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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ブラシヘッド
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/34 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
A61C17/34 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018534004
(86)(22)【出願日】2016-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2016071581
(87)【国際公開番号】W WO2017050612
(87)【国際公開日】2017-03-30
【審査請求日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】1374/15
(32)【優先日】2015-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518095389
【氏名又は名称】クラーデン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Curaden AG
【住所又は居所原語表記】Amlehnstrasse 22, 6010 Kriens, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イューリ ブライトシュミート
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ザヴァッローニ
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-043127(JP,U)
【文献】特開2012-161368(JP,A)
【文献】実開平07-025829(JP,U)
【文献】特表2007-511261(JP,A)
【文献】特開2014-221431(JP,A)
【文献】特表2010-504775(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0418868(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0279002(US,A1)
【文献】国際公開第2015/092550(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/16-17/34
A46B 5/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシネック(110,210)を有するブラシヘッド(100,200)を備えた音波振動歯ブラシであって、前記ブラシネック(110,210)は、
a. 遠位領域に、歯をクリーニングするための、方向付け軸線(131,231)を備えたクリーニングエレメント(130,230)と、
b. 近位領域に、前記ブラシヘッド(100,200)を振動発生器(300)と連結し且つ該振動発生器(300)の振動を前記クリーニングエレメント(130,230)に伝達するアダプタ軸線(121,221)を備えたアダプタ(120,220)と、
を有し、
c. 前記アダプタ軸線(121,221)は、前記方向付け軸線(131,231)との間に、95°~105°の範囲の角度を成していて、
d. 前記振動発生器(300)が、前記アダプタ(120,220)内に導入するためのピン(310)を有し、該ピン(310)によって、前記振動発生器(300)から前記クリーニングエレメント(130,230)に振動が伝達可能であり、
e. 前記ブラシヘッドが、専ら前記ピン(310)を介して前記振動発生器(300)に結合されている、
ブラシヘッド(100,200)を備えた音波振動歯ブラシにおいて、
f. 前記ブラシネック(110,210)は、前側部分(140,240)と背側部分(150,250)とを有し、前記前側部分(140,240)は前記クリーニングエレメント(130,230)と、前記アダプタ(120)とを有していて、該アダプタ(120)から前記ブラシヘッド(100)の遠位端にまで延びており、前記ブラシヘッド(100,200)の振動特性を調節するために、前記前側部分(140,240)は、第1のプラスチックから成っていて、かつ前記背側部分(150,250)は、第2のプラスチックから成っており、前記第2のプラスチックが、前記第1のプラスチックよりも低い硬度を有しており
g. 前記ブラシネック(110,210)は、前記アダプタを備えた第1部分(111,211)と、前記クリーニングエレメント(130,230)を備えた第2部分(113,213)とを有し、前記第1部分(111,211)の第1の主軸線(112,212)と前記第2部分(113,213)の第2の主軸線(114,214)とが、165°~175°の角度を成していることを特徴とする、ブラシヘッド(100,200)を備えた音波振動歯ブラシ。
【請求項2】
前記クリーニングエレメント(130,230)は、前記第2部分(113,213)の、形成された角度とは反対に位置する側に配置されている、請求項記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項3】
前記クリーニングエレメント(130,230)は、複数のフィラメント束を有し、外側に位置するフィラメント束が、内側に位置しているフィラメント束を超えて突出している、請求項1または2記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項4】
前記前側部分(140,240)と前記背側部分(150,250)とは、注型によって互いに結合されている、請求項1記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項5】
前記ピン(310)が、遠位領域に、扁平面取り部(311)を有しており、前記ピン(310)が、係止突起(122)を収容するための溝(312)を有しており、前記ピン(310)および前記アダプタ(120)は、前記ピン(310)が前記扁平面取り部(311)によって回動防止されて、前記溝(312)もしくは前記係止突起(122)によって軸方向において固定されて保持され得るように形成されており、
前記ピン(310)は、遠位端に、前記溝(312)に接続して前記扁平面取り部(311)を有している、請求項1記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項6】
前記ブラシネック(110,210)が、遠位領域に、歯をクリーニングするための複数のフィラメントを有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項7】
前記アダプタ軸線(121,221)が、方向付け軸線(131,231)と98°~102°の角度を成している、請求項記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項8】
前記第1部分(111,211)の第1の主軸線(112,212)と前記第2部分(113,213)の第2の主軸線(114,214)とが、168°~172°の角度の角度を成している、請求項記載の音波振動歯ブラシ。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項記載の音波振動歯ブラシ用のブラシヘッド(100,200)を製造する方法であって、クリーニングエレメント(130,230)用の収容部を備えた前側部分(140,240)と、背側部分(150,250)とを一緒に注型することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記背側部分(150,250)は前記前側部分(140,240)よりも低い硬度を有している、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシネックを有する、音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドであって、このときブラシネックは、遠位領域に、歯をクリーニングするための、方向付け軸線を備えたクリーニングエレメント、特に複数のフィラメントと、近位領域に、ブラシヘッドを振動発生器と連結するためおよび該振動発生器の振動をクリーニングエレメントに伝達するためのアダプタと、を有するブラシヘッドに関する。さらに本発明は、ブラシヘッドを備えた音波振動歯ブラシ、およびブラシヘッドを製造する製造方法に関する。
【0002】
従来の技術
音波振動歯ブラシというのは、歯をクリーニングすることができる器具を意味する。音波振動歯ブラシのブラシヘッドは、典型的には、磁気によってまたは圧電素子を介して駆動される。ブラシヘッドは、例えば約250~300ヘルツの周波数範囲において振動することができる。歯は、振動させられる剛毛によってクリーニングされる。
【0003】
公知のブラシヘッドには、音波振動歯ブラシのクリーニングポテンシャルを十分に利用していないという欠点がある。
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた技術分野に属する、音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドを改良して、特に良好なクリーニング効果を得ることができるブラシヘッドを提供することである。
【0005】
この課題の解決策は、請求項1の特徴によって定義されている。本発明によれば、アダプタ軸線は、方向付け軸線との間に、90°よりも大きな角度、好ましくは91°~120°の角度、さらに好ましくは95°~105°の角度、特に好ましくは98°~102°の角度を成している。
【0006】
通常、音波振動歯ブラシのブラシヘッドは、屈曲部を有していない。従来、音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドは、もっぱら屈曲部なしに形成され、これによって振動伝達方向がそれぞれ剛毛方向に対して直角に位置している。
【0007】
驚くべきことに、本発明のように音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドを従来の構造とは根本的に異ならせることによって、歯のクリーニングにおいて極めて効果的なブラシヘッドが得られることが判明した。
【0008】
クリーニングエレメントの方向における(つまり前側に向かっての)屈曲は、特に下側の前歯の内側において、より良好な接近を可能にする。さらにこれによって、クリーニングエレメントもしくはフィラメントは、横方向に強く振動し、その結果、特に下顎において大幅により良好なクリーニングを行うことができる。さらに剛毛において適切に、さらにより大きな振幅が得られるので、これによって振動運動内においてより大きな運動でクリーニングを行うことができる。屈曲部が逆方向(背側)を向いている場合には、このような屈曲部は歯間空間における最適なクリーニングを可能にする。この構成においても、上に述べた効果が発生する。
【0009】
振動は曲げられたクリーニングエレメントによって、改善されたクリーニング効果を音波振動歯ブラシによって得ることができるように最適に伝達されることが、明らかである。さらに、多くの実験において示されたことであるが、方向付け軸線とアダプタ軸線との間における最適な角度は、91°~120°の角度、好ましくは95°~105°の角度、特に好ましくは98°~102°の角度である。この角度は、ブラシネックにおける屈曲部としての典型的な値であるが、しかしながらこれらの値に制限されるものではない。
【0010】
方向付け軸線は、本明細書ではクリーニングエレメントの軸線であると理解することができる。汎用の歯ブラシでは、方向付け軸線はフィラメントの軸線を示す。例えば湾曲した面に複数のフィラメントが配置されている場合には、方向付け軸線は、個々の軸線の平均値を表すものであると理解される。しかしながら他方において方向付け軸線は、歯間空間をクリーニングするためのただ1つの剛毛では、その回りにフィラメントが固定されているワイヤ方向を示すこともできる。
【0011】
クリーニングエレメントは、91°~120°の角度を有することも、補角として60°~89°の角度を有することもできる。クリーニングエレメントが前側に向かって(90°よりも小さな角度)屈曲されているか、または後ろ側に向かって(90°よりも大きな角度)屈曲されているかは、クリーニングエレメントの形式に関連している。例えば複数のフィラメント束を備えたブラシヘッドが使用される場合には、屈曲部は、好ましくは90°よりも小さな角度を有し、これによってクリーニングエレメントは内側に向かって、ブラシネックに向かう方向に曲げられており、これによって理想的に下側の前歯の内側への到達が可能になる。
【0012】
しかしながら、ただ1つのフィラメント束が、例えば歯間空間をクリーニングするために使用される場合には、屈曲部は、好ましくは90°よりも大きな角度を有し、これによってクリーニングエレメントは、後ろ側に向かって、ブラシネックから離れる方向に屈曲されている。この配置形態は、歯頚部もしくは歯肉の輪郭に沿ったクリーニングのために特に人間工学的である。したがって好ましくは、クリーニングエレメントは、第2部分の、形成された角度とは反対に位置する側に配置されている。このようになっていると、屈曲部は後ろに向くことになり、その結果クリーニングエレメントは、第1部分から離れる方向を向く。
【0013】
実験によれば、屈曲方向とは無関係に100°または101°の角度が特に最適であることが示された。良好な効果は、95°の角度を上回る角度から発生し、極めて良好な効果は、約98°の角度を上回る角度から得られる。
【0014】
好ましくは、ブラシネックは、アダプタを備えた第1部分と、クリーニングエレメントを備えた第2部分とを有し、このとき第1部分の第1の主軸線と第2部分の第2の主軸線とが、150°~179°の角度、好ましくは165°~175°の角度、特に好ましくは169°~171°の角度を成している。
【0015】
変化形態では、ブラシネックは、アダプタの作用線を直接反映していない別の形状を有することも可能である。当業者には、多数のこのような形状が知られている。
【0016】
特に好適な実施形態では、第2の主軸線と方向付け軸線とは互いに直角に方向付けられている。しかしながらまた変化形態では、両方の軸線の間における他の方向付けも可能である。
【0017】
好ましくは、クリーニングエレメントは、複数のフィラメント束を有し、このとき外側に位置するフィラメント束が、内側に位置しているフィラメント束を超えて突出している。このように構成されていると、クリーニングエレメントは好適に凹面状の表面を有することになる。このような形態によって特に良好なクリーニング効果を得ることができることが、実験において示されている。
【0018】
しかしながらまた変化形態では、フィラメント束の他の配置形態が設けられていてもよい。特にまた、必ずしも凹面状の表面を有する必要がないフィラメント束が設けられていてもよい。
【0019】
好ましくは、ブラシネックは、前側部分と背側部分とを有し、このとき前側部分はクリーニングエレメントを有していて、このとき前側部分と背側部分とは、注型によって互いに結合されている。これによって特に安価なブラシヘッドが得られる。前側部分および背側部分用の材料の選択によって、ブラシヘッドの振動特性を、歯の最適なクリーニングが得られるように調節することができる。
【0020】
変化形態では、ブラシヘッドは一体に製造されてもよい。さらに前側部分と背側部分とを他の形式で、例えば接着、超音波溶接のような溶接、クリップ結合のような機械的な結合技術またはこれに類した方法によって、互いに結合することも可能である。さらにまたブラシネックは、2つの部分よりも多くの部分から成っていてもよい。
【0021】
好ましくは、前側部分は、第1のプラスチックから成っていて、かつ背側部分は、第2のプラスチックから成っており、このとき第2のプラスチックは、第1のプラスチックよりも低い硬度を有している。ブラシネックのこのような構成によって、特に最適な振動伝達が得られる。
【0022】
変化形態では、前側部分および背側部分のために、他の材料、例えば、例えばアルミニウムのような金属またはこれに類した材料を使用することも可能である。同様に原則的には、第1のプラスチックが第2のプラスチックよりも低い硬度を有することも可能である。
【0023】
好ましくは、音波振動歯ブラシは、アダプタ内に導入するためのピンを備えた振動発生器を有しており、このときピンによって、振動発生器からクリーニングエレメントに振動が伝達可能である。これによって、特に効果的な振動伝達が達成される。振動発生器は、例えば1つまたは複数の圧電素子によってまたは電磁石によって実現することができる。
【0024】
変化形態では、ブラシヘッドがピンを有することも可能である。さらに当業者には、振動のための他の伝達手段も知られている。特に、ピンの代わりにバヨネットジョイント、または当業者に知られている他の結合技術を使用することも可能である。
【0025】
好ましくは、アダプタおよびピンは、アダプタ内へのピンの導入時にアダプタ軸線における回動防止部および固定部が得られるように形成されている。このように構成されていると、ピンとアダプタとは、単に振動を伝達するためにだけ働くのではなく、振動発生器におけるブラシヘッドの取付けのためにも働く。これによってさらに、別体の固定手段を設ける必要がないので、特に単純な構造を有していて、ひいては安価な音波振動歯ブラシが得られる。
【0026】
変化形態では、回動防止部を、アダプタの領域におけるブラシヘッドの外輪郭によって得ることも可能である。そのために、この外輪郭は、振動発生器のハウジングの相応に成形された凹部内に収容されていることができる。さらにブラシヘッドは、ロック装置を備えたねじ締結部を介して、ハウジングに結合可能であってもよい。
【0027】
好ましくは、アダプタ軸線における固定部は、アダプタの係止突起によって形成されていて、該係止突起は、ピンの溝内に係止可能である。このように構成されていると、ピンにおけるブラシヘッドの特に簡単な軸方向固定が達成される。そのために係止突起は、例えば、側部にスリットを備えたスリーブの内側に形成されていてもよい。
【0028】
択一的にブラシヘッドは、係止突起を介して、振動発生器のハウジングにおいて係止可能であってもよい。さらに係止突起の代わりに、アダプタ軸線における固定を達成するために、摩擦結合部が設けられていてもよい。しかしながら摩擦結合部は、音波振動歯ブラシの運転時にブラシヘッドがピンから解離され得ないように形成されていなくてはならない。
【0029】
好ましくは、回動防止部は、ピンの側部の扁平面取り部によって、かつアダプタの相応の形状によって形成されている。このような構成によっても、ピンにおけるブラシヘッドの特に単純かつ安価な固定部が得られる。
【0030】
変化形態では、ブラシヘッドと音波振動歯ブラシのハウジングとの間における回動防止部を得ることも可能である。
【0031】
好ましくは、ピンは、遠位端に、溝に接続して扁平面取り部を有している。
【0032】
変化形態では、扁平面取り部が中央領域においてピンの側部に形成されていてもよい。このように構成されていると、扁平面取り部は、回動防止部としても係止突起のための収容部としても働くことができる。
【0033】
特に音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドを製造する方法では、クリーニングエレメント用の収容部を備えた前側部分と、背側部分とが一緒に注型される。このとき注型という概念は、前側部分と背側部分との境界面がこれらの部分の成形中に融着することを示している。そのために両方の部分を金型において個々に製造し、その後で一緒にプレスすることが可能である。
【0034】
特に好適な変化形態では、したがってブラシネックは1回の方法ステップで製造され、その結果製造コストを安価に保つことができる。ブラシネックの製造後には、ブラシヘッドを完成させるために、単にクリーニングエレメントをブラシヘッドに固定することだけが必要である。これによって特にコストパフォーマンスの良い製造方法が得られる。
【0035】
このような製造方法のためには任意に多くの択一的な方法が存在することは、当業者にとって明らかである。例えば両方の部分(前側部分および背側部分)を別個に製造し、次いで接着または溶接することも可能である。
【0036】
好ましくは、背側部分は前側部分よりも低い硬度を有している。このように構成されていると、振動特性を最適なクリーニング効果のために適合させることができる。好ましくは、前側部分および背側部分は、それぞれ類似の結晶化度を有するプラスチックから形成されている。このようにすると、製造プロセスにおいて、両方の部分の最適な結合を達成することができる。
【0037】
変化形態では、背面部分と前側部分とはまた同じ硬度を、しかしながら例えば異なった弾性のような、他の物理的な相違を有することができる。
【0038】
音波振動歯ブラシの運転中には、2000~8000ヘルツの周波数(1秒当たりの振動数)が提案されている。しかしながらまた周波数は、それよりも高く、例えば10kHz、50kHzであっても、またはそれよりも低く、例えば200Hzまたは500Hzであってもよい。
【0039】
以下における詳細な説明および請求項における記載全体から、本発明の別の有利な実施形態および特徴の組合せが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1a】前側に向かって傾けられたヘッド部分を有する第1実施形態のブラシヘッドを、長手方向軸線に沿って断面して示す概略図である。
図1b図1aに示されたブラシヘッドの側面図である。
図2a】後ろ側に向かって傾けられたヘッド部分を有する第2実施形態のブラシヘッドを、長手方向軸線に沿って断面して示す概略図である。
図2b図2aに示されたブラシヘッドの側面図である。
図3】長手方向においてアダプタの側から第1実施形態を見て示す概略図である。
図4】長手方向軸線に沿ってアダプタを断面して示す概略図である。
図5a】ピンを備えた振動発生器を概略的に示す側面図である。
図5b図5aに対して長手方向軸線を中心にして90°だけ回転させて振動発生器を示す側面図である。
【0041】
基本的に、図面において同じ部分には同じ符号が付されている。
【0042】
発明の実施の形態
図1aには、前側に向かって傾けられたヘッド部分を備えた第1実施形態のブラシヘッド100が、長手方向軸線に沿った断面図で概略的に示されている。図1bには、図1aに示されたブラシヘッド100が側面図で示されている。
【0043】
ブラシヘッド100は、ブラシネック110を有しており、このブラシネック110には、遠位にクリーニングエレメント130、本実施形態では複数のフィラメント束が配置されていて、かつ近位に、振動発生器300にもしくはベース器具に連結するためのアダプタ120が配置されている。ベース器具(図示せず)は、このとき典型的には駆動装置、すなわち振動発生器、および例えば蓄電池または電源装置のようなエネルギ供給装置を有しており、かつさらに音波振動歯ブラシ用のグリップとして働く。
【0044】
ブラシヘッド100は、アダプタ120を備えた第1部分111とクリーニングエレメントを備えた第2部分113とに分割されている。第1部分111および第2部分113はそれぞれ、主軸線112もしくは114を有している。アダプタは、本実施形態では第1の主軸線112と合致するアダプタ軸線121を有している。アダプタ軸線121は、ブラシヘッド100と振動発生器300との間における連結方向を示す。アダプタ120の領域においてブラシネック110は、近位端の方向にほぼ円錐形に拡がっている。第2の主軸線114は、本実施形態では第1の主軸線112に対して10°の角度だけ屈曲されており、その結果クリーニングエレメント130は、僅かに前側に向かって、クリーニングエレメント130の方向に屈曲されている。しかしながら角度は、異なった値に選択されていてもよく、例えば角度は、8°~12°の値を有することができる。クリーニングエレメント130は、方向付け軸線(Ausrichtungsachse)131を有しており、この方向付け軸線131は、本実施形態ではフィラメントの平均的な方向と一致している。この方向付け軸線131は、相応にクリーニングエレメント130の側において80°の角度で第1の主軸線と交差している。これによって前側の門歯の内側を特に良好にクリーニングすることができる。
【0045】
ブラシネック110は、主として、2つの異なった材料から成っている。一方ではブラシネック110は、クリーニングエレメント130が固定されている前側部分140を有している。この前側部分は、アダプタ120からブラシヘッド100の遠位端まで延びている。アダプタ120もまた、本実施形態では前側部分140の一部である。さらにブラシネック110は背側部分150を有しており、この背側部分150は、背側を、つまりクリーニングエレメント130とは反対に位置する側を覆っている。背側部分150は、前側部分140よりも柔らかい材料から成っている。この構成によって、ブラシネック110の振動特性、ひいてはクリーニングエレメント130の振動特性を最適化することができる。製造時においてブラシネックは、好ましくは一回の作業ステップで製造される。
【0046】
アダプタ120は、振動発生器300のピン310を収容するために働く。このピン310については、図4を参照しながら詳しく説明する(下記参照)。
【0047】
図2aには、後ろ側に向かって傾けられたヘッド部分を備えた第2実施形態のブラシヘッド200が、長手方向軸線に沿った断面図で概略的に示されている。さらに図2bには、図2aに示されたブラシヘッド200が側面図で示されている。
【0048】
ブラシヘッド200は、主としてクリーニングエレメント230の構成、およびブラシヘッド100とは逆方向に10°の角度だけ傾けられた屈曲部の構成によって、ブラシヘッド100とは異なっている。
【0049】
ブラシヘッド200は、ブラシネック210を有しており、このブラシネック210には、遠位にクリーニングエレメント230が、本実施形態では、側部に配置された剛毛を備えたワイヤが配置されていて、かつ近位に、振動発生器300にもしくはベース器具に連結するためのアダプタ220(上記参照)が配置されている。
【0050】
ブラシヘッド200は、アダプタ220を備えた第1部分211と、クリーニングエレメント230を備えた第2部分213とに分割されている。第1部分211および第2部分213はそれぞれ、主軸線212もしくは214を有している。アダプタ220は、ここでも第1の主軸線212と合致するアダプタ軸線221を有している。アダプタ軸線121はまた、ブラシヘッド200と振動発生器300との間における連結方向をも示す。アダプタ220の領域においてブラシネック210は、近位端の方向にほぼ円錐形に拡がっている。第2の主軸線214は、本実施形態では第1の主軸線212に対して10°の角度だけ屈曲されており、その結果クリーニングエレメント230は、僅かに後ろ側に向かって、クリーニングエレメント230の方向とは逆方向に屈曲されている。しかしながら角度は、異なった値に選択されていてもよく、例えば角度は、8°~12°の値を有することができる。クリーニングエレメント230は、方向付け軸線231を有しており、この方向付け軸線231は、本実施形態ではワイヤの方向と一致している。この方向付け軸線231は、相応にクリーニングエレメント230の側において100°の角度で第1の主軸線212と交差している。これによって前側の門歯の内側を特に良好にクリーニングすることができる。
【0051】
ブラシネック210は、ここでも主として、2つの異なった材料から成っている(上記参照)。しかしながらアダプタ220は、アダプタ120と同一に形成されている。
【0052】
最後に述べると、ブラシネック210の、クリーニングエレメントとは反対の側に、ブラシネックに沿って長手方向において移動可能な閉鎖エレメントが形成されており、これによって交換可能なクリーニングエレメント230を、ブラシネック210に固定することができる。この閉鎖エレメントは、図2bにおいて良好に見ることができる。
【0053】
図3には、長手方向においてアダプタの側から見た、ブラシネック110の第1実施形態が概略的に示されている。この図3から分かるように、アダプタ120はほぼ円筒形に形成されている。アダプタ120は、4つの係止突起122を有しており、これらの係止突起122はそれぞれ、スリット123によって中断されている。
【0054】
図4には、アダプタ120が、長手方向軸線に沿った断面図で概略的に示されている。
【0055】
アダプタ120は、扁平面取り部311と溝312とを備えたピン310(図5a,図5b参照)を収容するために働く。そのためにアダプタ120は、ほぼ円筒形の収容部を有しており、この収容部は、収容部底に、側部の扁平面取り部と係止突起122とを有している。収容部は、ほぼ円筒周壁の形状を有しており、この円筒周壁は、開口方向に少なくとも1つの側部のスリット123と、内方に向かって突出する係止突起123とを有している。スリット123によって、縁部領域における収容部は、ひいては係止突起123はばね弾性的に形成されている。収容部底における側部の扁平面取り部は、ピン310の、側部において扁平に面取りされた端部領域を収容するために働く。最後にアダプタ120は、ピン310が追加的に摩擦結合部によって保持され得るように形成されており、その結果振動伝達が損なわれることはない。
【0056】
図5aには、ピン310を備えた振動発生器300が、側面図で概略的に示されている。図5bは、図5aに示された振動発生器300を示す図であるが、しかしながらここでは長手方向軸線を中心にして90°の角度だけ回転させられている。
【0057】
振動発生器300は、好ましくは、圧電素子または磁石に基づいており、かつ振動もしくは超音波振動を、振動発生器300に不動に結合されたピン310に伝達する。ブラシヘッド100もしくは200は、好ましくは単にこのピン310だけを介して、振動発生器300に結合される。遠位領域にピン310は、扁平面取り部311を有している。さらにピン310は、係止突起122もしくは222を収容するための溝312を有している。ピン310およびアダプタ120もしくは220は、ピン310が扁平面取り部311によって回動防止されて、かつ溝312もしくは係止突起122,222によって軸方向において固定されて保持され得るように形成されている。さらにピン310は、また追加的に摩擦結合部を介してアダプタ120,220において保持されていてもよく、このようになっていると、振動伝達が損なわれることはない。
【0058】
振動発生器300は、本実施形態では略示されているだけである。典型的には振動発生器300は、ハウジング内に設けられており、このハウジングは、使用者によって人間工学的に把持することができ、かつアキュムレータ、電源装置、制御機器、使用者用の表示装置等のような別の部材を有することができる。
【0059】
確認のためにまとめておくと、本発明によれば、特に良好でかつ効果的な歯のクリーニングを可能にする、音波振動歯ブラシ用のブラシヘッドが提供される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b