せて設定され、これらが関連付けられて記憶部14に記憶される。
【0046】
安全文化については、原子力発電運転協会(INPO)及び世界原子力発電事業者協会(WANO)の「Traits of a Healthy Nuclear Safety Culture」(Traits)によれば、以下の10の特性が挙げられている。
(1)一人ひとりの責任
(2)問いかける姿勢
(3)安全を強化するためのコミュニケーション
(4)リーダーの安全に対する価値観と行動
(5)意思決定
(6)お互いを尊重し合う職場環境
(7)継続的な学習
(8)問題の特定と解決
(9)懸念を表明できる環境
(10)仕事の計画・管理
【0047】
また、国際原子力機関(IAEA)の”INSAG”によれば、安全文化については以下の定義が挙げられている。
”INSAG4”
安全文化とは、『原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われること』が実現されている組織・個人における姿勢・特性の総体
”INSAG13”
安全文化を強化し優れた運転実績を実現するための安全マネージメントシステムを構築。この目的は、個人や組織が持つ安全に対する良好な態度と行動を強化することにより、強固な安全文化を醸成すること
【0048】
従前は、これらを職場で唱和するなどが行われていたが、十分な効果が得られるとは言い難い。これに対し、
図1で説明したマネジメントオブザベーションのフローチャートを実行することにより、上記特性や定義が繰り返し実行、あるいは醸成され、職場における安全文化の醸成がなされることとなる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態における期待事項は、特定の現場に合わせて設定された一例であり、実際の現場の作業内容、体制、状況などに応じて、適宜設定される。また、期待事項と関連付けられる対象者情報は、本実施形態のような区分けには限定されない。例えば、作業員について、元請け作業員、一次下請け作業員、二次下請け作業員のように、さらに多層的に区分されることもある。また、重要度情報についても、より細かく区分してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 サーバー装置
2 端末装置
10 送受信部
11 集計処理部
12 分析処理部
13 入替処理部
14 記憶部
30 操作表示部
31 送受信部
32 制御部
33 記憶部