(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】メンテナンス装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220401BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 305
B41J2/165 401
B41J2/17 207
(21)【出願番号】P 2018137657
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄祐
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012722(JP,A)
【文献】特開2011-056889(JP,A)
【文献】特開平09-314852(JP,A)
【文献】特開2017-077632(JP,A)
【文献】特開2016-190360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドをワイプする移動可能なワイパと、
移動する前記ワイパを受け止めることで前記ワイパを倒すワイパ倒し部と、
前記ワイパ倒し部により倒される前記ワイパに接触して前記ワイパの付着物を掻き取る掻取部材とを備え
、
前記ワイパ倒し部は、
前記ワイパの移動方向に延びる主軸と、
前記主軸に取り付けられた倒し軸とを有し、
前記ワイパとともに移動中に前記主軸が固定部材に突き当てられた後、前記主軸に対して移動する前記ワイパを前記倒し軸が受け止めることで倒すものであることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドをワイプする移動可能なワイパと、
移動する前記ワイパを受け止めることで前記ワイパを倒すワイパ倒し部と、
前記ワイパ倒し部により倒される前記ワイパに接触して前記ワイパの付着物を掻き取る掻取部材とを備え、
前記掻取部材は、前記インクジェットヘッドから排出されるインクにより洗浄されることを特徴とす
るメンテナンス装置。
【請求項3】
インクジェットヘッドをワイプする移動可能なワイパと、
移動する前記ワイパを受け止めることで前記ワイパを倒すワイパ倒し部と、
前記ワイパ倒し部により倒される前記ワイパに接触して前記ワイパの付着物を掻き取る掻取部材と、
前記インクジェットヘッドから排出されたインクを受ける移動可能なインク受け部
とを備え、
前記ワイパおよび前記掻取部材は、前記インク受け部とともに移動可能であり、
前記ワイパ倒し部は、前記インク受け部の移動に連動して前記ワイパを倒すものであることを特徴とす
るメンテナンス装置。
【請求項4】
前記ワイパ倒し部は、
前記インク受け部の移動方向に延び、前記インク受け部との間で互いに摺動可能な主軸と、
前記主軸に取り付けられた倒し軸とを有し、
前記インク受け部の移動中に前記主軸が固定部材に突き当てられた後、前記主軸に対して摺動しつつ移動する前記インク受け部とともに移動する前記ワイパを前記倒し軸が受け止めることで倒すものであることを特徴とする請求項
3に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
複数の前記インクジェットヘッドのそれぞれに対応する複数の前記ワイパと、
複数の前記ワイパのそれぞれに対応する複数の前記掻取部材とを備え、
前記ワイパ倒し部は、前記各ワイパを倒すものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のメンテナンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドからのインクの不吐出や吐出方向の異常等の吐出不良を低減するために、インクジェットヘッドのメンテナンスが行われる。インクジェットヘッドに対するメンテナンス動作の一つとして、インクジェットヘッドのノズルからインクを押し出す、いわゆるパージを行った後、ワイパでノズル面上をワイプする一連の動作が知られている。これにより、パージによりノズルから排出されてノズル面上に付着したインクとともに、吐出不良の原因となるノズル面上の塵や紙粉等の異物がワイパにより除去される。
【0003】
ここで、上述のメンテナンス動作では、ノズル面をワイプすることでワイパに異物が付着することがある。ワイパに異物が付着した状態で次回のメンテナンス動作が行われると、ワイパが異物をノズル面に付着させることで、インクの吐出不良を招くことがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、ワイパクリーナでワイパ部材をワイパスクレーパの上部の掻き取り部に押し付けた状態で、ワイパ部材を下降させ、ワイパ部材に付着したインクを掻き取ることで、ワイパ部材をクリーニングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ワイパ部材のクリーニングのためにワイパ部材を昇降させるための専用の駆動部等が必要となり、装置の大型化を招く。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、装置の大型化を抑えつつ、インクジェットヘッドにおけるインクの吐出不良を低減できるメンテナンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のメンテナンス装置は、インクジェットヘッドをワイプする移動可能なワイパと、移動する前記ワイパを受け止めることで前記ワイパを倒すワイパ倒し部と、前記ワイパ倒し部により倒される前記ワイパに接触して前記ワイパの付着物を掻き取る掻取部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のメンテナンス装置によれば、装置の大型化を抑えつつ、インクジェットヘッドにおけるインクの吐出不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の平面図である。
【
図4】
図2のA-A線に沿った部分拡大断面図である。
【
図5】
図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。
【
図6】インクジェットヘッドのメンテナンス動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】インク受け部が展開位置にあるときのメンテナンス部を示す図である。
【
図8】インク受け部が展開位置にあるときのメンテナンス部の部分拡大図である。
【
図9】展開位置からワイプ完了位置へ移動するメンテナンス部を示す図である。
【
図10】インク受け部がワイプ完了位置にあるときのメンテナンス部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置のメンテナンス部の平面図である。
図3は、
図2のA-A線に沿った断面図である。
図4は、
図2のA-A線に沿った部分拡大断面図である。
図5は、
図1に示すインクジェット印刷装置の制御ブロック図である。なお、以下の説明において、
図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。
【0014】
図1~
図5に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2と、メンテナンス部(メンテナンス装置に相当)3と、制御部4とを備える。
【0015】
印刷部2は、用紙等の印刷媒体(図示せず)に印刷を行う。印刷部2は、ヘッドユニット11と、昇降モータ12とを備える。
【0016】
ヘッドユニット11は、左右方向(副走査方向)に沿って搬送される印刷媒体にインクを吐出して画像を印刷する。ヘッドユニット11は、昇降可能に構成されている。
【0017】
ヘッドユニット11は、複数のインクジェットヘッド16を有する。本実施の形態では、ヘッドユニット11は、10個のインクジェットヘッド16を有する。10個のインクジェットヘッド16は、前後方向(主走査方向)に沿って千鳥配置されている。すなわち、ヘッドユニット11において、前後方向に沿って配列された10個のヘッドユニット11が、左右方向における位置を交互にずらして配置されている。
【0018】
インクジェットヘッド16は、前後方向に沿って配置された複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。インクジェットヘッド16の下面であるノズル面16aに、ノズルが開口している。
【0019】
昇降モータ12は、ヘッドユニット11を昇降させる。
【0020】
メンテナンス部3は、インクジェットヘッド16のメンテナンスを行う。メンテナンス部3は、インク受け部21と、複数のワイパユニット22と、複数のクリーニングブレード(掻取部材に相当)23と、ワイパ倒し部24と、フレーム25と、移動モータ26とを備える。
【0021】
インク受け部21は、メンテナンス時にインクジェットヘッド16から排出されたインクを受けるものである。インク受け部21は、上側が開口したトレイ形状を有する。具体的には、インク受け部21は、水平に設置された矩形状の底板31と、底板31の周囲に立設された周壁32とを有し、廃液であるインクが底板31上に溜まるようになっている。インク受け部21は、前後方向に水平移動可能に構成されている。
【0022】
ワイパユニット22は、インクジェットヘッド16のメンテナンス時にパージによりノズル面16aに付着したインクとともに、ノズル面16a上の塵や紙粉等の異物を除去する。ワイパユニット22は、各インクジェットヘッド16に1つずつ対応して設けられている。すなわち、本実施の形態では、10個のワイパユニット22が設けられている。ワイパユニット22は、インク受け部21の底板31上に固定されている。10個のワイパユニット22は、インクジェットヘッド16と同様に千鳥配置されている。ワイパユニット22は、ワイパ36と、取付台37と、ばね38とを備える。
【0023】
ワイパ36は、インクジェットヘッド16のノズル面16aをワイプする部材である。ワイパ36は、弾性変形可能なゴム等の材料からなり、板状に形成されている。ワイパ36は、インク受け部21とともに前後方向に移動可能である。ワイパ36は、後述するワイパ倒し部24の倒し軸42に押されると、取付台37とともに後側に倒れるようになっている。
【0024】
取付台37は、ワイパ36が取り付けられる部材である。取付台37の前側の側面に、ワイパ36が取り付けられている。取付台37は、ばね38を介して、インク受け部21の底板31上に設置されている。取付台37は、ワイパ36を介して後述するワイパ倒し部24の倒し軸42に押されると、ワイパ36とともに後側に倒れるようになっている。取付台37は、倒し軸42に押されていない状態では、各側面がインク受け部21の底板31に垂直な姿勢である垂直姿勢となっている。取付台37が垂直姿勢のとき、ワイパ36も各側面がインク受け部21の底板31に垂直な姿勢である垂直姿勢となっている。
【0025】
ばね38は、ワイパ36および取付台37が倒された状態から、ワイパ36および取付台37を垂直姿勢に復帰させるためのばね力を取付台37に付与するものである。ばね38は、例えば、ねじりコイルばねからなる。ばね38の一端はインク受け部21の底板31に固定され、他端は取付台37の後側の側面に固定されている。
【0026】
クリーニングブレード23は、ワイパ倒し部24により倒されるワイパ36に接触して、ワイパ36に付着したインクや異物等の付着物を掻き取ることで、ワイパ36をクリーニングする部材である。クリーニングブレード23は、各ワイパユニット22に1つずつ対応して設けられている。すなわち、本実施の形態では、10個のクリーニングブレード23が設けられている。各クリーニングブレード23は、それぞれに対応するワイパユニット22の後側において、ワイパ倒し部24により倒されるワイパ36に接触する位置に固定されている。クリーニングブレード23は、インク受け部21とともに前後方向に移動可能である。
【0027】
ワイパ倒し部24は、各ワイパ36をクリーニングブレード23によりクリーニングするために、各ワイパ36を倒すものである。ワイパ倒し部24は、主軸41と、複数の倒し軸42と、ばね43とを備える。
【0028】
主軸41は、倒し軸42を支持する。主軸41は、前後方向に延びる長尺状に形成されている。主軸41は、左右方向において、インク受け部21の中央部に配置されている。主軸41は、インク受け部21の周壁32のうちの前側の壁、後側の壁にそれぞれ形成された貫通穴32a,32bに挿通されており、主軸41の前端、後端は、それぞれインク受け部21の前方、後方に突出している。主軸41は、インク受け部21との間で互いに前後方向に摺動可能になっている。主軸41は、インク受け部21の周壁32のうちの後側の壁との間でばね43を保持するストッパ46を有する。
【0029】
倒し軸42は、ワイパ36および取付台37を倒すための部材である。倒し軸42は、各ワイパユニット22に1つずつ対応して設けられている。すなわち、本実施の形態では、10本の倒し軸42が設けられている。倒し軸42は、左右方向に延びる細長い形状に形成されている。倒し軸42は、主軸41に取り付けられている。各倒し軸42は、インク受け部21が待機位置に配置されている状態において、それぞれに対応するワイパユニット22の前側近傍に配置されている。倒し軸42は、後述するように、インク受け部21が待機位置から展開位置へ移動する際に、インク受け部21とともに移動するワイパ36および取付台37を、停止状態で受け止めることでワイパ36および取付台37を後側へ倒す。
【0030】
ここで、インク受け部21の待機位置は、インクジェット印刷装置1が待機状態にあるときのメンテナンス部3の位置であり、
図1~
図3におけるインク受け部21の位置である。インク受け部21の待機位置は、ヘッドユニット11の直下であって、主軸41の前端がフレーム25に当接していない位置である。インク受け部21の展開位置は、後述するように、待機位置より前側の位置であり、インク受け部21の周壁32のうちの前側の壁がフレーム25の後側に近接して配置される位置である。
【0031】
ばね43は、インク受け部21が展開位置へ移動した際にインク受け部21に対して後側に押し込まれた主軸41を前側へ戻すためのものである。ばね43は、主軸41のストッパ46とインク受け部21の周壁32のうちの後側の壁との間に設置されている。
【0032】
フレーム25は、インク受け部21が待機位置から展開位置へ移動するときに、主軸41の前端が突き当てられる固定部材である。フレーム25は、インクジェット印刷装置1内の所定位置に設置されている。
【0033】
移動モータ26は、インク受け部21を前後方向に移動させる。
【0034】
制御部4は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0035】
次に、インクジェット印刷装置1におけるインクジェットヘッド16のメンテナンス動作について説明する。
【0036】
インクジェットヘッド16のメンテナンス動作は、例えば、インクジェット印刷装置1の電源投入時に行われる。メンテナンス動作の開始前は、インク受け部21は、前述の待機位置に配置されている。また、ヘッドユニット11は、上方位置に配置されている。ヘッドユニット11の上方位置は、
図1、
図3におけるヘッドユニット11の位置であり、後述するメンテナンス位置より高い位置である。ヘッドユニット11が上方位置にあるとき、ノズル面16aがワイパ36の上端よりも高い位置にある。
【0037】
図6は、インクジェットヘッド16のメンテナンス動作を説明するためのフローチャートである。
【0038】
図6のステップS1において、制御部4は、パージによりインクジェットヘッド16のノズルからインクを排出させる。これにより、インクジェットヘッド16のノズルから排出されたインクがノズル面16aに付着した状態となる。
【0039】
次いで、ステップS2において、制御部4は、インク受け部21を待機位置から展開位置へ移動させる。
【0040】
インク受け部21の展開位置は、
図7に示すように、待機位置より前側の位置であり、インク受け部21の周壁32のうちの前側の壁がフレーム25の後側に近接して配置される位置である。
【0041】
インク受け部21が待機位置から展開位置へ向けて前方向へ移動する際、その移動中において、主軸41の前端がフレーム25に到達して突き当たる。主軸41の前端がフレーム25に突き当たると、主軸41はそこで停止し、その位置より前側へは移動しない。これに対し、インク受け部21が主軸41に対して摺動しつつさらに前方向へ移動することで、主軸41はインク受け部21に対して相対的に後側へ押し込まれ、ばね43が縮む。
【0042】
また、主軸41が停止することで倒し軸42も停止するのに対し、インク受け部21とともにワイパユニット22が前方向へ移動することで、
図7、
図8に示すように、ワイパ36および取付台37が倒し軸42に押されて後側へ倒される。すなわち、前方向へ移動するワイパ36および取付台37を停止状態の倒し軸42が受け止めることで、ワイパ36および取付台37を後側へ倒す。このようにして、ワイパ倒し部24が、インク受け部21の移動に連動して各ワイパ36を倒す。
【0043】
このワイパ36が倒れる際、クリーニングブレード23にワイパ36が接触して擦られる。これにより、クリーニングブレード23が、印刷中や待機中にワイパ36に付着した埃等の付着物を掻き取ることで、ワイパ36がクリーニングされる。
【0044】
図6に戻り、ステップS3において、制御部4は、ヘッドユニット11を上方位置からメンテナンス位置へ移動させる。ここで、ヘッドユニット11のメンテナンス位置は、インクジェットヘッド16のノズル面16aがワイパ36によりワイプされる際の位置である。ヘッドユニット11がメンテナンス位置にあるとき、ワイパ36の上端がノズル面16aよりも高い位置にある。
【0045】
次いで、ステップS4において、制御部4は、インク受け部21を展開位置からワイプ完了位置へ移動させる。
【0046】
ここで、インク受け部21のワイプ完了位置は、ワイパ36がインク受け部21とともに移動しつつノズル面16aをワイプするワイプ動作を終えるとインク受け部21が停止する位置である。インク受け部21のワイプ完了位置は、待機位置より後側の位置であり、ワイパ36がそれぞれに対応するインクジェットヘッド16の後側近傍に配置される位置に設定されている(
図10参照)。
【0047】
インク受け部21が展開位置からワイプ完了位置へ向けて後方向へ移動する際、ばね43のばね力により、主軸41がインク受け部21に対して相対的に前側へ移動して元の位置に戻る。これにより、倒し軸42もインク受け部21に対して相対的に前側へ移動して元の位置に戻ることで、ばね38のばね力により、
図9に示すように、ワイパ36および取付台37が垂直姿勢に復帰する。各ワイパ36がそれぞれに対応するインクジェットヘッド16に到達する前に、各ワイパ36および各取付台37は垂直姿勢に復帰する。
【0048】
ワイパ36および取付台37が垂直姿勢に復帰した後、ワイパ36がインクジェットヘッド16に到達すると、ワイパ36は、インクジェットヘッド16に押圧されて弾性変形する。そして、インク受け部21の移動とともに、ワイパ36の上端部がノズル面16aをワイプする。
【0049】
これにより、ノズル面16a上に付着したインクが除去され、それとともにノズル面16a上の異物が除去されることで、ノズル面16aがクリーニングされる。ワイパ36によりノズル面16aから除去されたインクおよび異物は、インク受け部21へ流れる。
【0050】
各ワイパ36がそれぞれに対応するインクジェットヘッド16のワイプを終えると、
図10に示すように、インク受け部21がワイプ完了位置で停止する。
【0051】
次いで、ステップS5において、制御部4は、ヘッドユニット11をメンテナンス位置から上方位置へ移動させる。
【0052】
次いで、ステップS6において、制御部4は、インク受け部21をワイプ完了位置から展開位置へ移動させる。これにより、上述したステップS2と同様に、ワイパ36がクリーニングブレード23によりクリーニングされる。この結果、ワイプ動作によりワイパ36に付着したインクや異物等の付着物が除去される。
【0053】
次いで、ステップS7において、制御部4は、インク受け部21を展開位置から待機位置へ移動させる。これにより、インクジェットヘッド16のメンテナンス動作が終了となる。
【0054】
次に、クリーニングブレード23の洗浄について説明する。
【0055】
インクジェット印刷装置1では、インクジェットヘッド16から排出されるインクにより、クリーニングブレード23が洗浄される。
【0056】
具体的には、上述したインクジェットヘッド16のメンテナンス動作におけるパージとして強パージが行われた場合に、インクジェットヘッド16から排出され、ノズル面16aから落下したインクが、クリーニングブレード23にかかる。これにより、クリーニングブレード23に付着した異物等の付着物がインクにより流されることで、クリーニングブレード23が洗浄される。この際、インクジェットヘッド16から排出されたインクがクリーニングブレード23にかかるような位置に、インク受け部21が配置される。
【0057】
ここで、強パージは、ノズル内の増粘インク等が押し出されやすくなるように、インクジェットヘッド16に加えるパージ圧を通常のパージよりも高くして行うパージである。強パージでは、通常のパージよりも多くのインクが排出され、その一部がノズル面16aから落下する。強パージは、例えば、ユーザにより強パージが設定された場合や、所定回数ごとのメンテナンス動作において行われる。
【0058】
なお、上述のようなインクジェットヘッド16のメンテナンス動作において強パージを行うことによるクリーニングブレード23の洗浄とは別に、独立した動作として、強パージによりクリーニングブレード23を洗浄する動作を行ってもよい。
【0059】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、インク受け部21とともに移動するワイパ36を停止状態のワイパ倒し部24が倒し軸42により受け止めることで、ワイパ36を倒す。すなわち、インク受け部21の移動に連動してワイパ倒し部24がワイパ36を倒す。そして、クリーニングブレード23が、ワイパ倒し部24により倒されるワイパ36に接触して、ワイパ36の付着物を掻き取ることで、ワイパ36をクリーニングする。
【0060】
これにより、ワイパ36の付着物を除去することができるので、メンテナンス動作においてワイパ36からインクジェットヘッド16に異物が移ることでインクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良が生じることを低減できる。また、ワイパ36のクリーニングのための専用のアクチュエータを設ける必要がないため、装置の大型化が抑えられる。
【0061】
したがって、インクジェット印刷装置1によれば、装置の大型化を抑えつつ、インクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良を低減できる。
【0062】
また、インクジェット印刷装置1では、ワイパ倒し部24は、インク受け部21の移動中に主軸41がフレーム25に突き当てられた後、主軸41に対して摺動しつつ移動するインク受け部21とともに移動するワイパ36を倒し軸42が受け止めることで倒す。これにより、専用のアクチュエータを使用しない簡素な機構により、ワイパ36を倒してクリーニングブレード23に擦られるようにすることで、ワイパ36のクリーニングを実現できる。
【0063】
また、インクジェット印刷装置1は、複数のインクジェットヘッド16のそれぞれに対応する複数のワイパ36と、複数のワイパ36のそれぞれに対応する複数のクリーニングブレード23とを備える。そして、インク受け部21とともに移動する各ワイパ36をワイパ倒し部24が倒すことで、各ワイパ36がそれぞれに対応するクリーニングブレード23によりクリーニングされる。
【0064】
ここで、本実施の形態とは異なり、1つのワイパが複数のインクジェットヘッドをワイプする構成の場合、インクジェットヘッドのワイプによりワイパに付着した異物が、他のインクジェットヘッドのワイプ時にそのインクジェットヘッドに付着することがある。これを回避するために1つのインクジェットヘッドをワイプするごとにワイパのクリーニングを行うようにすると、メンテナンス動作に長時間を要する。
【0065】
これに対し、本実施の形態のインクジェット印刷装置1では、インクジェットヘッド16ごとに対応するワイパ36でワイプできるので、1つのインクジェットヘッド16をワイプするごとにワイパ36のクリーニングを行うことなく、インクジェットヘッド16のワイプによりワイパ36に付着した異物が他のインクジェットヘッド16に付着することを防止できる。これにより、メンテナンス動作に要する時間の長時間化を抑えつつ、インクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良を低減できる。
【0066】
そして、ワイパ倒し部24が各ワイパ36を倒すことで、各ワイパ36を各クリーニングブレード23によりクリーニングするので、各ワイパ36のクリーニングのための専用のアクチュエータを設ける必要がないため、装置の大型化が抑えられる。
【0067】
したがって、インクジェット印刷装置1によれば、複数のインクジェットヘッド16を備える構成において、装置の大型化を抑えるとともに、メンテナンス動作に要する時間の長時間化を抑えつつ、インクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良を低減できる。
【0068】
また、インクジェット印刷装置1では、インクジェットヘッド16から排出されるインクにより、クリーニングブレード23が洗浄される。これにより、専用の洗浄機構を設けることなく、クリーニングブレード23の付着物を除去できる。クリーニングブレード23の付着物を除去することで、クリーニングブレード23からワイパ36に異物が移り、さらにワイパ36からインクジェットヘッド16に異物が移ることでインクの吐出不良が生じることを抑制できる。
【0069】
なお、上述した実施の形態では、複数のインクジェットヘッド16が主走査方向に沿って千鳥配置された構成を示したが、インクジェットヘッドが、主走査方向における印字領域を覆う単一のものであってもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態では、複数のインクジェットヘッド16のそれぞれに対応する複数のワイパ36を設けた構成を示したが、1つのワイパ36が複数のインクジェットヘッド16をワイプする構成であってもよい。このような構成でも、ワイパ36をクリーニングブレード23によりクリーニングすることで、ワイパ36からインクジェットヘッド16に異物が移ってインクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良が生じることを低減できる。また、ワイパ倒し部24によりワイパ36を倒してクリーニングブレード23によりワイパ36をクリーニングすることで、ワイパ36のクリーニングのための専用のアクチュエータを設ける必要がないため、装置の大型化が抑えられる。したがって、装置の大型化を抑えつつ、インクジェットヘッド16におけるインクの吐出不良を低減できる。
【0071】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0072】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0073】
(付記1)
インクジェットヘッドをワイプする移動可能なワイパと、
移動する前記ワイパを受け止めることで前記ワイパを倒すワイパ倒し部と、
前記ワイパ倒し部により倒される前記ワイパに接触して前記ワイパの付着物を掻き取る掻取部材と
を備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【0074】
(付記2)
複数の前記インクジェットヘッドのそれぞれに対応する複数の前記ワイパと、
複数の前記ワイパのそれぞれに対応する複数の前記掻取部材とを備え、
前記ワイパ倒し部は、前記各ワイパを倒すものであることを特徴とする付記1に記載のメンテナンス装置。
【0075】
(付記3)
前記掻取部材は、前記インクジェットヘッドから排出されるインクにより洗浄されることを特徴とする付記1または2に記載のメンテナンス装置。
【0076】
(付記4)
前記インクジェットヘッドから排出されたインクを受ける移動可能なインク受け部をさらに備え、
前記ワイパおよび前記掻取部材は、前記インク受け部とともに移動可能であり、
前記ワイパ倒し部は、前記インク受け部の移動に連動して前記ワイパを倒すものであることを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のメンテナンス装置。
【0077】
(付記5)
前記ワイパ倒し部は、
前記インク受け部の移動方向に延び、前記インク受け部との間で互いに摺動可能な主軸と、
前記主軸に取り付けられた倒し軸とを有し、
前記インク受け部の移動中に前記主軸が固定部材に突き当てられた後、前記主軸に対して摺動しつつ移動する前記インク受け部とともに移動する前記ワイパを前記倒し軸が受け止めることで倒すものであることを特徴とする付記4に記載のメンテナンス装置。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェット印刷装置
2 印刷部
3 メンテナンス部
4 制御部
11 ヘッドユニット
12 昇降モータ
16 インクジェットヘッド
16a ノズル面
21 インク受け部
22 ワイパユニット
23 クリーニングブレード
24 ワイパ倒し部
25 フレーム
26 移動モータ
36 ワイパ
37 取付台
38,43 ばね
41 主軸
42 倒し軸