(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ハロゲン不含耐火性ゴム組成物及びホース
(51)【国際特許分類】
C08L 31/04 20060101AFI20220401BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220401BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220401BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220401BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220401BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C08L31/04 S
C08L23/16
C08K3/22
C08K3/26
C08K5/14
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/10
F16L11/08 A
(21)【出願番号】P 2018531241
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2016081015
(87)【国際公開番号】W WO2017102848
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-11-07
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レチェプ ムーチョ
(72)【発明者】
【氏名】ミュスリュム エレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカン カラヤゼ
(72)【発明者】
【氏名】エズギュール チャリシュカン
(72)【発明者】
【氏名】テキン チョシュクン
(72)【発明者】
【氏名】アリ アクタシュ
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-192865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101-14
C08K 3/00-13/08
F16L 9/00-11/26
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性ホース用のハロゲン不含耐火性ゴム組成物であって、
100重量部のエラストマーであって、
60~70部のエチレンビニルアセテートエラストマー(EVM)であって、EVMのビニルアセテート含量が60~70重量%の範囲である、EVMと、
40~30部のエチレン、プロピレン、及びジエンエラストマーのターポリマー(EPDM)であって、EPDMのエチレン含量が30~40重量%の範囲であり、EPDMのプロピレン含量が、60~70重量%である、EPDMと、のブレンドを含む、エラストマーと、
少なくとも1つの防火剤成分と、
少なくとも1つの加硫化剤であって、過酸化物硬化剤である、加硫化剤と、を
含み、
前記防火剤成分が、アルミニウム三水和物(ATH)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸マグネシウムから選択される1つ以上であり、かつ、前記防火剤成分の量は、エラストマー100重量部当たり75~195重量部の範囲内である、組成物。
【請求項2】
EVMの前記ビニルアセテート含量が約65重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
100重量部のエラストマーが、2つ以上のEVMのブレンドを含み、それらのそれぞれが60~70重量%の範囲の異なる含量のビニルアセテートを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
60~65重量%のビニルアセテートを含有する第1のEVMと、65~70重量%のビニルアセテートを含有する第2のEVMとのブレンドを含む、100重量部のエラストマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約60重量%のビニルアセテートを含有する第1のEVMと、約70重量%のビニルアセテートを含有する第2のEVMとのブレンドを含む、100重量部のエラストマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約45部の、60~65重量%のビニルアセテートを含有する第1のEVMと、約20部の、65~70重量%のビニルアセテートを含有する第2のEVMとのブレンドを含む、100重量部のエラストマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約45部の、約60重量
%のビニルアセテートを含有する第1のEVMと、約20部の、約70重量%のビニルアセテートを含有する第2のEVMとのブレンドを含む、100重量部のエラストマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
EPDMの前記エチレン含量が約35重量%であり、EPDMの前記プロピレン含量が約65重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
約35部のEPDMを含む100重量部のエラストマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記防火剤成分が、エラストマー100重量部当たり100~150部のアルミニウム三水和物(ATH)、及びエラストマー100重量部当たり25~30部の水酸化マグネシウムである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記過酸化物硬化剤が、ジクミル過酸化物、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
無機シリカ源、及びエラストマー100重量部当たり20部未満のカーボンブラックをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
可塑剤としてアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
エラストマー100重量部当たり10部未満の酸化亜鉛をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のゴム組成物を含む、耐火性ホース。
【請求項16】
内側チューブ層及び外側カバー層を備え、前記層のうちの少なくとも1つが前記ゴム組成物を含む、請求項
15に記載の耐火性ホース。
【請求項17】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のゴム組成物を調製するための方法であって、
(A)成分を混合するステップと、
(B)前記ゴム組成物を特定の温度で硬化させるステップと、
(C)単一層または多層ホースのうちの1つ以上の層として押出または製造するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン不含耐火性ゴム組成物に関する。本発明はまた、ハロゲン不含耐火性ゴム組成物を含む耐火性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー化合物は、ゴムホースの製造に有用である。ゴムホースは、材料移送及び流体動力用途のために広く使用されている。例えば、自動車ホースの製造において有用なエラストマー化合物は、例えば、米国特許第5,683,773号に開示の塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、及びエピクロロヒドリンエラストマーを含む。これらのポリマーを使用することによって作製される化合物は、良好な機械的特性、低圧縮永久歪み、良好な低温柔軟性、及び良好な動的耐疲労性を有する。これらの化合物はまた、それらの飽和骨格に起因して、老化、風化、化学品、及びオゾンに対する優れた耐性を示し、極性が塩素及びエーテル成分により良好な油膨潤耐性を提供する。ハロゲン含有防火剤及びハロゲン化ポリマーは腐食性であり、はるかに多くの煙及び毒性の煙霧を生成することが知られている。煙の主な欠点のうちの1つは、その毒性である。火災による死傷者の約50%は、火災で発生する煙及びガスに起因する。煙の毒性に関しては、急性毒性を考慮するだけでなく、環境への影響力及び長期的な作用を有するガスも考慮することが重要である。多様な環境問題に貢献するための試みにおいて、塩素、フッ素、及びヨウ素を含有しない油圧ホースに対する最新のOEM環境要件では、その基準的範囲の油圧ホースが環境適合性HF範囲の製品に置き換えられた。したがって、最近の先行技術は、一般的にハロゲン不含組成物を対象としている。
【0003】
そのツール及び技術の進歩に伴い、現代の流体動力システムは、安全かつ正確に行うために、以前に比べてより大きな圧力下にある。流体動力システムで使用されるホースの耐火基準は、ますます厳しくなっている。最も厳しい基準は、鉄道用途で使用されるホースに適用される。鉄道用途の欧州基準に従って認証されたベース材料に対する需要は、輸送産業が大量輸送のための安全要件を規定し続けるにつれて増加している。
【0004】
かかる要件の例は、EN45545-1において定義される、鉄道車両に使用される材料及び製品の防火性能要件に対する反応を特定するEN45545-2:2013に包含される。これらの耐火基準要件は、材料が、EN ISO4589-2に従う非常に高い限界酸素指数(LOI)を有し、EN ISO5659-2に従い燃焼中に非常に低い煙密度を生成し、NF X70-100-2に従う非常に低い毒性を有するガスのみを放出することである。他の要件としては、材料が非常に高い引火温度を有し、火災時に自己消火し、ハロゲン不含及び重金属不含であり、電気的に絶縁されていることが挙げられる。同時に、ホースは、バースト圧力、低温柔軟性、耐油性、熱気への耐性、耐オゾン性、及び様々な接着層の構造的統合性などの様々な従来の設計要件に従う必要がある。
【0005】
前述の考察に適合するために、多数のエラストマー及びゴムが使用されている。多くの先行技術は、ワイヤ及びケーブル絶縁体の耐火性を改善することに関する。例えば、米国特許第4,675,248号では、アルミニウム三水和物(ATH)及びホウ酸亜鉛(ZB)の相乗的に防火する組み合わせを含む、エチレン-ビニルアセテート(EVM)及び水素化ニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)のブレンドについて開示している。これは、非常に高いATH配合量で非常に高い値のLOIを得ることができるが、それにより得られる組成物は引裂強度規格を満たさないことが、HERMAN MEISENHEIMERによる関連する発表“Low smoke,non-corrosive,fire retardant,cable jackets based on HNBR and EVM,Rubber World,19(June 1991)に示されている。
【0006】
米国特許第5,274,035号では、エチレン-ビニルアセテート組成物及びそれから作製された医療用チューブについて開示している。該組成物は、主要量のエチレン-ビニルアセテート及び少量の1つ以上の他のポリマーを含む。他のポリマーとしては、アルファオレフィン、アクリル酸エステル、及びエチレン/メチルアクリレート/無水マレイン酸などのオレフィン性不飽和ジカルボン酸のターポリマーを含み得る。好適なエチレン-ビニルアセテートは、5~50重量%のビニルアセテートを含む。
【0007】
ホースの物理的な要件は、一般的に、医療用チューブ、ワイヤ、及びケーブルに対する要件とは異なり、より多くの要件を必要とする。
【0008】
米国特許第4,675,248号は、ケーブルシース及びコンベヤベルトカバーの製造に好適な耐火性ゴム組成物について記載している。該組成物は、強度及び高密度を達成するために、エチレン-ビニルアセテートエラストマーとニトリルエラストマーとの共加硫化により生成される。
【0009】
米国特許第4,769,179号は、とりわけホースに使用するための耐火性ゴム組成物に関する。その組成物は、エチレン系エラストマー、金属水和物、及び架橋剤を含有する。その組成物は、補助的な防火剤をさらに含み得る。
【0010】
米国特許公開第2006/0100328A1号は、特にホースでの使用のためのハロゲン不含の耐火性ゴム組成物について記載している。該組成物は、2つ以上の特定のエラストマーを含有する。2つの特定のそのエラストマーは、一般的に、オレフィン系エラストマー及びニトリル含有エラストマーである。加えて、該組成物は、防火性添加剤の特定の組み合わせの存在をさらに必要とする。実際、本明細書に開示される組成物は、BS6853及びNFF16-101などの欧州地域の基準に従った目標の難燃性及び煙生成試験を十分に満たしたとしても、EN45545-2:2013に従い更新された耐火基準を満たしていない。加えて、窒素化合物を含有する防火材料は、強力に加熱または不完全燃焼された場合、シアン化水素、一酸化窒素及び二酸化窒素を放出することが知られている。
【0011】
米国特許第4,759,388号は、アクリルゴムの内側チューブ及び外側チューブを含むホースについて開示している。アクリルゴムは、アクリル酸低級アルキルエステル単独であってもよく、または架橋剤の存在下で共重合性モノマーと重合した主成分としてエステルであってもよい。アクリルゴムは、主成分としてアクリル酸低級アルキルエステルと、コポリマー成分としてエチレン-ビニルアセテートを含むコポリマーであってもよい。
【0012】
欧州特許公開第0370361A2号は、架橋された粒子状アルキルアクリレートゴム及び加水分解されたエチレン-ビニルアセテートコポリマーに基づいた柔軟な弾性ポリマー混合物について開示している。
【0013】
1999年9月21日~24日のRubber Division,American Chemical Society,Orlando,Floridaの会合で提示された論文番号187は、自動車ホースへの使用に好適な化合物へのエチレン-ビニルアセテートの使用について開示している。開示のエチレン-ビニルアセテート化合物は、過酸化物または放射線を介して部分的に架橋され、粘度が向上したエチレン-ビニルアセテートを利用する。そのエチレン-ビニルアセテート化合物は、クロロスルホン化ポリエチレンまたはエチレン/メチルアクリレートターポリマーの化合物と比較して、優れた高温特性保持性を有することが示されている。
【0014】
多くの議論及び研究が現在まで行われてきたことから、組み合わせが極めて相乗効果的であることが明らかである。ときに、特定のエラストマーを有する防火添加剤の特定の組み合わせは、いくつかの添加効果をもたらすが、それらのうちのいずれも、現行の及び将来的な需要の厳しい要件を満たすものではない。一般的に、良好な防火特性を達成するために、EVMに防火添加剤が必要である。しかしながら、高い配合量は、材料の機械的特性を大幅に変化させる。この不利点を克服するため、いくつかの解決策が可能である。相乗効果を生じる他の従来の難燃剤とミネラル充填剤の組み合わせが依然として吟味されている。
【0015】
上述の最も厳しいホース性能基準を満たす向上した耐火性、少ない煙形成、低毒性、加工性及び物理的特性を有するゴム組成物が依然として必要とされている。
【0016】
本発明者らは、請求項1に記載のエチレンビニルアセテートエラストマー及びエチレン、プロピレン、及びジエンの相乗的組み合わせが、限界酸素指数(LOI)、低煙密度、及び低毒性ガス生成の最も厳しいホースに対する要件を達成することを見出した。
【0017】
発明の概要
本発明の目的は、ハロゲン不含耐火性ゴム組成物であって、
60~70部のエチレンビニルアセテートエラストマー(EVM)であって、EVMのビニルアセテート含量が60~70重量%の範囲である、EVMと、
40~30部のエチレン、プロピレン、及びジエンエラストマーのターポリマー(EPDM)であって、EPDMのエチレン含量が30~40重量%の範囲であり、EPDMのプロピレン含量が、60~70重量%である、EPDMと、のブレンドを含む、100重量部のエラストマーと、
少なくとも1つの防火剤成分と、
少なくとも1つの加硫化剤であって、過酸化物硬化剤である、加硫化剤と、を含む、組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、本発明のゴム組成物を含む耐火性ホースを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、本発明のゴム組成物を調製するための方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に従って構築されたホースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
エチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーは、コポリマー中のモノマーの含量に応じて、熱可塑性またはエラストマー特性を有し得る。ポリエチレン骨格上のビニルアセテートの割合が増加するにつれて、組成物は熱可塑性からエラストマーへと切り替わる。ポリエチレン骨格がビニルアセテートで飽和状態に近づくにつれて、組成物は熱可塑性に戻る。典型的には、組成物がエラストマーである中間範囲が、EVMと称される。エラストマー特性の範囲は、ポリエチレン骨格上のビニルアセテートが33%~80%の間である。
【0022】
【0023】
EVAの物理的特性は、材料中のビニルアセテート含量に依存する。EVAは、ポリマー構造内に存在する硫黄硬化性部位がなく、EVAが過酸化物または高エネルギー放射線で加硫されるという事実をもたらす。EVA材料の主な利点は、ポリマーのVA含量の変動による所望の機械的特性及び熱分解の適応性である。EVA材料が、高い防火性を果たすことも重要である。EVAの防火性は、ビニルアセテート含量にも依存する。EVAの限界酸素指数(LOI)は、ビニルアセテート含量の増加と共に増加することが知られている。
【0024】
合成ゴムの一種であるEPDMゴムは、広範囲の用途によって特徴付けられるエラストマーである。EPDMゴムは、側鎖にジエンの残留不飽和部分を有する、エチレン、プロピレン、及びジエン成分のターポリマーである。エチレン含量は、典型的には約45%~85%である。EPDMエラストマー中のエチレンの量は、材料の末端使用特性に影響を与える。高濃度のエチレンは、EPDMに、より結晶性の性質を与え、そのガラス転移温度(TG)及び融解温度を増大する。エチレン含量が高くなると、ポリマーの配合可能な量がより多くなり、混合、及び押出がより良好になる。非晶質または低結晶性グレードは、約マイナス60℃のガラス転移点を有する優れた低温柔軟性を有する。本組成物の2.5重量%~12重量%を典型的に構成するジエンは、硫黄及び樹脂で硬化するときに架橋するように機能し、過酸化物で硬化するときに、ジエンは、末端での使用中に望ましくない粘着性、クリープ、または流れに耐性を与える架橋助剤として機能する。
【0025】
本発明のゴム組成物は、EVM及びEPDMのエラストマーブレンドを含む。EVM及びEPDMの両方は、現況技術で既知であるが、本発明に従った組み合わせは新規である。各成分の効果は、当該技術分野においていくつかのポリマー系について一般的に知られているが、これらの成分を組み合わせること、及び/または異なるポリマー系においてそれらを使用することの効果は、相乗的であり予測不能である。
【0026】
驚くべきことに、EVM及びEPDMを組み合わせることによって、準拠するべきゴムホースの物理的特性に加えて、優れた耐火性特性を有する材料が達成されることが現在見出されている。かかる組成物を配合する技術は、成分とエラストマーとの間の複雑な相互作用及び硬化中の化学反応により、非常に実験的である。したがって、求められる改善を達成することは、非常に困難である。例えば、EN基準によれば、ホースは、-40℃の低温柔軟性試験後に柔軟でなければならない。したがって、低温への耐性は、ゴム組成設計の主な要件のうちの1つである。EVM及びEPDMエラストマーのブレンドは、低温柔軟性試験に適合するための最も重要な取り組みであった。
【0027】
好適な加硫剤及び好適な防火剤成分を含むEVM及びEPDMのエラストマーブレンドを含むゴム組成物を、本発明において使用する。
【0028】
本発明によると、本発明の好適なゴム組成物は、60~70部のEVM及び40~30部のEPDMを含む100重量部のエラストマーを含む。
【0029】
本発明によると、好適なEVMは、60~70重量%のビニルアセテート及び30~40重量%のエチレンを含有する。好ましくは、EVMは、約65重量%のビニルアセテートを含有する。
【0030】
1つの好ましい実施形態では、本発明のゴム組成物は、2つ以上の種類のEVMを含むエラストマーブレンドを含み、それらの各々1つが、60~70重量%の範囲内の異なる含量のビニルアセテートを有する。好ましくは、第1のEVMのビニルアセテート含量は60~65重量%であり、第2のEVMのビニルアセテート含量は、65~70重量%のビニルアセテートである。より好ましくは、第1のEVMのビニルアセテート含量は60~65重量%であり、第2のEVMのビニルアセテート含量は、65~70重量%のビニルアセテートである。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明のゴム組成物は、45部の、60~65重量%のビニルアセテートを含有する第1のEVM、及び20部の、65~70重量%のビニルアセテートを含有する第2のEVMを含む、100重量部のエラストマーを含む。好ましくは、第1のEVMのビニルアセテート含量は60重量%であり、第2のEVMのビニルアセテート含量は70重量%である。
【0032】
本発明によると、好適なEPDMは、好ましくは30~40重量%のエチレン及び60~70重量%のプロピレンを含有する。EPDMは、好ましくは側鎖に、ジエンの残留不飽和部分を有する。EPDMは、好ましくは3~5重量%のジエンを含有する。1つの好ましい実施形態では、本発明のゴム組成物は、30~40重量%のエチレン及び60~70重量%のプロピレンを含有する35部のEPDMを含む100重量部のエラストマーを含む。
【0033】
使用される防火剤成分として、防火剤金属水和物は、好ましくは、アルミニウム三水和物(ATH)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウムなどを含む群から選択される1つ以上である。あるいは、本発明のゴム組成物は、当業者に既知の従来の防火剤、例えば、リン酸エステル防火剤、ならびにクロロパラフィンなどの防火剤を含有するハロゲンを含有する。ゴム配合において典型的に使用される防火剤を含有する大量のハロゲンは、有毒煙を生じる原因となるため、回避されるべきである。
【0034】
防火剤成分の量は、エラストマー100重量部当たり75~195重量部の範囲内である。75部未満では、防火効果が十分ではない。195部超では、組成物の加工性及び物理的特性が低下する。特に、極めて高いレベルの金属水和物は、適切に混合及び/または押出することができない過度に高粘度の組成物をもたらす。
【0035】
一実施形態では、本発明のゴム組成物は、防火剤成分としてATH及び水酸化マグネシウムを含む。好ましくは、組成物中に存在するATHの量は、エラストマー100重量部当たり100~150部の範囲であり、本組成物中に存在する水酸化マグネシウムの量は、25~30部の範囲内である。
【0036】
EVM、EPDM及び防火剤成分に加えて、本発明のゴム組成物は、当業者に既知の従来の添加剤を含有し得る。これらの例としては、補強剤、充填剤、顔料、促進剤、接着促進剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、処理助剤、架橋助剤、カップリング剤、加硫剤、活性化剤、開始剤、可塑剤、ワックス、早期加硫防止剤、延伸油などが挙げられるが、これらに限定されない。重金属、ハロゲンを含む成分、または毒性煙霧もしくは煙の原因となる可能性がある成分は、最小値まで回避または保持されるべきである。
【0037】
シリカは主に、補強充填剤として使用され、ゴム組成物の弾性率を制御し、引張強度を増加する。シリカは非引火性であり、カーボンブラックのように煙の原因とならない。好適なシリカ源としては、クレイ、タルク、フュームドまたは沈殿シリカまたはシリケート、及び珪質土などが挙げられ、これらは任意選択にシラン処理され得る。シリカの量は重要ではないが、所望の物理的特性を得るように選択され得る。
【0038】
より良好な物理的特性及び着色を提供するために、エラストマー100重量部当たり20部未満の少量のカーボンブラックが使用されてもよい。使用される典型的なカーボンブラックのうちの1つは、FEF N550である。典型的にゴム配合に使用される大量のカーボンブラックは、カーボンブラックが煙の原因となるため回避されるべきである。本発明の一実施形態において、15部未満のカーボンブラックが使用されてもよい。同様に、従来の可塑剤は、それらが引火性及び煙の増加を与えるため、回避されるべきである。
【0039】
硬化性は、必要な物理的特性を生成するために組成物において必要とされる。EVM及びEPDMの両方がフリーラジカルで硬化され得るため、過酸化物硬化または飽和水蒸気を用いた加硫または電離放射線による加硫が好ましい。
【0040】
フリーラジカル硬化剤は、いくつかの種類の従来の硫黄系促進剤のように、毒性煙霧または重金属を用いない。本発明の組成物において用いられ得る硬化剤には、例えば、ジクミル過酸化物、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサンなどが挙げられる。使用され得る硬化剤の量は、異なり得る。一般的に、硬化剤の量は、過酸化物の活性部分に基づきエラストマー100重量部当たり5~10部の範囲である。
【0041】
好ましくは、可塑剤はまた、改善された物理的特性を提供するために使用されてもよい。軟質ビニル産業において主に可塑剤として使用されるアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOA)は、その低い流動点のため好ましい場合がある。
【0042】
加硫活性化剤はまた、加硫の有効性を増大させるために使用されてもよい。エラストマー100重量部当たり10部未満の非常に少量の酸化亜鉛が、他の金属酸化物の中で低コストであり、加硫の効果ならびに熱安定性を増大させるため、より好ましい場合がある。
【0043】
ゴム組成物のブレンドは、ゴムブレンド当業者に既知の方法によって達成され得る。好ましくは、ゴム組成物の硬化は、160℃~180℃の範囲の従来の温度で行われる。
【0044】
本発明の組成物は、鉄道用途に有用な油圧ホースなどのホースなどの製造において使用されてもよい。組成物は、単一または多層ホースの1つ以上の層として押出または製造されてもよい。ホース内の他の層は、当該技術分野で既知の材料から製造されてもよい。
【0045】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に従って構築される典型的なホース10が示されている。ホース10は、エラストマー内側チューブ11、内側チューブ11にはめ込まれ、好ましくは接着された補強部材12、及び補強部材12にはめ込まれ、好ましくは接着されたエラストマー外側カバー13を含む。補強部材12は、有機もしくは無機繊維または黄銅めっき鋼ワイヤを含み得る好適な材料から形成される。補強部材12は、1つ以上の繊維補強層と、1つ以上の繊維補強材料を含み得る。
【0046】
内側チューブ11は、同じ組成物のものでもなくてもよい複数のエラストマーまたはプラスチック層からなり得る。エラストマー外側カバー13は、直面する外部環境に耐えるように設計された好適な材料から作製される。内側チューブ11及び外側カバー13は、同じ材料から作製されてもよい。ホース10は、成形及び押出を含む任意の従来の方法によって形成されてもよい。内側チューブ11または外側カバー13のうちの少なくとも1つのエラストマー層は、本発明によると、より耐火性に作製されることができるため、ホースの耐火性を改善する。
【0047】
本発明の一実施形態では、ホース10は、本発明の組成物のゴム層を少なくとも1つ備える。本発明の別の実施形態では、実質的に、ホース内のゴムの全てが本発明の組成物である。本発明の組成物は、様々な層の異なる特性を達成するために既知のゴム配合技法を使用して調節され得る。
【0048】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供され、その範囲に対する限定を意図するものではない。
【実施例】
【0049】
表1に示される割合による2つのゴム組成物を、内部ミキサー内の全ての成分を組み合わせることによって調製し、当該技術分野で周知の技法を使用してブレンドした。実施例1及び実施例2の両方は、カバーの化合物及びゴムチューブに好適である。得られたゴム化合物を3mmプラークに形成した。実施例1及び2の2つのゴム組成物は、表1に示される目標LOI、煙密度、及び毒性を満たした。硬度、引張強度及び破断点伸びを含むこれらの2つのゴム組成物の物理的特性は、表1に示される鉄道用ブレーキホースの目標値を満たした。
【0050】
結果として生じたゴム化合物を、実施例3の金属で強化された51mmのホース、及び実施例4の織物で強化された8mmのホースに形成した。これらのホースはまた、表1に示される目標LOI、煙密度及び毒性を満たした。
【表1】
【0051】
LOI試験は、EN ISO4589-2の手順に従って行った。毒性試験は、NF X70-100-1/-2の手順に従って行った。煙試験は、EN ISO5659-2の手順に従って行った。
【0052】
周知のゴム試験方法を使用して、ゴム試験片の硬度、引張強度及び破断点伸びについて試験した。
【0053】
本発明は、高いLOIと、火災時に煙及び毒性煙霧の生成が少ないホースの所望の物理的性能特性とを組み合わせた、耐火性ゴム組成物及びそれを組み込むホースを提供する。本組成物はまた、耐火性が極めて必要とされる場合、ワイヤ及びケーブル用途、電力伝達ベルト、及び成形されたゴム製品においても有用であり得る。
【0054】
本発明は例示の目的に関して詳細に記載されており、かかる詳細は、特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者によって単にその目的及びその変形が本発明の範囲内で作製され得ることを理解されたい。