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特許7050655セラミック材料またはガラス質材料の本体内の成分の濃度を測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】セラミック材料またはガラス質材料の本体内の成分の濃度を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/02 20060101AFI20220401BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01N22/02 B
G01N22/00 V
G01N22/00 N
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018221406
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2019101036
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】17204532.0
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17208482.4
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート フリードリッヒ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0031006(US,A1)
【文献】国際公開第2007/145143(WO,A1)
【文献】特開2003-028843(JP,A)
【文献】特開2016-188777(JP,A)
【文献】特開2004-233305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料またはガラス質材料の本体内の成分の濃度を測定する方法であって、前記セラミック材料またはガラス質材料の本体を測定方向に貫通する測定波の光路長または信号伝搬時間を測定するステップを含む方法において、20~300ギガヘルツの周波数範囲を含む測定波として変調されたギガヘルツ放射を用い、前記本体が、高シリカ含有ガラスからなり、前記本体の成分には、ヒドロキシル基、水素、金属酸化物およびハロゲンのうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記本体が、石英からなることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記成分がフッ素であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記ギガヘルツ放射を周波数変調することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、異なる測定方向からギガヘルツ放射により貫通され、ここで、各測定方向におけるそれぞれの光路長またはそれぞれの信号伝搬時間が決定されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、前記ギガヘルツ放射用の少なくとも1つのトランスミッタに対して固定して位置決めされ、ここで、前記トランスミッタは、前記セラミック材料またはガラス質材料の本体の周りを移動して、前記成分の濃度の3次元プロファイルを決定することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体の表面とトランスミッタまたはレシーバとの間の間隔が、前記ギガヘルツ放射の主放射方向に位置する前記本体の寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体の表面とトランスミッタまたはレシーバとの間の間隔が、前記ギガヘルツ放射の主放射方向に位置する前記本体の寸法よりも小さいことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ギガヘルツ放射を周波数変調することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記ギガヘルツ放射を周波数変調することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、異なる測定方向からギガヘルツ放射により貫通され、ここで、各測定方向におけるそれぞれの光路長またはそれぞれの信号伝搬時間が決定されることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、異なる測定方向からギガヘルツ放射により貫通され、ここで、各測定方向におけるそれぞれの光路長またはそれぞれの信号伝搬時間が決定されることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項13】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、前記ギガヘルツ放射用の少なくとも1つのトランスミッタに対して固定して位置決めされ、ここで、前記トランスミッタは、前記セラミック材料またはガラス質材料の本体の周りを移動して、前記成分の濃度の3次元プロファイルを決定することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック材料またはガラス質材料の本体が、前記ギガヘルツ放射用の少なくとも1つのトランスミッタに対して固定して位置決めされ、ここで、前記トランスミッタは、前記セラミック材料またはガラス質材料の本体の周りを移動して、前記成分の濃度の3次元プロファイルを決定することを特徴とする、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、セラミック材料またはガラス質材料の本体内の成分の濃度を測定する方法であって、セラミック材料またはガラス質材料の本体を測定方向に貫通する測定波の光路長または信号伝搬時間を測定するステップを含む方法に関する。
【0002】
セラミック材料またはガラス質材料の本体の化学的性質は、その使用目的に依存する。前記材料は、例えば部分的に、または完全に、ガラス、特に石英ガラスからなる。ここで、石英ガラスとは、少なくとも85%のSiO含量を有するドープされた、またはドープされていないシリカガラスを意味する。ガラスは、多孔質、透明、不透明、有色であり、特に黒色であってもよい。または本体は、部分的に、または完全に、セラミック、特に一成分セラミック、例えばAlN、BN、SiまたはSiCからなる。
【0003】
セラミック材料またはガラス質材料の本体の幾何学的形状もまた、使用目的に依存する。前記材料は、例えば、光ファイバの製造、ランプ作製、化学装置構造または半導体作製における構成部品または半成品として用いられ、例えば、チューブ、中実シリンダ、プレート、フランジ、リング、ブロック、ピストン、カバープレート、リフレクタ、リフレクタキャリア、ミラー基板ブランク、レンズキャリアトレイ、ベル、バブルキャップ、保護シールド、リアクタおよびデバイスの形態で存在する。
【0004】
材料の物理的および化学的特性は、望ましくない不純物および意図的に添加されたドーパントの影響を受ける。このような不純物およびドーパントは、以下では「添加成分」または「成分(ingredients)」とも呼ばれる。石英ガラス中の添加成分は、例えば、ヒドロキシル基(OH)、塩素(Cl)、フッ素(F)および金属元素(Ge、B、P、Al、Ti、Feなど)である。ヒドロキシル基は、例えば、赤外線領域で吸収帯を生成するが、UV放射に対する石英ガラスの耐放射性を改善することもできる。最大8質量%の二酸化チタンによる石英ガラスのドーピングは、熱膨張係数を低下させる。
【0005】
このようなガラス質材料の特に重要な特性は、その屈折率およびそれらの空間分布である。例えば、ファイバプリフォームの半径方向屈折率プロファイルは、そこから引き出される光ファイバの導波路特性を決定する。多くの添加成分が屈折率に影響を及ぼす。フッ素は、石英ガラスの屈折率を低下させるドーパントである。
【0006】
先行技術
ガラス材料を特徴付けるために、特にセラミック材料またはガラス質材料の本体内の添加成分の濃度を決定するために、例えば赤外分光法またはラマン分光法などの分光分析法が頻繁に用いられる。この場合、試験サンプル中または試験サンプル上の電磁測定波の吸収または散乱が評価される。特にラマン測定は、調整に相当な手間がかかる。しかしながら、一般に、ある一定の大きさの試験サンプルをセラミック材料またはガラス質材料の本体から採取し、煩雑な手法で調製しなければならないことは特に不利である。
【0007】
この欠点を回避するのが、音波または超音波を用いた非破壊測定法である。この場合、成分の濃度の決定は、セラミック材料またはガラス質材料の本体を少なくとも部分的に貫通する音波と、セラミック材料またはガラス質材料の本体を貫通しないか、またはより短い距離で貫通する他の音波との重なりを評価することに基づく。このような測定方法は、Wei,Ting-Cunの論文「Acoustic properties of silica glass doped with fluorine(フッ素をドープしたシリカガラスの音響特性)」,Journal of Non-Crystalline Solids 321(2003)、第126頁~第133頁に記載されている。
【0008】
これに関して、フッ素濃度の異なる石英ガラスサンプルを超音波測定(LSAW、漏れ弾性表面波)によって調べたところ、石英ガラス体内の超音波の伝搬速度はフッ素濃度の増加に伴って直線的に減少することが示された。したがって、超音波石英ガラス体の伝搬速度を測定または計算することによりフッ素濃度の測定が可能になる。超音波の伝搬速度は、試験サンプルを通した音波伝達の有無にかかわらず、パルストーンバースト信号の干渉に基づいて決定される。超音波トランスデューサからの超音波を測定本体にカップリングするために、水がカップリング媒体として使用される。
【0009】
米国特許出願公開第2017/031006号明細書(US2017/031006A1)には、タービンブレードおよび金属製またはセラミック製の他の構成部品に対する損傷、材料変化または汚染を検出するための光学的方法が記載されている。この目的のために、反射測定ビームの位相変化および/または振幅変化が、「ベクトルネットワーク解析」によって、ワークピースにより影響されない基準ビームに対して評価される。測定ビームの周波数範囲は、無線周波数範囲、RF周波数範囲またはマイクロ波周波数範囲にある。
【0010】
技術課題の設定
原則的には、超音波測定により、セラミック材料またはガラス質材料の大容積の本体も非破壊測定することができる。しかしながら、超音波をカップリングするためには、煩雑なカップリング技術が必要であるか、または少なくとも1種のカップリング媒体、例えばガラス体またはセラミック体を取り囲む水浴が必要である。これは、製造プロセス中の測定を妨げるか、または少なくとも測定を困難にする。
【0011】
したがって、本発明の課題は、対象となる物体の製造プロセスにおける測定にも適した、セラミック材料またはガラス質材料の本体内の成分の濃度を測定するための非破壊的方法を提供することである。
【0012】
発明の概要
この課題は、本発明によれば、冒頭に記載した方法から出発して、20~300ギガヘルツの周波数範囲を含む測定波として変調されたギガヘルツ放射を用いることによって解決される。
【0013】
本発明に従ったギガヘルツ放射は、20~300ギガヘルツ(GHz)の周波数範囲を含む。この放射は、セラミック材料またはガラス質材料の本体を、その化学的性質およびその内部構造、例えば多孔度、密度および色とは無関係に、材料特性の変化を引き起こさずに貫通することができる。しかしながら、放射そのものはガラスの変化を受け、この変化は、材料により影響されない基準ビームに対する測定ビームの伝搬時間の変化(Laufzeitveraenderung)として決定することができる。伝搬時間の変化は、例えば、材料が磁気光学的、電気光学的、熱光学的または化学光学的特性を有し、それによって入射ギガヘルツ放射を変化させることができ、伝搬時間の変化として現れることによって判明する。伝搬時間の変化は、特に材料の化学組成に依存することから、各成分の濃度を、その他の点では材料の構造および組成を一定にして決定できることが分かった。
【0014】
したがって、本発明による方法では、測定波の伝搬時間の差が、超音波測定と同様に決定されるが、それとは対照的に、カップリング媒体は不要である。これにより、製造プロセス中にもセラミック材料またはガラス質材料の本体の非破壊測定が可能になる。
【0015】
変調されたギガヘルツ放射を用いることによって、サンプル調製のための手間が抑えられ、サンプル採取の必要性がなくなる。したがって、冒頭に記載した分光学的分析方法と比較して、測定および評価の手間は小さい。
【0016】
したがって、本発明による方法は、公知の超音波測定からの伝搬時間の差の評価と組み合わせられるが、分光学的分析方法の場合のように音波ではなく電磁放射を用いる。したがって、本発明による方法は、公知の方法のそれぞれの欠点、特にサンプル調製およびカップリング媒体の使用の必要性に関する欠点を回避するものである。
【0017】
本発明による方法では、一般にビーム光学系を通過するギガヘルツ放射の送信用のトランスミッタまたは複数のトランスミッタが設けられ、それによってギガヘルツ放射がセラミック材料またはガラス質材料の本体に向けられる。このギガヘルツ放射は、セラミック材料またはガラス質材料の本体および/または放射方向でトランスミッタの反対側に配置されたリフレクタにより反射され、反射された放射は、少なくとも1つのレシーバにより受信される。反射された放射を測定する代わりに、トランスミッタ-レシーバの対が、測定対象のセラミック材料またはガラス質材料の本体に対向してもよく、その場合は、本体から発信されたギガヘルツ放射が直接測定される。
【0018】
伝搬時間は、時間的に「局在化させる」ことができる放射パルスを使用することによって、または変調によって連続波放射(CW放射)にタイムスタンプを付すことによって測定することができる。レシーバで受信された測定信号の時点は、伝搬時間を決定する評価装置に伝送される。セラミック材料またはガラス質材料の測定対象の本体を通過するギガヘルツ放射の伝搬時間は、本体を通過しない放射の伝搬時間と比較される。このようにして決定された、セラミック材料またはガラス質材料の本体の材料によって引き起こされた伝搬時間の変化は、成分の濃度の尺度である。したがって、伝搬時間の比較により、成分の濃度が判明する。変調によって、伝搬時間を測定するためにCW放射にマーキングが付される。
【0019】
本体を通過しないギガヘルツ放射は、例えば、本体上で反射される放射またはビーム経路においてセラミック材料またはガラス質材料の本体が位置決めされていないギガヘルツ放射または伝搬速度が公知であるギガヘルツ放射であってよく、そのため自由伝搬距離および充填媒体(例えば空気)の長さを認識さえしていれば、新たに測定せずとも伝搬時間を決定することができる。
【0020】
したがって、本方法のこの変形例では、トランスミッタと対向するレシーバまたはトランスミッタユニットとレシーバユニットとリフレクタとの間の距離は公知であることから、(空気中の)ギガヘルツ放射の公知の伝搬速度に基づいて、セラミック材料またはガラス質材料の本体の材料によって引き起こされた伝搬速度の変化を決定することができる。
【0021】
トランスミッタとレシーバは、まとめて1つの構成部品にすることができ、この場合、実質的に同じ場所に配置することができることから、それらはセラミック材料またはガラス質材料の本体に対して常に同じ間隔を有し、伝搬時間の測定が簡素化される。そのような構成部品は、「トランシーバ」と呼ばれる。
【0022】
トランスミッタとレシーバ(トランシーバ)の位置が等しい反射物体上の電磁放射の影響を受けていない後方反射の場合を、図1に概略的に示す。トランシーバTのトランスミッタユニットから放出された電磁放射は、トランシーバTのレシーバユニットにより再び検出されるまで、反射物体Oに通じる自由空気距離を2回通過する。この場合、伝搬時間tと反射物体Oまでの距離Rとの間には、一般的に以下の関係が適用される:
R=c×t/2 (1)
式中、
R=トランシーバとリフレクタとの間の距離
=空気中の光速[m/s]
t=伝搬時間[秒]
【0023】
図2は、電磁放射線の伝搬速度を変化させる試験サンプルPがビーム経路内に位置する場合を概略的に示す。式(1)で使用される伝搬時間tに対して、伝搬時間の変化|Δt|がもたらされ、そこから式(2)に従ってサンプル中の電磁放射の伝搬速度cを算出することができる。
=R2/(R2/c+Δt) (2)
式中、
R1、R3=空気中の距離
R2=サンプル寸法
=サンプル中の放射伝搬速度
|Δt|=伝搬時間の変化
【0024】
伝搬速度cは、サンプルの材料の尺度であり、特に化学組成および密度に依存するその材料定数の尺度である。
【0025】
放射光学系は、例えば、少なくとも1つのトランスミッタにより送信されたギガヘルツ放射から、測定対象のセラミック材料またはガラス質材料の本体の中心軸上に集束する1つ以上のレンズを含む。それによって、測定装置または放射光学系をトラッキングする必要なく、異なる横寸法を有するセラミック材料またはガラス質材料の本体を測定することができる。
【0026】
その代わりに、放射光学系はコリメータを含んでもよく、ここで、トランスミッタにより放出されたギガヘルツ放射は、平行ビームとしてセラミック材料またはガラス質材料の本体に通して案内される。これには、ビーム方向に対して垂直なセラミック材料またはガラス質材料の本体の位置の変化が測定結果にほとんど影響しないという利点がある。
【0027】
本発明による方法は、好ましくは、高シリカ含有ガラス製、特に石英ガラス製の本体を測定するために用いることができ、ここで、成分には、例えば、ヒドロキシル基、水素、金属酸化物および/またはハロゲンが含まれ、成分は、有利にはフッ素である。
【0028】
この場合、石英ガラス体は、特に、光ファイバ用のプリフォームまたは他の高純度の合成石英ガラス製品を製造するための半製品である、多孔質の軽度に圧縮されたSiO煤のいわゆる「スート体」として存在してもよい。本発明による方法によって、可視光または赤外線を吸収するセラミック材料またはガラス質材料の本体も測定することができる。その理由は、ギガヘルツ放射が、測定のために十分に大きな層厚さでそのような本体を貫通することができるからである。
【0029】
これは、不透明な有孔ガラス、特に不透明な石英ガラス、および低い熱膨張係数を有するミラー基板ブランクの製造に使用されるチタン含有ガラスに等しく適用される。
【0030】
ギガヘルツ放射の変調は、例えば、位相および/または振幅および/または周波数および/または有効波長および/または波面の変調によって行われる。しかしながら、特に好ましくは、ギガヘルツ放射は、周期的に周波数変調される。例えば、好ましくは、周波数変調された連続波レーダ、いわゆるFMCW放射が用いられる。
【0031】
周期的な周波数変調は、1つの周波数バーストまたは複数の周波数バーストを含むことができる。この場合、所定の周波数範囲を1回以上横切ることができる。
【0032】
有利には、セラミック材料またはガラス質材料の本体は、異なる測定方向からギガヘルツ放射により貫通され、ここで、各測定方向におけるそれぞれの光路長またはそれぞれの信号伝搬時間が決定される。
【0033】
この場合、セラミック材料またはガラス質材料の本体は、1つまたは複数のレシーバにより受信されて電気信号に変換されるギガヘルツ放射を伴う1つまたは複数のトランスミッタにより異なる方向で貫通され、ここで、ギガヘルツ放射の伝搬時間が測定され、このギガヘルツ放射の伝搬時間から成分の濃度の空間分布が得られる。
【0034】
例えば、トランスミッタとレシーバは、互いに対向して配置されてもよい。複数のトランスミッタとレシーバが、セラミック材料またはガラス質材料の本体の周囲の周りに対になって配置されてもよい。トランスミッタとレシーバとからの各対は、トランシーバとして形成されてもよく、ここで、複数のトランシーバは、セラミック材料またはガラス質材料の測定対象の本体の周囲に分布される。
【0035】
セラミック材料またはガラス質材料の本体は、レシーバ-トランスミッタの対に対してその中心軸に沿って回転することができる。しかしながら、この方法の好ましい変形例では、セラミック材料またはガラス質材料の本体は、ギガヘルツ放射用の少なくとも1つのトランスミッタに対して固定して位置決めされ、ここで、トランスミッタは、セラミック材料またはガラス質材料の本体の周りを移動して、成分の濃度の3次元プロファイルを決定する。
【0036】
しかしながら、代替的に、かつ特に好ましくは、少なくとも1対のレシーバとトランスミッタが、セラミック材料またはガラス質材料の本体の長手方向軸または仮想中心軸の周りを測定プロセス中に回転される。トランスミッタとレシーバの対はまたトランシーバであってもよい。セラミック材料またはガラス質材料の測定対象の本体の周りを回転させることによって、いくつかのトランスミッタとレシーバの対をシミュレートすることができる。このようにして、成分の濃度測定を空間分解的に行うことができる。
【0037】
セラミック材料またはガラス質材料の本体の周りの仮想中心軸の周りのトランスミッタの移動には、一般に放射光学系も続く。ここで、リフレクタは、セラミック材料またはガラス質材料の本体を完全に囲むように形成されてもよく、そのため、この場合、回転軸の周りのリフレクタの動きは不要である。
【0038】
測定結果を妨害する可能性のある多重反射を避けるために、セラミック材料またはガラス質材料の本体の表面とトランスミッタまたはレシーバとの間の間隔は、有利には、ギガヘルツ放射の主放射方向に位置する本体の寸法よりも大きいか、または小さい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ギガヘルツ放射用のトランシーバとリフレクタとの間の距離を決定するためのドラフトを示す図である。
図2】電磁放射のビーム経路内に試験サンプルを有する図1のドラフトを示す図である。
図3】連続波レーダ放射によりシリンダ状の本体を空間的に測定するための装置を概略的に示す図であって、すなわち、(b)では長手方向図、(a)では正面図および(c)では背面図を示す図である。
図4】連続波レーダ放射によるシリンダ状の石英ガラス本体の測定に基づいて決定された80GHzの周波数の電磁放射における屈折率プロファイルを示すグラフである。
図5】80GHzの周波数の電磁放射における平均屈折率の関数としての、中空シリンダの壁厚にわたる石英ガラス体内の平均フッ素濃度を示すグラフである。
【0040】
実施例
以下で、本発明を、実施例および図面を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
本発明による方法は、セラミック材料またはガラス質材料の本体、特にシリンダ状の光学物品、例えば石英ガラス製の光ファイバ用のプリフォームなどにおける成分(添加成分)の濃度を決定するのに用いられる。
【0042】
図3は、本発明による方法を実施するのに適した装置の実施形態を概略的に示す。ここで、セラミック材料またはガラス質材料の本体は、石英ガラス製の中空シリンダ1の形態で存在する。これは、その長さにわたって均一に分布された複数のサンプル支持体2の上に載置され、各サンプル支持体2は、昇降装置3を備えており、これによってサンプル支持体2は、方向矢印11で示されるように、垂直上向きに支持位置および垂直下向きに解放位置に移動可能である。
【0043】
中空シリンダ1の上方には、環状の構成部品として設計された市販のレーダ測定装置5用のリニアガイド4が延びる。円形リング8は、中空シリンダ1の外径よりも大きい中央開口部7を取り囲む。レーダ測定装置5は、中央開口部7の中心軸と中空シリンダ1の長手方向軸6とが同軸上に互いに延びるようにリニアガイド4に取り付けられている。したがって、レーダ測定装置5は、中空シリンダ1の長手方向軸6に沿ってリニアガイド4により移動させることができる。
【0044】
レーダ装置5は、80GHzの周波数で周波数変調されたレーダ放射の放出用のトランスミッタと、この放射用のレシーバとを含み、これらはトランシーバの形態でまとめられている。トランシーバは、方向矢印10で示されるように、放射光学系と一緒に円形経路に沿って中心軸の周りで円形リング8内を移動可能である。放射光学系は、レーダビームを中心軸に、ひいては中空シリンダの長手方向軸6上に集束させるのに用いられる。トランシーバ(円形リング8)と中空シリンダ1の外側ジャケットとの間の環状間隙9の幅は公知である。トランスミッタとレシーバは、評価装置および制御装置(非図示)に接続されている。
【0045】
測定対象の中空シリンダ1の石英ガラス中のフッ素濃度を決定するために、レーダ装置5によってレーダ放射の伝搬時間が決定される。トランスミッタから放射されたレーダ放射の伝搬速度は、屈折率に影響を及ぼす石英ガラスの材料定数に応じて様々に遅延される。
【0046】
フッ素濃度測定の際に妨げとなる可能性のある他の材料定数の影響を排除するために、そのフッ素濃度が公知であり、その他の点では測定対象の中空シリンダ1の石英ガラスとは異なるところのない標準石英ガラス体を用いて、較正測定が実施される。
【0047】
この標準体を用いて決定された伝搬速度(またはレーダ波の伝搬時間)は、測定対象の中空シリンダ1を用いた対応する伝搬時間測定と、場合によっては照射されていないサンプルの伝搬時間測定と簡単に比較することができる。
【0048】
中空シリンダ1の外径は、標準偏差が10μm未満の精度で決定され、評価装置および制御装置に入力される。本実施例では、全長にわたる平均外径は201.60mmであり、環状間隙9の幅は24.2mmである。
【0049】
中空シリンダ1の壁厚は、一般的に知られている触覚測定法または光学測定法によって決定することができる。しかしながら、同じレーダ測定技術を用いて中空シリンダの壁厚(R2)を測定する測定方法は、リフレクタによりレシーバに反射し戻された、シリンダ内壁およびシリンダ外壁のレーダ放射の反射が(サンプルの有無にかかわらず)評価されるという点で特に精密である。評価装置および制御装置は、トランシーバにより伝送された測定データおよび中空シリンダの公知の壁厚から、レーダ波の伝搬速度、またはビーム経路内の中空シリンダ1の有無における伝搬速度の差を決定する。伝搬時間の差に基づいて、中空シリンダ1の石英ガラスの材料定数を推論することができる。
【0050】
特に、未知ではあるが異なるフッ素濃度を有する石英ガラス製の中空シリンダ1の場合、このドーパントの濃度は、上記の式(1)および(2)に基づいて決定することができるが、レーダ波の伝搬速度への影響を有する他の全ての材料定数は変わらない。
【0051】
レーダ源5を長手方向軸6の周りで回転させることによって、異なる方位角方向(角度)に対する平均屈折率、つまりレーダ源5の各軸方向位置における伝搬速度の全方位角プロファイル(これは測定波長における方位角屈折率プロファイルに換算することができる)が得られる。
【0052】
図4のグラフは、このようにして決定された方位角屈折率プロファイルを示し、これはフッ素ドーピングが異なる石英ガラス製の6つの中空シリンダ1で決定された(記録値は、各中空シリンダのそれぞれほぼ中央部からのものである)。縦軸には、入射角α(角度)に対して屈折率nをプロットしている。それに従って、全ての中空シリンダP1~P6は、異なるレベルでほぼ均一な方位角屈折率プロファイルを示す。表1の第3欄には、それぞれの屈折率の平均値を記載している。
【0053】
サンプルP1~P6のフッ素濃度Cは、冒頭に記載した超音波を用いた分析方法に基づいて決定した。図5のグラフでは、屈折率nの平均値をフッ素濃度C(質量ppm)に対してプロットしている。このことから、フッ素濃度Cと屈折率との間にはほぼ直線的な関係があることが分かる。表1の第2欄には、それぞれ測定されたフッ素濃度をCと記載している。したがって、簡単な較正測定に基づき、各屈折率平均値に特定のフッ素濃度を割り当てることができる。
【0054】
【表1】
【0055】
中空シリンダの長手方向6に沿って方向矢印10の方向にレーダ源5を並進させることによって、中空シリンダ1中のフッ素濃度の軸方向プロファイルが得られる。ここで、サンプル支持体2は、レーダ源5がその位置を通過するとすぐに、支持位置から解放位置に向かって移動されるように作動される。
【符号の説明】
【0056】
T トランシーバ
O 反射物体
R トランシーバとリフレクタとの間の距離
R1、R3 空気中の距離
R2=サンプル寸法
P サンプル
1 中空シリンダ
2 サンプル支持体
3 昇降装置
4 リニアガイド
5 レーダ測定装置
6 長手方向軸
7 中央開口部
8 円形リング
9 環状間隙
10 方向矢印
11 方向矢印
図1
図2
図3
図4
図5